• 検索結果がありません。

X ASTRO-H X (Hard X-ray Imager:HXI) X (Hard X-ray Telescope: HXT) -80 kev 2 X X (HXD) HXI 9 BGO BGO APD HXI HXI BGO APD 37 Cs

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "X ASTRO-H X (Hard X-ray Imager:HXI) X (Hard X-ray Telescope: HXT) -80 kev 2 X X (HXD) HXI 9 BGO BGO APD HXI HXI BGO APD 37 Cs"

Copied!
60
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

修士論文

ASTRO-H

搭載用硬

X

線撮像検出器

アクティブシールド機能の最適化

東京大学理学系研究科物理学専攻

学籍番号

35-096071

鳥井俊輔

2011

1

月提出

(2)

概要

次期X線衛星ASTRO-Hに搭載される硬X 線撮像検出器(Hard X-ray Imager:HXI)は、硬X線望 遠鏡(Hard X-ray Telescope: HXT)を組み合わせることで、10-80 keVの帯域でこれまでよりも2桁高 い感度の実現を目標としている。感度の向上は、集光と撮像により、目標とする天体の信号から、検出器視 野中の宇宙X線背景放射や検出器由来のバックグラウンド信号を効率よく除去することで達成される。し かしそれには、現在稼働中の「すざく」硬X線検出器(HXD)に匹敵する、低い検出器バックグラウンドが 前提となる。HXIでは大型の半導体撮像検出器を、9ユニットのBGOシンチレータ製アクティブシール ドで囲む設計である。システムをコンパクトに実現するために、BGOの読み出しは光電子増倍管ではなく 半導体素子のAPDを用いるなど、主検出部、シールド部ともに新しい技術が適用される。そこで我々は、

現在開発中であるHXIエンジニアリングモデルに先駆けて、HXIを模した半導体撮像検出器、BGOシン

チレータをAPD素子で読み出すアクティブシールド、これらの信号を処理する読み出し系を初めて構築し

た。まず5ユニットで半導体撮像検出器の下半分を囲む実験を行い、宇宙線由来のイベント、137Cs線源か

らのコンプトン散乱イベントの除去を実証した。これらの実験から、アクティブシールドとしての最適な反 同時計数のゲート幅を実験で示す手法を提示した。

(3)

目次

1 Introduction 6 2 シールドの概念と必要性 8 2.1 宇宙空間におけるバックグラウンド源. . . 8 2.1.1 荷電粒子 . . . 8 2.1.2 検出器自体の内在バックグラウンド. . . 8 2.1.3 中性子 . . . 9 2.1.4 光子 . . . 9 2.2 バックグラウンド除去のためのシールド . . . 9 2.2.1 パッシブシールド . . . 9 2.2.2 アクティブシールド . . . 9 2.3 研究の目的 . . . 10 3 実験セットアップ 11 3.1 実験の概要 . . . 11 3.2 主検出部 . . . 11 3.2.1 CdTe . . . 11 3.2.2 ASIC . . . 11 3.2.3 高電圧源Keithley 237 . . . 15

3.2.4 SpaceWire Digital I/O Board . . . 15

3.3 シールド部 . . . 16 3.3.1 BGO . . . 16 3.3.2 APD . . . 16 3.3.3 CSA . . . 16 3.3.4 16ch Shaper . . . 17 3.3.5 8 ch ADCBox . . . 17 3.4 イベントデータ取得の流れ . . . 17 4 各部の性能評価 21 4.1 センサー系の性能評価 . . . 21 4.1.1 VATAのパラメータに伴うスペクトル及び波形の変化 . . . 21 4.1.2 ゲイン較正. . . 23 4.2 シールド系の性能評価 . . . 25 4.2.1 APDの性能評価 . . . 25 4.2.2 BGOの性能評価 . . . 27 4.2.3 APDとBGOの組み合わせ. . . 28 5 アクティブシールド実験 29

(4)

5.1 シールドの立ち上げ . . . 29 5.2 環境バックグラウンドの測定 . . . 30 5.3 137Csの照射実験 . . . . 33 5.3.1 セットアップ . . . 33 5.3.2 反同時計数のデータ解析 . . . 35 5.3.3 CdTe検出器によるスペクトル解析 . . . 36 5.4 ゲート幅とコインシデンスイベントの回収率 . . . 39 6 まとめ 43 A シールドがハイレート時の測定 44 A.1 22Na照射実験 . . . . 44 A.2 241Am137Cs同時照射実験 . . . . 49 B テストパルス入力によるアクティブシールド機能の確認 53 C グラウンド配線 56

図目次

1.1 HXI用結晶シンチレータのジオメトリ . . . 6

3.1 BGOシンチレータ(青色、水色)とCdTe素子(灰色)のジオメトリ。(a)、(b)は断面の側面 図と正面図で、断面の位置は(c)に示す。(d)は底の結晶を上から見た形状。 . . . 12 3.2 CdTe素子からの信号を読み出し、BGOシンチレータの信号からヒットパターンを生成して タグ付けするためのエレクトロニクスのブロック図。黒は信号の流れ、赤は電源の供給、青 は高電圧の供給を表している。 . . . 13 3.3 組上げ時の検出器の外観 . . . 14 3.4 CdTe素子から信号を読み出すASICのアナログ回路のプロック図。 . . . 14

3.5 Front End Card(FEC)の写真。青で囲まれた部分がCdTeで、赤で囲まれた部分がASIC。 15 3.6 DIO BoardのUserFPGAによるデータ取得のブロック図。小さい文字は、FPGA内で使用 されている信号の名前。 . . . 18

3.7 ヒットパターン信号がラッチされるまでのタイミングチャート。赤は各Shaper出力に対す る閾値、青は信号切り替わりの起点となる箇所を示し、順に番号を振った。. . . 20

4.1 137Csの崩壊系列[8]。崩壊によるガンマ線のラインがほぼ1本だけなので、キャリブレー ションソースとしてよく用いられる。 . . . 22

4.2 ifpを変化させたときの波形。線源は137Csを用いている。(a)ifp=6、(b)ifp=7でifss=3に 固定している。. . . 22

4.3 ifssを変化させたときの波形。線源は137Csを用いている。(a)ifss=0、(b)ifss=3、(c)ifss=7 で 、ifp=7に固定している。この図の(b)は、図4.2(b)と同一である。 . . . 23

(5)

4.4 (a)(b)それぞれ22Na、133Baの崩壊系列[8]。22Naは、電子捕獲もしくはβ +崩壊により、

511 keVの対消滅線を180度反対向きに放射する。133Baは、複雑な崩壊系列をもち、特に

300 keV付近にラインが多く立つため、中程度のエネルギー帯域を較正するのに役立つ。 . . 24

4.5 CdTe検出器の15 ch出力のADC ChannelとEnergyの関係をそれぞれ(a)直線、(b)二次 曲線でフィットしたもの。データとモデルの比を下方に示した。 . . . 25 4.6 ADC Channelをエネルギーに直して、使用可能なチャンネルの出力を足し合わせたスペク トル。(a)(b)(c)は、それぞれ133Ba、22Na、137Cs。(b)で、750 keV以上に見えるピーク は、ADCのダイナミックレンジの限界によるものである。 . . . 25 4.7 9個のAPDの高電圧とゲインの関係。(a),(b),(c)はそれぞれ20℃、5℃、-20℃での測定 結果。ゲイン50のところに赤で線を引いた。 . . . 26 4.8 9個のBGOに137Cs線源を当てて得たスペクトル。Csピークの2倍あたりに見えるピーク は、環境放射能の40Kで、全スペクトルの3700 ADC Channel付近に見えるピークはテス トパルス。 . . . 27 5.1 アクティブシールド実験の検出器部の写真。(a)はアクティブシールドのSide BGOの1つ

(Comp.G)を取り外して断面をみたもので、(b)はSide4つとBottom1つを組み上げたもの を真上からみた図。 . . . 29 5.2 アクティブシールドの各コンポーネントの137Csスペクトル。. . . 30 5.3 アクティブシールド各コンポーネントのバックグラウンドスペクトル。全スペクトルに40K のラインが見えている。横軸はエネルギーに較正してある。 . . . 31 5.4 各コンポーネント別の、CdTeで信号を受けてからBGOの信号をラッチするまでにかかっ た時間。51 µs付近の鋭いピークは、ゲートの時間内にBGOの信号が来なかったイベントを 表す。160 nsごとにビンまとめされている。 . . . 32 5.5 CdTeのバックグラウンドスペクトル。(A)全イベントのスペクトル、(B)アンチコインシ デンススペクトル、(C)コインシデンススペクトル。700 keV付近の構造は、ADCのダイ ナミックレンジの限界によるもの。下段は、(C)を(A)で割った比のスペクトルである。64 keVごとにビンニングされている。 . . . 33 5.6 (a)線源のコリメーターを鉛で組んだ。(b)CdTe検出器とアライメントが合うように調整し た。アルファベットはSideのコンポーネントの位置関係を示している。(c)は、(b)を正面 から見たときの模式図。 . . . 34 5.7 アクティブシールドで測定される、鉛のコリメータを通して照射した137Csの線源スペクト ル。. . . 34 5.8 137Cs照射実験におけるアクティブシールド各コンポーネント別の、CdTeで信号を受けてか らBGOの信号をラッチするまでにかかった時間のヒストグラム。160 nsごとにビンまとめ されている。 . . . 35 5.9 137CsCdTe検出器におけるスペクトル。(A)トータルのスペクトル、(B)アクシデンタ ルコインシデンスを補正したアンチスペクトル、(C)BGOとのコインシデンススペクトル、 (D)アクシデンタルコインシデンスを補正したコインシデンススペクトル。(B)は、(A)-(D) で作られる。8 keVごとにビンニングされている。. . . 37

(6)

5.10 各々のコンポーネントごとに作成したコインシデンススペクトル。ただし、他の結晶と同時 であるイベントは露には排除していないので、コンポーネント間には重複するイベントがあ る。アクシデンタルコインシデンスは補正済み。16 keVごとにビンニングしている。 . . . . 38 5.11 BGOの光電吸収およびコンプトン散乱の反応断面積[10]。 . . . 38 5.12 137Csのイベントのコインシデンス比を、ゲート幅を変えながら、5000 nsecのときの値で規

格化した値をプロットした。見やすさのため、(a)0-256 keV、(b)192-448 keVの2つのエネ ルギーバンドに分け、比較のため192-256 keVを両方の図に同じ色で示した。 . . . 40 5.13 バックグラウンドイベントのコインシデンス比を、ゲート幅を変えながら、5000 nsecのとき

の値で規格化した値をプロットした。見やすさのため、256-512 keVを20 ns、512-768 keV

を40 ns正方向にずらして描いている。. . . 41 A.1 (a)線源を設置したときの写真、(b)真正面から検出器を見たときの結晶、線源、CdTe検出

器のジオメトリ。 . . . 44 A.2 各コンポーネントのBGOにおける22Naのスペクトル。 . . . . 45

A.3 22NaCdTe検出器でのスペクトル。 . . . . 46

A.4 22Naを照射しながら各コンポーネント別の、CdTeでトリガーを受けてからBGOの信号を

ラッチするまでにかかった時間。160 nsごとにビンまとめされている。. . . 46 A.5 BGO信号がパイルアップしているときにヒットパターン信号がラッチされなくなる場合の

タイミングチャート。赤はトリガーを出すために超えなくてはならない閾値で、青は次の イベントを待つ状態に戻るために下回らなくてはならない閾値。Hit pattern latcher、Hit

pattern triggerの点線は、信号がパイルアップしていないときの信号の移り変わりを示す。 また、信号の切り替わりの起点となるアナログ出力に丸をつけ、番号を振った。 . . . 47 A.6 ヒットパターン信号が到来するまでに要した時間のヒストグラムからアクシデンタルコイン シデンスの割合を見積もる手法の模式図。 . . . 48 A.7 各コンポーネントごとに、CdTe検出器とコインシデンスイベントだけを切り出し、アクシデ ンタルコインシデンスレートを(a)カウントレート、(b)ラッチタイミングのヒストグラムか ら補正したスペクトル。16 keVごとにビンニングされている。 . . . 49 A.8 241Am137Csを同時にCdTe検出器に照射したときの配置。 . . . . 50

A.9 Comp.HとComp.Iにおける、ゲートが開いてからヒットパターン信号をラッチするまでに

要した時間のヒストグラム。160 nsでビンまとめされている。この実験からヒットパターン 信号に遅延を与えているため、ピークが今までより8 µsほど正方向にシフトしている。 . . . 51 A.10 241Am137Cs同時照射実験における、Comp.HComp.Iとのコインシデンススペクト

ルから、カウントレートとタイミングのヒストグラムから見積もられる2通りのアクシデ ンタルコインシデンス補正を行い、それぞれの図の下に、全スペクトルとの比をとった。8 keVごとにビンまとめされている。(a)Comp.H 面積補正(b)Comp.H カウントレート補正

(c)Comp.I面積補正 (d)Comp.Iカウントレート補正。 . . . 52 B.1 ASICに任意のタイミングでトリガーを送り、それと同期したテストパルスをCSAに入力し

たときの、Comp.Fにおける、ゲート、テストパルス、APD Shaper、ヒットパターン信号 の波形。括弧内は縦軸1あたりの電圧値。 . . . 53

(7)

B.2 (a)エネルギーごとに、ゲートを開いてからヒットパターン信号をラッチするまでにかかった 時間をヒストした。(b)テストパルスの入力に対して、コインシデンスのタグ付けに成功した ものの割合を、横軸エネルギーで示した点が赤で、誤差関数でフィットした結果が緑である。 (c)ヒットパターン信号を出すまでに要した時間の平均値と、それに標準偏差の3倍の値を足 したものと引いたものを横軸エネルギーで示した。. . . 55 C.1 本実験でのグラウンディングを含めた配線図。 . . . 56

表目次

1.1 ASTRO-H搭載機器の基本性能 . . . 6 3.1 Si、Ge、CdTe半導体の各種性質。ϵとは、正孔対を一つ作るのに必要なエネルギーの平均値。 11 3.2 代表的な結晶シンチレータの性質。 . . . 16 4.1 10分間の測定から算出したvth=4, 5, 6のときのトリガーレート。 . . . 23 4.2 較正に用いた線源とライン。 . . . 24 4.3 各APDのゲインが50となる高電圧(V)。 . . . 26

4.4 各BGOにおいて 137Csの662 keV光子の光電吸収ピークに対応するADC Channelとエ ネルギー分解能。ノイズの寄 与を除いた、結晶の発光量に由来するエネルギー分解能も併記 する。 . . . 28

4.5 各BGOにおける137 Csがピーク値をとる ADC Channelとエネルギー分解能。ノイズに よる寄与を除いた結晶の発光量に由来するエネルギー分解能も併記している。 . . . 28

5.1 22Na137Csのラインのエネルギーを用いて求めた、エネルギーとADC Channelの関係。 1、2行目がADC Channel = A×Energy + Bの較正直線で、3行目は較正直線から求め た200 keVのADC Channel . . . 30

5.2 アクティブシールド5ユニット動作時の各コンポーネントのバックグラウンドカウントレー ト(Hz)。ただし、ノイズによるトリガーイベントも含まれている。 . . . 31 5.3 各コンポーネントの4 µs以内での同時イベント数。 . . . 32 5.4 アクティブシールドの各コンポーネントにおける137Csの照射実験におけるカウントレート (Hz)。合計で18.7 kHz . . . 35 5.5 BGOのカウントレートに占める、観測された真の同時イベントの割合 . . . 36 5.6 137Csで、BGO信号のラッチまでに要した時間のヒストグラムをガウシアンとコンスタント 成分の和でフィットしたときのパラメータ。4000 ns以上に漏れ出す割合も示してある。合 計で、1.09% . . . 39 A.1 22Na実験における各コンポーネントのカウントレート。合計で、160 kHz。 . . . 44 A.2 22Na実験における各コンポーネントので推定されるアクシデンタルコインシデンスイベント の比率。カウントレートのみからとラッチタイミングのヒストグラムに見えるピークから推 定した2通りが示されている。 . . . 48

A.3 241Am137Cs同時照射実験におけるComp.HComp.Iのカウントレート。 . . . . 50

A.4 241Am137Cs同時照射実験で、カウントレートとタイミングのヒストグラムから見積もられ るアクシデンタルコインシデンスの割合。 . . . 51

(8)

1

Introduction

X線宇宙物理学は、銀河団の高温プラズマや、ブラックホール近傍の質量降着など、宇宙の高エネルギー現 象に迫る上で欠かせない学問であり、1962年のジャコーニらによるロケット実験で、太陽系外からのX線が 発見されたことを皮切りに、飛翔体を用いた宇宙X線の観測が行われてきた。日本はその黎明期から目覚ま しい貢献をし、国産第一号の1979年「はくちょう」衛星から、「てんま」、「ぎんが」、「あすか」、「すざく」と世 代を重ね、6代目となるASTRO-H衛星の打ち上げを2013年度に予定している。エネルギー帯域は0.3-600 keVと、2005年度に打ち上げられた「すざく」衛星とほぼ同じであるが、搭載される検出器には大幅な改良が 加えられ、エネルギー分解能や感度の大幅は向上が期待されている。ASTRO-Hは4つの検出器、SXS(Soft X-ray Spectrometer : X線カロリメータ)、SXI(Soft X-ray Imager : 軟X線撮像検出器)、HXI(Hard X-ray Imager : 硬X線撮像検出器)、SGD(Soft Gamma-ray Detector : 軟ガンマ線検出器)を搭載する予定であ る。これらに加え、SXSとSXIとに組み合わせる反射集光系としてSXT(Soft X-ray Telescope:軟X線望遠 鏡)が2台、またHXIに対する同様な光学系としてHXT(Hard X-ray Telescope:硬X線望遠鏡)が2台搭載 される。これらの装置の諸元を表1.1にまとめる。

表1.1 ASTRO-H搭載機器の基本性能

SXT-S+SXS SXT-I+SXI HXT+HXI SGD

エネルギー帯域(keV) 0.3–10 0.5–12 5–80 40–600

有効面積 (cm2) 210 (@6 keV) 360 (@6 keV) 300 (@30 keV) 75 (@100 keV)

エネルギー分解能 7 eV 150 eV 2 keV 2 keV (@40 keV)

視野(arcmin) 3 (@6 keV) 35 (@6 keV) 9 (@30 keV) 33 (<150 keV)

<10 deg (>150 keV)

角分解能 (arcmin) < 1.7 (HPD) < 1.7 (HPD) < 1.7 (HPD) 8 deg (@100 keV)

図1.1 HXI用結晶シンチレータのジオメトリ

本論文で対象とするHXIは、5-80 keVの領域を担当する撮像分光検出器で、HXTを用いて集光させるこ とにより、該当帯域で「すざく」HXD(Hard X-ray Detectro:硬X線検出器)の感度を2桁以上も改善するこ とが期待されている。HXTとHXIの組み合わせは、同型のものが2台搭載されるので、以下はその1台に 限って紹介する。HXIの主検出部は、4層の両面Siストリップ検出器と、1層の両面CdTeストリップ検出 器を重ねたもので、入射X線の3次元反応(おもに光電吸収)位置と、エネルギーとを計測する。

(9)

HXIでは、主検出部の回りに、9枚のBGO結晶シンチレータを図 1.1のように配置し、バックグラウンド 低減のためのアクティブシールドを構成している。「すざく」HXDでは、アクティブシールドに用いるBGO

結晶シンチレータを光電子増倍管で読み出していたが、今回は新たにアバランシェフォトダイオード(APD)

が利用可能となり、よりコンパクトなアクティブシールドが構築できると期待される。現在は、エンジニアリ ングモデルの製造に向け、各種の要素技術の検証および設計の詳細が鋭意進められている段階である。

(10)

2

シールドの概念と必要性

宇宙空間では地上とは異なったバックグラウンド環境が広がっており、十分にそのことを理解した上で検出 器を設計しなければならない。地上での環境放射能が、主に核ガンマ線と宇宙線起源のµ粒子であるのに対 し、宇宙空間では、高エネルギー陽子、中性子、宇宙X線背景光子などが高いレートで飛び交っており、軌道 上の検出器は観測したい天体以外のイベントを必ず拾ってしまう。S/N比を向上させることは、天体物理とい うサイエンスを探求する上で不可欠な要素であり、何らかの手段でこれらのバックグラウンドを除去すること が求められる。まず、宇宙空間でのバックグラウンドの種類を述べ、そのシールド法を記す。

2.1

宇宙空間におけるバックグラウンド源

2.1.1 荷電粒子 宇宙空間を飛来する放射線を一次宇宙線と呼び、それらが大気に突入することで生じた放射を二次宇宙線 と呼ぶ。一次宇宙線は狭義には荷電粒子であり、その大部分を陽子が占める。地球は磁気圏に守られており、 エネルギーが低い荷電粒子は侵入できないが、数GeVを超えるエネルギーのものは磁気圏を抜け衛星軌道上 に到達できる。その中で、検出器を貫くものは、直接に電磁相互作用をすることで、大きなエネルギーデポ ジットをし、また様々な二次放射を引き起こす。したがって、放射線に感度を持つシールド(後に説明するア クティブシールド)で検出器を囲い、タイミング情報を用いてVETOすることで効率よく取り除くことがで きる。ただし、荷電粒子が、検出器としての感度を持たない部分(筐体など)に当たって生じた二次的な放射 のみが入射する場合はその除去は難しい。

ASTRO-Hが打ち上げられる予定の低高度衛星軌道上には、南大西洋地磁気異常帯 (South Atlantic

Anomaly)と呼ばれる領域があり、地磁気により100 MeV程度の陽子が大量にトラップされている。ここで はカウントレートが桁違いに高く、検出器を故障させることもあるので、特に高電圧などはオフにしておくな どの措置がとられる。 2.1.2 検出器自体の内在バックグラウンド 外来放射能だけでなく、検出器の内在バックグラウンドも重要で、これは2成分に大別できる。その一つ は、検出器材料に含まれる自然放射能である。これを減らすには、主たる自然放射能であるカリウム(40K)を 含む物質を排除し、またウラントリウム系列の物質の混入しうる素材を用いないなど、慎重な素材選定が求め られる。 もう一つは、前述のSAAを通過する際になど、検出器が∼100 MeVの陽子を浴びて放射化することであ る。特に重元素を用いている素材は放射化の影響を受けやすく、例えば、「すざく」HXDに搭載されたGSO シンチレータでは、その構成元素であるGd(Z=64)の放射化がバックグラウンドに寄与する割合は大きい。 また、HXIの主検出部に用いられるCd(Z=48)も放射化が起こった場合、バックグラウンドに与える影響は 無視できないことが既にわかっている。アクティブシールドにはまず、パッシプシールドとしても効果のある 厚さを持たせ、主検出器に到達する陽子を減らすことも求められる。また、シールド自身が強力な放射能を持 たないように、陽子との反応断面積の大きな素材(NaI、CsIのヨウ素など)は、避ける方が良い。

(11)

2.1.3 中性子 二次宇宙線には様々な粒子が存在するが、「すざく」打ち上げ後にHXDで無視できないバックグラウンド 源として認識されたのが中性子である[1]。中性子は電荷を持たないため、強い相互作用でしか反応しない。 具体的には、中性子が検出器に含まれる原子核で散乱されるさい、原子核に反跳エネルギーを与えることで バックグラウンドとなり、とくにSiなど、軽い原子核で問題となる。バックグラウンドの高い検出器では、通 常この成分は無視できるが、電磁相互作用を利用したバックグラウンド除去が高度になるにつれ、この中性子 成分が目立ってくる。アクティブシールドには原子番号の大きな物質が用いられることが多いため、中性子を シールドすることは容易ではない。 2.1.4 光子 観測対象以外のX線やガンマ線もバックグラウンドととして無視できない。宇宙空間では、分解された天 体が露に見えないところも含め、あらゆる方角からX線が観測されることが知られており、宇宙X線背景放 射(CXB)と呼ばれている。半世紀に渡る宇宙X線の研究の一大テーマは、このCXBを個々の点源(おもに 遠方の活動銀河核)に分解する作業であった。1999年に打ち上げられたChandra衛星の高い角度分解能によ り、この作業はほぼ完了したと言える。しかし、これを撮像観測で全て除去するためには秒角の結像性能が必 要であり、HXTをはじめとしてこれは容易ではない。CXBは極めて一様なので、視野内に含まれる分は阻 止できず、観測データから後に差し引くしかない。よって視野を必要以上に大きくしないことが大切である。 視野外から検出器に突入するCXBは、シールドにより防ぐことができる。さらに、一次宇宙線が大気や衛星 本体と衝突して作り出す二次ガンマ線も要注意で、エネルギーが高い分、CXBに対する以上にシールドが必 要になる。

2.2

バックグラウンド除去のためのシールド

バックグラウンドを除去するには、§2.1で少し触れたように、パッシブシールドとアクティブシールドと いう2通りの考え方がある。 2.2.1 パッシブシールド パッシブシールドは、タングステンや鉛などの原子番号の大きい物質で検出器を囲い、遮蔽効果のみに頼る シールドのことをいう。地上実験でも、強度の小さい放射線を測定するとき、環境放射能を防ぐために鉛ブ ロックで検出器と測定対象を囲うのが一般的である。地上の環境放射能はあまりエネルギーの高くないガンマ 線が大半であるため、この方法は有効である。しかし、宇宙空間では高エネルギーの荷電粒子のレートが高い ため、例えば1 GeVの陽子を完全に止めるにはおよそ500 g/cm2の物質が必要で、HXIでそれを囲むと容 易に100 kgを超過する。衛星の設計は、重量に対してシビアであるため、パッシブシールドのみによるバッ クグラウンド削減は非現実的である。 2.2.2 アクティブシールド パッシブシールドと対をなす思想としてアクティブシールドという概念がある。アクティブシールドでは、 検出器を囲う物体として、シンチレータなどのそれ自体が検出器である素材を用い、反同時計測によってバッ クグラウンドイベントを落とす考え方である。アクティブシールドは放射線を止める必要がないため、シール

(12)

ドを圧倒的に薄くすることができる。荷電粒子イベントに対しては、厚み∼1 cmと比較的軽量なプラスチッ クシンチレータで1 MeV程度のエネルギーデポジットが得られるので、きわめて効果的にシールドできる。 ただし、ガンマ線に対してはほぼ無力なので、大きな原子番号をもつ無機シンチレータを用いる必要がある。 さらに、HXIやSGDの場合は、放射化の原因となる100 MeVの陽子を遮蔽するパッシブシールドとしての 役割を持たせるためにも、4 cm厚のBGO結晶を用いることが有用である。この場合、アクティブシールド にパッシブシールドとしての側面も持たせている。

2.3

研究の目的

HXIでは、集光撮像能力を持たない「すざく」HXDに比べ、HXTのおかげでS/N比は大きく向上し、ま た天体の周辺をバックグラウンドとして差し引くことが可能となった。しかし、微弱な天体を長時間にわたり 観測した場合、その究極の検出感度を決めるのは検出器由来のバックグラウンドである。視野内のCXBは防 ぎようがないので、他のバックグラウンド成分をCXBより低くすることが目標となる。 HXIでは、両面ストリップ型の半導体を主検出部に用い、アクティブシールドを構成する結晶シンチレー タの読み出しに、光電子増倍管ではなくAPDを用い、さらに結晶間にすき間のある構造に変わっている。こ のコンフィギュレーションで、視野外からのバックグラウンドを、「すざく」HXDと同程度に除去できること が求められる。 そこで、HXIの形状を模擬したジオメトリを実際に組み、反同時計測の実験を通して、HXIのアクティブ シールド機能を設計する上での指針を得ることを本論文の目的とする。

(13)

3

実験セットアップ

3.1

実験の概要

我々は、図3.1に示すように、CdTeイメージング素子の周囲を、9個のBGOシンチレータのアクティブ シールドで囲んだ検出器と、図3.2のような読み出しエレクトロニクス系を立ち上げた。主検出部とシールド 部の組み上げ時の外観を図3.3に示す。BGOの大きさ、厚さ、すき間やセンサー部の検出器の数や有効面積 はことなるものの、検出器、通信規格などの道具立てはほぼ同じものを使用している。信号読み出しのエレク トロニクス部も一部を除いて実際にHXIに用いられるものとなるべく近い構成をとっている。本論文は、9 個のBGOシンチレータのうち最も重要な下部の5個を用いた実験を行っている。しかし、最終的には9個で の実験を目指しているため、本章では9個分の準備状況を説明することとする。

3.2

主検出部

3.2.1 CdTe ここで用いるCdTe素子は、共同研究を行っているJAXA高橋研究室とアクロラド社による10年来の研 究開発の賜物であり[2]、同様の素子が満を持してASTRO-HのHXIとSGDに搭載される。CdTeは、Siや

Geなどの他の半導体素子と比べバンドギャップが大きいため、熱励起により発生するリーク電流が小さく、 室温でも使用可能である。また、表3.1に示すように、CdTeを構成するCdとTeは原子番号がSiやGeよ りも大きいので、同じ大きさでも、より高エネルギーの放射線計測が可能である。ただし、CdTeではキャリ アの移動度や寿命が小さいため、反応位置により収集できる電荷量が異なることにより、スペクトルのピーク が低エネルギー側にテールを引きやすくなる。また、バイアス印加時にポラリゼーションという現象が発生 し、電荷収集効率や有効面積の低下を招くなどの問題があるため、使用には注意が必要である。 表3.1 Si、Ge、CdTe半導体の各種性質。ϵとは、正孔対を一つ作るのに必要なエネルギーの平均値。 素子名 原子番号 密度 バンドギャップ ϵ 比抵抗 (µτ )e (µτ )h (g/cm3) (eV) (eV) (Ω cm) (cm2 V−1) (cm2V−1) Si 14 2.33 1.12 3.61 103 0.42 0.72 Ge 32 5.33 0.72 2.98 102 0.22 0.84 CdTe 48/52 5.85 1.4 4.43 109 ∼ 2×10− 3 ∼ 1×10− 4 HXIには、32×32×0.5 mm3で両面が128個のストリップに分割されたSi素子が4枚、同じ形状の CdTe素子が1枚搭載され、これらで5-80 keVの帯域をカバーできる。この状況を再現するため、13.35× 13.35×0.5 mm38×8にピクセル化された試作段階のCdTe素子を1枚、主検出部に用いた。 3.2.2 ASIC

SiやCdTeからの電荷信号を処理するために、その出力はCSA(Charge Sensitive Amplifier:電荷有感型ア ンプ)で電圧信号に変換されなければならないが、そのチャンネル数が膨大であるHXIやSGDでは、一つ一 つのチャンネルに対してCSAやShaperなどの箱を用意することは現実的ではないため、アナログASICで

(14)

143

143

80

80

8

0

2

0

8

9

20

1

8

0

2

1.5

1

1

72

3

4

103

2

7

.4

(a)

(b)

(c)

(d)

6

26

13.35

0

.5

13.35

(a)

断面

(b)

断面

89

1

6

0

図3.1 BGOシンチレータ(青色、水色)とCdTe素子(灰色)のジオメトリ。(a)、(b)は断面の側面図と

(15)

2chHV (CP6671PPR/AC) 4ch CSA (CP5005) 4ch CSA (CP5005H) 16ch shaper (CP4030) 8ch ADCBox SpaceWire Router Hit-pattern signal SpaceWire GigabitEther PC SpW TCP/IP SpaceWire

Digital I/O Board 2 (DIO) Interface Card (IFC) ASIC CdTe LVDS HV Keithley 237 Front-end Card (FEC)

SpW SpW BGO APD CSA Power Supply ADCBox Power Supply   DIO Power Supply   FEC Power Supply Thermostatic Chamber 図3.2 CdTe素子からの信号を読み出し、BGOシンチレータの信号からヒットパターンを生成してタグ 付けするためのエレクトロニクスのブロック図。黒は信号の流れ、赤は電源の供給、青は高電圧の供給を 表している。 その処理を行う。

HXIでは、高橋研究室とIDEAS社の協力により製作されたVATA461という型のASICが用いられる[3]。 これは、図3.4に示したアナログ処理系を32 ch収納しており、1 chあたり1 mWという非常に低電力で稼 働する。入力された電荷信号は、初段のCSAで電圧に変換された後、TAというトリガー生成部と、VAと いう波高測定部に分岐する。TAとVA部のShaperのピーキングタイムは、それぞれ0.6 µs3-5 µsであ る。そのため、それぞれFast Shaper、Slow Shaperと呼ばれる。Fast Shaperの出力が閾値を超えると、ト リガー信号が出力され、ホールド信号がVAに送られると、その瞬間でのSlow Shpaerの出力がホールドさ れたのち、ADC出力される。ADCはウィルキンソン型であるため、変換に100 µs程度の時間を要する。ク ロックは後に説明するDIO BoardのUserFPGAから供給される。

本実験では、VA32TA6というVATA461の一つ前のバージョンを用いた。消費電力や出力ビット数などの 細かな違いをのぞき、仕様はほぼ同じである。CdTe素子とASICを載せた基板はFront End Card(FEC)と 呼ばれ、図 3.5のような配置になっており、高電圧入力端子や後段のInterface Card(IFC)につなぐための

(16)

図3.3 組上げ時の検出器の外観

(17)

図3.5 Front End Card(FEC)の写真。青で囲まれた部分がCdTeで、赤で囲まれた部分がASIC。 ケーブル端子がついている。 3.2.3 高電圧源Keithley 237 半導体素子を放射線検出器として用いるとき、逆バイアスをかけて空乏層を広げて有感層を作る必要があ る。本研究では、半導体検出器に標準的に用いられる高圧源としてKeithley237を用いることで、1000 Vま での高圧をかけながらnAオーダーのリーク電流を測定できる。HXIでは、衛星搭載用に開発される小型高 電圧源(CAEN社)が用いられる

3.2.4 SpaceWire Digital I/O Board

従来では衛星ごとに一品ものになりがちだった内部での通信規格に対し、衛星間で共通のものを導入す ることで、開発のための労力を削減しようという目的で開発されたのがSpaceWireという規格である[4]。

ASTRO-Hでは、日本の衛星として初めて本格的にSpaceWireを用いる。

本実験で用いるSpaceWire Digital I/O Board (DIO Board)は、地上での試験を目的にシマフジ電機が

JAXAと共同で開発した、SpaceWire通信でデータ取得を行う基板で、SpaceWire通信のためのSpaceWire FPGAと用途に応じて書き換えるUserFPGAの、2つのFPGAを搭載する。SpaceWireでは、LVDS(Low voltage differential signaling)という、差動方式のデジタル信号の規格を用いており、外来ノイズに強く、ま たレベル差が350 mVしかないため、省電力でもある。

我々のセットアップでは、先端のASICからのADC出力などは、いったんIFCでLVDSに変換されてか ら、DIO Boardで処理される。また、DIO BoardはLVCMOS入出力8 ch、LVDS差動入力16 ch、LVDS

差動出力32 chを搭載しており、後述の8 ch ADCBoxから送られてくる計9 chのヒットパターン信号を受 け入れるのに十分なDigital I/Oを有している。実験で用いたクロック数は50 MHzである。

本研究では、もう1 つのSpaceWire 関 連機器として、SpaceWire GigabitEtherを用いる。これは、

SpaceWire通信を用いて取得されたデータをTCP/IPでネットワークに配信する、または、TCP/IP経由

で送られてきた命令をSpaceWireに変換して DIO Boardなどの機器に伝達する役割をもつ。SpaceWire GigabitEtherに指定された1つのIPアドレスで、DIO Boardと2つの8 ch ADCBoxという計3つのノー ドを扱うために、SpaceWire Routerを用いている。

(18)

3.3

シールド部

3.3.1 BGO シールド部の主体は、BGO(Bi4Ge3O12)シンチレータで、その基礎的な情報を表 3.2に記載する。本実験 で使用するBGOは図3.1に示したように、全部で4種類9個あり、開口部に72×180×20 mm3の直方体 結晶を4つ、検出器のサイド側に(72+89)/2×160×20 mm3(72+89)/2×89×20 mm3の台形結晶 が2つずつ、底部に80×80×20 mm3の結晶を用いた。 表3.2 代表的な結晶シンチレータの性質。

NaI(Tl) CsI(Tl) BGO GSO

実効原子番号 50 54 74 59

密度(g/cm3) 3.67 4.51 7.13 6.71

発光量(photon/1MeV) 38000 65000 8200 9000

蛍光減衰時間(µs) 0.23 0.68,3.34 0.3 0.056,0.4

BGOシンチレータは、NaIやCsIといった他の結晶シンチレータと比較して実効原子番号、密度が大きい ので、アクティブシールドとしても、パッシブシールドとしても高い阻止能をもつ。また、軌道上で放射化 しにくいという長所がある。BGOは、「すざく」HXDでの使用実績にもとづき、ASTRO-H搭載のHXI、

SGDのシールドにも用いられる。ただし、他の結晶シンチレータと比較すると発光量が少ないため(表3.2)、 いかに光子を効率よく集めるかが、アクティブシールドとしてのLower Thresholdを下げるうえで重要とな る[5][6]。

3.3.2 APD

シンチレータで発生した可視光光子を読み出す手段として、光電子増倍管が古くから用いられてきたが、

HXIやSGDではAPDを用いた読み出しが採用されている。APDは、1 cm x 1 cmと非常に軽量かつ小型 であり、機械的に壊れにくく、光電子増倍管の高圧には1000 V程度が要求されるのに対して、APDは400 V程度で十分である、温度と高圧が一定ならゲインも安定しやすい、量子効率が80%と高い、などの利点を もつ。とりわけ小型であることより、HXIとSGDのアクティブシールドで、バックグラウンドの混入を避け るためのすき間の少ない構造が実現可能となった。しかし、光電子増倍管の増幅率が100万から1000万倍ほ どであるのに対して、APDは50-100倍であることから、読み出し時のノイズによってエネルギー分解能や Lower Thresholdが影響を受けてしまうため、回路設計に注意が必要である。本実験では、浜松ホトニクス社 製のSi APD S8864-1010 という型番のAPDを用いた。 3.3.3 CSA

APDで生じた電荷信号がCSA(Charge Sensitive Amplifier)に収集され電圧信号に変換されて初めて、入 射した放射線の強度を測定することができる。本実験では、9 chのAPD出力を3つの4 ch CSAで受ける。 いずれもClear Pulse社製で、型番はCP5005のものが2つとCP5005Hのものが1つであり、時定数は50

µs、帰還部分のコンデンサの容量が1 pFと0.5 pFと異なるためゲインが違うが、それ以外はほぼ同等の回 路構成である。

(19)

HXIでは、CSA出力(時定数10 µs)を積分回路に通し、その出力をデジタルフィルターにかける仕様であ るが、本実験では簡単のため、CSA出力をShaperに通している。デジタルフィルターまたはShaperを通す と、もとのCSA出力の時定数の影響が小さくなるため、HXIで使用されるCSAと異なる時定数のCSAを 用いる影響は小さいと考えられる。

CSAの同軸信号線を通じて、APDに正の高電圧約400Vが印加され、信号の交流成分がカップリングコン デンサを通してCSAに入力される。APDからは負の電荷パルスが読み出され、CSAからは極性の反転した 正の電圧パルス信号が出力される。

3.3.4 16ch Shaper

CSAの出力は、立ち上がりが急速で、減衰の時定数が50 µsと長く、またゲインが固定されているため、信 号のパイルアップの解消やダイナミックレンジの調整を兼ねて、Shaperで波形整形を行っている。1次微分

(または2次微分)と4次積分の回路を16系統持っている、Clear Pulse社製のCP4030という型番のShaper

を用いた。Shaping Timeは2 µsで、Peaking Timeは4 µsである。

3.3.5 8 ch ADCBox

APDとBGOからの 9 chの出力の波高値を読み取るために、図 3.2 のように、SpaceWireFPGAと

UserFPGAを搭載する8 ch入力ADCモジュールを2系統用意した。ダイナミックレンジは−10 Vから10

Vで、12 bitのパイプラインADCが用いられており、出力までに7クロック分の遅れが生じる。このADC

モジュールは、Clear Pulse社と東京大学の湯浅ら[7]により共同で開発され、単に波高値を記録するだけで

なく、UserFPGAにVHDLコードを用いて回路を実装すれば、コンパレータやデジタルフィルターなどの機

能を持たせることができる。この機能を用いることで、将来的には、前述のShaperなしの回路構成をする予 定である。消費電力は、8 chを全て使用した場合8Wであり、ADCチップがその大半を占める。

本実験ではこのADCモジュールのもつ8 chのLVCMOS出力から、図 3.2のように、コンパレータ信号

を直接DIO BoardのLVCMOS入力につなげ、ヒットパターン信号のラッチを行う。コンパレータからのト

リガー幅はFPGAのレジスタにアクセスすることで自由に調節でき、一度トリガーをだすと、トリガー幅の 時間がたち、波高値が設定した値を下回るまでは、次のイベント取得を行わずに不感時間とする仕様である。 本実験での動作クロックは50 MHzである。

3.4

イベントデータ取得の流れ

§3.2と§3.3の道具立てのもと、図3.2に示したようにデータ取得が行われる。センサー部では、まず、 放射線がCdTe素子に入射し、発生した電荷信号がADC機能を備えたASICでデジタル波高値に変換さ れる。この値が、IFCを通して、LVDSでDIO Boardに送られる。イベントが一定数(今は64)たまると、

SpaceWireを介し、最終的にTCP/IP化されたパケットとしてPCに送られる。

シールド部では、CSAからの正極性パルスが、Shaperにより波形整形された後、8 ch ADCBoxでADC

値に変換される。8 ch ADCBoxの役割は、ADC値がある閾値を超えたときにヒットパターン信号のタグを、

CdTeのイベントに付与することであり、8 ch ADCBoxのLVCMOS出力を通じてDIO Boardに直接入力 する。このタグづけをもとに、オフライン解析で反同時計数を行う。

以上の機能を実現するため、今回は、DIO Board内のUserFPGA内に、図3.6のブロック図で示されるロ ジックを書き込んだ。そのロジック内で、ヒットパターンのトリガーが発生し、ラッチされるまでのタイミン

(20)

UserFPGA

CdTe

ASIC

TriggerControl

ADConversion

DataReadout

APDHitPatRead

BRAM

VATAModule

BusIF

ADCBox

event_aq_trig Asic_Trigger Asic_Hold Adconvin Adcclk

Adconvdone Readout_clk Readout_data TriggerTime LiveTimeCnt APDhp(9) APDLatchCnt(9) APDO(9) A_WriteDataInOfRAM A_AddressOfRAM B_ReadDataOutOfRAM B_AddressOfRAM

SpaceWire

BGO

APD

CSA

Shaper

図3.6 DIO BoardのUserFPGAによるデータ取得のブロック図。小さい文字は、FPGA内で使用され ている信号の名前。

グチャートを図3.7に示す。ASICから渡された情報を処理するために、UserFPGAにはVATAModuleと いうモジュールがあり、この大きな塊は、以下のサブモジュールに分けられる。

TriggerControl ASICのTAから出力されるトリガー(Asic Trigger)を受けてから、指定されたホールド 時間が経過してからASICのVAにホールド信号(Asic Hold) を送り返すためのサブモジュール。 トリガーを受けた時刻(TriggerTime)とトリガーを待ち始めてから信号がくるまでに経過した時間

(LiveTimeCnt)をDataReadout サブモジュールに、ASICからトリガーを受けたことを示す信号

(event aq trig)をAPDHitPatRead サブモジュールに送る役割も担う。

APDHitPatRead TriggerControl サ ブ モ ジ ュ ー ル か ら 渡 さ れ る ASIC か ら の ト リ ガ ー 信 号 の フ ラ グ

(event aq trig)を受けてゲートを開き、LVCMOS端子から入力される ADCBoxからのヒットパ ターン信号(APDO)をラッチするためのサブモジュール。最終的に、ラッチの有無を9 chぶん収め

た信号(APDhp)と、ゲートを開いてからラッチにいたるまでに要したクロック数を記録した信号

(APDLatchCnt)をDataReadoutサブモジュールに送る。このAPDLatchCntは、ASTRO-Hでは 実装されないが、データ取得後に自由にゲート幅を変えられるという利点があるため、地上実験では組 み込むことが有用だと考えられる。

ADConversion ASICに、ウィルキンソン型ADC用の参照クロック(Adcclk)を送る、また、ADCが終了 した合図である信号(Adconvdone)を受けるためのサブモジュール。

(21)

タ(Readout data)を読み出すためのサブモジュール。TriggerControlサブモジュールや

APDHitPa-tReadサブモジュールから受け取る信号も合わせてデータパケットにつめて、BRAMに保存する役割

を果たす。

BRAM DataReadoutから読み出されたデータを一時的に蓄えておくためのブロックRAM。実装したコー

ドでは、64回分のイベントがたまると外部にBusIFを通じて読み出される。

BusIF 外部モジュールとの信号のやりとりを担うモジュール。

このモジュール全体を通じて、SpaceWire FPGAにイベントデータを渡すところまでが行われる。最終的 に、SpaceWire、TCP/IPを通じてPCのメモリにデータが書き込まれていく。これらは、ASTRO-Hで用い られるロジックと基本的には機能は同じであるが、実際には、シールド部の信号に反応してVETOを主検出 部に送り、イベント取得をキャンセルさせる機能、ヒットパターン信号のdelayを調節する機能などが加わる。

こうしたイベント処理の流れを、図3.7のタイミングチャートに沿って見直すと、次のようになる。まず、

CdTeに放射線が入射すると、ASICのTA Shaperが立ち上がり、Asic TriggerがDIO Clockに同期して立 ち上がる(図3.7のタイミング1)。次のDIO Clockで、event aq trigが立ち上がり(2)、イベントのreadout

が終わるまでは下がらない。これを受けてさらに次のDIO ClockでAPDからの出力を受けるフラグとなる

Gateが、設定したクロック数の間だけ開く(3)。この間に、BGO+APD+Shaperの出力が閾値を超えると、

Hit pattern triggerが、ADCBox Clockに同期して立ち上がる(4)。今、DIO ClockとADCBox Clockの同 期はとっていないため、少なくとも生じうるジッター以上の幅を確保すべきである。Hit pattern triggerが立 ち上がると、APDO信号が、Gateの値に関係なく、DIO Clockに同期して2 clock分立ち上がる(5)。Gate

が立ち上がっている状態で、APDO信号が立ち上がっている場合、DIO Clockに同期してAPDhpが立ち上 がる(6)。イベントの読み出しが終わると立ち下がり、次のイベントに備える状態に戻る。

まだGateの幅とHit pattern triggerの幅には自由度が残るので、適切な値を考察する必要がある。DIO Board側で信号がラッチされるので、Gateが立ち上がる前にHit pattern triggerが下がってしまうと、同時 イベントを取り逃がすことになる。本当の同時イベントの場合、ASIC TA shaperとAPD shaperの上がり 始めは同じである。ピーキングタイムは、前者が0.6 µs、後者が4 µsであるので、APD shaperに大信号が来 て、CdTe側に閾値ぎりぎりの小信号が来たとき、Hit pattern triggerはGateを最大0.6 µs先行しうると考 えられる。逆にHit pattern triggerは、最大で4 µs、Gateに遅れうる。そこで、余裕をもってHit pattern triggerに1 µsの幅を与えた。Gateの幅は、Gateを立ち上げてからAPDhpが立ち上がるまでのクロック数

(APDLatchCnt)をイベントデータパケットに記録しておき、取得後にソフトウェアで変更できるようにした

ため、この値は解析時に決定する。理想的な状況で、APD shaperのピーキングタイムである4 µsにしてお けばほぼ全ての同時イベントを回収できるはずである。ただし、回路のノイズなどにより電圧値が揺らぐ場合 はその限りではない。

(22)

DIO Clock

ASIC TA

Asic_Trigger

event_aq_trig

APDO

ADCBox Clock

APD shaper out

Hit pattern trigger

APDhp

1 2 3

4 5

Gate

6

図3.7 ヒットパターン信号がラッチされるまでのタイミングチャート。赤は各Shaper出力に対する閾 値、青は信号切り替わりの起点となる箇所を示し、順に番号を振った。

(23)

4

各部の性能評価

4.1

センサー系の性能評価

主検出器であるCdTeピクセル検出器では、CdTe素子の64ピクセルのうち32チャンネルがVA32TA6で 読み出される。残りのピクセルはガードリングと同じ電極に接続されている。この検出器には実験中に軽微な 損傷を与えてしまったため、スペクトルを読み出せるチャンネルは20ほどに限られ、さらに、ゲインが低い、 30 keV以下のラインを測定できないなどの症状がでている。また、アナログ回路のパラメータも全空間で正 常動作する状態ではない。しかし、その他の面では、CdTe素子としては問題のない性能を発揮したため、実 験は継続できた。そこで本節では、ほぼ正常に動作するパラメータで、この検出器の基礎評価を行う。 4.1.1 VATAのパラメータに伴うスペクトル及び波形の変化 アナログASIC、VA32TA6には、アナログ回路のパラメータを 変更する機能がついており、ダイナミック レンジや閾値などを変え、実験の目的に則した仕様に調節できる。 今回の実験で変更するパラメータは主に ifp, ifss, vthの3つであり、それぞれ、以下の役割を持つ。 • ifp…初段のCSAの帰還抵抗にかかる電流値を変える。時定数やゲインが変化する。

• ifss…VA Shaper(Slow Shaper)の帰還抵抗にかかる電流値を変える。時定数やゲインが変化する。

• vth…TA Shaper(Fast Shaper)の信号を受けるコンパレータの閾値を定める。

まずは、CSAのパラメータであるifp の値を変化させたときの波形を比較した。測定は、恒温槽で5 ℃ま で冷やし、Keithley237を用いて高電圧400 VをCdTe素子に印加して行った。VA32TA6では、規定され

たHolding Time でサンプルし、これをAD変換した値のみを出力する。よってアナログ波形は取得できな

いが、かわりにHolding Time を少しずつ長くしながら、多くのイベントを測定すれば、 擬似的に波形を取 得できる。今回は、200 ns のステップでHolding Timeを変化させ、137Cs線源を照射してスペクトルを取

得した。この線源は、図4.1に示すように、崩壊に伴うラインが 662 keVのみである。そのためスペクトル 上には662 keVの光電吸収ピークと478 keV のコンプトンエッジ、184 keVの後方散乱ピーク、137 Ba

よる31 keVの特性X線が見えるだけである。

図4.2は、こうして取得した波形で、最も高いエンベロープが662 keVの光電吸収ピーク、その∼2/3の 高さのものが、コンプトンエッジ、低い緑色のトレースが、31 keVの特性X線である。このように、ifp=7

のときはSlow Shaperがもつ時定数の 3-5 µsを反映した波形となり、ifp=6のときは2 µs程度で立ち下が り、4 µs後にはアンダーシュートを形成している。ifpが6 より小さいと きも、6のときのと同様の現象が 発生した。このことは、ifpが7以外では初段のCSAが正常に動作していないことを示唆しており、以後の 実験ではifpは7に固定した。

次に、Slow shaperのパラメータであるifssの変化による影響を見た。ifpのときと同様に、ifss=0, 3, 7の それぞれで取得した波形を図4.3に示す。 帰還抵抗に流れる電流は、7→0→3と大きくなり、ゲインと時定数 もこの順番になる。ifss=3のときエネルギー分解能が良く、かつ、VA32TA6の不具合が見られない。また、 デフォルトの設定で137Cs662 keVがちょうど収まるゲインを得られるので、ifss=3を採用した。最後に

コンパレータのレベルを指定するvth決定する。VA32TA6は1回のイベント取得でおよそ100 µs の不感 時間を生むので、ノイズや環境放射線によるトリガーレートが十分低くなるようvthを設定する必要がある。

(24)

図4.1 137Csの崩壊系列[8]。崩壊によるガンマ線のラインがほぼ1本だけなので、キャリブレーション ソースとしてよく用いられる。 A D C Cha nne l 0 200 400 600 800 1000 Hold Time (ns) 0 4000 8000 12000 16000 137Cs

(a) ifp=6

Hold Time (ns) 0 4000 8000 12000 16000

(b) ifp=7

1 10 102 103 Count

図4.2 ifpを変化させたときの波形。線源は137Csを用いている。(a)ifp=6、(b)ifp=7でifss=3に固定している。

vthは高いほど閾値が高くなる。vth=4を起点にノイズと環境放射線のトリガーレートを調べた結果が、表

4.1である。vth=4で、トリガーレートが8.9 Hzである。不感時間はおよそ0.5%なので、大きな問題にはな らないしかし、電気的なノイズのすそが見えていると考えられること、不要なイベントでデータ量を増やした くないことから、本実験では安全を見て、vth=6を採用した。これは、CdTe素子では9.7 keVに相当する。

以上より、今後の測定は全てifp=7, ifss=3, vth=6で行った。図4.3(b)を見ると、31 keVのラインが2

µsで、662 keVのラインが3-5 µs付近でピークを迎えていることがわかる。これは、VAおよびTAのアナ ログ回路の特性と考えられる。そこで、holding timeを2-4 µsに設定すれば、早くピークに到達する低エネ ルギーイベントと、立ち上がりの遅い高エネルギーイベントの両方を比較的ピークに近い位置で捉えることが できる。そこで、本実験では、低エネルギー側を優先した2µsをholding timeとして用いた。また、ノイズ

(25)

137Cs

(a) ifss=0

A

D

C Cha

nne

l

0

200

400

600

800

1000

Hold Time (ns)

0

4000

8000

12000

16000

(b) ifss=3

1

10

10

2

10

3

A

D

C Cha

nne

l

0

200

400

600

800

1000

Hold Time (ns)

0

4000

8000

12000

16000

(c)

ifss=7

Count

図4.3 ifssを変化させたときの波形。線源は137Csを用いている。(a)ifss=0、(b)ifss=3、(c)ifss=7で 、

ifp=7に固定している。この図の(b)は、図4.2(b)と同一である。 表4.1 10分間の測定から算出したvth=4, 5, 6のときのトリガーレート。 vth トリガーレート(Hz) 4 8.9 5 0.3 6 0.1 7 0.1 が多いなど正常な動作に問題がありそうなASICのチャンネル(0,1,2,5,7,21,22,27,28,29,30,31) のトリガー 機能をオフにした。 4.1.2 ゲイン較正

ASICの出力データは全てADC Channelであり、これらは各チャンネルごとでオフセットやゲインが異 なっているため、それぞれ個別に較正が必要である。このため、VA32TA6にはテストパルス端子を持ってい るが、本論文で用いたFECにはテストパルス入力端子の接続を行っていないため、アナログ回路やADCの ゲインを連続的に較正することができない。そこで、133 Ba、22 Na、137 Csのライン を用いてゲインを較

(26)

(a)

(b)

図4.4 (a)(b)それぞれ22Na、133Baの崩壊系列[8]。22Naは、電子捕獲もしくはβ +崩壊により、511 keVの対消滅線を180度反対向きに放射する。133 Baは、複雑な崩壊系列をもち、特に300 keV付近に ラインが多く立つため、中程度のエネルギー帯域を較正するのに役立つ。 正し、ADC Channelとエネルギーの変換式を求めた。表4.2にこれらの線源から得られるガンマ線のエネル ギーを、図4.4(a)(b)にそれぞれ22Naと133Baの崩壊系列を示す。 表4.2 較正に用いた線源とライン。 核種 エネルギー(keV) 133 Ba 31 80 356 22Na 511 137 Cs 662 CdTeで取得したスペクトルのピークは、前述の通りテールを引いた構造をもつため、ガウシアンでフィッ トできない。そこで、単純にピークをとるADC Channelをエネルギーに対応させることにした。まず、ゲイ ンがリニアであると仮定して較正直線を求めた。この結果を示したのが、図 4.5(a)である。低エネルギー側 でデータがモデルに対して10-15%ほど超過するなど、系統的なずれが見られる。榎戸らの報告によりASIC のADC はもともと非線形であることが知られており[9]、それを追認する形となった。そこで、榎戸らと同 様に二次曲線を用いると、フィットは改善し、ずれは2%以内に収まった。これ以降は、この較正曲線を用い て、ADC Channelをエネルギーに変換したスペクトルを示す。 最後に、この較正曲線を用いて、使用している全チャンネルのシングルイベントを足し合わせた133Ba、 22Naおよび137Csのスペクトルを図4.6に示す。ピクセル間で電荷を分け合ってしまうスプリットイベント を除くため、二番目に高いエネルギーが15 keVを超えないという条件を加えている。エネルギー分解能は、

15 keV@662 keVと本来の性能を達成していないが、これは前述の故障による影響の可能性が高い。CdTe素

(27)

100 200 300 400 500 600 700 800 0 100 200 300 400 500 600 700 1 1.1 100 200 300 400 500 600 700 800 0 100 200 300 400 500 600 700 0.981 1.02

Energy (keV)

Energy (keV)

A

D

C Cha

nne

l

A

D

C Cha

nne

l

ra

ti

o

1.2 1.04

ra

ti

o

(a)

(b)

図4.5 CdTe検出器の15 ch出力のADC ChannelとEnergyの関係をそれぞれ(a)直線、(b)二次曲線 でフィットしたもの。データとモデルの比を下方に示した。 (a)133Ba (b)22Na (c)137Cs 10 102 103 104 105 106 102 103 104 1 102 103 104 105 10

Energy (keV)

0 200 400 600 800 1000 0 200 400 600 800 1000 0 200 400 600 800 1000

Count

s (1/

ke

V

)

図4.6 ADC Channelをエネルギーに直して、使用可能なチャンネルの出力を足し合わせたスペクトル。

(a)(b)(c)は、それぞれ133Ba、22Na、137Cs。(b)で、750 keV以上に見えるピークは、ADCのダイナ ミックレンジの限界によるものである。 V以上のバイアスを印可すると、リーク電流の上昇が著しく逆にエネルギー分解能に悪影響を与えると考えた ため、400 Vで実験を続行した。

4.2

シールド系の性能評価

用意したAPDとBGOを本実験で使用するにあたり、その性能を評価し、バイアス電圧などの最適なパラ メータを実験的に選定した。 4.2.1 APDの性能評価 BGOシンチレータの読み出しに用いるAPDは、ゲイン50-100で動作させると最良の性能を出すことが 知られているため、ASTRO-Hでは安全をみてゲイン50で動作させる予定であり、本研究でもこのゲインを 採用する。しかし、このゲインを得るのに必要なバイアスは素子ごとに異なるため、それを実測した。ゲイン は、LEDをAPDに照射しながらかけるバイアスを上げていき、そのときの電流値を、バイアスが十分に小さ くまだなだれ増幅のおきていない領域での値で割ることで求められる。この測定にもKeithley237を用いた。

(28)

APD-E APD-F APD-L APD-M APD-N APD-O APD-Q APD-R APD-S 10 100 G ai n 50 360 380 400 420 440 High voltage [V]

(a) 20 ℃

APD-E APD-F APD-L APD-M APD-N APD-O APD-Q APD-R APD-S 360 380 400 420 440 High voltage [V] 10 100 G ai n 50

(b) 5 ℃

APD_E APD_F APD_L APD_M APD_N APD_O APD_Q APD_R APD_S 360 380 400 420 440 High voltage [V] 10 100 G ai n 50

(c) -20 ℃

図4.7 9個のAPDの高電圧とゲインの関係。(a),(b),(c)はそれぞれ20℃、5℃、-20℃での測定結果。 ゲイン50のところに赤で線を引いた。 本研究で用いる9つのAPDについて、バイアス-ゲインの関係を温度20℃、5℃、-20℃で求めたのが図4.7 で、表4.3にそれぞれのゲインが50となる電圧をまとめた。 表4.3 各APDのゲインが50となる高電圧(V)。

APD-E APD-F APD-L APD-M APD-N APD-O APD-Q APD-R APD-S 20℃ 420 400 405 406 402 409 413 407 404 5℃ 407 387 394 395 391 397 402 396 393 -20℃ 388 368 374 376 371 378 383 377 373 必要な高電圧順位 1 9 6 5 8 3 2 4 7 APDをゲイン50付近で動作させるとき、高電圧が1V変化すると2%程度ゲインが変化してしまうため、 全てのAPDを同一のバイアス電圧で動作させることは難しい。いま、用意した2系統の高電圧でなるべく ゲインをそろえようと思うと、特にゲインの低いAPD-EとAPD-Qを1つ目のグループにし、それ以外の

(29)

ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Bottom ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Side1 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Side2 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Side3 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Side4 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 C o u n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Top1 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Cou n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Top2 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Cou n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Top3 ADC Channel 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 Cou n t 1 10 2 10 3 10 4 10 5 10 Top4 137

Cs

test pulse 40

K

図4.8 9個のBGOに137Cs線源を当てて得たスペクトル。Csピークの2倍あたりに見えるピークは、 環境放射能の40Kで、全スペクトルの3700 ADC Channel付近に見えるピークはテストパルス。 APDを2つ目のグループにして使用することにした。また温度変化に伴うゲインの変化を防ぐため、測定は いずれも恒温槽の中で、20℃にて行った。 4.2.2 BGOの性能評価 BGOシンチレータは、同じ形状のものでも、製造過程の違いにより発光量にばらつきがある場合がある。 それ以上に、同じインゴットから切り出した結晶でも、大きさや形により、APDの集光率が異なる。そこで 事前に、個々のBGOに対し、同じAPD、測定系、温度(20℃)で137Cs線源を照射し、スペクトルを取得 した。CSAはクリアパルス社の580H型、波形整形アンプはORTECの571型を使用し、AMPTEC社の

ADC、MCA8000を用いて計測を行った。Shaping Timeは、20℃でA8664-1010のAPDをBGOと組み 合わせて用いたときに、ゲイン50で最良の分解能を与える値として知られる0.5 µsとしている。放射線計測 時には、APDを含めた回路由来のノイズの寄与を知るためにテストパルスを同時に入力した。図4.8にその さい得られたスペクトルを示す。

(30)

トした結果、それぞれの波高値は表4.4に示すようになった。得られた光量は、12%の範囲でそろっており、 特に同一形状のBGOではよく似た光量となっている。Top 3だけは、他の結晶より17%ほど低いが、我々 の実験ではADCのパラメータで対応できる範囲であり、大きな問題はない。

表4.4 各BGOにおいて137 Csの662 keV光子の光電吸収ピークに対応するADC Channelとエネル ギー分解能。ノイズの寄 与を除いた、結晶の発光量に由来するエネルギー分解能も併記する。

Bottom Side1 Side2 Side3 Side4 Top1 Top2 Top3 Top4

中心値(ch) 870 796 775 978 1009 920 903 761 913 エネルギー分解能(%) 18.5 18.8 19.8 16.3 16.2 18.4 18.0 18.6 18.1 光子数由来のエネルギー分解能(%) 12.5 11.8 12.9 11.0 11.2 12.9 12.3 10.7 12.2 中心値の順位 6 7 8 2 1 3 5 9 4 図4.8で、テストパルスの幅は電気的ノイズで決まり、662 keVピークの幅は電気的ノイズとシンチレータ 発光量の2乗和で決まる。そこで、662 keVピーク幅の2乗からテストパルス幅の2乗を引き、シンチレータ 由来のゆらぎを求めたところ、表4.4の第3桁に示す値を得た。このように、光子数由来のエネルギー分解能 だけを見れば光電子増倍管使用時と大差ないが、ノイズ成分の寄与が大きいことも同時に示している。APD を用いるときには、このノイズ成分の抑制が重要であり、電磁シールドの使用や低温での動作が望ましい。 4.2.3 APDとBGOの組み合わせ §4.2.1で求めたAPDのバイアス−ゲインの関係と、§4.2.2で求めたBGOの光量をもとに両者の組み 合わせを決めた。そのさい、ゲインの高いBGOにはゲインの低いAPDを割りあて、同じバイアス電圧で 9個のAPDを動作させたとき、同じエネルギーのガンマ線に対し、ほぼ同じ波高値が得られるようにした。 組み合わせたものをコンポーネントA,B,C,D,E,F,G,H,I (A-D はTop、E-Hは Side、I はBottom。以降、

Comp.A-Iと記す)と呼び、表4.5に定義を記載する。

表4.5 各BGOにおける137 Csがピーク値をとるADC Channelとエネルギー分解能。ノイズによる

寄与を除いた結晶の発光量に由来するエネルギー分解能も併記している。

Comp.A Comp.B Comp.C Comp.D Comp.E Comp.F Comp.G Comp.H Comp.I

結晶 Top1 Top2 Top3 Top4 Side1 Side3 Side2 Side4 Bottom APD APD-L APD-N APD-F APD-S APD-R APD-O APD-M APD-Q APD-E CSA 5005#1-1 5005#1-2 5005#1-3 5005#1-4 5005#2-3 5005#2-1 5005#2-4 5005H-1 5005H-2

HV 出力A 出力A 出力A 出力A 出力A 出力A 出力A 出力B 出力B

実験では、高電圧を2系統(出力A,B)、CSA を3系統(5005#1,5005#2,5005H)用いる。§4.2.1で定 めた、より高い高電圧を必要とする2つのAPDとその他7つのAPDの組を、Bottom、Side、Top でうま く切り分けられるよう調整した結果、コンポーネント、CSA、高電圧の組み合わせは、表4.9のように決定さ れた。本研究では、§5で述べるように5 ℃で実験を行う。そこで、 印可する高電圧は、各コンポーネント で必要な値の平均として算出し、出力Aでは393 V、出力Bでは405Vを用いる。

図 1.1 HXI 用結晶シンチレータのジオメトリ
図 3.1 BGO シンチレータ ( 青色、水色 ) と CdTe 素子 ( 灰色 ) のジオメトリ。 (a) 、 (b) は断面の側面図と
図 3.4 CdTe 素子から信号を読み出す ASIC のアナログ回路のプロック図。
図 3.5 Front End Card(FEC) の写真。青で囲まれた部分が CdTe で、赤で囲まれた部分が ASIC 。 ケーブル端子がついている。 3.2.3 高電圧源 Keithley 237 半導体素子を放射線検出器として用いるとき、逆バイアスをかけて空乏層を広げて有感層を作る必要があ る。本研究では、半導体検出器に標準的に用いられる高圧源として Keithley237 を用いることで、 1000 V ま での高圧をかけながら nA オーダーのリーク電流を測定できる。 HXI では、衛星搭載用に
+7

参照

関連したドキュメント

Our estimates for the bilinear form with the Dirichlet symbol and for the special linear form with the Jacobi-Kubota symbol are then in Section 23, via the multiplier rule,

Ngoc; Exponential decay and blow-up results for a nonlinear heat equation with a viscoelastic term and Robin conditions, Annales Polonici Mathematici 119 (2017), 121-145..

Since locally closed functions with all point inverses closed have closed graphs [2], (c) implies

We aim at developing a general framework to study multi-dimensional con- servation laws in a bounded domain, encompassing all of the fundamental issues of existence,

Assume that F maps positive definite matrices either into positive definite matrices or into negative definite matrices, the general nonlinear matrix equation X A ∗ FXA Q was

Then by applying specialization maps of admissible fundamental groups and Nakajima’s result concerning ordinariness of cyclic ´ etale coverings of generic curves, we may prove that

In this section, we establish a purity theorem for Zariski and etale weight-two motivic cohomology, generalizing results of [23]... In the general case, we dene the

[r]