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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 : -1999年5月21日法の概要- 利用統計を見る

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(1)

ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準

拠法 :

-1999年5月21日法の概要-著者名(日)

笠原 俊宏

雑誌名

東洋法学

43

2

ページ

187-204

発行年

2000-03-15

URL

http://id.nii.ac.jp/1060/00000437/

Creative Commons : 表示 - 非営利 - 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/3.0/deed.ja

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法

       一九九九年五月二一日法の概要

東洋法学

  目 次 一 緒言 二 改正の経緯 三 新立法の内容  ︵一︶ 不法行為の準拠法  ︵二︶ 物権の準拠法 四 結語 ︵参考資料︶ 契約外債務関係および物についての国際私法のための一九九九年五旦二日法律

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 緒 言  ドイツにおいては、﹁契約外債務関係および物についての国際私法のための一九九九年五月二一日法律﹂︵連邦 官報第一部一〇二六頁Vが同年六月一日から施行されている︵勾&妻鋤讐9浮目H爵轟律おけ窪8ω089器ω差日 巨Φ毎呂8巴窪零一く緯﹃8﹃焦昏豊ωωo署R霞四ひq一一畠Φωoど崔<①醍凹ぢ一ωωΦ琶&昏留畠Φp聖藝蹄駄8帆ミ鳴ミ§§ミ§、試ミ魅 §織隷愚ミ§簑§ミω︵以下、賠嚢として引用︶一。鐸ψ曽ρ参照︶。わが国際私法の母法といわれるドイツ国際私 法の動向については、わが国においては常に注視されてきたところであるが、同法律が規律の対象とする契約外 債務および物権に関する抵触規則の改正作業の過程における多彩な論議についても、すでに数多くの精緻な研究 や紹介がみられるところである︵例えば、契約外債務については、国友明彦﹁契約外債務に関するドイツ国際私法の 改正準備︵一︶ー︵五︶﹂大阪市立大学法学雑誌三八巻一号一頁、二号一頁、三ー四号六八頁、三九巻二号二八頁、三目四 号一四二頁。また、物権については、ディーター・ヘンリッヒ︵桑田三郎訳︶﹁西ドイツ国際物権法の改正提案﹂法学新 報九一巻五H六髄七号一四八頁、楢崎みどり﹁ドイツ国際物権法および無体財産権法改正のための諸提案︵一九八八年︶﹂ 法学新報九九巻五11六号三〇五頁等︶。また、そのほか、後にみるように、ドイツ国際私法における不法行為およ び物権の準拠法選定規則に関する学説および判例について、とくに当事者自治の導入の可否の観点から多くの研 究が発表されている。今後、同法律についても多くの優れた研究が発表されることが予想されるところであるが、 外国国際私法立法の研究上、同法律に関する知識を全く欠くことは許されないものと思料されるため、ここにお 188

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いて、その概要のみを明らかにすべく、一先ず、その試訳とともに若干の言及を試みることとした。 二 改正の経緯

東洋法学

 すでに、一九八二年には﹁契約外債務に関するドイツ国際私法会議草案﹂、また、一九八四年には﹁契約外債 務関係および物についての国際私法のための第一次参事官草案︵勾駄RΦ旨窪8暑貫︷︶﹂が存在していたことが知 られる︵両草案の邦訳として、国友・前掲論文︵一︶四頁以下参照︶。周知の通り、ドイツ国際私法においては、﹁国 際私法の新規則のための一九入六年七月二五日法律﹂︵連邦官報第一部一一四二頁︶による民法施行法中の国際私 法規定の広範な分野にわたる改正が実行されたが︵その法文については、例えば、笠原俊宏﹃国際私法立法総覧﹄ ︵一九八九年、冨山房︶二四二頁以下︶、その改正は契約外債務関係および物権の分野には及んでいない。その際、 同法律は、民法施行法第一二条︵旧規定︶をもって、﹁第二款契約外債務﹂という標題のもとにおける﹁第三八 条不法行為﹂に振り替え、第三八条以下の諸規定の改正作業はその後も続行されることとなった。一方、国際 物権法については、ドイツにおいては制定法は存在せず、学説・判例によって発展せしめられた慣習法によって 賄われてきた︵ヘンリッヒ・前掲一四八頁参照︶。明文規定が存在していなかったという意味において、ドイツ国 際物権法規則は長い間にわたって必ずしも明瞭ではなかったが、一九九三年、連邦法務省によって﹁契約外債務 関係および物についての国際私法のための修正参事官草案﹂が提案され︵同草案については、霧ヨα<9 国o暁旨きp鐸Φヨ妥9巴Φω匡聾琶鵬霞8辟ぎ因庶RΦ導窪8薯仁臥号ωω琶8ω冒ωけ“巨膏§日Bω︿。B一。一N●一。。G 。︸舅嚢

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 一。。ωあ,一宍参照︶、それにより、国際物権法規則の輪郭についても明らかにされるに至った。その後、同草案 は﹁契約外債務関係および物についての国際私法のための政府草案︵零讐R琶ひqω窪薯ξ囲︶﹂へと昇華され、そし て、一九九八年八月二四日、政府草案は内閣によって可決されている。同年一一月六日、連邦参議院における 政府草案に対する姿勢は肯定的であったが、いくつかの検討が提案され、それに対して、連邦政府は反対意見を 表明している︵その詳細については、薫謎冨ぴ鉾Pρψ曽R参照︶。そのため、 一九九九年六月一日に発効した 法律の立法者が政府草案をそのまま受け継いでいるのか、それとも、変更しているのかがひとつの疑問として指 摘されているところである︵薯謎ま﹃も動ρψ曽ρ参照︶。同草案は、同年二月二四日、第一回読会において審議 された後、法律委員会に回付された。同委員会は従来の法規の欠鉄を補充する政府草案を歓迎し、同年三月二四 日、それに賛同することを連邦議会に勧告した。それを受けて、翌二五日、連邦議会はそのまま草案を議決して いる。法律委員会の勧告に基づき、同年四月三〇日、連邦参議院は連邦議会によって議決された法案のための両 院協議会を招集したが、政府草案はそこでも殆ど変更されることなく国会を通過している。それにより現行法上 の抵触規定の欠敏が決着するに至ったというのが、極く簡潔な経緯である︵以上の過程については、≦m讐9 鉾鉾ρω.曽一R参照︶。なお、上述のごとく、一九九八年の政府草案が殆ど修正されることなく現行法として成立 しているため、政府草案についての詳細な解説はほぼそのまま現行法についてのそれとしても通用するとみられ る︵政府草案については、勾o罵ミ謎希ぴUR園畠δ歪轟器旨要仁諜Φヨ80霧9N8釜ヨ営毎ヨ跨一3巴雪娼二話q8巨 津﹃き紹R話昌声屯8箒ω魯包身Rま一日一器Φ巨α豊﹃ω8げ8”鴫肉嚢一80 。あ﹂8宗参照︶。 190

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三 新立法の内容

東洋法学

 ︵一︶ 不法行為の準拠法  契約外債務に関する第三八条ないし第四二条の諸規定の中、第四〇条が不法行為について定めている。それは 不法行為地法主義を採用するものであり、そして、加害者の行動地をもって不法行為地とすることを原則として いる︵第四〇条第一項第一文参照︶。しかし、行動地が結果発生地と異なる場合には、被害者は後者の国の法の適 用を要求することができる︵同項第二文参照︶。これは行動地と結果発生地のいずれをも不法行為地と認めるいわ ゆる偏在理論︵ごげδ且聾ω些8旨︶に立つ立場であり、すでにドイツ判例において見られたものである︵佐野寛 ﹁法例における不法行為の準拠法  現状と課題﹂ジュリスト一一四三号五四頁参照。なお、二法選択主義として、岡本 善八﹁国際私法における法定債権﹂同志社法学四二巻一号四六頁参照︶。一九九三年の修正参事官草案において採用 されていた立場もまた同一である︵同草案第四〇条第一項参照。法文については、冒口囚89亀9冒富ヨ蝕自巴8 即貯魯お。耳ω.︾魯こ一88ψ宅曾>浮o旨琶犀9冥①毎蝕9巴Φωギ一奉霞Φ。拝一8。 。あ白。 。。所載︶。不法行為の準拠法 について当事者自治の導入が叫ばれる中にあって、その立場は被害者保護を慮った連結の多元化を図ろうとする ものであり、わが現行国際私法においても採用することが可能な現実性を有した立場であるとみられる。しかし ながら、そのような立場は被害者を一方的に保護するものであるという批判がドイツにおいてもないわけではな い ︵国友・前掲︵二︶二三七頁参照︶。

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法  以上の原則に対する例外は次の三つの場合に認められている。そのひとつは、加害者と被害者が、行為が行な われた当時、同一国に常居所を有する場合である。この場合には同国法が適用されなければならない ︵第四〇条 第二項第一文参照︶。いまひとつの例外は、以上のようにして選定された法よりも、本質的により密接な関連性 ︵色器妻88岳魯Φ轟RΦく①量民§閃︶を有する法が存在する場合には同法が適用されなければならない ︵第四一 条第一項参照︶。さらに、当事者の合意による準拠法の選択が、第三者の権利を侵害しない範囲において認められ ている︵第四二条参照︶。それらの規則は一九九三年の修正参事官草案においても規定されていたものである︵そ れぞれ、同草案第四〇条第二項、第四一条、第四二条第一項参照︶。結局、その適用における優先順位については、 次のように整理することができるであろう。すなわち、第一に、当事者によって選択された法、第二に、最も ︵ないしは本質的により︶密接な関連性を有する法、第三に、当事者の同一常居所地法、そして、最後に不法行 為地法であるが、行動地と結果発生地とが異なるときは、被害者の選択によるそれらの中のいずれかの地の法、 というのがそれである。つまり、当事者自治が最優先されているということになる。なお、被害者による行動地 法と結果発生地法からの選択については、その立法趣旨は被害者の保護であり、当事者自治とは性質を異にする という指摘もある︵佐野・前掲五五頁参照︶。いずれにしても、ドイツ国際私法上、当事者意思が不法行為の準拠 法の選定における連結素として導入され、しかも、当事者による準拠法選択が行なわれた場合には、その準拠法 の適用が最優先されるべきことが明文をもって確立されるに至ったことは事実である。従前、ドイツにおいては、 不法行為の準拠法決定について考慮されるべき主要な連結点として、不法行為地、共通常居所、共通国籍、民法 192

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施行法第三八条︵旧第一二条︶、事実発生後の当事者意思が考えられていたが︵岡本・前掲四六頁以下参照︶、﹁第 三者の権利を害さないことを条件として、当事者による事後的な法選択の合意を認める﹂というドイツ判例・学 説において早くから認められていた立場がようやく成文化されたということになるであろう。それが前記ドイツ 国際私法会議草案第九条および第一次参事官草案第四二条第一項における立場であり︵中野俊一郎﹁不法行為に 関する準拠法選択の合意﹂民商法雑誌一〇二巻六号八三頁参照。法文については、国友・前掲︵一︶六頁および八頁参照︶、 そして、また、一九九三年の参事官草案第四二条、さらに、一九九八年の政府草案第四二条を通じての一貰した 立場であることは改めて指摘するまでもないであろう。  なお、いずれかの外国法が準拠法となった場合の特別公序として、次に掲げる三つの場合には当該外国法上の 請求権は認められない。すなわち、そのひとつは、準拠外国法が過度な賠償範囲を定めている場合であり、いま ひとつは、同法が不適切な賠償目的を有する場合であり、そして、さらなるひとつは、同法がドイツが批准した 国際条約と相容れない場合である︵第四〇条第三項参照︶。従って、ドイツにとって有効な条約が存在する場合に は、最優先されるべきは国際条約であるとみるほかはないであろう。また、特別公序規定の存在により、準拠法 の選定における当事者自治を可及的に認めながらも、重要な点においてドイツ法が基準となっていることが窺わ れる。その限りにおいて、当事者自治の原則に対する法廷地法主義からの介入が許されている。ちなみに、政府 草案と現行法に見られる法文上の唯一の相違は第四〇条第三項第一号である。前者が﹁損害の賠償に︵N仁日 蝉鐙言8ωω畠銭窪ω︶必要なよりもはるかに広く行なわれるとき﹂と定めているのに対して、後者は﹁被害者の

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 適切な補償に︵Nξき鴨ヨ8ω窪窪国導零轟α蒔琶閃号ωく包Φ算窪︶必要なよりもはるかに広く行なわれるとき﹂と 定めている。その実質的な相違については必ずしも明らかではないが、後者においては、ドイツ法上の一定の基 準の存在が前提とされていることが、﹁適切な﹂という文言に表現されているものと読むこともできるように思 われる。  ︵二︶ 物権の準拠法  一方、物権の準拠法に関する問題もまた、ドイツ学説上において活発に論議されてきた問題である︵例えば、 岡本善八﹁国際私法における動産物権﹂同志社法学四〇巻六号一六頁以下、楢崎みどり﹁ドイツ国際物権法における”当 事者自治”の構成について︵一︶、︵二︶﹂法学新報一〇〇巻七11八号一八一頁以下、九目一〇号一六七頁以下参照︶。ド イツ国際物権法上の主要な論点もまた、その分野への当事者自治の導入の可否に関するものにほかならない。し かし、新立法上、不法行為を含めた契約外債務関係について明文をもって当事者自治が認められているのに対し て、物権については、そのような明文が存在していないという意味において、当事者自治が原則的に否定されて いるということができるであろう。まず、第四三条第一項が、物権について目的物の所在地法主義を原則として 採用していることを宣言しており、従って、同則主義のもとに、動産についてもその原則が適用されなければな らない。これは不法行為についての不法行為地法主義に相応するということができる。しかしながら、行動地と 結果発生地とが異なる場合には、被害者の要求に従って不法行為地が決定されるのに対して、移動中の物や移動 194

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することが予定されている物との関連において、その荷送地国と仕向地国とのいずれを所在地国と見倣すかにつ いては、当事者の意思の介入は少なくとも明文上は認められていない。その場合について表明されているのは仕 向地国法の優先的適用の立場であるが︵同条第二項参照︶、そこにおいて考えられているのは、権利の成立とその 効力との区別であろう。すなわち、いずれかの国において成立した権利は、それが設定されている物がその他の 国に到達したときにおいても存続するのに対して、所有者がいかなる範囲において権利を行使できるかは、所有 権を取得した国の法ではなく、物が現に存在している国の法によるべきとするのがその区別であり、その時点に おいて準拠法変更︵ω叶暮暮窪ゑ9富9が当然に行なわれるべきとするドイツ国際物権法に根強い立場である︵ヘ ンリッヒ・前掲一五一頁以下参照︶。また、当然に移動することが考えられる輸送手段に対する物権の準拠法につ いていえば、航空機については所属国法、船舶については登録地国法、鉄道車両については運行許可国法である ︵第四五条第一項参照︶。これらは目的物の所在地法主義に対する例外のひとつをなすものである。いまひとつの 例外は、やはり、輸送手段に対する法定担保物権の準拠法の場合である。すなわち、﹁その成立は担保されるべ き要求に適用されるべきである法に服する。﹂というのがそれである︵同条第二項︶。この法文が意味しているの が、法定担保物権は原因債権の準拠法に従うべきであるということであると解することができるであろう。そう であるとしたならば、原因債権について当事者自治が許されている限り、法定担保物権についても、間接的には その作用が及んでいるといわねばならない。担保物権の準拠法と被担保債権のそれとの一致の要請が物権準拠法 一般における当事者自治の導入の重要な論拠となっていることに想到すれば、そのための扉が開かれたことにな

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 るであろう。  本質的により密接な関連性を有する法への連結が優先されている点は、契約外債務関係についての場合と同様 である︵第四六条参照︶。実際上、本質的により密接な関連性の認定には少なからぬ困難が伴うであろうことは予 想されるところであるが、第四六条が硬直した所在地法主義を柔軟に運用するために寄与することは否定できな いであろう。しかし、同条の真の目的が、法定担保物権の準拠法は原因債権の準拠法に従うとした第四五条第二 項の暴走を阻止することにあるとみることもできないことではない。もとより、政策的に、物権準拠法と契約準 拠法における形式主義と意思主義の相違によってもたらされる困難な問題も、それらの準拠法が同一国法である 場合には生じることはない。しかし、その場合にも、安直に物権準拠法が契約準拠法に吸収されてはならず、物 権問題については、あくまで客観的連結を第一に考えた上で、最も密接な関係を有する社会の法を柔軟な姿勢で 探究すべきとする考え方が根強く︵例えば、石黒一憲﹃国際私法︹新版︺﹄︵一九九〇年、有斐閣︶三五九頁以下参照︶、 それからは、仲々、脱却されないのが現状である。従って、第四六条がそのような立場を表明していたとしても 不思議ではない。兼ねてより、物権における目的物所在地法主義については、契約や不法行為ほどには、一般的 に、その立法論的妥当性が疑われていないとも指摘されてきた︵松岡博﹃国際私法における法選択規則構造論﹄︵一 九九〇年、有斐閣︶二四八頁参照︶。やはり、ドイツ国際私法においても、学説上の論議がそのまま実定法となる までには熟していないとみるべきであろうか。 196

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四 結 語  以上において見られたように、当事者自治の導入が、不法行為を含めた契約外債務関係については、いかなる 理念に基づくものであるかはともかく、明文をもって規定されることになったのに対して、物権については、過 大な期待そのものが妥当性を欠くものであったにせよ、それが否定される結果になっている。そのような違いを もたらしていることの理由は、不法行為がすでに不法行為地との必須的な結合から脱却しているのに対して、物 権が未だに目的物の所在地との結合から開放されていないからであろう。当事者間の合意のみをもって問題を決 着することができる債権問題と、それが本来的に有する対世的効力のゆえに、第三者の利害関係をも考慮しなけ ればならない物権問題との本質的な相違が、ドイツのこの新立法において如実に露呈しているように思われる。  翻って、大局的な観点から見れば、一九八六年七月二五日の法律をもって大幅に改正されたドイツ国際私法で あるが、その後も、一九九三年には氏に関する第一〇条が改正され︵佐藤文彦﹁ドイツ国際私法における氏の準拠 法について  民法典施行法第一〇条の変更を中心にー﹂名城法学四六巻一号二壬二頁以下参照︶、また、一九九八 年には親子関係に関する第一〇条第三項︵氏︶、第一九条︵血統︶、第二〇条︵血統の否認︶が改正され︵海老沢 美広﹁ドイツの新国際親子法﹂戸籍時報五〇二号二頁以下参照︶、そして、この度の改正である。もとより、同国国 際私法は、わが国際私法に比して実質的な次元における考慮がより多く払われているという意味において、より 進んだ内容を有するものであるというべきであると思われるが、それよりも高く評価すべき点は、その改正によ

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法 り積極的であり、その改正に恪かでない点である。わが国際私法においても、平成元年の改正の際に手が着けら れなかった条項については着実な改正のための提案がなされており︵例えば、国際私法立法研究会による立法案も その一つである。同研究会﹁契約、不法行為等の準拠法に関する法律試案︵一︶、︵二・完︶﹂民商法雑誌二二巻二号一 〇六頁、三号一三三頁参照︶、また、比較立法的研究が発表されている︵例えば、相続について、木棚照一﹃国際相続 法の研究﹄︵一九九〇年、有斐閣︶がある︶。一方、平成元年に改正された法例中の諸規定についても、その施行後 未だ十年ほどしか経過していないが、その間にも、例えば、第=二条第三項但書や第一六条但書におけるいわゆ る日本人条項のように、すでに批判に晒されている点は少なくない︵鳥居淳子﹁内外人の婚姻と離婚  いわゆる 日本人条項について  ﹂﹃講座現代家族法二巻﹄︵一九九一年、日本評論社︶三〇九頁以下等参照。また、より全般的 には、﹁︹座談会︺﹁法例﹂1現状と課題、将来への展望﹂ジュリスト一一四三号二八頁以下参照︶。しかし、それらに ついてさらなる改正のための作業がすでに用意されているという情報は全く聞かれない。抵触革命が叫ばれる時 代の中にあっても、わが国における国際私法の改正は至って緩慢である。ドイツ国際私法から学ぶべき重要な点 は、その内容もさることながら、その改正作業に対する取り組みの姿勢であるというべきであろう。  以下に掲げるのは、参考資料としての﹁契約外債務関係および物についての国際私法のための一九九九年五月 二一日法律﹂︵ドイッ連邦官報第一部一〇二六頁︶の試訳である。なお、独語正文は、毫嚢一。。Pω.鵠累に掲載 されている。 198

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︵参考資料︶ 契約外債務関係および物についての国際私法のための一九九九年五月二一日法律    契約外債務関係および物についての国際私法のための一九九九年五月國二日法律        ︵連邦官報第一部一〇二六頁︶    第一条民法施行法の改正  一九九八年一二月一九日法律︵連邦官報第一部三八三六頁︶第一条第五b号によって最終的に改正された一九 九四年九月二一日公布版における民法施行法︵連邦官報第一部二四九四頁、一九九七年第一部一〇六一頁︶第三八条 ないし第四六条は、次の通り作成された。

東洋法学

第三八条 不当利得  ω 利得がもたらされた給付を理由とする利得返還請求権は、その給付が関連している法律関係に適用される   べきである法に服する。  ω 保護された利益の侵害に因る利得を理由とする請求権は、その侵害が行なわれている国家の法に服する。  ⑥ その他の場合においては、不当利得による請求権は利得が生じている国家の法に服する。 第三九条 事務管理

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法  ω 他人の事務の管理に基づく法律上の請求権は、その事務が行なわれている国家の法に服する。  ω 他人の債務の弁済に基づく請求権は、その債務に適用されるべきである法に服する。 第四〇条 不法行為  ω 不法行為に因る請求権は賠償義務者が行動した国家の法に服する。被害者は、その法に代えて、結果が生   じている国家の法が適用されることを要求することができる。意思決定権は、第一審においてのみ、第一回   期日の終了か、書面による予審手続の終了までに行使されることができる。  ㈹ 賠償義務者および被害者が、損害賠償義務事故の発生当時、同一の国家にそれらの者の常居所を有したと   きは、その国家の法が適用されるべきものとする。会社、組合または法人に関しては、主たる管理が所在す   るか、または、営業所が関与しているときは、それが所在すると同一の場所が常居所となる。  ⑥ 他の国家の法に服する請求権は、それが次に掲げるような場合には行使されてはならない。   一 被害者の適切な補償に必要なよりもはるかに広く行なわれるとき   二 明らかに被害者の適切な補償とは別の目的に用いられるとき、または   三 ドイツ連邦にとって拘束力がある協定上の損害賠償法規と相容れないとき  ㈲ 不法行為に適用されるべき法、または、保険契約が服する法が定めるときは、被害者は賠償義務者の保険   業者に対してその請求権を直接に行使することができる。 第躍一条本質的により密接な関連性 200

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 ω 第三八条ないし第四〇条第二項に従って基準となる法とよりも、いずれかの国家の法と本質的により密接   な関連性が存在するときは、その法が適用されるべきものとする。  ω 本質的により密接な関連性は、とくに次に掲げる事由によって生じる。   一 債務関係と関連する当事者間の個々の法的関係または事実関係、または   二 第三八条第二項および第三項ならびに第三九条の場合においては、法的に重要な出来事の当時の同一国    における両当事者の常居所。但し、第四〇条第二項第二文は準用される。 第四二条 法選択  契約外債務関係を成立させている出来事の発生後、当事者はそれが服すべき法を選択することができる。第三 者の権利は侵されない。    第六節 物 権 法 第四三条 物に対する権利  ω 物に対する権利は物が所在する国家の法に服する。  ω 権利が基礎をおいている物が他のいずれかの国家に到達するときは、その権利は同国家の法秩序に反して   行使されてはならない。  ⑥ 内国に到達する物に対する権利が既に前もって取得されていないときは、内国におけるかような取得につ

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法   き、いずれかの外国における優位は内国におけるそれとして考慮されるべきものとする。 第四四条 不動産侵入  不動産に由来する侵害作用に基づく請求権については、第四〇条第一項に従って行なわれる。

第四五条輸送手段

 ω 航空機、船舶および軌条車両に対する権利は製造国の法に服する。製造国とは次に掲げる国家とする。   一 航空機の場合には、その所属国家   二 船舶の場合には、登録国、さもなければ、船籍港国または本籍地国   三 軌条車両の場合には、運行許可国  ω それらの輸送手段に対する法定担保物権の成立は、担保されるべき要求に適用されるべきである法に服す   る。多数の担保物権の順位については、第四三条第一項が適用される。 第四六条 本質的により密接な関連性  第四三条ないし第四五条に従って基準となる法とよりも、いずれかの国家の法と本質的により密接な関連性が 存在するときは、その法が適用されるべきものとする。    第二条 通信教育の参加者の保護のための法律の変更  一九九七年九月二一日法規命令︵連邦官報第一部⋮二九〇頁︶第二四条第五b号によって最終的に変更されて 202

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いる連邦法令集第三部分類番号第二二一 は廃止される。 1四号公布処理版中の通信教育の参加者の保護のための法律第一一条    第三条 民事訴訟法の変更  一九九八年一二月一九日法律︵連邦官報第一部三八三六頁︶第一条第四号によって最終的に変更されている連 邦法令集第三部分類番号第三一〇ー四号公布処理版中の民事訴訟法第六〇六a条第二項は、次のように表現され る。  ﹁⑭ 外国裁判の承認は、裁判した裁判所が帰属する国家が、夫婦がその常居所を有する国家であるときは、 第一項第一文第四号に反しない。外国裁判が夫婦が帰属する国家によって承認されるときは、裁判の承認は第一 項に反しない。﹂

東洋法学

   第四条 領域外におけるドイツ国民の被害の場合の法の適用に関する法規の廃止  連邦法令集第三部分類番号第四〇〇1一−一号公布処理版中の領域外におけるドイツ国民の被害の場合の法の 適用に関する法規は廃止される。 第五条 登録された船舶および船舶工作物に対する権利に関する法律の変更

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ドイツ国際私法における契約外債務および物権の準拠法  ⋮⋮により最終的に変更されている連邦法令集第三部分類番号第四〇三−四号公布処理版中の登録された船舶 および船舶工作物に対する権利に関する法律第一条第二項は廃止される。    第六条 発効  本法は一九九九年六月一日に発効する。 204

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