政大学キャンパスにおける植物資源と遊びへの活用
著者 佐藤 英文
雑誌名 東京家政大学教員養成教育推進室年報
巻 5
号 1
ページ 19‑27
発行年 2018‑02‑28
出版者 東京家政大学教員養成教育推進室
URL http://id.nii.ac.jp/1653/00010156/
保育者に必要な自然とのかかわり そのⅡ . 東京家政大学キャンパスにおける
植物資源と遊びへの活用
児童学科 佐藤 英文
1.保育者に求められる自然に対する資質
前報告で、保育者にとって自然を知ることの重要性を論じた。その結果、学生や保育者がその価値に対 して持っている認識の程度と現実との落差が明らかとなった。その理由の主なものとして、「①基本的な 植物や動物に対する知識が少ないこと、②日ごろから自然をみる習慣が少ないこと、③重要性は認識して いるのだが過去の体験が少なく活用する方法を身につけていないこと、④自然を観る目が養われていない こと」などが確認された。一方で、多くの学生たちや保育者たちは自然の中で遊ぶヒントを求めており、
学びの場を得たいと考えていることも示された。
これらの結果を踏まえ、今回は東京家政大学キャンパスで確認された具体的な植物名とそれらに対する 遊びの可能性をリストアップし、授業カリキュラムに取り入れる参考資料を作成した。これに加えて「草 花遊び」の材料の調達や子どもたちの遊び対象としての植物を簡単に得る手段として、プランターを用い た「自然放置」による手のかからない利用方法について考察した。
2.調査と実験方法
学園内の「遊びに使われる植物」についての調査方法および全体考察については、前号に示したので参 考にしていただきたい。本稿では前回得られた結果を基に種類別一覧表を作成し、それぞれの植物につい て筆者が収集した遊びを記載し、その意義について考察した。
次に、プランターを用いた「自然放置」による草本類の利用方法は以下の要領で行った。筆者が実施し ている授業(2014年度より)では、通常およそ200個のプランターを用意し、冬~春にパンジーやビオラ、
春~夏にマリーゴールドやサルビアを植えて玄関前に飾る体験を取り入れている。その対象は短大保育科 および大学児童学科およびゼミナールの学生たちである。
学園では定期的に草地の刈り込みを行っているため、教材が常に入手できるとは限らない。そこで、未 使用のプランターを利用して野草(雑草)を計画的に供給することにした。校内4号館裏に土を入れた状 態で放置し、自然に野草(雑草)等が生育するようにし、水やりなど若干の手を加えている。それらを授 業や高校生対象の模擬授業、あるいは幼稚園や保育園の先生方に対する体験学習、などの際に活用した。
その間、プランターに生育する植物相について若干の調査を行い、自生した植物を使った遊びの可能性に ついて考察した。調査日は2017年5月1日、6月14日、10月4日である。プランターに生育している植 物について、目視による方法でその種名を確認した。なお、エノコログサのように膨大な個体数の種も認
いること。第3に、つい最近まで多くのあそびが各地に伝承されており、それらが記録として残されてき たこと、などであろう。
実際に、植物や動物を使った遊びについてはおびただしい数の出版物があり、それぞれの意図によって そのタイトルや内容も多様である。そこでまず、手元にある関連の書籍13種類に書かれているタイトル に注目しながらその内容を確認し、その意図する意味について考察した。
まず本のタイトルであるが、表1を見ると、「草花(草と花がわかれているものも含む)」を使っている 書籍が6種類、「自然」・「野」がそれぞれ2種類、「植物」・「草木」・「葉っぱ」がそれぞれ1種類、であっ た。内容としてどのようなものが扱われているのかを見ると、13 種類すべてが草本と木本の両方が取り 上げられていた。また、これらの中に動物が混じっていたのは「野」「自然」「草花」「葉っぱ」が入った 表題にそれぞれ1例ずつ見受けられた。ただし、「草花」では「ムシ遊び」という項目が別につけられて いた。
以上のことから、「植物」や「草木」を使ったタイトルはもちろんであるが、「草花あそび」の中には草 本類と木本類が普通に使われていることがわかった。とくに「草花あそび」と銘打っていても、実際には 植物全般を指しているものと思われる。草という文字は草本類をさすだけでなく、草相撲・草野球という 言葉のように本格的ではない(「野外」「素人の」)という意味に使われることが多い。したがって、草花 あそび、草花を使った~、といった表現のときは基本的に「草や木を使った」という意味に解釈してもよ いであろう。同様に「花」も咲いている花だけではなく蕾や実なども含まれているように見受けられる。
当然のことながら「草花」という言葉はこれらを統合した意味で使われているといってよいであろう。動 物に関してはやはり植物とは明らかに区別していると考えられ、「野・自然・野外」などの用語が使われ るか別項目で加えるなどの工夫がみられる。ただし、場合によっては動物が関係しているもの(虫こぶの 笛など)もあり得る。
表1.植物を使った遊びの本のタイトルと内容
表2.東京家政大学キャンパス内の遊びに使える植物リスト 表2-1 番号 著者名(筆頭著者名のみ) 書名と発行年 取り扱い内容
1 熊谷清司 草花あそび 草本・木本
2 川原勝征 植物遊び図鑑 草本・木本
3 藤本浩之輔 草花のあそび 草本・木本
4 岩藤しおい 葉っぱの工作図鑑 草本・木本
5 グループ・コロンブス はじめてのくさばなあそび 草本・木本
6 佐藤邦昭 草あそび花あそび 草本・木本
7 山田辰美 自然遊び入門 草本・木本
8 中田幸平 野の玩具 草本・木本
9 相馬大 草花あそび 草本・木本
10 管野邦夫 草木と遊ぶ 草本・木本
11 斎藤たま 野に遊ぶ 草本・木本・動物
12 タウンネイチャー研究会 自然野外あそび 草本・木本・動物 13 乙益正隆 草花遊びムシ遊び 草本・木本・動物
表2.東京家政大学キャンパス内の遊びに使える植物リスト 表2-1
番
号 植物の種類 板
橋 狭
山 遊びの種類
1アオキ ○ ○ 葉巻笛、虫かご(マツの葉と)、実を集める 2アオギリ ○ ○ 舟状果実(種子)の器や舟、葉のお面
3アカマツ ○ 葉の相撲、松ぼっくりの工作、種子飛ばし、水に漬けたり乾燥させて開閉を見る、マツヤ ニ遊び
4アカメガシワ ○ ○ 若芽の赤色を削る 5アシボソ ○ ○ キジ笛
6アズマネザサ ○ ササ舟、キジ笛、三つ編みの蛇、ブーブー竹、スギの実鉄砲 7アベリア ○ ○ 香り、花のネックレス
8アメリカセンダングサ ○ ○ ひっつき虫、ひっつき虫のダーツ(ススキの穂と)、相手の服に投げつける 9アメリカハナミズキ ○ ○ 何匹釣った、種子集め
10アンズ ○ 種子の笛、食べる
11イタドリ ○ ○ 食べる、パンパイプ、リード笛、フルート、水車、器
12イチョウ ○ ○ 実を食べる、実の笛、葉のキツネ、葉で製作、葉の栞、匂い、葉を集めて飛ばす 13イヌシデ ○ ○ 種子飛ばし
14イヌタデ ○ ままごと(赤まんま)、齧る 15イヌビエ ○ カエル釣りの釣竿、キジ笛 16イヌマキ ○ ○ 手裏剣作り、刀作り、
17イノコヅチ ○ ○ ひっつき虫、模様描き 18イモカタバミ ○ ○ 葉っぱ相撲
19イロハカエデ ○ ○ 種子飛ばし、葉っぱの栞 20ウメ ○ ○ 食べる、種子の笛、花の香り
21ウンシュウミカン ○ ○ 食べる、皮で遊ぶ(ローソクの花火、タコ)
22エゴノキ ○ ○ 花の色、お手玉の中身、シャボン玉
23エノコログサ(ネコジャラシ) ○ ○ キジ笛、穂のくすぐり、穂の毛虫、穂のひげ、穂のウサギ、穂のキツネ、穂の競馬
24エビズル ○ ○ 実を食べる、絵の具 25オオイヌノフグリ ○ ○ 花の色、花びら落とし、
26オオバコ ○ ○ 花茎や葉柄の相撲、葉柄のじゃんけん、葉柄の相撲、筋だし、機織り、種子の粘り 27オオムラサキツツジ(ツツ
ジ、サツキ) ○ ○ 花の蜜吸い、色水、花のかんざし(マツの葉と)、柴笛 28オカメザサ ○ ○ キジ笛、ササ舟
29オニドコロ ○ ○ 種子の鶏冠、種子飛ばし 30オヒシバ ○ ○ キジ笛、穂の相撲、穂のかんざし 31カイヅカイブキ ○ ○ 種子の形
32カキ ○ ○ 食べる、葉の人形(衣)
33カタバミ(オッタチカタバミ) ○ ○ 食べる、十円磨き、種子の破裂
34カナムグラ ○ ○ 葉のワッペン
35カナメモチ ○ ○ 葉の色、フクロウ(キツネ)、種子集め、柴笛、花の色 36カニクサ ○ 葉の形、茎をはじく音
37ガマズミ ○ 食べる、種子の色 38カモジグサ ○ ○ キジ笛、
39カヤツリグサ ○ 蚊帳吊り
40カラスウリ ○ ○ 花の形、カラスウリ笛、種子のお守り 41カラスノエンドウ ○ ○ 実鞘の笛、豆でままごと
42カリン ○ ○ 実を見る、香り、
43ギシギシ ○ ○ 葉を齧る、サルグツワ笛、
表2-2
表2-3
番
号 植物の種類 板
橋 狭
山 遊びの種類
49クズ ○ ○ 葉の鉄砲、コップ作、財布作 50クスノキ ○ ○ 葉の香り
51クチナシ ○ ○ 花の香り、花の風車、葉の柴笛、実で染色
52クヌギ ○ ○ 集める、団栗笛、団栗お絵かき、団栗人形の頭、葉の風車、
53クリ ○ ○ 実を食べる、実の笛、不稔実生のスプーン、葉の風車、ヒョウヒョウ栗
54クロマツ ○ 葉の相撲、葉の弓矢、葉のネックレス、葉の虫かご(アオキと)、松ぼっくりの工作、種子 飛ばし、水に漬けたり乾燥させて開閉を見る
55クワ ○ ○ 実を食べる、
56ゲッケイジュ ○ ○ 葉の香り、料理に入れる 57コナラ ○ ○ 団栗笛、殻斗の笛、集める 58コニシキソウ ○ ○ ボンド草(茎の液)
59コブシ ○ ○ 花びら笛
60サクラの仲間 ○ ○ 花びら笛、種子の絵の具、実を食べる、放り投げる 61ザクロ ○ ○ 実を食べる
62サザンカ ○ ○ 花びら笛、実の笛 63サルビア ○ ○ 花の蜜吸い
64サンゴジュ ○ ○ 葉柄の何匹釣った、草履、フクロウ(キツネ)、種子集め 65シダレヤナギ ○ 茎の笛
66シャガ ○ 葉のカタツムリ
67ジャノヒゲ ○ ○ 種子集め、葉鞘の笛
68シュロ ○ ○ バッタ作り、カタツムリ作り、馬作り、カエル作り、ハブ作り、葉巻笛、蠅叩き、団扇 69シラカシ ○ ○ 団栗集め、殻斗の笛
70シロツメクサ(クローバー) ○ ○ 四葉探し、花の指輪、花のネックレス、花の腕輪
71シンジュ ○ 種子飛ばし
72ジンチョウゲ ○ ○ 花の香り 73スイカズラ ○ 花の蜜吸い
74スイバ ○ ○ 食べる
75スギナ(ツクシ) ○ ○ 葉のどこ継いだ、土筆を食べる 76ススキ ○ ○ 葉の矢、穂のダーツ、穂のフクロウ 77スダジイ ○ ○ 柴笛、団栗を食べる、
78スベリヒユ ○ ○ 齧る、酔っ払い草 79セージ ○ ○ 葉の香り
80ソテツ ○ ○ 葉の虫かご、実の笛、剣を作る
81タケニグサ ○ 種子のガラガラ、枯れた茎の笛、茎の汁の絵かき 82タチツボスミレ ○ ○ 花の相撲
83タチアオイ ○ 花びらの鶏冠 84タネツケバナ ○ ○ 種子の破裂、食べる 85タラノキ ○ 若芽を食べる、棘の鶏冠 86タラヨウ ○ ○ 葉の文字[絵]書き
87タンポポ(西洋・関東) ○ ○ 齧る、ボンド草、花の指輪、花の冠、花茎の笛、花茎のタコ、花茎の水車(風車)、綿毛飛 ばし、ミルクとコーヒー
88チガヤ ○ ○ 穂の感触、くすぐり、ツバナ(食べる)
89チドメグサ ○ 傷に貼る
90チャ ○ 種子の笛、種子集め
91ツバキ ○ ○ 花の蜜舐め、蕾の皮むき、
92ツユクサ ○ ○ 葉の柴笛、花びらの絵の具 93ツワブキ ○ 葉のコップ、花びらの占い 94テイカカズラ ○ 花の香り
95トウカエデ ○ 種子飛ばし
96トクサ ○ 茎のパンパイプ、茎のリード笛
表2-3
番
号 植物の種類 板
橋 狭
山 遊びの種類
97ドクダミ ○ ○ 匂い、ままごと 98トチ ○ ○ 実集め、実の笛 99ナガミヒナゲシ ○ 実の種子だし、
100ナズナ(ぺんぺん草) ○ ○ ガラガラ作り 101ナツグミ ○ ○ 食べる
102ナツミカン ○ ○ 実を食べる、葉の柴笛、葉巻笛 103ナワシロイチゴ ○ 実を食べる
104ナンテン ○ ○ 実集め 105ニセアカシア ○ 葉の鉄砲
106ヌカキビ ○ キジ笛
107ヌスビトハギ ○ ○ 実のひっつき虫
108ノイバラ ○ 棘の鶏冠
109ノビル ○ ○ 葉を食べる、香り、
110ハギ ○ ○ 葉の鉄砲
111ハナニラ ○ ○ 香り、花の風車 112バラ(園芸種) ○ ○ 棘の鶏冠
113ハラン ○ 葉巻笛
114ハルジョオン ○ ○ 綿毛飛ばし、香り 115ヒイラギ ○ 葉の風車、花の香り 116ヒイラギモクセイ ○ 葉脈つくり 117ヒガンバナ ○ ○ 花のネックレス 118ヒサカキ ○ ○ 葉の柴笛、葉巻笛 119ヒノキ ○ ○ 種子集め 120ヒメジョオン ○ ○ 綿毛飛ばし 121ピラカンサス ○ ○ 種子集め 122ヒメリンゴ ○ 食べる
123ビワ ○ ○ 食べる
124フキ(フキノトウ) ○ ○ 苞の柴笛、食べる、葉のコップ 125フジ ○ ○ 実の爆弾(破裂)
126ブドウ ○ 食べる
127ヘクソカズラ ○ ○ 匂い、実のリース 128ヘビイチゴ ○ ○ ままごと 129ホトケノザ ○ ○ 花の笛
130ヘラオオバコ ○ ○ 花茎集め、花茎相撲 131ボケ ○ ○ 実集め(香り)
132ボダイジュ(シナノキ) ○ 実飛ばし
133マサキ ○ ○ 葉の柴笛、茎の刀、茎のスライドパイプ(笛)
134マテバシイ ○ 実を食べる、実の笛、実の人形、実の顔描き、葉巻笛、葉の草履、葉のフクロウ、殻斗の 笛
135マユミ ○ 実を飾る
136マンリョウ ○ 種子集め
137ミズキ ○ ○ 葉柄の何匹釣った、葉のオブジェ、実のビー玉 138ミョウガ ○ ○ 花を食べる、葉の吹く笛、葉の吸う笛 139ムクノキ ○ ○ つめ磨き
140ムクゲ ○ 花びらの鶏冠
141ムラサキカタバミ ○ ○ 葉柄内の筋の相撲 142ムラサキシキブ ○ ○ 種子集め
表2-4
2)、家政大学キャンパス内の遊びに使える植物リストと遊びの種類
東京家政大学板橋キャンパスおよび狭山キャンパス内で、子どもたちの植物あそびに使えると判断した 種(全植生調査ではない)についてリストを作成した。本来、子どもの植物あそびは定型があるわけでは なく、すべての植物が対象となっているといってもよい。しかしながら、現場で子どもたちが遊びの対象 と内容を自由に工夫しているものに関しては、なかなか把握しがたい。そこで市販の植物あそびの書籍、
並びに筆者がこれまで収集してきた遊びを基本としてリストを作成することとした。たとえばシダ類のノ キシノブは板橋キャンパスにみられるが、子どもの遊びとしてこれまで記録に無いため除外した。また今 回は種名という用語ではなく種類名(タンポポなど)を使用した。その理由は厳密な分類学による集計で はなく、子どもやその保護者あるいは保育者や小学校教諭を対象とした一般的な呼び名を基本としている ためである。
次に、それぞれの植物で可能と思われるあそびについて、筆者がこれまで収集し工夫したものをまとめ た。作成した植物と遊びの一覧を表2(1~4)に示した。その結果を集約すると植物は162種類をあげ ることができた。このうち板橋キャンパスで確認されたものは146種類、狭山キャンパスで得られたもの は134種類であった。今回の調査は著者が単独で授業の合間に実施したものであり、見落としもあると考 えられる。とくに狭山キャンパスの調査がまだ不十分である。そのため、板橋キャンパスよりも若干種類 数が少ない結果となったが、これはその影響があるのではないかと考えている。より詳細な調査を継続し て精度を高めていく予定である。遊びの種類は340種を超えたが、遊び自体の応用は先に述べたように無 限に可能である。今回掲載したあそびを参考にしながらより発展していくことが望ましい。
3)、プランターを用いた教材の調達と利用
土壌を入れた状態で放置したプランター上に見られた植物(写真1)について、3回の観察を行った結果、
表3のような結果が得られた。すなわち、3回の観察で合計47種類の植物が確認された。そのうち、5 月の観察では34種、6月では13種、10月では20種が確認された。3回の観察に共通して見られた植物が
2) 、家政大学キャンパス内の遊びに使える植物リストと遊びの種類
東京家政大学板橋キャンパスおよび狭山キャンパス内で、子どもたちの植物あそびに使えると 判断した種(全植生調査ではない)についてリストを作成した。本来、子どもの植物あそびは定型 があるわけではなく、すべての植物が対象となっているといってもよい。しかしながら、現場で子 どもたちが自由に遊びの対象と内容を工夫しているものに関しては、なかなか把握しがたい。そこ で市販の植物あそびの書籍、並びに筆者がこれまで収集してきた遊びを基本としてリストを作成す ることとした。たとえばシダ類のノキシノブは板橋キャンパスにみられるが、子どもの遊びとして これまで記録に無いため除外した。また今回は種名という用語ではなく種類名(タンポポなど)を 使用した。その理由は厳密な分類学による集計ではなく、子どもやその保護者あるいは保育者や小 学校教諭を対象とした一般的な呼び名を基本としているためである。
次に、それぞれの植物で可能と思われるあそびについて、筆者がこれまで収集し工夫したもの をまとめた。作成した植物と遊びの一覧を表1(
1~
4)に示した。その結果を集約すると植物は
162種類をあげることができた。このうち板橋キャンパスで確認されたものは
146種類、狭山キャンパ スで得られたものは
134種類であった。今回の調査は著者が単独で授業の合間に実施したものであ り、見落としもあると考えられる。とくに狭山キャンパスの調査がまだ不十分である。そのため、
板橋キャンパスよりも若干種類数が少ない結果となったが、これはその影響があるのではないかと 考えている。より詳細な調査を継続して精度を高めていく予定である。遊びの種類は
340種を超え たが、遊び自体の応用は無限に可能である。今回掲載したあそびを参考にしながらより発展してい
番
号 植物の種類 板
橋 狭
山 遊びの種類
148モモ ○ 食べる、種子の笛、葉の柴笛 149ヤエムグラ ○ ○ 葉の勲章
150ヤハズソウ ○ ○ 葉の矢筈、一株全部の葉をちぎってバラの花状にする 151ヤツデ ○ ○ 葉のウサギ、実集め
152ヤブカンゾウ ○ 葉の吹く笛、葉の吸う笛、若芽を食べる 153ヤブコウジ ○ 葉の柴笛、実集め
154ヤブマメ 〇 〇 種子集め
155ヤブラン ○ 実集め、葉の手裏剣、葉の風車 156ヤマイモ ○ ○ むかごを食べる、実の鶏冠、種子飛ばし 157ユズ ○ 実を食べる、葉の柴笛、あぶり出し 158ユリノキ ○ ○ 種子飛ばし
159ヨモギ ○ ○ ヨモギもち 160ヨウシュヤマゴボウ ○ 絵の具
161ラベンダー ○ ○ 葉の香り、花の香り
162レッドオーク ○ 〇 ドングリ拾い、葉集め、葉っぱの栞 163照葉樹の仲間 柴笛、葉巻笛、フクロウ、折葉笛、ままごと 162単子葉植物の仲間 キジ笛
163落葉樹の仲間 紅葉の栞、貼り絵、など 164種子類 種子集め(形、色、大きさ、など)
165押し葉 押し葉、貼り絵、など
7種類、5月・6月の観察に共通して見られたものが1種類、5月と10月の観察で見られたものが3種類、
6月と9月に共通して見られたものが2種類であった。一方、5月のみ観察されたものは23種類、6月 のみ観察されたものは3種類、10月のみ観察されたものが8種類であった。
確認された植物は、種類数が多い順に、5月>10月>6月であった。6月から9月はエノコログサと メヒシバが大量に発生し、他の植物の侵入を阻止しているようにみうけられた。10 月にはエノコログサ やメヒシバの勢いが衰え、植生の遷移が確認された。
確認された植物のうち、高校生の模擬授業および大学生・短大生の授業で草花遊びに使用した植物は 23 種であった。その中で特に役に立ったものはエノコログサ、ツユクサ、カヤツリグサ、カラスノエン ドウ、キュウリグサ、スイバ、タネツケバナ、ナガミヒナゲシ、ノビル、スベリヒユ、ホトケノザ、ヘク ソカズラ、メヒシバなどであった。これらは利用できる材料が十分に生育していたリ、実践してみせるの に便利であったりした植物であった。
早川ら(2017)は土の園庭がなくテラスのみの保育園において「雑草プロジェクト」を立ち上げ、プラ ンターに雑草を植え子どもとの関わりを追跡した。その結果、五感を使った植物体験に加え、プランター に集まったダンゴムシや昆虫とのふれあいなどの活動がみられたという。
写真1.放置したプランター上に見られた植物
表3.観察されたプランター上の植物(〇印を基本に並べた)
今回の筆者による応用、および早川らによる園庭のない保育園での実践記録から、プランターや植木鉢 を有効に活用することによって教材として十分活用できることが明らかとなった。この工夫は、今後保育 士を目指す学生が就職先で実践可能であり、有効な手段であると考えられる。
問題点としてはプランター上に生育する植物は、土壌の中に含まれていたものであるため種類があらか じめ予測できないということであろう。しかしながら、これは言い換えれば、なにが芽生えてくるかわか らないため、子どもたちに予測させるなどの工夫が可能である。また、ここ数年の観察から推測して、と くに外部から新しい土壌を持ち込まなければ、2~3年で植生は安定する傾向にあるようである。した がって、継続観察すればおおよその傾向は予測できると考えられる。
なお、プランター上の植物について、筆者は雑草ではなく「野草」という言葉を用いて、学生に話すよ うにしている。雑草のもつイメージよりも野に咲く草という捉え方をしてほしいためである。
4、文献
岩藤しおい(2009)葉っぱの工作図鑑、いかだ社 乙益正隆(1993)草花遊びムシ遊び、八坂書房 川原勝征(2013)植物遊び図鑑、南方新社 管野邦夫(1986)草木と遊ぶ、講談社 熊谷清司(1974)野の玩具、中央公論社
グループ・コロンブス、吉田奈美絵(2006)はじめてのくさばなあそび、のら書店 斎藤たま(1974)野に遊ぶ、平凡社
佐藤邦昭(2016,2017)草あそび花あそび上・下、かもがわ出版
佐藤英文(2008)短大保育課学生の植物知識に関する調査、鶴見大学紀要45(3)保育・歯科衛生編:33-41.
佐藤英文(2016)ツマグロヒョウモンに対する苦手意識解消の試み、別冊昆虫、昆虫好きを育てるために:
68-72、ニューサイエンス社.
佐藤英文・大澤力(2013)保育者をめざす学生に植物の関心を持たせるための工夫 ―今日はどんな植物 を見てきましたか?―、鶴見大学紀要50(4)人文・社会・自然科学編:71-79.
植物名 5月1日 6月14日 10月4日 植物名 5月1日 6月14日 10月4日
1イノコヅチ 〇 〇 ○ 26ツルボ 〇
2エノコログサ 〇 〇 ○ 27ナガミヒナゲシ 〇
3オッタチカタバミ 〇 〇 〇 28ナズナ 〇
4カラスビシャク 〇 〇 ○ 29ノビル 〇
5ツユクサ 〇 〇 ○ 30ハコベ 〇
6ノゲシ 〇 〇 ○ 31ハハコグサ 〇
7ヒメジョオン 〇 〇 ○ 32ホトケノザ 〇
8アメリカフウロ 〇 〇 33ヤエムグラ 〇
9カヤツリグサ 〇 ○ 34ヤブジラミ 〇
10カラスノエンドウ 〇 ○ 35スベリヒユ 〇 ○
11ハルジョオン 〇 ○ 36ムラサキカタバミ 〇 ○
12ウシハコベ 〇 37ハキダメギク 〇
13ウラジロチチコグサ 〇 38ヘクソカズラ 〇
14オオイヌノフグリ 〇 39ユウゲショウ 〇
15オランダミミナグサ 〇 40イモカタバミ ○
16カスマグサ 〇 41オヒシバ 〇
17カモジグサ 〇 42クズ ○
18キキョウソウ 〇 43クワクサ ○
19キュウリグサ 〇 44コミカンソウ ○
20コメツブツメクサ 〇 45ノブドウ ○
21スイバ 〇 46メヒシバ ○
22スズメノエンドウ 〇 47ワルナスビ ○
23スズメノヤリ 〇 24タチイヌノフグリ 〇 25タネツケバナ 〇
相馬大(1977)草花あそび、保育社
タウンネイチャー研究会(1999)自然野外あそび、池田書店 中田幸平(1975)草花あそび、文化出版局
早川悦子・細川かおり・仙田考・山中あけみ・河西由佳・岡野雅子(2017)園庭がない保育所という環境 への挑戦 第2報 -テラスを豊かに「雑草プロジェクト」の取り組み-、日本保育学会第70回大 会発表要旨、1095
藤本浩之輔・港野喜代子(1975)草花のあそび、創元社 山田辰美(2015)自然遊び入門、静岡新聞社