2019力学.0.1
力学
数理情報学科・2年次配当・前期・学科固有科目・コア選択必修(P)・2単位
講義計画
No. 回数
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キーワード
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1 1回目
飯田 晋司
単振動におけるエネルギー,重力による位置エネルギー,力学的エネル ギーが保存される運動(1次元)
2 2回目
飯田 晋司
力学的エネルギーが保存されない運動(1次元),仕事とエネル ギー(1次元)
3 3回目
飯田 晋司
位置エネルギーによる 3 次元運動,位置エネルギーと保存力(3次元)
4 4回目
飯田 晋司
位置エネルギーと保存力(3次元),仕事とエネルギー(3次元)
5 5回目
飯田 晋司
回転運動(質点の角運動量)
6 6回目
飯田 晋司
回転運動(力のモーメント)
7 7回目
飯田 晋司
座標系の運動と慣性力
8 8回目
飯田 晋司
小テスト1
9 9回目
飯田 晋司
質点系にはたらく力(内力と外力),質量中心(重心)の運動方程式
10 10回目
飯田 晋司
質量中心(重心)の運動方程式,質量中心に対する質点の相対位置
11 11回目
飯田 晋司
質点系の全運動量と全運動エネルギ,2つの物体の衝突
12 12回目
飯田 晋司
質点系の角運動量,質点系にはたらく力のモーメント
13 13回目
飯田 晋司
剛体の回転運動,剛体の慣性モーメント
14 14回目
飯田 晋司
小テスト2
15 15回目
飯田 晋司
全体のまとめと補足事項
★ 成績評価の方法
・予定されている2回の小テストの両方に60点以上をとるか,あるいは定期試験に60点以上をとることで合格 とします。最終成績は,合格の場合は小テストの平均点(小数点以下切り上げ)と定期試験の点数の高い方,
不合格の場合は定期試験の点数,となります。
・小テストと定期試験で参考文献は持込不可です。電子機器(携帯電話,スマートフォン,PC等)の使用はでき ません。
・公式等をまとめた,まとめのプリントを試験問題とともに配布します。
プリント中の
高木I は参考文献,“高木隆司,「力学(I)」(裳華房)”を示します。
高木II は参考文献,“高木隆司,「力学(II)」(裳華房)”を示します。
戸田 は参考文献,“戸田盛和,「力学」(岩波)”を示します。
佐本 はテキスト,“佐川,本間,「力学」(丸善)”を示します。
三宅 はテキスト,“三宅『入門微分積分』(培風館)”を示します。
オフィスアワー: 月曜6講時(1-513),木曜6講時(1-513) url: http://www.math.ryukoku.ac.jp/˜iida/lecture/lecture.html
2019力学.1
【注】
MKS
単位系物理量にはすべて単位がついています。単位を省略する場合もありますが,書く場合はMKS単位系を用いま す。すなわち,長さの単位はメートル(metre; m),質量の単位はキログラム(kilogram; kg),時間の単位は秒
(second; sec)です。
1 質点の 1 次元運動
高木I p. 92
戸田3-4
佐本Lec. 5
1.1
質点の運動方程式≪質点とは?≫ 物体の運動を記述するとき,その大きさが無視できる場合,その物体を 質点 (質量を持った 点)と呼ぶ
高木I p. 2
戸田p. 25
佐本3.1.1 。無視できない程度の大きさであっても,簡単のため,大きさを
無視して質点と扱うこともある。
≪運動方程式≫ この章ではx軸上を動く質点の運動を考える。質点の質量をm,時刻tでの質点の位置をx=x(t),
時刻tで質点に働く力(のx成分)をF =F(t)とする(力の単位は[kg m/sec2] = [N],newton(ニュートン))。
すると,運動方程式(のx成分)は
md2x
dt2 =F (1.1)
となる。dx
dt は質点の速度を表すので,これをv(やvx) と書くことも多い(v≡ dx
dt)。(1.1)は速度v を用いて つぎのようにも表現できる。
mdv
dt =F . (1.2)
1.2
単振動におけるエネルギー≪復元力≫ ばねの一端を固定し,他端に質量mの質点をつないで摩擦のない水平な面上に置く。ばねによる力の 大きさはばねの伸び(縮み)に比例する.これを フック(Hooke)の法則 という
高木I図4.1
戸田 図3.4
佐本 図4.5 .
F
F
図1.1 ばねによる力
.
ばねの力がちょうど0 になるときの質点の位置(つりあいの位置)を原点(x= 0)とし,ばねの伸びる向き を x軸の正の向きにとる.すなわち,x >0 がばねが伸びている状態,x <0 がばねが縮んでいる状態を表すよ うにする。ばねの力 F=F(t)は
F =−kx
高木I (4.1)
戸田(3.25)
佐本(4.33) (2.1)
となる。kは ばね定数 と呼ばれるばねに固有の正の定数である(k の単位は[kg/sec2])。ばねの力のよう に,物体をつりあいの位置(x= 0)に引き戻そうとする力を 復元力 と呼ぶ。フックの法則にしたがう復元 力がはたらく質点の運動を 単振動(調和振動) という。単振動の場合,運動方程式(1.1)はmd2x
dt2 =−kx となるが,これを整理すると
d2x
dt2 =−ω2x ω=
√k m
戸田(3.26)
佐本(4.35) (2.2)
と書き換えられる(ωの単位は[1/sec])。
≪単振動の運動方程式の一般解≫ すべての実の定数A,B に対して
x(t) =Acos(ωt) +Bsin(ωt) (2.3)
は (2.2)の解になる。逆に,(2.2)のすべての解は(2.3)の形で表現される(A,B は初期条件などによって定ま
る)。この意味において「(2.3)は(2.2)の 一般解 である」と言われる。
【問2.1】x0,v0 を定数とする。t= 0での初期条件
x(0) =x0, dx
dt(0) =v0 (2.4)
を満たす運動方程式 (2.2)の解を求めなさい。
【答2.1】
x(t) =Acosωt+Bsinωt, dx
dt(t) =−ωAsinωt+ωBcosωt (2.5) に t= 0を代入すれば x(0) =A=x0,dx
dt(0) =ωB=v0 である。したがって,求める解は以下となる:
x(t) =x0cos(ωt) +v0
ω sin(ωt).
高木I (4.7)
戸田(3.39)
佐本(4.39) (2.6)
【問2.2】(2.6)の形の関数を三角関数の合成により
x(t) =Ccos(ωt−θ) (2.7)
の形に書き換えなさい。ただし,C,θは x0,v0によって定まる定数である。
【答2.2】
Ccos(ωt−θ) =Ccos(ωt) cosθ+Csin(ωt) sinθ (2.8) と(2.6)を比べると,C とθは次の等式,
Ccosθ=x0, Csinθ= v0
ω (2.9)
を満たせばよい。これより,初期条件(2.4)を満たす単振動の 振幅 は
C=
√ x20+v20
ω2 (2.10)
であることがわかる。
2019力学.3
≪角振動数≫ (2.7)から分かるように,ω は2π秒間の振動数を表しているので 角振動数 とか 角周波数 と呼ばれる。また,ωは 1秒間に回転する角度でもあるので 角速度 とも呼ばれる。
≪運動エネルギー・位置エネルギー・力学的エネルギー≫
【問3.1】単振動で次の量
E=m 2
(dx dt(t)
)2
+k 2x(t)2
戸田(3.73) (3.1)
が 保存する (時間によらず一定になる)ことを示しなさい。ここで,
K(t) = 1 2m
(dx dt(t)
)2
≡ 1 2mv(t)2
高木I (5.24)
戸田(3.62)
佐本p.77 (3.2)
は時刻t における質点の 運動エネルギー ,
U(t) = k 2x(t)2
高木I (5.15)
戸田(3.71)
佐本(5.17) (3.3)
は,時刻tにおける,ばねの力による 位置エネルギー または ポテンシャルエネルギー と呼ばれる。
また,E =K+Uは 力学的エネルギー と呼ばれる。力学的エネルギーが運動の過程で一定になること を, 力学的エネルギーが保存される という.
【答3.1】(3.1)に(2.6)を代入すると E= m
2
(−x0ωsin(ωt) +v0cos(ωt) )2
+k 2
(
x0cos(ωt) +v0
ω sin(ωt) )2
= m 2 v20+k
2x20 (3.4) となり,E=一定 であることがわかる。
≪力学的エネルギーの保存≫
実は,力学的エネルギーが保存することは,運動方程式の解(2.6)を使わなくても,運動方程式(2.2)だけから示 すことができる:運動エネルギーの時間変化は
dK dt = m
2 d
dtv(t)2=mv(t)dv
dt =−kv(t)x(t) (3.5)
となる。最後の等式で運動方程式(2.2)を用いた。一方,位置エネルギーの時間変化は dU
dt =k 2
d
dtx(t)2=kx(t)dx
dt =kx(t)v(t) (3.6)
なので,dK(t)
dt =−dU(t) dt より
d dt
(
K(t) +U(t) )
= 0 (3.7)
が得られる。この式はK(t) +U(t)のt に対する変化率が常に0,つまりK(t) +U(t)が一定であることを意味 する。
≪質点が運動する範囲≫ 力学的エネルギーが保存されることを利用して,初期条件(2.4)を満たす質点がx軸上 のどの範囲を運動するか求めることができる。
【問4.1】初期条件(2.4)を満たす質点がx軸上のどの範囲を運動するかを求めなさい。
【答4.1】力学的エネルギー保存則を書き換えると
E−k
2x(t)2=m
2v(t)2 (4.1)
となるが,1
2mv(t)2≥0なので
E−k
2x(t)2≥0 (4.2)
より
−
√2E
k ≤x(t)≤
√2E
k (4.3)
という不等式が運動の過程で常に成り立っている。初期条件よりE= m 2v02+k
2x20なので,この物体は−
√
x20+ v02 ω2 から
√ x20+ v02
ω2 の範囲を運動することがわかる。
x0 x
0
2 0
(0) 1 2 U = kx
2 0
(0) 1 2 K = mv ( ) (0) (0) (0) E t =E ºK +U
物体が運動する範囲 0
K= K=0
0
v= v=0
1 2
2 U= kx
図4.1
戸田 図3.9
佐本 図5.2
解(2.6)は(2.7)と(2.10)より次の形,
x(t) = x0cos(ωt) +v0
ω sin(ωt) =Ccos(ωt−θ) (4.4)
C =
√
x20+v20/ω2, cos(θ) = x0
C , sin(θ) = v0
Cω, (4.5)
に書き換えることができるので,確かに質点が(4.3)の領域を全て運動することがわかる。
【注】一般には,力学的エネルギー保存則から得られる不等式(4.3)を満たす領域の全てを質点が運動するとは限 らない:
(質点が運動する領域)⊂(力学的エネルギー保存則から得られる領域). (4.6) しかし,この場合は(4.4)からわかるように質点は領域(4.3)を全て運動する。
2019力学.5
1.3
重力による位置エネルギー重力のみが働く鉛直線上の質点の運動を考える。
高木I§2.3
佐本2.2 x軸を鉛直上向きにとると,運動方程式は md2x
dt2 =−mg (5.1)
となる。gは重力加速度(単位は[m/sec2])の大きさを表す.重力による位置エネルギーは U(t) =mgx(t)
高木I (5.13)
戸田(3.66) であり,力学的エネルギー
E(t) =K(t) +U(t) = 1
2mv(t)2+mgx(t) (5.2)
が保存される。
【問5.1】(5.2)のE(t)を tで微分して,この力学的エネルギーが保存されることを示しなさい。
【答5.1】運動エネルギーの時間変化は dK(t)
dt =m 2
d
dtv(t)2=mv(t)dv(t)
dt =−mgv(t) (5.3)
となる。最後の等式で運動方程式(5.1)を用いた。一方,位置エネルギーの時間変化は dU(t)
dt =mg d
dtx(t) =mgv(t) (5.4)
なので,dK(t)
dt =−dU(t) dt より
d dt
(
K(t) +U(t) )
= 0 (5.5)
が得られる。この式はK(t) +U(t)が一定であることを意味する。
単振動の場合と同じように力学的エネルギーが保存されることを利用して,質点が運動する範囲を求めること ができる。
【問5.2】位置x= 0から,初速度v0≥0で質量mの質点を鉛直上向きに投げ上げたときに,物体の到達する最
大の高さhを,力学的エネルギー(5.2)が保存されることを利用して求めなさい。
【答5.2】初期条件より力学的エネルギーは
E= m
2v02 (5.6)
となる。質点が最高の高さに達したときには,質点の速度は0なので,力学的エネルギーの保存則より m
2v02=mgh (5.7)
が成り立つ。従って,物体の到達する最高点hは h= v02
2g (5.8)
となる。
1.4
力学的エネルギーが保存される運動x軸上を動く質量mの質点の運動エネルギーは常に 1 2m
(dx dt
)2
≡ 1
2mv2だが,位置エネルギーは物体に働く力 によって様々な形をとる。
x軸上を運動する質点の位置エネルギー(力のポテンシャル) '
&
$
% 質点に働く力が質点の位置xの関数F(x)である場合を考える。この力に対して位置エネルギーU(x)を等式
−dU
dx(x) =F(x)
高木I (5.35)
戸田(3.60)
佐本(5.12) (6.1)
を満たす関数として定義する。このような関数 U(x)は (力の)ポテンシャル とも呼ばれる。このとき,
力学的エネルギーE=K+U は保存される,すなわち,
E(t) =1
2mv(t)2+U(x(t)) (6.2)
は時間に依らず一定となる。
戸田(3.64)
佐本(5.14)
【問6.1】(6.2)のE(t)を tで微分すると0 になることを示しなさい。これによって,力学的エネルギーE(t)が
保存されることが分かる。
【答6.1】運動エネルギーの時間変化は
dK(t) dt =m
2 d
dtv(t)2=mv(t)dv(t)
dt =v(t)F(x(t)) (6.3)
となる。最後の等式では,運動方程式(1.1)と,力がxを通して時刻tに依存することを用いた。一方,位置エ ネルギーの時間変化は
dU(x(t))
dt = dU(x) dx
x=x(t)
dx(t)
dt =−F(x(t))v(t) (6.4)
となる。最後の等式で,(6.1)を用いた。dK(t)
dt =−dU(t)
dt より
d dt
(
K(t) +U(t) )
= 0 (6.5)
が得られる。この式はK(t) +U(t)が一定であることを意味する。
≪位置エネルギーの計算方法≫ (6.1)を満たすU(x)は積分 U(x) =−
∫ x x0
F(s)ds
戸田(3.64)
佐本(5.14) (6.6)
によって計算できる。ただし,(6.6)ではU(x0) = 0 となるように位置エネルギーの基準点を選んだ。U(x)に定 数を加えても(6.1)を満たす。すなわち,位置エネルギーの関数形U(x)には定数だけの不定性があることに注意 しよう。
≪力の向きと位置エネルギーの増減≫ (6.1)から分かるように,力F(x)は位置エネルギーU(x)が減少する向き に働く。
【問6.2】位置xにある質点に働く力が
F(x) =−4x3+ 4x (6.7)
である場合について,位置エネルギーU(x)を求めなさい。ただし,x= 1を位置エネルギーの基準点としなさい。
2019力学.7
【答6.2】(6.6)よりU(x)はつぎのように計算される:
U(x) =−
∫ x 1
F(s)ds = −
∫ x 1
(−4s3+ 4s)ds=[
s4−2s2]x
1 =x4−2x2−(1−2) = (x2−1)2. (7.1) 確かにU(1) = 0となっている。
x軸上を運動する質点の動く範囲 '
&
$
% x軸上を力のポテンシャルU(x)から導かれる力 F(x) =−dU
dx(x)のみを受けて運動する質量mの質点を考え る。このとき,力学的エネルギーが保存するので,任意の時刻tで
m
2v(t)2+U(x(t)) =E0 (7.2)
が成り立つ。ここで,初期条件より決まる力学的エネルギーの値をE0とした。運動エネルギーは負にならない ので,質点が運動する範囲は,不等式
U(x)≤E0 (7.3)
を満たす領域の一部または全部となる。
【問7.1】x軸上を力のポテンシャルU(x) = (x2−1)2 のもとで運動する質量mの質点を考える。(力F =−dU/dx=
−4x3+ 4xを受けて運動することをこのように表現する。)時刻t= 0での初期条件が
x(0) =−1, v(0) =v0 (7.4)
であるとき,質点は x軸上のどの範囲を運動するかを答えなさい。
【答7.1】初期条件より決まる力学的エネルギーの値は
E0=1
2mv20+U(−1) = 1
2mv02 (7.5)
となる。
x
2 2
( 1)
U= x -
-1
1
1 O
0 1
E >
A B
0 1
E <
C E F D
図7.1 U(x)の図
(7.3)で決まる領域の端点では運動エネルギーが0,すなわち,物体の速度が0 となる。この位置は
U(x) =E0 (7.6)
より求めることができる.ポテンシャルU(x) = (x2−1)2は x= 0 で極大値U(0) = 1をとるので,物体が運動 する範囲はE0>1の場合とE0<1 の場合では大きく異なる。
(7.3)で決まる領域の端点は,E0>1の場合は x=∓
√ 1 +√
E0 (図7.1の点A,B) (8.1)
となり,一方,E0<1の場合は x=∓
√ 1 +√
E0 (図7.1の点C,D), x=∓
√ 1−√
E0 (図7.1の点E,F)
となる。したがって,物体が運動する範囲は
−
√ 1 +√
E0≤x≤
√ 1 +√
E0 (E0=m
2v02>1の場合) (8.2)
−
√ 1 +√
E0≤x≤ −
√ 1−√
E0 (E0= m
2v02<1の場合) (8.3) となる。
E0<1の場合,点 Fと点D の間の領域(
√ 1−√
E0 ≤x≤√ 1 +√
E0)も (7.3)を満たしている。しかし ながら,出発点x=−1からFDの領域に到達するには,(7.3)を満たさない点Eと点Fの間の領域を通らなけ ればならないので,物体はFDの領域には到達できない。
(参考)≪力学的エネルギーがポテンシャルの極大値に等しいときの運動≫ E0= 1のときはつぎのように運動す る。v0 <0 の場合は,いったん x=−√
2 に行った後,x(t) は t とともに増加し lim
t→∞x(t) = 0 となる。一方,
v0>0の場合は,当初からx(t)はtとともに増加し lim
t→∞x(t) = 0となる。いずれの場合も,物体はx= 0にい くらでも近づくがx= 0に達することはない。.運動する範囲はつぎのようにまとめられる.
−√
2≤x <0 (E0= 1, v0<0の場合) (8.4)
−1≤x <0 (E0= 1, v0>0の場合) (8.5)
1.5
力学的エネルギーが保存されない運動≪重力と速度に比例する抵抗が働く場合≫ (5.1)を拡張して,重力に加えて速度に比例する抵抗
−bdx dt ≡ −bv
高木I (3.12)
戸田p.55
佐本(8.1))
(b >0:定数,単位は[kg/sec])が働く質点の鉛直線上の運動を考える。このとき,運動方程式は md2x
dt2 =−mg−bdx
dt (8.6)
となる。
【問.8.1】運動 (8.6)について力学的エネルギー E(t) = 1
2mv(t)2+mgx(t) を t で微分すると −bv(t)2 になるこ と,すなわち,
dE
dt(t) =−bv(t)2 (8.7)
であることを示しなさい。これによって,質点が運動している限り(v̸= 0)力学的エネルギーが減少することが 分かる。
【答.8.1】dx
dt =vと運動方程式 mdv
dt =−mg−bv を利用すればつぎが得られる:
dE
dt =mvdv
dt +mgdx dt =v
( mdv
dt +mg )
=v(−bv) =−bv2. (8.8)
2019力学.9
≪終端速度≫ 自由落下(5.1)では時刻の経過とともに物体の速さ(速度の絶対値)はどんどん大きくなるが,速 度に比例する抵抗も働く場合には速度は一定値( 終端速度 )に近づく。
簡単な議論によって(8.6)の解については lim
t→∞
dx
dt(t)が存在することがわかるので,これをv∞と置く。t→ ∞
のとき(8.6)の右辺は−mg−bv∞に収束するから左辺も定数に収束する.ただし,左辺=(質量)×(加速度)
であり,加速度が0 以外の定数に収束したら速度は定数には収束しないので,左辺は0に収束しなければならな い。したがって,終端速度は
v∞=−mg b
高木I (3.24)
戸田(3.97)
佐本(8.15)’ (9.1)
である。
(参考)物体の速さが大きくなると速さの2乗に比例する抵抗力が重要になる。
佐本(8.25)
≪力のポテンシャルによる力と速度に比例する抵抗が働く場合≫
力のポテンシャルU(x)から導かれる力F(x) =−dU
dx(x)に加えて,速度に比例する抵抗,
−bdx
dt ≡ −bv ,
高木I (3.12)
戸田p. 55
佐本(8.1) (9.2)
が質点に働く場合を考える。このとき,運動方程式は md2x
dt2 =F(x)−bdx
dt (9.3)
となる。
【問9.1】運動 (9.3)について力学的エネルギー E(t) =1
2mv(t)2+U(x(t))を t で微分すると−bv(t)2 になるこ と,すなわち,
dE
dt(t) =−bv(t)2 (9.4)
であることを示しなさい。これによって,質点が運動している限り(v̸= 0),力学的エネルギーが減少すること が分かる。
【答9.1】
dE
dt = m 2
d
dtv(t)2+dU(x(t))
dt =mv(t)dv(t)
dt + dU(x) dx
x=x(t)
dx(t) dt
= v(t) (
F(x(t))−bv(t)
)−F(x(t))v(t) =−bv(t)2. (9.5)
【問9.2】(9.3)においてF(x) =−4x3+ 4x=− d
dx(x2−1)2 である場合を考える。時刻t= 0での初期条件が x(0) = 1, v(0) =v0 ただし,m
2v20<1 (9.6)
である場合,時間が十分経過した後の質点の位置x∞= lim
t→∞x(t)を求めなさい。
【答9.2】ここでは,時間の経過とともに質点の速度v(t) = dx
dt と加速度 d2x
dt2 がともに0 に収束する(厳密な議 論を行えばこれが正しいことを示せる)と仮定して,x∞の候補をまず見つけよう。
仮定により,t→ ∞のとき(9.3)の左辺と右辺の第2項は0に収束するから,x∞はF(x∞) = 4x∞(1−x2∞) = 0 を満たすものである。したがって,x∞は −1,0,1 のいずれかである。
時刻t の質点の力学的エネルギーをE(t)とする。
E(t)−U(x(t)) = m
2v(t)2≥0 (10.1)
より,時刻t で質点は領域
U(x)≤E(t) (10.2)
の中に存在することがわかる。tとともに E(t)は減少するので,物体の存在できる領域の範囲は狭まり,物体は 位置エネルギーU(x)が極小となる位置に近づいていく。E(0)<1より,時刻t= 0で物体の運動できる領域内 にU(x)の極小は1つしかないので,x∞= 1であることがわかる。尚,E(0)>1の場合は,時刻t= 0 で物体の 運動できる領域内にU(x)の極小が2つ(x=±1)あるので,時間の経過とともに物体がどちらの極小に近づくか はエネルギーの考察だけからはわからない。
(参考) E(0)>1 の場合の振る舞いはかなり複雑である。力学的エネルギーは減少し続けるがE(t)<1 になっ た瞬間に質点が力のポテンシャルの左側の谷(−√
2,0)にいるか右側の谷間(0,√
2) にいるかによってx∞が決ま る。左側の谷にいればx∞=−1,右側の谷にいればx∞= 1である。特別な初期条件の場合にはx∞= 0となる こともある。
x v
図10.1初期条件(x0, v0)とx∞ の関係
図10.1はm= 5,b= 1としたときに初期条件(x(0) =x0, v(0) =v0)とx∞ の関係を示す。(x0, v0)が図の 影をつけた領域にあればx∞=−1,白い領域にあればx∞= 1となる。2つの領域の境界に初期条件がある場合 はx∞= 0となる。2つの領域の境界は不安定な平衡点(x0= 0, v0= 0)の安定多様体と呼ばれる。図10.1には (x0= 2, v0= 0)から出発した軌道(赤の曲線)とE(0) = m
2v20+U(x0) = 1となる(x0, v0)の集合(青の曲線)を 重ねて描いている。
≪熱エネルギーとエネルギー保存則≫ (8.6)や(9.3)のように(速度に比例する)抵抗や摩擦力が働く場合には,力 学的エネルギーは保存されず減少するが,熱エネルギーまで含めて考えるとエネルギー保存則が成り立つことが 知られている。
高木I (5.33)
佐本p. 96
2019力学.11
2 質点の 3 次元運動
高木I p. 92
戸田3-5
佐本Lec. 6, 7
2.1 3
次元の運動方程式≪転置ベクトル,内積,外積≫ この資料ではベクトル(α , β , γ)の 転置ベクトル を(α , β , γ)T で表す。す なわち,
(α , β , γ)T =
α β γ
(11.1)
である。2 つのベクトルa = (ax, ay, az)T,b = (bx, by, bz)T の 内積(スカラー積) は a·b で表し,
外積(ベクトル積) はa×bで表す:
a·b = axbx+ayby+azbz,
高木I (1.11)
戸田(3.126)
佐本(1.24)(11.1) (11.2)
a×b = (aybz−azby, azbx−axbz, axby−aybx)T.
高木I (6.12e)
戸田(5.27)
佐本(11.7) (11.3)
≪ 3 次元空間における運動方程式≫ 3 次元空間を運動する質量 m の質点を考える。時刻 t における質点 の 位置ベクトル をr(t) = (x(t), y(t), z(t))T,質点に働く力をF(t) = (Fx(t), Fy(t), Fz(t))T とすれば,
質点の運動方程式は
md2r
dt2(t) =F(t) (11.4)
となる。これを成分毎に表記すれば md2x
dt2(t) =Fx(t), md2y
dt2(t) =Fy(t), md2z
dt2(t) =Fz(t) (11.5)
となる。速度(ベクトル)v(t) = (vx(t), vy(t), vz(t))T = dr
dt(t)と速さv(t)は,それぞれ,
v(t) = (vx(t), vy(t), vz(t))T = dr dt(t) =
(dx dt(t), dy
dt(t), dz dt(t)
)T
, (11.6)
v(t) =|v(t)|=
√
vx(t)2+vy(t)2+vz(t)2 (11.7)
である。速度 v(t) = (vx(t), vy(t), vz(t))T を利用すれば(11.4),(11.5)は,それぞれ,
mdv
dt(t) =F(t), (11.8)
mdvx
dt (t) =Fx(t), mdvy
dt (t) =Fy(t), mdvz
dt (t) =Fz(t) (11.9)
とも表現できる。運動エネルギーK(t)は K(t) = 1
2m|v(t)|2= 1
2m(vx(t)2+vy(t)2+vz(t)2) (11.10) であり,これをt で微分するとつぎのようになる:
dK
dt (t) =mv(t)·dv
dt(t). (11.11)
【問12.1】(11.11)が成り立つことを示しなさい。
【答12.1】(11.11)の左辺と右辺を個別に計算して,等しいことを示す:
dK
dt = d dt
(1
2m(vx2+vy2+v2z) )
=m (
vx
dvx dt +vy
dvy dt +vz
dvz dt
)
(12.1)
mv·dv
dt = m(vx, vy, vz)T · (dvx
dt , dvy dt , dvz
dt )T
=m (
vxdvx0
dt +vydvy
dt +vzdvz dt
)
. (12.2) (11.11)と運動方程式(11.8)から次式が得られる:
dK
dt (t) =F(t)·v(t).
戸田(3.139)
佐本(6.20) (12.3)
2.2
力のポテンシャルによる3
次元運動保存力
高木I (5.38)
戸田(3.153)
佐本(7.1) '
&
$
%
位置r= (x , y , z)T にある質点にはたらく力が質点の位置の関数である場合,すなわち,
F(r) = (Fx(r), Fy(r), Fz(r))T (12.4) である場合を考える。3つの関数Fx(r),Fy(r),Fz(r)が1 つの関数U(r)から
Fx(r) =−∂U
∂x(r), Fy(r) =−∂U
∂y(r), Fz(r) =−∂U
∂z(r) (12.5)
によって導かれるとき,U(r)を位置エネルギーあるいは力のポテンシャルと呼ぶ。関係式(12.5) を満たすU が存在するような力 F を 保存力 と呼ぶ。質点に保存力のみが働く場合,質点の力学的エネルギー
E(t) =1
2m|v(t)|2+U(r(t)) (12.6)
は保存される。(運動の過程で一定の値をとる。)
【注】ナブラと呼ばれるベクトルの形をした微分演算子∇= ( ∂
∂x, ∂
∂y, ∂
∂z )T
を用いると,(12.5)は
F(r) =−∇U(r) (12.7)
とまとめて書ける。なお,∇U(r)はU(r)の 勾配(gradient) と呼ばれ, gradU(r) と書かれ ることもある。
【問12.1】(12.6)のE(t)をt で微分して0になることを示しなさい。
【答 12.1】運動エネルギーの時間微分は(12.3)となる。位置エネルギーの時間微分は多変関数の合成関数の微分法
三宅p.86定理4.2.4 によってつぎのように計算できる:
dU(r(t))
dt = ∂U
∂x(r(t))dx dt +∂U
∂y(r(t))dy dt +∂U
∂z(r(t))dz dt
(12.5)
= −Fx(r(t))vx(t)−Fy(r(t))vy(t)−Fz(r(t))vz(t) =−F(r(t))·v(t). (12.8) 以上より d
dtE= d dt
(
K(t) +U(t) )
= 0となることがわかる。
2019力学.13
.
Ax
Ay
Az
×
Bx
By
Bz
=
AyBz−Az By
Az Bx−Ax Bz
AxBy−AyBx
1次元運動では位置 xの関数である力F(x)に対してF(x) =−dU
dx(x)となるポテンシャルが存在するから,
F(x) は必ず保存力であるが,3次元運動では力F が位置rの関数であっても,いつでも保存力になるわけでは ない。
保存力であるための条件 '
&
$
% 位置rの関数である力F(r)が保存力であるための必要十分条件,すなわち,力のポテンシャルを持つための
必要十分条件は
∂Fx
∂y (r) = ∂Fy
∂x (r), ∂Fy
∂z (r) =∂Fz
∂y (r), ∂Fz
∂x (r) = ∂Fx
∂z (r)
佐本(7.25) (13.1)
が成り立つことである。
【注】位置rの関数である力F(r) = (Fx(r), Fy(r), Fz(r))T の 回転(rotation) は外積を利用して
∇ ×F(r) = (∂Fz
∂y (r)−∂Fy
∂z (r) ∂Fx
∂z (r)−∂Fz
∂x (r) ∂Fy
∂x (r)−∂Fx
∂y (r) )T
(13.2)
と定義される。回転(rotation)は rotF(r) と書かれることもある。回転を使えば条件(13.1) は
∇ ×F(r) =0 (13.3)
と表現できる。
【問13.1】力F(r) = (Fx(r), Fy(r), Fz(r))T に対して(12.5)が成り立つポテンシャルU(r)が存在すれば,F(r)
は (13.1)を満たすことを示しなさい。
【答13.1】2次の偏導関数が偏微分の順序を逆にしても変わらないこと
三宅p.92定理4.3.1 から,つぎのように示
される:
∂Fx
∂y −∂Fy
∂x = ∂
∂y (
−∂U
∂x )
− ∂
∂x (
−∂U
∂y )
= 0, (13.4)
∂Fy
∂z −∂Fz
∂y = ∂
∂z (
−∂U
∂y )
− ∂
∂y (
−∂U
∂z )
= 0, (13.5)
∂Fz
∂x −∂Fx
∂z = ∂
∂x (
−∂U
∂z )
− ∂
∂z (
−∂U
∂x )
= 0. (13.6)
【問13.2】
佐本p.103
以下に与えられる力が保存力かどうかを判定しなさい。また,保存力の場合は力のポテンシャルを求めなさい。
(1) F(r) =
(
7yz ,7zx+ 5z ,7xy+ 5y+ 6z )T
, (13.7)
(2) F(r) =
(
ky ,−kx , 0 )T
, kは定数. (13.8)
【答13.2】
(1)
∇×F(r) =
(∂(7xy+ 5y+ 6z)
∂y −∂(7zx+ 5z)
∂z , ∂(7yz)
∂z −∂(7xy+ 5y+ 6z)
∂x , ∂(7zx+ 5z)
∂x −∂(7yz)
∂y )T
= (7x+ 5−7x−5, 7y−7y ,7z−7z)T =0 (13.9)
となるので,この力は保存力である。
次に,力のポテンシャルを求める。まず,∂U
∂x =−7yzの両辺をxについて積分する:
U =−7
∫
yzdx=−7xyz+C1(y, z). (14.1)
ここで,C1(y, z)はxの積分に対する積分定数なので,yやzの関数である可能性がある。次に,上式を
∂U
∂y =−7zx−5zの左辺に代入する:
∂U
∂y =−7xz+∂C1
∂y (y, z). (14.2)
これより,C1(y, z)が満たすべき条件
∂C1
∂y (y, z) =−5z (14.3)
が得られる。この式をy について積分して C1(y, z) =−
∫
5z dy=−5yz+C2(z) (14.4)
が得られる。C2(z)はyの積分に対する積分定数なので,zの関数である可能性がある。さらに,得られた 結果U =−7xyz−5yz+C2(z)を ∂U
∂z =−7xy−5y−6zの左辺に代入すると
∂U
∂z =−7xy−5y+dC2(z)
dz (14.5)
となり,C2(z)が満たすべき条件,dC2
dz (z) =−6z,が得られる。この式をzについて積分して
C2(z) =−
∫
6z dz =−3z2+C (14.6)
が得られる。C は積分定数である。以上より,力のポテンシャルは
U(r) =−7xyz−5yz−3z2+C (14.7)
となる。C は任意の定数である。
(2)
∇×F(r) = (∂0
∂y −∂(−kx)
∂z , ∂(ky)
∂z − ∂0
∂x, ∂(−kx)
∂x −∂(ky)
∂y )T
= (0,0,−2k)T ̸=0 (14.8) となるので,この力は保存力ではない。
保存力ではないので,力のポテンシャルは存在しないが,無理に(1)と同じように積分してみる。まず,
∂U
∂x =−kyをxについて積分する:
U =−k
∫
ydx=−kxy+C1(y, z). (14.9)
次に,上式を∂U
∂y =kxの左辺に代入する:
∂U
∂y =−kx+∂C1
∂y (y, z). (14.10)
これより,C1(y, z)が満たすべき条件は
∂C1
∂y (y, z) = 2kx (14.11)
となるが,C1(y, z)はyとzの関数なので,この等式を満たすことはできない。従って,F(r) =−∇U(r) となるU が存在しないことが確かめられた。