中央大学理工学部情報工学科
卒業研究論文
マルコフモデルを用いたフットサルの試合分析
学籍番号 01D8104023K 小池 光太郎
指導教員 田口 東 教授 2005 年 3 月
あらまし
本研究ではフットサルの試合のモデルを作成し,作成したモデルを用いて試合の分析を おこなう.
まず,フットサルの試合のデータから,定義した状態空間を用いてデータの集計をおこ なう.集計結果から推移確率行列を決定し,フットサルマルコフモデルを作成する.次に,
作成したモデルを用いて試合のシミュレーションをおこない,スコア,一時的状態から吸 収状態に推移するまでに要する平均ステップ数を実際の試合と比較し,マルコフモデルが 試合を再現できているかを検証する.検証後,作成したモデルを用いてシミュレーション をおこない,チームごとの試合運びにどのような傾向があるか,勝敗の分かれ目となる要 因を分析する.
キーワード: マルコフモデル,平均訪問回数,吸収確率,平均吸収時間
目次
第1章 はじめに... 1
第2章 マルコフモデル... 2
2.1 マルコフ連鎖と推移確率行列...2
2.2 高次の推移確率と時点 における状態確率n ...2
2.3 吸収的マルコフ連鎖...4
2.3.1 平均訪問回数...6
2.3.2 吸収確率...7
2.3.3 平均吸収時間...7
第3章 フットサルマルコフモデル... 8
3.1 フットサルの概要...8
3.2 データの集計方法及び状態空間の定義...9
3.3 集計結果に基づいた推移確率行列の決定...11
第4章 モデルの整合性と分析... 14
4.1 マルコフモデルを用いた試合のシミュレーションの概要...14
4.1.1 シミュレーションの設定...14
4.1.2 シミュレーションのアルゴリズム...16
4.1.3 シミュレーション結果と実際の試合結果との比較...17
4.2 シミュレーションの試合分析...18
4.2.1 FIRE FOX対府中Athletic F.C.の試合分析...18
4.2.2 FIRE FOX対SHARKSの試合分析...21
4.2.3 FIRE FOX対CASCAVEL TOKYOの試合分析...24
4.3 勝敗の要因分析...27
4.3.1 FIRE FOX対府中Athletic F.C.の勝敗要因分析...27
4.3.2 FIRE FOX対SHARKSの勝敗要因分析...29
4.3.3 FIRE FOX対CASCAVEL TOKYOの勝敗要因分析...30
4.3.4 勝敗要因分析のまとめ...32
第5章 おわりに... 33
5.1 まとめ...33
5.2 今後の課題...33
謝辞 ... 34
参考文献... 34
付録A 推移確率行列... 35
付録B 初期分布作成のための実測結果と初期分布... 39
付録C 平均訪問回数の100試合の平均と標準偏差... 43
第1章 はじめに
ここ数年で,日本国内でフットサルが急速に普及している.そして,昨年の11月には台 湾でフットサル世界選手権が開催され,日本代表も出場し,日本でのフットサルの人気が さらに高まってきている.フットサルを簡単に説明すると,5人制のサッカーである.しか し,ルールや戦術はサッカーと異なる部分が多い.例えば,フットサルは選手交代が何回 でも可能である.また,手でおこなうスローインがなく,足でおこなうキックインにより プレーを再開する.ピッチもサッカーに比べて小さく,攻守が目まぐるしく入れ替わるの で,試合展開もサッカーに比べると点が入りやすくてスピーディである.
日本のフットサルチームには,世界選手権で日本代表に最も多くの選手を送り出した
FIRE FOXというチームがある.FIRE FOXは,第10回全日本フットサル選手権の東京
都大会,関東大会を優勝し,さらに先日,日本のトップリーグとして認識されている関東 リーグも無敗(9勝2分)で制した強豪チームである.2月に開催される選手権の本大会でも 優勝候補の筆頭として期待されている.
フットサルもサッカーと同様に,チームの強さには何らかの理由がある.FIRE FOX も 例外ではなく,大会を優勝できたのには理由がある.しかし,それは直感的に言われてい ることであって,サッカーのようにチームの戦力を数値的に分析する,といった研究があ まりおこなわれていないのが現状である.
そこで,本研究は少しでもフットサルに興味を持ってもらうために,フットサルの試合 のモデルを作成し,作成したモデルを用いて試合の分析をおこなう.そして,FIRE FOX を中心に各チームの特徴,勝敗の要因を分析する.
第2章 マルコフモデル
2.1 マルコフ連鎖と推移確率行列
本研究ではマルコフ性をもった確率過程であるマルコフ過程を扱う.マルコフ連鎖には,
状態と推移という概念がある.
一般に,時点nにおける確率過程 がとりうる値を状態といい,状態のすべての集合を 状態空間という.
Xn
状態iから状態 へ移ることを推移という.推移は,「時点 で状態iにいたとき,つぎの 時点 に状態 に推移する確率は,時点
j n
+1
n j n−1以前にどの状態にいたかには無関係であ る」 という仮定に基づいている.この仮定をマルコフ性という.
離 散 時 点 の 確 率 過 程 を 考 え る . そ し て , 任 意 の と 状 態 空 間 に対して
) , 1 , 0
(n= L
Xn n≥1
} , , , ,
{i0 i1 i 1 j
S = L n−
}
| {
} ,
,
| {
1 1
1 1 0
0
−
−
−
−
=
=
=
=
=
=
n n n
n n n
i X j X P
i X i
X j X
P L (2.1)
が成り立つとき,確率過程 はマルコフ性をもつという.そしてマルコフ性をもった状 態空間が離散的な確率過程 をマルコフ連鎖という.また,式(2.1)の推移確率が時点 によらないとき,推移確率は定常であるといい,マルコフ連鎖は斉次的であるという.
} {Xn
}
{Xn n
斉次的マルコフ連鎖Xnの推移確率を
) ,
1 ( }
|
{X j X 1 i i j N
P
pij = n = n− = ≤ ≤ (2.2)
とおく.pijは確率であるから,確率の基本性質
∑=
=
≤
≤ N
j ij
ij p
p
1
1 ,
1
0 (2.3)
を満たしている.pij を行列の形に並べた
⎥⎥
⎥⎥
⎦
⎤
⎢⎢
⎢⎢
⎣
⎡
=
NN N
N
N N
p p
p
p p
p
p p
p P
L M M
M
L L
2 1
2 22
21
1 12
11
(2.4)
を(1 次の)推移確率行列とよぶ.この行列は式(2.3)の条件から行和 (各行について横に加え たもの)はすべて 1 である.このようにマルコフ連鎖は推移確率行列によって推移の構造 を表現することができる.
2.2 高次の推移確率と時点 における状態確率n
時点n(n=0,1,2,L)で状態 にいたとき,i mステップ(m=1,2,L)の推移の後,時点
m
n+ で状態 jにいる確率P{Xn+m = j Xn =i}を求める.
=1
m のときは,式(2.2)より
ij n
n j X i p
X
P{ +1 = | = }= (2.5)
である.m=2のときを考えると,2 ステップで状態iから状態jへ推移したのだから,ま ず1ステップ目で状態 からある状態 へ推移し,次のi k 2ステップ目で状態 から状態k jへ 推移したと考えられる.この確率はP{Xn+1 =k, Xn+2 = j Xn =i}で表される.これが1 ステップの推移確率の積 に等しいことが次のように証明される.この確率を確率の 乗法法則を用いて書きかえると,
kj ik p p
} ,
| {
}
| {
}
| ,
{
1 2
1
2 1
k X i X j X
P i X k X P
i X j X
k X P
n n
n n
n
n n
n
=
=
=
⋅
=
=
=
=
=
=
+ +
+
+
+ (2.6)
となる.式(2.1)のマルコフ性を用いると
}
| {
} ,
| {
1 2
1 2
k X j X P
k X i X j X
P
n n
n n
n
=
=
=
=
=
=
+ +
+
+ (2.7)
となる.したがって式(2.6)の確率は
kj ik n
n
n k X j X i p p
X
P{ +1 = , +2 = | = }= (2.8)
と書ける.これをすべての可能な について加えると,2ステップの推移確率が求められる.
すなわち
k
∑=
+ = = = N
k
kj ik n
n j X i p p
X P
1
2 , }
{ (2.9)
となる.この確率は1ステップの推移確率と同様 によらないので と書き,2次の推移 確率という. のときも,まず2ステップで状態iから状態 に推移し,次の3ステッ プ目で状態
n pij(2)
=3
m k
jへ推移すると考えれば,まったく同様にして
∑=
+ = = N
k
kj ik n
n X i p p
X P
1 ) 2 (
3 | }
{ (2.10)
となることがわかる.これも によらないので,この確率を3次の推移確率といい と書 く.一般の についても同様に 次の推移確率 が定義でき,
n pij(3)
m m pij(m)
∑=
= N − k
kj m ik m
ij p p
p
1 ) 1 ( )
( (2.11) で与えられる.
この関係式を行列で表わす.N×N行列P(m)のi行 j列の要素を とすると,式(2.11) はちょうど行列の積の形になっているので
) (m
pij
P P
P(m) = (m−1) (2.12)
となる.この式を繰り返し使うと
m
m P
P( ) = (2.13)
が与えられる.
次に,時点 における分布を考える.時点nで状態iにいる確率を と し, を行ベクトルの形に並べた
n qi(n)=P{Xn =i}
) (n qi
)) ( , ), ( ), ( ( )
(n = q1 n q2 n L qN n
π (2.14)
を時点 における(状態確率)分布という.とくに,n n=0のときの分布π(0)を初期分布とい う.
2.3 吸収的マルコフ連鎖
図2.1のような推移図をもったマルコフ連鎖を考える.この推移図には推移確率を記入し ていないが,矢印のあるところにはすべて正の推移確率があるものとする.
マルコフ連鎖が状態1から出発したとする.次の時点では状態2,4,6のいずれかの状 態に推移する.ところが一度状態2に推移すると,その後は状態2と3を行き来するだけ でこの二つの状態以外に推移することはない.
このように,このマルコフ連鎖では状態1,6,7の間を推移している間,いつか ,
, の三つの集合のいずれかに推移して,一度その集合に推移すると,
いつまでもその中でだけ推移していて集合の外へ決して出ない.これが一般的なマルコフ 連鎖の典型的なふるまいである.上の , , のような状態の集合のことを既約な集 合とよび,既約な集合Cはつぎの二つの条件で特徴づけられる.
} 3 , 2
1 ={ C }
5 , 4
2 ={
C C3 ={8,9}
C1 C2 C3
1) Cの中のどの二つの状態をとっても一方から他方へ何ステップかで推移することが できる.
2) Cのどの状態からもCの外の状態へ推移することはできない.
一般のマルコフ連鎖の状態空間 は,この二つの条件を満たすいくつかの既約な集合 と,それらに含まれない状態の集合
S Cv
T に分割できる.図 2.1 の例では であり,
となっている.
} 7 , 6 , 1
={ T
3 2
1 C C
C T
S = U U U
このように,一般のマルコフ連鎖の推移の様子は二つに分けて考えることができる.一 つはTの中で推移していずれかの に推移するまでであり,もう一つは への推移後であ る.例えば,図2.1のマルコフ連鎖でいずれかの に推移するまでの様子を調べる場合, ,
, をそれぞれ一つの状態にまとめた図2.2のような推移図をもったマルコフ連鎖を調 べればよい.図2.2のように既約な集合がすべて一つの状態からなっているとき,その状態 を吸収状態とよび,集合
Cv Cv
Cv C1
C2 C3
Aで表わす.Aに含まれない状態を一時的状態とよぶ.吸収状態,
一時的状態をもつマルコフ連鎖を吸収マルコフ連鎖とよぶ.
吸収的マルコフ連鎖の推移確率行列 の主対角線上に 1 があるとき,それに対応する状 態は吸収状態である.状態の番号を適当につけ変えて一時的状態に若い番号を与えると,P は
P
図2.1 一般的なマルコフ連鎖の例
3 2
1
5 4 7
6 9
8
1
6
7 C1
C2
C3
図2.2 既約な集合をまとめた吸収的マルコフ連鎖
(2.15)
⎥⎦
⎢ ⎤
⎣
= ⎡
I R Q A P T
0
と表わされる.ここで,N はすべての状態の数,rは一時的状態の数とする. を四つに 分けて考え,Qは
P r
r× 行列でTからT への推移を表わし,Rはr×(N−r)行列でTからA への推移を表わしている.0は(N−r)×rの零行列(すべての要素が 0 の行列)で,I は
の単位行列(対角要素は1,その他は 0の行列)である.式(2.15)を推移確 率行列の標準形という.
) ( )
(N−r × N−r
2.2節で述べたように 次の推移確率行列n P(n)はPnで与えられるが,式(2.15)の形をした に対しては
P
⎥⎦
⎢ ⎤
⎣
=⎡
I R
P Q n
n n
0 (2.16)
A T
となることが証明できる.ここで,Qnは行列Qの 乗,n Rnは R
Q Q
I
Rn =( + +L+ n−1) (2.17)
である.これらは直接計算して確かめることができる.
行列Qは非負行列で行和が1であるが,これは0<q<1の範囲をもつ実数 と似ている.
が のとき0に収束するのと同様, も
q
qn n→∞ Qn n→∞のとき零行列に収束する.また
) 1 /(
) 1 (
1+q+q2 +L+qn−1 = −qn −q に対応して
) (
) (
) )(
(
1
1 1
2
n n
n
Q I Q I
Q I Q I Q
Q Q I
−
−
=
−
−
= + + + +
−
−
L − (2.18)
が成り立つ.n→∞とすると
1
2 + =( − )−
+
+Q Q I Q
I L (2.19)
である.この(I−Q)−1を基本行列とよびM で表すことにする.式(2.17)と式(2.19)から,
のとき であるから
∞
→
n Rn →MR
) 0 (
0 ⎥ →∞
⎦
⎢ ⎤
⎣
→⎡ n
I
Pn MR (2.20)
となる.
2.3.1 平均訪問回数
平均訪問回数とは,状態iから出発したマルコフ連鎖がいずれかの吸収状態に吸収される までに状態 jを訪問する平均回数のことをいう.これは基本行列M の要素mijで表される.
吸収的マルコフ連鎖{Xn}の一時的状態i, jに対してつぎのような確率変数unを考える.
⎩⎨
=⎧ , 0
, 1
un Xn = jのとき
それ以外 その和は
+L + +
=u0 u1 u2
vj (2.21)
である.マルコフ連鎖Xnが吸収されるまでに一時状態jを訪問する回数ということになる.
したがって,連鎖が状態iから出発したという条件のもとで,式(2.21)の両辺の期待値をと ると
)
) (
(un pijn
E = であるから
+L +
+
=
=
= ( j| 0 ) ij(0) ij(1) ij(2)
ij E v X i p p p
m (2.22) となる.状態i, jはともにT の要素なので,式(2.16)から, は の要素である.した がって,式(2.22)の右辺を行列の形で書けば
) (n
pij Qn
1
2 + =( − )−
+
+Q Q I Q
I L
となり,基本行列Mに等しい.このようにMは平均訪問回数の行列となっている.
2.3.2 吸収確率
式(2.20)の極限に出てくる行列MRの要素はi∈T, j∈Aなる ステップ推移確率 の 極限であるから,マルコフ連鎖が状態
n pij(n)
jに推移すると,それ以後はずっとそこに留まってい る.したがって, pij(n)は,「マルコフ連鎖が状態 から出発し ステップまでに状態i n jに推 移する確率」 と解釈できる.その極限 は「状態iから出発したマルコフ連鎖がいつかは状 態
bij
jに推移する (すなわち吸収される) 確率」と考えられ,bijを吸収確率という.MRは 吸収確率の行列B=(bij)に等しい.
2.3.3 平均吸収時間
平均吸収時間とはいずれかの吸収状態に吸収されるまでの平均時間(平均ステップ数)の ことをいう.吸収されるまでにマルコフ連鎖が一時的状態の間で推移を続けるステップ数 は,式(2.21)のvjを状態 jについて加えたものになっている.したがって,状態iから出発 したという条件のもとでのその期待値 は ti
∑∈
=
T j
ij
i m
t (2.23)
となる.これをベクトルの形で書くために,期待値 を要素とする列ベクトルをτ,すべて の要素が1の列ベクトルをξとすれば
ti
ξ
τ =M (2.24)
となる.τは平均吸収時間の行列である.
第3章 フットサルマルコフモデル
本章では,研究の対象であるフットサルと,使用するデータについて述べた後,フット サルマルコフモデルを作成する.
3.1 フットサルの概要
フットサルについて簡単に説明する.フットサル (FUTSAL) は,1994 年に FIFA(国際 サッカー連盟)がそれまでは各地域で様々な形式で行われていた少人数によるサッカーをル ール統一したと同時に定義したスポーツである.
サッカーと大きく異なるのは,ピッチの大きさが,長さが38メートルから42メートル,
幅が18メートルから22メートル (国際試合規定) で20分ハーフを5人対5人でおこなう こ と , そ し て , 試 合 中 の 選 手 交 代 が 何 度 で も 可 能 な こ と で あ る (詳 細 な ル ー ル は http://futsal.jfa.or.jp/index.php (日本フットサル協会) を参照) .ポジションもサッカーと 異なり,頻繁にポジションをチェンジしていくが,基本的には図3.1のようなポジションが 軸となっている.ポジションの説明は以下の通りである.
z ピヴォ(pivo): 前線に位置し,ポストプレーや振り向きか らのシュートのテクニックなどを必要とす る.攻撃の起点である.
z アラ・エスケルド(ala esquerudo): 中盤やサイドを受け持ち,攻撃と守備を精力 的にこなすのでスピードとスタミナが要求 される.左サイドを主とする.
z アラ・ジレイト(ala direito): アラ・エスケルドと同様な役割であるが,右 サイドを主とする.
z ベッキ(beque): 後方に位置し,攻守においてゲームをコント ロールする.
z ゴレイロ(goleiro): サッカーのゴールキーパーと同様にゴールを 守る.
ただし,本研究ではアラは左右で区別せずにアラとよび,以後,一人目のアラ,二人目の アラとする.
ala esquerudo
beque
ala direito
pivo goreiro
攻撃方向
自陣 敵陣
図3.1 フットサルの基本ポジション
3.2 データの集計方法及び状態空間の定義
本研究で使用するデータは,第10回全日本フットサル選手権東京都大会の準々決勝1試 合,準決勝1試合,決勝の計 3試合であり,いずれもデジタルビデオカメラを用いて自分 で撮影した.チームはFIRE FOX (ファイルフォックス) というチームを中心に収集した.
その理由として,FIRE FOXに所属する木暮賢一郎(敬称略)と鉄壁の守備の2つが挙げられ る.木暮は,FIRE FOX と日本代表の不動のピヴォであり,かつ,エースである.そのた め,試合の特徴を掴みやすいと判断した.データの詳細は表3.1に示す.
次に,データの集計方法について述べる.各チームの各ポジションを選手としてボール が各ポジション間を行き来する回数をカウントする.例えば,A チームのピヴォからA チ ームのアラへボールが渡った場合にカウントする.また,A チームのアラから Bチームの ベッキへボールが渡った場合 (正確にはボールを奪われる) もカウントする,というように 考える.選手一人一人を対象としないのは,選手はピッチの内外の人数を合わせて最大で 十二人いるので最高12C5通りの組み合わせが存在し,集計が困難なためである.以後,「各 選手」は「各ポジションの選手」のことをいう.また,各選手がゴールを決める,各選手
表3.1 各試合の日時・対戦チーム・スコア
大会および試合名 日時 対戦チーム スコア
第10回全日本フットサル選手権東京都大会準々決勝 04.10.24 FIRE FOX対 府中Athletic F.C. 5-4 第10回全日本フットサル選手権東京都大会準決勝 04.10.30 FIRE FOX対SHARKS 2-0 第10回全日本フットサル選手権東京都大会決勝 04.10.30 FIRE FOX対CASCAVEL TOKYO 4-3
のシュートでボールがピッチの外へ出る,その他が原因でボールがピッチの外へ出る回数 もカウントした.以後,ボールがゴールに入る,またはピッチの外に出てプレーが途切れ ることをPlay offとよぶ.
ところで,試合にはゲームを組み立てていくためのつなぎのパスや,得点するためにリ スクを犯して敵に仕掛けていく勝負パスがある.この 2 つのパスはハーフウェーラインを 境にして,自陣と敵陣の 2 つに分けて考える.自陣ではつなぎのパスを多用し,敵陣では 勝負パスを多用すると仮定する.各選手の判断基準は自陣と敵陣で異なるものとする.よ って,各選手が自陣にいる場合と敵陣にいる場合の二つを考える.つまり,Aチームの自陣 にいるベッキからAチームの敵陣にいるピヴォへパスをする,ということが存在する.
データの集計をおこなうために,フットサルマルコフモデルの状態空間を定義する.状 態空間を表3.2に示す.状態1から20は,ボールをはじく,シュートブロック等の場合も
表3.2 フットサルマルコフモデルの状態空間
状態1 Aチームの自陣でピヴォがボールを保持 状態2 Aチームの自陣でアラ 1 がボールを保持 状態3 Aチームの自陣でアラ 2 がボールを保持 状態4 Aチームの自陣でベッキがボールを保持 状態5 Aチームの自陣でゴレイロがボールを保持 状態6 Aチームの敵陣でピヴォがボールを保持 状態7 Aチームの敵陣でアラ1がボールを保持 状態8 Aチームの敵陣でアラ2がボールを保持 状態9 Aチームの敵陣でベッキがボールを保持 状態10 Aチームの敵陣でゴレイロがボールを保持 状態11 Bチームの自陣でピヴォがボールを保持 状態12 Bチームの自陣でアラ1がボールを保持 状態13 Bチームの自陣でアラ2がボールを保持 状態14 Bチームの自陣でベッキがボールを保持 状態15 Bチームの自陣でゴレイロがボールを保持 状態16 Bチームの敵陣でピヴォがボールを保持 状態17 Bチームの敵陣でアラ1がボールを保持 状態18 Bチームの敵陣でアラ2がボールを保持 状態19 Bチームの敵陣でベッキがボールを保持 状態20 Bチームの敵陣でゴレイロがボールを保持 状態21 Aチームの得点
状態22 Bチームの得点 状態23 シュートでPlay off 状態24 その他でPlay off
該当する.つまり,ボールを保持している時間によらず,一瞬でもボールに触れたら保持 をしている,と考える.
3.3 集計結果に基づいた推移確率行列の決定
3.2節に基づいてデータの集計をおこなう.表3.2の各状態間を推移する回数をカウント する.また,表3.2のAチームとBチームに対応するチームを表3.3に示し,枠内の色は チームカラーを表わす.そして,各試合の集計結果を表3.4,表3.5,表3.6に示す.行の 番号は推移前の状態で,列の番号は推移先の状態を表わす.番号は表3.2の状態の番号に対 応する.行番号と列番号の枠内の色は,表3.3のチームカラーに対応していることを表わす.
それ以外は灰色で表わす.
表3.3 各試合のチーム割り当て
対戦カード Aチーム Bチーム FIRE FOX 対 府中Athletic F.C. FIRE FOX 府中Athletic F.C.
FIRE FOX 対SHARKS FIRE FOX SHARKS
FIRE FOX 対CASCAVEL TOKYO FIRE FOX CASCAVEL TOKYO
表3.4 FIRE FOX対 府中Athletic F.C.の集計結果
1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 1 0 6 3 2 0 8 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 1 0 2 0 0 0 0 4 2 4 0 15 10 2 8 13 3 0 0 0 0 0 2 2 0 2 3 0 0 0 1 0 6 3 4 12 0 13 3 11 2 7 3 0 0 0 0 2 1 2 0 2 0 0 0 0 1 8 4 4 15 15 0 13 6 4 1 9 0 0 0 4 2 0 1 1 1 2 0 0 0 0 16 5 4 6 3 11 0 15 0 3 0 1 1 0 1 1 0 0 0 1 0 0 0 0 0 14 6 0 0 1 1 0 0 8 4 1 0 7 10 5 10 8 0 0 0 0 0 4 0 6 15 7 0 1 2 2 1 6 0 10 16 0 2 3 6 10 0 0 0 0 0 0 1 0 1 10 8 0 1 1 5 1 6 12 0 15 0 2 2 2 6 3 0 0 0 0 0 0 0 3 6 9 0 2 2 0 2 9 9 12 0 0 5 4 1 4 4 0 0 0 0 0 0 0 5 7 10 0 0 0 0 0 0 0 1 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 11 1 0 1 0 1 0 3 0 1 0 0 6 8 9 1 3 3 1 3 0 0 0 0 15 12 0 4 1 1 1 2 1 1 1 0 3 0 7 26 1 4 10 2 5 0 0 0 0 7 13 1 1 2 1 0 0 2 4 1 0 4 11 0 24 2 0 2 7 3 0 0 0 0 11 14 0 1 3 2 1 3 1 1 4 0 5 17 20 0 2 18 8 7 15 0 0 0 0 26 15 0 0 4 2 0 1 0 2 0 0 3 9 9 10 0 5 0 2 1 0 0 0 0 12 16 2 2 4 4 1 1 0 0 0 0 3 1 0 3 0 0 9 4 6 0 0 1 5 10 17 0 2 3 9 2 0 0 0 0 0 2 1 1 5 0 4 0 8 7 0 0 1 1 6 18 0 1 4 4 5 0 0 0 0 0 0 2 2 6 0 4 4 0 4 0 0 0 1 10 19 2 6 0 11 6 0 0 0 0 0 0 1 2 1 0 9 6 7 0 0 0 1 4 2 20 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0