卒業研究論文
マルコフモデルを用いた
高校バレーボールのチーム力の分析
学籍番号
11D8103001F及川 雄樹
中央大学理工学部情報工学科 田口研究室
2015年
3月
i
あらまし
本研究の目的は,バレーボールの試合データからマルコフモデルを作成し,試合のシミュ レーションを行い,シミュレーションの結果からチームの特徴や試合を分析し,チームが より強くなるために改善すべき点を示すことである.
キーワード:バレーボール,マルコフモデル
ii
目次
第
1章 はじめに ... 1
第
2章 使用データ ... 2
2.1 VIS
データ ... 2
2.2 VIS
データの高校バレーへの適用 ... 2
第
3章 マルコフモデルを用いたチーム力の分析 ... 4
3.1 マルコフモデル ... 4
3.1.1 マルコフ連鎖と推移確率行列... 4
3.1.2
高次の推移確率と時点𝑛における状態確率 ... 5
3.1.3 吸収的マルコフ連鎖 ... 6
3.1.4 吸収確率 ... 8
3.2 バレーボールマルコフモデル ... 8
3.2.1 状態空間の定義 ... 8
3.2.2 推移確率行列の決定 ... 10
3.3 試合のシミュレーション ... 11
3.3.1 シミュレーションの設定 ... 11
3.3.2 シミュレーションのアルゴリズム ... 12
3.4 シミュレーション結果の分析 ... 13
3.4.1 実際の試合結果との比較 ... 13
3.4.2 試合の分析および改善点の分析 ... 15
3.5 推移確率を変化させた場合のシミュレーション ... 18
3.5.1 推移確率の設定 ... 18
3.5.2 シミュレーション結果 ... 19
3.5.3 設定の複合シミュレーション... 21
第
4章 おわりに ... 25
4.1 まとめ ... 25
4.2 今後の課題 ... 26
謝辞 ... 27
参考文献 ... 27
付録 ... 28
1
第 1 章 はじめに
2012
年,ロンドン五輪が開催された.バレーボール競技では,日本女子チームが
7大会
28年ぶりにメダルを獲得し,日本でのバレーボールへの注目が高まっている.今大会,デ ータバレー,ID バレーという言葉も注目を集めた.データバレーとは,試合中に発生する データを入力,統計解析を行い,戦術に活かすものである.日本をはじめ,世界各国のナ ショナルチームが採用している.データバレーの普及により,体格の差を情報で覆してし まう試合も多くみられる.
本研究では,第
67回全日本バレーボール高等学校選手権大会岩手県予選会の一部の試合
データから,
S高校のプレーに着目し,どのプレーで得点しているか,失点しているかにつ
いてマルコフモデルを用いて分析する.このモデルを構築することでシミュレーションが
可能となる.シミュレーション結果から試合とプレーを分析し,
S高校のチーム力を分析す
る.また,
S高校が今大会敗北した
I高校との試合を分析し負けた要因と
S高校が
I高校に
勝利するための強化策を検討する.
2
第 2 章 使用データ
本章では,研究に使用するデータについて述べる.なお,本研究で扱うバレーボール用 語の説明は付録に示す.
2.1 VIS
データ
VIS
データとは,Volleyball Information System データの略称で,バレーボールの各国 代表チームの間で行われる公式試合において記録されるデータのことである.現在のデー タは,集計結果のみであるが,本研究では,以前使用されていたプレーごとに記録されて いる形式を用いる.
2.2 VIS
データの高校バレーへの適用
本研究で使用するデータは,第
67回全日本バレーボール高等学校選手権岩手県予選会の 一部,
4試合
9セットであり,いずれもデジタルビデオカメラを用いて撮影した.この試合 映像から
VISデータを参考にデータを作成した.本研究で使用するプレーの分類を表
2.1で示す.本研究で作成したデータでは,左からチーム
Aの「プレー名」 , 「背番号」 ,両チー ムの「得点」 ,チーム
Bの「プレー名」, 「背番号」となっている.今回作成したデータの一 部を図
2.2に示す.
本研究で使用するプレーの分類について説明する.高校生同士の試合のため,ミスをす
る選手も多くいた.特に,相手に返球する際に,アタックで返球することができず,つな
ぎのプレー(DIG)で返球することが多かった.DIG での返球は,処理することが容易で
次のプレーにつなげやすい.そこで,
DIGで相手からボールが返ってきた場合, 「チャンス
ボールの処理」として加えた.図
2.1について説明する.まず,チーム
Aが「サーブ」を
打つ.サーブを打つ選手は背番号
8番である.次に,チーム
Bが「サーブレシーブ」を行
う.サーブレシーブをする選手は背番号
6番である.チーム
Aのサーブに対し,チーム
Bがサーブレシーブを失敗し,ボールデッドとなった.そして,両チームの得点が
1対
1と
なる.
3
表
2.1 本研究で使用するプレーの分類記号 意味
SRV サーブ
REC サーブレシーブ
CHA チャンスボールの処理
SET トス
ATK アタック
DIG アタックレシーブ・つなぎのプレー
BLO ブロック
チーム
Avsチーム
Bプレー 背番号 得点 プレー 背番号
SRV 8
1-0 REC
6
SRV 8
REC 5
SET 1
ATK 14
BLO 1 1-1
SRV 1
REC 5
SET 3
ATK 1
2-1 BLO 14
SRV 7
REC 6
SET 1
3-1 ATK 7
図
2.1 VISデータを参考にして作成したデータ
4
第 3 章 マルコフモデルを用いたチーム力の分析
3.1 マルコフモデル
本章では試合のシミュレーションをするために,マルコフ性をもった確率過程であるマ ルコフ過程を扱う.
3.1.1 マルコフ連鎖と推移確率行列
マルコフ連鎖には,状態と状態間の推移という概念がある.一般に,時点𝑛における確率 過程𝑋
𝑛がとりうる値を状態といい,状態のすべての集合を状態空間という.
状態𝑖から状態𝑗へ移ることを推移という.推移に関して, 「時点𝑛で状態𝑖にいたとき,つ ぎの時点𝑛 + 1に状態𝑗に推移する確率は,時点𝑛 − 1以前にどの状態にいたかには無関係で ある」という仮定に基づいている.この仮定をマルコフ性という.
離散時点の確率過程𝑋
𝑛(𝑛 = 0,1,・・・)を考える.任意の𝑛 ≥ 1と状態空間 𝑆 = {𝑖0, 𝑖1,・・・, 𝑖𝑛−1, 𝑗}に対して𝑃{𝑋𝑛 = 𝑗|𝑋0= 𝑖_0, … , 𝑋𝑛−1= 𝑖𝑛−1} = 𝑃{𝑋𝑛 = 𝑗|𝑋𝑛−1= 𝑖𝑛−1} (3.1)
が成り立つとき,確率過程{𝑋
𝑛}はマルコフ性をもつという.そしてマルコフ性をもった状態空間が離散的であるとき,確率過程{𝑋
𝑛}をマルコフ連鎖という.また,式(3.1)の推移確率が時点𝑛によらないとき,推移確率は定常であるといい,マルコフ連鎖は斉次的であると いう.
斉次的マルコフ連鎖𝑋
𝑛の推移確率を
𝑝𝑖𝑗 = 𝑃{𝑋𝑛 = 𝑗|𝑋𝑛−1= 𝑖} (1 ≤ 𝑖, 𝑗 ≤ 𝑁) (3.2)
とおく.
𝑃𝑖𝑗は確率であるから,確率の基本性質
0 ≤ 𝑝𝑖𝑗≤ 1, ∑𝑁𝑗=1𝑝𝑖𝑗 = 1 (3.3)
を満たしている.
𝑝𝑖𝑗を行列の形に並べた
𝑃 = (
𝑝11 𝑝12 ⋯ 𝑝1𝑁 𝑝21 𝑝22 ⋯ 𝑝2𝑁
⋮ ⋮ ⋱ ⋮
𝑝𝑁1 𝑝𝑁2 ⋯ 𝑃𝑁𝑁
) (3.4)
を推移確率行列と呼ぶ.式(3.3)の条件から𝑃の行和(各行について横に加えたもの)は
すべて
1である.このようにマルコフ連鎖は推移確率行列によって推移の構造を表現する
ことができる.
5
3.1.2
高次の推移確率と時点
𝑛における状態確率
時点𝑛(𝑛 = 0,1,2,
・・・)で状態𝑖にいたとき,𝑚ステップ(𝑚 = 1,2,・・・)の推移の後,時点𝑛 + 𝑚で状態𝑗にいる確率𝑃{𝑋
𝑛+𝑚 = 𝑗|𝑋𝑛 = 𝑖}を求める.𝑚 = 1のときは,式(3.2)より𝑃{𝑋𝑛+1= 𝑗|𝑋𝑛 = 𝑖} = 𝑃𝑖𝑗 (3.5)
である.
𝑚 = 2のときを考えると,2ステップで状態𝑖から状態𝑗へ推移したのだから,まず
1ステップ目で状態𝑖からある状態𝑘へ推移し,次の
2ステップ目で状態𝑘から状態𝑗へ推移した と考えられる.この確率は𝑃{𝑋
𝑛+1= 𝑘, 𝑋𝑛+2= 𝑗|𝑋𝑛= 𝑖}で表される.これが1ステップの推 移確率の積
𝑝𝑖𝑘𝑝𝑘𝑗に等しいことが次のように証明される.この確率を確率の乗法法則を用い て書き換えると,
𝑃{𝑋𝑛+1= 𝑘, 𝑋𝑛+2 = 𝑗|𝑋𝑛 = 𝑖}
= 𝑃{𝑋𝑛+1= 𝑘|𝑋𝑛 = 𝑖}・𝑃{𝑋𝑛+2= 𝑗|𝑋𝑛= 𝑖, 𝑋𝑛+1= 𝑘} (3.6)
となる.式(3.1)のマルコフ性を用いると
𝑃{𝑋𝑛+2= 𝑗|𝑋𝑛 = 𝑖, 𝑋𝑛+1= 𝑘}
= 𝑃{𝑋𝑛+2= 𝑗|𝑋𝑛+1 = 𝑘} (3.7)
となる.したがって式(3.6)の確率は
𝑃{𝑋𝑛+1= 𝑘, 𝑋𝑛+2= 𝑗|𝑋𝑛= 𝑖} = 𝑝𝑖𝑘𝑝𝑘𝑗 (3.8)
と書ける.これをすべての可能な𝑘について加えると,
2ステップの推移確率を求められる.
すなわち
𝑃{𝑋𝑛+2 = 𝑗, 𝑋𝑛= 𝑖} = ∑ 𝑝𝑖𝑘𝑝𝑘𝑗
𝑁
𝑘=1
(3.9)
となる.この確率は
1ステップの推移確率と同様
𝑛によらないので
𝑝𝑖𝑗(2)と書き,2 次の推移 確率という.𝑚=3 のときも,まず
2ステップで状態𝑖から状態𝑘に推移し,次の
3ステップ 目で状態𝑗へ推移すると考えれば,まったく同様にして
𝑃{𝑋𝑛+3|𝑋𝑛 = 𝑖} = ∑ 𝑝𝑖𝑘(2)𝑝𝑘𝑗
𝑁
𝑘=1
(3.10)
となることがわかる.これも
𝑛によらないので,この確率を
3次の推移確率といい,
𝑝𝑖𝑗(3)と 書く.一般の
𝑚についても同様に
𝑚次の推移確率
𝑝𝑖𝑗(𝑚)が定義でき,
𝑝𝑖𝑗(𝑚)= ∑ 𝑝𝑖𝑘(𝑚−1)𝑝𝑘𝑗
𝑁
𝑘=1
(3.11)
で与えられる.この関係式を行列で表す.
𝑁 × 𝑁行列
𝑃(𝑚)の
𝑖行
𝑗列の要素を
𝑝𝑖𝑗(𝑚)とすると,
式(3.11)はちょうど行列の積の形になっているので
𝑃(𝑚)= 𝑃(𝑚−1)𝑃 (3.12)
となる.この式を繰り返し使うと
𝑃(𝑚)= 𝑃𝑚 (3.13)
6
が与えられる.
次に,時点𝑛における分布を考える.時点𝑛で状態𝑖にいる確率を𝑞
𝑖(𝑛) = 𝑃{𝑋𝑛= 𝑖}とし,𝑞
𝑖(𝑛)を行ベクトルの形に並べた𝜋(𝑛) = (𝑞1(𝑛), 𝑞2(𝑛),・・・, 𝑞𝑁(𝑛)) (3.14)
時点𝑛における(状態確率)分布という.特に,𝑛=0 のときの分布π(0)を初期分布と いう.
3.1.3 吸収的マルコフ連鎖
図
3.1のような推移図を持ったマルコフ連鎖を考える.この推移図には推移確率を記入し ていないが,矢印のあるところにはすべて正の推移確率があるものとする.
マルコフ連鎖が状態
1から出発したとする.次の時点では状態
2,4,6のいずれかの状 態に推移する.ところが状態
2に推移すると,その後は状態
2と
3を行き来するだけでこ の二つの状態以外に推移することはない.
このように,このマルコフ連鎖では状態
1,6,7の間を推移していると,いつか
𝐶1= {2,3}, 𝐶2= {4,5}, 𝐶3= {8,9}の三つの集合のいずれかに推移して,一度その集合に推移す
ると,いつまでもその中でだけ推移していて集合の外へ決して出ない.これが一般的なマ ルコフ連鎖の典型的なふるまいである.上の𝐶
1, 𝐶2, 𝐶3のような状態の集合のことを既約な集 合と呼び,既約な集合𝐶は次の二つの条件で特徴づけられる.
1) 𝐶の中のどの二つの状態をとっても一方から他方へ何ステップかで推移することがで
きる.
2) 𝐶のどの状態からも𝐶の外の状態へ推移することはできない.
一般のマルコフ連鎖の状態空間𝑆は,この二つの条件を満たすいくつかの既約な集合𝐶
𝑣と,
それらに含まれない状態の集合𝑇に分割できる.図
3.1の例では𝑇 = {1,6,7}であり,
𝑆 = 𝑇 ∪ 𝐶1∪ 𝐶2∪ 𝐶3
となっている.
このように,一般のマルコフ連鎖の推移の様子は二つに分けて考えることができる.一 つは𝑇の中で推移していずれかの𝐶
𝑣に推移するまでであり,もう一つは𝐶
𝑣への推移後である.
例えば, 図
3.1のマルコフ連鎖でいずれかの𝐶
𝑣に推移するまでの様子を調べる場合,
𝐶1, 𝐶2, 𝐶3をそれぞれ一つの状態にまとめた図
3.2のような推移図をもったマルコフ連鎖を調べれば よい.図
3.2のように既約な集合がすべて一つの状態からなっているとき,その状態を吸収 状態と呼び,吸収状態の集まりを集合𝐺で表す.𝐺に含まれない状態を一時的状態と呼ぶ.
吸収状態,一時的状態をもつマルコフ連鎖を吸収的マルコフ連鎖と呼ぶ.
吸収的マルコフ連鎖の推移確率行列𝑃の主対角線上に
1があるとき,それに対応する状態
は吸収状態である.状態の番号を適当につけ変えて一時的状態に若い番号を与えると,
𝑃は7 𝑃 = (𝑄 𝑅
𝑂 𝐼) (3.15)
と表される.
𝑁はすべての状態の数,𝑟は一時的状態の数とすると,𝑄は𝑟 × 𝑟行列でTからTへの推移を表し,𝑅は𝑟 × (𝑁 − 𝑟)行列で𝑇から𝐺への推移を表している.𝑂は(𝑁 − 𝑟) × 𝑟の零行 列(すべての要素が
0の行列)で,
𝐼は(𝑁 − 𝑟) × (𝑁 − 𝑟)の単位行列(対角要素は1,その他は
0の行列)である.式(3.5)を推移確率行列の標準形という.
3.1.2
節で述べたように𝑛次の推移確率行列𝑃
(𝑛)は𝑃
𝑛で与えられるが,式(3.15)の形をした
Pに対しては
𝑃𝑛= (𝑄𝑛 𝑅𝑛
𝑂 𝐼 ) (3.16)
となることが証明できる.ここで,𝑄
𝑛は行列𝑄の𝑛乗,R
nは
𝑅𝑛= (𝐼 + 𝑄 + ⋯ + 𝑄𝑛−1)𝑅 (3.17)
である.これらは直接計算して確かめることができる.
行列𝑄は非負行列で行和が
1であるが,これは0 < 𝑞 < 1の範囲をもつ実数𝑞に似ている.
𝑞𝑛
が𝑛 → ∞のとき
0に収束するのと同様,𝑄
𝑛も𝑛 → ∞のとき零行列に収束する.また,
1 + 𝑞 + 𝑞2+ ⋯ + 𝑞𝑛−1= (1 − 𝑞𝑛)/(1 − 𝑞)
に対応して
𝐼 + 𝑄 + 𝑄2+ ⋯ + 𝑄𝑛−1= (𝐼 − 𝑄𝑛)(𝐼 − 𝑄)−1
= (𝐼 − 𝑄)−1(𝐼 − 𝑄𝑛) (3.18)
が成立する.𝑛 → ∞とすると
𝐼 + 𝑄 + 𝑄2+ ⋯ = (𝐼 − 𝑄)−1 (3.19)
である.この(𝐼 − 𝑄)
−1を基本行列とよび𝑀で表すことにする.式(3.17)と式(3.18)から,
𝑛 → ∞のとき𝑅𝑛 → 𝑀𝑅であるから
𝑃𝑛 → (𝑂 𝑀𝑅𝑂 𝐼 ) (𝑛 → ∞) (3.20)
となる.
図
3.1 一般的なマルコフモデル8
図
3.2 既約な集合をまとめた吸収的マルコフモデル3.1.4 吸収確率
式(3.20)の極限に出でくる行列
𝑀𝑅の要素は,
𝑖 ∈ 𝑇, 𝑗 ∈ 𝐺なる
𝑛ステップ推移確率
𝑝𝑖𝑗(𝑛)の極 限であるから,マルコフ連鎖が状態𝑗に推移すると,それ以後はずっとそこに留まっている.
したがって,
𝑝𝑖𝑗(𝑛)は, 「マルコフ連鎖が状態
𝑖から出発し,
𝑛ステップまでに状態
𝑗に推移す る確率」と解釈できる.その極限
𝑏𝑖𝑗は「状態
𝑖から出発したマルコフ連鎖がいつかは状態
𝑗に 推移する(すなわち吸収される)確率」と考えられ,
𝑏𝑖𝑗を吸収確率という.
𝑀𝑅は吸収確率 の行列
𝐵 = (𝑏𝑖𝑗)に等しい.
3.2 バレーボールマルコフモデル
第
2章で得られたデータから状態空間を定義し,
S高校が行った
4試合について推移確率 行列を決定する.
3.2.1 状態空間の定義
バレーボールはサーブやアタック,つなぎのプレーなどで相手チームにボールを返球し,
どちらかのチームがボールを落とした時点や反則によって,得点が入るスポーツである.
そこで,ラリーにおけるプレーをサーブ,サーブレシーブ,トス,アタック,チャンスボ
ールの処理,スパイクレシーブ(つなぎのプレー) ,ブロックと分割し,ある状態からボー
ルデッドに至るまでの流れをマルコフモデルで表す.
9
本研究で扱う状態空間を表
3.1に示す.表
3.1を簡単に説明する.まず,チームを
Aと
Bの
2チームとする.状態
0から状態
6はチーム
Aのプレーを表している.また,状態
7か ら状態
13はチーム
Bのプレーを表している.状態
14はチーム
Aの得点,状態
17は
Bチ ームの失点を表している.同様に,状態
15はチーム
Aの失点,状態
16はチーム
Bの得点 を表している.
表
3.1 状態空間状態 チーム 攻撃パターン
0 A SRV
1 A REC
2 A CHA
3 A SET
4 A ATK
5 A DIG
6 A BLO
7 B SRV
8 B REC
9 B CHA
10 B SET
11 B ATK
12 B DIG
13 B BLO
14 A Ball Dead{GET}
15 A Ball Dead{LOST}
16 B Ball Dead{GET}
17 B Ball Dead{LOST}
10
3.2.2 推移確率行列の決定
前項の状態空間に基づいてデータの集計を行う.
S高校と
I高校の集計結果を表
3.2に示す.
行の番号は推移前の状態,列の番号は推移先の状態を表す.番号は表
3.1の状態番号に対応 する.
表
3.2 S高校対
I高校の集計結果
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
0 0 0 0 0 0 0 0 0 28 0 0 0 0 0 1 4 0 0
1 0 0 0 38 0 3 0 0 0 1 0 0 0 1 0 3 0 0
2 0 0 0 3 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0
3 0 0 0 0 65 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0
4 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 0 0 24 24 9 11 0 0
5 0 0 0 26 4 13 0 0 0 4 0 1 2 0 0 10 0 0
6 0 0 0 0 0 9 0 0 0 0 0 0 13 0 1 6 0 0
7 0 46 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 3
8 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 26 1 1 0 0 0 0 0
9 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 7 0 0 0 0 0 0 0
10 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 71 1 0 0 0 0 1
11 0 0 0 0 0 24 29 0 0 0 0 0 0 0 0 0 12 8
12 0 0 2 0 1 1 0 0 0 0 41 0 3 0 0 0 0 5
13 0 0 0 0 0 10 0 0 0 0 0 0 9 0 0 0 2 4
集計結果から推移確率行列
𝑃を求める.本項で得た集計結果を行列
𝐷,要素を
𝑑𝑖𝑗とし,
𝑖行 の行和
𝑠𝑢𝑚𝑖を求める.
𝐷と
𝑠𝑢𝑚𝑖,そして,式(3.5)より,
𝑃の各要素
𝑃𝑖𝑗は
𝑃𝑖𝑗 = {
𝑑𝑖𝑗
𝑠𝑢𝑚𝑖(0 ≤ 𝑖 ≤ 13,0 ≤ 𝑗 ≤ 17) 1 (14 ≤ 𝑖 ≤ 17,0 ≤ 𝑗 ≤ 17, 𝑖 = 𝑗)
0(14 ≤ 𝑖 ≤ 17,0 ≤ 𝑗 ≤ 17, 𝑖 ≠ 𝑗)
(3.6)
と表される.また,状態空間𝑆は𝑆 = {0,1,
・・・, 17},一時的状態の集合𝑇は𝑇 = {0,1,・・・, 13},吸収状態の集合𝐺は𝐺 = {14,15,16,17}である.
11
3.3 試合のシミュレーション
3.2
節で作成したバレーボールマルコフモデルを用いて,試合のシミュレーションを行う.
3.3.1 シミュレーションの設定
試合のシミュレーションは以下のルールに従う.
1
セットで
25点先取したチームがその試合の勝者となる(デュースを含む) .
1
試合
3セットマッチで
2セット先取したチームがその試合の勝者となる.
タッチネットなどの反則は考えない.
次に,シミュレーションを実行する際の,状態間の推移の規則について述べる.状態空 間の推移は
0以上
1以下の一様乱数を用いる.まず,推移確率行列𝑃が
∑ 𝑃𝑖𝑗 𝑁
𝑗=1
= 1 (𝑁
は列数
) (3.7)であることから,状態間の推移をプログラムで処理するために,以下で定義する
𝐶𝑖𝑗を要素 とする行列𝐶 を計算する.
𝐶𝑖𝑗 = ∑ 𝑃𝑖𝑘
𝑗
𝑘=1
(1 ≤ 𝑖, 𝑗 ≤ 28) (3.8)
次に,乱数
𝑥(0 ≤ 𝑥 ≤ 1)を発生させ,
𝐶𝑖𝑗−1< 𝑥 ≤ 𝐶𝑖𝑗のとき状態
𝑖から状態
𝑗へ推移させる.
吸収状態(状態
14から状態
17)へ推移したときは,マルコフモデルの推移を打ち切る.そして再び初期状態(時点
0)からモデルを実行する.モデル再開時の初期状態は,推移を打ち切る前の吸収状態によって以下のように定める.吸収状態が状態
14,17の場合は初期
状態を状態
0とし,吸収状態が状態
15,16の場合は初期状態を状態
7とする.これは,チ
ーム
Aが得点,チーム
Bが失点した場合はチーム
Aのサーブから試合が再開され,チーム
Aが失点,チーム
Bが得点した場合はチーム
Bのサーブから試合が再開されることを意味
する.シミュレーションの流れを図
3.3に示す.
12
3.3.2 シミュレーションのアルゴリズム
3.3.1
項に基づいて作成したシミュレーションのアルゴリズムを示す.ただし,
𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎はチーム
Aの得点,𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏はチーム
Bの得点を表す.
シミュレーションのアルゴリズム
ステップ
1 試合開始の状態𝑖(∈ 𝑇)を決める.𝑖 ≔ 0または𝑖 ≔ 7とする.𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎=0,𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏=0
とする.
ステップ
2 0 ≤ 𝑥 ≤ 1の一様乱数
𝑥を発生させて,
𝐶𝑖𝑗−1 < 𝑥 ≤ 𝐶𝑖𝑗を満たす
𝑗(∈ 𝑆)へ推移させ る.
ステップ
3 𝑗 = 14,17(∈ 𝐺)ならば(a),𝑗 = 15,16(∈ 𝐺)ならば(b) ,それ以外ならば(c)
を行う.
(a)
𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎:=𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎 + 1と更新し,
𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎 ≥ 25かつ(𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎 − 𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏)=2ならば終了する.そう でなければ,𝑖 ≔ 0としてステップ
2へ戻る.
時点
n(n=1,2,…)のある状態 jへ
推移
Ball Dead n:=n+1
NO
YES
どちらかのチームの得点が
25点以上 かつ
2
チームの得点差が
2点以上 初期状態(n=0 )
セット終了
NO
YES
図
3.3 シミュレーションの流れ13
(b)
𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏:=𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏 + 1と更新し,
𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏 ≥ 25かつ(𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑏 − 𝑝𝑜𝑖𝑛𝑡_𝑎)=2ならば終了する.そう でなければ,𝑖 ≔ 7としてステップ
2へ戻る.
(c)
𝑖 ≔ 𝑗としてステップ2へ戻る.
3.4 シミュレーション結果の分析
S
高校が行った
4試合について,それぞれシミュレーションを
100試合行った結果を分 析する.特に試合の分析に関しては,
S高校が今大会敗北した
I高校との試合について分析 をする.
3.4.1 実際の試合結果との比較
表に実際の試合結果と
100試合シミュレーションした結果を比較したものを示す.比較 対象は両チームのセット取得数,得点数,ラリー数とする.
ラリー数とは,チーム
Aとチーム
B間でボールのやりとりが行われた回数を集計したも のである.シミュレーション結果はそれぞれ平均値,分散,標準偏差で表している.表
3.3から表
3.6より,バレーボールマルコフモデルの整合性について考察する.実際の試合の平 均値とシミュレーション結果の平均値を比較する.得点数とラリー数はほぼ等しい値であ ることがわかる.得点数の差は最大で
1.235であり,ラリー数の差は最大で
15である.こ の程度の差であれば,バレーボールの試合において無視できる値であると判断した.しか し,セット数を比較すると,差が大きいのがわかる.これは両チームの得点数の差が小さ い試合で現れており,どちらのチームが勝ってもおかしくないような接戦の際にセット数 の差が大きくなる.
It高校や
I高校とのシミュレーションの結果をみてわかるように,実際 の試合結果との差がほとんどない試合もあったため,セット数は得点数の差により,左右 されると考え,シミュレーション結果の整合性を判断する際には影響はないと判断した.
以上より,バレーボールマルコフモデルが実際の試合にほぼ等しい結果を出力することが
可能だといえる.
14
表
3.3 It高校とのシミュレーション結果
実際の試合1set 2set 平均 シミュレーション(200セット)
SvsIt 平均値 分散(S-It) 標準偏差(S-It)
得点 25-16 25-13 25-14.5 24.97-15.735 0.65-18.87 0.80-4.34 ラリー 69-67 78-76 73.5-71.5 66.08-65.905 90.57-102.49 9.52-10.12 セット数 2-0 1.95-0.05 0.098-0.098 0.31-0.31
表
3.4 MK高校とのシミュレーション結果
実際の試合1set 2set 3set 平均 シミュレーション(200セット)
SvsMK 平均値 分散(S-MK) 標準偏差(S-MK)
得点 25-23 22-25 25-20 24-22.666 23.245-21.445 13.34-19.05 3.65-4.37 ラリー 103-105 88-88 97-96 96-96.333 80.925-82.145 117.06-121.59 10.82-11.03 セット数 2-1 1.23-0.775 0.95-0.94 0.973-0.971
表
3.5 KK高校とのシミュレーション結果
実際の試合1set 2set 平均 シミュレーション(200セット)
SvsKK 平均値 分散(S-KK) 標準偏差(S-KK)
得点 25-18 25-21 25-19.5 24.41-20.145 4.03-17.74 2.01-4.21 ラリー 74-72 78-85 76-78.5 70.38-72.045 73.14-89.70 8.55-9.47 セット数 2-0 1.61-0.39 0.63-0.63 0.79-0.79
表
3.6 I高校とのシミュレーション結果
実際の試合1set 2set 平均 シミュレーション(200セット)
SvsI 平均値 分散(S-I) 標準偏差(S-I)
得点 15-25 17-25 16-25 15.865-24.925 23.26-0.68 4.82-0.82 ラリー 76-77 71-72 73.5-74.5 68.245-69.355 106.17-90.68 10.3-9.52 セット数 0-2 0.095-1.91 0.176-0.171- 0.419-0.414
15
3.4.2 試合の分析および改善点の分析
今大会
S高校が行った
4試合の吸収確率をもとに試合の分析を行う.表について説明す る.左半分は
S高校のプレーを表しており,右半分は
It高校のプレーを表している.行は 各プレー,列は吸収状態を表している.列の
A{GET}がS高校の得点,A{LOST}が
S高校の失点,B{GET}が相手の得点,B{LOST}が相手の失点を意味している.
まず,It 高校との試合について分析する.表
3.7は
It高校の試合における吸収確率を示 した表である.S 高校の各プレーから
B{LOST}に吸収される確率は他の確率と比べて非常に高くなっている.特に,ATK からの吸収される確率が高い.すなわち,S 高校の攻撃を
It高校はつなぐことができず,失点していると考えられる.また,A{LOST}に吸収され る確率について着目する.
SRVと
BLOからの確率が高いことがわかる.つまり,この試合 では
S高校は
SRVのミスによる失点,BLO が成功せずに失点につながっていると推測で きる,SRV に関しては,2 点,3 点を争う試合になった場合,SRV のミスによる失点が勝 敗を分ける要因になると考えられる.また,BLO に関しては,相手がブロックアウトを狙 って攻撃している可能性も考えられるため,失点を防ぐことは難しい.しかし,It 高校と の試合における失点に注目すると,BLO からの失点は全体の
19%にも及んでいる.したがって,
S高校はブロックの技術の向上で失点を防ぐこと,得点につなげることがより成長し ていくと考えられる.
表
3.7 It高校の試合における吸収確率
S高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST} It高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST}
SRV 0.10989 0.325062 0.088245 0.476803 SRV 0.153846 0.169066 0.122534 0.554555 REC 0.185149 0.201801 0.107085 0.505965 REC 0.112426 0.177642 0.110871 0.59906 CHA 0.181548 0.199636 0.108788 0.510028 CHA 0.128577 0.202766 0.126426 0.542231 SET 0.186363 0.199352 0.107184 0.507101 SET 0.131829 0.211266 0.132802 0.524103 ATK 0.175062 0.202121 0.108673 0.514144 ATK 0.130671 0.211403 0.134357 0.523569 DIG 0.171797 0.228741 0.105987 0.493475 DIG 0.115571 0.168765 0.10092 0.614744 BLO 0.162872 0.342215 0.080517 0.414395 BLO 0.086025 0.125396 0.172196 0.616382
次に
MK高校との試合について分析する. 試合の結果やシミュレーションの結果からも
S高校と
MK高校の力量はほぼ等しいと考えられる.なにが勝敗を分けたのかについて分析 を行う.表
3.8は
MK高校との試合における吸収確率を示している.まず,各プレーから の得点でラリーが終了する確率を示している
A{GET},B{GET}を比較する.この試合ではA{GET}の確率がほとんどのプレーでB{GET}の数値を上回っている.つまり,S
高校が
MK高校よりも決定力があったことが推測できる.また,
S高校の
ATKから
B{LOST}への吸収16
される確率は
0.346516と高めである.つまり,
S高校の攻撃を
MK高校はさわることはで きたがスパイクレシーブを成功させることができず,失点につながったと考えられる.こ
れは
B{LOST}のDIGや
BLOからの数値が高いことからも
S高校の攻撃を
MK高校は防ぐ
ことができなかったと考えられる.
次に
S高校の失点について分析を行う.S 高校の
A{LOST}をみると,DIG,BLOの数値 が高い.つまり,スパイクレシーブを成功させることができなかったこと,相手の攻撃を ブロックできなかったことが考えられる.また,MK 高校の
B{LOST}をみるとS高校と同
様に
DIG,BLOの数値が高くなっている.以上のことから,MK 高校との試合は各チーム
の決定力が勝敗を分けたと考えられる.確実に
MK高校に勝つためには攻撃力では勝って いるため,
DIGと
BLOの精度の向上を中心としたディフェンスの強化が必要だと考えられ る.
表
3.8 MK高校との試合における吸収確率
S高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST} MK高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST}
SRV 0.147109 0.322729 0.173945 0.356218 SRV 0.182344 0.30594 0.168612 0.343104 REC 0.19999 0.335547 0.136542 0.32792 REC 0.155891 0.282295 0.184329 0.377484 CHA 0.209137 0.309383 0.140695 0.340785 CHA 0.161239 0.301187 0.194288 0.343286 SET 0.210154 0.306937 0.140941 0.341968 SET 0.161239 0.301187 0.194288 0.343286 ATK 0.213856 0.296731 0.142897 0.346516 ATK 0.163278 0.305712 0.198746 0.332264 DIG 0.177968 0.385635 0.132095 0.304303 DIG 0.150628 0.263695 0.152971 0.432706 BLO 0.246012 0.40383 0.099361 0.250797 BLO 0.11324 0.224477 0.222774 0.439509
次に
KK高校との試合についての分析を行う.まず,S 高校,KK 高校それぞれの
ATKから
A{GET},B{GET}へ吸収される確率に注目する.S高校よりも
KK高校の数値が高い
ことがわかる.これは
KK高校が攻撃の際に速攻を使った攻撃やコンビプレーを織り交ぜ てきたことで
S高校のブロックが翻弄され,選手がボールにふれることができず決められ てしまったと考えられる.しかし,KK 高校は各プレーから
B{LOST}へ吸収される確率は高くなっている.KK 高校の
ATKから
B{LOST}へ吸収される確率はB{GET}よりも高い.つまり,KK 高校は攻撃をした場合,ミスになり,失点する確率が高いといえる.他のプレ
ーからの
B{LOST}への確率も高いこと,A{GET}も飛びぬけて高い数値はないことからKK高校との試合は
KK高校がミスを重ねたことにより,点差が開いたと考えられる.
次に
S高校が失点した要因について考える.
KK高校の攻撃による失点以外の要因につい
て考えると,S 高校の
DIG,BLOから
A{LOST}へ吸収される確率が高いことがわかる.つまり,この試合は
It高校戦,MK 高校戦と同様にスパイクレシーブを成功させることがで
きないことによる失点とブロックを狙われての失点,単にブロックに失敗したことによる
失点が多かったと考えられる.
17
以上の分析から,KK 高校のミスの回数が減少した場合,S 高校との試合は
2,3点を争 うものになるだろうと考えられる.KK 高校は
S高校よりも決定力は高いため,S 高校は
DIGや
BLOの技術の向上以外に,攻撃を決めきる力の向上も必要になると考えられる.
表
3.9 KK高校との試合における吸収確率
S高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST} KK高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST}
SRV 0.103538 0.304721 0.184208 0.407534 SRV 0.148166 0.276717 0.099346 0.475771 REC 0.155965 0.291281 0.104574 0.44818 REC 0.094729 0.230961 0.209911 0.464399 CHA 0.178202 0.191442 0.118784 0.511573 CHA 0.138977 0.222153 0.17804 0.460831 SET 0.178202 0.191442 0.118784 0.511573 SET 0.099753 0.252863 0.237295 0.410088 ATK 0.178202 0.191442 0.118784 0.511573 ATK 0.099753 0.252863 0.237295 0.410088 DIG 0.134135 0.377997 0.097174 0.390693 DIG 0.087843 0.186454 0.162772 0.56293 BLO 0.140257 0.330296 0.113741 0.415707 BLO 0.049971 0.121114 0.132697 0.696218
次に今大会で敗北した
I高校との試合の分析を行う.表
3.10は
I高校との試合における吸 収確率である.
まず,A{GET}に着目する.S 高校,I 高校の各プレーからの確率はすべて低い数値にな っている.これは
S高校が攻撃に決め手を作ることができなかったと考えられる.
I高校の
ATK
から
B{GET}へ吸収される確率が高いことやS高校の
DIGから
A{LOST}へ吸収される確率が高いことから,
I高校の速攻やコンビプレーの多彩な攻撃に対応することができず,
失点してしまったと考えられる.また,I 高校の
SRVによる
A{LOST}へ吸収される確率が高いことから
I高校の強力なジャンプサーブや変化の多いフローターサーブにサーブレシ ーブを崩され,満足な攻撃ができなかったと考えられる.また,I 高校との試合においても
S
高校の
DIGや
BLOから
A{LOST}へ吸収される確率が高い.スパイクレシーブを成功させ,トスへつなげること,そして,ブロックからの失点を防ぐように技術の向上が求めら れる.さらに,
S高校のプレーから
A{GET}へ吸収される確率が非常に低いことも重要である.準々決勝の
KK高校戦のように勝ち進むにつれて,相手の攻撃が強力になってくると 考えられる.このことから
S高校は優勝を目指すために,攻撃を決めきる力も向上させて いく必要があると考えられる.
敗因は相手の攻撃的な試合展開についていけなかったことが原因と考えられる.そのた め,まずはスパイクレシーブ,ブロックのディフェンス面を強化し,次のプレーにつなぎ,
攻撃の機会を増やすことが必要だと考えられる.そして,オフェンス面では攻撃を決めき
る力の強化が望まれる.
18
表
3.10 I高校との試合における吸収確率
S高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST} I高校 A{GET} A{LOST} B{GET} B{LOST}
SRV 0.105013 0.443825 0.220099 0.231063 SRV 0.153767 0.435792 0.137484 0.272958 REC 0.163795 0.464213 0.14645 0.225542 REC 0.088051 0.380222 0.259403 0.272324 CHA 0.183458 0.421713 0.154005 0.240824 CHA 0.08813 0.381211 0.260444 0.270215 SET 0.183458 0.421713 0.154005 0.240824 SET 0.08813 0.381211 0.260444 0.270215 ATK 0.189102 0.403919 0.158744 0.248234 ATK 0.088058 0.386474 0.266102 0.259366 DIG 0.130615 0.535916 0.136133 0.197337 DIG 0.085999 0.348258 0.225622 0.340121 BLO 0.11357 0.529331 0.143389 0.21371 BLO 0.083205 0.339739 0.215677 0.361378
本項では,各試合における分析を行った.各試合を通じて
S高校は,ブロックとスパイ クレシーブから吸収される確率が高かった.そのため,ブロックやスパイクレシーブの技 術を向上させ,失点を減らし,次のプレーや得点へつなげる必要があると考えられる.ま た,準々決勝,準決勝では,相手チームよりアタックを決めきる力が劣っていたことがわ かった.このことから,コースを狙った攻撃やフェイントを交えた攻撃だけでなく,コン ビプレーや速攻を交えた攻撃を取り入れることでアタックを決めきる力を強化する必要が あると考えられる.
3.5 推移確率を変化させた場合のシミュレーション
3.4.3
項から
S高校が勝利するために必要な要素がわかったため,推移確率を変化させる
ことで,S 高校が
I高校に勝利することができるかシミュレーションを行う.
3.5.1 推移確率の設定
推移確率を変化させる設定を考える.
設定
1 S高校のスパイクレシーブから失点へ推移する確率を減少させ,トスへ推移する確 率を上昇させる.
設定
2ブロックから失点への推移を減少させ,得点への推移する確率を上昇させる.
各設定の詳細を述べる.設定
1では,状態
5から状態
15への推移する確率を 𝑝
5とし,
𝑝5を𝑝
5から
0.1𝑝5まで減少させ,減少させた分,状態
5から状態
3への推移を上昇させる.設 定
2では,状態
6から状態
15へ推移する確率を𝑝
6とし,𝑝
6を𝑝
6から
0.1𝑝6まで減少させ,
減少させた分,状態
6から状態
14への推移確率を上昇させる.
19
表
3.11 状態空間状態 チーム 攻撃パターン
0 A SRV
1 A REC
2 A CHA
3 A SET
4 A ATK
5 A DIG
6 A BLO
7 B SRV
8 B REC
9 B CHA
10 B SET
11 B ATK
12 B DIG
13 B BLO
14 A Ball Dead{GET}
15 A Ball Dead{LOST}
16 B Ball Dead{GET}
17 B Ball Dead{LOST}
3.5.2 シミュレーション結果
前項で示した各設定において
100試合シミュレーションを行った. 各設定の結果を図
3.4,図
3.5に示す.設定
1では,セット取得数が最大
23まで増加した.設定
2では,セット取
得数が
38まで増加した.このことから,I 高校に勝つためには,ブロック,スパイクレシ
ーブの強化が必要だとわかった.
20
図
3.4 DIG→A{LOST}の推移確率を変化させた場合のセット取得数図
3.5 BLO→LOSTの推移確率を変化させた場合のセット取得数
0 5 10 15 20 25
P 0.9P 0.8P 0.7P 0.6P 0.5P 0.4P 0.3P 0.2P 0.1P
セット取得数
DIG→A{LOST}の推移確率
セット取得数
セット取得数
0 5 10 15 20 25 30 35 40
P 0.9P 0.8P 0.7P 0.6P 0.5P 0.4P 0.3P 0.2P 0.1P
セット取得数
BLO→A{LOST}の推移確率
セット取得数
セット取得数