Title
真空実験を用いた布挙動シミュレーションの評価( 内容の要
旨(Summary) )
Author(s)
田川, 和義
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(工学) 甲第213号
Issue Date
2003-12-17
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/1934
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本籍) 学 位 の 種 類 学位授与番号 学位授与日付 専 攻 学位論文題目 田 川 和 義(岐阜県) 博 士(工学) 甲第 213 号 平成15 年12 月17 日 電子情報システム工学専攻 真空実験を用いた布挙動シミュレーションの評価 (Evaluation of Cloth Behavior Simulation U
Vaeuum) 学位論文審査委員 (主査) (副査) 授 授 教 教 助 洋-治′雄 \ 順 邦 文 瀬 田 方 河 岸 野 授 授 授 教 教 教
論文内容の要旨
アパレル業界では,海外製晶の輸入拡大による国内産業の競弓 合った衣服を求める消費者噂好の高まりにまり,衣服の生産工積 が望まれている.しかしながら衣服のプロトタイピングだけは三 最後のボトルネックとなっている.このようなことから,現実と レーションが必要とされている. 布のシミュレーション手法の研究は、これまでCGと繊維工当 ており,CG分野では,主にゲームや映画などのCGアニメーう た,多くの布シミュレーション手法の研究がなされてきた.こ才 法の詳細な部分にのみ注意が行きがちであり,多くが見た目で¢ ない.簡単な数理モデルが利用された初期の段階では,実物と¢ ため,主観的な評価による悉意的な改良であっても十分であった により,実物との差が小さくなるにつれて,主観的な評価ではよて特定の物性のみが布形状もしくは布挙動として表出するような評価実験を考案し,これ らの評価実験を,段階を踏みながら順に行わざるを得ない.本研究では,まず布の変形の 様子からシミュレーションに必要な一部の物性のみを直接評価できる,最も基礎的な評価 実験から出発し.次に変形の速度や布の張力状態が異なった状態,すなわち縦糸と横糸と の交差状態が異なる変形挙動での評価実験を行う,そして,挙動の複雑度を上げながら, 順に布シミュレーション各部の精度を評価・改良を行っていく.最終的には,カーテンや スカートなどのドレープの揺らぎといった定常的な布の挙動や,足でスカートを蹴り上げ た時などの,撃力により高速で複雑な変形を伴う非定常な布の挙動を生成可能な布シミュ レーションを実現することを最終目標とする. 本論文ではこのような大きな構想の中で,布挙動シミュレーションの段階的な評価方法 を組み立て,その途中までの段階ではあるが,複雑度が異なる2つの曲げ挙動の評価実験 を行った.第1は曲げ減衰振動であり,複雑度が低い曲げ挙動ではあるが,布の曲げに関
するパラメータを直接的に評価可能である.第2は布の端を瞬間的た捻る,巻き上げ挙動
である.曲げ減衰振動に比べると挙動の複雑度は高く,実物とシミュレーションを合わせ るのは難しいと考えられる・従来,布シミュレー.ションの評価手段として用いられてきた, 微小曲げ変形(片持ち梁)や微小曲げ振動(振動リード法)等は,布の一面的な部分のみ しか評価できない.これに対し,本論文で提案した段階的な評価方法は,布挙動シミュレ ーションを,一致度のレベルを高めつつ多面的な角度から評価可能であり,いわば一種の 「ものさし」であるといえる.本方法を用いた実験結果から,布挙動シミュレーションの精度を,従来よりも高い信頼性を持って確認することができた・また,本評価方法によっ
てはじめてはっきりとわかる相違点について考察した. また,複雑度が高い挙動の評価実験において,実物とシミュレーションとの間で相違が 生じた際に,どのようにして相違の原因と考えちれるパラメータを特定しパラメータの値 を合わせていけばよいのか,実物とシミュレーションの挙動を一致させるための方法につ いて議論した.またその具体的な一例を示すことにより,本手法の有効性を示した. 本論文で示した真空を用いた段階的な評価実験を進めていけば,将来的には衣服のプロ トタイピングの電子化が可能な布シミュレーションが実現でき,工業・産業的に大きな意 義があるものと考える.論文審査結果の要旨
本論文では,身の回りに現実に存在する多様な布挙動を再現可能な布シミュレーション
を実現することを目標とし,これに必要となる布挙動シミュレーションの評価方法につい て述べている.布自体のモデルを評価するために真空実験を導入し,実物とシミュレーシ ョンとの間での比較方法や,布モデルの評価および改良を行う方法について述べている.・▼また捷案手法を用いた評価実験の例を挙げることにより,提案手法の有効性を示している.
1)多様な布挙動の評価方法の提案 布の多様な挙動全体を評価するための段階的な評価実験を組み立てている. まず,布の各種変形時の応力状態を各基本要素に分類し,これらの要素のうち評価を行 うべき要素として,空気の影響を受けやすく評価を行うことが難しかった,曲げ変形のい くつかの要素を挙げている.
次にこれらの要素を評価するための評価方法として,段睦的に構成された評価実験を提
案している.実際の布挙動は,先に分類した各基本要素が複雑に組み合わさったものと考
えられるため,これに対するアプローチとして,挙動の複雑度を上げながら,順に布モデ ルの各要素について評価・改良を行う方法を提案している.従来,布シミュレーションの 評価手段として用いられてきた,微小曲げ変形(片持ち梁)や微小曲げ振動(振動リード 法),大たわみ運動等は,布の一面的な部分のみしか評価できなかった.これに対し,こ こで提案されている段階的な評価方法は,布挙動シミュレーションを,一致度のレベルを 高めつつ多面的な角度からの評価が可能である. 2)評価実験の結果と,パラメータの調節方法の提案 一提案手法による評価実験を行った例として,複雑度が異なる2つの曲げ挙動の評価の結 果を述べている.第1は曲げ減衰振動であり,複雑度が低い曲げ挙動ではあるが,布の曲 げに関するパラメータを直接的に評価可能である.この実験は,特定の物性のみが布形状 もしくは布挙動として表出するような,一部の物性のみを直接評価できる最も基礎的な評価実験である.第2は布の上端を瞬間的に曲げる巻き上げ挙動であり,布全体の挙動(形
状)は非常に複雑となる.また布を構成する縦糸と横糸との交差状態が特殊な状態になる ことも考えられ,布の曲げ粘性等の影響を確認することができる●.これらの提案手法を用 いた評価実験の結果から,布の静特性のみを利用した布挙動シミュレーションでも,十分 ではないが概ね実物を一致した結果を得ることができることを,従来よりも高い信頼性を 持って確認している.また,実物とキミュレーションとの間で相違が生じた際に,どのようにして相違の原因
と考えられるパラメータを特定しパラメータの値を合わせていけばよいのか,実物とシミ ュレーションの挙動を一致させるための方法を提案している.従来評価が行われてきた単 純な布挙動では,パラメータフィッティングを用いることで実物とシミュレーションとを 合わせるためのパラメータを解析的に求めることができたが,本研究で扱っているような 複雑な布挙動では,このような手法を用いることができない.このため,各パラメータを 変化させたときの布挙動の特徴から,パラメータを追い込む方法について述べている.こ の提案手法を用いてどうしても実物とシミュレーションとが合わなければ,布のモデル自 体が間違っていることが考えられ,モデル改良の手がかりとなる.提案手法を用いた具体 的な一例の結果を示すことにより,本論文で提案している布モデルの評価・改良手法全体 の有効性を示している.以上の内容から得られた成果は,布挙動シミュレーションの評価・改良について,多く の新しい知見と成果を示しており,工学的に学術上の価値が高い.よって本論文は博士(工 学)の学位論文として価値あるものと認める.