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(1)

当院で小児科専門医研修を受けた医師の新生児医療分野の 達成度について

和 田 紀 久 南 方 俊 佑 小 西 悠 平 竹 村 司

近畿大学医学部小児科科学教室

Achievement of neonatal medicine in pediatric residents of Kindai University Hospital Norihisa Wada, Shunsuke Minakata, Yuhei Konishi and Tsukasa Takemura

Department of Pediatrics, Kindai University Fuculty of Medicine

抄 録

小児科専門医制度における当院の新生児医療分野の研修が適切に行われているのかどうかを評価するためにアン ケート調査を実施した.日本小児科学会が求める専門医,および指導医レベル達成目標に関して,当院新生児集中治療 室(以下 NICU)で研修を経験した医師23人を対象に,研修終了時点での達成度を5段階で自己評価させた.対象の平 均研修期間は11か月(3-18,中央値11か月),研修中に主治医として担当した患者数の平均は16.4人(4-34人,中央値14 人)であった.全ての回答者が,日本小児科学会が求める小児科専門医レベル達成目標の8割以上について,5段階評価 中央の「ある程度できる」以上の自己評価をしていた.専門医レベルの項目に5段階評価最高の「十分にできる」と回 答した数は主治医として担当した患者の数と弱いながら正の相関を認め(r=0.44, p=0.04),先天性心疾患の知識に関す る達成度は研修期間の長さと正相関していた(r=0.42, p<0.05).しかし,回答者の専門医レベル,指導医レベル,その 両者を合わせた目標達成度の平均値は,研修期間にも研修期間中に主治医として担当した患者数にも関係しなかった.

自己評価によれば当院 NICU では3か月間であっても小児科専門医レベルとしては十分な研修が達成できると考えられ た.

Key words:Pediatrics, Specialty Boards, Residency, Neonatology

緒 言

現行の小児科専門医制度においては,それぞれの サブスペシャリティ分野別に専門医が達成すべき 項目があげられており 1,研修施設は研修を行う医師 がその目標に到達できるように指導を行っている.

新生児医療分野に関しても同様であるが,学会が提 示する目標は相当に高度であり,短期間での達成は 容易ではない.かつての全国調査で卒後新生児医療 研修の期間は平均6か月間と報告されているが 2,個 人の能力の差はもちろん,NICU の規模によって経 験できる症例数も異なるため,いずれの NICU でも 同じ研修期間で全ての医師が学会の提示する目標 に到達できるわけではない.そこで,近畿大学医学 部附属病院 NICU において,後期研修医及び専攻医

(以下,研修医)の新生児医療に関する達成度を明ら かにし,現在の研修体制,研修期間の妥当性を検討 するために調査を行った.

方 法

2006年4月の NICU 開設以降2017年8月までの期 間に,近畿大学医学部附属病院 NICU で研修を行っ た研修医にアンケートを行なった.質問項目は,日 本小児科学会が小児科専門医に求めた到達目標よ り,新生児分野で専門医レベル,及び指導医レベル の能力,知識のそれぞれについて最初の NICU 研修 終了時点での達成度を5段階で自己評価(0経験が ない,1少しできる,2ある程度できる,3できる,

4十分にできる)させた.研修医の研修時期,研修 期間は人事の記録で,研修医が主治医を受け持った

(2)

患者数,調査期間中の入院患者数,気管内挿管によ る人工呼吸を行なった患者数は入院台帳で調べた.

これらの項目と回答者を連結するためにアンケー トは記名式とした.統計学的検定は全て Microsoft Excel のアドインソフト Statcel 2を用いて行なった.

結 果

近畿大学医学部附属病院 NICU は9床で回復期の ケアを行う GCU 18床を有する.2006年4月から 2017年8月までの NICU への月平均の新入院数は 11.2人,気管内挿管による人工呼吸を行なった患者 数は月平均3.6人で,死亡総数は34であった.対象期 間中に NICU で初回の研修を受けた研修医は30名で,

初回の配属期間が3年以上に及んだ1名と連絡先 が不明であった1名を除外した28名を対象として,

電子メールによりアンケートを依頼し23名から回 答を得た(回収率82.1%).回答者の平均研修期間は 11か月(3-18,中央値11か月)であった.研修中に 主治医として担当した患者数の平均は16.4人(4-34 人,中央値14人)で,研修期間中の新入院患者数は 平均92.8人(26-199,中央値80人),回答者の回答時 点での大学卒業後年数は平均7年(2年—12年)で,

すでに小児科専門医である者は14名であった.日本 小児科学会が示す小児科専門医が達成すべき項目 とそれに対する0-4の達成度別回答者数を表1(専門 医レベル診療能力),表2A,B(専門医レベル知識), 表3(指導医レベル診療能力),表4(指導医レベル 知識)に示した.

各研修医の専門医レベル達成度の平均値,指導医 レベルの達成度の平均値,これら両者を合わせた平 均値のいずれも,研修期間にも,また主治医として 担当した患者の数とも相関せず,回帰分析で専門医 レベル,指導医レベルを合わせた達成度の平均値を,

有意差を持って予測できたのはアンケート回答時 の卒後年数のみで,卒後年数が高いことが達成度の 平均値の高さに関係した(R=0.49,p=0.02).研修期 間が4か月以下であった8人と5か月以上であっ た15人とを比較したが,専門医レベル達成度の平均 値(研修期間4か月以下2.77vs.研修期間5か月以上 2.97),指導医レベルの達成度の平均(同じく1.93vs.

1.96),これら両者を合わせた平均値(同じく2.49vs.

2.63)のいずれにも有意差を認めなかった.専門医 レベルの項目に4と回答した数は主治医として担当 し た 患 者 の 数 と 弱 い な が ら 正 の 相 関 を 認 め た

(r=0.44, p=0.04)が,研修期間と関連はなかった.

項目別では,専門医レベルで先天性心疾患の知識に 関する達成度は研修期間と正相関した(r=0.42, p<0.05).研修期間3か月間の研修医を含めて,全て の回答者が専門医レベル達成目標の8割以上につ いて「2.ある程度できる」以上の評価をしていた.

専門医レベルの達成目標については蘇生や点滴に 関しては経験がない,少しできるという回答はなく,

全回答が「2.ある程度できる」以上であった.一方 で,経験がないという回答が少なくなかったのは胸 腔穿刺(8人,35%)や臍動脈カテーテル(11人,48%)

であった.しかし,臍動脈カテーテル,胸腔穿刺の 達成度と研修期間に相関はなかった.研修期間が4 か月以下であった8人と5か月以上であった15人 とで臍動脈カテーテル,胸腔穿刺の達成度に有意差 はなかった.また,指導医レベルの項目に関しても,

画像,栄養,感染予防など10項目以上で達成度の平 均が2以上であった.頭部,心臓などの超音波検査,

人工換気療法について22人が「2.ある程度できる」

以上の回答をしていた.一方で,消化管造影につい ては経験がないという回答が8名で,剖検を経験し たとの回答は6人であった.

(3)

表1 専門医レベル達成目標(診療能力)と回答者数

専門医達成目標(診療能力) 達成度

0 1 2 3 4

正期産新生児から症状・問題のある児をスクリーニンクできる. 0 0 3 16 4

not doing well 等の非特異的所見を判断できる. 0 0 4 15 4 新生児蘇生術,気管挿管:NCPR(新生児心肺蘇生法)に則り,新生児蘇生ができ

る. 0 0 5 16 2

仮死児の評価:新生児低体温療法の適応基準を念頭に置いた上で,゙仮死児の評価が

できる. 0 2 5 13 3

採血(静脈,足底,動脈) 0 0 1 6 16

皮下注射 1 0 0 3 19

筋肉注射 1 0 0 4 18

点滴(経皮的中心静脈カテーテル留置を含む) 0 0 2 8 13

臍動脈カテーテル留置 11 4 5 3 0

モニター類の装着,血圧測定,SpO2モニター 0 0 0 7 16

胸腔穿刺 8 5 6 4 0

腰椎穿刺 1 0 3 11 8

透光試験(頭部,胸部) 9 1 8 5 0

マス・スクリーニング 0 0 3 14 10

ヘマトクリット測定 1 0 0 10 12

ビリルビン測定 0 0 0 11 12

CRP,血液ガス,血糖 0 0 0 6 17

マイクロバブル試験 0 1 2 12 8

心電図 0 0 5 11 7

胸部 X 線 0 0 1 10 12

心エコー 0 1 4 13 5

頭部 CT,頭部 MRI 0 0 7 9 7

頭部エコー 0 0 5 13 5

聴力スクリーニング 1 1 5 11 5

家族,特に母親と適切なコミュニケーションが取れる. 0 0 0 15 8

産科と連携し,母体情報,妊娠・分娩経過,成熟度を把握することで児のリスクを

予測することができる. 0 0 8 3 12

NICU・新生児室の感染予防対策を実行できる. 0 0 5 17 1

適切な抗菌薬の使用ができる. 0 1 2 16 4

社会的ハイリスク児を認識できる. 1 0 4 15 3

母乳哺育を指導できる 0 3 11 7 2

適切に新生児を搬送できる. 1 1 3 16 2

(4)

表2A 専門医レベル達成目標(知識)と回答者数

専門医達成目標(知識) 達成度

0 1 2 3 4

新生児の一般的養護 0 1 5 14 3

新生児の生理機能の変化 0 0 6 14 3

新生児の生理的身体所見 0 0 3 16 4

母子の愛着形成 0 1 11 9 2

早産児,低出生体重児の保育法の基本 0 1 6 13 3

新生児仮死 0 1 7 13 2

胎児発育制限 1 0 11 9 2

巨大児 2 1 9 10 1

多胎児 0 0 10 11 2

主な染色体異常 0 0 7 14 2

分娩損傷(頭血腫,帽状腱膜下出血,骨折 ) 0 2 9 12 0

呼吸窮迫症候群 0 0 2 16 5

新生児一過性多呼吸 0 0 2 10 11

無呼吸発作 0 0 4 15 4

胎便吸引症候群 0 0 1 17 5

気胸,縦隔気腫 2 1 4 14 2

肺炎 0 0 3 11 9

慢性肺疾患 0 1 6 12 4

未熟児動脈管開存症 0 1 3 11 8

先天性心疾患 0 4 11 7 1

新生児 遷延性肺高血圧 1 4 6 10 2

初期嘔吐 0 0 5 14 4

消化管閉鎖疾患 2 1 10 9 1

胃食道逆流 0 0 7 14 2

新生児黄疸 0 0 0 13 10

新生児メレナ 2 1 7 10 3

多血症 0 1 2 13 7

貧血 0 0 3 14 6

感染症 0 0 3 13 7

けいれん,低血糖症,電解質異常 0 0 8 9 6

新生児マス・スクリーニング 0 0 7 12 4

新生児薬用量 0 0 2 14 7

1か月検診 0 0 1 15 7

新生児の栄養法 0 0 6 12 5

(5)

表2B 専門医レベル達成目標(知識)と回答者数

専門医達成目標(知識) 達成度

0 1 2 3 4

新生児室の感染予防対策 0 0 8 10 5

乳児湿疹,鵞口瘡,おむつ皮膚炎,カンジダ皮膚炎など 0 1 2 12 8

新生児の一般的養護 0 1 5 14 3

新生児の生理機能の変化 0 0 6 14 3

新生児の生理的身体所見 0 0 3 16 4

母子の愛着形成 0 1 11 9 2

早産児,低出生体重児の保育法の基本 0 1 6 13 3

新生児仮死 0 1 7 13 2

胎児発育制限 1 0 11 9 2

巨大児 2 1 9 10 1

多胎児 0 0 10 11 2

主な染色体異常 0 0 7 14 2

分娩損傷(頭血腫,帽状腱膜下出血,骨折) 0 2 9 12 0

呼吸窮迫症候群 0 0 2 16 5

新生児一過性多呼吸 0 0 2 10 11

無呼吸発作 0 0 4 15 4

胎便吸引症候群 0 0 1 17 5

気胸,縦隔気腫 2 1 4 14 2

肺炎 0 0 3 11 9

慢性肺疾患 0 1 6 12 4

未熟児動脈管開存症 0 1 3 11 8

先天性心疾患 0 4 11 7 1

新生児 遷延性肺高血圧 1 4 6 10 2

初期嘔吐 0 0 5 14 4

消化管閉鎖疾患 2 1 10 9 1

胃食道逆流 0 0 7 14 2

新生児黄疸 0 0 0 13 10

新生児メレナ 2 1 7 10 3

多血症 0 1 2 13 7

貧血 0 0 3 14 6

感染症 0 0 3 13 7

けいれん,低血糖症,電解質異常 0 0 8 9 6

新生児マス・スクリーニング 0 0 7 12 4

新生児薬用量 0 0 2 14 7

1か月検診 0 0 1 15 7

新生児の栄養法 0 0 6 12 5

新生児室の感染予防対策 0 0 8 10 5

乳児湿疹,鵞口瘡,おむつ皮膚炎,カンジダ゙皮膚炎など 0 1 2 12 8

(6)

表3 指導医レベル達成目標(診療能力)と回答者数

専門医達成目標(診療能力) 達成度

0 1 2 3 4

交換輸血の適応を判断し,実施することができる. 0 2 12 5 4

人工換気装置の特徴を理解し,児の状態に応じた換気条件を設定することができる. 0 1 7 13 2

胸腔ドレーン法 8 7 6 2 0

新生児の薬用量,副反応を理解し,適切な鎮静法を選択することができる. 0 0 6 13 4

消化管造影(上部,下部) 8 6 6 2 1

超音波検査(心,頭部,腹部) 0 1 7 13 2

脳波(aEEG を含む),聴性脳幹反応 2 9 4 8 0

CT,MRI 0 1 5 13 4

低出生体重児の栄養計画を立案し,実施できる. 0 0 5 16 2

中心静脈栄養を実施できる. 0 1 4 16 2

フォローアップ外来を実施できる. 7 1 7 8 0

剖検を経験する. 17 0 2 3 1

死因究明と家族のケアができる. 7 4 5 5 2

表4 指導医レベル達成目標(知識)と回答者数

指導医達成目標(知識) 達成度

0 1 2 3 4

Wilson-Mikity 症候群 4 5 6 6 2

肺出血 8 2 8 4 1

横隔膜ヘルニア 8 2 5 5 3

先天性喘鳴 4 5 4 6 4

緊張性気胸 10 3 6 2 2

気道閉塞 6 1 5 9 2

先天性心疾患,心不全,不整脈 0 4 12 6 1

先天性消化器疾患 0 4 9 9 1

先天性副腎過形成症,甲状腺機能 低下症,甲状腺機能亢進症 2 1 13 6 1

水頭症,脊髄髄膜瘤,脳室周囲白 質軟化症,脳室内出血 1 5 11 5 1

血管腫およびその他各種母斑 5 3 7 6 2

胆道閉鎖症,総胆管拡張症,新生児肝炎 7 3 10 3 0

腎不全,水腎症,尿路奇形,尿路感染症 2 3 8 9 1

先天性股関節脱臼,筋性斜頸,先天性内反足・外反足 2 5 12 4 0

口唇口蓋裂,多合指症 1 5 8 4 5

母体感染症,母体への薬剤投与,特発性血小板減少症,全身性エリ テマトーデス

(SLE),HTLV キャリア母体からの新生児 2 4 13 4 0

腕神経叢麻痺,横隔膜神経麻痺 11 4 7 1 0

TORCH 症候群,未熟網膜症,主な奇形症候群 2 5 11 4 1

産科的知識(母体情報,妊娠・ 分娩経過,胎児心拍モニター) 0 6 13 3 1

ハイリスク児のフォローアップ外来 8 3 7 5 0

NICU の感染予防対策 0 2 8 10 3

(7)

考 察

出生後早期の新生児は生理学的に子宮内から子 宮外への適応の時期にあり,呼吸機能,循環動態な どが変化していくため 3,新生児集中治療では刻々と 変化する病態の変化に合わせて時間単位で治療戦 略の変更が行われる.特殊な手技が求められること もあり,幼児,学童などを対象とした小児医療の経 験はほとんど役立たない.また,通常の主治医診療 制では良質な医療を継続的に提供することが困難 であり,我々の NICU を含め多くの大学附属病院 NICU で半シフト制とでも言うべき診療スタイルが 採られている.すなわち,病状や治療方針の説明な どは主治医が行うが,日々の診療は,日勤帯は複数 の医師で入院患者毎に分担し,夜間休日は当直医が 全患者を担う.我々の NICU では,平日は朝と夕に 1時間程度をかけてスタッフ全員で回診を行い,直 前のシフトで行われた治療の評価,これから必要と なる治療について議論している.ここで上級医は研 修医が行った診療を評価し,担当した患者の病態や それに関連した最近の知見について指導を行って いる.研修医は,配属後1週間程度は上級医とともに 日勤帯の診療にあたり,以後は上級医のアドバイス を適宜受けながら割り当てられた数名の患者の診 療を単独で行っている.夜間,休日の単独での診療 は配属後2週間程度を経過してから経験する.勤務 中の新入院患者や,上級医が適当と判断した新入院 患者を主治医として担当する.この他に,人工換気 療法や蘇生法について,1年に数単位の講義を受け る.一方で,研修中に具体的項目別に達成度を定量 的に評価,フィードバックすることは現在まで行 なっておらず,今後の課題であると思われる.NICU 研修期間も,科内の事情により様々であった.しか し,今回の調査では全ての回答者が新生児に関して 学会が提示する専門医が達成すべき目標の8割以 上について「ある程度できる」以上の自己評価をし た.達成度に関する一部の結果から,研修期間が長 いほど,受け持ち患者数が多いほどレベルが上がる とは言えそうであるが,当院 NICU では3か月間で あっても小児科専門医レベルとしては一定のレベ ルを越える有意義な研修ができたと思われた.河畠 らは小児科研修における新生児研修の満足度を決 める要素は,研修医が質問しやすい雰囲気や情熱あ る指導者などの指導体制,研修医本人の積極性,手 技の経験数や症例数などの研修環境の三つで構成 されると述べている 4.研修に対する満足感と専門医 試験で求められるレベルへの到達は必ずしも一致 しないと思われるが,当院 NICU における研修が適

切なものになるかどうかに研修期間や症例数はあ まり関係せず,指導体制や研修医本人の積極性の影 響が大きいのかも知れない.黒田らは小児科医を対 象としたアンケートの結果から,チームの一員とし て責任を持って診療に参加することで研修医が新 生児医療に興味を持つ契機となると述べている 5.当 院 NICU では,マンパワーの限界から研修医であっ ても一人で対応せざるを得ない状況も少なくない ため,いわゆるやりがいを感じることができて,そ れが積極性につながっていたかも知れない.また,

毎日の回診前に講義的な指導を行えば研修医の満 足度が上がるという報告もあり 6,当院 NICU で毎 日行われている回診中の議論や指導が同様に良い 効果をもたらしてきたものと思われる.一方で,研 修期間4か月以下と5か月以上の研修医で達成度 の平均値に有意差を認めなかったことは,そのまま 解釈すれば研修4か月で達成度は2(ある程度でき る)以上になるものの,その後はあまり達成度が上 がらなかったことになる.しかし,記名式アンケー トであったために,5か月以上研修した回答者も自 己評価で4(十分にできる)と回答することを躊躇 したために有意な差がなかった可能性も否定でき ない.その点は記名式,自己評価でのアンケート調 査の限界と言わざるを得ない.また,今回の調査は 初回の NICU 研修終了時点での状況について回答者 の記憶にもとづいて回答されており,初回研修から 10年以上を経過した回答者もいる.アンケート回答 時の卒後年数が高いことが達成度の平均値の高さ と関係したことから,初回研修終了後に身につけた 能力を研修終了時の能力と混同して回答した可能 性がある.さらに,今回の調査は自己評価であった ために評価が不正確な例も含まれたかも知れず,指 導医側からの評価を加えれば結論は異なったもの になったかも知れない.

研修の有効性を厳密に評価するためには,本来は アンケートを研修前後で実施して比較すべきで あった.しかし,前述の如く NICU で行われる医療 はそれまでの経験がほとんど役立たない特殊な医 療であるため,初めての NICU 研修開始時点で研修 医の知識,診療能力は限定的と考えられ,今回の研 修後のみの調査でも研修成果の実態を相当に反映 できたと考えられた.

採血や点滴など,できるという回答が多かった項 目もあれば,臍動脈カテーテルや胸腔穿刺のように 経験がないという回答が多いものもあり,項目に よって達成度に差が見られた.臍動脈カテーテルや 胸腔穿刺を要する患者は少なく,患者数の多い大規 模な研修施設でなければ経験することは難しい.し

(8)

かし,当院を含めて大規模施設では小児外科医が勤 務していることが多く,それらの処置を小児科医が 経験する機会はむしろ得にくいと考えられた.改善 のためには小児外科など他科のローテートが有用 かも知れない.今後,より充実した研修環境を提供 していくためには,研修中に指導する側から定量的 評価,フィードバックを行うとともに,研修終了時 点で目標達成について評価して,研修における指導 側の改善点を明らかにすることが必要と考えられ た.

今回の論文に関連して開示すべき利益相反状態 はありません.

文 献

1.日本小児科学会.(2015)小児科医の到達目標

—小児科

専門医の教育目標—. 日小児会誌119: 751-798

2.布施養善,他. (2003)新生児医療専門医のための教育,

研修体制の現状について. 日新生児会誌39: 826-835 3.仁志田博司. 新生児学入門第4版. 東京:医学書院, 1-26,

2012

4.河畠 恵,他. (2017) 小児科研修における理想の新生児研 修とは.日新生児成育会誌29:147-150

5.黒田淳平,他.(2016) 医学部生・初期研修医に対する新生 児学. 日新生児成育会誌28: 112-115

6.Backes CH, et al. (2011) Fellows as teachers: a model to enhance pediatric resident education. Med Educ Online 16: doi: 10.3402/meo.v16i0.7205

参照

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