吉田三千雄先生は、1987年 4 月 桜美林大学経済学部助教授として着任され、日本経済論、産 業構造論を主に担当されてきました。その後1991年 4 月 同教授に昇格されております。次いで 1994年 4 月 本学大学院教授に就任され、大学院国際学研究科で日本経済論・演習を担当されま した。そして2017年 3 月末をもって桜美林学園を定年退職されることになりました。これまで の先生のご貢献に対して感謝の意を表したいと存じます。
吉田先生のご専門は産業経済論で、とくに工作機械工業の分析では、第一人者と言っても過 言ではないと思います。御著書の『戦後日本工作機械工業の構造分析』(未来社、1986年)は、
戦後急成長した日本の工作機械工業を新たな生産力段階に到達したと規定し、その後の1970年 代の「合理化・輸出拡張期」から83年不況に至る過程を丹念に分析したものです。吉田先生の 工作機械分析の特徴は、単に歴史的過程を叙述するのではなく、日本工作機械工業の構造と特 質を分析するという、緻密な構造分析に基づいて展開されているということです。構造分析に 基づいて、日本工作機械工業の強大さの陰にある脆弱性を析出し、その矛盾の顕在化として83 年不況への展開をとらえています。
また吉田先生は工作機械工業以外にも、鉄鋼業など重化学工業の研究も進め、その成果は
『戦後日本重化学工業の構造分析』(大月書店、2011年)に結実しています。本書は戦後日本の 高度成長を主導した重化学工業の構築期から2000年代の過程を特質と構造の観点から分析した 好著です。本書は、鉄鋼業、工作機械工業、産業用ロボット工業、自動車産業、半導体産業と いう広範な個別産業をとりあげ、その発展構造と帰結を分析するとともに、今後の日本経済の 再生産=循環のなかで、重化学工業の果たし得る役割を検討したものです。個別産業の現状分 析は、民間のシンクタンクや民間のエコノミストでも行われていますが、一人で広範な産業の 展開過程とそこにはらまれている矛盾を分析する能力を持つ研究者は少なく、その意味でも本 書は貴重です。
吉田先生は、本学の産業研究所の研究会や共同研究、及び他大学との共同研究に熱心に参加 され、身近な後輩研究者たちに対して研究成果の発表を強く求めておられておりました。周囲 に学問的刺激を与え続ける学者魂をもつ方が少なくなるなかで貴重な存在でありました。
学士課程の教育においては、桜美林大学の学部再編成により、2009年 4 月からリベラルアー ツ学群ビジネスエコノミクス専攻に所属され、中心教授として教育活動にあたられました。そ
吉田三千雄教授のご退任に寄せて
リベラルアーツ学群 経済区分長 石 田 高 生
リベラルアーツ学群 教授 藤 田 実
の講義や演習では、履修者も多く特に女子学生には人気があったことは驚きでもあります。経 験に根ざした現実感覚あふれる明解な授業や教示が今の学生に合うのかもしれません。また、
頼りがいがあるお人柄によるためでないかと勝手に推測するものであります。
学務は、1998年 4 月から2002年 3 月まで経済学部経済学科長を勉められております。この時 期は経済学部における商学科の独立とビジネスマネージメント学部の創設期にあたり、経済学 科の運営にご苦労も多かったのではないかと察するところであります。2006年 4 月から 2 年間 桜美林大学産業研究所長に就かれ、共同研究の中心的存在としてご活躍されその後の多くの成 果を発表されることになりました。
その他に、中央大学企業研究所及び社会科学研究所の研究員、社会活動としては桜美林大学 教職員組合委員長 1 期、桜美林学園消費生活協同組合理事長 2 期、相模原地方自治研究セン ター理事長 8 年を勉められております。吉田先生は、大学における研究・教育活動と実際の社 会活動の両方を意識され実践されてきたものです。
吉田先生の30年間にわたる桜美林大学での足跡は、まさに研究者一筋の途を後輩に示されて きたものでした。先生の御退任に当たり、その多大なる御貢献に対して、感謝申し上げるとと もに、御健康とこれからのさらなる御活躍を祈念致します。
2017年 1 月10日
吉田三千雄教授経歴書
吉田 三千雄(1947年 1 月 3 日埼玉県生まれ)
( 学 歴 )
1969年 3 月 中央大学商学部商業・貿易学科卒業 1973年 4 月 中央大学大学院商学研究科 修士課程入学 1976年 3 月 同研究科修士課程修了(商学修士)
1976年 4 月 中央大学大学院商学研究科 博士課程(後期)入学 1982年 3 月 同研究科 博士課程(後期)修了・博士論文提出 1983年 3 月 中央大学より商学博士の学位授与(商学博士)
( 職 歴 )
1969年 4 月 中小企業信用保険公庫入庫
(日本の中小企業および中小企業政策の研究などに従事)
1987年 3 月 同公庫退職
1987年 4 月 桜美林大学経済学部助教授(日本経済論・産業構造論担当)
1991年 4 月 同教授
1994年 3 月 大学設置審議会の教員審査において、桜美林大学大学院国際学研究科教授 (日本経済特講)M号と判定
1994年 4 月 同大学院国際学研究科日本経済論・演習担当(2010年 3 月まで)
1998年 4 月 桜美林大学経済学部経済学科長(2002年 3 月まで)
2006年 4 月 桜美林大学産業研究所所長(2008年 3 月まで)
( 兼任講師歴 )
1979年 9 月 女子栄養大学栄養学部(経済学、80年 3 月まで)
1986年 4 月 中央大学商学部(中小企業論、専門・基礎演習、1993年 3 月まで)
1987年 9 月 中央大学文学部(経済学、1988年 3 月まで)
2000年 4 月 明治大学商学部(日本経済論、2011年 3 月まで)
( 研究所研究員 )
1981年 4 月 中央大学企業研究所(1982年 3 月まで)
1990年 4 月 中央大学社会科学研究所(1993年 3 月まで)
1993年 4 月 ロンドン大学歴史研究所(1994年 3 月まで)
研 究 業 績 一 覧
( 著 書 )
1 .吉田三千雄『戦後日本工作機械工業の構造分析』、未来社、1986年 3 月
2 .島崎稔・安原茂編『重化学工業都市の構造分析』、東京大学出版会、1987年 2 月 3 .経済編集部編『日本企業海外進出の実態』、新日本出版社、1988年 2 月
4 .多摩地域研究会編『圏央道建設計画の総合アセスメント』、武蔵野書房、1988年 7 月 5 .中央大学社会科学研究所編『地域社会の構造と変容』、中央大学出版部、1995年10月 6 .産業構造研究会編『現代日本産業の構造と動態』、新日本出版社、2000年 3 月 7 .増田寿男・吉田三千雄編『長期不況と産業構造転換』、大月書店、2003年 3 月 8 .吉田三千雄・藤田実編『日本産業の構造転換と企業』、新日本出版社、2005年 3 月 9 .桜美林大学産業研究所編『八ッ場ダムと地域社会』、八朔社、2010年10月
10.吉田三千雄『戦後日本重化学工業の構造分析』、大月書店、2011年 9 月
( 論 文 )
1 .「拡大再生産における固定資本の補填について」、「論究」(中央大学大学院商学研究科) 7 巻 1 号、1975年 3 月
2 .「戦後日本工作機械工業の発展構造」、「商学論纂」21巻 2 号、1979年 7 月
3 .「日本工作機械工業の戦前段階─戦時期「工作機械事業法」下における生産力段階と蓄積機 構の特質についての一考察」「大学院研究年報(中央大学)」10巻 2 号、1981年 3 月 4 .「日本工作機械工業の戦後段階─戦後日本工作機械工業の生産力段階と蓄積機構の特質につ
いての一考察」、「商学論纂」23巻 1 ・ 2 号、1981年 7 月
5 .博士論文「日本工作機械工業の『戦後段階』─戦後『高度成長期』における発展構造とそ の帰結」、1982年
6 .「日本工作機械工業の1980年代世界戦略─日本工作機械工業の世界市場進出と新たな「危機」
の醸成」、「中央大学企業研究所年報」 3 号、1982年
7 .「産業構造転換の中小・零細企業への影響─N鋼管、F・N電気系列・下請企業にたいする 実態調査を中心として」、「商学論纂」28巻 4 号、1986年12月
8 .「工作機械産業─海外投資の本格化」、「経済」、1987年11月
9 .「産業構造転換と多摩西部地域中小・零細企業(上)、(下)」、「桜美林エコノミックス」20号、
21号、88年 6 月、12月
10.「産業構造転換と多摩地域経済」、「都市科学」88巻 4 号、1989年 11.「多摩地域の産業構造」、「行政管理」、1989年 8 月
12.「八王子市工業の構造と産業構造転換」、「中央大学社会科学研究所年報」 8 号、1990年 2 月 13.「地域工業構造と産業基盤整備政策についての一考察」、「桜美林エコノミックス」25号、90
年 9 月
14.「日本工作機械工業の海外展開と新たな矛盾の醸成」、「経済」、1991年11月
15.「1980年代における日本工作機械工業の発展構造」、「桜美林エコノミックス」28号、1992年 6 月
16.「1980年代におけるイギリス工作機械工業の発展構造─その凋落と再生に関する一考察」、
「商学論纂」35巻 5 号、94年 3 月
17.「中小・零細企業におけるNC工作機械の導入とその影響」、「桜美林エコノミックス」36号、
97年 3 月
18.「日本鉄鋼産業構造再編の現局面」、「桜美林エコノミックス」43号、2000年 3 月 19.「鉄鋼産業における『合理化』の新段階」、「労働運動」、2001年10月
20.「相模原市における中小・零細企業の存立構造とその変化─金属・機械部門を中心として」、
「産業研究所年報」20号、2002年 3 月
21.「鉄鋼 問われる経営責任・社会的責任」、「労働運動」、2002年 9 月 22.「産業構造転換と相模原中小・零細企業」、「相模原」 3 号、2003年 3 月
23.「持株会社下の『合理化』とその矛盾(上)、(下)」、「労働運動」2003年11月、12月 24.「産業空洞化と中小・零細企業の発展方向」、「経済」、2004年 8 月
25.「日本鉄鋼産業における『合理化』と労働力編成変容の一側面」、「桜美林エコノミックス」
50・51号、2004年 3 月
26.「長期不況下における日本工作機械工業の構造転換」、「桜美林エコノミックス」53号、2006 年 3 月
27.「『M・E化』の進展と日本機械工業」、「経済」、2007年 3 月
28.「日本機械工業の東アジア諸国への労働手段供給と『相互的発展』の可能性」、「桜美林大学 産業研究所年報」26号、2008年 3 月
29.「長野原町における八ッ場ダム反対運動の展開─八ッ場ダム反対期成同盟の動向を中心とし て」、「桜美林大学産業研究所年報」27号、2009年 3 月
30.「戦後日本の外需依存構造の形成と展開」、「経済」、2009年10月
31.「戦後日本経済の展開過程と『産業構造転換』─金属・機械部門を中心として」、桜美林論 考─エコノミックス創刊号」、2010年 3 月
32.「日本の金属・機械産業の東アジア諸国との連携を考える」、「桜美林大学産業研究所年報」、
29号、2011年 3 月
33.「日本の金属・機械産業の歴史的役割について考える」、「中小商工業研究」、115号、2013年 4 月
34.「大分県における『一村一品運動』の展開とその課題──地域経済の「内発的発展」の視点 から、「桜美林大学産業研究所年報」、32号(特別号)、2014年 3 月
35.「日本における主要製造業の現状──輸出・輸入構造の変化を中心に」、「経済」、2014年 7
月号
36.「工作機械、産業用ロボット」、「経済」、2015年 4 月号
37.「最近の日本における若年・低賃金女子労働者の増大を巡る諸問題」、「桜美林大学産業研究 所年報」、34号、2016年 3 月
38.「2000年代日本における労働手段生産部門の構造変化──工作機械工業及び産業用ロボット 工業を中心にして」、「桜美林エコノミックス」、 8 号、2017年 3 月
( 書 評 )
1 .上原信博編『先端技術産業と地域開発』、「土地制度史学」、122号、1989年 1 月 2 .三輪芳郎編『現代日本の産業構造』、「土地制度史学」137号、1992年10月 3 .森野勝好著『現代技術革新と工作機械産業』、「政経研究」70号、1998年 3 月 4 .村上研一著『現代日本再生産構造分析』、「経済」、2013年 9 月号
5 .藤田実著『日本経済の構造的危機を読み解く』、「経済科学通信」、135号、2014年 9 月
( 学会報告 )
1 .「戦後日本資本主義の強蓄積過程と中小企業政策の変転」、土地制度史学会1977年秋季学術 大会
2 .「日本工作機械工業の戦後段階」、経済理論学会第29回大会、1981年
3 .「産業構造転換の中小・零細企業への影響」、土地制度史学会、1986年度秋季学術大会 4 .「京浜工業地帯再編の現局面」、土地制度史学会、1987年度秋季学術大会共通シンポジウム 5 .「産業構造転換と多摩地域経済」、多摩学会、1989年
6 .「多摩の活性化を考える」、シンポジウム、コーディーネータ。2004年
7 .「日本機械工業の東アジア諸国への労働手段供給と『相互的発展』の可能性」、ベトナム・
ダナン大学。2008年 3 月
8 .「大分県における『一村一品運動』の展開とその課題」、日本・中国・タイの研究者による 共同シンポジウム、華中師範大学、2014年 3 月11日
( 共同調査研究 )
1 .「産業のハイテク化と多摩地域の中小企業に関する調査報告書」、東京都商工会連合会、
1988年 3 月
2 .「青梅地域総合経済振興懇談会答申書」、青梅商工会議所、1990年
3 .「広域工業診断報告」(立地環境編、生産機能編)、東京都商工指導所、1993年 4 .「規制緩和と産業再編成に関する研究」、桜美林大学産業研究所、1993年
( 主要な小論他 )
1 .「古書の重み」、「三到図書館ニュース」(桜美林大学)、1989年 2 .「創刊にあたって」、「相模原」 1 号、2001年
3 .「産研通信」(桜美林大学産業研究所)各号と発行年
「産業研究所所長への就任にあたって」(66号)。「日本の製造業における中小・零細企業の 減少について考える」(66号、2006年)。「八ッ場ダム建設計画をめぐる諸問題」(67号、
2006年)。「日本における労働手段生産産業の構造転換」(69号、2007年)。「日本製造業の現 状を考える」(80号、2011年)。「若年女性労働者の低賃金を考える」(93号、2015年)。「山 田幸俊先生を偲ぶ」(96号、2016年)。
4 .「企業社会における自己の位置」、「経済」2008年 5 月
5 .「一村一品運動のアジアにおける展開と変容」にかかわる中間報告、「産業研究所年報」第 31号、2013年
( 社 会 活 動 等 )
• 土地制度史学会編集委員(1988年〜1992年)
• 桜美林学園教職員組合委員長(1991年度)
• 桜美林学園消費生活組合理事長(2002〜2003年度)
• 相模原地方自治研究センター理事長(2001年〜2008年)
• 大学基準協会専門評価分科会委員・主査(2006年)