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(シンポジウム 悪性腫瘍) 肺癌のレ線診断と放射線治療

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Academic year: 2021

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1

〔シンポジウム〕

細鱗墜醍論器難9骨)

肺癌のレ線診断ご放射線治療

教 授 1 緒

東京女子医科大学放射線医学教室

島 津 フ

シマ ヅ

(受付昭和33年5月6日)

肺癌は最近特に注目され,その発生が多くなっ たようにみえる。これは自動車の排気ガス,アス ファルト塵の吸入,喫煙等刺戟の多いいわゆる文 化生活が肺癌患者の増加と密接な関係があるので はないかとも考えられるがやはり診断方法ならび に外科手術の急速な進歩向上によって発見率が高 くなったことがその原因と眉われる。従来も肺の 転移癌はしばしば観察されているしまた原発性の 肺癌も決して稀な疾患ではなかったのである。し かししばしば他の疾患,たとえば肺二二などと誤 診きれていたために今臼程の発生が見られなかっ たのではないであろうか。 肺癌も他臓器の癌腫と同様早期発見,早貼治療 を必要とする。その診断は自覚症状及び理学的所 見,臨床検査所見等によることは勿論であるが, 肺癌の臨床症状というものが元来非常に少い点か らこれのみでは早期発見が困難である。そこでレ 線検査の占める役;割が大きく浮び上ってくる。す なわち消化管などの癌とは違って簡単な胸部単純 撮:影でも診断を下しうることも稀ではない。こと に肺結核に対する集団検診が:普及した今日では発 見の機会が一層増加したわけである。しかし前に も述べたように従来のごとき早期レ線像に対する 知識の不足があったのでは,ともすると確定診断 が困難である。また診断を確定したとしてもこれ を根治的に治癒せしめるという点になるとますま ヨ す困難を感ずる。 治療法としては外科的療法が第一に挙げられる が,少し時期が進んだものでは手術も姑息的に終 り勿論予後も不良である。すなわち手術適応の決 定が極めて大切である。内科的療法は全く対症療 法に終り,制癌剤たとえばThio−TEPA等による 化学療法についてもあまり多くを望めない。そこ で第3の療法として放射線療法が挙げられる。こ れは手術療法に併用して術前または術後照射を行 って予後を一層良好にすることもあるが,単独で 使用する場合は卒直にいって我国ではまだ充分な 成績を挙げていないようである。早期のものでは 5年生存例も期待できるが,他臓器の癌腫に対す る放射線治療効果と比較すると一部を除いてはな お姑息的療法の域を出ていないのが現状である。 しかしながらすでに手術適応でなくなっているよ うな症例に対しては,生命の延長という点で多く の期待が持てないにしろ一時的に症状の軽減をも たらす点では決して無意義ではない。すなわちレ 線像においてたとえ一時的にせよ腫瘍の縮小や消 失を来す場合も間々あり,これが自覚症状の軽減 または消失となり結局は予後不良であるにしても 患者に与える心理的効果はまことに:大きいのであ る。 結局肺癌についても,他臓器の癌腫と同様でき るだけ早期に確実な診断を下すことが予後を良好 ならしめるのに絶対必要なことである。したがつ

Fumiyo SHIMAZU (Department of Radiology, Tokyo Women’s Medica] College) : X−ray diagnosis ’ and radiation therapy of lung cancer.

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2 て今迄とかく看過されがちであった肺癌のレ線像 読影に関して種々な面からの考察を加え,放射線 療法についても現在行われている諸法の一端を紹 介しかつとれに対する考察を加えたいと思う。 H 肺癌のレ線診断 A レ線像と病理組織像との関係 肺癌の病理組織学的分類は扁平上皮癌が最:も多 く,ついで未分化癌,腺癌等である。また男女の 比は約5:iであるとされ圧倒的に男に多い。発 生部位としては右上葉が最も多くついで左上葉, 右下葉,左下葉の順である。レ寵幸においては未 分化癌が一番腫瘤を形成しやすいところがら,い わゆる結節型として観察される。また扁平上皮 癌,腺癌も同様の傾向にあるとされている。空洞 の形成は扁平上皮癌に頻度が高いといわれてい る。しかし実際にレ画像からその組織像を推察す ることは困難で,手術,解剖等の結果にまつより 他はない。 B レ線撮影法 レ線撮影は低圧(従来一般に使用きれている程 度の電圧)または高圧による胸部単純撮影を基本 とし,これに側面撮影,断層撮:影,気管麦造影, 血管造影,食道造影,レントゲンキモグラフイ一 等を追加することにより一層診断能力が向上す る。とくに手術適否の決定となる縦隔内大血管, 心嚢等への侵襲状況を知りうる点で血管造影法は 重要である。また単純撮影で呼吸位相を変えて撮 影することも,気管分岐部位置変化,縦隔洞の異 常運動,肺野透明度異常変化等の有無を知りえて 有意義である。 C レ魚鼓の読影 レ線像を読直するには一般胸部疾患のレ線像を 画影するに足る知識と経験を必要とすることはい うまでもないが,肺癌の診断に当ってとくに念頭 に置かなければならないことは, i 肺癌に特有な像がないこと,したがって癌 年令者に異常所見をみた時はまず肺癌を準々す る。 ii肺癌の診断を下した場合でも,そのレ線像 は変幻自在であるし,また進行も急速なものも全 く緩徐なものもあり,変貌が複雑なために海蝕の 明確な分類は困難であるのでその釣合は優勢像を 主として考える。 iiiレ線像で一応は肺癌と診断を下し得るにし ても,最:終的な決定はやはり細胞学的または組織 学的検査の結果にまたねばならない等である。 a レ線所見 1 結飾状陰影(腫瘤像,銭靴底) 断層撮影で輪廓の不整を発見することが必要で ある。もしこの中に空洞が存在する場合,それは 中心性ではなく内方へ腫瘤が突出しているもの (不整形空洞)もあること。 2 浸潤型陰影 索状像でいわゆる癌放射を示すもの(斑点ある いは雲撮像など複雑で他の炎症とは区別しにく い)。 3 無気肺像 肺門腫瘤と合わせてその辺縁がS字状曲線を示 すことが多い。気管の患側変位は結核等の際に見 られる癒着による牽引性のものとは異って異常轡 曲をとらずに直線のままで偏る。

4 気腫

呼気時の膨脹と多少の透明化は認められること もあるが,これは弁状機転を持つ時にのみ認めら れるものである(但し短期間)。 5 =炎症 気管支肺炎を思わせる陰影で,無気肺領域の気 管支拡張を伴いやすく膿瘍化もする。

6 転移

1) 肺門腫瘤像または無気肺を含む肺野の腫瘤 像あるいは散布性斑点陰影 2)中央陰影の拡張及び食道または気管の変形 変位。 3) 片側横隔膜高位及び横隔膜運動の異常。「こ れは横隔膜神経麻痺のためである。 4) 滲出性,癒着性肋膜炎像と腫瘍の肺門内突 出像。滲出液貯溜により中央陰影の反対側偏位が ある。しかしながら患側に高度の無気肺がある場 合は相殺される。 5) 骨転移 破壊と増生が行われる。一方が強い場合もまた 両者共存する蜴合もある。骨梁像の消失,陰影欠 損と濃化等があるが結局は破壊像を認める。これ らはしばしば肺野異常陰影の鑑別に’ヒントを与え る。 b レ線像による類似疾息との鑑別診断

1 肺結核

結節型との鑑別を要する。結核では誘導気管支 一 434 一’

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3 を見ることが多く,叉病巣の集合像を分離するこ とが可能で辺縁凹凸より癌が疑われる揚合でも断 層撮影等により鑑別しうる。

2 肺化儂症

大部分が浸潤型で,断層撮:影により空洞像を示 すものが多く,肺癌のように凹凸不整の結節性陰 影を示すものは少い。

3 縦隔腫瘍

気管支造影により大部分が鑑別可能である。 その他にも気管支炎,肺炎,肋膜炎,気管支拡 張症などとの鑑別を要する。更に肺癌浸潤型と患 われるものの中にも断層撮影等により結節状の陰 影を発見しうるものが多く,これが診断の極め手 として重要である。 c 手術可能度のレ線診断 1 昏怠との関係 肺癌の診断に際しては特に手術可能度を決定す ることが必要である。すなわち手術が可能であれ ばそれだけ生存期間の延長を期待することもでき る。 1)肺野腫瘤型 一切面出50%程度であるが,直径3cm以下のい わゆる銭型病巣では切除率88%にも及ぶとされて いる。 2)肺門型,縦隔型,無気肺型,浸潤型 切除率は20%前後とされている。真の肺門型は 主気管支附近に生じ,縦隔あるいは縦隔側の肋膜 下に生じた末梢癌であるが,共に早くから縦隔に 浸潤し切除不能である。 2 特殊レ線診断法 手術施行の可否を決定するには縦隔臓器の態度 より縦隔浸潤の有無を聞接に判定する必要があ る。 1) 血管造影法 i 上空静脈の異常(圧迫,狭窄,閉塞,偏位) 一上葉無気肺型に多く見られる。 ii 肺動脈幹の異常 iii末梢動脈の変化一病北部血管像消失 2) 気管支造影及び気管支運動の撮:影 気管支分岐部は吸気時下方に移動し分岐角度は 小となり,呼気時にはその反対となる。よってこ の状態を2枚の写真に撮影し気管支の運動を計測 する。以上のごとき動きは呼吸運動特に横隔膜運 動と密接な関係があるので,横隔膜運動との比を 求める必要があるQ 3) 食道造影及び食道運動(食道キモグラム) 気勢支分岐部以下の縦隔の状態を制定するには 食道造影に依存しなければならない。すなわち圧 迫像,狭窄像等が見られる。 皿 肺癌の放射綜治療 現在行われている肺癌の放射線治療法は大体3 種類ある。すなわちレ線照射,レ線籠照射及び Co 60遠隔大量照射である。これらは手術,化学 療法等と併用して行われることも多いが,ここで は単独に放射線療法のみを行う盛合について述べ る。 A 肺癌の組織像と放射線感受性 悪性腫蕩の放射線療法の際まず第一に考えられ ることは腫膓の組織像とその放射線感受性との聞 題であるが,これは予後と密接な関連性があると ころより当然である。感受性の高い未分化型腫瘍 は初期に治療を受けた蜴合程生存率がよいが,生 存率のみからいえば扁平上皮癌,腺癌の方が良好 である。腫瘍では一般に悪性度の強いもの程放射 線に対する感受性は高いのであるが,初期に治療 を受ける機会を得ない場合は放射線によって二品 の縮小する暇もなく,急速に増悪し生存率が低い 焙果となることもまた考えられるところである。 B 放射線治療効果の判定 組織像とレ線写真上の放射線治療効果との関係 は,扁平上皮癌,未分化癌では陰影の消失するこ ともあるが,腺癌では陰影が消失しにくく,前節 で述べたごとく未分化癌では著効例もあるが,一 方全然反応しない例も少くない。 C 肺癌の治療に必要な照射線量 照射量が増加するにしたがって生存期間の延長 が見られるとされているが,感受性の単純でない ことを老えると照射線量と生存期闇との関係もま た簡単にはいうことができない。大体病巣線:量は 3000∼5000rということになっており,これは空 中線:量で20000r以上に当る。レ磯節照射の場合 には一般に用いられているレ線深部治療やCo6Q遠 隔大量照射よりも効果は著明で,2年生存率は25 %を示すが,他の2つの方法では5%前後である という。レ線節照射では皮膚の耐容量が著しく増 大するために大量のレ線照射が可能となり,更に 病巣線量が多いにもかかわらずあまりLungen− fibroseの発現をみないのが持徴である。Co60遠隔 一 485 一

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4 :大:量照射では空中線:量6500r前後になると著明な 効果があらわれてくる。この揚合腫瘍が消失する 例も相当に報告されている。 以上3種類の治療方法を比較してみると,レ線 飾照射の揚合が局所の腫瘍に対する効果からも, また生命の延長という点からも最も良好な成績を 示しているが,いずれにせよ治療開始時における 臨床進度が重大なものであるから,肺癌の早期発 見ということは手術可能度の点からも放射線療法 の立揚からも強く要望されるのである。

w結 言

以上肺癌のレ線診断並に放射線治療について述 べた。繰返えし述べているごとく,早期発見,早 期治療ということが予後を良好にする唯一の道で ある。進行した肺癌のレ線像について云々しまた その分類を試みたところで,結局は学問的な興味 に過ぎず決して患者を救う道とはならない。初期 の肺癌を如何にしてレ三三より見出すか,やはり 現在結核に対して行っている葉団検診を少くとも 癌年令に達した者については初めから集団検診と いう目的で行って欲しい。同じ集団検診だから従 来のままでよいではないかということになるが, 私の考えるところでは従来のごとき観念では結核 ということにとらわれ過ぎ,癌をも結核として扱 うことが多かったため治療の時期を失したとみら れる揚合にしばしば遭遇するからである。これを 逆に癌として一応チェックした上で慎重な鑑別診 断を行い,結核と確定したものは勿論その治療を 行うが,もし少しでも疑のある者に対しては厳重 な経過観察を行い,あるいは進んで試験的開胸に まで持ってゆくべきではないであろうか。このよ うにして早期の肺癌レ線像に関する種々貴重な症 例が得られひいては・早期診断への道となることと 確信する。 放射線治療も現在では姑息的手般の域を出てい ないと述べたが,やはり早期に発見されれば放射 線療法のみでもある程度治癒せしめうることもあ る。しかし最:も望まれるのは早期手術に随伴した 術前,術後の照射療法である。このようにしてはじ めて肺癌の根治は確固たるものとなるのである。 一 436 一

参照

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