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「サービス付き高齢者向け住宅の経営主体のあり方が介護保険の利用状況に与える影響について」

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サービス付き高齢者向け住宅の経営主体のあり方が

介護保険の利用状況に与える影響について

【要旨】 サービス付き高齢者向け住宅は、常駐・安否確認・生活相談の基本サービスを義務付けた高齢者 向けの賃貸住宅として2011 年に誕生した制度である。その背景には、高齢者の増加と介護保険 負担の増加があり、重度の要介護者は「施設」、軽度の要介護者は「在宅」とする「施設か ら在宅へ」という目標の受け皿として期待されている。本稿では、サービス付き高齢者向け 住宅の経営主体に着目し、経営主体によって介護保険利用額に違いがあることを実証した。同じ 介護度の入居者でも、介護系事業者が経営するサービス付き高齢者向け住宅に住む高齢者の方が 非介護系事業者の場合よりも介護保険を多く利用していることがわかった。そこからケアマネー ジャーの裁量に頼る仕組みを改め、ケアプランの標準化を行い経営主体によって介護サービスの 差が生じない仕組みの導入について提言する。 2016(平成 27 年度)2 月 政策研究大学院大学 まちづくりプログラム MJU15616 水野 里子

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目次

1 はじめに ... 3 2 サ高住と介護保険事業の概要 ... 4 2.1 サ高住の導入背景と課題 ... 4 2.2 介護保険事業の概要と問題点 ... 9 3 経営主体の違いによる介護保険事業への影響の実証分析 ... 10 3.1 分析方法 ... 10 3.2 分析対象 ... 11 3.3 推定モデル及び利用するデータ ... 11 3.4 分析による推定結果 ... 13 3.5 推定結果を踏まえた考察 ... 13 3.6 被説明変数を分けた分析の推定結果... 14 3.7 推定結果を踏まえた考察 ... 15 4 経営主体の違いによるサ高住の介護保険事業への影響の理論分析と考察 ... 15 5 政策提言 ... 18 6 まとめ ... 19

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1 はじめに

サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、2011 年に誕生し、旧高齢者専用賃貸 住宅制度(2005)・旧高齢者円滑入居賃貸住宅制度(2001)・旧高齢者向け優良賃貸制度(1998) を一本化したものである1。サ高住は国土交通省と厚生労働省が所轄する「高齢者の居住の 安定確保に関する法律」の中で基準が定められており、各都道府県による登録が義務付け られている。入居者は60 歳以上の高齢者であれば要支援・介護認定がなくても入居でき、 最低限のサービスとして義務付けられた常駐・安否確認・生活相談サービスを受けること ができる。また建設に際しては戸当たり100 万円の補助金制度と税制優遇2が設けられ、民 間事業者による供給が進み2016 年2月現在で約 19 万戸まで増加している。 サ高住の制度が創設されてから5年が経過し、いくつかの問題点が指摘され始めている が、今回はサ高住における経営主体のあり方について取り上げる。サ高住では介護事業者・ 医療法人(以下、介護系事業者)が主要な経営主体となっている。介護系事業者が自社の 介護サービスの利用を入居者に勧めるいわゆる「囲い込み」は厚生労働省が2014 年度に実 施した「高齢者向け住まいに関する意見交換会」において各地方公共団体から寄せられた 意見として紹介され、これについては国土交通省の有識者による検討会の中でも扱われて いる3。しかし、介護事業者による併設事業所等からのサービス提供は、サービス供給の効 率化に繋がるものであるならそれ自体は否定すべきものでもない。 サ高住の介護系事業者による囲い込みに関して、このような指摘の事実はありながらも 経営主体の違いによる介護保険への影響に関する実証的な検証は行われていない。本稿で は住まいとサービス提供者の主体が同一法人である場合における介護保険への実態を把握 すべく、介護系事業者が経営主体となるサ高住が介護保険に与える影響について実証分析 する。実証は全国の政令市および中核都市のある都道府県の市区町村データを活用して分 析を行い、介護系事業者が経営主体となるサ高住の戸数が介護給付費増加に有意に影響を 与えるか否かを検証する。その結果を踏まえ、要因を考察し政策について提言を行う。 本論文では、まず次節において、サ高住の導入背景と介護保険事業について概観する。 第3 節では、介護系事業者が経営主体の場合のサ高住が介護保険に与える影響について実 1 高齢者円滑入居賃貸住宅:高齢者の入居を拒まないもの、高齢者専用賃貸住宅:高円賃のうち高齢者の 入居に限るもの、高齢者向け優良賃貸住宅:高専賃のうちバリアフリー&緊急時対応サービスの要件を 満たすもの 2 固定資産税:当初5年間 2/3(ただし戸当面積 30 ㎡以上に限る)、所得税・法人税:当初5年間 20%償 却割増(ただし住宅型で10 戸以上に限る)、不動産取得税:1200 万円/戸の控除 3 国土交通省(2015)「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会」。医師が自力でトイ レに行けるとしていた男性にサ高住の訪問介護事業所がオムツ交換を毎日実施していた例などが報告さ れている。なお2015 年の介護報酬の改定により、併設・隣接する介護事業所の利用について報酬を減 算する仕組みができた。

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4 証分析を行う。第4 節では実証分析の結果を踏まえた考察を行い、第 5 節では政策提言を 行う。

2 サ高住と介護保険事業の概要

この節では、統計データをもとにサ高住の導入背景を概観する。さらにサ高住の課題と、 介護保険事業について制度の概要と問題点を示す。 2.1 サ高住の導入背景と課題 2015 年時点で日本の高齢者数は 3200 万人に達する。高齢者の増加による施設の不足は、 特別養護老人ホームの待機者数によりわかる。特別養護老人ホームの待機者は自治体で登 録されており、2014 年時点で 52 万人に達しており、10 年で約 10 万人増加している。ま た、言うまでもなく、高齢者の増加に伴い要支援・要介護の認定者数も増加しており2015 年時点で約600 万人に上る4 これまでの高齢者住宅に関する研究としては、田中(2012)が、旧高齢者向け優良賃貸 住宅制度(以下、高優賃)が介護保険に与える影響について、バリアフリー化が介護給付 費の減少に寄与することを確認し、高齢者住宅の意義について考察している。その一方で 高優賃の整備が集住による効率化をもたらし介護給付費の減少に貢献しているという仮定 のもと実証を行ったが、有意に影響を与えないことが示されている。また、八代(1997) は、高齢者住宅の役割として、高齢者が管理する住宅が管理不十分になることによる外部 不経済是正の観点を指摘している。 日本における高齢者住宅および施設の種類は多岐にわたる。主要な施設・住宅を表1 に まとめてある。主に、老人福祉法に基づく介護付有料老人ホームや、特別養護老人ホーム といった「施設」と、サ高住に代表される「在宅(住宅)」と分けることができる。 施設と在宅の違いとして介護サービスが「内部」か「外部」かの違いがある。内部の場 合は施設内のサービスを利用することになり介護費用は定額制となる。一方、外部の場合 は、自宅にいる時と同じく外付け5のサービスを利用することになるため介護費用は従量制 となる。サ高住の場合は、図1 に示すところの介護サービスの体系の中で、在宅に該当す るため、訪問介護や通所介護のサービスを利用することになる。 4 内閣府(2016)「高齢社会白書」参照 5 サ高住は、あくまでも賃貸住宅であり、外部の訪問介護事業者などと契約して在宅の介護サービスを受 けるという形式になっている。実際は、介護事業所等が併設・隣接していることが多いが、形式上は外 部の介護事業者という位置付けになっている。

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5 表1 高齢者施設・住宅の主な種類(高齢者住宅財団(2008)「高齢者の住まいガイドブック」 http://www.koujuuzai.or.jp/useful_info/guidebook/より筆者作成) 図1 介護保険サービスの体系(厚生労働省(2014)「公的介護保険制度の現状と今後の役 割」より) 概要 介護サービス 棟数 介護付有料老人ホーム 介護保険法に基づく特定施 設の指定を受けた有料老 人ホーム 内部 3,501 住宅型有料老人ホーム 外部の介護サービスを利用 する有料老人ホーム 外部 6,125 サービス付き高齢者向け住宅 安否確認・生活相談の付い た賃貸住宅 外部 5,525 グループホーム 認知症高齢者向けの共同 生活施設 内部 12,537 特別養護老人ホーム 公共型老人ホーム 内部 8,782 介護老人保健施設 病院から自宅に戻る際の 機能訓練のための介護施 設 内部 4,103 介護療養型医療施設 高齢者向け長期入院の医 療施設 内部 1,566 施設・ 住宅の種類 有料老人ホーム 介護保険施設 民間 公的 その他の施設

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6 高齢者のうち、高齢者住宅および高齢者施設に入居している者の数が定員数から概算で 160 万人と推計できるが、入居者の全員が要介護者であると多めに見積もっても、約 440 万人の要支援・要介護者が高齢者施設・高齢者住宅以外の在宅で過ごしていることとなる。 (図2) 図2(総務省および厚生労働省資料6より筆者作成) サ高住の創設の背景には、高齢化社会に突入した、わが国における2つの重要な課題が ある7 第一に、高齢者の増加の中でも単身や夫婦世帯の高齢者の増加である。図3 は一人暮ら しの65 歳以上の高齢者の増加を示している。一人暮らしの高齢者の増加は顕著であり、 1980 年にはその数は約 88 万人であったが、2015 年には約 600 万人へと増加している。こ の背景には、高齢者の増加と子供との同居の減少がある。また、将来予測としては、2030 年には700 万人を突破する予測が立てられている。 6 総務省(2013)「住宅土地統計調査結果」、厚生労働省(2014)「介護サービス施設事業者調査」 7 国土交通省(2015)「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会 中間取りまとめ」の 報告2 頁「基本的な考え方」参照

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7 図3 一人暮らしの高齢者(内閣府(2014)「平成 26 年高齢社会白書」) 高齢者世帯の増加は、事故や孤独死、認知症による行方不明者数の増加に影響すると考 えられ、高齢者が住みなれた地域で安心して暮らすことができる住まいを確保していくこ とが課題となっている。その点、サ高住は常駐者が義務付けられており、従来であれば家 族や地域のご近所が担ってきた見守りや生活相談をサ高住内で行うことが可能となる。 第二に、介護保険サービスの利用者増加に伴う介護給付額の財政的負担の増加である。 介護給付額は年々増加しており、2015 年には 10.5 兆円に達し、2025 年には 19 兆円を上 回る見込みがある8 図4 はサ高住導入におけるイメージ図である。従来から高齢者の受入れ先となっていた 介護付き有料老人ホームや特別養護老人ホーム等の施設における介護保険の利用は「包括 ケア」と呼ばれ、4 頁で述べたようにこれらの施設では介護サービス費用が介護度ごとに定 額になっている。こうした施設の入居者増加は自治体の財政負担を増加させるため2006 年 以降から総量規制が行われてきた。また特別養護老人ホームにおいては、2015 年からこれ 8 厚生労働省(2012)「社会保障に係る費用の将来推計について」参照

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8 まで要介護1~5まで受け入れてきた高齢者の入居条件を要介護3~5に引き上げられる などの政策が実施され入居要件が厳しくなっている9。介護保険は厚生労働省が定める算定 基準に従い支払われるが、介護付有料老人ホームなどの「特定施設」の料金体系は、介護 度ごとに固定の金額となるため介護度が上がるほど事業者側の収入は増える仕組みとなっ ている。一方、サ高住において介護サービスは外付けのサービスとして位置付けられ介護 事業者の立場では利用頻度が多いほど収入が増える仕組みであるが、利用者の立場では利 用頻度に比例して自己負担も増える。 図4 サ高住導入におけるイメージ図(厚生労働省(2011)「高齢者の住まいについて」を基に筆者作成) 高齢化により財政的な制約がある中で有料老人ホーム等施設の普及には限界があり、サ ービス供給の重点化・効率化が必要とされている。こうした背景から重度の要介護者は「施 設」、軽介護度の高齢者は「在宅」とする「施設から在宅へ」という目標の受け皿としてサ 高住は期待されている。サ高住は自立者向けのワンルームタイプから、医療施設を併設し た看取り対応も可能なタイプまで、多種多様なタイプが混在しているが、入居者の平均介 護度で有料老人ホームとの違いを比較すると、有料老人ホームの平均介護度が要介護2.5 程 度であるのに対し、サ高住の平均介護度は要介護1.8 程度であり比較的軽介護度の入居者を 受け入れている10 サービス付き高齢者向け住宅協会の調査ではサ高住の経営主体のうち介護系事業者は 63.6%に上るとされる。介護系事業者であれば自社の介護サービスを活用することで介護報 酬を得ながら経営リスクへの対応が可能であり、それは入居者にとってもサービス供給の 9 2015 年 4 月以降新たに特養に入所する場合は原則として要介護 3 以上と改定された。 10 財団法人高齢者住宅財団(2014)「サービス付き高齢者向け住宅等の実態調査に関する調査研究」参照

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9 効率化につながる。一方介護のノウハウがない介護系事業者以外の事業者(以下、非介護 系事業者)にとっては高齢者住宅の経営に関わるには、入居者の介護度の上昇による心身 の状況の変化への対応という課題があり、十分なノウハウなしに参入するには経営リスク を伴う。 先に述べたように一部の介護系事業者の中には、自社の介護サービスの利用を誘導し過 剰な介護サービスを提供する可能性が指摘されている11。しかし、「在宅」であるサ高住で は介護サービスは外付けであり、どこの介護事業所を使うかは入居者に選ぶ権利がある。 そのため、過剰なサービスを押し付けられているという事例はサ高住独自の問題ではなく、 介護保険事業全般に関わる介護事業者と高齢者の間に情報の非対称が存在している。 まずはサ高住問わず、介護保険事業で起きる情報の非対称による問題点を論じ、その後、 サ高住の経営主体が介護系事業者であることによって、追加的に介護サービスが提供され ているのかどうかを実証し、追加的なサービス提供が可能となっている理論と問題点を以 降の節で検証する。 2.2 介護保険事業の概要と問題点 介護給付費は介護保険法で定められており、厚生労働省の算定基準に従って算出される 公定価格である。利用者は原則1割負担であるが、所得基準によって2割負担となる12。在 宅介護においてはサービスごとに単価が定められており、地域によって加算基準などが詳 細に定められている。利用額は従量制であり介護度ごとに利用限度額が定められている。 介護保険における過剰サービスについては、山内(2010)が訪問介護における供給者誘 発需要仮説13を検証しており、介護サービスの内容が利用者の自立支援につながっていない 事例や、事業者による不正請求などの問題も取り上げ、介護事業者と高齢者の間の情報の 非対称について指摘している。特に医療サービスであれば、治療によって患者の効用は緩 和されると利用量も減少するが、介護サービスは日常生活に密着した多様なサービスが提 供され、生活支援を含むサービスが継続的に支援されるため利用量に歯止めがかかりにく いという特徴を示している。 介護保険制度において重要な役割を果たすのがケアマネージャー(以降、ケアマネ)で あり、ケアマネは利用者の介護度などを勘案し介護計画(以降、ケアプラン)を作成する。 11 1 節の「はじめに」にて取り上げた内容 12 一定以上所得者の負担割合見直しが2015 年 8 月に施行された。 13 一般的に医師誘発需要として知られており、医師が自らの所得に強い関心を持ち、その裁量を利用して 患者に不必要な医療サービスを提供し結果として医療費高騰の一因のなっているとする行動仮説。厚生 労働科学研究所(2005)「医師需要と医学教育に関する研究」参照

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10 しかし、このケアマネがサービス提供者である介護事業所に所属することが許されている ため、適正な給付量を逸脱したサービスの給付を行う可能性は否めない。ケアマネは通常、 ケアプランの作成を行う居宅介護支援事務所に所属するが、この居宅介護支援事務所が単 独で存在することはほとんどなく、9 割はサービスを提供する介護事業所と同一法人に所属 している職員である。 医療経済の分野では、医療サービス市場での競争が激しくなると、医師が患者よりも医 療内容に詳しいことを利用して、患者に対し過剰な医療をうけさせる供給者誘発需要仮説 が欧米を中心に検証されている。例えばFeldstein(1970)は人口当たりの医師数と医療報酬 の間の正の相関を指摘しており14、Fuchs(1978)は外科医の人口が 1%増加すると手術件数 が0.3%増加することを実証している15。介護事業においても、介護事業者側であるケアマ ネと高齢者の間の情報の非対称がモラルハザードを招いていることを、供給者誘発需要の アプローチから山内は検証している。山内の推定結果は「訪問介護市場の競争度が高くな ると、訪問介護事業者は、サービスの利用の誘発によって訪問介護給付を増大させている」 という仮説を肯定している。

3 経営主体の違いによる介護保険事業への影響の実証分析

本節では、実際に介護保険に経営主体の違いが影響しているのかどうかを検証するため に実証分析を行う。経営主体の違いが介護給付額への影響を与えることについての推定モ デルでの分析を行う。ここでいう、経営主体の違いとは介護系事業者であるか非介護系事 業者かの違いをいう。 3.1 分析方法 サ高住の経営主体の違いによる効果について実証分析を行うため、全国の政令市・中核 市を中心とした都道府県におけるクロスセクションデータを用いてOLS 推定を行う。なお 分析にあたり、より詳細なデータを得るため各介護事業所の介護給付額について国民健康 保険団体連合会へ情報公開請求を試みたが、「法人の利害を害する可能性」があるとして請 求は却下されたた。それ以上の明確な理由を得ることができなかったため、引き続き理由 の追求と不服の申し立てを行っている。

14 Feldstein, M.,S.(1970)”The Rising Price of Physicians’ Services, ” The Review of

Economics and Statistics, Vol.52,No2,pp121-133

15 Fuchs, V.,R (1978)”The Supply of Surgeons and the Demand for Operations,” The

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11 3.2 分析対象 分析対象は、全国の政令指定都市と中核都市が存在する都道府県とした。これは、高齢 者向けの賃貸住宅という特性から賃貸住宅市場の成り立つ市場が前提となるため、一定規 模以上の市とその周辺地域でないと導入されにくくなっているためである。 3.3 推定モデル及び利用するデータ 推計式は以下に示す。 lnY=α+β1Care +β2 サ高住全体の割合 +β3 住宅型老人ホーム割合 +β4 平均所得 +β5 要支援 2 割合 +β6 要介護 1 割合 +β7 要介護 2 割合 +β8 要介護 3 割合 +β9 要介護 4 割合 +β10 要介護 5 割合 +β11 等級(介護保険の地域別加算) +β12 一人当たりの医療費+ε サンプルは市区町村599 サンプルであり、被説明変数 lnY は、各市の高齢者一人当たり の居宅介護給付額の自然対数値であり、各自治体の介護保険給付支払額の平成25 年度分の 支払済累計を、在宅介護を利用する要支援・要介護認定者数(以下、認定者数)で割るこ とにより算出している。 説明変数Care はサ高住のうち、介護系事業者が自ら経営しているサ高住の管理戸数の認 定者数に占める割合を用いた(本来であれば入居戸数をデータとして用いるべきであるが データ入手の制約から管理戸数とする。)。 比較対象は、非介護系事業者のサ高住の戸数となるため、サ高住全体の戸数が認定者数 に占める割合をコントロール変数に入れる。これにより、非介護系事業者を0としたとき 介護系事業者がどれだけ追加的に消費しているか比較することが可能となる。 またサ高住と同じく在宅介護を使う住宅型有料老人ホームの戸数をコントロール変数と

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12 して加えた。下記図5 用いて説明すると、「自宅」部分を0とした場合に「サ高住全体」が 追加的に消費している割合と、非介護事業者を0とした場合にCare(介護系事業者)が追 加的に消費している割合の推定結果を得ることが可能となる。 図5 係数の説明に関する参考イメージ図 更に各市区町村の介護度別認定者数の割合を変数に加えることで介護度をコントロール する。その他コントロール変数として介護給付額の地域加算16、平均所得、一人当たりの医 療費を使用した。データの出典に関しては以下の各変数の基本統計量と共に示す。なお経 営主体が介護系事業者か否かは、提供されたデータにおいて「サービス付き高齢者向け住 宅事業を行う者」が介護系事業者か否かで判断しており、経営主体となる法人の関連法人 に介護事業者がいるかどうかまでは判別できていない。 各変数の基本統計量は表2 のとおりである。 表2 基本統計量 16 介護報酬の支払いはサービス毎に単位数で定められている。1 単位の換算額は 10 円を基本としている が、地域ごとの物価差を反映させるため、全国の市区町村は等級で分けられ、等級ごとに1 単位の換算 が異なる仕組みとなっている。 単位 平均値 標準偏差 最小値 最大値 出典 被説明変数 居宅介護給付額 (千円) 2,699,673 7,137,368 0 100,310,411  厚労省介護事業状況報告 説明変数 Care (戸) 70 212 0 3,821  すまいまちづくりセンター連合会 コントロール変数 サ高住戸数 (戸) 155 498 0 7,198  すまいまちづくりセンター連合会 住宅型老人ホーム戸数 (戸) 221 634 0 6,336  各自治体のホームページより 平均所得 (千円) 3,045 733 2,138 12,667  総務省統計局 要支援1人数 (人) 724 2,060 0 32,056  厚労省介護事業状況報告 要支援2人数 (人) 676 1,830 0 23,247   〃 要介護1人数 (人) 936 2,146 1 22,456   〃 要介護2人数 (人) 879 2,292 0 31,031   〃 要介護3人数 (人) 631 1,543 0 19,604   〃 要介護4人数 (人) 581 1,400 0 17,665   〃 要介護5人数 (人) 495 1,195 0 15,048   〃 等級(1単位換算) (円) 10 0 10 11  厚労省「地域区分について」 医療費 (千円) 324,273 47,361 168,415 554,217  厚労省統計基礎データ

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13 3.4 分析による推定結果 推定結果は、以下の表3 の通りである。 表3 居宅介護保険費用に与える影響の推定結果 本推定結果から、介護系事業者が運営するサ高住戸数の割合が1%増えると1人当たり 介護費用が2.8%増えるという結果を1%有意で得た。 3.5 推定結果を踏まえた考察 分析により、介護系事業者の方が非介護系事業者と比較すると介護給付額を多く利用し ていることが証明できた。しかしその要因は、介護系事業者が介護事業所を併設・隣接す ることで入居者にとっての利便性が増した結果としてサービスの利用回数が増えた可能性 も考えられる。また介護系事業者の立場でも、サービスの提供が容易になり効率化されて いる可能性も考えられる17。そこで、次の実証として被説明変数を「通所介護」と「訪問介 護」に分けた分析を行う。まず「通所介護」と「訪問介護」について厚生労働省の情報公 表システム上の案内を参考に違いを説明する。 「通所介護」は自宅にこもりきりの利用者の孤独感の解消や心身機能の維持などを目的 として実施されている。利用者がデイサービスなど通所介護の施設に通いサービスを日帰 りで提供している。そこでは食事や入浴などの日常生活上の支援や生活機能の向上のため 17 サ高住のうち訪問介護を併設している割合26.8%、隣接している割合 11.8%。通所介護を併設している 割合31.5%、隣接している割合 11.9%。株式会社野村総合研究所「高齢者向け住まいが果たしている機 能・役割等に関する実態調査」参照。 被説明変数:一人当たり介護費用の対数 OLSによる推定結果 推定値 標準誤差 説明変数Care 2.820 *** 0.721 サ高住全体割合 2.405 *** 0.521 住宅型老人ホーム割合 1.224 *** 0.378 平均所得 0.000 0.000 要支援2割合 0.569 0.671 要介護1割合 -0.069 0.649 要介護2割合 3.308 1.382 要介護3割合 0.477 1.339 要介護4割合 -0.726 1.631 要介護5割合 0.847 2.098 等級 0.448 *** 0.101 医療費 0.000 *** 0.000 定数項 1.196 1.232 決定係数 0.281 -*,**,***はそれぞれ有意水準10%,5%,1%を示す 標準誤差に関しては不均一分散頑健標準誤差

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14 の機能訓練や口腔機能向上サービスなど提供している。通所介護は、自宅から施設へ送迎 車で通うため利用者にとっては移動を伴う。 一方「訪問介護」は、利用者が可能な限り自宅で自立した生活を送ることができるよう、 訪問介護員(ホームヘルパー)が利用者の自宅を訪問し、食事・排泄・入浴などの介護(身 体介護)や、掃除・洗濯・買い物・調理などの生活支援(生活援助)を行う。 前者の通所介護では高齢者が移動する必要があり、施設までの距離が利便性に影響する。 そのため、介護系事業者が施設を併設・隣接することにより、利便性が向上した結果とし、 利用率が上がることも考えられる。一方、後者の訪問介護の場合は訪問介護員が自宅まで 直接来てくれるため、介護系事業者が施設を併設・隣接した利便性による可能性を排除し 実証することが可能となる。 3.6 被説明変数を分けた分析の推定結果 被説明変数を通所介護に関わる介護給付費に限定した場合の推定結果を表4 に示す。 また訪問介護に関わる介護給付費に限定した場合の推定結果を表5 に示す。 表4 通所介護費用に与える影響の推定結果 被説明変数:一人当たりの通所介護(デイ等)費用の対数 OLSによる推定結果 推定値 標準誤差 説明変数Care 3.762 *** 0.855 サ高住全体割合 2.297 *** 0.592 住宅型老人ホーム割合 0.914 ** 0.420 平均所得 0.000 0.000 要支援2割合 1.762 ** 0.798 要介護1割合 1.311 0.809 要介護2割合 3.711 ** 1.619 要介護3割合 1.679 1.545 要介護4割合 -0.023 1.909 要介護5割合 1.194 2.500 等級 0.142 * 0.107 医療費 0.000 *** 0.000 定数項 3.406 1.391 決定係数 0.199 -*,**,***はそれぞれ有意水準10%,5%,1%を示す 標準誤差に関しては不均一分散頑健標準誤差

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15 表5 訪問介護費用に与える影響の推定結果 本推定結果から、介護系事業者が運営するサ高住戸数の割合が1%増えると1人当たり 通所介護費用が3.8%増えるという結果を1%有意で得た。また訪問介護費用においても、 介護系事業者が運営するサ高住戸数の割合が1%増えると1人当たり訪問介護費用が 1.7%増えるという結果を1%有意で得た。 3.7 推定結果を踏まえた考察 分析により、介護系事業者の方が施設を併設・隣接していることにより利便性が高いか ら介護サービスの利用が多いという仮説は成立しないことが示された。そのため、利便性 以外に介護系事業者が非介護系事業者よりも介護給付費を多く消費するインセンティブが 働いていることが仮定される。次節では、介護系事業者と非介護系事業者におけるサ高住 の運営上の違いを示し理論分析を行う。

4 経営主体の違いによるサ高住の介護保険事業への影響の理論分析と考察

本節では、サ高住の経営主体が介護系事業者であることによって、追加的に介護サービ スを提供することが可能なのかを論じる。 まず、以下の図6 によって介護系事業者と、非介護系事業者の場合の違いを整理する。 介護系事業者は「高齢者」に対し同一法人が運営する介護事業所の「ケアマネ」が介護 サービス(ケアプラン)を入居者に展開している。一方、非介護系事業者は介護事業所を 持たないため独立しており、外部の介護事業所の「ケアマネ」が「高齢者」に介護サービ 被説明変数:一人当たりの訪問介護費用の対数 OLSによる推定結果 推定値 標準誤差 説明変数Care 1.696 ** 0.721 サ高住全体割合 3.103 *** 0.521 住宅型老人ホーム割合 1.812 *** 0.378 平均所得 0.000 0.000 要支援2割合 -9.100 0.671 要介護1割合 -2.596 ** 0.649 要介護2割合 2.751 ** 1.382 要介護3割合 -2.668 * 1.339 要介護4割合 -1.183 1.631 要介護5割合 -0.172 2.098 等級 0.981 *** 0.101 医療費 0.000 0.000 定数項 -4.262 1.232 決定係数 0.363 -*,**,***はそれぞれ有意水準10%,5%,1%を示す 標準誤差に関しては不均一分散頑健標準誤差

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16 スの提供を行っている。 図 6 介護系事業者(左)と非介護系事業者(右)のイメージ図 またサ高住では「常駐者(ヘルパー2級18)」による基本サービス(安否確認・生活相談19) が義務付けられているが、この「常駐者」の役割にも違いが見受けられる。介護系事業者 の「常駐者」は基本サービスの仕事以外に、日頃「高齢者」に身体介護等を行う介護職員 でもあり「ケアマネ」を兼任している場合も確認できた。一方、非介護系事業者の場合は 基本サービスを提供する専任の「常駐者」であることが多い20 両者共に当事者は「常駐者」「高齢者」「ケアマネ」の3者であるが、介護系事業者の方 が介護サービスを多く利用している実証結果から、この3者のうち何れかが介護サービス を多く利用する要因を作っていることが想定される。 そこでサ高住の経営主体が介護系事業者であることによって、追加的な介護サービスが 起きる理論について以下の4つの仮説をたてそれぞれ考察する。 仮説(1)「高齢者」にとって介護サービスを利用する利便性が高いこと ・前節の実証により可能性が否定されている。 18 介護職員初任者研修以上の資格を必要とする 19 介護・医療・日常生活に関わる相談 20 介護系事業者(40 社)非介護系事業者(20 社)にヒアリングを実施した結果、介護系事業者の常駐者は 全て介護職員でシフト制を組んでおり、非介護系事業者は7割が専従者であった。なお高齢者住宅財団 のアンケート調査によると常駐者が「併設事業所と兼務」と回答している割合は54.6%であり、「住宅の 職員として専従」していると回答した割合は43.6%である。

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17 仮説(2) 高齢者のケアマネを変更するスイッチングコストを見込み追加的な介護サービ スを提供すること ・高齢者がケアマネの変更を希望した場合、非介護系事業者であれば別のケアマネ に切り替えることによって関係は途絶えるが、介護系事業者の場合は常駐者として 日常的に常駐しているため関係を継続する必要がある。このようなケアマネを変更 するスイッチングコストを見込んで介護サービスを追加する仮説であるが根拠と なる実態の把握はできていない。 仮説(3)「常駐者」が自社の介護部門の収益を増やすために追加的な介護サービスを提 供すること ・介護系事業者の常駐者がケアプランを作成するケアマネと一体となり、高齢者に 対し自社の介護部門の収益を増やすよう働きかけるという仮説である。この際、非 介護系事業者の場合では外付けの介護事業者の立場としては同様に自社の収益を 増やそうと利用者に働きかけることになるが、サ高住部門の常駐者は入居者に対し 適量のサービスをアドバイスすることになるので、その結果として外付けの介護事 業所等による過剰サービスを抑制する効果を発揮していることになる。しかし、非 介護系事業者の常駐者の日常的な仕事について実態ヒアリングをした限りでは、常 駐者がケアプランに関してのアドバイスを積極的に行う役割を果たしていないこ とが確認できた。 仮説(4)「常駐者」が高齢者の徘徊等の外部性に対し適切に対処していること ・サ高住(常駐者)と介護事業所(ケアマネ)の連携(連絡網)の強弱に違いがあ るという仮説である。図7 に示すように、入居者が徘徊等の外部性を発するような ことがあると介護系事業者の場合は常駐者が自ら介護職員であるため、当該高齢者 の状況に気づいた際に介護サービスを追加的に利用させることが容易である。介護 事業系の場合は常駐者にとってケアマネが身近な存在であり、場合によっては、常 駐者自身がケアマネであることもある。実際に、ヒアリングを行った中で、認知症 による徘徊行動が見られたため、訪問介護における外出介護(外出する際の付き添 い介護)を追加した事例があった。一方、非介護事業者の場合も同様に外部性に対 し抑制のインセンティブは働くが、介護事業所との連携が弱い。また仮説(3)で言及 したとおり非介護系事業者の常駐者はケアプランについては基本的に高齢者と外 部の介護事業者に任せており、外部性が大きい場合は身元引受人に連絡することは

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18 あるものの、常駐者とケアマネが密に連絡を取り合うような実態は把握できなかっ た。そのためこの仮説(4)がもっとも蓋然性の高い仮説と考える。 図7 介護系事業者(左)と非介護系事業者(右)のイメージ図 3 節の分析結果と、4 節の理論分析の結果から、同じ介護度であっても、サ高住の経営主 体によって介護サービスの利用量が異なることがわかった。4 節で論じた仮説に従うと、非 介護系事業者の方が外部性に対する対応が不十分であり、サービスが過小になっているこ とが想定される。しかしこの理論を論ずる前提として適量な介護サービス量を把握できて いないため、本研究の実証結果だけでは、介護サービスが過剰もしくは過小かを論じるこ とはできない。しかし、この2つの経営主体の間にはサービス量の違いがあることを証明 した。つまり少なくとも、介護系事業者と非介護系事業者のどちらか、もしくは両方が過 剰か過小になっていることが証明されたことになる。この結果を踏まえ、介護保険の仕組 みに関する政策提言を行う。

5 政策提言

実証の結果、経営主体による介護サービス量の差が確認できたが、介護サービスが過小 もしくは過剰にならないような仕組みを作ることについて提言を行う。 まず、介護事業の特性として資格職であるケアマネの存在がある。2 節でも述べたように ケアマネの9割は介護サービスを提供する介護事業所等に属しており、ケアマネには介護 保険を増やすインセンティブが働く。ケアマネ本人に介護サービスを増やす意思はなくて も、雇い主である介護事業所の意向を優先し利益誘導を働くことは問題である。特に、家 族が側にいない単身高齢者は判断能力に欠くため情報の非対称から過剰サービスの対象と なりやすい。ケアマネの適正な判断を歪めない政策として、ケアマネの介護事業所等のサ

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19 ービス分野からの独立が必要である。 また、適正なサービス量を把握する手段としてデータの蓄積が重要と考える。昨今、医 療分野における電子カルテ化21が挙げられるように、介護の分野においてもケアプランの電 子データを蓄積し標準化することが考えられる。これにより、より標準的な介護サービス を算定し、ケアマネの裁量に頼りすぎない仕組みを作ることが考えられる。この政策によ り、サ高住においても経営主体が違うことによる介護サービスの提供の差を解消すること が期待できる。ただし、医療分野と異なり介護のケアプランは掃除などの生活支援も含ん でおり、利用者の家族の存在等により利用量が異なるため、そうした世帯状況などの詳細 データも蓄積する必要がある。

6 まとめ

本稿では、サ高住の経営主体に着目し、介護系事業者と非介護系事業者による違いが介 護保険事業費に与える影響を実証した。その結果、2つの経営主体には利便性を除いたと しても、介護系事業者の方が介護給付額を多く利用していることが証明された。そこから、 介護系事業者の方がより外部性に対し密な対応をしている仮説をたて、非介護系事業者の 方が外部性に対する十分な対応ができていない可能性を示した。また実証の結果から、ケ アマネの裁量に頼りすぎないような適正な介護サービスが提供される仕組みの提言を行っ ている。 しかし、介護サービスの適正化によって、介護報酬を主な利益とする介護系事業者によ るサ高住の供給は減少する可能性が考えられる。利益相反のない経営主体による比較的自 立した高齢者を対象としたサ高住の供給を促進させるには、サ高住の経営リスクに対し経 営主体目線で考える必要がある。通常の賃貸住宅と違ってサ高住が抱える運営上のリスク は入居者が高齢者であることであり、非介護系事業者が参入する際の阻害要因となってい るのが重度化の経営リスクである。特に、新規参入時点では事業者側による入居者の選別 がある程度可能であるが、入居後に状態が変化した場合に問題が増えることが考えられる。 厚生労働省のアンケート調査においても重度化等に伴う入居継続に関して課題を感じてい ると回答した事業者は75%に及ぶ22。こうした傾向は非介護系事業者ほど深刻であり、実 際に全国50 件の事業者に調査を行った結果、住宅型のサ高住を運営する事業者から認知症 の悪化による徘徊や癇癪など問題行動等による経営リスクの実態をヒアリングすることが 21 電子情報として一括してカルテを管理しデーターベースに記録する仕組み。医療情報の標準化が期待 されている。 22 厚生労働省(2014)「高齢者向け住まいに関するアンケート調査」参照

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20 できた。特に認知症の場合は、本人との話し合いでは解決できないため身元引受人のいな い高齢者の入居を断る例は多い23。こうした重度化において、本来有効であるのは定期建物 賃貸借契約であるが、サ高住においては普通建物賃貸借契約と終身建物賃貸借が登録基準 の指針とされており、定期建物賃貸借契約は土地が定期借地契約の場合など例外扱いとな っている。定期建物賃貸借契約であれば契約終了時に入居者が重度化していた場合に契約 を更新しないことによって大家側の経営リスクを回避することができ、重度化への対応が できなくても軽度の高齢者を受け入れることが可能になる。 重度は「施設」、軽度は「在宅」の受け皿としてサ高住を機能させるには、同時に軽度の サ高住の入居者が重度化した際のセーフティーネットを充実させていく必要があると考え る。 謝辞 本稿の執筆にあたり、安藤至大客員准教授(主査)、安念潤司客員教授(副査)、植松丘 客員教授(副査)、細江宣裕准教授(副査)、三井康壽客員教授(副査)から丁寧なご指導 をいただきました。また福井秀夫教授(プログラムディレクター)、原田勝孝助教授、小川 博雅助教授、森岡拓郎講師をはじめ、本学内外まちづくりプログラム関係の教員の方々か らご指導いただきました。この場をかりて感謝を申し上げます。また学生生活の中で出会 ったまちづくりプログラムを始めとする同期の皆様にもアドバイスと励ましをいただきま したことを感謝いたします。 最期に、政策研究大学院大学で学ぶ機会を与えていただいた派遣元の住宅金融支援機構 に深く感謝いたします。 なお、本稿は筆者個人の見解を示すものであり、所属機関の見解を示すものではなく、 本稿の内容に関する錯誤は筆者の責任に帰することを申し添えます。 23 財団法人高齢者住宅財団による調査によると、連帯保証人を必要とするサ高住事業者は 84%.連帯保証 人とは別で身元引受人を必要とするサ高住事業者は36%。ただし、前者の場合は保証会社の家賃債務保 証制度を利用できる事業者もあり。また後者の場合は、任意後見人制度を有効としている事業者もある。

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21 参考文献・引用文献 ・八代尚宏(1997)「高齢者住宅政策の経済分析」『住宅の経済学』日本経済新聞社 ・泉田信行他(1998)「医師誘発需要仮説の実証分析」国立社会保障・人口問題研究所 ・山内康弘(2003)「訪問介護給付は適正か?供給者誘発需要仮説アプローチによる検証」大阪 大学大学院博士論文 ・福井秀夫(2007)「ケースからはじめよう 法と経済学」日本評論社 ・田中英明(2012)「旧高齢者向け優良賃貸住宅制度が介護保険に与える影響について」政策研 究大学院大学修士論文 ・三井住友信託銀行(2013)「急増するサ高住宅の実態と課題」 ・N・グレゴリー・マンキュー(2013)「マンキュー経済学Ⅰミクロ編(第 3 版)」東洋経済 新報社 ・財団法人高齢者住宅財団(2014)「サービス付き高齢者向け住宅等の実態に関する調査研 究」 ・一般社団法人移住・住みかえ支援機構(2015)「高齢者向け住宅政策の現状と課題-地域主導で サ高住の機能拡充を-」 ・国土交通省(2015)「サービス付き高齢者向け住宅の整備等のあり方に関する検討会 中間 とりまとめ」 ・川村匡由(2015)「改正介護保険サービス・しくみ・利用料がわかる本」自由国民社

参照

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