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インフルエンザ菌の薬剤耐性と抗菌薬治療に関する研究

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インフルエンザ菌の薬剤耐性と

抗菌薬治療に関する研究

2019 年度

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【 目 次 】

序論··· 1 第1 章:急性期病院におけるインフルエンザ菌臨床分離株の薬剤感受性の推移 背景··· 7 材料と方法 ··· 8 1. 収集菌株と患者情報 ··· 8 2. 培養条件 ··· 8 3. PCR 法による P6 遺伝子、莢膜遺伝子及び-lactamase 遺伝子の検出 ··· 8 4. 薬剤感受性試験 ··· 10 5. GyrA および ParC のキノロン耐性決定領域 (QRDR) におけるアミノ酸置換 の解析 ··· 10

6. Multilocus sequence typing (MLST) による分子疫学的解析 ··· 11

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【 略 語 一 覧 】

AMP Ampicillin

AMR Antimicrobial resistance AMX Amoxicillin

ASP Antimicrobial stewardship program AST Antimicrobial stewardship team ATCC American Type Culture Collection AZM Azithromycin

BHI Brain heart infusion

BLAST Basic local alignment search tool

BLNAR -lactamase-nonproducing ampicillin-resistant BLNAS -lactamase-nonproducing ampicillin-susceptible

BLPACR -lactamase-producing amoxicillin/clavulanic acid-resistant BLPAR -lactamase-producing ampicillin-resistant

CAMHB Cation-adjusted Muller-Hinton broth CC Clonal complex CCL Cefaclor CDN Cefditoren CFIX Cefixime CFPN Cefcapene CFTM Cefteram

CFU Colony forming unit CLR Clarithromycin

CLSI Clinical and Laboratory Standard Institute CMZ Cefmetazole

CP Chloramphenicol CPDX Cefpodoxime

CRE Carbapenem-resistant Enterobacterales CRO Ceftriaxone

CRP C-reactive protein CTX Cefotaxime CVA Clavulanic acid FOM Fosfomycin FMOX Flomoxef GRNX Garenoxacin

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hMPV Human metapneumovirus ICT Infection control team LHB Lysed horse blood LMOX Latamoxef

LVX Levofloxacin MEM Meropenem MFX Moxifloxacin

MHB Mueller-Hinton broth

MIC Minimum inhibitory concentration MIN Minocycline

MLST Multilocus sequence typing

NAD Nicotinamide adenine dinucleotide NOR Norfloxacin

NTHi Nontypeable Haemophilus influenzae OFX Ofloxacin

PBP Penicillin binding protein PCR Polymerase chain reaction QOL Quality of life

QRDR Quinolone resistance-determining region RSV Respiratory syncytial virus

SBT Sulbactam ST Sequence type TBPM Tebipenem TFX Tosufloxacin

sBHI broth Brain heart infusion broth with supplements WBC White blood cell

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1

【 序 論 】

Haemophilus influenzae (インフルエンザ菌) は、Pasteurellaceae 科 Haemophilus 属に

分類される通性嫌気性のグラム陰性桿菌である。本菌の名前の由来は、1892 年にドイ ツで Pfeiffer および北里によりインフルエンザ患者の喀痰から原因微生物として分離 されたことに起因する1)。その後、1930 年代にインフルエンザの原因が Influenza virus であり、本菌が原因でないことが明らかとなったが、学名は維持されている。本菌の 大きさは0.3~0.5 m  0.5~1.0 m と他の陰性桿菌と比較し、小さいことから短桿菌 と言われる。通常、乳幼児の多くは本菌を鼻咽頭に保菌している。 本菌による感染症は、侵襲性感染症と非侵襲性感染症に分けられる。このうち侵襲 性感染症は、血液や髄液等、本来無菌的な部位から細菌が分離された場合を指し、敗 血症や髄膜炎等で一般的に重症例が多い。現在、侵襲性インフルエンザ菌感染症は、 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律 (感染症法) で五類感染症 (全数把握対象) として定められており、本感染症を診断した医師は 7 日以内に最寄り の保健所に届け出ることが義務付けられている 2)。一方、非侵襲性感染症としては、 肺炎、急性中耳炎、急性副鼻腔炎などがある。これらの疾患は、主に市中で感染し、 比較的予後は良好ではあるものの、感染症を発症した場合、患者の生活の質 (Quality of life, QOL) は非常に低下する。 さ ら に 本 菌 は 、 表 層 構 造 の 違 い か ら 莢 膜 株 と 型 別 不 能 株 す な わ ち 無 莢 膜 株 (nontypeable H. influenzae, NTHi) に大別される。莢膜は、多糖体からなり糖鎖構造な らびに抗原性の違いから a から f 型に分類されている3)。このうち、小児の侵襲性感

染症の原因の大部分はb 型の莢膜を有する H. influenzae type b (Hib) である4, 5)特に、

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2

により減少傾向であるため、これらの疾患の原因菌におけるNTHi の割合は増加傾向 であることが知られている (Fig.1)10)

Fig. 1. Comparison of causative pathogen of acute otitis media.

(Ubukata et al. J Infect Chemother 25 (2019) 720-726 より引用改変)

Spn, Streptococcus pneumoniae; Hflu, Haemophilius influenzae; Spyo, Streptococcus pyogenes; Saur, Staphylococcus aureus; Mcat, Moraxella catarrhalis.

NTHi による急性中耳炎は、しばしば難治化や重症化する。急性中耳炎は、「急性に 発症した中耳の感染症で、耳痛、発熱、耳漏を伴うことがある」と定義され、1 歳ま でに62%、3 歳までに 83%の小児が少なくとも 1 回は罹患するとされている11)。急性

中耳炎に対しては、臨床診断で中等症以上の場合に抗菌薬治療が推奨され、重症の場 合、抗菌薬治療と鼓膜切開を併用する 11)。抗菌薬治療として、amoxicillin 25~30

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3 定の抗菌薬への偏りを生み出す原因となる。 NTHiによる感染症の治療にはβ-ラクタム系、マクロライド系、キノロン系薬が用い られるが、すでにこれら抗菌薬に対する耐性菌が存在していることも知られている14, 15)-ラクタム系薬は、細胞壁合成酵素であるペニシリン結合タンパク (penicillin binding protein 3, PBP3) に作用し、ペプチド架橋反応を阻害することで抗菌作用を示 す。そのため、β-ラクタム系抗菌薬に対する薬剤耐性化機構は、大きく2つの機序に 起因している。1つ目は-ラクタム系薬を分解する-lactamaseを産生すること、2つ目 はβ-ラクタム系薬の作用標的であるPBP3にアミノ酸置換を伴う変異が生じ、PBP3に 対する薬剤親和性が低下することである16, 17)。インフルエンザ菌の-ラクタム系薬耐 性菌は耐性機構に基づき大きく4つに分類される (Table 1)16)

Table 1. Classification of Haemophilus influenzae based on -lactam susceptibility

過去の報告では、日本で分離されるインフルエンザ菌臨床分離株の約 50%が ampicillin (AMP) 耐 性 菌 で あ り 、 β-lactamase-non-producing ampicillin-resistant H.

influenzae (BLNAR) の割合が、米国や欧州と比較して多く存在していることが知られ

ている4)BLNAR は、β-ラクタム系薬の作用標的である PBP3 にアミノ酸置換をもつ

ことから、ペニシリン系薬のみならず、セフェム系薬に対しても感受性が低下する16, 18)。日本でBLNAR が多い一因として、第 3 世代セフェム系薬の使用が、諸外国と比

較して多いことが挙げられている。一方で米国では、ペニシリン系の使用が多いため、 よりペニシリン系薬に高度耐性を示す β-lactamase producing ampicillin-resistant H.

influenzae (BLPAR) が多い19)。すなわち、治療抗菌薬の使用量と耐性菌の出現、流行 は密接に関連している。 マクロライド系薬は、細菌のリボソーム 50S サブユニットの構成成分である 23S rRNA のドメイン V の特定のアデニンに結合し、アミノアシル tRNA の転移を阻害す ることで、タンパク質の合成を阻害する。マクロライド系抗菌薬に対する薬剤耐性化 機構は、3 種に大別される。1 つ目は、リボソームタンパク 50S サブユニットを構成 するL4 及び L22 タンパク上に生じたアミノ酸置換や 23S rRNA ドメイン V 中の薬剤 作用部位の変異により、マクロライド系薬の結合能が低下することで耐性化する20, 21) 2 つ目は、外来遺伝子の獲得である。主に、薬剤排出タンパク遺伝子 (mef) あるいは、 23S rRNA メチラーゼ遺伝子 (erm) が関与している22)3 つ目は、細菌が従来持って いる染色体性異物排出ポンプの亢進である23-25)。過去の報告で、臨床で分離されるイ ンフルエンザ菌のマクロライド耐性には、染色体性排出ポンプの亢進が寄与している

Class Description Reduced susceptible to β-lactam

BLNAS β-lactam susceptible None

BLNAR β-lactamase nonproducing ampicillin resistant Penicillins, cephalosporins

BLPAR β-lactamase producing ampicillin resistant Penicillins

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4

ことが明らかになっている26)。加えて、外来遺伝子mefA を獲得した耐性菌の存在が

1 例報告されている27)。外来遺伝子獲得型のマクロライド耐性菌は、先述の報告以外

ほとんど報告されておらず、その流行については不明である。

キノロン系薬は、細菌のDNA 複製に必須な酵素である DNA gyrase や topoisomerase IV に作用し、DNA の複製を阻害する。キノロン系薬に対する耐性機構として、DNA gyrase をコードする gyrA 遺伝子と gyrB 遺伝子及び、topoisomerase IV をコードする

parC 遺伝子、parE 遺伝子のキノロン耐性決定領域 (quinolone resistance-determining

region, QRDR) にミスセンス変異が入り、薬剤の親和性が低下することで耐性化する ことが知られている 28)。インフルエンザ菌においては、まず gyrA に変異が入り、最

小発育阻止濃度 (MIC) 値が上昇し、parC に変異が入ることで耐性を示すと言われて いる29)Clinical and Laboratory Standards Institute (CLSI) の基準では、成人の呼吸器感

染症で汎用される levofloxacin でブレイクポイントが定められており、MIC 値が 2 g/mL を感受性、> 2 g/mL を非感受性としている30)MIC 値が 2 g/mL を超えるの

gyrA と parC に変異が入った場合であり、gyrA 変異のみの場合においても感受性と

判定される14) マクロライド系薬やキノロン系薬は、抗菌スペクトルが広く、組織移行性も良好で あるため、呼吸器感染症などに対するエンピリック治療に用いられやすい31)。そのた め、インフルエンザ菌による感染症のみならず、様々な呼吸器感染症の際に汎用され ている現状がある。しかし、起炎菌が異なる場合や耐性菌の場合、効果を示さないこ とがあることに加え、長期間にわたり抗菌薬を使用するのは、薬剤耐性菌を誘発ある いは選択する可能性がある。そのため、薬剤師による服薬指導及び使用開始後の抗菌 薬治療アセスメントが非常に重要になる。実際、これらの薬剤の使用頻度が高い成人 患者から分離される呼吸器感染症の起炎菌において、これらの薬剤に対する耐性株や 感受性が低い株 (低感受性株) の出現も報告されている32, 33)

Fig. 2. Timeline of introduction of antimicrobial agents and vaccine in pediatric field

近年、呼吸器感染症治療薬において新規抗菌薬が導入されている (Fig. 2)。このう ち、tosufuloxacin 小児用細粒は、2010 年 1 月、耐性菌感染症治療のための 2 次選択薬 として承認された小児用キノロン系薬である。これまで、小児呼吸器感染症治療に対

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5 して使用されるキノロン系薬がなかったことに加え、広域スペクトルであることから、 使用頻度が上がっている。また、2012 年、マクロライド耐性肺炎マイコプラズマによ る感染症増加により、当時適応外であったマイコプラズマ肺炎への使用がガイドライ ンに記載され、使用量もさらに上がっていると言われている5)。そのため、臨床使用 に伴う耐性菌の出現が懸念され、キノロン系薬における適正使用の重要性が指摘され ている。また、マクロライド系薬が苦くて飲みにくい為、マイコプラズマ肺炎に対す る第一選択薬として tosufloxacin を処方する事例が報告されており (Hara et al. unpublished data)、薬剤師による小児と保護者に対する服薬指導は重要である。日本化 学療法学会、日本感染症学会、日本小児感染症学会が設置した小児用キノロン薬適正 使用推進委員会が 2016 年 4 月に行ったアンケート調査では、約 70%の症例で適応症 を有する疾患へ処方されていたが、残りの30%に対して薬剤師が抗菌薬適正使用に積 極的に関わることの必要性を示している34) 薬剤耐性菌の出現を抑えるために、抗菌薬の適正使用の重要性は以前から指摘され ている。医療機関での取り組みとして、感染制御チーム (Infection Control Team, ICT) がある。ICTは、医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師から構成される感染防止対策 活動を行うチームである。2012 年より、感染防止対策加算の算定が可能になり、感 染制御のみならず抗菌薬適正使用支援の推進も実施している。ここでは、抗MRSA薬 や広域スペクトラム抗菌薬など特定抗菌薬の使用制限 (届出制・許可制等) を行うこ とが主な活動となった。しかし、近年、多剤耐性アシネトバクター属菌や、幅広い菌 種に効果を有するカルバペネム系抗菌薬に耐性の腸内細菌目細菌 (Carbapemem- resistant Enterobacterales, CRE) など、新たな抗菌薬耐性菌の出現による難治症例の増 加が世界的な問題となってきた35, 36)。そのため、世界保健機関 (WHO) は、2014年4

月に初めて耐性菌蔓延の状況を“Antimicrobial Resistance Global Report on Surveillance” としてまとめ、全世界に警鐘を鳴らし、Antimicrobial resistance (AMR) グローバルア クションプランの策定を各国に求めた37)。それを受け、日本では、2016年4月に国際

的に脅威となる感染症対策関係閣僚会議にて「AMR対策アクションプラン」が作成さ れた38)。このアクションプランの中に記載されている「抗微生物薬の適正使用」等を

実践するために医療機関に整備されたのが、抗菌薬適正使用支援チーム

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1 章

急性期病院におけるインフルエンザ菌臨床分離株の

薬剤感受性の推移

【 背 景 】

NTHi は、市中の呼吸器感染症や中耳炎、副鼻腔炎などの原因菌として重要である。 NTHi の治療には、主に β-ラクタム系薬が使用される。しかし、その耐性菌である BLNAR や BLPAR 、 β-lactamase-producing amoxicillin-clavulanic acid-resistant H.

influenzae (BLPACR) の出現が報告されている。特に日本では、2000 年代より BLNAR

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【 材 料 と 方 法 】

1. 収集菌株と患者情報 菌株は、2017 年 1 月から 12 月に、当院において分離された 57 株のインフルエンザ 菌を使用した。菌株と同時に、患者年齢、性別、60 日以内の前投与抗菌薬の有無に関 する情報も収集した。また、抗菌薬感受性基準株として、H. influenzae ATCC49247 お よびH. influenzae Rd 株を用いた。 2. 培養条件 インフルエンザ菌の培養には、チョコレート寒天培地を使用した。菌株は、アネロ パックCO2 (MITSUBISHI GAS CHEMICAL) を用い、5%CO2存在下で、37℃、一晩培

養した。増殖した菌株は、10% skim milk (Becton Dickinson) に濃厚に懸濁し、使用時 まで-80℃で保存した。

3. PCR 法による P6 遺伝子、莢膜遺伝子及び-lactamase 遺伝子の検出

試験菌 1 コロニーを 100 L の TE buffer に懸濁し、95C で 5 分間加熱処理したも のをDNA 粗抽出液とし、それぞれの PCR 反応に供試した。反応には、Go Taq Green Master Mix (Promega)、各種合成プライマー (Table 2、各 10 pmol)、粗抽出液 1 L を用 い、全量が10 L となるように調製した。

P6 (ompP6) および-lactamase 遺伝子 (blaTEM-1、blaROB-1) の検出は、95C、2 分間の

加熱後、95C、15 秒間の変性、55C、15 秒間のアニーリング、72C、30 秒間の伸長 反応の行程を25 サイクル行った 15, 26)。莢膜型は、95C、2 分間の加熱後、95C、15

秒間の変性、55C、15 秒間のアニーリング、72C、30 秒間の伸長反応の行程を 25 サ イクル行った42)。増幅産物は、agarose gel を用いた電気泳動を行い、増幅産物の分子

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10

4. 薬剤感受性試験

各種薬剤感受性は、CLSI に基づき微量液体希釈法で測定した 30)。薬剤感受性の指

標として MIC を用いた。Defibrinated horse blood を完全に溶血するまで凍結融解を繰 り返し、12,000 rpm で 20 min 遠心分離し、上清を lysed horse blood (LHB) とした。こ のLHB は、Mueller-Hinton broth (MHB: Oxoid) に Ca2+20 µg/mL、Mg2+10 µg/mL

となるように添加したcation-adjusted Mueller-Hinton broth (CAMHB) に、最終濃度が 2.5%になるように加えた。さらに、β-NAD を 15 µg/mL となるように CAMHB に添加 して測定用培地とした。続いて、チョコレート寒天培地で 18~24 hr 培養した菌を、 MHB に McFarland standard 0.5 (Biomerieux) と同様の濃さになるように懸濁調製し、 薬剤を含有した測定用培地100 µL に菌液 1 µL を MIC ミニ (Medi Science) を用いて 接種した。35C、20~24 hr 好気培養をしたのち、菌の発育を判定し、各抗菌薬の MIC (µg/mL) を決定した。

薬 剤 は 、amoxicillin (AMX 、 Sigma-Aldrich) 、 clavulanic acid (CVA 、 Santa Cruz Biotechnology)、ampicillin (AMP、Wako)、sulbactam (SBT、Wako)、ceftriaxone (CRO、 Wako)、cefotaxime (CTX、Wako)、cefcapene (CFPN、Shionogi)、cefditoren (CDN、Meiji Seika Pharma)、meropenem (MEM、Wako)、tebipenem (TBPM、Meiji Seika Pharma)、 clarithromycin (CLR、Tokyo chemical industry)、azithromycin (AZM、Tokyo chemical industry)、levofloxacin (LVX、Tokyo chemical industry)、tosufloxacin (TFX、Tokyo chemical industry)、garenoxacin (GRNX、Toyama Chemical)、moxifloxacin (MFX、combi-blocks) を使用した。

抗菌薬の感受性の breakpoint は、CLSI の基準を用いた 30)。すなわち、AMX ( 4

g/mL)、AMX / CVA ( 4/2 g/mL)、AMP ( 1 g/mL)、CRO ( 2 g/mL)、CTX ( 2 g/mL)、MEM ( 0.5 g/mL)、CLR ( 8 g/mL)、AZM ( 4 g/mL)、LVX ( 2 g/mL) で ある。また、LVX 低感受性株のブレイクポイントは既報に基づき、2-0.063 g/mL に 設定した 14)2007 年、2012 年の成績は Shiro らの成績から当院のデータを抽出し使 用した43) 5. GyrA および ParC のキノロン耐性決定領域 (QRDR) におけるアミノ酸置換の解 キノロン系抗菌薬に低感受性であると判定された株について、既報の通り27, 29)、キ

ノロン系薬の作用部位となるDNA gyrase サブユニット遺伝子 (gyrA)、topoisomerase IV サブユニット遺伝子 (parC) の QRDR の塩基配列を DNA sequence 法により解析し た。まず、目的遺伝子のQRDR を含む遺伝子断片を PCR 法で増幅した。PCR には、 Go Taq®Green Master Mix 5 µL、合成プライマーgyrA-F、R または parC-F、R (Table 2) を

各10 pmol、粗抽出液 1 µL を加え、全量が 10 µL となるように調製した。混合した後、 95C、15 秒間の変性、53C、15 秒間のアニーリング、72C、30 秒間の伸長反応とい

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PCR 産物の精製は、DNA Cleaner (FUJIFILM Wako Pure Chemical) を用いた。精製後 の産物 1 µL を BigDye® Terminator v3.1 Ready Reaction Mix (Thermo Fisher Scientific) 1

µL、5  Sequencing Buffer (Thermo Fisher Scientific) 1.5 µL、増殖に用いた各プライマー 3 pmol と混合し、nuclease-free water にて全量を 10 µL とした。これを DNA thermal cycler を用いて、96C で 1 分間、96C で 10 秒間、50C で 5 秒間、60C で 4 分間と

いう一連の行程を25 サイクル行った。この PCR 産物 10 µL に 125 mM EDTA 2.5 µL と 100% EtOH 30 µL を加え、15 min 室温で静置した後、15,000 rpm、4C で 10 min 遠心

分離した。上清を除去し、70% EtOH 30 µL を加え、15,000 rpm、4C で 10 min 遠心分

離した。上清を除去し、10 min 減圧遠心乾燥させた。その後、20 µL の HiDi Formamide (Thermo Fisher Scientific) で懸濁し、ABI 3130 genetic analyzer (Thermo Fisher Scientific) を用いて、キャピラリー電気泳動を行った。データ解析は、DNA Sequencing Analysis ソ フ ト ウ ェ ア ver. 5.1 (Thermo Fisher Scientific) お よ び 、 DNA 解 析 プ ロ グ ラ ム GENETYX ver. 10 (Genetyx) を用いた。

6. Multilocus sequence typing (MLST) による分子疫学的解析

2017 年に分離された 57 株の遺伝学的背景を、H. influenzae のハウスキーピング遺 伝子である adk、atpG、frdB、fuck、mdh、pgi、recA について塩基配列の解析を行う、

multilocus sequence typing (MLST) を行った。PCR による遺伝子の増幅から sequence 解析までの手法はQRDR 解析と同様の手順によって行った。Primer は Table 2 に示し たものを用いた。また、Minimum spanning tree 解析には Bio Numerics ver.7 (Applied Maths) を用いた。

7. 統計学的解析

各群間における差は、chi-square test あるいは Fisher’s exact test を用い検定した。P < 0.05 の場合、有意差ありと判定した。

8. 倫理規定

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【 結 果 】

1. インフルエンザ菌の各種治療抗菌薬耐性化の現状とその変化 当院におけるインフルエンザ菌の耐性化の現状を明らかにするために、2017 年分離 株の感受性測定を行った (Table 3) 。また、比較のために、過去の報告から対象病院 のデータのみを抽出し、5 年ごとに比較解析を行った43)。その結果、ampicillin に対し て、2012 年までは 25%程度認められていた感受性株が、2017 年で 8.8%と減少してい た (vs 2007, P = 0.099; vs 2012, P = 0.075)。一方、セフェム系薬やカルバペネム系薬に 対する感受性に大きな変動はなく、高い感受性率を維持していた。ampicillin、 amoxicillin/clavulanic acid の感受性を元に、β-ラクタム耐性クラス分類を行い、過去の 成績を比較したところ、いずれの年代もBLNAR が多くの割合を占めていた (Table 4)。 また、-lactamase 産生株 (BLPAR および BLPACR) が有意に増加していた (vs 2007、

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2. MLST 法による分子疫学的解析

2017 年に分離された株の遺伝学的背景を検討するために、MLST 解析を行った。全 57 株は、計 26 種類の sequence type に分類され、多様性に富んでいた (Fig. 3)。 Clarithromycin 耐性株 (MIC  32 g/mL) とキノロン低感受性株は、全て異なる ST を 示した。このことから、特定のクローンが clarithromycin やキノロン系薬に対して耐 性化、低感受性化したわけではなく、多様性に富んだそれぞれの株が耐性化、あるい は低感受性化したことが示唆された。

Fig. 3. Minimum spanning tree analysis of sequence type (ST) of all isolates (n = 57) .

The node sizes relate to the number of isoletes, and the colour border around each node indicates clonal complex (CC). The number indicates major types or resistant and low-susceptible clones. *,including clarithromycin resistant clone (n=6); #, incuding levofloxacin low-susceptible clone (n=4)

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【 考 察 】

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【 材 料 と 方 法 】

1. 使用菌株と培養条件 2017 年に当院で分離されたインフルエンザ菌 2017-Y3 株を用いた。また比較のた めに、以前報告された外来遺伝子獲得株 2014-102 株 [mef(A) 、tet(M) 陽性] 27)なら びにMIC 基準株である ATCC49247 株を使用した。 培養条件は、第1 章と同様に行った。 2. 分子疫学的解析 菌株のバックグラウンドの解析は、MLST を用い既報の通り行った46)。方法は、第 1 章で示した通り行った。 3. マクロライド耐性遺伝子及び L4、L22 変異の検出

mef(A) 及び erm(B) の検出は、Noguchi らの方法で PCR を行った47)PCR 条件は、

94C、2 分間の初期変性、94C、15 秒間の変性、55C、15 秒間のアニーリング、72C、 30 秒間の伸長反応とし、25 サイクル行った。L4 と L22 は、Clark らの方法で PCR 及 びシーケンス反応を行った 48)PCR 条件は、94C、2 分間の初期変性、94C、15 秒 間の変性、50C、30 秒間のアニーリング、72C、30 秒間の伸長反応とし、25 サイク ル行った。PCR 及びシーケンス反応は、第 1 章に記した方法で行った。 4. mef(A) 遺伝子の周辺領域の塩基配列の解析

mef(A) 周辺領域ならびにテトラサイクリン耐性遺伝子 tet(M) を Seyama らの方法

で解析した。mef(A) と tet(M) 遺伝子の塩基配列は、National center for biotechnology

information basic local alignment search tool (BLAST) (https://blast.ncbi.nlm.nih.Gov/Blast. cgi) を用いて、相同性検索を行った。

5. 薬剤感受性試験

抗菌薬感受性は、CLSI のガイドラインに沿って微量液体希釈法で測定した 30)。測

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【 結 果 】

1. 症例の背景 5 歳女児、身長 106.4 cm、体重 15.3 kg、基礎疾患なし。37.9 度の発熱後、クリニッ クを受診し、顎下腺および耳下腺腫脹より流行性耳下腺炎と診断された。近医受診10 日後に咳、鼻閉、痰が続いて出現した。その10 日後に、当院を受診し、胸部 X 線検 査により、右下肺野・気管支周囲に、副鼻腔X 線検査により両側上顎洞の陰影増強が 認められ、急性副鼻腔炎と診断された。治療は、cefditoren-pivoxil 150 mg/day 7 日間、 続いてamoxicillin 600 mg/day 7 日間で行われ軽快した。 受診時に、鼻腔検体採取ならびに培養検査を行ったところ、インフルエンザ菌 (2017-Y3) ならびに肺炎球菌が陽性となった。 VITEK® 2 を用いた当院における感受性試験では、インフルエンザ菌はペニシリン 系、マクロライド系薬に耐性を示した。一方、肺炎球菌は、マクロライド系薬、テト ラサイクリン系薬に対して耐性を示した (Table 6)。 2. 分離株のマクロライド耐性メカニズムの解析 分離された2017-Y3 株は無莢膜型であった。この株の感受性と耐性メカニズムを明 らかにするために、MIC を微量液体希釈法で詳細に測定したところ、ペニシリン系、 マクロライド系に耐性を示した (Table 7)。Amoxicillin/Clavulanic acid やセファロスポ リン系には感受性を示したが、H. influenzae 標準株である ATCC49247 と比較し、2 段

階以上感受性の低下が確認された。耐性遺伝子を PCR 法で検討したところ、外来性 耐性遺伝子blaTEM-1、mef(A)、tet(M) が陽性であった。さらに、-ラクタム薬の標的タ

ンパクである PBP3 をコードする遺伝子分析では、2 つの耐性に関与するアミノ酸置 換(Ser385Thr、Asn526Lys) が確認された。これにより、2017-Y3 株は BLPACR である ことが判明した。そこで、mef(A) および tet(M) の塩基配列を解析したところ、既報

の耐性H. influenzae と同様に、mef(A) と tet(M) は近接していた。さらに、BLAST 解

析を行ったところ、mef(A) は S. pneumoniae ST556 (GenBank accession no. CP003357)、 Streptococcus oralis strain FDAARGOS_367 (GenBank accession no. CP023507) と 100%、 H. influenzae 2014-102 (GenBank accession no. LC168847) と 99%の相同性を示し、tet(M)

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21

Table 6. Antimicrobial susceptibility of Haemophilus influenzae and Streptococcus pneumoniae isolated at same timing by routine test at the hospital laboratory

以前に日本で報告された株 (2014-102 株) との関連を検討するために、MLST 解析 を行った。その結果、2017-Y3 株は ST1658 であり、2014-102 株の ST478 とは異なっ ていた。データベース検索を行ったところ、この型の分離例は少なかった。一方、同 時に分離された肺炎球菌は菌株が保存されておらず解析できなかった。

Agent Haemophilus influenzae Streptococcus pneumoniae

MIC (g/mL) Decision MIC (g/mL) Decision

Penicillin G >2 nd 0.06 Susceptible

Ampicillin >4 Resistance 0.06 Susceptible

Amoxicillin nt nd 0.06 Susceptible

Cefaclor >16 Resistance nt nd

Cefmetazole >2 nd nt nd

Latamoxef 0.5 Susceptible nt nd

Flomoxef 4 Resistance nt nd

Cefotaxime 0.5 Susceptible 0.25 Susceptible

Ceftriaxone nt nd 0.25 Susceptible Cefixime 0.25 Susceptible nt nd Cefpodoxime 1 Susceptible nt nd Cefterame 0.5 Susceptible nt nd Imipenem nt nd 0.03 Susceptible Erythromycin >8 nd 1 Resistance Clarithromycin nt nd 1 Resistance Tetracycline nt nd 16 Resistance Minocycline 1 Susceptible nt nd

Chloramphenicol 1 Susceptible 2 Susceptible

Vancomycin nt nd 1 Susceptible

Fosfomycin 4 Susceptible nt nd

ST nt nd 10 Susceptible

Norfloxacin <0.06 Susceptible nt nd

Levofloxacin <0.06 Susceptible 1 Susceptible

Meropenem nt nd 0.06 Susceptible

Refampicin nt nd 0.25 Susceptible

Quinupristin / Dalfopristin

nt nd 0.5 Susceptible

(28)
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23

【 考 察 】

本章では、世界で2 例目となる外来性遺伝子を複数獲得した多剤耐性インフルエン ザ菌を分離し、詳細な解析を行った。この株は、1 例目とは地理的に異なる環境の病 院から分離されていた。さらに、遺伝子型であるST も異なる株であった。すなわち、 日本において単一の株が拡散しているのではなく、新たに生じた株であることが強く 示唆された。

肺炎球菌においてmef(A) やその homologue である mef(E) は、tet(M) を含む Tn916

(30)
(31)

25

【 材 料 と 方 法 】

1. 使用菌株と培養条件

Tosufloxacin による殺菌活性の測定には、キノロン感受性株としてインフルエンザ 菌 ATCC49247 株、キノロン低感受性株として、2017-Y11 (levofloxacin の MIC 0.5 g/mL)、2017-Y28 (levofloxacin の MIC 0.125 g/mL) 株を用いた。低感受性株は、い ずれも小児由来株である。また、2018 年の tosufloxacin 使用後の症例から分離された キノロン低感受性株 2018-Y34、2018-Y40 を用いた。培養条件は、第 1 章の【材料と 方法】の項に記載の通り行った。

2. Time-kill 法による殺菌活性測定

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26

【 結 果 】

1. 小児科由来キノロン低感受性株に対する tosufloxacin の殺菌活性 キノロン系薬に低感受性を示した小児由来株 (2017-Y11、2017-Y28) について、小 児に対して使用されている tosufloxacin の効果を検討するために、殺菌曲線解析を行 った (Fig. 4)。Tosufloxacin 小児細粒の添付文書情報から、通常用量である 6 mg/kg 投 与後のCmax は 0.96 ± 0.3 µg/mL、半減期は 3.8 ± 0.5 h であることが示されている57) そこで、薬剤濃度はCmax (1 µg/mL) および 1/2 Cmax (0.5 µg/mL) とし、殺菌曲線解 析を行った。ATCC49247 株の生菌数は、時間依存的に減少し、6 時間後には検出限界 以下であった。一方、低感受性株の減少度割合は低く、8 時間でも菌の残存が認めら れた。GyrA のみにアミノ酸置換を持つ株 (2017-Y28) では、8 時間後で 1/1000 程度に 減少したが、GyrA に加えて ParC に置換を持つ株 (2017-Y11) は、8 時間後において も1/10 程度の減少しか認められなかった。さらに、2017-Y11 株は、1/2 Cmax 濃度で は増殖することが明らかとなった。すなわち、キノロン低感受性株は、tosufloxacin 治療に抵抗性を示す可能性が示唆された。

Fig. 4. Time-kill assay of quinolone low-susceptible isolates

Each isolate was inoculated into sBHI with or without tosufloxacin. Bacterial CFUs were monitored at each time point. Limit of detection, 20 CFU/mL; A, ATCC49247; B, 2017-Y11; C, 2017-Y28.

0 2 4 6 8 10 12 0 2 4 6 8 0 2 4 6 8 10 12 0 2 4 6 8 0 2 4 6 8 10 12 0 2 4 6 8

ATCC49247 (Control) 2017-Y11 (quinolone low-susceptible)

2017-Y28 (quinolone low-susceptible)

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C-Reactive Protein (CRP) 4.46 mg/L であったが、投与翌日から解熱し始め、4 日後には 体温37C、白血球 7,900/L、CRP 0.69 mg/L となった (Fig. 5)。その後、7 月 25 日に 軽 快 退 院 と な っ た 。 救 急 受 診 時 に 採 取 し た 後 鼻 腔 培 養 よ り イ ン フ ル エ ン ザ 菌 (2018-Y40) が分離された。

Fig. 5. Clinical time course of case number 2

CRP, C-reactive protein; WBC, White blood cell 2.1 感受性検査

当院におけるフローズンプレート‘栄研’を用いた抗菌薬感受性検査では、いずれの インフルエンザ菌株も ampicillin、cefaclor、flomoxef に耐性を示し、キノロン系薬 (norfloxacin、ofloxacin) には感受性を示していた (Table 8)。

Table 8. Results of routine susceptibility test in Yokohama Rosai Hospital

0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000 36.0 36.5 37.0 37.5 38.0 38.5 39.0 39.5 40.0 40.5 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 Body temperature WBC

Days since admission

Body t e m pe ra ture ( C) W BC c ount (/ L) prednisolone 1.5 mg/kg/day ampicillin 150 mg/kg/day CRP (mg/dL) 4.46 4.10 2.48 0.69

AMP CCL CMZ LMOX FMOX CTX CFIX CPDX CFTM MIN CP FOM OFX

2018-Y34 R R S S R R S S S S S S S

2018-Y40 R R S S R R S S S S S S S

Strain

Decision

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29

2.2. 分離された菌株の解析

分離されたインフルエンザ菌は、tosufloxacin の効果が認められなかった可能性が考 えられたため、詳細な解析を行った。まず、2 株に対し、CLSI の基準に基づき、微量 液体希釈法で詳細な感受性を測定したところ、levofloxacin と tosufloxacin の MIC は、 それぞれ0.5 g/mL と 2 g/mL を示した (Table 9) 。すなわち、これらはいずれもキ ノロン低感受性株であった。また、ampicillin、amoxicillin / clavulanic acid にも耐性を 示すBLNAR であった。この株について、gyrA および parC の QRDR の塩基配列を決 定したところ、いずれの株においても、GyrA 及び ParC の QRDR 内にそれぞれ Ser84Leu、 Ser84Ile のアミノ酸置換を有していた (Table 9) 。これらの成績は、キノロン低感受性 株は、Cmax の tosufloxacin 中においても、8 時間以上生存できること (Fig. 4) を裏付 けており、生体内においてもキノロン低感受性株は tosufloxacin 治療に抵抗性を示す ことが示唆された。

Table 9. Antimicrobial susceptibility and amino acid substitutions of quinolone low-susceptible strains

AMP AMC CRO CTX MEM CLR AZM LVX TFX MFX NOR GyrA ParC

2018-Y34 8 16 0.25 1 0.5 16 2 0.5 2 2 >2 Ser84Leu Ser84Ile

2018-Y40 8 16 0.25 2 0.5 16 2 0.5 2 2 >2 Ser84Leu Ser84Ile

MIC (μg/mL) Amino acid substitution

AMP, ampicillin; AMC, amoxicillin/clavulanic acid; CRO, ceftriaxone; CTX, cefotaxime; MEM, meropenem; CLR, clarithromycin; AZM, azithromycin; LVX, levofloxacin; TFX, tosufloxacin; MFX, moxifloxacin; NOR, norfloxacin

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31

【 総 括 】

本研究では、地域急性期病院である横浜労災病院における、インフルエンザ菌の抗 菌薬感受性の推移を研究し、見出された耐性株や、低感受性株について基礎及び臨床 薬学的観点から解析を行った。 第1 章では、最新のインフルエンザ菌の薬剤感受性の動向を調べるために、2017 年に分離されたインフルエンザ菌の感受性動向ならびに分子疫学的特徴を解析し, 過去の疫学成績 (2007 年および 2012 年) と比較を行った。その結果、ampicillin 及び clarithromycin に対する感受性株が減少していることを明らかにした。加えて、キノロ ン系薬耐性株は認められなかったものの、levofloxacin の MIC が  0.063 µg/mL を示 すlevofloxacin 低感受性株が出現していることを見出した。また、これら耐性、低感 受性株の分子疫学的解析から、特定のクローンがclarithromycin やキノロン系薬に対 して耐性化、低感受性化したわけではなく、多様性に富んだそれぞれの株が耐性化、 あるいは低感受性化したことが示唆された。 第2 章では、第 1 章の疫学解析において分離された clarithromycin と azithromycin に、 それぞれ64 g/mL と 16 g/mL を示すマクロライド高度耐性株 (2017-Y3) および分離 された症例の背景を解析した。2017-Y3 株が有していた耐性遺伝子を検討したところ、 外来性耐性遺伝子blaTEM-1、mef(A)、tet(M) が陽性であった。mef(A) と tet(M) はリン

クしており、肺炎球菌やStreptococcus oralis と 100%の相同性を示すことを見出した。 すなわち、2017-Y3 株の耐性遺伝子は肺炎球菌や口腔内レンサ球菌から伝播したこと が示唆された。 第 3 章では、検出されたキノロン低感受性株に対する tosufloxacin の殺菌活性を in vitro で検討した。治療濃度の tosufloxacin 存在下で、感受性株は時間依存的に減少し、 6 時間後には検出限界以下であった。一方、低感受性株はいずれも減少の割合は低く、 8 時間でも菌の残存が認められた。この結果から、キノロン低感受性株は、tosufloxacin による治療に難渋する可能性が示唆された。また、後方視的に当院の症例を検討した ところ、tosufloxacin 内服薬を使用し、効果が認められなかった症例が 2 例認められた。 これらの背景を解析したところ、いずれもキノロン低感受性株が分離されており、臨 床的にもキノロン低感受性株は、tosufloxacin 治療に抵抗性を示す可能性が強く示唆さ れた。

(38)
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Fig. 1. Comparison of causative pathogen of acute otitis media.
Table 1. Classification of Haemophilus influenzae based on -lactam susceptibility
Fig. 2. Timeline of introduction of antimicrobial agents and vaccine in pediatric field
Table 2.  Oligonucleotide primers used in this study ompP6P6-FTGGCGGATACTCTGTTGCT143 P6-RGCGCATCTAAGATTTGAACG bla TEM-1TEM-1-FTTGCCGGGAAGCTAGAGTAA302 TEM-1-RCGCCGCATACACTATTCTCA bla ROB-1ROB-1-FCTAATCCGCAGCCTGCTAGT192 ROB-1-FACAACGCCTTGAAAGTGGAC CapsuleHI-
+7

参照

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