環境管理 と環境戦略
菅 家 正 瑞
Abs t r ac t
Mo de r nc o r po r a t i o n smus tha vea ne nv i r o nme nt a l l yo r i e nt e dma na g e ‑ me nts ys t e m.Be c a us ei ti sa no pe ns ys t e m t ha ta d a pt st oi t se n vi r o n・
me nt s .I fac o r po r a t i o ni suna bl et oa d a ptt oi t se n vi r o nme nt s ,i tc a nno t s ur vi vei ni t se n vi r o nme nt s( i . e. ,e c o no m i c ,s o c i a la ndna t ur a le nvi r o n‑
me nt s )・The r e f o r e,mo de r nc o r po r a t i o nsmus tbui l da ne n vi r o nme n t ma na ge me nts ys t e m.
Thi sa r t i c l ee xpl a i nswha te n vi r o n me ntma na ge me n ts ys t e m mo de r n c o r po r a t i o nsmus tha ve,a ndt r i e st obui l damo de lo fe n vi r onme nt ma na ge me nts ys t e mi nmo de r nc o r po r a t i o ns . Thee nv i r o nme ntma na ge 一 me n ts ys t e m mus tc o ve re ve r yf unc t i o no fc o r po r a t i o ns 'ma na ge me nt s , i . e. ,(i)ve r t i c a lf unc t i o nso fma na ge me nt( t o p,mi dd l ea ndl o we r ma na ge me nt s ) , (i i) ho r i z o nt a lf unc t i o nso fma na ge me nt( l i nea nd s t a f fma na ge me nt ) ,a nd ( i i i )pr o c e s so fma na ge me nt
(" Pl a n,doa nd s e ei t
!'')・I nt hes ys t e m o fe nvi r o nme n tma na ge me nt ,e n vi r o nme nt a l go a l s ,whi c ha r ede c i de dbyt opma na ge me nt ,wi l lbee nvi r o nme nt s t r a t e g ie s ,a ndt he nt he s epl a nne ds t r a t e gi e sa r eo pe r a t e dbyl i ne ma na ge me nt ,a ndf i na l l yc o n t r o l l e dbyt o p,mi ddl ea ndl o we rma na ge 一 me nto fl i nea nds t a f fo r ga ni z a t i o ns .
Ke ywor ds:Envi r o nme nt ,Ma na ge me nt ,St r a t e g y
1 序
われわれは先にシュテ‑ガ
‑ ( U.St e ge r )
が展開する環境管理論を検討す ることによって,われわれが試みている環境管理論の体系的構想 を構築する ための重要な認識を得 ることができた(1)。 しかし,彼の所論の検討は十分で はな くさらにその検討を進めることがわれわれの課題 として残 されていたの である。それは,環境 目標の設定 に続 く 「戦略の策定」
「戦略の執行」および 「戦略の統制」に関する彼の所論 を検討することである
( 2)
0本稿の課題は,先 に得 られた認識 に基づいて環境保護 に関す る 「戦略」
( St r a t e g ie )
「執行」( Ope r a t i o n)
および 「統制」( Co nt r o l l i hg)
に関するシュテ‑ガ‑の所論を取 り上げることによってその環境管理論の全体構想を明らかに し,その検討か ら得 られた認識をわれわれが試みている環境管理論の体系的 構築 に取 り入れることである
( 3 )
0( 1 )
ウル リッヒの所論についてわれわれが先 に検討 した ものは,次の拙論である。拙稿
,
「企業管理 と環境 目標」,
『経営 と経済』第81
巻第3
号,長崎大学経済学会,辛 成1 3
年1 2
月,8 3
頁以下。( 2 )
本稿 で検討する環境管理 に関す るシ ュテ‑ガ‑の所論 は,彼の次の著書で述べ られ てい るものである。Ul r i c hSt e ge r ,Umu ) e l t ma n a ge me nt ‑ E
rf a hr un ge nundI ns t r u me nt ee i ne ru mwe l t o r i e n‑
t i e r t e nUnt e me hme n s s t y l at e gi e ‑ ,2 . Auf
l. ,Wi e s ba de n 1 9 9 3.
本書には次の部分訳書がある。
ウル リッヒ ・ステ イ‑ガー (飯 田 雅美 訳)
,
『企業の環境戦略』,日経BP
社,1 9 9 7
年。なお,シュテ‑ガ‑の所論 については,次 も参照 されたい。
拙稿
,
「企業環境 と企業行動 ‑シ ュテ‑ガ‑の所論を中心 として‑
」,
『経営 と経済』第
8 0
巻第3
号,長崎大学経済学会,平成1 2
年,8 3
頁以下。( 3 )
われわれが試みている環境管理論の体系化に関 しては,次を参照 されたい。拙稿
,
「環境管理の成立」,
『経営 と経済』第7 7
巻第3
号,長崎大学経済学会,平成9
年1 2
月,1 4 5
頁以下。2
環境戦略の策定シ ュテ‑ガ‑は,環境保護を企業 目標 として形成 しそれを企業 目標の中に 統合す る問題 を 「戦略的企業計画
」( S t r a t e gi s c h eUn t e r ne h me ns pl a n u n g)
と い う構想の中で展開 し,環境保護 に関する具体的な行動計画の策定 とその実 行 を この ような管理職能 の枠組 み に組 み込 もう としてい る もの と解 され る(1)。そ うだ とすれば,次に検討 しなければな らない問題は,①形成 された 環境保護 目標 を達成す るための戦略策定,(参策定 された環境戦略を具体的に 執行す る執行体制の充実,③環境戦略 とその執行 を監視する戦略的統制のあり方,である。
以下 では,まず戦略策定 に関す るシ ュテ‑ガ‑の見解 を検討 す る。彼 は
「規範戦略
」( No r ms t r a t e g i e )
とい う構想 によりなが ら戦略形成の基準 につ いて論 じ,次いでその基準によって三 つの環境戦略を区分 し分析 した うえで, 個 々の企業の状況に即 した実践的な戦略構想を提示する。(1) 規範 目標 と規範戦略
①環境 目標 と環境戦略
( 2)
シ ュテ‑ガ‑は,環境管理を組織学習の一つ と捉 え環境志向的管理 に関 し て三段階か らなる 「段階モデル
」( St uf e nmo de l l e )
を示 している。第一段階 は法律遵守であ り,第二段階は市場 ・革新機会の充分な利用であ り,第三段 階は倫理的に動機づけ られた最高の段階である。 そこで,環境保護が規範的 倫理 に基づ く規範的 目標設定 として形成 されるな らば,その実現のための環 境志向の戦略 もまた規範的な もの,すなわち 「規範戦略」( No r ms t r a t e gi e )
とな らざるをえない。シ ュテーガ‑は,この規範戦略の構想の基礎 にポー ター
( Mi c ha e lE.Po r t e r )
によって展開 された競争優位の戦略 に関す る認識 を置 き( 3 )
, 目標 と戦略の関連に関する問題か ら考察す る。シ ュテ‑ガ一によれば,戦略は 目標の束 と文脈要因か ら状況的 に導 出され
形成 されるが,「戦略形成の課題は, 目標の対立を最小化 しすべての 目標を 適切に達成 させ るように配慮することである
( 4) 。 」
この ような規範戦略の構 想は企業の環境保護の問題にも応用 されうる。彼 によれば,規範戦略では,①環境戦略の規範的文脈要因
( nor mat i ve Ko nt e xt f a kt o r e n)
と状況的文脈要因( s i t ua t i veKo nt e xt f a kt o r e n)
とを明確に区別 し,②企業 目標 と戦略の 「発展能力
」( Ent wi c kl ungs f 且 hi gke i t )
の側面に 注意を払わなければな らない。規範 による戦略が優れてお り状況 による戦略 は劣 っているというわけではないか ら,企業の現実を見据 えた合理的な戦略 を選択することが重要であ り,そのためには,規範的要田 と状況的要因 とを 明確に区別 した考慮が必要なのである。また,環境保護 目標 も戦略 も突発的 に発展するのではな く,それは,「多層的で しば しば不連続で矛盾する過程 として,企業における前進する力 と遅 らせる力の間の対立 として理解 される 必要がある( 5 ) 」
のである。②環境戦略の策定
( 6 )
規範的意思決定によって環境保護を企業戦略に統合する場合, どのような 規範戦略が描 き出されるのであろうか。シュテ‑ガ‑は,環境志向的な規範 戦略を 「環境ポー トフ ォリオ
」( Umwe l t ‑ Po r t f o l i o )
によりなが ら体系化 しこ環境保護 に よる 市場機会
図
1
:市場機会 と リスクの組み合わせこに三 つの戦略 を導 出す る (図
1
(7)参照)。 このポー トフ ォリオは,縦軸 に「環境保護 による市場機会
( Ma r kt c ha ns e n)
」とい う外部の未来要因を,樵 軸 に 「環境保護 におけ る リスク発生( Ri s i ko e xpo ni e r un g) 」
とい う内部の状 況要因を取 っている。図
1
で示 されるように,市場機会 とリスクには四つの組み合わせがあるが, 市場機会 も リスクも小 さい企業では環境保護 は戦略的問題 にはな らないから,検討の価値 がある三つの組み合わせについて戦略的意図を決めるおおま かな位置づけを した後で,企業の競争力に及ぼす環境保護の作用 を 「環境保 護 ・競争マ トリックス
」( Umwe l t s c hut z ‑ We t t be we r bs ‑ Ma t r i x)
(表1 ( 8 ) )
に よって検討す る.そ こでは,ポーターのい う,(ヨコス トリーダー戦略,(参差 別化戦略,③ニ ッチ戦略, とい う三つの戦略に対 して,環境保護 に よって も た らされる,① コス ト上昇,②製品の使用特性の減少,③製品の追加効用,④革新, とい う四つの作用がいかな る関連 をもつかが分析 され る。環境保護 活動は,作用は同 じで も競争戦略には異なる効果 をもた らすが,追加効用は 差別化戦略 に,革新はすべての戦略 にプラスの作用 をもた らす ことがわかる。
表
1
:環境保護 ・競争マ トリックス 環境保護の作用競争戦略 コスト上昇 使用特性の減少 追加効用 革 新
コ ス ト リー ダ ー
差 別 化
ニ ッ チ 戦 略 :
a)
コ ス ト 志 向b)
差 別 化0 0 +
0
+ +0
0 +
0
+ +‑ マイナスの関連,
0
中立的な関連,+ プラスの関連しか しこの分析は不完全であるので,次に 「市場 ・環境 ・反応マ トリック ス
」( Ma r kt ‑ Umwe l t ‑ Re a kt i o ns ‑ Ma t r i x)
(表2 ( 9 ) )によって市場反応が取 り
入れ られる。そ こでは,環境保護 に対する市場の敏感 さの違 いによって,上 述の四つの環境保護活動が もた らす結果 に対応 していかなる市場反応が生ず るのかが分析 され る。市場の敏感 さに応 じて市場反応は異なるが,敏感な市 場ではコス トリーダー も環境保護活動 を迫 られるし,敏感でない市場では革 新の優位性 も確実 ではない。 しか し, これ らの分析 か ら,「環境保護戦略は それが革新 を引 き起 こしあるいは追加効用 をもた らす ところで最 も効果があ る
( 1 0 ) 」
ことをシ ュテ‑ガ‑は強調する。表
2
:市場 ・環境 ・反応マ トリックス敏 感
+/0 + +
潜 在 的 敏 感 9
9 +
非 敏 感
o
+ プラスの市場反応
, 0
中立的な市場反応, ‑ マイナスの市場反応 ,? 不確実な市場反応
( 2 )
環境戦略の類型シ ュテ‑ガ‑は,環境保護戦略 と企業行動 に関 して以上の ような一般的考 察を行 った後 に,① 「リスク志向の戦略
」( r i s i koo r i e nt i e r t eSt r at e gi e n)
,②「機会志向の戦略
」( c ha ns e no r i e nt i e r t eSt r a t e gi e n)
,③ 「草新志 向の戦略」( i nno va t i o ns or i e nt i e r t eSt r a t e gi e n)
∴ とい う具体的 な三 つの環境戦略を区別 し検討す るが,それ らの概略は以下の ようである。(ヨリスク志向の戦略 (ll)
シ ュテ‑ガ一によれば,市場機会が少な くリスク発生が中位以上の領域で は リスク志向の戦略 が用い られ リスク管理
( Ri s i ko‑ Ma na ge me nt )
が環境 保護の分野で も積極的に利用 される。 リスク管理 は計画の実現を妨害する潜在的撹乱要因を認識 ・判断 し,組織的に除去することであるか ら, リスク克 服の戦略が意味をもつ高い 「安全水準
」( Si c he r he i t s ni ve a u)
を設定する必要 がある。 しかし,それが高すぎると企業の機会が見逃されて しまうことも注 意 されなければな らない。環境保護で問題 となるのは,技術 リスク,市場 リスクそ して行政的反応の確認である。 これ らの潜在的撹乱要因は,意識的な リスク管理 によって初めて確認 される場合が多い。 リスクが確認 されるとリ スク克服戦略が環境保護においても用い られる。
彼によれば, リスク志向戦略の核心は技術である。すなわち,この戦略は 高いコス トを伴 う技術的な解決策をもた らす場合が多 く,コス トの上昇は生 産方式の革新や代替製品の導入が利益をもた らす ようにな り,環境に負担を 与える製品や生産方式が排除される。そこで革新的な競争者が リスク志向戦 略を取 る企業を攻撃することが考え られる。環境保護要求の変化は技術的変 化あるいは代替製品の市場導入を早めるから, この戦略は リス トラクチ ュア リング
( Ums t r ukt ur i e r ung)
に必要 な時間を稼 ぐだけにすぎない, と彼は評 価する。 この戦略の代替案は,追加効用をもつ製品による環境保護 コス トの 負担,あるいは革新 による環境 リスクの低下である。②機会志向の戦略
( 1 2 )
シ ュテ‑ガ一によれば,機会志向の戦略が取 られるのは,環境保護の市場 機会が中位以上であ りリスク発生が中位までの領域である。 ここでは市場機 会が高いか ら中心的問題はその利用である。それは,従来の製品に 「環境 に 優 しい
」( Umwe l t f r e undl i c hke i t )
という規準が加え られた新製品によって, 早めに市場 ・製品標準が変化するという市場機会である。今 日の市場条件で 決定的利潤を得 られるのは革新者のみであるか ら,戦略的に重要な要因は時 間である。環境 に敏感な市場を活用するためには 「効用革新
」( Nut z e ni nno va t i o n)
が, すなわち従来の使用特性に加えて環境に優 しい とい う規準がもた らす新たな 効用を作 り出すことが重要である。 ここでは製品 ・コミュニケーシ ョン戦略として製品の生態的次元を差別形成要因 として強化 し強調 しなければな らな い。企業はコミュニケーシ ョン戦略で買い手に製品のプラスの変更を伝えよ うとし,始めは環境に優 しい という追加効用に大 きな価値を置 く 「使用革新 者
」( Anwe nd ungs Jnno va t o r )
が探 し求め られる。しかし,これは伝統的マー ケテ ィングでは困難であ り,メデアの記事やテス ト,環境ラベルあるいはイ メージ宣伝が製品宣伝 よりも効果がある。市場への製品導入の成功が期待さ れるのは,他の標準は同じで も環境に優 しい と消費者が捉 える場合だけである。
③草新志向の戦略
( 1 3)
草新志向の戦略が取 られるのは,環境保護での市場機会が高 く同時にリス ク発生 も高い という領域である。一方では環境に優 しい製品 と生産方式によ って市場で成功する機会があ り,他方では製品 と生産がもた らす環境負荷が 市場需要 にそ ぐわない というリスクがある場合がそ うである。シ ュテ‑ガ一 によれば,このような企業は古典的な 目標対立にあ り,この状況は最 も困難 ではあるが魅力的な管理課題 となるのである。
ここで重要なのは革新であ り,競争戦略が何であれ市場地位を改善させる 唯一の可能性は革新である. しかし同時に,革新は リスクがないわけではな いし可能性が沢山あるわけでもないか ら,革新は最 も困難である という可能 性 もある。 したがって,彼によれば草新戦略は失敗 よりも機会を知覚 しない
リスクの方が大 きい と考える管理者が取 る戦略である。
環境保護 における革新で重要なのは 「環境 ・資源を節約する
」( umwe l t ‑ undr e s s o ur c e ns pa r e nd)
技術的進歩である。環境保護 という目標 は相対的なものであるか ら,その達成に とって重要なのは革新そのものではな く部分技 術を変えてい くことである.「終わった解決策
」( f e r t i geL6 s ung)
はほ とんど ないか ら,草新管理の最 も重要な課題は 「求め られた技術的解決策を確認 し 新 しい製品あるいは方式へ と最適化すること( 1 4) 」
である。環境 リスクを低下 させる技術革新的解決法が発見されれば,新製品や新市
場を作 り出して環境志向の成功力が構築される。その場合,初期利潤の獲得 や製品の差別化 といった 「先駆者的地位
」( Vo r r e i t e r ‑ Po s i t i o n)
の機会 (長所)と,パ イオニアコス トや高い転換 コス トな どの リスクとが比較考量 されなけ ればな らない。長所 とリスクが比較 されると,成功力の期間や代替的技術な どの草新戦略に必要な条件が導 き出され それ らを満たす草新戦略の構築が 探求される。 このような過程は複雑で多 くの影響要因を前 もって正確に評価 で きないので,「なぜ草新戦略が管理 に最高の専門性を要求するのか とい う だけでな くかな りの リスクを伴 っているのか
( 1 5) 」
が分かる。 したがって, 彼 によれば企業は革新 を決心する前 に何 らかの苦悩の圧力( Le i de ns ‑ Dr uc k)
が必要なのである。なお,草新戦略で注意 しなければな らないことは新製品の開発を中止 して しまう「革新の
昆 」( I nno va t i o ns f a l l e )
にはまちない努力をすることである( 1 6)
0④規範戦略の進化(17)
シ ュテ‑ガ‑は環境戦略 を進化論的に解釈 し,規範戦略は 「進化能力」
( Evo l ut i o ns f a hi gke i t )
を持ちこれ ら三つの環境戦略の間には進化の関連があ ると述べる。企業の環境活動の基礎をはじめて作 るのは, リスクの確認, リスクの分析 とリスク管理の戦略であるか ら,第二段階で取 られる戦略は リスク志向の戦 略である。 この戦略 による学習過程 によっては じめて機会志向の戦略 とい う 第二段階へ進み,そ こでは消費者行動の変化による新 しい市場セグメン トの 確認,新たな製品へのヒン ト,環境規準志向の製品 ・生産計画の近代化が も た らされる。環境志向の市場戦略が支配的にな りもう一歩の成功が動機づけ られれば,草新志向の戦略 という第三段階に進む。 リスクが大 きい革新の前 提条件は リスク管理の存在であるか ら, リスク志向の戦略は他の二つの戦略 の 「基礎戦略
」( Bas i s s t r a t e g ie )
である.規範戦略は悪意申ではな く戦略的 出発状況に応 じて選択 されるのであって,その限 りでは戦略は環境保護 にお ける企業の進化を反映 したものなのである。以上の ように,シュテ‑ガ‑はポー トフ ォリオ ・アプローチによって規範 戦略の構想を説明すると同時に,これ らの戦略はその限界を考慮 しなければ な らない として も,問題な く環境保護戦略\として戦略的企業計画の手段 とし て用い られると評価する。
しかし,問題 として残 るのは,(∋環境保護に関する企業の規範的部分が こ の進化過程 には取 り入れ られてお らず,また,②企業の規範的部分 と三つの 戦略 との関連に関する考察が抜け落ちていることである。環境戦略の動機は, 既に市場 に内部化 されている規制,需要変化,競争のみな らず,企業の長期 的存続を確保するための倫理的意思決定をも含む ものである。 ところが,シ ュテ‑ガ一において考察の対象 となっているのは現在あるいは規範 と解 され る将来の市場要因 としての環境保護のみである。 しかし,企業の環境は決 し て市場だけではな く多 くの社会的領域 をも含んだ ものであ り,そ こに企業の 長期的存続 と発展を左右するであろう規範の存在可能性は否定で きないし, そ うであるな らばそれ らの要因を戦略の中に取 り入れなければな らないであ ろう。
(3) 戦略的企業計画の手段
シ ュテ‑ガ‑は戦略的企業計画における情報システムの重要性を指摘 し, 環境情報の特性に応 じた 「戦略的 レーダー
」( s t r a t e g i s c h e rRa d a r )
を構築す る必要性を強調する。「したがって,企業計画の質 に とって決定的なのは, 市場機会 とリスクの分野で迫 り来 る変化を可能な限 り早期に把握 し,体系的 に選別 し,それ故 に時機 をえた行動 を可能 にす る企業情報 システムであ る( 1 8) 。 」
しかし,彼 によれば伝統的情報システムや計算制度では環境情報の 特性に対応できない。環境情報は非貨幣的で数量化 も困難であると同時に, それを見落 とす と企業に重大な結果を引 き起 こしかねない 「弱いシグナル」( s c h wa c h eSi g n a l e )
であるか らである。情報の発生源 も経済的領域のみな ら ず,政治的論議や科学的出版物な ど多彩で,その作用 もメデアに影響されて 国や消費者の行動が変化 し経済的に重要 になるが,その段階に至 ってから行われる対応ではもう遅すぎるのである。
彼によれば,伝統的計算制度 もその構造か ら必要な情報を提供で きない。
企業内部の過去業務 を価格あるいは数量の値で把握 し測定するのは収益 目標 のみであ り,市場 目標や給付 目標は考慮 しないか らである。そ こで,高い予 測的情報内容を保証 し強 く外部に志向する情報システム,環境変化を早期に 捉 える 「戦略的レーダー」が必要になる。 これは,企業に とって重要である にもかかわ らず弱いシグナルを把握 し凝縮で きなければな らない。傾向の変 化は突然起 きるのでな く必ずその前兆が見 られる と考 えられる。時間は重大 なパラメーターであるから,その早期の把握は企業に法外な優位をもた らす だ ろ う
( 1 9 ) 0
この ような要請 に応 えるレーダーの役割 を担 うもの としてシ ュテ‑ガ‑
は,①環境シナ リオ分析
( Umve l t ‑ Sz e na r i o‑ Anal ys e )
,② クロスインパ ク ト 分析 (c r o s s ‑ i mpac t ‑ Ana l ys e )
,③拡散曲線( Di f f us i ons kur ve )
, とい う戦略的 計画のための三つの情報手段を例示 しその有用性 について説明 している( 20)0
( 1 )
シ ュテ‑ガーが展開する 「戦略的企業計画」については,次を参照 されたい。St e ge r ,Umwe l t man a ge me nt ,S. 1 8 5 ‑1 9 3.
拙稿,「企業管理 と環境 目標」
,1 7 5
頁以下。( 2 ) Vg l . ,St e ge r ,α. α.
0.,S. 2 03 ‑ 2 0 5.
( 3 )
cf
.,Mi c ha e l
E.Por t e r ,Co mpe t i t i v eSt 7 1 at e g y: Te c hni que sf o rAna l yz i ngI ndus t r i e sa nd Compe t i t or s ,Ne w Yo r k1 9 8 0,p. 3 4 f f .
(土岐 ・中辻 ・服部 訳,『新訂 競争の戦略』,ダイヤモン ド社,平成
7
年,5 5
頁以下参照)0( 4 ) St e ge r ,α. α. 0. ,S. 3 6 9.
( 5 ) St e ge r ,α. α. 0. ,S. 3 6 9.
( 6 ) Vg l . ,St e ge r ,α. α.
0.,S. 2 06 ‑ 2 27.
( 7 ) St e ge r ,α. α. 0. ,S. 2 0 7.
( 8 ) St e ge r , α . α . 0. ,S. 2 0 8.
( 9 ) St e ge r ,a. a. 0. ,S. 21 0.
( 1 0 ) St e ge r ,a. a. 0. ,S. 21 0.
( l B V g l . ,St e ge r ,a. a. 0. ,S. 21 1 ‑ 21 6.
(1分
Ⅴg
l.,St e ge r , a. a. 0. ,S. 21 6 ‑ 21 8.
8頚
Vg
l.,St e ge r , a. a . 0. ,S. 21 8 ‑ 2 2 5.
掴 St e ge r , 〟. α. 0
‥S. 2 2 0.
(1頚
St e ge r , a. a. 0. ,S. 2 2 5.
( 1 6 )
革新の民 とは,技術的に革新に成功 して もかな り高い経済的 リスクに曝 される恐れ か ら,草新戦略を中止 して しまうことである。環境に優 しい製品は生産量が少ないの で例外な くマイナスに作用するか ら,戦略的問題は価格低下による数量の増大にあ り, これは内部補助金 によるコス ト低下や特殊 なマーケティング努力で可能であ り,他方 では他企業 との協力や提携 という外部的解決策 も考えられる。Vg
l.,S t e g e r , α. α. 0. ,S. 2 2 5 ‑ 2 2 7.
(1
や Vg
l.,St e ge r , a. a. 0. ,S. 2 2 7 ‑ 2 2 9.
( 1 8 )St e ge r , a. a. 0. ,S. 2 3 7.
( 1 9 ) Vg
l.,St e ge r , a. a. 0. ,S. 2 3 9 ‑ 2 4 0・
¢o) 「環境シナ リオ分析」は代替的未来 を計画 しその経路 を示 した ものであ り,環境戦 略のように不確実性の下での意思決定には適切な方法である。「クロスインパク ト分析」
は例 えばブレーンス トー ミングによって弱いシグナルを確認 しふるいにかける手法 で あ り,いろいろな分野の協働者が持 っているノウハウを活用することがで きる。「拡散 曲線」は環境保護 における世論動向を予測する手法であ り,企業は
S
字型のように特 徴的経過をたどる環境問題の曲線上の どこで行動を起 こすべきかを決定する。Vg
l.,St e ge r , α. α. 0. ,S. 2 4ト2 5 2.
3 環境戦略の執行
戦略的企業計画で環境戦略が策定 されたな らばそれを具体的に実行 しなけ ればな らず,そのためには環境管理の思考が組み込 まれ,環境保護 に志向す るように充実された執行職能
( Ope r a t i o n s f un kt i o n )
が必要である。そこで, シュテ‑ガ‑は, (1)生産, ( 2)
マーケテ イング, ( 3)
研究 ・開発, ( 4)
組織,( 5 )
人事, とい う業務過程( Ge s c h a f t s pr o z e s s e )
を環境保護 という観点か らそ のあ り方 を考察する。「
『横断職分(1)』( Que r s c hn i t t s a u f g a b e )
としての環境保 護は企業 におけるあ らゆ る職能に関連するので,環境保護が効果的に行われ るためにはそれが業務過程の 『自明の』部分 として個 々の職能領域 に統合 されなければな らないか らである
( 2 ) 。 」
以下では この問題 に関する彼の主張を 概略的に述べて検討する。(1) 生産に関連する環境保護
( 3 )
環境保護 を考察する場合,量的にも質的にも最 も重要で大 きな環境問題を 引 き起 こす企業活動領域は生産活動であるか ら,生産職能 との関連は最 も重 要な問題である。
シ ュテ‑ガ一によれば,計算制度 ,特 に 「原価計算
」( Kos t enr ec hnung)
が環境管理 に とって有用な手段 となる。環境保護 コス トを原因帰属計算の原 則にしたがって原価負担者に適切にかつ透明に計算する生態的原価計算が行 われなければな らない。「調達
」( Ei nka uf )
は企業 における予防的で,廃棄物回避的な行動のキー 的役割を演ずる。環境志向的調達戦略では,市場機会 と原価節約可能性を生 態面か ら評価 し実現することが重要で,供給 ・原料 リスクが調達計画か ら排 除されなければな らない。「製造
」( pr o dukt i o n)
はすべて環境に作用するか ら,環境保護 目標は常に 多かれ少なかれ,相対的なものである。いかなる場合でも必要なのは,危険 物質の排出や投入だけでな く,廃棄物の処理 と生産設備の生態的作用につい ての入念な分析である。戦略的に重要なのは投資 とその優先順位の設定であ る。「製造廃棄物
」( Abf a l l wi r t s c ha f t )
は リサイクル されて再利用 されるべ き である。 しかし,環境保護設備で発生する廃棄物 と運送 ・製品包装廃棄物の 処理は困難な問題である。「品質管理
」( Qua l i t a t s s i c he r ung)
は製造 に限定 されるのではな く,企業 全体の品質管理活動 としてあ らゆる企業領域を含んだ企業管理の義務 として 理解 される。環境調和 という追加的品質は従来の品質 と共通する内容であ り, 環境保護については品質が数値化 されない という困難性 と問題を持つが,L晶質 と環境保護の結合は強 く追求されるべきである。
( 2 )
環境保護のマーケテ ィング ( Mar k e t i n g I( 4 )
シ ュテ‑ガ一によれば,環境保護を市場要因 として実現するためには効果 的なマーケティング戦略が必要 になる。 ここで彼は,環境保護 に関する個人 的追加効用あるいは減少 した リスクを消費者に明らかにするために,マーケ ティングの手段がどのように用い られるべきかを論 じている。企業 にとって, マーケテ ィングは環境保護 を市場機会 として転換で きる職能領域なのであ
る。
シ ュテ‑ガ‑は,マーケティング ミックスの伝統的な手段を修正 ・補強す ることで,生態志向のマーケティング構想が市場で成功裏に実施することが で きるとして,製品政策,流通政策, コミュニケーシ ョン政策,価格政策に ついてその可能性に言及 している。そ して,マーケティング手段の選択 と形 成 にあたっては決 して孤立的に行 ってはな らず,企業を環境保護の観点から 措 き,個別的方策を統合 しシナジーを作 る全体構想を形成することが重要で あ り,マーケティングミックスは全体戦略の一部 として位置づけ られてはじ めて成果があることを強調 している。
(3)環境保護志向の研究 ・革新管理
( F o r s c h u n g s ‑ u n dl n n o v a t i o n s ma n a g e me n t ) ( 5 )
シ ュテ‑ガ一に とって技術は環境保護において決定的な役割を果たす要田 である
。「
『持続的発展』の小道は基本的に異なる技術に基づ く生産 ・消費過 程によってしか達成 されない( 6 ) 」
か らである。環境負荷を低減する技術には 様 々な変形があるが,シュテ‑ガ‑は,事後的に環境負荷を減少 させる追加 的技術( a ddi t i veTe c hno l o gi e )
ではな く,′生産方式 自体に始めか ら減少技術 を組み込んだ 「統合 された技術」( i nt e gr i e r t eTe c hno l o gi e )
の重要性を指摘 する。 しかしコス トと既存施設の埋没原価化の リスクからこの方式はなかな か普及 しない。 しかし,強まる環境問題は政治には統合された技術への刺激を,経営経済学 にはそれを もた らす構想の展開を迫 っている として,シ ュテ‑
ガ‑は 「環境志向の研究開発」と「草新管理」について以下の ように説明する。
彼は,統合 された技術 を展開す るためには 「科学 に基づ くアプ ローチ」
( s c i e nc e ‑ bas e d‑ Ans a t z )
よりも「標的 に基づ く研究開発」( t a r ge t ‑ ba s e d‑ F&E
)」 が適切であ るということか ら出発 し,環境志向の研究開発 についてい くつか の側面 について考察す る。標的ベースの研究開発過程の管理 には最高の専門 性が必要であ り,特 に重要なのは研究開発が戦略的 目標 に結合 されることに よる他の企業内領域か らの支援であ る。 さもなければ,研究開発 は孤立化 し 環境問題は解決 されない。革新を もた らす個 々の要因が調査研究 されている が,革新の全過程は,製品革新,過程革新,社会的革新の共同作用であるこ とが忘れ られてはな らない。研究開発か ら実施への転換は,その内容が新規 性を持つ技術のために特別 に慎重な転換計画が必要である。研究開発か ら転 換への移行 が難 しいのは,両者の指導理念が異なるか らである。彼は,現在 の市場 に新製品を導入する場合 には 「プロジ ェク ト組織」( pr o j e kt o r ga ni s a ‑ t i on)
を,新 しい市場 を創 出す る場合 には 「ニ ューベンチ ャー方式」( ne w
‑ve nt ur e ‑ Ans a t z )
を推奨する。( 4 )
環境保護 と組織( or gani s a t i on) ( 7 )
企業組織 は環境保護 について学習 しなければな らない とシ ュテ‑ガ‑は主 張する。なぜな らば,学習 と日常業務は対立 し,意思決定は未来の先取 りよ
りも過去の解釈によ り行われることが多いが,「戦略形成過程は ‑ ・先馬区者 的な学習過程の意識的探求
( 8) 」
であ り,「環境保護は組織 によって促進 され た り妨害 された りする学習 ・目標拡大過程の一部( 9 ) 」
であるか らであ る。分権組織 は環境保護 をあ らゆる領域で管理する構造的優位性 を持つ。環境 保護は組織への新 しい要請であるか ら, これは トップマネジメン トとしての
「ボスの問題
」( Che f s a c he )
である。 トップマネジメン トが環境保護問題担 当者を支援することは,環境保護の組織的手段の一つであ り, トップによる率先垂範が必要なのである。
環境保護に関 しては,法律によって環境規定の遵守に責任ある企業管理成 負,専門的職員あるいは設備管理者が規定されているか ら,環境保護の責任 か ら企業管理が逃れることはで きない。環境保護は企業のあ らゆ る職能を包 括する 「横断職分」であるか ら,環境保護部門のような追加的職能部門への 集中ではな く統合された組織形態が適切であるム
法的な規定があっても固有の意味での 「環境保護責任者
」( Umwe l t s c h u t z ‑ be a u f t r a g t e )
は存在 しないが,実践では環境保護責任者の概念が確立 している。その職分は法的に規定されているが,それは環境保護の高ま りとともに 以前の影のような存在か ら,現在はその地位が多 くの企業で立派 に守 られる ようにな り,法的規定を超 えた職分 も委ね られ られている
。
しか しその重要 性にもかかわ らず,その仕事は相変わ らず設備に関連 した技術的環境保護に すぎない として,シ ュテ‑ガ‑はその職分を経営的全体責任が生ずるように 拡大することを提案する。 しかしこれは,個 々の企業の個別的与件 と環境保 護における全体組織か らしか決定で きない問題でもある。( 5 )
環境管理と人事制度( pe r s on al we s e n) ( 1 0 )
シュテ‑ガ一によれば,人事制度は環境保護に関連 しない と考 えられてき た し,実践で も人事制度への環境保護の統合はあま り進んでいない。「しか し,実際はここで環境保護の効率に とって長期的に決定的な前提条件が作 ら れる(ll
) 。
」そこで彼は,環境保護 と人事制度に関 して,特に 「人材の選択 と 開発」「動機づけ」「労使関係」について考察 している。「人材の選択 と開発」については,高い環境保護動機を持 った人材が不足 しているということよりも,マイナスの環境 イメージを持たれた企業での採 用が問題 になる。意志だけでは環境保護はできないから,環境保護における 特殊な鍵 となる能力を持 った人材が必要である。問題解決能力,コミュニケー シ ョン能力,情報収集能力,生態的 ・社会的な環境 における企業の全体 とし
ての理解力がそれである。 これ らの能力を開発するためには企業における再 教育が必要である。人材開発で重要な ことは専門的な知識の伝達だけでな く 環境志向の行動であ り, したがって,人事政策は行動の能力を開発するだけ でな く能力を投入する用意をも促進 しなければな らない。
「動機づけ」 と 「労使関係」において も環境保護は重視されなければな ら ない。注意すべ き要因は若者の 「価値変化
」
や 「経常協議会」( Be t r i e bs r a t )
が環境保護で果たしうる役割である。以上の ように,シ ュテ‑ガ‑は環境戦略の執行 に関 してそれを 「調達」
「製造」「販売」 とい う生産の過程的職能,いわゆる企業職能の第一次的水 平分化 に対応 させて論 じていると解 される。以上の彼の所論 における問題点 を環境管理の体系を確立するという観点か ら見れば,①調達 に関 しては資本 の調達である 「財務
」( Fi na nz i e r ung)
に触れていないが,いわゆる 「エコフ ァン ド」( e c o f und)
や 「社会的責任投資」( s o c i a l l yr e s po ns i bl ei nve P t me nt )
な どが論議されているように財務問題の考察は無視で きないこと,② 「研究 ・ 開発」 と 「組織」は環境の変化が 目まぐるしい現代にあっては確かに重要な 領域であるが,これ らは企業職能の第二次的水平分化 といわれる 「促進職能」に関わる環境問題 として認識する必要があること
( 1 2)
,③ 「労使関係」 にお ける環境保護の問題は,後述するように生産過程の合理化を課題 とする 「生 産管理」における環境問題 としてではな く,生産過程の中で疎外 される労働 者の人間性の回復 とその増大を課題 とする狭義の労務管理における環境管理 の問題 として取 り扱われるべきであること( 1 3)
,な どが指摘 されるであろう。(1) シ ュテ‑ガ‑のい う環境保護が持つ 「横断職分」 とは,あ らゆる企業活動 と領域 に 環境保護 という統一的課題を浸透 させ,その観点か ら企業活動を統合 し評価すること
を課題 とするもの と解 される。
( 2 ) St e g e r ,Umu ' e l t ma n a g e me nt ,S̀ . 2 8 7.
( 3 ) Vg
l‥ S t e g e r , α. α. 0. ,S. 2 8 9 ‑ 3 0 3.
( 4 ) Vg
l.,St e g e r , α. α. 0. ,S. 3 0 5 ‑ 3 1 2.
( 5 ) Vg l ‥ St e ge r ,α. α. 0
‥S. 3 2 5 ‑ 3 3 4.
( 6 ) St e ge r , α. α. 0. ,S. 31 5.
( 7 ) Vg l ‥ St e ge r , α. α. 0 り S. 3 3 7 ‑ 3 4 7・
( 8 ) St e ge r ,α . α. 0. ,S. 3 3 9.
( 9 ) St e ge r , α. α. 0
‥S. 3 3 9.
(1
0 ) Vg l. ,St e ge r , a. a. 0. ,S. 3 4 9 1 3 5 8.
( 1 9 St e ge r , a. a. 0. ,S. 3 4 9.
( 1 分
企業職能の第一次的 ・第二次的水平分化あるいは執行 (過程的)職能 ・促進職能 に ついては,次を参照 されたい。藻利重隆
,
『経営管理総論 (第二新訂版)』,第7
章 経営管理 と管理事務,3 5 3
頁以下。(13) 労務管理 (狭義)における環境管理の問題については,次を参照 されたい.
拙稿
,
「環境管理 と企業体制」,『経営 と経済』第8 3
巻第2
号,長崎大学経済学会,平 成1 5
年9
月,1 6 9
頁以下。4 環境戦略 と戦略的統制
マネジメン トサ イクルの観点か ら環境管理を考察するな らば,「計画」に 結びつ く「統制」に関する問題を検討 しなければな らないことは明白である。
シュテ‑ガ‑はこれを 「戦略的統制
」( s t r a t e g i s c h e sCo n t r o l l i n g )
という問題 として検討 している。(1)戦略的統制 と リスク管理
( Ri s k ‑ Ma n a ge me n t ) ( 1 )
シュテ‑ガ一によれば, リスク管理は統制に含め られ,両者は戦略的計画 を補 うという重要な役割を持つ。戦略的統制の核心は,統制を過去志向から 解放 し,戦略的計画および潜在的な機会 とリスクをチ ェックすることである。
そのために,戦略的計画に,過去の成果 と経験を戦略的計画過程 に取 り入れ る 「フィー ドバ ック方式
」( f e e d‑ ba c k‑ V
er
fa
hr e
n)
と,
新 しい情報 を考慮する「フィー ドフ ォワー ド方式
」( f e e d‑ f o r wa r d ‑ Ve r f a hr e n)
とい う二重の 「帰還 環状」(Ri i c kko p p e l un gs s c
hl e i
fe
)が結びつけ られる。 こうすることで計画職能が差異に素早 く反応することがで き,環境における企業の長期的存続を確 保するための計画職能が促進 される。 したがって,戦略的統制は戦略的計画 過程へ補完的な基礎情報を提供する。計画 と同様 に統制で も重要なのば情報 過程の組織である。環境保護統制の課題は,変更がもた らす生態的 ・経済的 結果を事前 に評価することと,その意図が相応の戦略,方策そ して 目指 した 生態的作用をもた らしたか という事後の検証である。 これによって企業政策 的意思決定過程の輪が結ばれ, 目標は体系的に検査 され修正 される。
生態的な企業存続の確保 という統制がもつ基本的課題か ら見れば,統制 と リスク管理の職能は明 らかに重なる。 したがって, リスク管理を戦略的統制 と体系的に関連 させて考察 し,戦略的計画に対する補完職能 と増幅職能 とい う意味で考察することが有意義なのである。確認 された リスクを戦略的計画 に流 し込み,相応する リスク回避戦略を引 き出す ことが,帰還環状の重要な 部分 となる。「戦略的企業計画は船の コースを確定 し,戦略的統制はコース の保持 を監視 しコースの違いを確認 し (後方への帰還環状),同時に現れる 浅瀬 と荒天を適時に確認 しようとし (‑ ‑ 前方への帰還環状),回避力が 構築される
( 2) 。 」
( 2 )
リスク管理の課題シ ュテ‑ガ一によれば, リスク管理が もつ課題は次の二つである。
①環境 リスクの確認 と判断
( 3 )
リスクはまず技術的な企業内部的性質の ものが考えられ,また市場領域お よび政治的 ・社会的領域で も発生 しうる。 リスク分析は個別事情 に大 きく依 存 し,企業内部の技術的領域では信頼で きる分析手段があ りその環境 リスク はよ く知 られているが,市場および政治的領域における環境 リスクは体系的 に把握 されずその評価 も困難である。 リスクの判断は絶対的に行われるので はな く,その結果 と目標へのマイナス作用か らのみ行われる。だか らリスク の受容可能性はその評価に依存する。その場合, リスクの受容は活動の効用
によって決め られ, リスクそれ 自体 もそれで決まる。 リスクへの対応はそれ で しかで きない。 しか し,存続を脅 かす リスクはその ような限定的な結果を
もた らす リスクとは違 う評価が行われる。
②環境 リスクの克服
( 4)
リスクマネジメン トの第二の課題は リスクの克服である。確認 された リス クを許容水準まで低下 させるために,環境保護領域 において も, リスクを,
①回避す る
( ve r me i de n)
,②減少 させ る( ve r mi nde r n)
,③抑制す る( 也be r wa l ‑ z e n)
,④保険をかける( ve r s i c he r n)
,⑤ 自己負担す る( s e l be rt r a ge n)
, という 古典的な五つの戦略がある。 リスクを低下 させる費用は長期的には直接的あ るいは間接的損害 よりも少ない という意思決定がなされるべ きであるか ら,リスク低下は長期的に企業の収益性 を高めることになる。
(3)戦略的統制 における環境情報手段
シュテ‑ガ一に よれば,戦略的計画 と同様 に戦略的統制で も決定的問題は 必要な情報が意のままになるか どうかである。戦略的統制 に リスク管理が結 合 される と, リス クの確認 と評価に用い られた情報 が問題な く利用できると い う長所が得 られ る。それで もなお,特殊な情報手段が必要であ り,①環境 会計
( Oko ‑ Bi l a nz )
,②環境評価( Umwe l t ve r t r 畠 g li c hke i t s pr Bf ung)
,③環境志 向的技術分析 と評価( umwe l t o r i e nt i e r t eTe c hni ka na l ys eund‑ be we r t ung)
,④環境監査
( Umwe l t ‑ Audi t i ng)
,⑤生態的価値連鎖( 6 ko l o g is c heWe r t s c h6 p‑
f ungs ke t t e )
であ る。①②③ は環境 リスクを確認す るために用い られるが,④環境監査 と⑤生態的価値連鎖は純粋な リスク志向を超 えた情報手段 として 位置づけ られている。 これ らに関するシ ュテ‑ガ‑の見解の概略は次の よう
である。
(∋環境会計
( 5 )
環境会計の課題 は製品 と生産 プロセスの環境負荷 を体系的に把握すること であるか ら,重要なのは,原材料の調達か ら製品の廃棄 に至 るまでの生産過
程において発生するあ らゆる原材料費消 と環境負荷について情報基礎 と情報 方式を作ることである。 この情報は,製品だけでな くプロセスの 「負荷プロ
フィル 」( Be l a s t ungs pr o f i l )
を企業管理に提供す るか ら,企業の弱点が明 ら かにな りその対応策が示 される。(参環境評価
( 6 )
これは投資計画における生態的結果の評価あるいは立地の調査 に用い られ る。環境作用が体系的に把握 され計画の経済的長所 と対比 させ られ,環境負 荷の予測 とその対策が付け加えられる。計画の環境負荷 と効果の関連の適切 性は政治的に評価 され,環境評価が利害対立を解決 しうると仮定するのは大 きな誤 りである。得 られるのは対策の長所 と短所 についての透明性であ り, したがって議論が合理的に行われる。企業に とっての長所は,早期 に潜在的 対立を認識 し代替案を探求できることである。
③環境志向的技術分析 と評価
( 7 )
環境志向的技術分析 と評価は,製品あるいは方式の副作用を確認 し除去す ることである。薬品の許可,品質保証スタンプ,安全保証書のような,公的 規定あるいは 自主的規準がこれである。 目標が対立する場合には優先順位の 合理的意思決定基準を見つけるのが困難であるが,企業戦略に環境保護が統 合されているのが明確であれば,市場のみな らず政治的にも受け入れ られる 点が早 く発見される。
④環境監査
( 8)
環境監査 については様 々な意見があ り,法律に規定され内容 と方法が標準 化された環境監査は存在 しない
( 9) 0 I CC ( I nt e r na t i o na lCha mbe ro fCo m‑
me r c e:
国際商業会議所)の定義では,環境監査 とは,「環境保護組織,環境 保護管理,環境保護施設の,体系的で,文書化 された,定期的で客観的な弱 点分析の包括的管理構想( 1 0) 」
であ る。監査は内部の情報機能 に役立つだけ でな く,競争状況の強化,コス ト削減 と協働者動機 にも貢献す る。方式 と分 析領域は企業の特性 に合わせて決まるか ら,当該企業における検査プログラムの作成 は特別 に重要である。技術的局面の検査だけでな く基礎 にある管理 システム も評価 され ることが注意 されなければな らない。環境監査は本質的 に リスク管理 におけ る監視システムの構成要素であ る。
(9生態的価値連鎖 (ll)
環境保護 には企業の コス ト低下力あるいは環境関連の強みを認識す るため に 「全体 としての企業
」( Un t e r n e h me na l sGa n z e s )
の分析が必要 で,その適 切な手段 がポー ターのい う価値連鎖( we r t s c h6 p f un gs ke t t e )
であ る。価値連 鎖 はあ らゆる企業活動 とその関連 を体系的 に競争優位の源泉 として分析する ための方法であ り,生態的価値連鎖 はそれを環境保護の観点か ら捉 えた情報 手段であ る。生態的価値連鎖は,環境領域 におけ る企業の強み と弱みの確認, 失敗の適切な除去 と強みの体系的な構築,環境保護領域 における正確 な企業 の戦略的位置づけ, とい う三つの効用 を持 つ。価値連鎖 による環境活動の長 所は,環境戦略の信頼性 と継続性の前提 であ る適切性 と一貫性 にそって方式が検査 されることにあ る。
以上の さまざまな手法を検討 した うえで最後 にシ ュテ‑ガ‑は次の ように 総括す る。経営実践 でほ とん ど利用 されていなかった これ らの手段はすべて 同時 に利用 され るのではな く,特殊 な経営状況 に応 じて利用 され るべ きもの である。最初 か ら完全な手段はあ り得 ない し,環境問題の四分の三だけで も 把握 され構造化 されればそれは企業 に とってかな りの前進 であ り
,
「学習曲 線」( Le r nkur ve )
は ここで もあてはま る。 いかな る新規化 であれ,その効 用が確実 にな る前 に困難性は克服 されなければな らない。それは,環境保護とその管理情報手段 において も異なるこ とではないのである
( 1 2 )
0( 1 ) vg l . ,St e ge r ,Umu J e l t ma mg e me nt ,S. 2 5 5 ‑ 2 6 0・
( 2 ) St e ge r , α. α. 0. ,S. 2 6 0,
( 3 ) Vg l・ ・St e ge r , a・ al 0
・・S・ 2 61 ‑ 2 6 3・
( 4 ) Vg l ‥ St e ge r , α. α. 0. ,S. 2 6 3 ‑ 2 6 7.
( 5 ) Vg l り St e ge r , α. α. 0. ,S. 2 7ト2 7 3.
( 6 ) Vg l . ,S t e g e r , α. α. 0. ,S. 2 7 4 ‑ 2 7 5.
( 7 ) Vg l ‥ S t e g e r , α. α.
0‥ S. 2 7 5 ‑ 2 7 7.
( 8 ) Vg l . ,S t e g e r , α. α.
0.,S. 2 7 7 ‑ 2 8 1.
( 9 )
周知の ように1 9 9 6
年 には国際標準化機構( I n t e r na t i o na lOr g a n i z a t i o nf o rSt a nd a r d i z a ‑ t i o n:I SO)
による環境管理の標準規格 がI SO1 4 0 01
として成立 し,その普及 とともに「環境監査」 という概念 も浸透 して環境管理の一環 として位置づけ られている。
これに関 しては,次を参照されたい。
吉 田 ・北畠 (編),『環境の評価 とマネジメン ト』,岩波講座 環境経済 ・政策学 第
8
巻,岩波書店,平成1 5
年,第5
章 環境監査 と環境報告書 (水 口 剛),1 2 5
頁以下。( 1 0 ) St e g e r , a. a. 0. ,S. 2 7 9.
( l B Vg l . ,S t e g e r , a. a. 0. ,S. 2 8 1 ‑ 2 8 3.
(1g
)Vg l . ,S t e g e r , a. a.
0.,S. 2 8 3 1 2 8 4.
5 シ ュテーガーの環境管理論の特質
環境保護 に関する 「戦略的企業計画」,「執行機能の充実」および 「戦略的 統制」 とい う以上のシ ュテ‑ガ‑の見解は,「計画」「遂行」「統制」 とい う マネジメン トサイクル に対応 した環境管理構想の一端 を示 してい るもの と解 される。われわれは先 に検討 した彼の所論 か ら得 られた認識 を ここで再確認 する と同時 に,そ こに本稿で得 られた新たな認識 を加 えることによって,わ れわれが展開を試みている 「環境管理論」の内容をさらに充実させ ることが で きる。
(1) 環境管理の必要性
先 に指摘 した ように,シ ュテ‑ガ‑は環境管理 を未来志向的管理 として企 業の進化 とその存続発展のために必要不可欠な用具 として位置づけている。
企業はその長期的存続 を確保するために,その環境の変化 に適応 しなが ら進 化 ・発展す る社会的生活体 として理解 される。 したがって,環境変化への適 応 こそがまさに企業管理の最大の課題 といわなければな らない。企業活動 と
は環境に志向する環境適応活動その ものであると解 されるのである。
ここに,環境 との関連を改善することを直接的な課題 とする環境管理の成 立が要請 され それは企業の環境適応 に とって極めて重要な手段 として理解 されなければな らない。 このように,環境管理が企業の現在 と未来における 存続確保 にとって必要不可欠な手段であるとすれば,合理的な環境管理を構 築 しその発展を促す ことが実践 と科学に課せ られた焦眉の課題 となるであろ う。シ ュテ‑ガ‑は環境管理の構築を自らに課せ られた課題 と認識 し,その 企業的必要性の観点か ら体系的な環境管理の展開を試みているもの と解され
る(1)0
( 2 )
環境管理の体系シュテ‑ガ‑は,環境保護 目標を企業の 目標体系の中に統合 し,それを給 付 目標の一つ として位置づけ,この 目標を実現するための戦略の計画 (戦略 的企業計画),計画遂行のための執行体制の整備 (執行的職能),計画実現の ための統制 (戦略的統制) という,企業職能の垂直的職能 と水平的職能から 構成 される環境管理の体系を展開 しているもの と解 される
( 2 )
。その場合,先 に指摘 したように,彼が給付 目標 として理解 しているのは,決 して環境保護 だけではない。「社会的責任」 と 「品質基準」 もまた給付 目標 として理解 さ れている( 3)
。品質基準は企業の給付である商品生産 に直接関わるもの と理解 されるが,社会的責任は商品生産 とは直接に関連 しない,社会が企業にその 達成を期待する目標 である( 4)
。シュテーガ‑が理解する社会的責任の内容は 明らかでないが,われわれの理解によれば,企業の社会的責任 とは,企業の 利害者集団か らその実現を要請 されている彼 らの利益である。シュテ‑ガ‑の展開する企業管理の構想によれば,品質基準は市場を中心 とする経済的環境 との,社会的責任は社会的環境 との,そ して環境保護は社 会的環境を介 して認識 される自然環境 との環境関連改善活動の内容をなす と 解 される。すなわち,シ ュテ‑ガ‑の環境管理構想は,自然環境のみならず