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氏名 竹原

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Academic year: 2021

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氏 名 竹原

タ ケ ハ ラ シュン

学 位 の 種 類 博士(作業療法学)

学 位 記 番 号 健博 第

177

号 学位授与の日付 令和元年

9

30

課程・論文の別 学位規則第4条第2項該当

学 位 論 文 題 名 高齢者のうつ状態の有無は社会的役割とどのような関係があるのか

~役割チェックリストを用いた検討~

論 文 審 査 委 員 主査 教 授 石井 良和

委員

教 授 小林 法一 委員 准教授 宮本 礼子

委員

准教授 藺牟田 洋美

【論文の内容の要旨】

高齢者の心理・社会的要因に関する研究として,ライフイベントに関するものが多いが,

特に,知人や配偶者の死,社会や家庭における役割の縮小などのいわゆる喪失体験に関す る視点が頻繁に取り上げられている.役割は,本人と社会との関係の中で自分が何者であ るかを規定し,自らの存在の意味を相互に確認することと言われている.よって,役割が 減少することは,高齢者が存在意義を失い,精神的健康を維持するためにも不利益になる のではないかと考えた.ところで,精神的健康が損なわれる

1

つとして老年期のうつ状態 がある.ライフイベントとの直接的な関連よりは,社会活動との関連を指摘する研究があ り,人の作業としての役割とうつ状態の関連を検討することは重要と捉えた.そのために は,過去に喪失した複数の役割や,現時点で新たに獲得した役割や継続して行っている役 割について検討する必要があると考えた.

そこで,うつ状態の有無が役割の変化と関連するとの仮説のもと,作業療法における役 割評価法の一つである役割チェックリストを用いて,役割の減少や増加などの役割変化と うつ状態の関連を調査した.

方法としては,通所サービスを利用する農村地帯の高齢者

708

名に対し,調査票による データ収集を実施した.役割チェックリストの「学生・生徒」, 「勤労者」, 「ボランティア」,

「養育者」, 「家庭維持者」, 「友人」 , 「家族の一員」, 「宗教への参加者」 , 「趣味人/愛好家」,

「組織への参加者」の

10

の役割について,「現在担っているか」,「過去に担っていたか」

について回答を求めた.回収を終えたデータをもとに,役割ごとに

維持

(過去と現在に

担っている),

増加

(過去に担っていなかったが現在は担っている),

減少

(過去に担

(2)

っていたが現在は担っていない),

なし

(現在も過去も担ったことがない)の4つのパタ ーンに分類した.また,うつ状態は,介護予防事業で用いられる基本チェックリストをも とに,「うつあり群」と「うつなし群」とに分けて従属変数とし,性別,年齢階級,役割の 増減などを独立変数として,多重ロジスティック回帰分析により,うつ状態の有無の関連 性を検討した.

結果として,男性や後期高齢者は,うつ状態が高いことが示された. 「うつあり群」と関 連が高い役割は, 「学生」

減少

, 「趣味人」

なし

, 「家族」

減少

, 「性別」, 「趣味人」

維 持

,「宗教への参加者」

減少,「勤労者」

減少,「年齢階級」であった.

また,うつなしと関連が高い役割は,「友人」

増加

,「養育者」

減少

,「家庭維持者」

維 持

, 「ボランティア」

なし

, 「ボランティア」

減少

, 「宗教への参加者」

なし

であった.

本研究は日本のうつ病の生涯有病率とは異なり,男性の方がうつ状態の割合が多かった.

主に農村地帯の男性は,明確な定年制度はみられないが,家を守る役割から次の世代へ農 地を譲ることを考え始めることで老いを自覚し,老化などによる心身機能の低下により,

思ったように農作業を行うことができなくなることなどが,うつ状態のような精神的不調 を引き起こすのではないかと思われる.

後期高齢者の方がうつありが多いことは,高齢になるほど複数の疾病に罹患する割合も 高まり,慢性的健康問題を抱えることなどにより,うつ状態を引き起こす傾向を高めてい ると考えられる.

うつ状態の有無と役割変化の関連については,生涯学習を行っている高齢者は

4

割以上 で,その内容は趣味的なもの,健康・スポーツなどであると言われているが,こうしたこ とは逆に,学ぶという「学生」の役割の減少がうつ状態の要因になっているように思われ る.「趣味」については,その役割の減少や喪失よりも,維持がうつ状態と関連している.

趣味が減少することよりも,これまでの趣味を繰り返し維持し続けることが高齢に伴う心 身機能の低下のため困難になると語る高齢者もみられた.また,興味がある趣味の継続を 断つことに対する不安や,趣味を辞めたいと思っても,趣味を通して知り合った仲間へ中 止する理由などを説明することに煩わしさを感じ負担に思うため,漫然と継続していると いう意見も聞かれた.こうした精神的負担はうつ状態の引き金になるとも考えられる.「家 族」の減少は,日本の農村社会の高齢者では独居とうつ病に有意な相関が認められるなど,

特に,「家族」として,これまで連れ添っていた配偶者などとの死別はうつ状態を引き起こ

す大きな要因と考えられる.「宗教」に関しては,農村部の

85

歳以上の高齢者の

6

割以上

が,「神棚・仏壇の管理」の役割を実施しており,宗教への参加者は高齢者にとって大切な

役割の一つと考えられる.そのため気分障害により,心のよりどころのひとつとして宗教

への参加が増加することや,逆に,宗教への参加の機会が減ることで,心のよりどころを

失うこと,さらには宗教活動に参加する他者との交流も減るなどにより,うつ状態が引き

起されるとも考えられる.「仕事」の減少については,定年退職に伴う心の準備をすること

は農業地帯では難しく,継承的役割は存在するが,農林業の担い手という仕事の役割の突

(3)

然の喪失や家族など周囲からの引退に対する精神的圧迫などがうつ状態の誘因の一つにな るのではないかと思われる.

高齢者に対する作業療法においては,本研究で得られた役割変化を評価することで,うつ

状態やそれに伴う行動の変化を予測して,高齢者の人生を活き活きと過ごすための予防的

な作業療法実践に寄与できるのではないかと思われる.

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