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アルミニウム表面処理の特許紹介

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アルミニウム表面処理の特許紹介

安 清一

1)

、 丸田正敏

2)

、 佐藤敏彦

3)

1)ANODA、2)キザイ(株)、3)元芝浦工業大学 1.はしがき

欧州特許庁の特許データベースでアルマイト関連特許を検索していたら、幸運なことに、2008 年 以降に9件のアルマイトの封孔処理や後処理の特許が公開されていたので本稿を執筆することにした。

日本特許も欧州特許庁の特許データベースに含まれている。また、最近の流行である「環境に優しい 表面処理技術」(Environment friendly surface treatment)のキーワードで検出された特許も紹介す る。最近のアルマイト特許やめっき特許の80%強は中国特許である。中国の人口や大学・研究所の数 からも今後も中国特許は激増するだろう。韓国特許も年々、多くなっている。なお、本稿で紹介する 外国特許は原文特許ではなくて、欧州特許庁の特許データベースに掲載されている英文アブストラク トの紹介である事と誤訳の恐れをお許し頂きたい。

2.封孔処理の特許

2.1 封孔処理されたアルマイトのシリケート処理

(米国特許 2008/0032121,2008 年2月7日)

 この米国特許は日本特許庁に米国公開特許和文抄録としても登録されている。公開番号は 2008/0032121 である。したがって、この米国特許の要約は日本特許庁のホームページでも読める。

この要約には以下のように書いてある。

 「この発明は、特に自動車産業における完全に封孔陽極処理したアルミニウム部品の後処理法に 関する。この発明の封孔陽極処理されたアルミニウムの後処理法は、封孔陽極処理されたアルミニ ウム材料の表面にシリケート水溶液を塗布することからなり、この表面は5μmのフイルム厚さと 90%以上の封孔率(SR)を有する封孔陽極処理層を含むことを特徴とする」。

 上記の抄録文の後に「実施例」の説明が続くが、本稿では省略する。

2.2 アルマイトの耐食性を向上させる方法

(米国特許 2008/073220、2008 年 3 月 27 日)

 米国特許であるが、発明者と出願人はアイルランド人である。英文アブストラクトには、「シリ カを含む浴による常温封孔処理と高温封孔処理の2段処理を行う」との短文が書いてある。

2.3 ナノ粒子のゲルマニウムでアルマイトを封孔処理する方法

(韓国特許 100822355、2008 年 4 月 17 日)

 特許名称の「ナノ・ゲルマニウム」の言葉を見て驚いたが、英文アブストラクトを見たら、ニッ ケル塩、コバルト塩、ほう酸、と3g/L~10g/Lのナノ・ゲルマニウム粒子を含む浴で封孔処 理を行うと書いてあったので安心した。この封孔処理を行うと、アルマイト皮膜は非常に滑らかで、

その他の皮膜特性も良好であり、従来の封孔処理法に比べて経費削減(cost reduction)になると 述べている。

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2.4 アルマイト皮膜を高電気絶縁性に封孔処理する方法

(中国特許 101275266、2008 年 10 月1日)

 10分~15分の常温フッ化ニッケル封孔処理を行い、その後、3分~5分の高温封孔処理を行う。

そして、通常の乾燥を行う。その結果、ベーマイト皮膜の体積が増えて、アルマイト皮膜は高電気 絶縁性皮膜になる。

2.5 中温封孔処理剤でアルマイト皮膜の孔を閉じる方法

(中国特許 101323965、2008 年 12 月 17 日)

 封孔処理浴の組成はアルカリ金属塩あるいはアルカリ土類金属塩とキレート剤とpH緩衝剤であ る。封孔処理温度は75℃~90℃である。従来の封孔処理法のように高価なニッケル塩やコバルト塩 を使っていないので本特許による封孔処理法はロー・コストである。さらに、使用した有機キレー ト剤は生分解性で安価であり、さらに、従来の封孔処理法で使われているベンゼン環の巨大分子を 含んでいない。表面をぼやけさす性質も無い(anti-pruina property)。耐蝕性や耐汚れ性も向上す る。

2.6 アルマイト皮膜にセリウムを含んでいる化合物を堆積させる方法

(中国特許 101275265、2008 年 10 月 1 日)

 アルミニウムを前処理して陽極酸化する。そして、アルマイト皮膜にセリウムを含んでいる化合 物を交換堆積させて封孔処理を行う(the exchange deposition of the cerium-contained compound)。

交換堆積の溶液は3価セリウムまたは4価セリウム、または両者の混合液に酸化剤を加えた溶液で ある。

2.7 陽極酸化皮膜の封孔処理方法

(特開 2010 - 77532、2010 年 4 月 8 日)

 【解決手段】アルミニウム又はアルミニウム合金の表面に形成された陽極酸化皮膜の表面を、封 孔処理液で処理する工程を含む陽極酸化皮膜の封孔処理方法において、前記封孔処理液は、0.02~

20g/Lのリチウムイオンを含み、前記封孔処理液のpH値を10.5以上とし、前記封孔処理液の温 度を65℃以下とする。

2.8 アルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理方法

(特開 2010 - 248545、2010 年 11 月 4 日)

 【解決手段】染色したアルミニウム合金の陽極酸化皮膜を、水溶性カチオンポリマー水溶液に浸 漬した後、マグネシウム塩及び/又はカルシウム塩からなる封孔剤を含む封孔処理液に浸漬して封 孔処理することを特徴とするアルミニウム合金の陽極酸化皮膜用封孔処理方法。

2.9 アルミニウムの表面処理方法

(特開 2010 - 270344、2010 年 12 月2日)

 【解決手段】アルミニウム製の部材の表面に陽極酸化皮膜を形成してから、この陽極酸化皮膜の 表面にプラズマ処理を施した後、この表面に撥水性及び撥油性を有する化学物質の分子を吸着させ て、この表面に単分子皮膜を形成する。前記部材の表面をプラズマ処理した後、30分以内にこの表 面に単分子皮膜を形成する為の処理を開始する。前記単分子皮膜を形成する化学物質の分子は、機 能部位にフッ化炭素基を、反応部位にメトキシシリル基を、それぞれ有する。

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3.化成処理の特許

3.1 アルミニウム合金表面を希土類元素で化成処理する方法

(中国特許 101260521、2008 年 9 月 10 日)

 化成処理浴の組成はセリウム塩、酸化剤、促進剤、morphology truing agent などである。

3.2 アルミニウム合金の酸化処理液と処理方法

(中国特許 101463476、2009 年6月 24 日)

 処理浴の組成はアルミン酸塩、クエン酸またはクエン酸塩、メタバナジン酸塩、フッ化物と無機 酸である。

3.3 アルミニウム表面に超疎水性膜を作るための準備方法

(中国特許 102041509,2011 年 5 月 4 日)

 脱脂したアルミニウム試料をシュウ酸と塩酸の混合液に浸漬する。次に、過マンガン酸溶液に浸漬 して、その後、加熱炉で80℃~100℃に加熱した。最後にステアリン酸のアルコール溶液に浸漬する。

3.4 航空機用アルミニウム合金の表面防食ゾルとその処理方法

(中国特許 102174289、2011 年 9 月 7 日)

 当該ゾルは以下の薬品で調整される。オルガノシロキサン、有機溶媒、添加剤、希土類塩、水、触媒。

3.5 アルミニウム表面への黄金色クライオライト化成皮膜を化成するための処理液と処理方法

(中国特許 10224358、2011 年 11 月 16 日)

 化成皮膜は2層構造である。外層は有機物層で、内層はクライオライト(氷晶石、NA3AlF6)

を含んでいる層である。化成処理浴の成分は fluotitanic acid、フルオロジルコニウム酸、タンニン 酸、フッ化物、マンガン塩の混合浴である。

 なお、氷晶石はアルミニウム製錬の溶融塩電解浴として有名である。

3.6 アルミニウム合金の洗浄方法及び脱スマット処理液

(特開 2010 - 90447、2010 年 4 月 22 日)

 市販の表面処理薬品には薬品メーカーのノウ・ハウとして、ppmオーダーの添加剤が加えられ ている場合が多い。この特許はノウ・ハウの公開に相当すると思った。

 【解決手段】本発明においては、従来の脱スマット処理液にフッ素を3~300ppm添加し、6価 クロムを含まずに洗浄する。微量のフッ素を使用することにより低い接触抵抗を確保できるため、

スポット溶接の信頼性が向上する。また化成処理を行う場合にも、表面の酸化皮膜およびスマット の除去性が良くなり、化成処理の耐食性が向上する。3件の実施例が3枚の処理工程フロー表で示 されている。

3.7 FRP構造体、FRP構造体の接着方法、及びFRP構造体の製造方法

(特開 2009 - 248358、2009 年 10 月 29 日)

 【課題】環境等への負荷を低減すると共に、軽合金製インサートとFRP製部 材との接着強度を長期にわたり維持することができるFRP構造体を得る。

 【解決手段】アルミニウム合金製インサートの接着面に化成皮膜が形成されて おり、この化成皮膜の表面にカチオン電着塗装により電着塗膜が形成されている。

さらに、電着塗膜とFRP製部材の接着面との間に介在された接着剤により、ア

ルミニウム合金製インサートとFRP製部材の接着面とが接着されている。すな 図1 流れ図

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わち、化成皮膜と電着塗膜と接着剤とで構成される接合部によってアルミニウム合金製インサート とFRP製部材とが接合されてFRP構造体が形成されている(図1)。

4.陽極酸化の特許

 環境制御室の構成部材、環境制御室の構成部材の製造方法

(特開 2009 - 24928、2009 年 2 月 5 日)

 アルミニウムよりもマグネシウムが大好きな技術者が喜ぶ特許に遭遇した。特殊領域の課題なの で、発明者たちの説明を信じるが、「アルミではダメか?」との気持ちが残る。なお、本特許の筆 頭発明者の氏名をキーワードにして、特許検索すると 1,144 件の特許が検出された。同姓同名者も 含まれている可能性があるので、「アルミニウム」と「筆頭発明者の氏名」の組み合わせキーワー ドで検索したら 117 件の特許が検出された。電子工学分野で高名な先生である。

 【課題】 軽量で電磁波遮蔽特性の高い環境制御室の構成部材を提供する。

 【解決手段】 環境制御室としてのクリーンルームは、複数のグレーチング床パネルを有し、グレ ーチング床パネルには複数の側壁パネルが建て込まれている。さらに、側壁パネルの上面には格子 天井が設けられている。グレーチング床パネル、側壁パネル、格子天井で囲まれた領域が、空気の 清浄度や電磁波等が制御されたエリアを形成している。ここで、構成部材であるグレーチング床パ ネル、格子天井を構成する材料はマグネシウム合金である。そのため、アルミニウムを用いた従来 のものと比べて、軽量で電磁波遮蔽特性が良好である。なお、上記マグネシウム合金を用いた構成 部材は、耐食性を向上させるための不動態化処理がされていることが望ましい。

5.その他の特許

5.1 アルカリ性洗浄用電解水とその生成方法及び生成装置

(特開 2006 - 150272、2006 年 6 月 15 日)

 【課題】 鉄やアルミニウム又はアルミニウム合金等の金属種に関係なく、これ等金属を洗浄して も腐食の心配がなく、電解質を溶解する際に発生する溶解熱を吸熱とすることができると共に、キ レート剤の添加と軟水器の設置を不要とし、配管や部品類へのスケール付着量を少なくすることが でき、且つ、蒸発残留物の増加を防止することを可能にしたアルカリ性洗浄用電解水と、その生成 方法及び生成装置を提供する。

 【解決手段】 原水に電解質としてメタ珪酸ナトリウム又はオルト珪酸ナトリウムを添加し、この水溶 液を有隔膜電解槽1で電気分解する。原水に電解質を添加した水溶液の電気伝導度を20~80mS/m に調整し、電解槽1の両電極3,4間に流れる電気量を0.04~0.3C/mlに調整する。

 水ガラスでアルマイトを封孔処理する方法は以前から知られているが、2,3の欠点もあるので、

この電解水でアルマイトの封孔処理は出来ないだろうかと考えた。

5.2 酸性浴中でアルミニウム金属シートを陰極電解して、アルミニウム金属シート上に太陽光の 選択吸収層を形成してから、アルミニウム金属シートを電解酸化する方法

(オーストリア特許 507491、2010 年 5 月 15 日)

 1970年代のオイル・ショックの頃、日本でも本特許と類似の研究が多く行われた。脱脂したアル ミニウム・シートを添加剤を含む硫酸浴で陰極電解した後、この硫酸浴で陽極電解を行い、さらに

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別の添加剤を含むリン酸浴で陽極電解する。また、硫酸浴、リン酸浴、着色浴には相互に良い影響 を与えるキレート剤を含んでいる。

5.3 ポリマーにアルミニウム合金を永遠に結合させる方法

(中国特許 102107495、2011 年 6 月 29 日)

 特許名称の「永遠に・・・」は白髪三千丈のお国柄を感じた。箇条書きで紹介する。(1)アルミ ニウムの表面を清浄、(2)アルミニウムの処理しない部分をマスキング、(3)UV照射、(4)マス キングを除去して、樹脂をインジェクション・モールドする、(5)モールドが冷えてから、複合体 を取り出すと、アルミニウム上には酸化皮膜が形成されている。

5.4 廃棄されたリチウム・イオン電池の陽極材料から有価金属を回収するための前処理方法

(中国特許 101969148、2011 年 2 月 9 日)

 「環境に優しい」、「アルミニウム」、「表面処理」の組み合わせキーワードで特許検索を行ってい たら、想定外の本特許が検出された。有価金属の回収は以下の 4 段階で行われる。(1)リチウム・

イオン電池を真空炉で加熱溶解する、(2)選別、(3)リチウム・コバルト酸化物スラグを硫酸と過 酸化水素溶液で溶解抽出する、そして、(4)分離されたアルミニウム箔を溶解抽出液に浸漬する。

6. テレビ番組で紹介されていた、「メキシカン・ピューター」はアルマイト屋さんの新しい仕事に ならないだろうか?

 「アルニウム表面処理の特許紹介」の表題から脱線した内容であるが、アルマイト屋さんのビジネ スへのアドバイスにならないだろうかと思って以下の紹介をする。フジテレビが 2012 年 6 月 16 日

(土)08:30 ~ 09:55 に放映した「にじいろジーン」と言う番組で、「メキシカン・ピューター」が紹 介された。ホームページでは、「メキシコシティを旅しているジーンちゃんが、閑静な住宅街にある とある『ベー・エメ・テー・レガロス』というお店を訪問。こちらはメキシカン・ピューターと呼ば れる、アルミ製の伝統食器を販売しているお店で、卸売価格で購入することが可能」と番組の一場面 を紹介をしている(http://kakaku.com/tv/channel=8/programID=12277/page=685/)。

 この「アルミ製の伝統食器」が実に素晴らしかった。幾つかのホームページで18世紀頃の錫合金製 の「ピューター(Pewter)」と「メキシカン・ピューター(Mexican Pewter)」の違いが解説されて おり、画像ホームページ検索をすると多数のメキシカン・ピューター製品の写真が現れる。

7.むすび

本稿も共著者との個別の討論を佐藤敏彦が作文した。

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