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長崎大学附属図書館による教養教育科目の授業支援 松田綾

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情報コミュニケーション学会第11回全国大会 CIS2014(2014.3.1~2)

長崎大学附属図書館による教養教育科目の授業支援

松田綾 山本知美 Aya MATSUDA Tomomi YAMAMOTO

長崎大学附属図書館 Nagasaki University Library

あらまし

長崎大学の 2 年生が履修する教養科目「情報化の役割と課題」では、グループごとにテーマを与え、さ らに学生それぞれに個別キーワードを選択させた上で、関連事項を調べてプレゼンテーションさせる授業を展開し た。この調べ学習に用いる文献は、学生にパスファインダーを作成させる過程を設けて附属図書館所蔵の図書や雑 誌を探索させ、自ら適切と考えるものを選択させた。この授業への附属図書館による支援として、授業内容に沿った 形でパスファインダーの作成方法を学生に講習して習得させた。パスファインダーを作るという実習を通して、学生 が情報検索のプロセスを習得し、課題学習を円滑に進めることができた。

キーワード:授業支援、パスファインダー、情報探索、図書館ガイダンス、利用者教育

1 はじめに

パスファインダーとは、特定のトピックに関する資料や 情報の入手方法を示したいわば情報ガイドであり、大学 図書館をはじめ全国の各種図書館が、利用者教育の一 環として多数作成している[1-2]。

長崎大学附属図書館でも、図書館職員が独自に作成 したケースはいくつかあるものの、授業内容に即したパ スファインダーの作成は、教員との連携が必要不可欠で あることから、長年足踏み状態となっていた。

そんな折、長崎大学の教養教育が一新し[3]、平成 24 年度から新しいカリキュラムである「モジュール方式」が 採用されることになった[4]。従来の講義型の授業と異な り、調べ学習やグループディスカッションなどアクティブ ラーニングを取り入れた授業が展開される新カリキュラム は、まさにパスファインダーのような支援ツールが有効で あり、一刻も早い整備が必要であると考えた。

パスファインダーを作成する上で、最も重要であり難関 でもあるのが、教員へのアプローチであるが、ほとんどの モジュール科目で、情報共有のための授業公開が行わ れていたため、授業参観をきっかけにして教員と交流を 図り、パスファインダーの作成を働きかけてきた。そうした 積み重ねの結果、今回報告する科目「情報化の役割と課 題」との授業連携が叶い、当館として初めて、授業内容に 特化したパスファインダーを作成する機会を得た。

本取り組みの特徴は、パスファインダーの基本形であ る「図書館が作成し、学生が参照する」という形を超えて、

学生自身にパスファインダーを作成させることにより、情 報探索の基礎的な知識と技能を修得させることを目指し た点にある。本稿では、この新しい取り組みについて詳 述するとともに、学生がパスファインダーを作成すること によりもたらされる効果についてまとめる。

2 授業支援の準備

教養教育科目「情報化の役割と課題」では、少人数構 成のグループごとに学習テーマを与え、各学生が個別 の関連キーワードについて調べ学習を行い、それをプレ ゼンテーションするという授業が計画されていた。教員と 数回に渡る打ち合わせを行い、候補となる五つの学習テ ーマについてパスファインダーを作成することで、調べ 学習に利用できる資料にはどのようなものがあるか、また それらの資料を当館で所蔵しているかを探ることにした。

学習テーマは、NHK製作番組「ITホワイトボックス」シリ ーズから選定されており、番組内容に関してまとめられた 資料をお借りして、それを参考にしながらパスファインダ ーを作成した。パスファインダーを構成する要素には、キ ーワード、百科事典、用語辞典、図書、雑誌論文、新聞 記事、白書、統計、AV資料、Webサイトなど様々なもの があるが、今回は学習テーマの内容や授業の進行方法 等から判断して、以下の 6 項目を取り上げることにした。

1. キーワード 2. 入門的な情報源 3. 図書

(2)

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(3)

情報コミュニケーション学会第11回全国大会 CIS2014(2014.3.1~2)

スファインダーを使うとどんな利点があるのか、といった 基本的な事柄について説明した。

(2)キーワード

今回は、担当キーワードが割り当てられていたため、

学生が自ら適切なキーワードを設定する必要はなかった が、情報収集を行う上で、キーワードの選定は非常に重 要であり、検索精度にも影響することを伝えた。

(3)入門的な情報源

次に、入門的な情報源を用いて、その概念や意味を 調査し、テーマの全体像を掴むことが必要になる。入門 的な情報源としては、百科事典や主題別専門事典、入門 書などがあるが、今回は当館で契約している知識探索サ イト「ジャパンナレッジ」[5]を紹介し、様々な事典・辞書 群を一括横断検索できるオンライン辞書・事典の便利 さを体感させた。これらのオンライン辞書・事典は、頻繁 に更新されるため、新語や時事語を検索する場合にも効 果的であること、契約データベースを用いることにより、

信頼性の高い情報を入手できることも併せて説明した。

(4)図書

蔵書検索システム OPAC を使って、長崎大学で所蔵し ている図書の探し方を解説した。OPACは図書のタイトル や著者名からの検索は可能だが、内容から検索すること は難しい。実習では、敢えて検索がヒットしにくいキーワ ードを例に用いて、関連する図書が見つからない状況を 作り出し、一つの検索語にこだわらず、同義語や類義語 などでも幅広く検索することの必要性を実感させた。

また、図書の内容から検索したい場合のツールとして、

「Webcat Plus」[6]を紹介し、目次やカバーなどの情報か らも検索ができること、「CiNii Books」[7]との連携により他 大学の図書館の所蔵も確認できることを説明した。

(5)雑誌・雑誌論文

雑誌については、まず図書との性質の違いを説明し、

区別する必要があることを認識させた。雑誌論文を探す 場合には、専用の論文検索データベースを用いることが 必要であり、その一例として「CiNii Articles」[8]を紹介し た。ただし、雑誌・雑誌論文については、図書と違い新規 に購入して整備するといった事前準備が困難であったた め、今回は実習させなかった。

(6)新聞記事

最新の動向や歴史的な流れを知るためには、新聞記 事も有用な情報であるが、一つ一つ新聞を広げて記事を 追うことは困難である。そこで、当館で契約している朝日 新聞記事データベース「聞蔵 II ビジュアル」[9]を紹介し、

キーワードから関連する新聞記事を簡単に探す方法を 説明した。

(7)その他の情報

その他の情報としては、Web ページやその他の有用 な情報が対象となる。その際、信頼できるサイトであるか どうかが非常に重要であり、検索エンジンで検索を行う場 合は、学術情報専門の検索エンジンを用いると、精度の 高い情報が得られることにも触れた。

4 学生の反応と効果

今回、著者らが行った取り組みは、学生に情報検索の 一連の流れを習得させることを目指したという意味では、

通常の図書館ガイダンスと大きな差異はない。しかし、受 講した学生の態度や反応は、良い意味で全く異なってい た。学生のニーズに即したスキルを習得できる内容であ ったことも重要なポイントであったと思うが、何よりも学生 が図書館の支援を必要としている時に、適切な支援を提 供できたことが大きな要因であったと考えられる。

図書館ガイダンスについては、入学まもない 1 年生や 卒業論文の執筆前の2~3年生が受講することが多く、必 要に迫られていないということもあり、どうしても緊迫感に 欠けてしまう。加えて、習得した知識をすぐに実践する機 会がないため、記憶に残りにくく、いざ必要となった時に 発揮できないというアンマッチが起こっている可能性があ る。このことは、講習を行った授業直後に学生がアンケー トに記述した「今回学んだ資料検索の方法は、一年生の 時にも学んだ。しかし全く今までの活動の中に生かすこ とができていなかった」というコメントからも伺える。

それに対して今回の取り組みは、目の前にある課題を クリアするという明確な目標の下で授業に臨んでいるた め、動機付けの段階から既に異なる上に、検索を行う直 前に解説を行い、疑問があればその場で解決する、とい うように図書館の支援と授業の内容が、きちんと連動して いたため、最後まで意欲的に取り組むことができたので はないだろうか。

(4)

また意識的でないにしても、パスファインダーに沿って 情報収集していくことで、あらゆる資料や情報を満遍なく 検索する手順が身についたのではないかと思う。学生の 意見として、「様々なデータベースが使えることを知った。

これからの調べ学習に利用したい」、「今まで使っていな かったシステムが使い勝手のいいものだと思った」等が 挙がっていたことより、今後の学習で積極的に活用してく れることを期待している。

5 反省と気づき

今回は、現代社会で話題のトピックを取り上げていたこ ともあり、用語の意味を調べる段階で、オンライン辞書・

事典にも収録されていない最新のキーワードがいくつか あった。インターネットの個人サイトでは言及されている ものもあったが、その信憑性の見極め方までは、時間の 制約もあり、解説することができなかった。

しかし、講習を行った授業の直後に学生がアンケート に記述した意見を見ると、いかにインターネット上の情報 だけに頼っている学生が多いかということに驚かされた。

そうであるならばなおさら、情報リテラシーの部分は、時 間を割いて説明すべきだったのではないかという点が心 残りでならない。図書館で所蔵している資料を適切に利 用する方法を指導することはもちろん大切だが、膨大な インターネットの情報の中から、どのようにして信頼できる サイト、質の高い情報を見つけ出せば良いのかというノウ ハウや他人の文章を引用する際の注意事項など、情報 モラルの部分についても、これから指導していく機会を 作っていかなければならないと考えている。

6 あとがき

本稿では、教養教育科目の授業と連携して、学生にパ スファインダーを作成させる取り組みについて紹介した。

今回の取り組みは、パスファインダーを作るという実習を 通して、学生が情報検索のプロセスを習得し、課題学習 を円滑に進めることができたという意味では、概ね成功で あったと言える。

大切なのは資料や情報に到達するまでの過程であり、

選択した資料や情報が果たして適切であったのか、求め ている情報が得られたのかは、これから学生自身が判断 して、修正を加えながら、よりよいパスファインダーの形 に仕上げてくれればよいと考えている。

本来図書館は、適切な時に適切な資料や情報を提供 することが望ましく、学習の段階ごとにガイダンスや講習 会を実施することが理想的である。しかし、現実には様々 な制約があって実現は難しい。パスファインダーはそうい った面からも大変有効で、事前に図書館側がコンテンツ を揃えておくことで、必要な時に必要な情報を参照しても らうことができる。改めて、量、質ともに十分なパスファイ ンダーの構築が最優先課題であると感じた。

謝辞

本取り組みの準備・実施にあたり、教養教育科目「情報 化の役割と課題」を開講された、長崎大学情報メディア基 盤センターの丹羽量久先生と藤井美知子先生に多大な 協力を頂いた。ここに感謝の意を表する。

参考文献

[1] 千葉大学附属図書館、「授業資料ナビゲータのすす め 」 、 http://alc.chiba-u.jp/pathfinder/index.html

(2014 年 1 月 30 日アクセス)

[2] 私立大学図書館協会東地区部会企画広報研究分科 会 、 「 パ ス フ ァ イ ン ダ ー バ ン ク 」 、 http://www.jaspul.org/pre/e-kenkyu/kikaku/pfb/pfb_

frameset.htm (2014 年 1 月 30 日アクセス)

[3] 長崎大学、『教養教育 平成 24 年度学生便覧』、長 崎大学教務委員会、長崎、2012 年

[4] 長崎大学、『平成 24 年度入学生 全学モジュールテ ーマガイドブック』、長崎大学平成 23 年度モジュー ル科目小委員会、長崎、2012 年

[5] ネ ッ ト ア ド バ ン ス 、 「 ジ ャ パ ン ナ レ ッ ジ 」 、 http://www.jkn21.com/ (2014年1月30日アクセス)

[6] 国 立 情 報 学 研 究 所 、 「 Webcat Plus 」 、 http://webcatplus.nii.ac.jp/ (2014 年 1 月 30 日アク セス)

[7] 国 立 情 報 学 研 究 所 、 「 CiNii Books 」 、 http://ci.nii.ac.jp/books/ (2014 年 1 月 30 日アクセ ス)

[8] 国 立 情 報 学 研 究 所 、 「 CiNii Articles 」 、 http://ci.nii.ac.jp/ (2014 年 1 月 30 日アクセス)

[9] 朝 日 新 聞 社 、 「 聞 蔵 I I ビ ジ ュ ア ル 」 、 http://www.lb.nagasaki-u.ac.jp/search/database/dna 2.html (2014 年 1 月 30 日アクセス)

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