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〈論文〉超臨界流体によるアルミニウム表面処理の特許紹介

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Academic year: 2021

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超臨界流体によるアルミニウム表面処理の特許紹介

安 清一

1)

、 丸田正敏

2)

、 佐藤敏彦

3) 1)ANODA、2)キザイ(株)、3)元芝浦工業大学 1.はしがき  潤滑アルマイト、抗菌アルマイト、光触媒アルマイト、アルマイトをテンプレートとするナノマテ リアルなどのハイテク・アルマイト研究の次世代テーマを探していたところ、「超臨界流体」の言葉 に出会った。そこで、本稿の表題の原稿を執筆した。なお、近畿大学には「超臨界流体」が専門の先 生方がいるので、「釈迦に説法」の感じがして恐縮である。 2.超臨界流体の特許件数  表1の組み合わせキーワードで特許検索した時の特許件数を示す。特許の引用について、特許庁の ホームページでは、「当サイトで提供する情報は著作権の対象となっておりますが、原則、当サイト から取得した情報であるとの出典を明記することにより、改変しない限り引用及び複製を行うことが できます。ただし、単純複製を行うことは、原則として認められません」と書いてある(http:// www.publication.jpo.go.jp/html/guidance.htm)。  表1の集計結果については、「洗浄」でカウントされた特許が、「陽極酸化またはアルマイト」でも 重複カウントされた場合もある。また、指定のキーワードを含んでいるが「超臨界流体による繊維の 前処理の後でアルミニウムなどの有機金属錯体の使用」のような特許が検出されているので、厳密な 特許件数ではない。「めっき」の場合も、特許は多くはない。アルマイト技術やめっき技術での超臨 界流体技術の応用はこれからであろう。 表1 超臨界流体の特許件数 検索キーワード 特許件数 「超臨界流体」のみの単独検索キーワード 1901件 「アルミニウム」と「超臨界流体」の組み合わせ検索キーワード 77件 「アルミニウム」と「洗浄」と「超臨界流体」の組み合わせ検索キーワード 9件 「アルミニウム」と「前処理」と「超臨界流体」の組み合わせ検索キーワード 4件 「アルミニウム」と「陽極酸化またはアルマイト」と「超臨界流体」の組み合わせ検索 キーワード 5件 「アルミニウム」と「表面処理」と「超臨界流体」の組み合わせ検索キーワード 0件 (参考資料)「めっき」と「超臨界流体」の組み合わせ検索キーワード 49件

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3.超臨界流体の特徴  歴史は工業所有権情報・研修館のパテントマップの一つである「超臨界流体」で紹介されており、 「1970年代には超臨界二酸化炭素によるコーヒー豆の脱カフェインが研究され、1978年には最初の工業 化装置が建設された」との解説がある(http://www.inpit.go.jp/blob/katsuyo/pdf/chart/fkagaku13.pdf)。  高い圧力に耐える丈夫な容器の中に入っている水または炭酸ガスなどの物質を高圧力下で加熱する と、固体、液体、気体のいずれでもない「超臨界流体」と呼ばれている流体になる。超臨界二酸化炭 素流体の臨界圧力は72.8気圧で、臨界温度は31.0 ℃である。  一方、水の超臨界流体の臨界圧力は218.3気圧で、臨界温度は374.3℃である。臨界点以上の状況で 超臨界流体になる(図1)。  「二酸化炭素の臨界圧力は72.8気圧」を具体的にイメージすると、水深720メートルの水圧である。 なお、スポーツのスキューバ・ダイビングでは水深40メートルより深い潜水が業界のルールとして禁 止されている。さらに、「水の臨界圧力は218.3気圧」なので、水深2100メートルの水圧である。特殊 な潜水艦は1万メートルの潜水も可能なので、水の臨界圧力は潜水艦の水深のイメージといえる。  超臨界流体は、「気体の性質と液体の性質を持った流体」と言われている。「気体の性質」があるの で、拡散性や隙間への浸透性がある。一方、「液体の性質」があるので、特殊な溶媒性、溶解性、抽 出性、洗浄性などがある。さらに、「環境負荷の小さい技術」として多方面の産業分野で大きい期待 がされている。しかし、工業化技術の点で解決しなくてはいけない課題があるので超臨界流体は揺籃 期の技術である(図2)。揺籃期の技術をアルマイト技術への応用を検討すれば大発明の可能性がある。 図1 2種類の超臨界流体の状態図 図2 成長曲線

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4.超臨界流体実験装置と家庭調理用圧力鍋の共通点  多くのアルマイト技術者は家庭調理用圧力鍋の長所と課題を熟知している。家庭調理用圧力鍋を使 うと、美味しい料理が短時間で調理できる事が知られている。しかし、「圧力鍋」であるので、「安全 装置が取り付けてありますが、取扱説明書を必ずお読み下さい」と圧力鍋メーカーのパンフレットに 書いてある。  圧力鍋の蒸気圧は2気圧程度であるが、超臨界二酸化炭素流体でも72.8気圧であるので、十分な注 意が必要である。更なる問題は超臨界流体実験装置の製造での安全基準である。これら超臨界流体技 術の工業化での問題点が科学技術振興機構(JST)によりYouTubeにアップロードしている。動画の 名称は「最適化をめざす洗浄技術—実用化に近づく超臨界流体技術」のである(http://www. youtube.com/watch?v=ZWmDm8s1P9A)。YouTubeの動画は5分前後の短編の場合が多いが、上記 の動画は16分10秒で豊富な内容である。動画の前半では超臨界流体の性質と洗浄メカニズムなどが解 説され、動画の後半は超臨界流体による洗浄技術の工業化を産学協同や国の助成金を受けて研究して いる会社が紹介されている。動画画面の一部分には日本で最大の超臨界二酸化炭素洗浄装置の動画写 真と共に、一部の動画写真に「現在、超臨界二酸化炭素洗浄装置は高圧ガス保安法の規制対象になっ ている」、「そのために製品品質が過剰になり普及実用化にとっての妨げになっている」などの文章が 書き込まれている。超臨界流体を称賛している解説論文は多いが、工業化での課題の一端を示してい る情報は他では公開されていないので、この動画は非常に有益である。 5.超臨界流体の参考書と解説論文  多種、多様の分野で検討されている超臨界流体の概況を知るためには、日刊工業新聞社発行の佐古  猛、岡島いづみ共著、「超臨界流体のはなし」をお勧めする。「流体の温度・圧力を臨界点以上に高 めると、液体でも気体でもない、超臨界流体になり、常温・常圧下とはまるで異なる性質を示すよう になる。本書は超臨界流体の基本事項と、水、二酸化炭素など、代表的な物質の活用事例、最新の研 究成果を簡潔にする」と出版社のホームページで内容紹介をしている。  一方、表面技術、Vol. 61 (2010) , No. 8は「小特集/超臨界流体と表面処理技術」で、1編の総説; 超臨界流体と表面加工技術と4編の解説;(1)超臨界二酸化炭素を用いた電気化学的ナノプレーテ ィング、(2)超臨界流体中での化学的薄膜堆積—なぜ被覆性・充填性に優れているのか—、(3)超 臨界二酸化炭素処理技術のフォトリソグラフィへの応用と微小レジストパターンの密着強度への影 響、(4)超臨界流体を用いた先端半導体洗浄技術と1編のトピックス;超臨界流体中アニールによ るめっき銅膜の改質が掲載されている。なお、表面技術、Vol. 59 (2008), No. 5 の「小特集/環境対応 型プラスチックめっきの動向」では、超臨界二酸化炭素を用いた改質成形,無電解めっき技術の解説 論文が掲載されている。 6.超臨界流体での表面処理実験法のイメージ図  プラスチックスや金属を超臨界流体と接触させるだけで表面洗浄や表面エッチングがされる場合が ある(図3)。そして、表面処理後の二酸化炭素ガスは大気中に放出されるので、廃水処理が不要で、 「環境に優しい表面処理」と言われている。超臨界二酸化炭素流体と水は溶解しないので、図4に示 すエマルジョン状態で浸漬処理をしたり、電解処理が出来る。

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7.アルマイト技術者に関連のある超臨界流体の特許紹介  表1で検出された特許のなかの幾つかを以下に紹介する。特許の原文と筆者らのコメントを区別し 易いように、特許の【要約】は表で示した。  7.1 特開平10-125644の紹介と筆者らのコメント   平成10年は1998年なので超臨界流体と応用技術としては先駆的である。この発明の対象金属また は物質は、「ケイ化チタン,窒化タンタル,シリコン,ポリシリコン,窒化シリコン,SiO2 ,ダ イアモンド・ライク・カーボン,ポリイミド,ポリアミド,アルミニウム,銅を含むアルミニウム, 銅,W,Ti,Ta,Pt,Pd,Ir,Cr,強誘電体材料,高誘電率材料からなる群から選択された材 料を含むことを特徴とする、請求項9に記載のクリーンプレシジョン面形成方法」である。 表2 特開平10−125644の【発明の名称】と【要約】 【発明の名称】クリーンプレシジョン面形成方法 【課題】 プレシジョン面から残留物を除去する方法を提供する。 【解決手段】 半導体試料16のようなエッチングされたプレシジョン面から残留物を除去する方法 は、プレシジョン面から残留物を除去するのに十分な適切な条件の下で、プレシジョン面を超臨 界流体または液体CO2に暴露する工程を含む。極低温エーロゾルは、超臨界流体または液体CO2 のいずれかと共に用いることができる。 図3 超臨界流体での表面処理実験法(その1) (A)試料を容器に入れる (B)二酸化炭素ガスを注入 (C)加圧と加熱で超臨界流体 図4 超臨界流体での表面処理実験法(その2) (B) 加圧と加熱で超臨界流体と水の エマルジョン中で電気分解 (A) 水と界面活性剤溶液と二酸化 炭素ガスが入っている容器に 電気分解装置をセット

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  この特許は超臨界流体が狭い窪みにも侵入する特性を利用している。そして、「エッチング処理 によって形成された残留物を除去する方法を提供する」、「プレシジョン面を超臨界流体に暴露する ことを含む」や「従来技術の溶媒および酸の使用を排除する」との説明がされている。  7.2 特開2002-1242の紹介と筆者らのコメント   この特許は超臨界二酸化炭素流体を単独で利用するのではなく、「完全混和性のキレート化剤」 を併用して、洗浄効果を高めている。  7.3 特開2009-251283の紹介と筆者らのコメント   コピー機のドラムは「微小黒ポチ等の画像欠陥の発生」が致命的な欠陥になるので、他社でも幾 つかの研究がされているが、超臨界流体の利用は最初の研究である。同社は超臨界流体による別の 数件の関連特許も公開している。 表3 特開2002−1242の【発明の名称】と【要約】 【発明の名称】超臨界流体による洗浄方法 【課題】 広い範囲の材料の被洗浄物に対して、有機系、無機系等汚れの種類を問わず、洗浄むら を作ることなく、腐食を招くことなく、隅々まで効率よく洗浄することができる洗浄方法の提供。 【解決手段】 二酸化炭素、および超臨界二酸化炭素に完全混和性のキレート化剤の超臨界流体を 用いて被洗浄物の表面を洗浄することを特徴とする被洗浄物の洗浄方法。被洗浄物をキレート化 合物として溶解させる機能を有するキレート化剤、好ましくはアセチルアセトンである。金属ま たは金属化合物からなる被洗浄物であり、該金属は、鉄、クロム、ニッケル、銅、亜鉛、すず、 アルミニウム、チタンのうちの少なくとも1種類であるか、またはこれらのうちの少なくとも1 種類を含む合金である。上記の金属化合物が銅酸化物または亜鉛酸化物である。超臨界流体の中 に被洗浄物を保持する。 表4 特開2009−251283の【発明の名称】と【要約】 【発明の名称】電子写真感光体の製造方法、電子写真感光体、画像形成装置及びプロセスカート リッジ 【課題】陽極酸化時の硫酸痕除去を充分に行って封孔処理時に、封孔剤がアルマイト層の微細孔 内部迄浸透することが可能な電子写真感光体の製造方法を提供する。 【解決手段】図1で示す洗浄、封孔装置を使用することによって、アルミニウム支持体に陽極酸 化膜を形成後、超臨界流体によって洗浄し、続いて酢酸ニッケルやフッ化ニッケル等のニッケル 化合物を含有する封孔剤を含有した超臨界流体によって封孔処理を行って前記陽極酸化膜中の 細孔を封孔した後に、電荷発生層、電荷輸送層等が積層した電子写真感光体とすることによっ て、感光体の繰り返し使用による微小黒ポチ等の画像欠陥の発生を抑制可能となる。

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 7.4 特開2009-289357の紹介と筆者らのコメント   この特許ではアルマイト孔中に金属を析出させるが、トップ・ダウン方式で、電解着色法のボト ム・アップ方式と違う。 8.むすび  本稿も共著者との個別の討論を佐藤敏彦が作文した。 表5 特開2009−289357の【発明の名称】と【要約】 【発明の名称】磁気記録媒体の製造方法 【課題】複数の磁性体記録要素を有する磁気記録層を有する磁気記 録媒体の製造方法に関する。 【解決手段】(i)中間層の上に設けたアルミニウム層を陽極酸化す ることによりアルミニウム層をアルミナ層に変換させると同時にホ ールを形成し、中間層を露出させること、および(ii)アルミナ層 と中間層との性質の違いにより、超臨界流体に溶解した磁性体金属 の有機金属化合物を選択的に還元し、ホール底面の中間層表面に選 択的かつ均一に磁性体金属を堆積させること、により磁気的かつ熱 的に分離された複数の磁性体記録要素を有する磁気記録媒体を製造 する方法を提供する。 図5 流れ図

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