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看護学統合研究

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Academic year: 2021

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Ⅰ.研究の背景

日本の子どもにおける終末期医療の中で、特に病 院においては、「病気を治す」ことを第一の使命と し、「子どもの延命のためには、できる限りの努力を 惜しまない」という医療スタッフや家族の思いは、

根治療法や延命治療がもはや合理性をもたないと思 われる局面においても、消し去ることはできない。

そのため死に逝く子どもたちに対して、適切な End- of-Life(以下 EOL とする)への移行がなされず、患 児の QOL が置き去りにされやすい傾向が指摘され ている現状もある1)

一方で、治療法や医療技術の進歩は、子どもの命 を救い、病院で亡くなるという状況を減少させると いう現状も生み出している。

この様な医療現場の中で、End-of-Life Care(以下 EOL ケアとする)への適切な移行がされず、最期ま で治療をし、そして命が尽きようとしている子ども を前にした看護師は、子どもの死や EOL ケアに対 する経験の少なさが、EOL ケアに対し困難感を抱い たり苦悩したりする要因になっていた2)

先行研究にも、子どもの EOL ケアにおける困難 感や葛藤などが報告されている。

看護師の子どもの EOL に対する感情として、家族 が子どもの病気を受容していく過程で表出するネガ ティブな反応は、看護師の専門職としての自己効力 感を低下させるなど、受け止めにくいものである3)。 また、苦痛な症状のある子どもとの関わり、子ども を取り巻く家族との関わり、医療スタッフとの関わ り、幼くして亡くなる子どもの死を看取ること、自 己能力に対して、ストレスを感じ4)、自責の念や悲 嘆の感情を押し込めて業務をしていたという報告も

されていた5)。これは、子どもの EOL に携わる日本 の看護師だけでなく、米国などでも同様な状況が報 告されている6)。 

EOL ケアを実践する時の困難感は、家族の揺れる 思いを理解しながらも、実際には EOL ケアに対する 知識や技術の不足からケアの判断が難しく、評価の 基準や指標がないこと、家族や医療者との連携やコ ミュニケーションが不足していることなどが、報告 されている7)8)9)10)。さらに、時間的余裕のなさも、

実践に対する困難さを増すことに繋がっていた8)10)。 これらの先行研究の中で、子どもの EOL や死を 臨床経験年数別の影響を明らかにしている文献が、

わずかだが報告されている。

病院で子どもを看取る看護師が一番印象に残って いる場面は、再発、悪化、死の場面であり、特に経 験年数3年未満の看護師は、子どもの死にショック を受け、「思いだしたくない」、「やりきれない思いが ある」と報告されている11)。また、経験年数5年目 以上の看護師であっても、患者の悲惨な状態や子ど もの死が原因で外傷後ストレス障害(Posttraumatic  Stress Disorder)、いわゆる目撃外傷体験を引き起こ し12)、経験豊富な看護師でさえも、家族や子どもへ の援助の難しさ、連携調整の難しさを感じている、

と報告されている8)

研究者の臨床経験の中でも、子どもの EOL ケア に携わる看護師達は、「再発やターミナル期の先にあ る死を考えると心が折れる」という思いを抱き、懸 命にケアしていても「自分の技術がもっと獲得でき ていれば子どもを救えたのではないか」と知識や技 術の不足を感じていた。また、「本当に子どもや家族 が必要としていたケアができたか自信が持てない」、

子どもの End-of-Life Care に携わる看護師達の経験年別にみた苦悩と望む支援 伊藤久美

帝京科学大学医療科学部看護学科

Suff erings and supports desired as seen by years of experience of  nurses involved in childrenʼs End-of-Life Care

Kumi ITO

 キーワード:子ども、エンド・オブ・ライフ ケア、看護師、経験年数、苦悩、支援 Keywords:children,  End-of-Life Care,  Nurse,  Year of Experience,  Suff ering ,Support

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「何もできなかった」という、無力感に陥るような体 験につながっていた。しかし、EOL ケアに対する悩 みや辛さの存在を看護師全体として捉えていたが、

ベテラン看護師は自分のことだけでなく後輩の心配 をしたり、リーダー業務をするようになった中堅看 護師は、新人の時と違う悩みや捉え方をしたり、経 験年数で子どもの EOL ケアに対する悩みや辛さに 違いがあるように思えた。そして、経験年数で違い があるならば望む支援にも違いがあり、これらを具 体的にすることで、より質の高い支援ができるので はないかと考えた。

日本における子どもの EOL ケアに携わる医療者 への支援体制は、2012 年に日本小児科学会より小児 の終末期医療のガイドラインで13)、「生命維持治療 の差し控えや中止を検討するときには、子ども・父 母(保護者)・家族・そして医療スタッフなど関係者 全員の継続した精神的支援が必要である」と提示さ れているが、終末期医療全体に携わる医療者に対す るサポート体制は提示されていない。つまり、日本 は終末期医療に携わる医療者に対するサポートが、

まだ発展途上の段階であり、確立されたプログラム やシステムの報告はほとんどない。また、子どもの EOL ケアに携わる看護師は、労働状況やケア困難に 関するメンタルサポートなどの課題について、軽視 または回避されている傾向があり、医療者個人の努 力では、改革しにくい厳しい状況下にある14)と報告 している。

そこで本研究では、臨床経験年数別の苦悩や望む 支援を明らかにすることで、今後の子どもの EOL ケ アに携わる看護師達の支援体制の構築に向けた示唆 を得られると考えた。

Ⅱ.研究目的

子どもの EOL ケアに携わる看護師達の経験年別 にみた苦悩と望む支援を明らかにし、今後の支援体 制構築への示唆を得る。

Ⅲ.用語の定義

1.End-of-Life:終末期とも言われ、一般的に現代 医療において可能な集学的な効果が期待できず、積 極的治療がむしろ不適切と考えられる状態で、生命 予後が6か月以内と考えられる状態を言う。文中の ターミナル期とターミナルケアという用語は、文献 や語られた言葉で使用されている場合は、そのまま の表現で引用している。

2.経験年別の分け方は、Benner,p.15)の「初心者か

ら達人へ」を参考に定義した。

経験年数1〜2年:若手看護師「先輩の指導のも       とケアを実践できる」

3〜6年:中堅看護師「経験や知識に基づき、

自己の判断でケアを実践できる」

7年以上:ベテラン看護師「状況全体を理解と 問題解決能力を高め、医療チーム内 でのリーダーシップが発揮できる」

Ⅳ.研究方法

1.研究デザイン:質的帰納的デザイン

2.研究参加者:研究フィールドであるこどもセン ターに勤務し、子どもの EOL に 携わる看護師 20 程度(経験年数は 問わなかった)

3.データ収集期間・場所:2012 年 11 月〜2013 年 3月、関東圏内にある 大学病院のこどもセン ター

4.データ収集方法

参加に同意した看護師達に、これまでの経験の中 で子どもの EOL ケアについて感じていること、困 難や苦悩していることはあるか、どのような支援を 望んでいるかなどを自由に語ってもらい、個人また はグループにインタビューした。時間は、勤務終了 後とし1時間以内で終了した。インタビュー時、同 意を得られた場合のみ、IC レコーダーで録音した。

グループの場合は、経験年数は問わず参加できる人 で行った。参加回数の制限はしなかった。

5.分析方法

子どもの EOL に携わる中で、①困難や苦悩して いることはあるか、②どのような支援を望んでいる か、を経験年数別(若手・中堅・ベテラン)に分け 分析した。個人やグループでのインタビュー終了後 すぐに逐語録を作成し、1回毎に小児看護の専門家

(指導教員及び小児看護学の大学院修士課程を修了 している者)とディスカッションを重ねたり、スー パービジョンを受けたりしながらデータ分析の洞察 を深めた。また、参加者にも逐語録を提示し確認を 得た。

6.倫理的配慮

本研究は、研究フィールドである施設の倫理審査 委員会(承認番号:2013030)から承認を得た。ま た、説明文書を用いて説明し、十分納得されたこと を確認した後に、同意文書に署名を得ることを原則 とした。研究への参加は、対象者の自由意思により

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決定され、同意しない場合においてもいかなる不利 益を被ることもなく、いつでも同意を撤回できるこ とを説明した。個人情報保護のため、看護師個人の データは、ナンバリングで個人が特定できないよう 配慮した。入手したデータは、研究者のみが使用す るコンピューターに保存し、研究者しか知りえない パスワードにて管理した。得られた成果は、学会や 論文に発表されるが、個人情報が出ることはないこ とを説明し同意を得た。

Ⅴ.結果

5カ月間で8回、同意を得られた 24 名(述べ 35 名)の看護師から情報を収集した。情報収集方法は、

主に個人やグループでのインタビューであり、他に は、デスカンファレンスに参加する機会もあった。

表1 参加者の背景

性別   女性     22 名      男性      2名 臨床経験年数

1〜2年:若手看護師     8名 3〜6年:中堅看護師     6名 7年以上:ベテラン看護師    10 名

研究フィールドは、関東圏内にある大学病院(600 床弱)のこどもセンター(約 50 床:小児外科・内 科・NICU を含む)である。

主な疾患は、小児がん、神経筋疾患、消化器疾患、

整形疾患、染色体異常、感染後脳症、また第3次救 命救急センター搬送後の子どもなど、生命にかかわ る状態の子どもが多く入院している。特に小児がん においては、子どもセンター全体の7割程度占め、

造血幹細胞移植も行っている。

小児科医師は、教授を含め十数名いる。看護体制 は、看護師長(以下師長)1名、係長2名を含む看 護師約 50 名程度、保育士1名、看護助手2名が勤務 している。看護師の平均年齢は 27 歳、経験年数1〜

2年:18 名、経験年数3〜6年:19 名、経験年数7 年以上:16 名だった。

1.経験年数別からみた苦悩

1)解決策が分からず、悩んだまま終わる若手看 護師

若手看護師は、「自分の技術がもっと獲得できてい れば子どもを救えたんじゃないか」、「子どもの状態 が悪い時は、声がかけにくいしお部屋に行けなくな る」、「やってあげたい(ケア)と思った時、本当に

両親は望んでいるのかな、どんな思いでいるんだろ うなとか、どんな声をかけたらいいんだろうって考 えてしまって」と語っていた。経験が少なく技術的 にも未熟なことで、日常生活援助の方法やどのよう に子どもや家族へ関われば良いのか、「悩んだまま終 わってしまう、解決策は分からない」と、自分だけ では解決できずに終わっている状況だった。また、

子どもが亡くなると、「初めての経験で実感がわかな い。亡くなったのは理解できるけど、感じる暇がな い」や「(子どもが)夢に出てくるんです」と語る反 面、「(子どもが亡くなって)泣く機会があると、後 まで尾を引かない」と語る看護師もおり、若手看護 師では、EOL にある子どもと関わる機会や期間の短 さなども捉え方に影響していた。

2)子どもの EOL ケアは難しいがやりがいを感 じる一方で、どんなに頑張っても先がない子ども の状況を経験していく度に、続けていけないと感 じる中堅看護師

中堅看護師達は、「良くなっていく過程がないター ミナルケアは一番大変だと思う」、「ターミナルにあ る子どもは、どんなに頑張っても先がない、自分の メンタルも落ちる」と語り、経験が増えていく度に 苦悩は深まっていた。また、「希望を捨ててない家族 にどうかかわれば良いのか、声をかけたらいいのか」、

「(子ども)本人が、今の状況をどう捉えて、どうし たいのか、子どもから聞かれた時、言葉に詰まった」

など、受け持ち看護師として中心的役割を担うよう になることで、子どもにとって、家族にとってどう することが最善なのかと悩んでいた。

そして、子どもが亡くなると、「(ケアが)できて いたと思っていても、それさえ分からなくなる」、「今 の状況だと(仕事は)続けられない、解決策が見つ からなければ続かない」、「自分がやっているケアに 自信が持てない」、「夢を何度も見る、心マ(心臓マッ サージ)の感覚とか腕に残る」と語っていた。子ど もや家族と深く関わり、必死にケアを実践していて も、子どもが亡くなれば自信もできた実感もなくな り、さらに困難さを感じていた。

中堅看護師の特徴としての一つとして、リーダー 業務や受け持ち看護師として中心的役割を担うこと での苦悩もあった。「業務量が増えて、ゆとりがない とターミナルの子どもに関われない」、「受け持ちの ことは、業務が終わってからって感じ、だから疲れ る」など、関わりたいが関われない状況にも悩み、

身体的疲労感だけでなく精神的にも余裕がなくなっ ていた。

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3)「自分のこと」よりも、後輩が限られた一瞬の タイミングを逃さずケアが出来たのか、支援でき たのかと悩むベテラン看護師

ベテラン看護師は、「タイムリーなカンファレンス が実施できなくてケアに活かせなかった」、「最期が あることを分かってケアしていくことを、後輩達に サポートできていたかどうか」、「タイミング良く子 どもや家族にケアできたか」、「スタッフの喜びは励 みになる反面、スタッフが落ち込むと自分が責めら れているような気がする」と語り、自分のことを優 先させるのではなく、後輩へのサポートに対して悩 んでいる語りが多く聞かれた。また、「親の意見だけ でなく、子どもの権利は守られているのか葛藤する」、

「痛みのコントロールがうまくいかなかった」など、

高い知識や技術力を求められているベテラン看護師 の苦悩もあった。

そして、「経験年数や立場での悩みや辛さはある」、

「後輩へのケアはするが、自分のケアはできていな い」、「冷静でいなくてはと思うけど、関わる時間が 長いから感情が入って辛い」、「子どもが次々に亡く なると、何も感じない人になってしまったような感 覚がある」、「一生懸命やっても上司からバックアッ プがないときつい、ベテランは褒められることが少 ない」など、ベテラン看護師であっても、子どもの EOL ケアや亡くなるという状況は、決して慣れるこ とではなく辛い出来事である。しかし、立場や役割 からその思いを正直に吐露することが出来ない現状 もあった。

2.経験年数別からみた望む支援

1)先輩から学び、「それでいいよ」という承認を 得たい若手看護師

若手看護師は、自分に経験や技術も足りないから こそ、「先輩の、家族や子どもへの関わりを実際に見 て学べた」、「先輩は、子どもや家族はどうしたいか を考えていて、それを自分もやってみようと思った」、

「具合が悪くても、普通なことができる(日常生活)

と、家族も子どもも自分も嬉しい」など、先輩と一 緒にケアを実践し、どんな状況でも子どもが子ども らしく生活できる援助をしたいと語っていた。

また、「(先輩から)話をたくさん聞けると、関わ り方を学べる」、「先輩に話して『それでいいと思う』

と言われてこれでいいんだと思えた。次につながるっ て」と語り、一人で出来ないことは先輩の実践を通 して学び、出来ていたことを認められることで次へ の原動力になっていた。そして、「(思いを)吐き出

したい」、「色々聞けたり話せたことで(子どもの死 を)受け入れられた、ちゃんと送り出そうと思えた」、

「(先輩と子どもの話をすると)モヤモヤがなくなる」

など、先輩と語り合うことで、出来なかったと感じ ていたことや、自分の辛い気持ちを吐き出せるよう になり、語り合う場の必要性さを語っていた。

2)周囲からの支えを感じられた時、「やっていけ そう」と思える中堅看護師

中堅看護師達は、「様々なスタッフと子どもや家族 の話をすると、一人で考えるより皆で考えた方がやっ ていけるような気がする」と語り、業務リーダーや 受け持ち看護師として中心的な役割を担う立場は、

一人で孤軍奮闘してしまうこともあり、スタッフを 巻き込んで共にケアを考えられたら、負担も軽減し 進んでいけると捉えていた。また、「業務内で受け持 ちの事をやれると嬉しいしやる気もでる」や「看護 師への支援も充実したらいいかな、例えば1ヶ月く らい休むとか」など、負担の軽減には業務改善や勤 務管理への支援も望んでいた。

さらに、「皆が頑張っているから、自分も(頑張れ る)って思える」、「支えてくれる人がいるから頑張 れる」など、自分だけでなく他スタッフの頑張りや 支援を感じられた時は、続けていけると思えていた。

これは、スタッフからの支えだけでなく、「家族から 看護師さんに支えられてと言われて救われた。自分 のやってきたことが無駄ではなかったと思えた」と、

子どもの家族からの一言によって、大きな喜びや達 成感が持てると捉えていた。

そして中堅看護師も若手看護師と同様、「自分の気 持ちを吐き出せる場所が欲しい」、「話を聴いてもらっ てすっきりした。自分をよく知っている先輩に良く やったと認めてもらえることは、良かったんだと思 える」と、自分の苦悩を話し聞いてもらえることの 大切さを語っていた。その中で、「カウンセリングは 受けてみたい。身近にいれば相談したい」など、た だ語るだけでなく治療的要素を含んだ語りの場を望 んでいる看護師も存在した。

3)ベテラン看護師だからこそ望んでいた、悩ん だ時の道しるべ

ベテラン看護師達は、「出来ないと思ってやるんで はなくて出来るためにやる。それをみんなと見つけ る」と、若手や中堅看護師だけでなく、医師やその 他の職種も含めて子どもやその家族への最善のケア を考え実践していた。そして「スタッフと一緒に振 り返ることで自分は落ち着く」と、スタッフを通し て成果を感じると語っていた。そのためには、「ペイ

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ンコントロールは、医師にもっと関わってほしい」、

「子どもがちゃんと最期を迎えられるよう、医師も含 めて皆でやっていきたい。話ができること」が、重 要だと語っていた。

このようにベテラン看護師達は、常に後輩を支援 し、子どもやその家族のために最大限の努力を要求 され、そしてそれに応えようと日々奮闘していた。

だからこそ、望んでいた支援は、「責任者からの評価

(サポート)がほしい。見ててくれるのは大きい。褒 めてくれるのは嬉しい」や「悩んだ時に相談できて、

道しるべ、方向性がわかると自信を持ってできる」、

「いってらっしゃいって背中を押してもらう」、「ポイ ントポイントで自分を見ていてくれる、ダメな時は 修正してくれる、自分でも気付かないことを気づか せてくれる、すると楽になる」など、上司からの支 援だった。ベテラン看護師なのだから出来て当たり 前なのかもしれないが、本当にこれでいいのかと常 に考え実践することは、不安も伴い苦悩することも 少なくない。技術や知識ではなく肯定的フィード バックや後押しが望んでいる支援だった。

Ⅵ.考察

1.経験年数別にみた苦悩

若手看護師は、看護師としての経験の少なさに加 え、命の期限が迫られた子どもの EOL ケアにおけ る知識や技術が不足しているのは当然のことである。

看取りの経験不足は、自ら望むことで積めるもので はなく2)、若手看護師には負担が大きい。しかし、

その中でも若手看護師は、子どもやその家族へケア を提供しようとするが、「子どもの状態が悪い時は、

声がかけにくいしお部屋に行けなくなる」や「やっ てあげたい(ケア)と思った時、本当に両親は望ん でいるのかな」と戸惑い、先輩看護師に相談できな ければ、一人で悩み解決できない状況に陥っていた と考える。橋本8)も、2年未満の若手看護師は、「自 分はどうしたらいいのか、母親からどう思われるの かなど、自分自身の気持ちの中で困難感が生じてい た」と述べているように、子どもや家族へ実際にケ アを提供したことでの困難感というより、自分が捉 えた子どもや家族の状況から、これでいいのか、自 分に何が出来る、と自分自身の中での悩みや苦しさ になっていると考えられる。そして、「お部屋に行け なくなる」など、少し引いた関わりという回避行動 をとっていた8)と考えられた。

また、子どもが亡くなった時、「看護師として未熟 な段階で遭遇する子どもの死は、強い衝撃や後悔の

思いにつながり無力感を抱きやすい16)」と報告され ているが、EOL にある子どもや家族と関わる期間、

直接ケアする機会の多さなどが、衝撃の強さや後悔 の思いに影響していると考えられた。参加者の中で、

関わる機会が多かった若手看護師は、「夢に出てく る」程に衝撃を受け、忘れられない状況を語ってい たが、他の若手看護師の中には、かかわる期間が短 く、子どもが亡くなった事実を知った時には悲しい と涙するが、それ以上悩んだり悲しんだりする状況 には陥らなかったと思われた。

中堅看護師は、受持ち看護師として中心的役割を 担う中、「希望を捨ててない家族にどうかかわれば良 いか」と、実際の子どもの状態と親が持つ希望の ギャップで苦悩していた。親は、我が子が親より先 に人生を閉じなければならないこの状況に、混乱し 苦しんでいる。だからこそ親は、子どもが死を迎え る最期の最期まで、できることはしてあげたい、1

% でも望みがあるなら諦めずその治療にかけたい、

奇跡が起こることを必死に願っているのである。受 持ち看護師として一番身近にいる中堅看護師だから こそ、この思いは十分理解した上で、子どもの状態 と親のギャップを埋められず、どのようにかかわれ ば良いか苦悩するのだと考える。また、「(子ども)

本人が、今の状況をどう捉えて、どうしたいのか」

と、家族だけではなく子どもの意思を十分確認し、

子どもの思いを叶えられているのかと悩んでいた。

子どもの EOL ケアに携わる看護師の根底には、子 どもには子どもの意思がある、子どもの人生だから 最期は子どもの意思を確認し通してあげたい、とい う強い思いがある。しかし、経験年数を重ねる毎に 業務量は増え、余裕のない中で受持ち看護師として 十分に関われないジレンマを感じ、苦しんだり悩ん だりしていたと推測された。

ベテラン看護師は、子どもの EOL ケアに携わる 時、子どもだけをケアするだけでなく、親の苦悩や 混乱も引き受け、少しでも子どもや親の願いが叶う ようなケアをする大切さを理解している。そして、

子どもの命に最期があることを受け入れ、タイミン グ良くケアを提供できれば、医療者としての喜びも 感じることが出来る反面、上手く実践できなかった 時の後悔や辛さも多くの経験から学んできている。

だからこそ、後輩達のサポートに力を注ぎ、「スタッ フの喜びは励みになる反面、スタッフが落ち込むと 自分が責められているような気がする」と語り、後 輩スタッフを通して悩むことも多いと考えられた。

さらにベテラン看護師は、高い知識や技術力を求め

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られているため、「親の意見だけでなく、子どもの権 利は守られているのか葛藤する」、「痛みのコントロー ルがうまくいかなかった」など、経験豊富な看護師 だからこそ子どもや家族を中心に考え、支えていこ うとしてその援助に困難を感じていた8)。また、ベ テラン看護師という立場は、「後輩へのケアはする が、自分のケアはできていない」と語るように、後 輩の悩みは聞いても、自分の悩みは周囲に吐き出す ことはなく胸の中に押し込められ、何とかやり過ご そうと耐えているような状況であると推測された。

2.望んでいた支援の違いと共通点

「困難を抱える若手看護師は、先輩看護師の関わり を目で見て耳で聞きその判断や行動の意味を学ぶこ とは、新しい視点を得、実践において有用である8)」 と報告されているように、若手看護師は、不足して いる知識や技術は、先輩の関わりを実際に見ること で学び、先輩と一緒にケアを実践することで、どん な状況でも子どもが子どもらしく生活できる援助が 出来るようになることを望んでいた。

中堅看護師は、業務量が増えていくことでの負担 や疲弊を、業務改善や勤務管理からの支援を望みな がら、スタッフと共に考え実践すること、スタッフ 同士の支え合いや子どもや家族からの言葉で、「やっ ていける気がする」という気持ちにつながっていた。

特に中堅看護師は、一人で抱え込まないよう周囲か らの支援を必要としていた。

ベテラン看護師は、常日頃自分の役割、責任を感 じながら、チームや多職種を巻き込み、どうすれば 子どもや家族が望むケアを提供できるのか考え、こ れで本当にいいのかと悩みながらも実践していた。

この様なベテラン看護師達が一番に望んでいたこと は、病棟管理者からの支援だった。ベテラン看護師 であっても、全てに自信を持って実践できる訳では ない。複雑な医療現場の中で、様々な子どもや家族 に対応しなければならない状況において、ベテラン 看護師として責任を果たすための悩み、タイミング を逸し十分なケアを行うことができなかった後悔な どの苦悩はある。だからこそ、相談できる相手、道 しるべを示し背中を押してくれる上司の肯定的 フィードバックが、ベテラン看護師を支える大切な 支援であると考えられた。

この様に、経験年数別にそれぞれ望む支援が明ら かになったが、経験年数関係なく全てに共通してい たことは、「自分の気持ちを吐き出せる場所が欲し い」という、辛い気持や悩んできることを吐き出せ

る、語れる場の存在であった。そして、「話を聴いて もらってすっきりした」、「(先輩と子どもの話をする と)モヤモヤがなくなる」、「スタッフと一緒に振り 返ることで自分は落ち着く」と、スタッフ同士が気 兼ねなく話せる場の中で、自分の思いを吐き出すこ とができた時、気持ちを整理することが出来ると考 えられた。また、「『それでいいと思う』と言われて これでいいんだと思えた」、「良くやったと認めても らえることは、良かったんだと思える」、「褒めてく れるのは嬉しい」など、EOL ケアに対する困難感や 辛い感情に対して、支持的・肯定的フィードバック があると安心や自信、頑張る力になっていたと推測 された。

3.子どもの EOL ケアに携わる看護師の支援体制 構築に向けた示唆

子どもの EOL ケアに携わる看護師達は、時間に 限りがある子どもや家族が納得できるケアを提供し ようと一生懸命になる。だからこそ悩み苦しむので ある。しかし、悩みを抱え込み過ぎると、自己を否 定したり、看護師として無力感を感じたりすること になる。また、悩みを抱えたままでは、十分なケア を提供することができなくなると考えられ、子ども が EOL にある時に悩みを少しでも軽減することが できる支援が必要であると考える。

子どもの終末期から死後の過程におけるケアと、看 護師へのメンタルサポート体制の実態を調査した研 究では、死期が近い患者をケアする看護師のバーン アウトを予防するための、感情吐露やメンタルケア に焦点を当てた予期的なメンタルサポートを実施し ている状況は少ない。その中で「病棟カンファレン ス、デスカンファレンス、個別サポートなどを実施 している」とあるが、「方法が分からない、主体とな る人がいない、時間が取れない」など、様々な課題 も指摘され、今後の対策の必要性を示唆していた18)

また、看護師のメンタルサポートは、各施設、部 署、個人に任されていることが多く、各施設で専門 的にサポートする職種の確保や、各部署で行うサポー ト体制の確立など、今後の課題は大きいと考える。

支援体制が確立していない中、今回の研究結果で は、臨床経験年数別での苦悩や望む支援が明らかに なり、今後の一助となった。そして全てに共通する

「語る場の存在」は、支援体制の構築に向け重要な示 唆が得られたと考える。

子どもの EOL ケアに携わる看護師同士が、悩み や辛さを語り合い、その中で支持され肯定的フィー

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ドバックが得られるならば、子どもに残されたわず かな時間の中で、タイミングを逃さず、そして子ど もや家族が納得できるケアを提供することにつなが ると考える。そしてこの実践が、「やって良かった」

という思いを持つことにつながり、子どもの EOL ケ アに携わり抱いていた看護師達の悩みや辛さを軽減 することにもなると考えられた。したがって、今後 はどのように臨床現場の中で看護師同士の語れる場 を作り、その中で自由に感情を吐き出せるにはどの ような支援が必要かを明らかにしていくことが課題 である。

謝辞

本研究にご協力くださいました研究施設の看護部 長、こどもセンター師長、お忙しい中貴重なお話し をして下さいましたこどもセンターのスタッフの皆 様に心より感謝申し上げます。

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参照

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