乳幼児を持つ母親の育児に関する語りの特徴と育児不安との関連性 [ PDF
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(2) 2% 10%. 結果と考察. 1% 0% 12%. (a+):肯定的行動や状態 (a-):否定的行動や状態 (b):理由の推測. 1. 育児不安の群分けについて. 15%. (c+):肯定的感情表現. 育児不安には以下の群がみられた。. (c-):否定的感情表現. 表3 育児不安のあり方の分類 育児不安のあり方(記号にて記載) (1)A・B (2)A・B+C (3)A・B+D (4) C (5) D (6) E 度数 15 11 5 4 3 2. (d):自身の工夫. (g):自身のあり方. 16%. 図 2 子どものことと自身の育児能力に不安がみられる群の特徴. 育児不安のあり方の違いによる語りの特徴を明らかにす. (3)子どもについての不安と孤独感がみられる群の特徴(A. るため、育児不安のあり方(6)と、分類困難を除く語りの各. もしくは B+D). 項目(9)の出現数に関してχ2 検定を行った結果、有意であっ. 子どもの否定的な行動や状態と、育児そのものに関する. 。残差分析の結果を表 4 に示し、 た(χ2(40)= 150.62, p<.01). 語りが多くみられた(図 3) 。. 以下、育児不安のあり方における語りの特徴を記述する。. a+ ab c+ cd e f g. ⇒具体的な子どもの様子に困っているだけではなく、育児. 表4 育児不安と語りの特徴についてのχ 2 分析残差 (1) (2) (3) (4) (5) (6) .52 .10 -.22 .63 -.56 -1.11 1.58 2.33* -1.56 -1.01 -.94 - 2 . 8 4 * * 1.17 .01 -.21 -.94 -.34 -.34 -1.34 1.09 -.86 2.29* -.31 -.99 2.00* -1.26 -.40 .02 -1.08 .27 -1.70 1.30 1.57 .48 -1.11 -1.11 -2.49* -1.06 -.64 1.18 1.64 4 . 4 5 * * -1.67 - 2 . 6 1 * * 3 . 4 3 * * -.65 3 . 6 1 * * .30 -2.57* -2.63** 1.15 -1.01 2.46* 7.04**. への向かえなさを抱えていることがうかがわれる。 12%. 5%. 12% (a+):肯定的行動や状態 (a-):否定的行動や状態. 1%. (b):理由の推測. 22%. 12%. (d):自身の工夫 (e):他者との関係 (f):育児そのもの. 17%. (1)子どもについての不安がみられる群の特徴 (A もしくは B). 4%. 子どもの否定的な行動や状態と、子どもへの否定的感情. (4)自身の育児能力に不安がみられる群の特徴(C). いて語ることはほとんどみられない(図 1) 。. 子どもの否定的な行動や状態と、子どもへの肯定的感情. ⇒子どもについて具体的に「困っていること」が存在し、. の語りが多く、自身のあり方についての語りはほとんどみ. それを否定的に捉えていると推測される。また、理由の推. られない(図 4) 。. 測の語りの割合を考慮すると、子どもの行動や状態の理由. ⇒子どもの否定的行動や状態がある理由を、感情との矛盾. を推測しながら育児を進めていると考えられる。. から、自身の育児能力のなさに求めてしまう傾向があるの ではないかと推測される。. (a+):肯定的行動や状態. 13%. (g):自身のあり方. 15%. 図 3 子どもについての不安と孤独感がみられる群の特徴. を語ることが多く、他者との関係や自分自身のあり方につ. 4%. (a-):否定的行動や状態. 5% 2% 0% 15% 8%. (b):理由の推測. 23%. (c+):肯定的感情表現. (a+):肯定的行動や状態 (a-):否定的行動や状態. (c-):否定的感情表現. (b):理由の推測. (d):自身の工夫. 35%. 4%. (c+):肯定的感情表現. 19%. (e):他者との関係. (c-):否定的感情表現. 25%. (f):育児そのもの. 19%. (c+):肯定的感情表現 (c-):否定的感情表現. ***p<.001 **p<.01 *p<.05. 0% 2% 0%. (e):他者との関係 (f):育児そのもの. 2.育児に関する語りの特徴と育児不安との関連. . 36%. 8%. (d):自身の工夫 (e):他者との関係. (g):自身のあり方. (f):育児そのもの. 14%. 図 1 子どもについての不安がみられる群の特徴. (2)子どものことと自身の育児能力に不安がみられる群の. 12%. (g):自身のあり方. 図 4 自身の育児能力に不安がみられる群の特徴. 特徴(A もしくは B+C). (5)孤独感がみられる群の特徴(D). 子どもの否定的な行動や状態を語ることが多く、自身の. 自分自身のあり方と育児そのものの語りが多くみられた。. あり方や育児そのものの語りはほとんどみられない(図 2) 。. ⇒育児への向かえなさが、サポートのなさからだけではな. ⇒具体的な「困っていること」の存在が推測される。また、. く、妻、母などの自身の役割への葛藤からももたらされて. 自身の工夫の割合を考慮すると、工夫しながら子どもに関. いることがうかがわれる。. わるが、効力感が持てない状態であることがうかがわれる。. 2.
(3) 11%. 11%. ここでは、一番変化が大きかった C さんを抜粋して、育. (a+):肯定的行動や状態. 児に関する語りの特徴の変化をグラフにて記載する。. (a-):否定的行動や状態 (b):理由の推測. 18% 24%. 6 5 出4 現3 数2 1 0. (c+):肯定的感情表現 (c-):否定的感情表現 (d):自身の工夫. 7% 0% 11%. (e):他者との関係 (f):育児そのもの. 14%. 4%. (g):自身のあり方. 図 5 孤独感がみられる群の特徴. 肯定的. #1. (6)自分の見通しの立たなさに不安がみられる群の特徴(E). #2. 否定的. #3. 図7 Cさんの子どもの行動や状態の語り. 他者との関係や自分自身のあり方についての語りが多く、 子どもの否定的な行動や状態の語りは少なかった(図 6) 。. 6 5. ⇒自身のことの語りがほぼ半数。具体的な子どもとの関わ. 出4 現3 数2. りに困るというよりも、妻、母、嫁など、複数の役割を抱 えることによる葛藤を抱えていることがうかがわれる。. 1 0. 7% (a+):肯定的行動や状態. 7% 29%. (a-):否定的行動や状態. #1. (b):理由の推測. 14%. 4% 21% 0%. #3. ⇒育児に関する語りには変化がみられる。語りは、子ども. (d):自身の工夫. の成長への気付き、子ども以外の家族の様子などの影響を. (e):他者との関係. 18%. #2. 図8 Cさんの子どもへの感情表現. (c+):肯定的感情表現 (c-):否定的感情表現. 0%. 肯定的 否定的. (f):育児そのもの. 直接受けやすいため、変化するのではないかと考えられる。. (g):自身のあり方. 2.3 事例にみられた育児不安のあり方 A さん:#1 では「孤独感」がみられた。#2 では「子どもに. 図 6 自分の見通しの立たなさに不安がみられる群の特徴. 第一研究のまとめと課題. ついての不安と孤独感」がみられた。. ⇒育児に関する語りの特徴から、育児不安のあり方を推測. B さん:#1 と#3 に「子どもについての不安と孤独感」がみ. できる可能性が示唆された。語りの焦点を理解することで、. られた。#2 に「孤独感」がみられた。. 育児不安の推測の手掛かりにできると考えられる。. C さん:#1∼#3 通して「子どものことと自身の育児能力へ. ⇒各群の援助のあり方の相違について検討していく必要。. の不安」がみられた。 ⇒子どものことについての育児不安には変化がみられたこ. 【第二研究】. とから、子どもについての不安の有無は、実際の子どもの. 目的 継続的に育児支援に参加する母親の育児に関する語. 状態によって異なると推察される。ただし、C さんのよう. りの特徴と育児不安のあり方を記述すること。. に、子どもの否定的状態への目の向きやすさがみられる場. 方法. 合もあり、母親の状態をみながら援助を考える必要がある。. 対象;B 病院育児支援学級に参加している母親 3 名. ⇒自分自身についての育児不安には変化がみられにくい。. 調査方法;育児支援活動に参加している母親から自発的に、. 育児不安の要因のなかでも、母親が「気になる」ときの焦. もしくは筆者から話しかけ個別的な面談を実施。なお、面. 点の当てやすさ、目の向きやすさ自体は変化しにくいと考. 接の内容、時間、周囲の状態等は構造化されていない。ま. えられる。. た毎回アンケートにて「心配なこと」を調査した。. 3.アンケートの回答について. 分析方法;第一研究と同様の手続きにて実施した。. A さん:#1 未提出、#2「母乳」と記述。語りから推察さ. 結果と考察. れた不安の要因と一致した。. 1.3 事例にみられた語りの特徴. B さん:#1「なし」 、#2「湿疹」 、#3「湿疹」 「排泄」 「睡眠」. A さん、B さん、C さんともに、子どもの否定的な行動. と記述。語りから推察された不安の要因と一部一致した。. や状態の語りと、否定的感情表現の減少、子どもの肯定的. C さん:#1「なし」 、#2 記述なし、#3「なし」と記述。語. な行動や状態の語りと、肯定的感情表現の増加がみられた。. りから推察された不安の要因と一致しなかった。. 3.
(4) ⇒育児不安の要因が表現されるときと、されないときがあ. われる。しかし、子どものことへの不安がみられるときに. ることから、母親自身にとっても、育児不安の要因が捉え. は、具体的な助言や気付きの促しが援助となる場合もあり、. がたいことが推察された。参考として「心配なこと」を尋. やり取りのなかで判断していく必要があると思われる。. ねることにも意味はあるが、語りの自然な流れのなかから 支援を考えることも必要であると思われた。. 【総合考察】. 4.筆者の関わりについて. 1.育児不安と育児に関する語りの特徴との関連性. 筆者と母親とのやり取りを記録した。以下、尋ねられた. 第一研究からは、育児に関する語りの特徴から育児不安. ことへの現実的な助言、子どもへの気付きの促しを下線、. を理解する手掛かりが得られると考えられた。また、第二. 共感やねぎらいは<>をつけ太字にて記載した。. 研究の継続的面接のなかでは、語りは変化するが、育児不 安は変化する部分としない部分が存在していた。. 表5 Aさんの語りと筆者の関わり Aさん:30代後半。8月に第一子(女児)出産。 育児不安. #1. 孤独感. 語りとAさんの状態. 筆者の関わり. 赤ちゃんの抱き方やミルクの量につい て尋ねる. 抱き方、ミルクについて アドバイス. ⇒育児に関する語りは育児不安を理解する手掛かりになる が、実際の子どもの変化に気づくこと、育児に慣れてくる ことなどを通して、変化する可能性があると推察された。. 沈んだ表情、抱き方とも変化なし 母乳があげられないので、愛着が感じ られないのではと心配を語る. また、育児不安の要因をもたらす母親の焦点の当てやすさ、. 抱っこしているし大丈夫 と伝える. 目の向きやすさの変化しにくい部分は、母親によって異な. 愛着についての心配を再度語る. ると考えられることから、育児不安のあり方を理解したう <動きの変化と接し方 について聞く>. 泣き方の変化,子どもの動きの変化を 語る. #2. えでの援助が必要になると考えられた。 2.育児不安のあり方の理解と育児支援に向けて. 関わり分からないけれどやってみてい 子どもに ると笑顔で語る ついての 母乳とミルクの比率,上げ方といった 不安 具体的な関わりを尋ねる と孤独感. 母親との関わりから、子どもについての「困ったこと」. 師長さんに尋ねましょう と誘う. が具体的に語られるようになると、アドバイスを積極的に. 真面目な表情で師長さんの 話を聞き、笑顔がみられる. 求め、またアドバイスや子どもへの気付きの促しが援助に. 相談できる人がいないことを語る. 繋がると推察された。しかし、自分自身への不安がみられ. <大変さをねぎらう>. る場合には、共感やねぎらいも必要になると考えられた。. 表6 Cさんの語りと筆者の関わり Cさん;20代後半。2月に第一子出産。 育児不安. #1. #2. 語りとCさんの状態. 筆者の関わり. ⇒育児支援では、育児不安に及ぼす要因のうちでも自身の ことと、子どものことのどちらがより大きいのかを理解し、. 表情硬く寝返りができないと語る 子どもの ことと自 身の育児 能力への 不安. しっかり両手で体を支えて いると伝える. 支えることはできても回れないと語り 表情は硬いまま. <体の固さ気になりますか >. 子どもの ことと自 身の育児 能力への 不安. でも首を突っ張らせてしまう. 寝返りできてきましたね. 続けています。できることも増えてい るし、大きくなっているとは思う. <マッサージ確認、さわっ ていての感じの変化を尋 ねる>. そうですね(うなずく)マッサージ もしているけれど、この状態になるの も嫌がる、なんでですかね. #3. (1)本研究の方法の問題. でも、体のこと気になると語る 体は固いけどできると笑顔. 成長を伝える. 歯も生えてきたが下だけ3本,下2本の 後は上が生えてくるはずなんですけど と語る. すぐ下も生えてくるはずと 伝える. (2)育児不安の変化についての検討 育児不安のあり方の長期的、個別的な詳細な検討が必要。 (3)対象者の問題 本研究において対象となったのは、利用者のなかでも“育 児に関する語り”を遠まわしにであったとしても語った母 親であった。より多くの利用者を対象とし、潜在的に育児. 「ですかね。」とあまり納得はして いない様子 K君もお座り同じくらいできる,同い年 さんはペース一緒,Tちゃんは掴まり立 ちできるから早い. には、共感やねぎらいが重要になると考えられる。 3.今後の課題. 寝返りについて確認. 子どもの ことと自 身の育児 能力への 不安. 援助に繋げる必要がある。特に、孤独感を抱えている場合. 不安を抱える母親への援助を検討する必要。. <うなずきながら、そうで すねと伝える>. うちはどうかな。と笑顔で語る. 【主要引用・参考文献】. 現実的な助言や、子どもへの気付きの促しを行ったときの. 住田正樹,溝田めぐみ(2000) 母親の育児不安と育児サーク. 母親の様子は、育児不安のあり方によって異なる傾向。. ル,九州大学大学院教育学研究紀要, 3,23-43.. ⇒自分自身への不安がみられるときには、尋ねられたこと. 柴原宜幸,橋本栄里子(2003) 0-3 ヶ月児をもつ母親のニー. への現実的な助言や、子どもへの気付きの促しがそのまま. ズの構造についての一考察,日本橋学館大学紀要,2,27-37.. 援助には繋がりにくいこともあることがうかがわれた。共 感やねぎらいなど、寄り添うような援助も必要であると思. 4.
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