• 検索結果がありません。

発達心理学研究 2015, 第 26 巻, 第 1 号,70-77 山本晃輔 ( 大阪産業大学人間環境学部 ) 本研究では, 重要な自伝的記憶の想起がアイデンティティの達成度に影響するのかどうかについて検討した 実験では,231 名の参加者にアイデンティティ尺度 ( 下山,1992) を実施した後,

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "発達心理学研究 2015, 第 26 巻, 第 1 号,70-77 山本晃輔 ( 大阪産業大学人間環境学部 ) 本研究では, 重要な自伝的記憶の想起がアイデンティティの達成度に影響するのかどうかについて検討した 実験では,231 名の参加者にアイデンティティ尺度 ( 下山,1992) を実施した後,"

Copied!
8
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

重要な自伝的記憶の想起がアイデンティティの達成度に及ぼす影響 山本 晃輔

(大阪産業大学人間環境学部)

 本研究では,重要な自伝的記憶の想起がアイデンティティの達成度に影響するのかどうかについて検 討した。実験では,231名の参加者にアイデンティティ尺度(下山,1992)を実施した後,重要度の高 い(重要度高群),あるいは重要度の低い(重要度低群)自伝的記憶の想起をそれぞれに求め,その後 再度アイデンティティ尺度を実施した。実験の結果,自伝的記憶想起前には,重要度高低群間のアイデ ンティティ尺度得点に差がみられなかったが,想起後には重要度高群の方が低群と比べてアイデンティ ティ尺度得点が高くなった。また,重要度の高い自伝的記憶は,それが低い自伝的記憶と比較して鮮明 であり,感情喚起度が高くかつ快であり,想起頻度が多く,アイデンティティを形成する中心的な役割 を果たしている可能性が示唆された。考察では重要な自伝的記憶の想起がどのようにしてアイデンティ ティの形成を促進させるのかについて解釈が行われるとともに,今後の課題が議論された。

【キーワード】  アイデンティティ,自伝的記憶,自己

問   題

 自伝的記憶(autobiographical memory)とは,これ までの生涯を振り返って想起する個人的経験に関する記 憶を示す。自伝的記憶は自己の構成要素であり,その集 合体が個人のアイデンティティ(identity)を形成して いる(Cohen, 1996; Conway, Singer, & Tagini, 2004)。谷

(2004)によれば,Erikson(1959/1973)のいうアイデ ンティティとは「斉一性・連続性をもった主観的な自分 自身が,まわりからみられている社会的な自分と一致す るという感覚」である。我々人間は,青年期に入ると

「自分は何者であるのか」という問いを自分に課し,そ の答えを導きだそうとする。このような過程の中で,

我々は自伝的記憶を想起することによって過去の自分を 再認識する。そして,過去および現在における自分と社 会が認めかつ期待している自分とを統合することを通し て,アイデンティティを確立させていく。この意味にお いて,個人が自己の同一性や連続性を保つのに,自伝的 記憶は1つの本質的な役割を果たしているといえる(清 水,2011)。したがって,アイデンティティの達成とそ の基盤となる自伝的記憶との関係性を解明することは,

青年期における発達課題達成への心理的過程の一端を明 らかにするだけでなく,アイデンティティ達成への心理 的支援に関する基礎知見を提供することにつながる。

 従来のアイデンティティの達成と自伝的記憶に関する 研究では,それらが互いに影響し合う双方向の関係性が 主張されてきた(e.g., Conway, 2005; Conway & Pleydell- Pearce, 2000; Wilson & Ross, 2003)。この主張によれば,

アイデンティティの達成度 1)に応じて,それぞれに想起 される自伝的記憶の質や特性が変動し,逆に,自伝的記 憶が想起されることによってアイデンティティの達成度 が影響を受けることになる。このような主張を支持する 研究では,青年期や高齢期の参加者を自我同一性地位や 自我同一性達成度に基づいて群分けし,それぞれに想起 される自伝的記憶の特徴等が検討されてきた(e.g., 佐 藤,1998)。たとえば,植之原(1993)は,「生きていく 上で大切なこと」等に関する意見(命題)を参加者に尋 ねた上で,そのように考えるようになったきっかけとな る自伝的記憶の想起を求めた。その結果,自我同一性達 成群の方が非達成群(e.g., 拡散群)に比べて命題と自 伝的記憶との内容的な関連が強いことがわかった。その 他にもアイデンティティ達成度の個人差によって,想起 される自伝的記憶の特性や想起時間(e.g., Neimeyer &

Metzler, 1994; 山本,2013),語りの構造(野村,2002)

が異なることが報告された。

 これらの研究は,自伝的記憶とアイデンティティとの 双方向の関係性を示唆するものであるが,実際にはアイ デンティティの達成度が自伝的記憶の想起に影響を及ぼ すという一方向の関係性しか検討されていない。当然な がら,自伝的記憶を想起することによってアイデンティ ティの達成度が影響を受けるという逆方向の可能性も十 分に考えられる。たとえば,自伝的記憶の機能に関する

1 本稿で「アイデンティティの達成度」と記した場合,基本的には 尺度によって測定される個人のアイデンティティ達成の程度にお ける感覚を示す。

(2)

研究では,自伝的記憶を想起することによって個人が何 者であるかが定義されたり,自己の連続性や一貫性の感 覚が保証されたりする役割が指摘されている(e.g., Bluck, 2003; Bluck & Alea, 2009; 神 谷,2003,2007; 佐 藤,2008)。また,自伝的記憶の想起を通して,過去の 自分と現在の自分とを対比させたり,あるいは過去から 現在までの変わらぬ自己像を確認したりする思考過程の 重要性は,自伝的推論(autobiographical reasoning)と 呼ばれる研究領域でも盛んに検討され,注目を集めてい る(e.g., Herbermas & Bluck, 2000; 佐藤・清水,2012)。

これらに従えば,これまで直接的な検討は行われていな いものの,自伝的記憶の想起によって,アイデンティ ティの達成が促進される可能性は極めて高いと考えられ る。

 しかしながら,個人が保有している自伝的記憶は多種 多様であり,すべてがアイデンティティの達成に貢献す るとは考えにくい。当然ながら,想起された自伝的記憶 の特性によっては期待された効果が見出されない可能性 が十分に考えられる。従来の研究によれば,アイデン ティティの達成度と関連する自伝的記憶特性の1つとし て, その記憶が現在の自分にとってどの程度重要であ るか を示す記憶の重要度が挙げられる。たとえば,山 本(2013)はアイデンティティ達成度の個人差と自伝的 記憶特性との関係について検討した。その結果,アイデ ンティティの達成度の高い群が低い群よりも鮮明で感情 的であり,かつ重要な自伝的記憶が想起され,中でも群 間の差が最も大きかった特性が重要度であった。また,

Moffitt & Singer(1994)は,自伝的記憶の中でも「自 分はいったい何者であるのか」といった問いの答えにな るような,その人のアイデンティティと密接に結びつい ている自伝的記憶の想起を求め,その特徴を調べた。そ の結果,想起された記憶は全体的に重要度が高いことが 示された。さらに,榊(2005)によれば,重要度の高い 記憶は自伝的記憶の中でも現在の自分の自己概念を支え る記憶であるため,想起することで自己評価が高まり,

その結果として想起時の感情等の状態が変動される可能 性が示唆されている。

 そこで本研究では,重要な自伝的記憶の想起がアイデ ンティティの達成度に及ぼす影響を検討する。アイデン ティティ達成度の測定については様々な方法があるが

(谷,2014),本研究では先行研究(山本,2013)に倣 い,個人のアイデンティティ達成の程度における感覚を 測定するものとして,下山(1992)によるアイデンティ ティ尺度を採用する。この尺度を用いて,実験参加者の アイデンティティの達成度を測定した上で,群ごとに重 要度の高い自伝的記憶(重要度高群),あるいは重要度 の低い自伝的記憶(重要度低群)を想起させ,その後,

再度アイデンティティの達成度を測定する。もし重要な

自伝的記憶の想起がアイデンティティの達成を促進させ るのであれば,想起前には群間のアイデンティティ尺度 得点に差がみられないが,想起後には重要度高群が重要 度低群よりもアイデンティティ尺度得点が高くなること が予測される。この仮説を検証することが本研究の第1 の目的である。

 本研究では,自伝的記憶の重要度に焦点をあてるが,

個人にとって重要な意味をもつ自伝的記憶がどのような 特徴をもつのかを明らかにしておく必要があるだろう。

そこで先行研究(e.g., 山本,2013)に従い,感情喚起 度(出来事の感情を呼び起こす程度),快不快度(出来 事の快不快感情の程度),鮮明度(想起された出来事の 詳細さの程度),想起頻度(日常生活の中でその出来事 が想起される頻度),重要度の評定を採用し,想起され た自伝的記憶の特徴を探ることにする。これらはいずれ もアイデンティティの達成度とその関連性が先行研究

(e.g., 山本,2013)において示唆されているものであ

る。また,記憶の重要度を測定することは本実験におけ る重要度操作が適切に行われたかどうかを確認する意味 においても必要である。さらに,快不快度を測定するこ とで情動とアイデンティティとの関係性についての検討 が可能になる。現在,自伝的記憶研究では情動に焦点を あてた研究が盛んに行われている(e.g., Berntsen, Ru- bin, & Siegler, 2011; Schulkind & Woldorf, 2005; Talarico, Labar, & Rubin, 2004; Yamamoto & Toyota, 2013)。中で もアイデンティティと情動との関係性を検討したBern-

tsen et al.(2011)は,快感情をもつ自伝的記憶は自己

を肯定するものであるため,不快感情をもつ自伝的記憶 よりもアイデンティティを支える中心的な役割を担って いると考えている。もしそうであるとすれば,重要度高 群において快な自伝的記憶を想起した方が不快な自伝的 記憶を想起した場合よりもアイデンティティの達成がさ らに促進されることになる。このような点についても補 足的に検討を行う。

 加えて,近年では出来事中心性尺度(The Centrality of Event Scale:以下CES)がBerntsen & Rubin(2006, 2007)によって作成され,その有用性が支持されてい る。CESはある特定の自伝的記憶がどの程度ライフス トーリーやアイデンティティの中心成分として位置づけ られているかを測定する尺度であり,鮮明度等の評定項 目では測定することのできない自伝的記憶の側面を抽出 することができる。CESを使用することにより,本研 究で取り上げる重要な自伝的記憶がどの程度アイデン ティティの形成に影響しているのかを探ることが可能に なる。これらの指標による重要度高低群における違いを 検討することを通して,重要な自伝的記憶がいかなる特 性を有しているのかを理解することが本研究の第2の目 的である。

(3)

方   法

参加者

 大学生231名(男性87名・女性141名,不明3名),

平均年齢19.56歳(SD = 1.09)であった。座席の指定を

行っていない教室で,列ごとに重要度高群と低群を交互 に設定した。その結果,参加者は重要度高群106名,重 要度低群125名に振り分けられた。

調査用紙

 調査用紙はA4サイズで計4ページの冊子であった。

1ページ目の表紙には年齢と性別の記入欄を設けた。2 ページ目と4ページ目には下山(1992)によるアイデン ティティ尺度20項目(4件法)が印刷された。アイデ ンティティ尺度は,アイデンティティの基礎とアイデン ティティの確立の各10項目2因子から構成される。ア イデンティティの基礎に関する項目は,アイデンティ ティ形成の基礎となる自己の安定が得られず,不安や孤 独におそわれる気持ちを反映した内容を示す(e.g., 「私 の心は,とても傷つきやすく,もろい」)。一方,アイデ ンティティの確立に関する項目は自己の主体性や自己へ の信頼が形成されていることを示す(e.g., 「私は十分に 自分のことを信頼している」)。評定は「よく当てはまる

(4)」,「どちらかといえば当てはまる(3)」,「どちらか といえば当てはまらない(2)」,「全く当てはまらない

(1)」の4件法であった。なお,自伝的記憶の想起前後 に同じ尺度を実施するため,参加者が2回にわたり同じ 回答をする可能性を考慮し,想起前後で項目の提示順序 に変更を加えた。

 調査用紙3ページ目には自伝的記憶の想起を求める教 示と内容の記述欄,および想起の特性に関する項目が印 刷された。自伝的記憶の想起手がかりとして,多くの実 験参加者が関連する記憶を想起できることが先行研究

(榊,2005)により示されている,「学校」が採用され た。重要度高群では「学校という言葉で思い出す自分に とって重要な出来事を思い出して下さい」という教示文 が提示され,重要度低群では下線部を「あまり重要では ない」に変えた教示文が提示された。以下の内容はいず れの群でも同一であった。想起された内容についての自 由記述欄では,「どのような内容でしたか。その内容を 簡潔に述べて下さい。」と教示文が印刷された。ただし,

倫理的な配慮から,想起した内容を参加者が記述したく ない場合には空欄のままでよいことを記載した。続いて 想起された記憶の特性に関する評定値として,山本

(2013)に倣い,感情喚起度(その出来事を思い出して 全く感情が呼び起こされない(1)-強い感情が呼び起こ される(7)),快不快度(その出来事の感情は不快であ る(1)-快である(7)),想起頻度(その出来事はほとん ど思い出さない(1)-1ヶ月に1回程度思い出す(7)),

鮮明度(その出来事の記憶はぼんやりとしている(1)- はっきりとしている(7)),重要度(その出来事は自分 にとって全く重要ではない(1)-とても重要だ(7))の 5種類の評定が印刷された。さらに,CES日本語版(Ru- bin & Berntsen, 2008/2008)が13項目(7件法)印刷さ れた(e.g., 「その出来事は私のライフストーリーの一部 になっていない(1)-なったと感じる(7)」)。

手続き

 授業時間の一部を用いて,集団実験が行われた。自伝 的記憶の想起前後における想起者の状態を比較するとい う基本的な手続きは榊(2005)に倣った。まず,参加者 には負担のある場合にはいつでも実験から離脱できるこ とを説明し,参加の同意を確認した。最初にアイデン ティティ尺度を実施し,次いで,群ごとに重要度の高い 自伝的記憶あるいは重要度の低い自伝的記憶の想起を求 め,その内容について簡単に記述させた後,記憶特性に 関する評定を求めた。その後,再度アイデンティティ尺 度を記入させた。実験に要した時間は約15分であった。

実験後,研究目的に関するディブリーフィングを行っ た。

結   果

 自伝的記憶の想起内容欄における空欄は重要度高群で 17ケース(16.04%),重要度低群で16ケース(12.80%)

であった。いずれのケースも評定値はすべて記入されて いたことから,想起を失敗したケースではないものと判 断し,すべての参加者におけるデータを分析の対象とし た。自由記述の想起内容をもとに生起時期を分類する と,小学生以下13ケース(6.57%),中学生22ケース

(11.11%),高校生44ケース(22.22%),大学生2ケー

ス(1.01%),不明117ケース(59.09%)であった。重

要度の高い自伝的記憶として,「学園祭の実行委員をし て,やりとげた時にとても大きな達成感が得られたこ と。」や「父の仕事の都合で中学3年になる春に転校し たこと。」といった例がみられた。一方,重要度の低い 自伝的記憶としては,「朝会の時の校長先生の長い挨拶 を聞いている時」,「高校の部活動で雨の日にトレーニン グするふりをして,さぼりながら体育館でしているバス ケットを見ていた。」といった例がみられた。

自伝的記憶特性

 自伝的記憶の重要度高低群ごとに,各記憶特性に関す る評定値およびCESの合計得点の平均値を算出した

(Table 1)。重要度の高低群において,記憶特性が異な

るかどうかを検討するためにt検定を行った結果,重要 度の高い自伝的記憶を想起させた群の方が重要度の低い 自伝的記憶を想起させた群よりもすべての評定平均値お よびCES得点が有意に高くなることがわかった。この 結果から,本実験における自伝的記憶の重要度操作が適

(4)

切に行われていたこと,さらには重要度の高い自伝的記 憶はそれが低い自伝的記憶に比べて感情喚起度が高くか つ快であり,想起頻度が多く,鮮明であることが示され た。

 また,CESにおいても同様のパターンがみられたこ とから,重要度の高い自伝的記憶はそれが低い自伝的記 憶よりも,アイデンティティ形成の中心的成分として位 置づけられている可能性が示唆された。ただし,CES は本来ストレスフルな出来事を対象とした尺度であり,

Rubin & Berntsen(2008/2008)によれば不快な記憶で あったとしてもそれが人生の転機となったり,アイデン ティティの中心成分となる可能性が指摘されている。上 記の分析では快と不快な記憶が混在されているので,不 快な記憶が想起された場合のみを対象にCESと重要度 の相関分析を行うことにより,補足的にCESの信頼性 を検討した。具体的には,不快な記憶(快不快度評定1

から3)が想起された参加者を対象に(= 71),重要度

評定とCES合計点との相関係数を算出した。その結果,

= .61( p< .001)と中程度以上の相関係数が示され,重 要度が高くなるほどCES合計点が高くなることがわ かった。すなわち,不快な記憶であっても重要な自伝的 記憶はライフストーリーやアイデンティティと関連して いる可能性が示唆され,本研究で使用したCESに一定 程度の信頼性が確認された。

想起前後におけるアイデンティティ尺度の変化  自伝的記憶の想起前後および重要度高低群ごとに,各

参加者におけるアイデンティティ尺度の合計点を算出 し,その平均値を求めた。なお,アイデンティティの基 礎に関する因子の項目は逆転項目として処理した。重要 度の異なる自伝的記憶の想起前後において,アイデン ティティ尺度得点が変動するかどうかを検討するため に,自伝的記憶の想起前後(参加者内要因)および自伝 的記憶の重要度高低群(参加者間要因)を独立変数と し,アイデンティティ尺度の合計値を従属変数とする2 要因混合分散分析を行った(Table 2)。その結果,想起 前後要因の主効果および交互作用が有意であった。交互 作用の結果について下位検定を行うと,自伝的記憶想起 前には重要度高低群のアイデンティティ尺度得点に差が みられないが,自伝的記憶想起後には重要度高群が低群 よりもアイデンティティ尺度得点が有意に高くなること がわかった(F(1, 229) = 27.85,p< .001)。また,有意 傾向ではあるものの,重要度低群では自伝的記憶の想起 前後でアイデンティティ尺度得点に差がみられなかった が,重要度高群では自伝的記憶の想起前から想起後に か け て ア イ デ ン テ ィ テ ィ 尺 度 得 点 が 高 く な っ た

F(1, 458) = 3.74,p< .10)。すなわち,重要度の高い自 伝的記憶を想起することにより,アイデンティティの達 成が促進される可能性が示唆された。

快不快感情による影響

 快感情を伴った自伝的記憶の想起が不快感情を伴った 自伝的記憶の想起よりもアイデンティティの達成度に影 響するかどうかについて補足的な分析を行った。重要度

Table 1 群ごとの各記憶特性に関する評定平均値と分析結果

重要度

評定値 高群 低群 t値(229) 重要度(1低-7高) 5.59(2.03) 2.18(1.55) 14.15****

感情喚起度(1低-7高) 5.32(1.82) 2.77(1.66) 11.01****

快不快度(1不快-7快) 4.99(2.15) 3.86(1.73) 4.36****

想起頻度(1少-7多) 4.09(2.26) 2.15(1.82) 7.08****

鮮明度(1不鮮明-7鮮明) 5.44(2.05) 3.65(2.09) 6.55****

出来事中心性尺度 33.23(9.76) 12.61(7.28) 18.35****

注.( )内はSD。****p .001

Table 2 重要度高低群における想起前後のアイデンティティ尺度平均点の変化と分析結果

重要度高群 重要度低群 F値(1, 229)

想起前 想起後 想起前 想起後 重要度主効果 想起前後主効果 交互作用 51.08(7.36)53.15(8.09) 50.57(8.83)50.99(9.08) 1.52 20.19**** 8.82***

注.( )内はSD。***p< .005,****p< .001

(5)

高群のみを対象とし,快な出来事(快不快度評定5から

7)が想起された群(n = 76)と不快な出来事(快不快

度評定1から3)が想起された群(= 21)に分け,両 者の想起前後におけるアイデンティティ尺度得点を比較 するため,自伝的記憶の想起前後(参加者内要因)およ び自伝的記憶の快不快群(参加者間要因)を独立変数と し,アイデンティティ尺度の合計値を従属変数とする2 要因混合分散分析を行った(Table 3)。その結果,快不 快要因の主効果および交互作用が有意であった。交互作 用の結果について下位検定を行うと,自伝的記憶想起前 には快不快群のアイデンティティ尺度得点に差がみられ ないが,自伝的記憶想起後には快群が不快群よりもアイ デンティティ尺度得点が有意に高くなることがわかった

F(1, 190) = 8.11,p< .005)。また,不快群では自伝的 記憶の想起前後でアイデンティティ尺度得点に差がみら れなかったが,快群では自伝的記憶の想起前から想起後 にかけてアイデンティティ尺度得点が高くなった

F(1, 95) = 12.24,p< .001)。すなわち,Berntsen et al.

(2011)の指摘通り,快感情を伴った自伝的記憶の想起 がアイデンティティ達成の促進に影響を及ぼす可能性が 示唆された。

考   察

 本研究では,重要な自伝的記憶の想起がアイデンティ ティの達成度に及ぼす影響について検討した。実験で は,重要度の高い,あるいは低い自伝的記憶の想起を参 加者に求め,その前後におけるアイデンティティ尺度得 点の変動に注目した。その結果,自伝的記憶の想起前に は重要度の高低群間にアイデンティティ尺度得点の違い はみられなかったが,想起後,重要度の高い自伝的記憶 を想起させた群の方が,重要度の低い自伝的記憶を想起 させた群よりもアイデンティティ尺度得点が増加すると いう新たな知見が得られた。また,重要度の高い自伝的 記憶はそれが低い記憶と比べて,鮮明でかつ感情喚起度 が高く,快であり,想起頻度が多く,想起者のアイデン ティティ形成における中心的な役割を果たしていること が明らかになった。以下では,なぜ重要な自伝的記憶の 想起がアイデンティティの達成度に影響を及ぼしたのか について考察していくことにする。

 従来の研究では,自己と記憶とが相互に関連すること

が 重 視 さ れ たConway(2005),Conway & Pleydell- Pearce(2000)による自己-記憶システム(Self-Memory System) に 基 づ い た 解 釈 が 行 わ れ て き た。Conway

(2005)によれば,自己の過去に関する様々な情報は抽 象度の異なる階層構造を形成し,貯蔵されている。階層 は大別して自伝的知識(autobiographical knowledge) とエピソード記憶(episodic memory)からなる。この うち自伝的知識はさらに細分化されており,抽象度の高 い上位から順に,ライフストーリー(life story:個人に 関する事実,評価,自己イメージ),テーマ(theme: 仕事や対人関係等に関する主題),人生の時期(lifetime period:大学時代など時系列に基づいた情報),一般的 な出来事(general events:特定の時間,場所の出来事 や何度か繰り返し,経験した出来事の知識)である。そ して,自伝的知識のさらに下層に,最も具体的で詳細な 情報として,出来事を通して経験した感覚知覚情報や感 情情報などのエピソード記憶が貯蔵されている。

 自伝的記憶が想起される際には,手がかりに基づいて 上位の階層から下位の階層に向けて,情報の探査と照合 が循環的に繰り返される。それによって,次第に自伝的 記憶構造内の情報が活性化され,ここで活性化された情 報それ自体が自伝的記憶となり,想起に至る。その際に は,現在の自分の目標と概念的自己(conceptual self) から構成される作動自己(working self)によって,自 己イメージと一致した自伝的記憶内における情報の活性 化が制御,調整される。言い換えれば,想起手がかりに よって活性化され得る情報があったとしても,それが自 己イメージと矛盾する場合には最終的に想起される記憶 には含まれない。このように,自伝的記憶の想起には自 己イメージが極めて重要な役割を果たすのである。

 Conway(2005)の理論に基づき,たとえば山本(2013)

は自己の状態の1つとしてアイデンティティ達成度を操 作し,その高群が低群と比較して鮮明で情動的な自伝的 記憶が想起された実験結果を以下のように解釈した。ア イデンティティの達成度が高い場合には,自己イメージ が具体的でかつ明確であるため,それと一致する自伝的 記憶内の情報の活性化が促進される。それに対して,ア イデンティティの達成度が低い場合には,具体的な自己 イメージが定まっていないため,自伝的記憶内における 情報の活性化が抑制される。それゆえに,アイデンティ

Table 3 快不快群における想起前後のアイデンティティ尺度平均点の変化と分析結果

快群 不快群 F値(1, 95)

想起前 想起後 想起前 想起後 快不快主効果 想起前後主効果 交互作用 51.76(7.33)54.51(7.42) 49.62(7.90)49.05(9.61) 4.29 3.83 8.93***

注.( )内はSD。p< .05,***p< .005

(6)

ティの達成度高群が低群よりも鮮明で情動的であるなど の詳細な自伝的記憶が想起されると解釈された。

 ここまでの議論に基づくと,本研究結果は以下のよう に解釈される。既述のように,本研究結果では重要度高 群が低群と比較して,アイデンティティの形成において 中心的な役割を担う自伝的記憶が鮮明でかつ情動的に想 起された。Conway(2005)によれば,自伝的記憶構造 内のエピソード記憶に該当する感覚知覚や情動に関する 詳細な情報は,活性化されることにより想起者にあたか もその出来事を再体験しているかのような感覚を生じさ せる。つまり,重要度高群では自伝的記憶内の詳細な情 報が豊富に活性化されたため,「あの時の自分は○○で あった」のような具体的でかつ明確な当時の自己イメー ジが形成されたと考えられる。ここで活性化された過去 の自己イメージと現在の自己イメージとを比較,照合す ることを通して,想起者は自己の連続性をより詳細に再 認識することができるだろう。その結果,重要度高群で はアイデンティティ尺度得点が増加したと考えられる。

一方,重要度低群では,アイデンティティの形成に影響 する程度の低い記憶が想起され,かつその記憶について の情報が乏しいため,過去の自己イメージがそれほど明 確には認識されないだろう。その結果,重要度低群では 自伝的記憶の想起がアイデンティティ尺度得点に寄与す る程度が低くなる。これらの過程の違いが,本研究にお ける自伝的記憶の重要度高低群の差を生じさせたと解釈 される。

 本研究では自伝的記憶の想起がアイデンティティの達 成度に及ぼす影響を実証的に示すことを通して,これま で十分に検討されてこなかった自伝的記憶とアイデン ティティとの新たな関係性を明らかにしたといえる。し かしながら,本研究にはいくつかの限界も考えられる。

以下では,それらにふれながら今後の課題について議論 したい。

 第1に,本研究では重要な自伝的記憶の想起がアイデ ンティティ達成度に影響を及ぼす可能性を示したが,統 計的に有意な差は示されているものの,想起前から想起 後にかけてアイデンティティ尺度得点が劇的に変化して いるとはいえない。この点については留意しておく必要 があるだろう。そもそもアイデンティティの達成度は,

短期間で劇的に変化するとは考えにくく,長期的なスパ ンを視野に入れた持続的な発達の変化を捉える必要があ る。たとえば山本(2013)は,無意図的に想起される自 伝的記憶を1ヶ月間にわたり日誌法によって収集し,ア イデンティティ達成度の個人差との関連を検討したとこ ろ,アイデンティティの達成度が高い参加者はそれが低 い参加者と比べて,重要な自伝的記憶を頻繁に想起して いることが示された。1ヶ月間ではあるものの,重要な 自伝的記憶の想起が積み重なることによって,アイデン

ティティの達成度に影響を及ぼした可能性が考えられ る。補足的な分析として,重要度高群の参加者を対象に 自伝的記憶の想起頻度が多い群(評定5から7)と少な い群(評定1から3)に分け,想起前における両者のア イデンティティ尺度得点を比較した。その結果,それぞ れのアイデンティティ尺度得点は,想起頻度が多い群

n = 15)では54.07(SD = 8.56)であり,想起頻度が少 ない群(n = 88)では49.52(SD = 9.09)であった。t検 定を行った結果,有意傾向ではあるものの,想起頻度が 多い群の方が少ない群と比較してアイデンティティ尺度 得点が高かった((t 101) = 1.78,p< .10)。すなわち,日 常的に重要な自伝的記憶を頻繁に想起している参加者は その記憶をアイデンティティの形成に役立てている可能 性が示唆された。今後の課題として,たとえば本実験の 試行後1週間ごとに再度アイデンティティ尺度を実施 し,その尺度得点が長期的にどのように変化するのかに ついて検討する必要があるだろう。このような検討に よってアイデンティティの達成度が時系列と比例し,緩 やかに促進されることが示されれば,さらに応用可能性 が拡がる。

 第2に,補足的な検討ではあるが,本研究では重要度 に加えて快感情を伴った自伝的記憶の想起がアイデン ティティの達成を促進させる可能性が示唆された。重要 でかつ快な自伝的記憶の想起内容をみると,「とても大 変な受験勉強の結果,現在の大学に入学できたこと」と いった事例がいくつかみられ,単純に快感情を伴った出 来事というよりは努力した行為の結果,自分が思ったと おりの結果が得られた経験,すなわち随伴経験(牧・関 口・山田・根建,2003)との関連が考えられる。豊田

(2010)によれば,これまでの人生において随伴経験の 頻度が多いほど,自己を支える自尊感情が高くなるとい う知見がすでに報告されている。本研究では,情動を直 接的な実験操作として行っていないが,今後はこのよう な視点を取り入れ,情動を組み込んだ研究のさらなる展 開が期待される。

 第3に,第2の点とも関連するが,本研究では重要な 自伝的記憶の想起を求めた場合に,快ではなく不快感情 を伴った自伝的記憶が想起されるケースがいくつか確認 された(e.g., 「高校の体育祭でリレーのアンカーをした 時に,バトンパスを失敗し,チームが負けてしまったこ と」)。本研究での記憶の快不快感情に注目した分析結果 からは,不快な出来事を想起した場合にはその前後でア イデンティティ尺度得点の変動がみられないことが示唆 されているが,CESの分析結果や先行研究(Rubin &

Berntsen, 2008/2008)では,不快な記憶であってもア

イデンティティの達成に影響を及ぼす可能性が示唆され ている。これに関しては,想起の時点で想起者がその出 来事をどのように捉えるかといった視点が重要である。

(7)

経験した当時は不快な出来事であったとしても,想起の 時点で「あの出来事があったからこそ今の自分がある」

というように前向きな捉え直しができたなら,アイデン ティティ達成の促進が期待されるだろう。このような検 討は,自伝的記憶の想起による感情制御の研究(e.g., 榊,2005)や自伝的記憶の語り直し研究(e.g., 池田・

仁平,2009)とも関連する領域であり,今後さらなる検 討が必要である。

 最後に,本研究の応用展開について言及する。近年,

青年期の発達課題である職業選択や社会参加,自立など に関連したフリーターやニートといった社会的な問題に 多くの注目が集まっている。このような問題は単純に労 働の問題だけでなく,青年期の自己の問題であるという 見方がある(下村,2011)。無業で何もしていないニー トは,それ以外の若者と比べて自尊感情が低いことが示 されており,このような対策として,キャリアガイダン スなどを通して自己を見つめ直し,自己評価を高めるこ とが就労支援につながると考えられている(下村,

2012)。本研究で示された知見は,想起者に自伝的記憶 の想起を通して自己を捉え直す機会を提供しているとも いえる。高齢者においては,人生における自我の統合を 目指したライフレビュー法(Butler, 1963)などで回想 の重要性がかねてから示唆されてきたが,過去を顧みる ことの重要性は高齢者だけに限ったものではないだろ う。すでに,青年期を対象とした回想法の試みが行われ ているが(e.g., 野村・橋本,2006),今後はこのような 応用可能性を視野に入れた研究を行う必要がある。

文   献

Berntsen, D., & Rubin, D.C. (2006). The centrality of event scale: A measure of integrating a trauma into oneʼs identity and its relation to post-traumatic stress disorder symptoms. Behaviour Research and Therapy, 44, 219-231.

Berntsen, D., & Rubin, D.C. (2007). When a trauma becomes a key to identity: Enhanced integration of trauma memories predicts posttraumatic stress disor- der symptoms. Applied Cognitive Psychology, 21, 417- 431.

Berntsen, D., Rubin, D.C., & Siegler, I.C. (2011). Two versions of life: Emotionally negative and positive life events have different roles in the organization of life story and identity. Emotion, 11, 1190-1202.

Bluck, S. (2003). Autobiographical memory: Exploring its functions in everyday life. Memory, 11, 113-123.

Bluck, S., & Alea, N. (2009). Thinking and talking about the past: Why remember? Applied Cognitive Psychology, 23, 1089-1104.

Butler, R.N. (1963). The life review: An interpretation of reminiscence in the aged. Psychiatry, 26, 65-75.

Cohen, G. (1996). Memory in the real world (2nd ed.). UK: Psychology Press.

Conway, M.A. (2005). Memory and the self. Journal of Memory and Language, 53, 594-628.

Conway, M.A., & Pleydell-Pearce, C.W. (2000). The con- struction of autobiographical memories in the self- memory system. Psychological Review, 107, 261-288.

Conway, M.A., Singer, J.A., & Tagini, A. (2004). The self and autobiographical memory: Correspondence and coherence. Social Cognition, 22, 491-529.

Erikson, E.H. (1973). 自我同一性:アイデンティティと ライフサイクル(小此木啓吾,訳編).東京:誠信書 房.(Erikson, E.H. (1959). Identity and the life cycle.

Selected papers. Psychological Issues, Vol.1. New York:

International Universities Press.)

Herbermas, T., & Bluck, S. (2000). Getting a life: The emergence of life story in adolescence. Psychological Bulletin, 126, 748-769.

池田和浩・仁平義明.(2009).ネガティブな体験の肯定 的な語り直しによる自伝的記憶の変容.心理学研究, 79, 481-489.

神谷俊次.(2003).不随意記憶の機能に関する考察:想 起状況の分析を通じて.心理学研究,74, 444-451.

神谷俊次.(2007).不随意記憶の自己確認機能に関する 研究.心理学研究,78, 260-268.

牧 郁子・関口由香・山田幸恵・根建金男.(2003).主 観的随伴経験が中学生の無気力感に及ぼす影響.教育 心理学研究,51, 298-307.

Moffitt, K.H., & Singer, J.A. (1994). Continuity in the life story: Self-defining memories, affect, and approach/

avoidance personal strivings. Journal of Personality, 62, 21-43.

Neimeyer, G.J., & Metzler, A.E. (1994). Personal identity and autobiographical recall. In U. Neisser & R. Fivush

(Eds.), The remembering self (pp.105-135). Cambridge:

Cambridge University Press.

野村晴夫.(2002).高齢者の自己語りと自我同一性との 関連.教育心理学研究,50, 355-366.

野村信威・橋本 宰.(2006).青年期における回想と自 我同一性および心理的適応の関連.パーソナリティ研 究,15, 20-32.

Rubin, D.C., & Berntsen, D. (2008). ストレスフルな出来 事の記憶:アイデンティティへの影響(仲真紀子,

訳).自己心理学:

4

 認知心理学へのアプローチ

(pp.105-117).東京:金子書房.(Rubin, D.C., & Ber- ntsen, D. (2008). How memory for stressful events

(8)

affects identity. 仲真紀子(編),自己心理学:

4

 認知 心理学へのアプローチ(pp.118-129).東京:金子書

房.)

榊美智子.(2005).感情制御を促進する自伝的記憶の性 質.心理学研究,76, 169-174.

佐藤浩一.(1998).「自伝的記憶」研究に求められる視 点.群馬大学教育学部紀要(人文・社会科学編),47, 599-628.

佐藤浩一.(2008).自伝的記憶の構造と機能.東京:風 間書房.

佐藤浩一・清水寛之.(2012).中学校時代の教師に関す る自伝的記憶:日常的な出来事に対する自伝的推論の 検討.認知心理学研究,10, 13-27.

Schulkind, M.D., & Woldorf, G.M. (2005). Emotion orga- nization of autobiographical memory. Memory & Cogni- tion, 33, 1025-1035.

清水寛之.(2011).自伝的記憶の発達.子安増生・白井 利明(編),発達科学ハンドブック:

3

 時間と人間

(pp.274-292).東京:新曜社.

下村英雄.(2011).フリーター・ニートの自己.榎本博 明(編),自己心理学の最先端:自己の構造と機能を 科学する(pp.255-265).京都:あいり出版.

下村英雄.(2012).若者の自尊感情と若年キャリアガイ ダンスの今後のあり方.ビジネス・レーバー・トレン ド,5, 2-9.

下山晴彦.(1992).大学生のモラトリアムの下位分類の 研究.教育心理学研究,40, 121-129.

Talarico, J.M., Labar, K., & Rubin, D.C. (2004). Emotion intensity predicts autobiographical memory experience.

Memory & Cognition, 32, 1118-1132.

谷 冬彦.(2004).アイデンティティの定義と思想.谷 

冬彦・宮下一博(編),さまよえる青少年の心:アイ デンティティの病理:発達臨床心理学的考察(p.3).

京都:北大路書房.

谷 冬彦.(2014).第2章 アイデンティティ研究の方 法(1)尺度による研究.鑪幹八郎(監修),アイデン ティティ研究ハンドブック(pp.11-25).京都:ナカニ シヤ出版.

豊田弘司.(2010).大学生における自我構造,自尊感情 及び随伴経験の関係.奈良教育大学教育実践総合セン ター研究紀要,19, 1-5.

植之原薫.(1993).同一性地位達成過程における『事象 の記憶』の働き.発達心理学研究,4, 154-161.

Wilson, A., & Ross, M. (2003). The identity function of autobiographical memory: Time is on our side. Mem- ory, 11, 137-149.

山本晃輔.(2013).アイデンティティ確立の個人差が意 図的および無意図的に想起された自伝的記憶に及ぼす 影響.発達心理学研究,24, 202-210.

Yamamoto, K., & Toyota, H. (2013). Autobiographical remembering and individual differences in emotional intelligence. Perceptual & Motor Skills, 116, 724-735.

付記

 本論文のデータの一部は日本発達心理学会第25回大 会ラウンドテーブル「記憶と学びの生涯発達から見る発 達研究」において話題提供として発表されたものです。

その際に,指定討論者として貴重なご意見を賜りました 豊田弘司先生(奈良教育大学),清水寛之先生(神戸学 院大学)に心より感謝致します。また,審査において大 変丁寧なコメントを賜りました査読者の先生方に深く御 礼申し上げます。

Yamamoto, Kohsuke (Faculty of Human Environment, Osaka Sangyo University). The Importance of Autobiographical Memory for Self/Identity Achievement. THE JAPANESE JOURNALOF DEVELOPMENTAL PSYCHOLOGY 2015, Vol.26, No.1, 70-77.

This study examined how autobiographical remembering affects the achievement of self and identity. Participants (N = 231) completed an identity scale (Shimoyama, 1992) that assessed their level of self/identity development. They were next asked to recall an autobiographical memory of high- or low-level importance and to rate these memories based on 5 items pertaining to memory characteristics (e.g., vividness) and 13 items from the Centrality of Event Scale (Berntsen

& Rubin, 2006, 2007). The identity scale was then completed again. The group that recalled an autobiographical episode with high-level importance had higher post-test identity scale scores than the group that recalled an episode with low- level importance. However, differences in the identity scale scores between the two groups were not observed in the pre- test. In addition, autobiographical memories of high-level importance were more emotional, positive, vivid, frequently remembered, and related to self/identity achievement than were memories of low-level importance. The importance of autobiographical memory as a facilitator of self and identity achievement will be further examined in future research.

【Keywords】 Identity achievement, Autobiographical memory, Self

2014.3.28受稿,2014.12.19受理

参照

関連したドキュメント

8月9日, 10日にオープンキャンパスを開催 し, 本学類の企画に千名近い高校生が参 加しました。在学生が大学生活や学類で

を軌道にのせることができた。最後の2年間 では,本学が他大学に比して遅々としていた

専攻の枠を越えて自由な教育と研究を行える よう,教官は自然科学研究科棟に居住して学

地域の中小企業のニーズに適合した研究が行われていな い,などであった。これに対し学内パネラーから, 「地元

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

「心理学基礎研究の地域貢献を考える」が開かれた。フォー

 本実験の前に,林間学校などで行った飯 はん 盒 ごう 炊 すい

Next, cluster analysis revealed 5 clusters: adolescents declining to have a steady romantic relationship; adolescents having no reason not to desire a steady romantic