• 検索結果がありません。

「デザイン都市・神戸」に向けたまちづくりの枠組み

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "「デザイン都市・神戸」に向けたまちづくりの枠組み"

Copied!
22
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

∼デザインをまちづくりに生かすための研究会報告書(案)∼

1.はじめに ∼今なぜ、デザインなのか∼・・・・・・・・・・・・・・・・・・1

(1)デザインが意味すること (2)都市戦略としてのデザインとは

2.創造都市戦略としての「デザイン都市・神戸」

・・・・・・・・・・・・・・・・・3

(1)神戸らしいデザインとは (2)創造都市戦略「デザイン都市・神戸」

3.まちづくりの施策展開の視点と方向性・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8

(1)施策展開の視点 (2)施策展開の方向性

4.

「デザイン都市・神戸」を進めるための「ひと」

「場」

「しくみ」づくり・・・・・・14

(1)「デザイン都市会議」の設立 (2)各事業主体の取り組み (3)時間軸の考え方

(4)

モデル区域の設定

5.おわりに・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16

資料.他都市の事例(略)

(2)

1.はじめに ∼今なぜ、デザインなのか∼

(1)デザインが意味すること

デザインは多様な意味を持つ言葉である。

デザインを構成する要素に分解すると、形態、色彩、材質となる。「Oxford Advanced Learners Dictionary」によると、Design は Plan, Pattern,Intend の 3 つの意味に分類して いる。Plan は形を生み出す構造としての計画、設計、Pattern は形や意匠、Intend は基底と なる意図、意味である。 この 3 つの意味を参考に、当研究会ではデザインを次のように定義する。 デザインとは、機能性、安全性、経済性などがバランスよく調和された「もの」を創り出 すことをいうが、当研究会では、さらに、経済活動、文化活動、まちづくりにおいて、ある 「構想」のもと、「企画・計画」を立て、さらに具体的な「設計」をしていく一連の行為も デザインととらえる。 デザインの根底には意図、意思や思いが存在する。意図、意思や思いがあるデザインは、 豊かさや心地よさを生み、人を動かす、人に感動を与える力になる。このことが、人々を引 きつけ、さらなる活動を生み出し、新たな関係性を創造する。 こうしたデザインが集まったとき、個々がばらばらのデザインでは、神戸の街の総体とし てのメッセージを発信することが出来ない。さまざまな人が協働で、同じ意思、思いのもと、 将来を見据え、創りだされる新たな関係性は、神戸の街のイメージを発信し、再創造の原動 力となる。 このようなデザインの役割に着目し、当研究会では、デザインの力が都市戦略の大きな推 進力となると考え、デザインをまちづくりに活かすための視点や方向性について検討を行っ た。 (2)都市戦略としてのデザイン 神戸商工会議所の提言「デザイン都市・神戸の 実現に向けて」(平成 18 年 7 月)の中に、「かつ て世界に冠たる貿易港として燦然と輝いていた 神戸は、日本中を魅了する多様性に満ち、人々の 感性が触発される魅力的なデザイン都市であっ たことは間違いない」との指摘があるが、個性あ ふれる都市であった。 この個性を生かし、これまで、生活全般をファ ッションと捉えたファッション都市づくり、コン ベンションの推進、住み、訪れてみたい、高品質なまちづくりであるアーバンリゾート都市 づくりなど、神戸の産業の振興と新たな魅力をつくる都市活性化の取り組みを展開してきた。

(3)

12年前、神戸は震災により甚大な被害を受けたものの、住まいや生活、街の復興をめざ してさまざまな取組を集中的かつ精力的に行い、その結果、震災を乗り越え復興を遂げつ つある。その過程での経験や教訓は、深く市民の中に刻み込まれている。 神戸が、震災復興に取り組んできた時を過ぎ 確立されている神戸らしさから創り出され る都市ブランドは、様々な都市間の比較調査 からも伺えるように全国的に定着しており、 今でもその輝きは失われていない。 しかし、国内外の各都市では競って 、改めて現在の状況を見ると、震災前から 他都市 「地域ブランド調査」(ブランド総合研究所)第1位札幌市、第2位神戸市 向」「独自性」が評価された。) 国内外でデザインを中心に都市再創造に取り組んできた代表的な都市としては、1988 年 内外では都市の存続をかけて、デザインを生かし再 生 にはない街の個性を発掘し、魅力的な都市づ くりが進められており、地位が相対的に低下 しつつあるのも事実である。 <参考> ①2006年9月 ②2006年9月「地域ブランド力調査」(日経リサーチ) 近畿版第1位京都市、第2位神戸市(「居住志 デザイン都市宣言を行い、都市デザインを推進し、2006年度グッドデザイン金賞を受賞 した横浜市、世界デザイン博覧会を契機に、1989年デザイン都市宣言を行い、世界3大デ ザイン会議の開催や国際デザインセンターの建設などに取り組んだ名古屋市、金沢21世紀 美術館をはじめとする美術館群構想による文化創造へ取り組む金沢市、国際的に著名な建 築家によるデザイン性に富む施設の整備による文化都市戦略を展開したスペイン・ビルバ オ市などがある。(22ページ参照) 以上の都市に代表されるように、国 の試みが続けられている。神戸市では震災後、コンパクトタウン構想や美しいまちづく りなど様々な都市戦略を行ってきたが、都市再創造を試みた他都市の取り組みに対して危 機感をもつ必要があり、復興を遂げつつある今、神戸らしさに磨きをかける新たな都市戦 略が求められている。

(4)

2.創造都市戦略としての「デザイン都市・神戸」

(1)神戸らしい「デザイン」とは 神戸は、山と海と坂という特徴的な地形と、開港により外から入ってきた新しい文化と産 業化が進み、そこで住み、働く神戸市民の気質と相まって神戸らしさを形成してきた。さら に、新たな取り組みも生まれつつある。(17ページ参照) この取り組みを「空間」「経済」「文化」の分野ごとに、神戸らしいデザインを考えてみる。 ① 「空間」のデザイン−山、海、都心、地域− 神戸の都心は、山と海に囲まれ、恵まれた自然環境を持ち、そのコントラストが特徴的な 「空間」があり、洗練され、ファッショナブルな雰囲気を 持つが、その代表的な地域の一つが旧居留地である。 旧居留地はイギリス人によって設計され、外国人の居住 や事業活動の中心地であったが、近代洋風建築の業務ビル が多く建設され、神戸の中枢業務地となった。東京への本 社機能の流出の流れがあったものの、この地区の風格があ り落ち着いた雰囲気は街のブランドとして高く評価され ており、洗練された店舗の集積と業務中枢機能が街の魅力 づくりと活性化につながっている。 神戸市では、昭和53年、全国に先駆けて制定された神戸 市の条例は各都市の条例制定のモデルとされた。神戸市の 条例では、景観形成に保全(まもる)、育成(そだてる)、 創造(つくる)を基本に、景観形成基本計画の策定、景観 形成地域などの指定や景観審議会の設置などを規定している。景観形成は地域住民の地道な 活動を通じてはじめて実現するものである。 先駆的な取り組みを進めてきた神戸だが、高度成長期以降の都市開発や震災後の復興過程 で、都市空間の画一化と個性の希薄化が進行してきた。こうした都市空間のあり方を検討す るにあたり、まず、街と海のつながりを回復し、都心ウォーターフロントの再生と眺望景観 に取り組むことが重要である。 神戸の玄関である三宮周辺は、メインロードであるフ 備され、四季折々の花が楽しめ、三宮中央通りではオ ープンカフェで街の雰囲気を楽しむことが出来る空 間が整備された。しかし、三宮駅に初めて降り立った 来訪者にも分かりやすく、人の流れをスムーズに確保 する、人に優しい環境づくりや、街の雰囲気に調和し たサインの整備や広告の規制、タバコのポイ捨てなど マナーの向上が課題である。また、南に海が広がり、 六甲山を背景とした地形からなる明るく開放的な景観 層建築物、とりわけ東西に長い建物の建設により、海への眺望、山への眺望が遮られ、神戸 らしさが街から薄れてきた感があるが、新たな視点からの眺望確保の方策が必要である。 ラワーロードは歩道が歩きやすく整 は神戸の特徴である。しかし、近年高

(5)

また、地域におけるわが街の空間に関しては、地域の個性を大切に、特色ある街が地域の 力で創られてきたことが神戸の良さである。市民の主体的参加による景観形成市民協定が先 駆的に取り組まれ、まちづくり協定や建築協定も市民が主体的に関わるプロセスにより進め られてきた。その結果、市民の地域への愛着と一体感、地域の自立性の向上など、地域力が 醸成されつつある。このような地域の取り組みを、様々な地域でさらに進めていくことが課 題である。 空間のデザインにおいては、街が持つ本来の美しさも大切にしながら、自然や歴史が息づ き、歩くこと、人と触れ合うことなど基本的な市民の生活や暮らしが満たされる、住む人に とっても、来訪者にとっても心地よい空間を創ることが求められる。 ② 「経済」のデザイン−生活文化とものづくり− 欧米では、政府機関による積極的なデザイン振興策が採用されており、また、大学におい てもデザインに関するビジネススクールがあるなど、教育現場で戦略的にデザインを活用す ることを学んでいる。この背景としては、東南アジア諸国をはじめとして各国で民間企業が 競争力をつける中、経済面、品質面での差別化に加え、付加価値を高めるためにデザインを 活用して比較優位を保つ戦略を採用しているためである。 また、中国、韓国、シンガポールなどアジア諸国においてもデ ザインの活用に注目が集まっている。世界の工場である中国では、 製品の付加価値を高めるため、デザインを新資源とし、多くのデ ザイン大学が設立されている。また、韓国では、大手企業のデザ イン力は国際的にも評価されており、国を挙げてデザイン振興に 取り組んでいる。シンガポールにおいても国家戦略の1 つとして デザイン振興策を採用し、都市デザインと経済のデザイン化に取 り組んでいる。 日本では、今年 50 年を迎えたグッドデザイン賞は、 優れたデ ザイン を社会に広めていくことで、より豊かな社会の実現を目 指していくもので、企業、デザイナーや行政などにより進められ、 デザイン力の向上や啓発に貢献している。 神戸においては、重厚長大産業中心の産業構造から、豊かな生活 文化を引き継いだ生活文化関連産業や既存産業の高付加価値化 への転換を図ってきたが、全国的な均一化の流れにのまれつつあ り、また、経済の活性化が求められているのが現状である。 このような中で、企業ブランドの確立のためにデザインを経営 戦略に取り入れる企業が注目されている。 (財)日本産業デザイン振興会が、産業界、デザイン界、教育界などの専門家からなるフ ォーラムを結成し、①企業経営者がデザインの重要性を認識し、実践していること、②デザ インを通じ、質の高い商品やサービスを提供し、また、社会とのコミュニケーション活動を 的確に行っていることなどを基準とし、対象企業に「デザインエクセレントカンパニー賞」 を授与しているが、その中に神戸市及び周辺に本社を置く㈱ロック・フィールド、 ㈱フェリシモと㈱アンリ・シャルパンティエの3社が選ばれた。

(6)

さらに、ものづくり産業や生活文化産業でも取り組みが進んでいる。 市内のものづくり企業の多くが下請け企業であり、最終製品を作っていない場合もあり、 付加価値の向上を「技術」に置く企業が多かった。しかし、デザインで付加価値を高める経 営に踏み出すには投資とリスクが伴うものの、徐々にではあるがデザインの重要性を認識し て企業内デザイナーを採用する企業や大学等と共同でデザイン開発に取り組む企業が出て いる。 また、生活文化産業は神戸の特徴であり、企業と人材の集積の厚みだけでなく、品質やデ ザインに関しても確かな自分の価値観を持つ消費者の存在も強みである。豊かな成熟社会に おいて生活者が求める感性やこだわりの視点を取り入れ、品質とデザイン重視の経営に徐々 に転換し自社ブランドを確立した企業もあり、グッドデザイン賞やグッドデザイン賞ひょう ごを受賞する企業もある。 〔2006 年グッドデザイン賞受賞市内企業〕 ㈱アシックス、川崎重工業㈱、㈱フェリシモ、富士通テン㈱、P&G など 〔2005 年グッドデザイン賞ひょうご受賞市内企業〕 兵神装備㈱、㈱エフエスエル、オリバーソース㈱ など また、市内のデザインに関する教育機関は芸術系の大学、短大、工学部系の学部、専門学 校などがある。それらの機関ではプロダクトデザイン、環境デザイン、建築デザイン、ファ ッションデザイン、ビジュアルデザイン、メディアデザインなど、デザインの全領域を網羅 した教育・研究が行われ、大阪、東京、神戸などに立地するサービス業、製造業、卸売・小 売業、建設業などで、商品開発や設計などに従事する人材を輩出している。また、産学連携 により、製造業やサービス業などとともにデザイン開発、マーケティング開発など実践的な 取り組みも徐々に進んでいる。 ③ 「文化」のデザイン−市民が創る− 文化は市民の中から生まれる。 神戸は、開港以来、西洋のおしゃれな文化や 技術の高い製品を受け入れ、神戸らしい、神戸 ならではの新たな文化やライフスタイルを生 み出して、全国に発信してきた。新しいものを 受け入れる自由で進取の気質は神戸市民の特 性であり、全国に先駆けた消費者活動や地域貢 献の実践などが神戸で発祥したのも、時代を先 取りする神戸市民の気質によるところが大きい。 また、震災で大きな被害を蒙ったものの、その経験をばねとし、新たな力に変える知恵を 持ち合わせているのも神戸市民である。新たな文化・芸術活動や地域に誇りを持てる活動や 社会的に意義ある活動で起業するなど様々な活動が震災後生み出されている。 楽団あぶあぶあでは、障害を持つ青年が音楽を通じて自己実現や社会参加をめざしており、 これまで100 回以上演奏会を行った。野田北ふるさとネットでは、震災復興の過程で培われ た活動を通じて発足した地域内での緩やかなネットワークのもと、地域情報誌の作成や事業 の企画運営を行っている。

(7)

また、神戸市内の大学数は政令指定都市第2 位(資料 平成 17 年度学校基本調査結果) であり、新たな知識・知恵の創造の場として、また、地域の知恵袋としてその役割が期待さ れている。灘区役所跡地では神戸大学が主体となり、子育て支援を中心に地域のコミュニテ ィ活動がされており、神戸芸術工科大学では、地域や企業と関わりながら、デザイン製作に 取り組んでいる。 このような市民によるさまざまな活動を、新たな 活動につなぐのがデザインである。 また、神戸の歴史は開港から語られることが多い が、開港以前にも長い歴史が刻まれている。市内に 点在する古くからある風格ある建築物は、保存・活 用を図りながら、震災後建設された新しい建築物と の調和を図ることが重要である。旧北野小学校(昭 和6 年建築)は校舎を保存活用し「神戸ブランドに 出逢う体験型工房」として再整備し、神戸らしい生 活文化の情報発信の拠点となっている。また、海外 移住の基地であった「国立移民収容所」(神戸移住 センター)の建物(昭和3 年建築)を活用し、NPO 芸術と計画会議(C.A.P)が市民に芸術プログラム を提供する事業を進めている。このように既存の建 築物を活用して、市民の創造的活動の輪が広がっている。 (2)創造都市戦略としてのデザイン これらの神戸らしさから創られたデザインは、市民や企業、行政などの時代を先取りする 様々な活動から、知恵を出し合い創り育てられたものであるが、今あるものを守るだけでな く、新たな神戸らしいデザインを生み出すこと、つまり、安全・安心、健康を確保すること を前提として、「空間」「経済」「文化」のデザインが、それぞれの関係性を創りながら(= つなぐ)、新たなものを生み出すエネルギーを持つこと(=触媒)。これが神戸らしさをデザ インの力で磨きをかける創造都市戦略(「デザイン都市・神戸」)である。

持続力

魅 力

文化

経済

空間

デザイン

活 力

(8)

震災前、神戸は「アーバンリゾート都市」を目指して、住み続けたい・訪れてみたい、高 品質なまちづくりに注力してきたが、震災後はその取り組みよりも復旧・復興を優先せざる を得なかった。復興を遂げつつある今、アーバンリゾート都市の理念も取り入れながらこの 戦略を進めることにより、さらに創造的で安全・安心なまちをつくっていく。 「デザイン都市・神戸」を推進することで、市民にとって神戸の街に住むことが快適であ り、誇りを持てること、何よりも街に暮らすことが幸せと感じることができ、また、来訪者 にとっては、訪れたくなる魅力的なまちとなることを目指す。このことがさらなる都市のイ メージアップにつながり、経済活動の好循環にもつながると考えられる。このように内(市 民)には神戸を誇りに思う街にし、外(集客、企業誘致)には都市間競争に打ち勝ち、選ば れる都市になるためのプロモーションをあわせて行うものである。 神戸2010ビジョンで将来像として位置づけた「豊かさ創造都市こうべ」は、将来に向けて めざす新しい価値として「クオリティ・オブ・ライフ(市民生活の豊かさ)」の観点に立っ た 神戸らしい豊かさ を位置づけ、それを創造的に実現していこうとする都市づくりの考 え方である。 神戸らしい豊かさ は、「神戸を共有するひと」すべて(市民、大学、経済界など)が 神戸を基盤とする活動の中で生み出していく新たな価値である。 「デザイン都市・神戸」の創造都市戦略は、2010ビジョンの5つの重点テーマのうち、 ①ユニバーサル社会・文化(人と人とのつながりのあるユニバーサル社会と文化の創造) ②産業・観光(産業・観光による都市の魅力・活力の向上) ③環境・都心(持続可能な都市環境の形成) の分野を中心として進めるものである。

「デザイン都市・神戸」

経 済

文 化

空 間

2010 年ビジョン:神戸の将来像「豊かさ創造都市こうべ」

人と人との つながりのある ユニバーサル 社会と 文化の創造 持続可能な 都市環境の 形成 安心で健やかな 地域社会の 実現 産業・観光に よる 都市の 魅力・活力の 向上 あらゆる危機に 対応できる まちづくりの推進

重点テーマ

(9)

3.まちづくりの施策展開の視点と方向性

(1)「空間」のデザイン 〔施策展開の視点〕 * 街の空間は、公と私と中間領域(セミパブリック)で構成され、空間像の共有のもとに、 様々な意図を持つ多くの主体を調整、ある方向に規制・誘導し、空間の演出を総合的、効果 的、継続的に展開することで空間の価値の向上を図ることが重要である。 * 空間の価値の向上は、安全・安心への対応、少子高齢化の進展、環境問題への取り組み、地 域社会の危機など様々な課題がある中で、持続性を保つために優先すべき神戸らしい豊かな 「生活の質」と個性ある都市空間の形成とが両立することが重要である。 このため、「おもいやり、気配りのなされたデザイン」に囲まれ誰もが安全・安心で健康 に暮らせる都市空間と、「海」と「山」の保全・活用と、街の魅力を点から線、線から面へ とつなぐことである。そのため個々の価値観ではなく、共通の価値観を担保するために、一 定の枠組みとルールづくりが必要になる。 * 神戸の中心であり、ゲートウェイでもある都心及びウォーターフロントの空間のデザイン を進めるとともに、市民の豊かな生活のための地域の空間のデザインをあわせて進める。 〔施策展開の方向性〕 ① 山と街と海をつなぐ ○ 神戸市都市景観審議会において、大規模建築物等の景観誘導基準や都心ウォーターフ ロントの景観形成について検討が重ねられている。さらに、これまでは近景を中心に都市 景観行政が進められてきたが、今後は六甲山系から南斜面への眺望に代表される神戸らし い眺望景観の形成や街中においても山と海を感じることができる眺望軸(「ビューコリドー ル」)を提言するなど、新たな景観政策を検討し、一層の都市魅力の向上を図る。 また、六甲山からの風の通り抜けや都市化による熱環境の改善など環境にも配慮するこ とも重要である。 さらに、公共的な事業においても、デザイン性の向上を図る必要がある。設計の委託に 際しては、設計の内容や質を重視して選定することが望ましい。また、事業コンペにおい てデザイン性を重視することも重要である。 ○ 神戸の夜景は、昼とは異なる魅力を演出 する大変重要な要素である。神戸の街は、夜 が早く、賑わいに欠けるといわれているが、 山裾から海にかけて広がる街の明かりと歴 史的建築物や神戸を特徴づける神戸大橋や 明石海峡大橋などのランドマークの効果的 なライトアップにより、昼とは異なる幻想的 な空間の演出がされている。さらに、神戸空 港の開港により生まれた 海からの景観 空 からの夜景 を含め、新たな夜景スポットの開拓とさらなる演出を進める。

(10)

○ 山と海に近い都心の特性を生かした回遊性向上のため、①三宮駅周辺の歩行者動線の 三層ネットワークや阪神三宮駅の整備など三宮駅周辺のターミナル機の強化、②都心部と ウォーターフロントの歩行者動線の確保、③LRTなど環境的に持続可能な交通体系の検 討を進める。併せて、中突堤周辺地区の再開発に加え、新港突堤西地区やポートアイラン ド西地区で魅力ある親水空間を整備することや北野地区、旧居留地等まちの個性を活かし た取り組みを進めることでさらに回遊性を促進する。 また、新神戸から三ノ宮駅を経由し神戸空港までの南北軸は、神戸のシンボルロードに ふさわしい雰囲気を持った快適な空間としていく。 ② 山のみどりと街のみどりをつなぐ −世界に誇る「みどりの中に息づく街・神戸」の推進− 神戸市の市民 1 人あたりの公園面積は 16 ㎡であ り、みどりは街の大きな財産であるが、街中ではみ どりがなかなか実感されていない。シンガポールは、 1960 年代から戦略的な緑化と維持管理、民間開発に おける緑化規制を戦略的に行った結果、世界から評 価されるガーデンシティを築いた。デザインされた みどりを取り入れ、みどりの中に息づく街を戦略的 に進め、すべての人に快適で、心地よい空間を提供 する。 山と街のみどりをつなぐ軸としては、道路と川が 中心である。「新神戸∼三宮∼ポートアイランド∼ 神戸空港」までのシンボル軸、鯉川筋や京町筋など の南北軸や新神戸駅から南に伸びる生田川などで、 街路樹の整備や飾花を集中的に進める。 さらに、市街地で民有地や公共空間を活用した身 近な公園的な空間の確保や六甲道南公園等で行わ れているような市民が協働で管理するオープンス ペースの確保など、市民生活の中にみどりを取り入れた取り組みを進める。 ③ 地域の思いをつなぐ。−美しく誇りの持てるわが街デザインを育てる− 地域の空間は、市民の求める価値を創り出し、快適なものが求められるが、地域の空間 に関して市民が意見を交換したり主体的に発言する場は少なく、建築協定や地区計画など 手法があっても市民の合意を得るためのハードルが高いため、専門家や民間企業と協働で わが街のデザインに市民が参加するシステムを検討する。 また、景観法の制定により、区域を指定し、地域特性に応じて独自の規制が出来る仕組 みが法的に整えられたが、景観形成は、地域のまちづくり活動を通じて、地域住民の合意 があってはじめて実現されるものである。従来からの景観施策に加え、景観法を活用した 協働による景観まちづくりを推進し、地域性豊かな街をつくることを検討する。

(11)

さらに、神戸の街を美しく洗練された街とし て維持、継承していくためには、市民、企業、 行政が力を合わせ、日常の清掃やたばこやごみ のポイ捨ての禁止と不法投棄の禁止、不法駐輪 の禁止などマナーの育成に努めることが重要 である。 ④ 思いやりをつなぐ。−誰にも優しい街− 神戸のユニバーサルデザインは、震災からの復興過程で市民が人と人とのつながりを大 切にし、支えあい、主体的に街づくりに関わる姿勢から発展してきたことに特徴がある。 こうべUD広場(こうべユニバーサルデザイン推進会議)の取り組みをはじめ、「北野・ 山本地区をまもり、そだてる会」の 思い合いのまちづくり や長田区の「長田区ユニバ ーサルデザイン研究会」やチャレンジドの社会参加を目指した社会福祉法人「プロップス テーション」取り組みなど、今後も市民主体の取り組みを支援する。 多くの市民が利用する駅や駅舎、建物などの公的な施設や道路、公園など誰もが安全に 利用できるよう整備を推進する。特に、①多くの人が行き交う道路に関しては、十分な幅 員の確保、歩道の段差解消、照明、サインなど快適に歩ける空間をつくり、誰もが歩きや すい歩道の実現、②市民に親しまれる身近な公園を目指し、ユニバーサルデザインに配慮 した公園、③観光客に優しい観光地のユニバーサルデザイン化を進める。 (2)「経済」のデザイン 〔施策展開の視点〕 * 神戸の中小企業の優れたものづくりの「技術」を生かした新製品 の開発や第二創業などの取り組みに対し、デザイン性の観点から製 品の付加価値を高め競争力を高める。そのためには、デザインを経 営戦略に位置づけ、製品のデザインだけでなく販売戦略やオフィス 環境なども含め、総合的に取り組むことが重要である。 * 神戸らしい洗練されたライフスタイルを提案している生活文化に 関わる企業は、さらにデザイン性に優れたオリジナルな商品を自社 ブランドとして確立し、神戸発のメッセージを広く発信し、神戸へ の注目度を高めることで、新たな生活文化の提案力のある企業の集 積を促進する。 * 各企業がデザイン力を高めることに加え、大学や支援機関、企業 同士がパートナーシップを築き、産学官民が連携して情報発信する ことでデザイン都市を推進する。 * デザイナーやクリエーターと企業との出会いを促進するため、作 品の発表や製品化・販路開拓につなぐ場の提供、ファッションやも のづくりなど分野を超えたネットワーク化を進めることで、ビジネ スチャンスにつながる機会をつくる。

(12)

〔施策展開の方向性〕 ① ものづくりの「技」と「デザイン」、「生活文化」と「産業」をつなぎ、世界へつなぐ。 ものづくり産業へのデザイン化の支援事業は、新たな産業支援策として、今後重点的に進 めるべき分野である。生活文化産業は、多様化する消費者へのニーズに応え、より付加価値 を高める戦略的なデザインの活用が大変重要である。このため、企業がデザインを導入する ことに対する支援を進め、神戸らしいデザインを発信する。 ア)デザインを活かした製品づくりへの支援 ・ 市内の大学(神戸芸術工科大学や神戸大学など)や兵庫県立工業技術センター、財団 法人新産業創造研究機構などと連携を進め、中小企業へのデザインに関するセミナーや、 相談機能の充実と産学連携による試作品、製品開発、マーケティング支援を行う。これら の支援は 17 年度より「KOBE 工業デザイン・ナビ事業」として取り組んでいるがこの事業 をさらに充実させていく。 ・ 新たな取り組みとして異分野のデザイナーの活用などを進めるとともに、中小企業が 製品づくりにデザインを活用しやすいよう、デザインの初期導入への支援、デザイナーな どの専門家の派遣など、支援の仕組みを検討する。 イ)デザイン・インターンシップ 大学生や専門学校生がデザイン事務所、もしくは企業で実務を学ぶ機会をつくる。 ウ)デザインに関する賞の創設 優れたデザインを表彰する賞は既に設けられているが、例えば①デザイン導入の効果を 評価すること、②今後の市民の関心の高まることが予測されるユニバーサルデザインや環 境デザイン(環境に配慮したデザイン)など新分野への取り組みや③デザインを通じて観 光、福祉、まちづくりなどの社会的活動にまで広げた活動など、新たな視点でデザインを 評価する賞の創設を検討する。 エ)情報発信 新製品開発におけるデザイン性の向上とともに、販売戦略や広報戦略も含めた取り組み を進めている事例を紹介する。また、神戸らしいデザインを活用した製品を発掘し、イン ターネットなどの媒体を活用し、広く情報発 信する。 また、「北野工房のまち」や「シューズプ ラザ」などの拠点を活用して、神戸の生活文 化関連産業を情報発信する。 日本で最大級のファッションイベントと して定着している「神戸コレクション」事業 は、市内ファッション関連企業の参加を得て、 上海で神戸ブランドのプロモーションを行 うが、このような「神戸ブランドの発信」事業に対し支援する。 神戸の高い品質の製品は世界マーケットの中でも先端の分野を目標にすべきであり、そ のためにもケミカルシューズ、洋菓子や真珠をはじめとする神戸の地場産業や中小企業は デザインを生かした国際見本市に参加するなど、世界とつながる戦略を検討する。

(13)

② 人材の活躍の場を創り、ビジネスにつなぐ。 デザイナーやクリエーターが企画した作品をセレクトショップや百貨店が審査し、販売 に結び付ける取り組み(「ドラフト!」(財)神戸ファッシ ナーやクリエーターの作品を展示・販売し、販 路を開拓する目的で国産上屋にオープンした TEN×TEN など、デザイナーやクリエーターの支 援を進める新たな取り組みが始まっている。ま た、技術と経営の融合の必要性と同様、デザイ ナーが経営感覚を身につけることも重要であ る。このような取り組みを広げていき、人材育 成と産業の連携を図る。 ョン協会)や、昨年 7 月デザイ (3)「文化」のデザイン 施策展開の視点〕 ミュニティ活動が盛んである。さらに、震災の経験からボランティア活 ある歴史を「守り」、人と人とのつながりから生まれるコミュニティ活動を「育 を超える人が訪れる。神 施策展開の方向性〕 ① 歴史を未来へつなぐ。 る歴史的資産の保存については、その意義や価値は理解されるも 史的な資産(例えば、西国街道など)を 〔 * 神戸は歴史的にコ 動や NPO 活動が盛んになり、その活動が注目を集めている。市民自らが創造的な活動を通じて 可能性を拓くことは、生活の質を豊かにするものであり、神戸の街が持つ創造性が高まること につながる。 * 街の記憶で て」、格好良く、おしゃれで、市民の豊かな感性と神戸の多様性を活かし、新しい文化を「創 る」ことが重要である。 * 神戸には毎年 2 千万人 戸の街が多くの人を惹きつけ、新たな出会いとつな がりは新しい生活文化と産業を生み出す原動力で ある。多くの人を神戸に惹きつけるためにも、神戸 の街や暮らしのデザインを知ってもらうこと、そし ておもてなしの気持ちを持つことが重要である。 〔 まちの重要な資源であ のの、経済性や機能性などの理由により、存続することが困難なものが多い。多くの市民 が意義や価値を知り、考え、応援団となることで、保存・活用の動きにつなぐことができ る場合もあるが、保存・活用に確立した方法はなく、試行錯誤が繰り返されているのが現 状であり、活用を推進する仕組みを検討する。 また、人々の暮らしとともに築かれた地域の歴 知り、考え、情報発信する機会を地域や学校教育の中で持ち、次世代に継承することも重 要である。

(14)

さらに、都市づくりの基本となるのは、どのようにその都市が発展してきたのか、過程 を知ることであり、今後の将来計画を知ることである。シンガポールの国家開発省・都市 再開発局では、過去の街の様子や都心部の現状と開発計画を模型で展示し、土地利用の将 来計画をビジュアルに示すなど、国民にわかりやすく示している。このような形で分かり やすく市民に示すのも理解を進める方法である。 ② 神戸の文化をアジアへ、世界へつなぐ。 神戸市民には自ずと身についた生活の質、センスのある 暮らしぶりがある。特に、母と娘が一緒に歩いて似合う街 と言われている。また、恵まれた都市環境がある。生活文 化全般に関して、 神戸に暮らす人 や 都市空間 を紹 介することで、神戸からライフスタイルを提案していく。 「神戸なひと」「神戸なくらし」「神戸な時間」「神戸な場 所」など神戸の気質を、 神戸 full なライフスタイルを 楽しむ「お嬢さん」や「シルバー世代・団塊の世代」をモ デルにアピールする。 「神戸フィルムオフィス」が中心となって、神戸を舞台とした映画やドラマ、CM を誘致 している。2006 年に、撮影支援が千件を超え、登録エキストラ数も千人を記録した。この 実績をアピールする中でさらなるロケ誘致を図っていく。神戸の街は外、とりわけアジア の目で見ると、居留地をはじめとして大変評価が高い街である。神戸の街の美しさだけで なく、神戸の気質を映像を通じて発信できることは重要であり、取り組みをさらに進める。 来訪者へのおもてなしとして都心商業者が「神戸コンシェルジェ運動」を展開しており、 「町中みんながコンシェルジェ」をキーワードにハンドブックやステッカーの作成に取り 組んでいる。このようなおもてなしの取り組みが、街の印象を大きく左右し、もう一度訪 れてみたいという気持ちを起こさせるものとなる。 「デザイン都市・神戸」の取り組みを、ユネスコの「デザイン都市」に申請することを 検討する。 〔ユネスコのデザイン都市について〕 ユネスコは、2002 年、世界中の文化的な産業の創造的、社会的、経済的可能性を開く助 力となる公私のパートナーシップの新しいモデルを作ることを目的に、文化的多様性のた めの世界同盟(現在 500 を超える団体が加盟)を結成し、その世界同盟の中で、戦略的パ ートナーシップの基礎となる「創造都市ネットワーク」を承認している。 「創造都市ネットワーク」には、①文学、②映画、③音楽、④民俗芸術、⑤デザイン、 ⑥メディアアート、⑦グルメのテーマ別ネットワークが設定されている。 デザインの分野で指定された都市は、ブエノスアイレス(アルゼンチン、2005 年 8 月)、 ベルリン(ドイツ、2005 年 11 月)、モントリオール(カナダ、2006 年 5 月)である。 ベルリンでは、①デザイン関係の従事者、企業、学生数、②年間約 1,300 万人の宿泊者、 ③1日あたり 1,500 件以上の文化イベント、④デザイン関連会議、⑤デザイン関連の博物 館、⑥伝統建築物から近代建築物、⑦創造的活動の基礎となる環境空間などの条件、など がデザイン都市の要素となっている。

(15)

4.

「デザイン都市・神戸」を進めるための「ひと」

「場」

「しくみ」づくり

* 民間企業がデザイン戦略を採用する場合、経営者が戦略の理解者であり、製品だけでなく社 屋、広報物、ロゴから制服にいたるまでトータルでデザインを戦略として組み込み、企業文化 の中にデザインを浸透させることに成功した事例がある。 * デザインを生かしたまちづくりも同様である。デザインを理解するひとが中心になって戦略 を組み立て、デザインに関する方針を示し、知識と知恵と「ひと」と「ひと」との重層的な出 会いとつながりの「場」から新しい発想が生まれ、新しい「しくみ」をつくることで、「デザ イン都市・神戸」の創造都市戦略が動き始める。 そして、段階的に、長期的視点で推進していくことで、デザイン都市戦略が根付いていく。 (1)「デザイン都市会議」の設立 神戸のまちの「デザイン」を総合的にプロデュースするためには、経済界、市民、教育機 関、行政が思いを共有しながら事業を進め、まちをつくり、育てることが大切である。 そのためには、経済界をはじめとした関係機関の代表と専門家が、具体的提言や啓発を行 い、また、専門的な立場から事業主体等に対してアドバイスや意見をのべる「デザイン都市 会議」の設立を提案する。 (2) 各事業主体の取り組み A)行 政 今回の報告書では「空間」「経済」「文化」の 3 つの分野を広くデザインの領域として位置 づけたが、行政として取り組むデザインの範囲や組織体制などについて方針を決める必要が ある。 デザインに関する施策は広範にわたるが、個々の施策を単独で実施するのではなく、うま く組み合わせることにより有効な戦略となるような工夫も必要である。 そのためには、各部局にまたがるデザインに関する施策を統括する責任者を設置し、 ⅰ)規制、誘導、支援など各種施策の検討 ⅱ)庁内の関連業務の調整や連携 ⅲ)広報、啓発 を進めることが大切である。 デザイン都市戦略を進めるにあたっては、仮説を立て実践し、結果を検証し、さらに実 践を積み重ねることが重要である。横浜市や名古屋市のこれまでの取り組みをみても、長 期にわたる息の長い努力が必要である。 B)経済界 デザインに注力した経営・商品開発を実施している企業がすでに現れている。こういっ た取組を他の企業にも広めるとともに、神戸の企業が商品開発におけるデザイン力に磨き をかけ、企業ブランドを確立した企業の集積を神戸の強みに繋げる。 神戸商工会議所は 18 年 7 月、「デザイン都市・神戸の実現に向けて」との提言をまとめ た。そのとりまとめを行った神戸都市再生委員会を中心に、

(16)

①中小企業へのデザインの重要性に関する啓蒙活動 著名アーティスト、クリエーターなどデザインやまちづくりの関係者を招聘したシンポ ジウム・講演会の開催。 ②アーティスト・クリエーターと中小企業とのビジネスマッチングの開催。 ③アイデア募集事業 事業アイデアやプランを広く募集し、アイディア・コンペティションを行う。 ④産学連携事業 都市景観、建築、工業製品などデザイン開発に関する研究シーズを持つ大学と企業との 産学連携 など、経済界あげてデザイン振興に取り組む。 また、企業としても、社屋のデザイン、敷地内の緑化や美化活動などを通じ、街に関わ るすべてのひとが共有する都市空間の質的向上や神戸の街の魅力づくりに貢献すること が求められる。 C)教育機関 市民のデザイン力を高めていくためには、小中学校のころからデザインに関する興味を 持つことが重要である。そのためには、人に優しいデザイン、環境に配慮したデザインな ど優れたデザインに触れ、また、地域の資源に触れ、理解を深める機会をつくることが重 要である。 大学や専門学校は専門家の養成機関として人材育成に努めるとともに、大学や専門学校 同士がデザインを通じて横で連携し交流を深める。さらに、地域、経済界、行政との連携 を進めることにより、実践的にデザインを考える機会をつくる。 D)市民・NPO 市民は自らが住み、働き、憩うわが街デザインについて関心を持ち、考え、さらにデザ インを生かした取り組みを実践する機会をつくることで、互いに支えあい心通う豊かな地 域を創る。NPOはそれぞれのミッションに基づき、各主体と協働の取り組みを進める。 (3)時間軸の考え方 デザイン都市の取り組みにあたっては、長期的視点に立って神戸のあるべき形を目指し、 計画的・継続的に進めるとともに、時代の変化に柔軟に対応することが重要である。 まず、2,3年でできる相乗効果の大きいプロジェクトを立ち上げ、象徴的に推進してい くことを検討し、成功事例を重ねることでデザイン都市を対外的にアピールする。 (4)モデル区域設定 ―神戸らしさを先導するエリアを創るー デザイン都市の実現に向けては、3章で述べた施策展開の方向性を具体化していくことが 基本であるが、戦略的な取り組みの方法として、まずモデル区域を定め、まちづくりのコン セプトに沿って、集中的に施策を実施し、その効果を検証しつつ、さらにエリアを拡大して いく方法がある。

(17)

モデル区域としては、新たな交流、創造の場と しての可能性が大きく、効果が期待できる都心及 びウォーターフロント(南北は新神戸から神戸空 港まで、東西はHAT神戸からハーバーランドま で)が想定される。多くの人が訪れ、神戸を代表 する地域のひとつであるこの地区で経済界、市民 や行政が総力をあげてデザイン化を進めること により、神戸のイメージの向上と活性化を図り、 他地区の先進事例とするものである。 イタリアのジェノバは、神戸と酷似した地形の街であるが、倉庫などの歴史的建築物を積 極的に再生し、ショッピング街、レストラン、博物館、映画館、子供のための教育施設など 様々な集客施設に転活用されている。また、ウォーターフロントに近い地上道路は約 250m にわたって地下化され、広場として観光客などでにぎわっている。これらの事業はウォータ ーフロントの再生事業として参考になるものである。

5.おわりに

当研究会では、デザインを広義に捉え、デザインすることから新たなものを生み出す創造都 市への道筋を検討した。 神戸らしさは、過去の都市ブランドに固執することなく時代の先駆けとなり続けることにあ る。「デザイン都市・神戸」の戦略は、市民、経済界、教育機関や行政が思いをひとつにし、 総合的な力で、時間をかけて取り組むものである。 この研究会の報告書が、次の取り組みにつながることを期待するところである。

(18)

(参考①)「神戸らしさ」の考え方 *神戸らしさは ・ひと・・・国際性・開放性、進取の気質、神戸への思い、主体的な活動 ・生活・・・開港以来の文化と伝統、特色あるファッション、自然、多様性 ・経済・・・港関連産業、生活文化産業、ものづくり産業、オンリーワン企業 などにあるが、震災を乗り越え、復興の過程で生み出されてきた新しいエネルギー【新たな産業 リーダー、新しい知的産業集積(医療産業都市)、新たな文化リーダー、地域の力など】が新たな 神戸らしさを創造している。 ソフト← →ハード ひと 生活様式 産業 まちづくり まちなみ 国際性・開放性 進取の気質 神戸への思い 主体的な活動 開港以来の文化 と伝統 おしゃれ・ハイ センス 生活文化産業 特色ある ファッション 産業 社会的企業 ソーシャル・ベンチャー 港関連産業 ものづくり産業 医療産業 オンリーワン企業 市民・住民主体 復興における 住民の力の結集 NPO・ボラン ティアの活動 海・港 山、坂 緑、田園 建物 温泉

空間

経済

文化

(19)

(参考②)新たな「神戸らしさ」を創り出す動き−これから伸ばす神戸らしさ 住民主体のまちづくり 北野・山本ユニバーサルプロジェクト ・ 「北野・山本地区をまもり、そだてる会」が行っている取組み。2004年9月から、地区に かかわる諸団体が集まり検討会議を設置し、運動を開始。 ・ 「誰もが通りやすい道づくり」や「色々な人への色々な対応」など、分かりやすいパンフ レットを作成し、住民に啓発を行っている。 野田北ふるさとネット ・ 野田北部地区は震災で大きな被害を受けたが、復興過程において「野田北部まちづくり協 議会」が大きな役割を果たした。復興が進むなかで、さらに住民の相互活動の理解を深め るために発足したネットワーク組織。 ・ 地域内の様々な団体や人々をネットワークで結ぶ役割を担っており、各団体がゆるやかな 連携を取りながら、情報交換や企画運営の調整などを行っている。ホームページも開設す るほか、「カンガエールサークル」、実際に活動する「ヤッテミールサークル」や月1回の 定例会、地域情報誌としての「わがまち野田北かわらばん」も毎月1回発行し、全戸配布 している。 六甲道南公園(通称:イタリア広場) ・ 再開発地区とその周辺を含めた街の中心かつ、震災復興のシンボルとなる記念公園。北部 公園(6,300平方メートル)と南部広場(3,000平方メートル)からなり、2つは有機的に 連続している。 ・ イタリアと日本の若手デザイナーを対象にデザインコンペを実施し、イタリア・ヴェネチ ア2人の女性建築家が設計。地震でうねる大地を表現し、地面から突出したような構造に なっている。タイルはイタリアからの提供。 ・ 地元では管理運営委員会を発足し、積極的に公園の活用・管理に取り組んでいる。平成18 年5月に「第1回みどりのまちづくり景観賞・貢献賞」受賞。 事業者主体のまちづくり 神戸ながたTMO ・ 平成13年6月新長田六間道商店街「アスタきらめき会」を中核に設立されたまちづくり会 社。「お好み焼」や「ぼっかけ」をきっかけとした「食のまち・ながた」のしかけづくり や修学旅行受け入れ(体験・震災学習)などユニークな取り組みを行っている。 ・ 平成18年度の神戸ソーシャルベンチャーアワード神戸市長賞受賞。経済産業省の「がんば る商店街77選」に選出。(TMOに加盟の新長田南地区11商業団体) 乙仲通 ・ 中央区栄町通を一筋南に入った通り。名称の由来は、貨物運送の輸出入手続きの業務が「乙 種海運仲立業」と規定され、俗称「乙仲」と呼ばれていたもの。平成6年11月「栄町通周 辺まちづくり懇談会」を設立し、この通りをゆとりのある歩行者空間にしようと、平成10 年7月に「栄町通景観形成市民協定」を締結。当時の古い倉庫やビルなどが残された「乙 仲通」では、残された建物を再利用したバー、レストランやブティックなどが誕生し、新 たな文化が芽えている。 トアウエスト ・ 中央区の南北に生田新道とサンセット通り、東西にトア・ロードと鯉川筋に囲まれた地域。 カジュアルファッションを中心として、「個性的」「進歩的」「ハイセンス」なオーナーズ ショップが集積している。

(20)

甲南本通商店街 ・ 昭和10年に商店街組織発足し、東灘区としては唯一のアーケードのある商店街として小 売商業の中心となるが、大震災でアーケード及び商店が全壊。しかし、平成10年には、 ほぼ復興を成し遂げる。 ・ 商店街を中心とした甲南エリアを「甲南にぎわいドーム」として、地域の活性化、コミュ ニティづくりに尽力、また甲南大学や甲南大発ベンチャー企業(「KRMI」)との連携に よるまちづくりも行っている。 大学との協働によるまちづくり あーち(神戸大学) ・ 神戸大学大学院総合人間科学研究科ヒューマン・コミュニティ創成研究センターが設立の 主体となり、地域・大学・行政の協働による実践的研究・地域貢献の実践を目的に、旧灘 区役所庁舎跡地2階に2005年9月開設。神戸大学発達科学部の教員の他、灘区職員、地域 でさまざまな活動を展開している市民が参加。 ・ 子育て支援を核とした共生のコミュニティ形成の拠点を目指している。 神戸芸工大 ・ 地域や企業の人々と関わりながら、実社会でのデザイン製作の実施 (例) ・「KOBE PiTaPa(ピタパ)広告デザイン」(神戸市) ・「地域スポーツクラブのシンボルフラッグデザイン」(神戸市教育委員会) ・復興支援ミュージカル「シンデレラと魔法の靴」(神戸公演実行委員会) ・「ガーデンシティ舞多聞」みついけプロジェクト(都市再生機構) ・「学生による商店街活性化支援事業」(神戸新鮮市場/神戸県民局) ほか多数 甲南大学 ・ 甲南地域経営研究所において、地域振興のための賑わいづくりの演出を行っている。 (例) ・「甲南にぎわい創生事業」(甲南本通商店街) ・ガイドブック「うはらぼん」制作(東灘区) ・「東灘区史跡めぐりバスツアー」 ・「魚っ子ひろば」(東灘区社会福祉協議会) ・「甲南にぎわいフェスタ」 ほか多数 神戸の魅力プロモーション 神戸フィルム・オフィス ・ 映像製作プロジェクトを神戸に誘致することを目的として、平成12年9月に開設され た団体。関係機関の協力を得ながら、誘致活動のほか、撮影時の道路使用許可に係る手 続き等のワンストップサービスを提供。 神戸ブランドの創成・発信 神戸コレクション ・ 神戸から最新のトレンドを発信するファッションショー。神戸発のアパレルメーカー、 セレクトショップ、新進気鋭のデザイナー、そして神戸の女性に愛される国内外のブラ ンドが一堂に会し、「明日着たい服」を提案。2002年秋/冬から年に2回のペースで開催。 またアクセサリー、コスメティック、カフェなどのブースも設置される。 ドラフト!((財)神戸ファッション協会) ・ 「ドラフト!」は平成14年から開始されている、次世代のファッション業界を担うクリエ ーターを神戸で育てるためのオーディションイベント。単なる新人発掘の賞ではなく、最 終的に商品が、セレクトショップの店頭に並び、一般の消費者に購入される所までを目的 としている。若手クリエーターと、神戸で展開する有力セレクトショップとのビジネスマ ッチングイベント。

(21)

KOBE工業デザイン・ナビ事業 ・ 神戸リエゾン・ネットワーク(神戸を拠点に活動する大学、公的研究機関、産業支援機関、 行政、中小企業共同グループ、NPO法人などの参画により、神戸のものづくりに関する 知識・知恵のさらなる交流・融合を促進するもの。)に参画している(財)新産業創造研 究機構(NIRO)、兵庫県立工業技術センター、神戸芸術工科大学等と連携して、中小企業 向けの工業デザインセミナーや工業デザイン相談等を行うもの。平成17年度から実施。 グッドデザインひょうご ・ 兵庫県内に事業所を有する企業・個人が製造販売する商品に対して、使う人の立場で 開発された、優れたデザインの商品を「グッドデザインひょうご選定商品」と選定する ことにより、消費者及び生産・流通関係者のデザインに対する関心を高め、商品のデザ インのレベルアップを図ることを目的としている。 ・ 平成5年度から実施、平成17年度で第13回目、延べ304点が選定されている。 新たな産業リーダー デザイン・エクセレント・カンパニー賞 ・ 企業の競争力強化、ブランド戦略におけるデザインの活用を促進するとともに、広く国 民に優れたデザインへの理解と関心を高めることを目的とし、2003年10月に設立された 「デザイン&ビジネスフォーラム」が、デザインを多角的に活用し著しい成果をあげた 中堅、中小企業を、3年間で100社程度表彰する。 ・ 第一回(2004年度)受賞企業には、㈱アンリ・シャルパンティエ、㈱フェリシモ、 ㈱ロック・フィールドの3社も選ばれている。 神戸ソーシャルベンチャーアワード ・ 平成15年から設置。地域経済の活性化、地域の問題解決、新規雇用の創出などを目的と し、よりよい地域づくりのための経済的な自立 を目指した事業を行っている市民や事業 者を表彰する制度。 ・ 平成18年度:優秀賞①「食のまち神戸長田」(神戸ながたTMO)、②駐車場の収益改善と 地域活性化を図る「パーキングモール事業」(イーエスプランニング)。審査委員特別賞 ①神戸地域SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)「ショコベ」事業 (ショコ ベ有限責任事業組合)、②「阪神・淡路大震災の教訓を子どもたちに伝えたい」修学旅行 生への震災学習事業(阪神・淡路大震災まち支援グループ まち・コミュニケーション) 新しい産業の創成、知的集積 医療産業都市構想 ・ 医療機器開発、治験、再生医療の臨床応用を目的として、ポートアイランド2期地区に、 研究所、治験病院、企業を集積させ新たな知的産業の振興を図っている。実用化に向けた 研究開発、起業化支援、人材育成機能の充実を図ることにより日本で最大の医療産業クラ スターに成長している。 ・ 研究所は、先端医療センター、理研のほか民間の製薬企業の研究所も立地。医療機器の開 発センターなどユニークな施設があり、医療関連企業は100社、研究者等は1,800人が従事 している。 企業のフィランソロピー・メセナ 公益信託神戸まちづくり六甲アイランド基金 ・ 1996年7月、六甲アイランドと深い関わりのあるセキスイハウスとP&G社が、神戸市 における国際的かつ文化的なコミュニティーづくりに資する事業や活動を助成するため に設立。 ・ 2005年までの10年間で、助成件数は延べ235件、金額にして2億413万円。信託財産も当初 の1億7,000万円から6億5,042万円になり趣旨への賛同者の輪も広がっている。

(22)

先導的な地域貢献 ・ 三ツ星ベルト:①長田区の「真野地区まちづくり推進会」に参画。人材の派遣等協力。 ②大震災において「自衛消防隊」の活躍と避難所の開放。③本社の真野地区への復帰。 ④ふれあい協議会結成により、地域イベント等の活動実施。⑤市内小学校のビオトープ づくり支援のため、遮水シート無償提供。⑥コミュニティレストランの開設など ・ フェリシモ:①基金活動として、「森基金「地球村基金」など10種の基金活動を実施。② 自立支援活動として、プロップステーションと共に「チャレンジド・クリエイティブ・ プロジェクト」や発展途上国支援のための「アクティビティーズ」事業を実施。③生活 文化活動として、「ハッピートイズプロジェクト」「文学賞」「神戸学校」など多くの社会 貢献活動を実施。 社会的起業(企業) プロップ・ステーション ・ 平成3年障害者の自立支援組織プロップ・ステーション設立準備委員会発足し、平成10年 社会福祉法人として認可される。理事長:竹中ナミ氏。障害者を納税者にするという理 念のもと、精力的な竹中氏の行動力は世界企業のトップや政府の共感を得て、障害者の 自立に向けて活動を行っている。 ・ 受託業務の内容は、ITC活用によるシステム開発やCG、DTP業務全般など多数。 新たな文化・芸術活動 CAPハウス ・ 特別非営利活動法人「芸術と計画会議(CAP)」が、旧神戸移住センターで企画・運営 するアートプロジェクト。アーティストが集まってそれぞれの製作活動を行い、あらゆ る人々が交流し、互いに新しい価値を創造していく場を築くための実験。 TEN×TEN ・ 中央区波止場町の遊休化していた倉庫「国産1・2号上屋」を改装して、平成18年2 月、みなと神戸の新たな文化の交流拠点として、次代を担う個性的な人材を発掘すると ともに、にぎわいと活気を生み出すことを目的としてオープン。施設内では、さまざま な分野の100人のクリエーターたちが作品の創作や発表、販売などを行っている。 楽団あぶあぶあ ・ 昭和57年発足。高等養護学校卒業後に音楽を余暇とすべく結成される。メンバーのほと んどは、ダウン症や自閉傾向のある青年で、勤労者。 ・ 運営は団員の持ち寄りだが、今まで100回目の演奏会を数え、姉妹グループも10組を超え る。25,000入余りの人が聴衆となった。 ・ 成果・意義としては、個人の生活の充実、市民としての交流による社会参加、自分を活 かしてのボランティア活動の実現、自己実現と芸術化への可能性が実現している。

参照

関連したドキュメント

の変化は空間的に滑らかである」という仮定に基づいて おり,任意の画素と隣接する画素のフローの差分が小さ くなるまで推定を何回も繰り返す必要がある

 戦後考古学は反省的に考えることがなく、ある枠組みを重視している。旧石 器・縄紋・弥生・古墳という枠組みが確立するのは

第四章では、APNP による OATP2B1 発現抑制における、高分子の関与を示す事を目 的とした。APNP による OATP2B1 発現抑制は OATP2B1 遺伝子の 3’UTR

・虹彩色素沈着(メラニンの増加により黒目(虹彩)の色が濃くなる)があらわれ

点から見たときに、 債務者に、 複数債権者の有する債権額を考慮することなく弁済することを可能にしているものとしては、

Such a survey, if determined necessary, shall ensure that the attained EEDI is calculated and meets the requirement of regulation 21, with the reduction factor

このような環境要素は一っの土地の構成要素になるが︑同時に他の上地をも流動し︑又は他の上地にあるそれらと

・グリーンシールマークとそれに表示する環境負荷が少ないことを示す内容のコメントを含め