58 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(13) オ ガサ ワラ トシ エ小笠原壽恵(昭和3
博士(医学) 甲第244号平成6年3月18日
学位規則第4条第1項該当(医学研究科専攻,博士課程修了者)
種々の酸素欠乏状態下における病態生理一血液ガス・酸塩基平衡と血流量から の法医学的考察一 (主査)教授 澤口 彰子 (副査)教授 高桑 雄一,丸山 勝一論 文 内 容 の 要 旨
目的 ヒトの個体死の最終原因は個体の酸素循環不全すな わち窒息であるといわれている.死因統計をみても窒 息死の占める割合は多い.また飲酒や睡眠剤を多量に 服用した中毒状態での窒息死に関する実験報告は未だ なされていない.そこで,窒息を手段別さらに中毒作 用を加えて実験的に再現し,循環動態から窒息致死機 構の解明を試みるとともに,剖検時の死因判定への可 能性について検討を行った. 実験方法 実験には,日本白色種の雄ウサギを用いた.窒息実 験は,気管圧閉による急性窒息,内径0.5mm,狭窄部 全長3mmの気管狭窄用カニューレによる亜急性窒息, 鼻口部閉鎖による窒息,胸郭部に体重の2倍の荷重を 加えた胸郭圧迫による窒息,密閉容器内の空気を徐々 に1,0%の低濃度酸素ガスと置換することによる吸気 酸素欠乏状態における窒息について行った.さらに急 性窒息,亜急性窒息,吸気酸素欠乏状態における窒息 について,アルコール,トルエン,ネンブタールを投 与して実験を行った.各実験時に血液ガス・酸塩基平 衡,頸動脈血流量,肝血流量,肝組織CO、について測 定を行った. 結果 (1)血液ガス・酸塩基平衡の動態 鼻口部閉鎖,胸郭圧迫による窒息では,PaO2低下, PaCO2増加による呼吸性アシドーシスが認められた. 肝組織CO2は血中CO2と類似の変動を示し,有意な相 関関係が認められた. 吸気酸素欠乏状態における窒息では,PaO2および PaCO2低下を示し呼吸性アルカローシスが認められ, 末期に代償性の代謝性アシドーシスを合併した.また 低濃度酸素吸入の際,短時間で死亡する酸素の臨床濃 度は2%前後であることが示された. (2)血流量の動態 胸郭圧迫による窒息では機械的な血流阻害が,また アルコール投与群ではアルコールの循環抑制作用によ ると考えられる血流量の減少が認められた. (3)生存時間 アルコールを投与した亜急性窒息では,酸素消費量 の減少による生存時間の延長が,ネンブタールを投与 した急性窒息では,低酸素血症による著明な短縮が認 められ,中毒作用が窒息の生存時間に影響することが 示された. 考察 各窒息時に認められた血液ガス・酸塩基平衡の動態 は,それぞれの窒息手段を反映しており,死因の究明 に極めて有用であると考えられた.またアルコール, トルエン,ネンブタールの中毒作用により窒息の生存 時間に相違がみられたことは法医鑑定上重要な所見で あり,今後鑑定実務に寄与するものと考えられる. 結論 種々の酸素欠乏状態下において得られた血液ガス・ 酸塩基平衡の動態を始めとする所見は法医鑑定上有用 であり,死因の総合判断の情報の一つとして応用可能 であることが示された. 一664一59