• 検索結果がありません。

中国医学処方に基づく生薬製剤の抗微生物作用に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "中国医学処方に基づく生薬製剤の抗微生物作用に関する研究"

Copied!
6
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)
(2)

る肺炎球菌、インフルエンザ菌とした。その結果、銀翹解毒丸製剤と田七人参製剤が肺炎球 菌やインフルエンザ菌に対し抗菌活性を示した。そこで、この2つの製剤について詳細に抗微 生物作用を検討した。 銀翹解毒丸 (modified Gingyo-san, MGS) 製剤は、一般用医薬品 (第2類医薬品) として市場に 流通している。その効能には、かぜによるのどの痛み、口・のどの渇き、せき、頭痛と記載さ れている。本製剤は、中国医学の銀翹散 (Gingyo-san, GS) に基づく加減処方の生薬製剤であ り、経験的に感冒、咽頭扁桃炎、鼻炎、副鼻腔炎などの呼吸器感染症治療に用いられている。 まず、増殖抑制作用を詳細に検討するために、増殖培地中に製剤を飲用濃度 (20 mg/mL) で 添加し、経時的に菌数を測定した。その結果、グラム陽性菌であるメチシリン耐性菌を含む 黄色ブドウ球菌、肺炎球菌 (Fig. 1A)、 化膿レンサ球菌、腸球菌、枯草菌に対し 有意な増殖抑制作用が認められた。グ ラム陰性菌に対しては、多くの菌種で 増殖抑制効果が認められなかったが、 インフルエンザ菌に対しては殺菌作用 を示した (Fig. 1B)。同様の濃度で細菌 のウイルスであるバクテリオファージ や、真菌のCandida albicansとヒト肺胞上皮細胞株A549細胞に対する抑制効果は認められなか った。以上のことから、MGS製剤は呼吸器感染症の起炎菌に対し、直接的な増殖抑制作用を 示すことが明らかとなった。このことは、MGS製剤の臨床的用途と合致しており、MGS製剤 の抗菌活性が呼吸器感染症に有用であるというエビデンスを示す成績であると考えられる。 田七人参 (Panax notoginseng extract, PNE)製剤は、ウコギ科 三七 P. notoginseng の根を乾燥 させたものから製造した生薬製剤であり、日本では健康食品として流通している。中国医学 領域では、強壮剤や止血剤等として使われているが、呼吸器感染症に対する作用は知られて いない。

PNE製剤について、MGS製剤と同様の方法で、増殖抑制効果を検討したところ、化膿レンサ 球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌の増殖を有意に阻害した (Fig. 2A)。一方で、口腔内の常

在菌であるStreptococcus intermediusやS. anginosusに対しては、増殖阻害作用を示さなかった

(Fig. 2B)。そこで、化膿レンサ球菌とS. intermediusを混合培養し、PNE製剤の有 無で各々の菌数を経時的に測定したと ころ、PNE製剤存在下では化膿レンサ 球菌のみが選択的に増殖阻害され、S. intermedius の 割 合 が 有 意 に 上 昇 し た (Fig. 3)。このことは、口腔内常在菌の 増殖に影響を与えず病原菌のみを阻害

Fig. 1. Antimicrobial effects of modified Gingyo-san (MGS)

A, Streptococcus pneumoniae; B, Haemophilus influenzae

108 107 106 105 104 103 1.00E+03 1.00E+04 1.00E+05 1.00E+06 1.00E+07 1.00E+08 0 1 2 3 4 5 6 7 * ** 100000 1000000 10000000 100000000 1E+09 0 1 2 3 4 5 6 7 109 108 107 106 105 10000 100000 1000000 10000000 100000000 1E+09 1E+10 0 2 4 6 8 ** ** * 1010 109 108 107 106 105 104 V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) 1.00E+04 1.00E+05 1.00E+06 1.00E+07 1.00E+08 1.00E+09 0 2 4 6 8 ** ** 109 108 107 106 105 104 1.00E+04 1.00E+05 1.00E+06 1.00E+07 1.00E+08 1.00E+09 0 2 4 6 8 ** ** 109 108 107 106 105 104 0    2    4    6    8 0    2    4    6    8 V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) A. B. S. pneumoniae ATCC49619 Incubation time (hr) H. influenzae ATCC49247 Incubation time (hr) A. B. S. pyogenes JCM5674 Incubation time (hr) S. intermedius ATCC27335 Incubation time (hr) +MGS −MGS +MGS −MGS +PNE −PNE +PNE −PNE

Fig. 2. Antimicrobial effects of P. notoginseng extract (PNE)

(3)

できるため、非原因菌における薬剤耐性 の抑制に貢献することを示している。 PNE製剤は、呼吸器感染症治療で使用さ れる製剤ではないが、化膿レンサ球菌治 療の選択肢となりうることに加え、病原 菌だけを選択的に阻害する薬物のシー ズとなりうると考えられる。 以上のことから、中国医学処方に基づ く生薬製剤において、抗菌作用を持つも のが存在し、特にこれらの直接作用は呼吸器感染症治療薬になり得ることが明らかとなった。 第2章 銀翹解毒丸製剤と抗菌薬の相互作用 市中における呼吸器感染症では、しばしば抗菌薬が 使用されるため、市販薬であるMGS製剤と抗菌薬が 併用される可能性が考えられる。そこで、本章では、 抗菌薬とMGS製剤を併用した際の相互作用をチェ ッカーボード法で検討した。試験した既存の抗菌薬 のうち、levofloxacinを用いた場合、黄色ブドウ球菌 のキノロン高度耐性株に対し相乗効果が認められ た 。 一 方 で 、 大 腸 菌 な ど の グ ラ ム 陰 性 菌 は 、 levofloxacinに対し拮抗作用を示した。そこで、拮抗 作用に着目し、そのメカニズムを検討するために、 大腸菌の各種排出ポンプ欠損株を用い検討した。そ の結果、主要な薬剤排出ポンプであるAcrAB-TolC 排出系欠損株に対してのみ拮抗作用が減弱した (Table 1)。 以上の結果から、MGS製剤は、levofloxacinの抗菌作用に対し影響し、その作用は菌種により 異なることが示された。特に、グラム陰性菌である大腸菌に対しては、薬剤排出ポンプに作 用することで、levofloxacinの抗菌作用を減弱させることが示された。したがって、大腸菌を 起因とする感染症治療でlevofloxacinを服用している場合、MGS製剤との併用は回避するべき 医薬品情報であり、消費者への注意喚起が必要であることが示唆された。 第3章 白花蛇舌草製剤のもつバイオフィルム阻害活性 白花蛇舌草は、アカネ科フタバムグラOldenlandia diffusaの根を含む全草を基原とする植物で あり、国内市場で健康食品として流通している。また、中国医学の領域では清熱解毒薬とし て分類される。そのため、肺炎や虫垂炎、尿路感染症などの炎症性疾患に使用されるほか、 呼吸器感染症の補助療法として、MGS製剤等の処方中の清熱解毒作用を補強する目的で併用

Table 1. Combination effect on Escherichia coli efflux pump deleted mutant

Strain with MGS (+) LVFX-MIC (mg/L) FIC Index   BW25113 1 33.3    ΔmdtF 1 16.9    ΔacrB 0.031 4.9    ΔacrD 1 33.3    ΔemrY 1 33.3    ΔemrB 1 16.9    ΔtolC 0.008 2.0    ΔmdtB 1 16.9    ΔacrE 1 16.9

Concentration of modified Gingyo-san (MGS), 40 mg/mL FIC, Fractional Inhibitory Concentration LVFX, Levofloxacin

MIC, Minimum inhibitory concentration

1

Fig. 3. Specific growth inhibitory effects of P. notoginseng extract (PNE) against Streptococcus pyogenes.

10000 100000 1000000 10000000 100000000 1E+09 0 1 2 3 4 5 6 7 * * * A. B.  GAS48  GAS196          PNE 0 mg/mL     PNE 10 mg/mL

Incubation time (hr) Incubation time (hr)

V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) 109 108 107 106 105 104 10 100 1000 10000 100000 1000000 10000000 100000000 0 1 2 3 4 5 6 7 * * ** *** 108 107 106 105 104 103 102  10 A.  PNE 0 mg/mL  PNE 10 mg/mL         S. pyogenes    S. intermedius

Incubation time (hr) Incubation time (hr)

10000 100000 1000000 10000000 100000000 1E+09 1E+10 0 1 2 4 6 * 10000 100000 1000000 10000000 100000000 1E+09 1E+10 0 1 2 4 6 ** V ia bl e ba ct eri a (CF U /m L ) 1010 109 108 107 106 105 104 1010 109 108 107 106 105 104 B.  PNE 0 mg/mL PNE 10 mg/mL

S. intermedius S. pyogenes S. intermedius S. pyogenes

    

    S. pyogenes     S. intermedius

Fraction of bacteria (%) Fraction of bacteria (%)

(4)

される。そこで、本研究では、呼吸器感染症の起炎 菌の中で、インフルエンザ菌に焦点をあて白花蛇 舌草エキス (Oldenlandia diffusa extract, OdiE) 製剤 の作用を検討した。飲用濃度のOdiE製剤存在下で、 インフルエンザ菌を培養したところ、増殖抑制効 果は認められなかった。インフルエンザ菌は、バイ オフィルムを形成し、慢性化や難治化に関与する ことが報告されている。そこで、OdiE製剤のインフ ルエンザ菌のバイオフィルムに対する抑制効果に ついて検討した。OdiE製剤存在下で、インフルエン ザ菌のバイオフィルム形成をクリスタルバイオレ ット法で定量したところ、OdiE製剤の濃度依存的 にバイオフィルム形成量が減少していた (Fig. 4)。インフルエンザ菌は、菌体外のオートイン デューサーを関知してバイオフィルムを形成することが知られている。そこで、オートイン デューサー産生にかかわるluxS遺伝子の転写量を半量的RT-PCR法で検討したところ、OdiE製 剤添加により有意に減少していた。さらに、OdiE製剤存在下におけるオートインデューサー 量を定量したところ、OdiE製剤の用量依存的に有意に減少していた。 したがって、OdiE製剤はインフルエンザ菌の増殖を阻害することなしに、オートインデュー サー産生抑制を介してインフルエンザ菌のバイオフィルム形成を阻害することが示された。 このことは、OdiE製剤が呼吸器感染症治療において、MGS製剤等の治療薬を補助し、難治化 予防につながる可能性が示唆された。 総 括 本研究では、中国医学処方に基づく生薬製剤の感染症に対する基礎的エビデンスを構築する ことを目的とし、各製剤の抗微生物作用の研究を行った。その結果、銀翹解毒丸製剤や田七 人参製剤が、呼吸器感染症起炎菌に対する直接的な抗菌作用をもつエビデンスを見出し、ま た、銀翹解毒丸製剤については、既存の抗菌薬と併用することで、相互作用が生じることを 明らかにした。さらに、白花蛇舌草製剤は、バイオフィルム抑制を介して難治化を予防でき るというエビデンスを示し、感染症治療薬との補助薬としての有用性を明らかにした。 本研究の成果は、市中の呼吸器感染症における、薬剤耐性回避を含めた生薬製剤の適切な選 択と抗菌薬の相互作用に対する注意喚起を行うための情報の一つとなりうると考えられる。 加えて、薬剤師の活動として重要なセルフメディケーションの推進と医薬品情報提供に貢献 すると考えられる。 【研究結果の掲載】

(1) BMC Complement Altern Med. 2016;16(1):463, (2) Pharmacology. 2019;103(5-6):221-227, (3) Eur J Integrat Med. 2020;

33:101016,

(4)PLoS One. 2016;11(11):e0167335

Fig. 4. Biofilm formation assay

0 0.1 0.2 0.3 0.4 0 2.5 5 10 20

Oldenlandia diffusa extract (mg/mL)

(5)
(6)

Fig. 1. Antimicrobial effects of modified Gingyo-san (MGS)  A, Streptococcus pneumoniae; B, Haemophilus influenzae
Fig. 3. Specific growth inhibitory effects of P. notoginseng extract  (PNE) against Streptococcus pyogenes
Fig. 4. Biofilm formation assay 00.10.20.30.402.5510 20

参照

関連したドキュメント

細菌製剤への SLP 審査の導入 日本ビーシージー製造株式会社との協 議を 2 回行い、乾燥 BCG 膀胱内用(日本 株)については SLP 審査の導入を進める

各種抗生物質・合成抗菌剤・駆虫剤・抗原虫剤の販売高と販売量 Sales Amounts and Sales Volumes (Active Substance) of Antibiotics, Synthetic.

試験する.腸溶性製剤は,低胃酸の被験者で試験を行う必要はない.(

12 くん煙剤 くん煙剤は,発熱剤・助燃剤を含んだ製剤で,有効成

と HER2(ErbB2)の双方を阻害す る経口のチロシンキナーゼ阻害剤で あり,カペシタビンとの併用におい て HER2 過剰発現が確認された手 術不能又は再発乳がんに適応を持 つ.

A.研究目的  日本赤十字社では血液製剤が原因となる感染.. 小板製剤による輸血後の細菌感染症例を比較し

1.微生物製剤とは 微生物は肉眼では観察できない微小な生物のこと で,細菌類,原生動物類,真菌類,微細藻類などを指 しています.これらの微生物は人間の歴史より遙かに 遠い昔の地球上に誕生し,様々な進化と分化を繰り返 しながら,人間と共存する現代まで至っています.物 質循環の視点から見て地球環境の維持にも非常に重要 な役割を果たしています.すなわち光合成を通じて有

各種抗生物質・合成抗菌剤・駆虫剤・抗原虫剤の販売高と販売量 Sales Amounts and Sales Volumes (Active Substance) of Antibiotics, Synthetic.