複雑化 された 日本語の文字表記 文字文化論
村 越 行 雄
は じめ に
「複 雑 化 され た 日本 語 の 文 字 表 記 」とは 、一 つ に は 、英 語 な どの よ う に、
単 呪 の 文 字 に よっ て 表 記 す る の と は異 な り、漢 字 、 平 仮 名 \ 片 仮 名 の 三 種 類 の 文 字 、 あ るい は 日常 的 に見 な い 日は な い ほ ど、 頻 繁 に使 用 さ れ て い る ロー マ 字 を加 えれ ば、四 種 類 に な る とい う具 合 に 、複 数 の 文 字 に よ っ て 表 記 す る こ とを意 味 し、 さ ら に は、 四種 類 の 文 字 に よ る表 記 自体 が す で に複 雑 で あ る が 、 そ れ に増 して 、 四種 類 の文 字 を固 定 的 な 方 法 で使 用 す るだ けで は済 まず 、 自 由 に使 い 分 け を す る こ とで 、 文 字 表 記 が 一 層 複 雑 化 され て きた こ と を意 味 す る。 しか し、 そ の よ う な複 雑 化 され た文 字 表 記 と い う 日本 語 の 実 状 に つ い て 、 今 回 こ こで 善 し悪 し の価 値 判 断 を下 す つ も りは な い。 む し ろ、 日本 語 に お い て 、極 め て 重 要 な位 置 を 占 め る 文 字論 、 そ して文 字 に ま つ わ る独 特 な文 化 論 を明 らか に して い くた め の 一 方 法 とし て
、 日本 語 の 文 字 表 記 の実 状 に 目 を向 けて 、 検 討 し て い くこ と にす る。 従 っ て 、 よ く議 論 され る問 題 、例 え ば、 漢 字 表 記 の 難 し さ、
漢 字 の 量 的 多 さ 、 片仮 名 表 記 の 氾 濫 、 ロ ー マ字 表 記 の 氾 濫 、 日本 語 文 字 表 記体 系 の 崩 壊 へ の危 惧 な どの 問 題 は直 接 取 り上 げ な い こ と に し、 現 在 行 な わ れ て い る 四種 類 の 文 字 に よ る表 記 法 の特 徴 と意 義 を見 、 さ らに 四 種 類 の 文 字 を最 大 限 に利 用 ・活 用 し て行 な わ れ る表 記 の効 用 と弊 害 な ど を見 て い く こ とに す る。 な お 、 ロー マ 字 表 記 を 日本 語 の文 字 表 記 法 の 一 つ に入 れ る こ とに は 、 当 然 の事 と し て、 異 論 が 出 るで あ ろ うが 、 そ の 問 題 に は触 れ ず に 、 ご く単 純 に 、例 えぼ 、名 前 、駅 名 、地 名 、商 品名 な ど、
実 に多 くの ロ ー マ字 表 記 を毎 日 目 にす る私 達 に とって 、 無 視 あ る い は軽 視 す る こ との で きな い 存 在 に な って い る とい う意 味 で 、 正 規 に入 れ るか ど うか は別 に して 、 一 応 日本 語 の 文 字 表 記 法 の 一 つ と して 入 れ て、 話 を 進 め て い く こ とに す る。
日本 語 の 文 字 表 記 の 特 徴 と意 義 曹
四 種 類 の 文 字 を使 用 す る表 記 法 は 、 他 の 諸 言 語 と比 較 した 場 合 、 特 異 な 方 法 で あ る こ とは 明 らか で 、 一 見 す る と、 覚 え な け れ ば な らな い文 字 数 が 非 常 に多 く、 正 確 に使 い分 け る こ とが 非 常 に難 し く、 従 っ て そ の よ
う な複 雑 さ を単 純 化 す べ き で あ る とい う意 見 が 出 て く るの も根 拠 の な い こ とで は な い と思 わ れ るで あ ろ うが 、 も しそ う思 う の で あ れ ば、 否 定 的 な立 場 か ら 日本 語 の 文 字 表 記 を批 判 す る しか な くな る で あ ろ う。しか し、
た だ単 に批 判 す るだ けで は、 日本 語 表 記 の現 実 を正 確 に理 解 して い る と は言 え な い で あ ろ う。 とい うの は、 現 に使 用 され て い る文 字 は、 何 らか の形 で 、 そ の 言語 体 系 、 さ らに はそ の 文 化 形 態 な どに適 合 して い る と考 え られ 、 何 らか の 形 で 適 合 して い るか ら こそ 、 消 滅 せ ず に、 現 に残 って 使 用 され て い る と考 え られ るか らで あ る。 そ こ に、 日本 語 の文 字 表 記 の 特 徴 と意 義 を 見 出 す 必 要 性 が あ る と言 え る。 こ こ で は 、 そ の特 徴 と意 義 を全 て 網 羅 す る こ とは で きな い の で 、 気 が付 い た 点 を 幾 つ か述 べ て い く こ と にす る 。
(1)歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を文 字 の 上 に残 して い る こ と
文 化 とい う もの が 、 た と え どの よ うな文 化 で あ れ 、 他 の 文 化 との 接 触 を一 切 持 た ず 、 他 の文 化 か らの 影 響 を一 切 受 けず に 、 発 展 す る と は考 え に く く、 少 な く と も歴 史 上 の あ る時 点 で 、 あ る文 化 と接 触 し、影 響 を受 け る と考 え る方 が 普 通 で あ り、 そ の接 触 の 跡 、 そ の 影 響 の 跡 を様 々 な形 で 見 出 す こ とが で き よ う。 言 語 の場 合 も同 様 で、 あ る言 語 が他 の 言 語 と 接 触 し、 影 響 を受 け る こ とが あ り、 そ の 接 触 や 影 響 の 跡 を語 彙 な どの 段 階 で見 出 す こ とが で き る。 言 語 の諸 側 面 の 内、 特 に語 彙 は 、 単 に言 語 上 の影 響 だ けで な く、 よ り広 く歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を知 る上 で 、 重 要 な役 割 を果 た す もの で 、 よ く調 査 の対 象 に され る もの で あ る。 例 え ば、 あ る 言 語 の 語 彙 を調 べ れ ば 、 他 の言 語 か らの 借 入 語 を 見 つ け る こ とが で き、
し か もそ の 借 入 語 を調 べ る こ とで 、 どの 言 語 か らの 借 入 語 な の か 、 時 代 的 に 、 い つ 頃 の借 入 語 な の か 、 どの 分 野 の借 入 語 な の か(軍 事 、 宗 教 、 政 治 、 経 済 、 ス ポ ー ツ、 フ ァ ッ シ ョ ン、 料 理 、娯 楽 、 そ の 他 の様 々 な分 野 の 内 、 どの分 野 か)、 借 入 語 の語 数 ・浸 透 度 な ど は ど うな の か 、 そ の他 の こ とが 明 らか に な り、 それ らの借 入 語 の調 査 を通 し て、 どの 時 代 に、
どの 文 化 と接 触 し、 影 響 を受 け た か を よ り具 体 的 に知 る こ とが で き る。
歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を語 彙 の段 階 で調 べ る こ とはで きて も、 同様 の こ とが文 字 の段 階 で も行 な え る と は言 え な い 。 単 一 の 文 字 に よ っ て表 記 す る 言語 で は、 歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を文 字 の 上 に残 す こ と は、 全 くな い か 、 そ れ と も何 らか の形 式 上 の 操 作 に よ っ て 、 少 し はあ りえ る(例 え ば 、 英 語 の場 合 の よ うに、 イ タ リ ック体 を外 国 語 句 の表 記 に使 用 す るが 、 イ タ リ ック体 に は、 そ れ以 外 に も、 新 聞雑 誌 名 、書 名 な ど に も使 用 され る た め、そ の 区別 が 外 見 的 に は は っ き り しな い)。 そ し て、複数 の文 字 に よっ て 表 記 す る言 語 で も、 複 数 の 文 字 の そ れ ぞ れが 異 な る 歴 史 的 ・文 化 的影 響 を表 す もの で な けれ ば、 単 一 の 文 字 の 場 合 と同様 に な っ て し ま う。 た だ し、 複 数 の 文 字 が それ ぞ れ 異 な る歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を表 す とし て も、
語 彙 の 場 合 と比 べ れ ば、 具 体 性 は欠 け る。
現 在 の 日本 は 、 特 に若 者 の 間 で は、 四種 類 の 文 字 を使 い 分 け な が ら、
表 記 して い る の が 現 実 で あ る。 そ れ ら四種 類 の 文 字 とは、 勿 論 、 漢 字 、 平 仮 名 、片 仮 名 、 ロ ー マ 字 の 四種 類 の こ とで あ る。 まず 最 初 に 、漢 字 は、
中 国 か ら伝 来 した もの で 、 時 代 的 に は、 漢 字 の伝 来 と 区別 して 、 日本 人 が 漢 字 を実 際 に使 用 して 表 記 す る とい う意 味 か ら言 う と、少 な くとも飛 鳥 時 代 まで 遡 れ る。 次 に 、仮 名 は 、漢 字 を基 に、 日本 で 奈 良 時代 に工 夫 され 、 徐 々 に発 達 し、 平 安 時 代 に完 成 され た 日本 独 自 の文 字 で あ る。 そ して 、 平 仮 名 と片仮 名 は、 異 な る方 法 で 発 明 され 、 普 及 の 速 度 ・広 が り、
普 及 の 仕 方 、普 及 の 領 域 な ど も異 な り、 別 々 の 運 命 を辿 る こ とに な る。
最 後 に 、ロ ー マ 字 は、古 代 ロ ー マ 帝 国 か ら欧 米 諸 国 に広 ま り、日本 に 渡 っ て きた もの で、 日本 にお け る使 用 と普 及 は 、 イ エ ズ ス 会 の 宣 教 師 が布 教 の た め に来 日 した天 文 十 八 年(1549年)か ら始 ま り、明治初 年か ら盛 ん に な っ て い く。 つ ま り、簡 単 に 言 え ば、 飛 鳥 時代 ・中国(漢 字) 、平安 時 代 ・日本(平 仮 名 と片 仮 名)、 明 治 時 代 ・欧 米(ロ ー マ 字)と い う、 異 な る時 代 背 景 の 下 で 使 用 ・普 及 さ れ た 文 字 、 異 な る文 化 で 生 まれ た 文 字 を、
今 の 私 達 は 余 り意 識 す る こ と な く、 使 用 し て い る の で あ る。 余 り意 識 し な い と言 っ て も、 漢 字 一 中 国 、仮 名 一 日本 、 ロ ー マ字 一 欧 米 とい った 、 そ れ ぞ れ の文 字 に まつ わ る イ メ ー ジ は持 って お り、 そのイ メー ジ を利 用 して 、 四 種 類 の文 字 を 自 由 に使 い 分 け て い る と言 え る。
(2)発 達 段 階 の異 な る文 字 を使 用 して い る こ と
文 字 の発 達 過 程 に つ い て 、 絵 文 字 → 表 意 文 字 → 音 節 文 字 → 単 音 文 字 と
い う順 序 で 文 字 が 発 達 す る とい う考 え方 が あ るが 、 そ の考 え方 を受 け入 れ る の で あ れ ば、 表 意 文 字(漢 字)、 音 節 文 字(平 仮 名 と片仮 名)、 単 音 文 字(ロ ー マ 字)と い う異 な る発 達 段 階 に あ る文 字 を 同 時 に使 用 して い る こ と にな り、 言 い換 え れ ぼ 、 最 も発 達 した 文 字(ロ ー マ 字)か ら、 未 発 達 段 階 に あ る文 字(漢 字)に 至 る まで 、 四 種 類 の文 字 を互 い に矛 盾 す る こ とな く、使 用 して い る こ と にな る。そ う考 え る と、一 つ の文 の 中 に、
発 達 した 文 字 も あれ ぼ、 未 発 達 な文 字 も あ り、 そ れ らが 共 存 し て、 あ る こ とを表 記 す る とい うの は、 奇 妙 な感 じが す る で あ ろ う。 それ は、 ロ ー マ 字 使 用 を好 む 若 者 を批 判 し て、 正 規 の 日本 語 の 文 字 表 記 に は ロ ー マ字 を入 れ な い とし て も、余 り変 わ り は な いで あ ろ う。 そ の奇 妙 さ は 、(1)の 方 が な い か 、 そ れ と も少 な い で あ ろ う。 とい うの は、 一 つ の文 の 中 で 、 時 代 背 景 と文 化 背 景 の 異 な る複 数 の文 字 を使 用 す る こ との 方 が 、発 達 と 未 発 達 の 入 り混 じ った 状 態 よ りも、 よ り奇 妙 に見 え る と は思 えな い か ら で あ る。 前 者 は 、 歴 史 的 ・文 化 的 影 響 を文 字 の 上 に色 濃 く残 して い る こ と を私 達 に 強 く感 じ させ るが 、 後 者 は 、 ど う し て も善 し悪 しの 価 値 判 断 を私 達 に迫 っ て くる よ う に感 じ さ せ て し ま うで あ ろ う。 そ して 、 結 果 的 に、 発 達 と未 発 達 の入 り混 じ っ た文 字 表 記 に対 して 、 否 定 的 な立 場 に立 っ こ とに な って し ま うで あ ろ う。 ともか く、 そ の よ う な価 値 判 断 は別 に し て 、 表 意 文 字 と表 音 文 字(音 節 文 字 と単 音 文 字)を 併 用 し て い るの は 事 実 で あ る。
複 数 の 文 字 に よ る表 記 は 、 そ れ ら複 数 の文 字 の 間 で 、 あ る種 の機 能 的 な 役 割 の 分 業 が な され て い る こ とを意 味 して い る。勿 論 、複 数 の文 字 が 、 全 く同 一 の機 能 的 な役 割 しか 果 た さ な い の で あれ ば 、 そ の存 在 意 義 は失
わ れ て し ま うで あ ろ う。 あ る種 の分 業 が あ るか ら こそ 、 複 数 の 文 字 の存 在 価 値 が 消 滅 す る こ とな く、 現 在 で も存 続 し て い るの で あ る。 そ こで 、 (1)と(2)で見 た よ う に 、飛 鳥 時 代 、平 安 時 代 、明 治 時 代 へ と進 む に つ れ て 、 漢 字 、 そ して 平 仮 名 と片 仮 名 、 さ ら に は ロ ー マ字 が 加 わ り、 四種 類 の文 字 に至 るが 、 そ の歴 史 過 程 の 中 で 、 どれ も消 滅 す る こ とな く、 別 の もの と交 代 す る こ と もな く、 現 在 に至 っ て お り、 歴 史 的 ・文 化 的 影 響 、発 達 と未 発 達 な どを文 字 の 面 か ら知 る こ とが で き るが 、 よ り重 要 な こ と は、
四種 類 の文 字 を併 用 し て い る こ とで あ り、文 字 間 の 明確 な分 業 が な され て い る こ とで あ る。 特 に若 者 は、 四種 類 の 文 字 を併 用 す る が 、 歴 史 的 ・ 文 化 的 影 響 、 発 達 と未 発 達 な どの こ とに は気 に掛 け ず に、 自由 に使 い 分
け を行 な っ て い る。 また 、 広 告 な ど に も、 同様 の こ とが 言 え る。 自分 の 気 持 ち を伝 え るた め に 、商 品 を売 り込 む た め に 、 漢 字 と平 仮 名 だ け で な く、 か な り 自由 奔 放 に片 仮 名 とロ ー マ字 を取 り入 れ て 、 効 果 を 上 げ よ う とす る(例 え ば 、 普 通 な ら ば、 漢 字 や平 仮 名 で書 くべ き と ころ を、 あ え て 片仮 名 や ロ ー マ 字 を使 用 す る こ とで、別 の 効 果 を狙 う こ とが あ る) 。勿 論 、慣 習 的 な使 い 方 を無 視 した使 い方 に は 、 多 くの反 対 意 見 が 出 され る で あ ろ うが 、 自 由 奔 放 な使 い方 に は、 四種 類 の 文 字 を最 大 限 に利 用 ・活 用 す る とい う肯 定 的 な 側 面 が あ る こ とは確 か で あ ろ う。 し ば し ば そ れ を 飛 び越 え て 、 弊 害 を もた らす こ と も確 か で はあ るが 。
(3)機 能 的 な 役 割 の分 業
日本 語 表 記 で使 わ れ る複 数 の 文 字 は 、 慣 習 的 に は、 全 て を同 一 レベ ル で 扱 え る もの と し て あ る の で はな く、 あ くま で も漢 字 と平 仮 名 に よ る混 淆 文 が 主 で 、 そ れ を補 足 す る形 で 、 片 仮 名 が 主 に外 来 語 、 動 植 物 名 な ど
に使 用 され 、 さ ら に外 国語 を表 す た め に ロ ー マ 字 が使 用 され る とい う具 合 に な っ て い る。 な お 、 漢 字 と平 仮 名 に つ い て は、 慣 習 的 に、 複 雑 に使 い分 け が な され て お り、 それ らを こ こで 説 明 す る こ とは で き な いが、 一 例 を挙 げ れ ば、 名 詞 、 動 詞 、 形 容 詞 な どの語 幹 とし て漢 字 が 使 用 さ れ 、 そ の語 尾 に は 平 仮 名 が使 用 され る とい う よ うに 、 あ る一 定 の使 い 方 が慣 習 的 に決 め られ て い る。 勿 論 、 子 供 に対 し て は 、 な るべ く漢 字 を使 わ な い よ う にす る し、 た とえ大 人 で あ っ て も、 な る べ く難 し い漢 字 は使 わ な い よ う に し、 平 仮 名 を多 用 す る こ と もあ る。 そ れ は と もか く と して 、慣 習 的 な使 い 分 け が 存 在 す る とい う こ とは 、 機 能 的 な役 割 の 分 業 が な され て きた こ と を示 し、 その よ うな分 業 が 十 分 な され て きた か ら こそ 、現在 で も四種 類 の 文 字 を使 用 し、 しか も それ ぞ れ の 文 字 の機 能 を生 か す 形 で 使 用 す る こ とが で き るの で あ る。
さ らに 、慣 習 的 な使 い 分 けが あ るか ら こそ 、 それ を根 底 にお い て 、そ れ とは別 の効 果 を 出 す た め に、 あ え て異 な る文 字 を使 用 す る こ とが で き る。 例 え ば 、慣 習 的 に、 あ る特 定 の文 字 を使 用 す る こ とに な っ て い る と こ ろ に、あ え て そ れ 以 外 の文 字 を使 用 す る こ とで 、元 の文字 とは異 な る、
新 た な効 果 を狙 う こ とが で き る。厂最 近 の片 仮 名 語/カ タ カ ナ語 の 氾 濫 に は、 多 くの 批 判 者 が い る」 と書 く場 合 、 「片 仮 名 」 語 とす る か 、「カタ カ ナ 」語 とす る か 、い ず れ に す るか に よ っ て 、読 み手 に与 え る効 果 は異 な っ
て くる で あ ろ う。「ざ く ら」、「桜 」、「サ ク ラ」、"sakura"、"cherryblossoms"
とい う具 合 に、 異 な る文 字 に よ る表 記 が 読 み 手 に与 え る効 果 は、 決 し て 同一 で あ る とは 言 え な い で あ ろ う(外 国語 の ロ ー マ 字 書 き と、 も と も と 日本 の 言 葉 で あ った もの を ロー マ字 書 きす る こ と と は、 意 味 が 同 一 の も の で あ っ て も、勿 論 異 な る効 果 を もた らす)。 そ の効 果 の 相 違 は、例 え ば、
商 品 名 、店 名 な どの場 合 で あ れ ば 、 商 品 の売 れ行 きや 店 の 客 の入 りに 影 響 を及 ぼ し、 そ れ に商 品 販 売 量 や 利 用 客 数 だ けで な く、商 品購 入 者 や 店 の客 の 年 齢 層 、 性 別 な ど もあ る程 度 決 定 付 けて し ま う場 合 もあ るで あ ろ
う。
機 能 的 な役 割 の分 業 につ い て は、 慣 習 的 な使 い 分 け と自 由 な 使 い 分 け に 区別 して 考 え る こ とが で き る。 慣 習 的 な使 い分 け で は 、 語 句 あ る い は 文 を作 る時 、 漢 字 と平 仮 名 が 主 要 な 役 割 を果 た し、 片 仮 名 が 補 足 的 な 役 割 を果 た し、 別 枠 と し て ロ ー マ 字 が あ る とい う具 合 に 、 異 な る レベ ル を 含 む 多 層 的 な構 成 が 特 徴 とな る。 自 由 な使 い 分 け で は、 主 要 、補 足 、 別 枠 とい うレベ ル の 区別 は な く、 単 一 レベ ル に お け る役 割 の分 業 が 行 な わ れ て お り、 そ れ 故 に 、 文 字 の 入 れ 替 えな ど の よ う に、 自 由 な使 い 分 け が 可 能 に な るの で あ る。 例 え ば、 慣 習 的 に漢 字 で 書 か れ て い る も の を 、平 仮 名 書 き にす る こ と に よ っ て、 優 し さ、 取 っ付 き の 良 さな どを感 じ させ た り、 片 仮 名 書 き にす る こ と に よ っ て、 外 来 語 の よ うな 雰 囲気 を 出 した り、 ロー マ字 書 き にす る こ と に よ っ て 、外 国 語 の よ う な雰 囲気 を出 した りす る こ とが で き る。 そ の こ とは 、言 い 換 えれ ぼ 、 片 仮 名 が 外 来 語 に使 用 さ れ 、 ロ ー マ 字 が 外 国 語 に使 用 され る とい う、 機 能 的 な 役 割 の 分 業 の 慣 習 が 私 達 の 間 に深 く浸 透 して お り、 自動 的 に 外 国(特 に、 欧 米)の 雰 囲気 を感 じ させ て し ま う こ と を表 して い る。 しか し 、外 国 の雰 囲 気 を出 そ う とす る あ ま り、 片 仮 名 と ロー マ 字 を多 用 しす ぎ る と、 度 の過 ぎた 、 自由 奔 放 な使 い 分 け に な っ て し ま う。'
(4)文 学 的 な もの か ら科 学 的 な もの まで 扱 え る こ と
漢 字 は、 文 学 的 な も の に は適 して い るが 、 科 学 的 な もの に は適 さ ず 、 む し ろ ロー マ字 の 方 が 適 して い る と言 わ れ る こ とが あ る。 科 学 技 術 な ど で は、 極 め て抽 象 化 さ れ た記 号 が 必 要 で 、 そ の 意 味 で は、 単 音 文 字 で あ る ロー マ字 は 適 し て い る と言 え よ う。 そ れ に対 して 、 表 意 文 字 で あ る漢 字 は、 文 字 自体 が あ る特 定 の意 味 を表 す た め、 抽 象 記 号 を必 要 とす る分
野 で は使 用 し に くい もの に な ろ う し、 む し ろ そ の特 徴 を生 か す に は、 文 学 な どの 方 が都 合 が い い で あ ろ う。例 え ば 、コ ン ピ ュ ー タ ー の分 野 で は、
ア ジ ア諸 国 で も ロー マ字(英 語)を 使 用 す る の が 一 般 的 で 、 そ の こ と は、
科 学 技 術 分 野 にお け る ロ ー マ 字 の適 合 性 を示 す もの と言 え よ う。し か し、
だ か ら とい っ て 、 中 国 で は 、 科 学 が 全 く誕 生 ・発 展 し なか っ た こ とを意 味 す る訳 で もな い し、 英 米 で 、 文 学 が 全 く誕 生 ・発 展 し な か っ た こ とを 意 味 す る訳 で もな い こ とは 、 明 らか で あ る 。 つ ま り、 文 字 は、 言 語体 系 か ら、 さ らに は文 化 形 態 か ら、 全 体 的 な視 点 か ら見 るべ き もの で 、 従 っ て 、漢 字 が 適 合 す る分 野 、 そ して ロー マ 字 が 適 合 す る分 野 に つ い て論 じ る に は、 文 字 だ け を論 じ て も、 問題 を は っ き りさせ る こ と はで き な い と い う こ とで あ る。 そ の よ う な 問題 は、 文 字 論 を越 え る もの で 、 ここで は
これ以 上 立 ち入 らな い こ とにす る。
しか し、 次 の よ うな 言 い 方 は、 可 能 で あ ろ う。 コ ン ピ ュ ー ター な どの 科 学 技 術 の 分 野 で 使 用 され る記 号 は、 出 来 る 限 り、 複 雑 で な く、 数 量 が 多 くな く、 しか も抽 象 的 で 、 自 由 で、 複 雑 な組 み合 わ せ が 可能 とな る よ う な もの に な ろ う。 そ の よ う に考 えれ ば 、 漢 字 よ り は、 仮 名 の 方 が よ り 適 し、 仮 名 よ り は、 ロ ー マ 字 の 方 が よ り適 し て い る と言 え る。 そ れ に対
して 、 文 学 な どの 分 野 で は 、 事 情 が 異 な り、 それ ぞ れ の 文 化 に はそ れ ぞ れ 特有 の 文 学 が 生 まれ 、それ ぞ れ 固 有 の 文 字 で表 記 さ れ て い る。従 っ て、
コ ン ピ ュー タ ー操 作 に使 用 す る文 字 の 場 合 と は異 な り、漢字 であれ、仮 名 で あ れ 、 ロー マ字 で あれ 、 また はそ れ らの組 み 合 わ せ で あれ 、 文 学 に お け る表 記 は可 能 で あ り、 事 実 全 て 適 し て い る と言 え る。 た だ し、文字
自体 が 意 味 を持 つ 漢 字 に よ る文 学 的 表 現 は、 ロ ー マ 字 に よ る表 現 と比 較 す れ ば 、例 え ば、 中 国文 学 と英 米 文 学 を比 較 す れ ば、 質 的 に異 な っ て い る こ とは 明 らか で あ り、 漢 字 、 平 仮 名 、 片 仮 名 、 ロー マ字 の 組 み 合 わ せ に よ る表 記(日 本 の文 学)と も異 な る が 、 日本 人 に とっ て は、 漢 字 が 文 学 的 な もの に適 して い る と思 え る の も、自然 か も しれ ない 。つ ま り、ロー マ 字 表 記 は、 も しす る に して も、 あ く まで も文 章 の一 部 で あ るの が 一 般 的 で あ っ て(日 本 語 の完 全 な ロー マ 字 表 記 で あれ 、 英 語 で あ れ 、全 て を ロ ー マ 字 だ け で表 記 す る の は一 般 的 で は な い) 、普通 に考 えれば、日本 人 が 書 く文 章 は、 漢 字 と仮 名(特 に、 平 仮 名)を 主 とす る も の で、 そ れ ら の比 較 にお い て、 漢 字 の 方 が よ り文 学 的 に適 して い る と思 え る か らで あ る。 例 え ば、 仮 名 だ けの 文 章 よ り も、 漢 字 を取 り入 れ る方 が 、 文 学 的表
現 性 、 文 学 的 深 み な どの 点 で 、 優 れ て い る と思 え る か らで あ る 。 勿 論 、 今 述 べ た こ とは 、 日本 人 の 目 か ら見 た 視 点 で あ っ て、 欧 米 人 に は そ う思 え な い か も し れ な い 。 と もか く、 単 純 な 言 い 方 を す れ ば 、 も し漢 字 が 文 学 的 な も の に適 し、 ロ ー マ字 が 科 学 的 な も の に適 して い る と考 えれ ば 、 漢 字 、 平 仮 名 、 片 仮 名 、 ロ ー マ 字 を使 用 す る 日本 的 表 記 法 は、 そ れ ぞ れ の 文 字 を使 い 分 け る こ とに よ って 、文 学 的 な もの か ら科 学 的 な もの まで 、 実 に幅 広 い領 域 を対 象 に す る こ とが で き る こ と にな る。 例 え ば、 純 文 学 書 を読 め ば 、 日常 的 に余 り使 用 しな い 漢 字 が 多 く使 用 さ れ て い る こ とが わ か る し、 コ ン ピ ュ ー タ ー 関 係 の著 書 ・論 文 ・パ ン フ レ ッ トを読 め ば、
片 仮 名 と ロー マ 字 、 最 近 で は、 ロ ー マ 字 が 多 く使 用 さ れ て い る こ とが わ か る し、 そ の他 の様 々 な分 野 で は、 そ れ ぞ れ の 特 性 に よ っ て、 漢 字 が 多 用 さ れ た り、 平 仮 名 が 多 用 さ れ た り、 片 仮 名 が 多 用 され た り、 ロー マ 字 が 多 用 され た り して い る こ とが わ か る 。
(5)知 的 水 準 の 相 違 を表 して い る こ と
英 語 の 語 彙 論 に 関連 して 、 「質 問 す る」 を英 語 で、ask→question→
interrogateと 言 うが 、 語 源 的 に は、 最 初 が ア ン グ ロ サ ク ソ ン語(英 語 本 来 の語)、二 番 目が フ ラ ンス語 、三 番 目 が ラ テ ン語 とな り、矢 印 の よ うに 、 右 に行 け ぼ行 く程 、知 的 水 準 が 高 くな る よ う に感 じ られ る と言 え る。 つ
ま り、 英 語 本 来 の語 よ り も、 借 入 語 の 中 の フ ラ ン ス語 の 方 が よ り知 的 で あ り、 さ らに借 入 語 の 中 の ラ テ ン語 の方 が よ り知 的 で あ る と人 々 が 感 じ る とい う こ とに な ろ う。 同様 に 、 日本 語 の 場 合 も、和 語 よ り も、 漢 語 の 方 が よ り知 的 で あ り、 さ らに外 来 語(特 に、 英 語)の 方 が よ り知 的 で あ る と私 達 が感 じ る とい う こ と に な る と言 っ て い い で あ ろ う。 元 々 、 英 語 と日本 語 は、 共 に外 国語 か らの 借 入 語 の 多 い言 語 で 、 英 語 で は、 フ ラ ン ス 語 とラ テ ン語 か らの借 入 語 が 主 で 、 日本 語 で は 、 中 国 語 と英 語 か らの 借 入 語 が 主 とな る よ う に、共 に二 つ の借 入 語 が 主 要 な もの に な っ て お り、
そ う した 中 で 、 語 源 的 に言 え ば、 英 語 → フ ラ ンス 語 → ラ テ ン語 、 日本 語
→ 中 国語 → 英 語 とい う知 的 水 準 の相 違 が 現 れ るの で あ り、 共 に本 来 語 よ り も借 入 語 の方 が 、 知 的 水 準 が 高 くな る よ う に人 々 が 感 じ る と言 え よ う (こ こで は 、問題 を単 純 に す るた め、借 入 語 と外 来 語 を 区別 し な い で 使 用 す る)。以 上 の こ とは、あ くまで も語 の 段 階 で の 問 題 で あ り、文 字 の 段 階 を見 れ ば、 日本 語 に は 同様 の知 的 水 準 の相 違 が 存 在 す るが 、 英 語 に は存
在 しな い こ とに な る。 興 味 深 い 点 は、 語 の段 階 で は、 英 語 と 日本 語 の両 者 に 同様 の 知 的 水 準 の相 違 が 見 られ るの に対 して 、文 字 の 段 階 で は、 日 本 語 の み に その 相 違 が 見 られ るが 、 本 来 語 よ り も借 入 語 の 方 が 、 知 的 水 準 が 高 くな る とい う共 通 性 が 存 在 し、 自文 化 よ り も他 文 化 の 方 に知 的 高 さ を見 出 す傾 向(逆 に 、 自文 化 の 方 に知 的 低 さ を認 め る こ と)を 認 め る こ とが 出来 る とい う こ とで あ る。
日本 語 に お け る文 字 は、 平 仮 名 → 漢 字 → 片 仮 名 → ロ ー マ 字 とい う知 的 水 準 の 相 違 を示 して い る。 そ れ は、 語 の段 階 に お け る和 語 → 漢 語 → 外 来 語 → 外 国 語 とい う知 的 水 準 の相 違 と同 等 で あ る。つ ま り、和 語 と平 仮 名 、 漢 語 と漢 字 、 外 来 語 と片 仮 名 、外 国 語 と ロー マ 字 とい うつ なが りが 同 等
関係 に な る。 そ れ を根 底 に お い て 、 し か もそ れ を利 用 ・活 用 す る こ とが で き る。 例 え ば、 「コ ー ヒー 」 とい う外 来 語 は、 普 通 片 仮 名 書 きす るが 、 そ れ を ロー マ字 書 き に した り(coffee)、 漢 字 書 き に した り(珈 琲)、 平 仮 名 書 き に し た り(こ 一 ひ 一)、 文 字 を使 い分 け る こ とに よ っ て 、 外 国語 的 雰 囲気 を出 した り、 漢 語 的 雰 囲 気 を出 した り、 和 語 的 雰 囲 気 を出 した り
し て、 知 的 水 準 を変 化 させ る こ とが で き る。 そ の こ と は、 外 国 的 雰 囲気 (片 仮 名 書 き、 ロー マ 字 書 き)を 出 した り、 日本 的 雰 囲 気(平 仮 名 書 き) を 出 した りす る こ と と関係 す る。 つ ま り、 外 国 的雰 囲 気 の 方 が 、 日本 的 雰 囲 気 よ り も知 的 水 準 の 高 さ を醸 し出 す と日本 人 が感 じ る か らで あ る。
た だ し、 漢 字 書 き の場 合 は、 文 章 全 て を漢 字 書 きす るの で あ れ ば、 中国 的 雰 囲 気 を 出 す と言 え るか も しれ な い が 、 普 通 は一 部 に し か漢 字 を使 用 しな い の で あ っ て 、 そ の意 味 で 、 日本 的 雰 囲 気(平 仮 名 書 き よ り も、 難 し さ、 堅 苦 し さな どが あ る が)を 出 す と言 え よ う。 と もか く、 同 一 の も の を異 な る文 字 で 表 記 す る こ と に よ っ て 、 異 な る知 的 水 準 を表 す こ とが で き、 少 な くと もそ の よ うな もの とし て人 々 に感 じさせ る こ とが で き る の で あ る。
知 的 水 準 と言 っ て も、 漠 然 と して い る が 、 こ こで は詳 しい 検 討 は せ ず に、 簡 単 に触 れ る程 度 にす る。 私 達 に とっ て は 、 平 仮 名 書 き に す る か 、 漢 字 書 き にす る か、 片仮 名 書 き に す るか 、 ロ ー マ字 書 き に す るか 、 い ず れ に す るか に よ っ て 、 当 然 受 け る 印 象 が 異 な っ て くる。 例 え ば、 手 紙 の 場 合 、全 て また は ほ とん どが 平 仮 名 で 書 か れ て い れ ば、 子 供 が 書 い た の か 、 そ れ と も漢 字 を知 らな い 大 人 が 書 い た と思 うで あ ろ う。 幼 児 向 け の 本 の場 合 、 漢 字 を全 く また は ほ とん ど使 用 せ ず に 、 平仮 名 書 きす る。 入
学 試 験 問 題 作 成 の 場 合 、 受 験 生 の 年 齢 を考 え て、 余 り難 し い 漢 字 を使 わ ず 、 平 仮 名 書 き を し、 難 易 度 に よ っ て 、使 用 す る漢 字 に制 限 を定 め る の が 一 般 的 で あ る。 ま た 、商 品 名 、 人 名 、 地 名 、 そ の 他 の様 々 な もの を平 仮 名 書 きす る こ とで 、 例 え ぼ、 「さや か」(女 性 の 名)、 「い わ き市 」 な ど
の よ うに 、 漢 字 書 き と は異 な る 印 象 を与 え る こ とに な る で あ ろ う。以 上 の例 か ら、平 仮 名 書 き の場 合 、幼 稚 、未 熟 、 安 易 、分 か りや す さ、簡 単 、 単 純 、優 し さ、 親 し さ、 近 付 き易 さ な どの よ う な印 象 を与 え る こ と にな る と言 え よ う。 今 述 べ た もの が 、 平 仮 名 書 き にお け る知 的 水 準 を表 す も の で 、他 の 文 字 に比 べ て 、一 応 知 的水 準 の 低 さ を表 す もの とな る。勿 論 、 そ の 中 に は 、 知 的 水 準 の低 さ とは単 純 に 捉 え られ な い も の もあ り、 知 的 水 準 とは 異 な る基 準 で判 断 す べ き もの も あ るが 、 問題 を複 雑 に し な い た め に、 一 応 そ の ま まに して お く。 漢 字 書 き の場 合 は、 ど うで あ ろ うか。
例 え ば 、 法 律 関 係 の著 書 ・論 文 、 学 術 的 ・専 門 的 な著 書 ・論 文 、 公 文 書 、 正 式 の 書 類 な どで は、 漢 字 が 多 用 され 、 しか も難 し い漢 字 が 多 用 され て
い る。 また 、 子 供 か ら大 人 へ と成 長 す る に つ れ て 、 漢 字 使 用 量 が増 えて くるの が 普 通 で あ る し、 自分 の 能 力 を誇 示 す るた め に 、 特 に難 しい 漢 字 を頻 繁 に使 用 す る人 もい る 。 それ に、 漢 字 を余 り使 わ ず に、 文 章 を書 く こ とに恥 ず か し さ を感 じ る人 もい る。以 上 の 例 か ら、威 厳 、厳 格 、正 式 、 公 式 、 正 規 、 難 し さ 、難 解 、 複 雑 、 堅 苦 し さ、 近 寄 りに くさ、 成 熟 、 権 威 、 大 人 な ど の よ うな 印 象 を与 え るで あ ろ う。 そ れ ら は、 漢 字 書 き の知 的 水 準 を表 し、 平 仮 名 よ りは知 的水 準 が 高 い こ とを表 す もの とな る。 な お 、 前 に述 べ た よ う に、 「知 的 水 準 の 高 さ ・低 さ」 の 解 釈 は、 曖 昧 な ま ま
に残 し て お く こ と にす る。
片 仮 名 書 き と ロー マ 字 書 き は、 ど うで あ ろ うか 。 平 仮 名 と漢 字 の 比 較 で は、 文 字 数 と文 字 の複 雑 さの 点 だ け か ら見 て も、 漢 字 を覚 え、 使 用 す る方 が 、難 し く、 知 的 要求 度 が 高 い の で 、 知 的 水 準 の 高 さ を 示 す の が 、 漢 字 書 きの 方 で あ る こ と は容 易 に理 解 で き よ う。 しか し 、 片仮 名 とロ ー マ字 を漢 字 と比 較 す る と、 文 字 数 と文 字 の 複 雑 さだ けか ら見 れ ば、 漢 字 の 方 が 、 知 的 水 準 が 高 くな っ て し ま う。 そ こで 、 外 国 的 要 素 、 異 文 化 的 要 素 な どの有 無 で判 断 す る こ と にな る。 慣 習 的 に、 外 来 語 に は片 仮 名 が 使 用 され 、 外 国語 に は ロ ー マ字 が 使 用 さ れ て きた の で 、 片 仮 名 が 、 さ ら に は ロ ー マ字 が 、 漢 字 よ り も高 い 知 的 水 準 を表 す の は 、 そ の よ うな 外 国 的 ・異 文 化 的 要 素 の た め で あ る。 そ して 、 ロー マ字 が 片 仮 名 よ り も知 的
水 準 が 高 い の は 、 そ の よ うな要 素 が よ り強 く、 鮮 明 だ か らで あ る。 つ ま り、外 来 語 は す で に 日本 に 同化 し、 日常 的 に 使 用 さ れ て い るた め 、 日本 的 ・自文 化 的 要 素 が 入 り込 んで い る 印 象 を与 え る の に対 し て、 外 国 語 は 、
まだ 日本 に 同化 して お らず 、 あ くまで も外 国 的 ・異 文 化 的 要 素 と して 強 く、 鮮 明 に映 るか らで あ る。 簡 単 に言 え ば 、 外 国 的 ・異 文 化 的 要 素 の 量 的 相 違 で あ る と言 え る。 以 上 の よ う に、 外 来 語 の片 仮 名 書 き、 外 国 語 の ロー マ 字 書 き以 外 に も、和 語 や 漢 語 の 片 仮 名 書 き、ロー マ 字 書 き な どは 、 外 国 ・異 文 化(特 に、 欧 米)へ の憧 れ ・驚 き ・恐 怖 心 ・傾 倒 ・過 大 評 価 ・ 逃 避 、 未 知 へ の 憧 れ ・好 奇 心 、 文 明 、 発 展 、 豊 か さ、 富 、 力 、 自由 、 成 功 、 華 や か さ、 明 る さ な どの よ う な 印 象 を与 え、 しか も ロ ー マ字 書 き の 方 が 、 そ の 程 度 が 強 い こ と に な る。 そ して 、 外 国 的 ・異 文 化 的 要 素 へ の 肯 定 的態 度 は、 裏 を返 せ ば、 日本 的 ・自文 化 的 要 素 へ の 否 定 的 態 度 に つ なが っ て い る と言 え よ う。 勿 論 、 外 国 的 ・異 文 化 的 要 素 へ の肯 定 的 態 度 は、 日本 以 外 で も普 通 に見 られ る もの で あ る が 、 それ が 自 国 的 ・自文 化 的 要 素 へ の 否 定 的 態 度 の裏 返 し に よ るの は、 日本 的 と言 え るか も しれ な い。 と もか く、 例 え ば 、 授 業 中 に教 師 が 黒 板 に向 か っ て、 難 しい 漢 字 を 書 くこ と に よ っ て、 自 らの 知 的 水 準 の 高 さ を誇 示 す る よ う に、 さ らに片 仮 名 で外 来 語 を書 く こ とに よ っ て 、 外 国 ・異 文 化 の知 識 が あ る こ とを示 し、 よ り高 い知 的 水 準 に 自分 が い る こ とを誇 示 す る よ うに 、 また さ ら に ロ ー マ 字 で 外 国 語 を書 く こ とに よっ て 、 よ り深 い 外 国 ・異 文 化 の知 識 が あ る こ と を示 し、 よ り高 い知 的水 準 に 自分 が 達 し て い る こ とを誇 示 す る よ うに 、 語 の段 階 は勿 論 で あ る が 、 よ り視 覚 的 に訴 え か け る文 字 の段 階 で 、 知 的 水 準 の相 違 を示 す こ とに な る。
(6)年 齢 層 の相 違 を表 し て い る こ と
年 齢 層 と言 っ て も、 細 か く年齢 に よ っ て 区 分 け で き る訳 で は な く、例 え ば、 幼 年 層 、 少 年 層 、 青 年 層 、 中 年 層 、 老 年 層 の よ う に、 大 雑 把 な 分 け方 しか で きな い が 、 そ れ ぞ れ の 年 齢 層 に は、 様 々 な理 由 で 、 文 字 使 用 に特 徴 が あ る と言 え よ う。 まず 最 初 に、 幼 年 期 は、 まだ 文 字 を書 く能 力 を持 って お らず 、親 な どか ら、 幼 稚 園 な どで 、 少 しつ つ仮 名 の学 習 を始 め だ す 頃 で あ っ て 、 幼 年 層 に つ い て は、 日常 的 に文 字 を書 く こ と はな い の で 、 対 象 か ら外 す こ とに す る。沙 年 期 は、 小 学 校 で 、 引 き続 き仮 名 の 学 習 を し、 仮 名 を 日常 的 に使 用 す る一 方 で 、 漢 字 の 学 習 も始 め 、 少 しづ
っ で は あ るが 、 次 第 に漢 字 を 日常 的 に使 用 し始 め、 中学 校 で は、 仮 名 と 漢 字 を 日常 的 に使 用 す る一 方 で 、ロ ー マ 字 の学 習 を始 め、高 等学 校 で も、
ロー マ字(つ ま り、 英 語)の 学 習 を継 続 す るの で あ り、 少 年 層 に つ い て は、 文 字 学 習 を通 して 、 仮 名 、'さら に漢 字 を 日常 的 に使 用 す る こ とに な り、 また ロー マ字 も使 用 す る こ とに な る(勿 論 、 仮 名 と漢 字 に比 べ れ ぼ 、 使 用 頻 度 は遙 か に低 い が)。 その よ うに考 え て い くと、 少 年 期 を通 し て 、 平 仮 名 、 片 仮 名 、 漢 字 、 ロ ー マ字 を学 習 す る こ とに な る が 、 中 学 校 の段 階 で 、四種 類 の 文 字 全 て を使 い分 け る能 力 を獲 得 し、高 等 学 校 の段 階 で 、
それ らの 文 字 を 実 際 に使 い こな す こ と に な る と言 え る。 た だ し、 高 等 学 校 の段 階 で は、 まだ 文 字 の使 い分 け能 力 の獲 得 の 時 期 で あ って 、 完 全 に 使 い こな す とす る に は若 す ぎ、 青 年期 か ら実 際 に使 い こな す と捉 え る こ と もで き よ う し、 す で に 中学 校 の段 階 で も、 実 際 に使 い こな す こ とが で き る と捉 え る こ と もで き よ う。
少 年 層 、青 年 層 、中 年 層 、老 年 層 の各 年 齢 層 で は、文 字 使 用 に つ い て 、 どの よ うな 特 徴 が 見 られ る の で あ ろ うか 。 普 通 に考 えれ ば 、 若 い 時 に受 けた 影 響 が 継 続 し、 その 後 を決 定 付 けて し ま う よ う に、 各 年 齢 層 の 特 徴 は、 若 い 時 に受 け た 影 響 に よ っ て説 明 で き よ う。例 え ば 、 老 年 層 で は、
戦 前 ・戦 中 に受 け た 影 響 が 強 く働 い て お り、 日本 的 伝 統 を 全 て の 根 底 に 据 え る価 値 観 が 影 響 して い る。 学 校 また は そ の他 で 、 漢 字(特 に、 質 の 良 い、 高 度 な漢 字 、)を完 全 に使 い こな す こ とが 、成 熟 し た 大 人 が 正 しい 文 章 を書 く上 で求 め られ る こ とで あ っ た 。 そ の よ う な こ とが 現 在 に至 っ て も続 い て お り、 漢 字 の 果 た す役 割 が 極 め て大 きな もの に な って い る。
中年 層 で は、 戦 後 の 非 常 に強 い ア メ リカ の 影 響 の下 で 少 年 期 を過 ご し、
老 年 層 に見 ら れ る よ う な、 日本 的伝 統 へ の 傾 倒 は余 りな く、 む し ろ敗 戦 に よ っ て 、 日本 的価 値 観 を捨 て去 り、 自 らに劣 等 感 を感 じ、 欧 米 的(特 に、 ア メ リ カ的)価 値 観 に優 位 性 を認 め 、 そ れ へ傾 倒 し て い っ た こ とに よ り、 片仮 名 を好 む 傾 向 が あ る。 そ れ に平 行 して 、 ロー マ字 を好 む 傾 向 もあ るが 、 む しろ まだ 遠 い存 在 で あう て 、 身 近 な もの と して使 用 す る ま で に は至 って い な い 。
そ して 、 青 年 層 で は、 中 年 層 に見 られ る よ うな 、敗 戦 に よ る 日本 的 価 値 観 の崩 壊 に伴 う、反 動 と して の 欧 米 的価 値 観 へ の傾 倒 と は異 な る、厂国 際 化 」の流 れ の 中 で の 欧 米 的 価 値 観(端 的 に 言 え ば、 ア メ リカ的 価 値 観) へ の 傾 倒 を少 年 期 に 経 験 す る。 経 済 を例 に とっ て見 れ ば分 か る よ う に、
経 済 好 調 期 、 特 にバ ブル 時 期 に、 日本 経 済 の 好 調 を 背 景 に、 ア メ リカ、
ヨー ロ ッパ 、 ア ジア な ど、 世 界 市 場 に進 出 し、 優 位 に立 と う と して いた 頃 で 、 盛 ん に 国 際化 が 叫 ば れ 、 片 仮 名 を好 み 傾 向 は 勿 論 で あ るが 、 特 徴 的 に は、 ロ ー マ字 も身 近 な もの と して好 ん で 使 用 す る傾 向 が あ る。 青 年 層 は、 その よ うな少 年 期 の 経 験 と共 に、次 の よ うな経 験 もあ る。つ ま り、
現 在 私 達 が 経 験 して い る よ う に、 バ ブ ル 崩 壊 後 、 国 内 市 場 と世 界 市 場 の 連 動 性 に よ り、 国 内 市 場 を孤 立 ・隔離 した 状 態 で捉 え る こ と はで きず 、 世 界 的 な、 地 球 規 模 の観 点 で 捉 え る必 要性 か ら、 「グ ロ ー バ ル 化 」が 叫 ば れ て お り(現 在 で も、 「国 際 化 」 は叫 ば れ て い る)、 その よ うな 経 験 が 加 わ って 、 さ ら に ロー マ字 を好 む 傾 向 が 強 ま っ て い る と言 え る。 勿 論 、 バ ブ ル 崩 壊 後 の経 済 不 況 下 に お け る 「グ ロー バ ル 化 」 は、 青 年 層 だ けで な く、 老 年 層 や 中 年 層 に も影 響 を及 ぼ す の で あ る が 、 三 者 の 少 年 期 の 時 代 背 景 が 異 な り、 それ が 異 な る結 果 に結 び つ く と言 え よ う。 例 え ば、 老 年 層 に とっ て は、 戦 前 ・戦 中 に受 け た教 育 は、 簡 単 に 捨 て去 る こ とが で き な い く らい 、根 強 く残 っ て お り、 正 しい 日本 語 の文 章 を書 くに は、 漢 字 は 必 要 不 可 欠 な も の で 、 不 必 要 に、 不 用 意 に、 片仮 名 や ロ ー マ 字 を使 用 す る こ と は、避 け るべ きで あ る と思 わ れ る か らで あ る 。た だ し、「国 際 化 」、
「グ ロー バ ル 化 」な どを否 定 し て い る訳 で は勿 論 な い が 。 中 年 層 に とっ て は 、 「国 際 化 」、 厂グ ロー バ ル化 」な ど とい った 流 れ を受 け入 れ ざ る を え な い と思 い つ つ も、 自分 個 人 とし て は 、 や は りロ ー マ 字 を好 む まで に は至 らず 、 遠 い存 在 の ま まで あ ろ う し、 片仮 名 に して も あ る種 の 抵 抗 を感 じ て い る の が現 実 で あ ろ う。 それ に対 して 、 青 年 層 に とっ て は、 「国 際化 」 の 流 れ の 中 で 少 年 期 を過 ご し、 ロ ー マ 字 を好 む傾 向 が す で に あ り、 そ れ に加 え て 、 厂グ ロ ー バ ル 化 」の 波 で 、 さ ら に ロ ー マ字 を好 む傾 向 が 強 ま る こ とに な るだ けで 、 同 じ ロー マ 字 を好 む傾 向 で あ るた め、 矛 盾 ・対 立 せ ず に済 む が 、 老 年 層 や 中 年 層 の場 合 は、 そ う は い か な い か らで あ る。 パ ソ コ ンに 関 して 、 青 年 層 が 機 械 に強 い だ けで な く、 か な り 自 由 に ロ ー マ 字 を使 用 して 、 操 作 して い る の に対 して 、 老 年 層 と中 年 層 が 毛 嫌 い して い る例 は 、 そ の こ とを 示 す もの で あ ろ う。
最 後 に 、 少 年 層 は、 現 在 、 正 に少 年期 に い る訳 で 、 そ の後 の 形 を決 め る影 響 を受 けて い る最 中 で 、 上 記 の場 合 とは異 な り、 一 体 ど の よ う に収 ま る の か は っ き り とは 言 え な い。 国 内 市場 と世 界 市 場 の連 動 性 を実 感 さ せ られ た 現在 、 グ ロ ー バ ル 化 に 向 けて 、 ロー マ字 使 用 の傾 向 が 強 い影 響
を与 え る こ と は確 か だ が 、 四 種 類 の文 字 を使 い分 け る能 力 を獲 得 し、 実 際 に使 い こな す 訓 練 を して い る最 中 の 少 年 層 に 、 具 体 的 に どの よ うに 影 響 す るか は は っ き り しな い 。 極 論 的 に 言 え ば、 ロ ー マ 字 使 用 の 傾 向 が さ らに 強 ま り、 日常 的 に英 語 で 文 章 を書 く機 会 お よび人 々 が 大 幅 に増 加 す る の か も し れ な い が 、現 実 的 に 考 えれ ば、上 記 の こ とに も当 て は ま るが 、 日本 語 の 文 章 は 、 基 本 的 に は 、 平 仮 名 と漢 字 か ら成 る こ とは変 わ らな い が、 年 齢 層 の相 違 に よ っ て 、 漢 字 、 片 仮 名 、 ロ ー マ字 の い ず れ か を重 要 な要 素 と し て多 く取 り入 れ る こ とに な るだ けで あ ろ う。 と もか く、 少 年 層 で は 、 小 学 生 の場 合 で あ れ ぼ 、 平 仮 名 中 心 の文 章 しか 書 け な い で あ ろ う し、 中 学 生 、 高校 生 に な っ て 、 平 仮 名 と漢 字 に よ る文 章 を書 き、 そ れ に片 仮 名 が 加 わ っ た り、覚 えた て の ロ ー マ 字 で書 い た りす る で あ ろ うが 、 文 字 使 用 に特 徴 的 な もの は確 定 で きず 、 青 年 期 に入 っ た 頃 か ら、 ど の よ
う な影 響 だ った か 言 え よ う。 た だ 言 え る こ と は、 敗 戦 に よ る反 動 と し て の欧 米 的価 値 観 へ の傾 倒(中 年 層 一片 仮 名)、 経 済 好 調 期 の 「国 際 化 」 に お け る 欧米 的 価 値 観 へ の 傾 倒(青 年 層 一 ロー マ字)、経 済 不 況 期 の 厂グ ロー バ ル 化 」 に お け る欧 米 的 価 値 観 へ の傾 倒(現 在 一 ロー マ字)と い う具 合 に、 絶 え ず 外 へ 、 外 へ と 目が 向 け られ 、 平 仮 名 と漢 字 以 外 の 文 字 に 目が 向 け られ て い る こ と は確 か で 、 そ の傾 向 は今 後 も強 ま る とい う こ とで あ る。 し か し、 「グ ロー バ ル 化 」は、 そ れ まで の ア メ リ カ を 中 心 に した もの で は な く、世 界 全 体 の、地 球 規 模 の 観 点 に重 点 を置 く とい う意 味 合 い で 、
ヨー ロ ッパ の 国 々 、 ア ジ ア の 国 々 に も 目が 向 け られ 、 ロー マ字 を使 用 す る と い っ て も、 単 に英 語 だ けで な く、様 々 な言 語 の文 字 と して 使 用 して い るの で あ り、 さ らに ア ジ ア の 様 々 な 言 語 の 文 字 も使 用 さ れ て い る の が 現状 で あ る。 以 上 、 文 字 使 用 につ い て 、 年 齢 層 に よ る特 徴 の相 違 を、 少 年期 の 時 代 背 景 に よ っ て説 明 して き た が 、 それ 以 外 の 要 素 を組 み 合 わ せ
る こ とで 、 よ り鮮 明 に な ろ う。
(7)イ メー ジ ・雰 囲 気 の相 違 を表 し て い る こ と
イ メ ー ジ ・雰 囲 気 につ い て は、複 数 の文 字 の 使 用 に つ い て 、 固定 化 す る の で は な く、 自由 に使 い分 け る こ とに よっ て 、 視 覚 的 に訴 え か け る イ メ ー ジ、 視 覚 的 に醸 し出 す 雰 囲気 を様 々 に作 り出 す こ とが で き る と言 え よ う。 そ の よ うな こ とが 可 能 な の は、 人 々 が慣 習 的 に抱 い て き た イ メ ー ジ ・雰 囲 気 を固 定 化 す るの で は な く、 それ を利 用 ・活 用 す る こ とで 、 新
た な イ メ ー ジ ・雰 囲 気 を作 り出 す こ とが で き る か らで 、 あ る種 の 操 作 に よ る もの で あ る。 す で に(1)から(6)まで の 間 で述 べ た よ う に、 平 仮 名 、 漢 字 、 片 仮 名 、,ロー マ字 の そ れ ぞ れ に つ い て 、 歴 史 的 誕 生 ・伝 来 過 程 、 機 能 的 役 割 の 分 業 、 文 学 的 な もの か ら科 学 的 な もの まで の 適 合 性 、 知 的水 準 、 年 齡 層 な どの諸 要 素 を考 察 し、 さ ら に そ れ ら を複 合 的 に考 察 す る こ
とで 、人 々 が 慣 習 的 に抱 い て きた イ メー ジ ・雰 囲 気 を明 らか にす る こ と が で き よ う。 そ し て、 そ の よ う な慣 習 的 な イ メ ー ジ ・雰 囲 気 を利 用 ・活 用 す る こ とで 、 新 た な イ メ ー ジ ・雰 囲気 を作 り出 す こ と に な る 。 つ ま り、
文 字 自体 に纏 わ り付 く、慣 習 的 な イ メー ジ ・雰 囲 気 を、 文 字 の使 い分 け を人 為 的 に操 作 す る こ とで 、 新 た な イ メ ー ジ ・雰 囲 気 を作 り出 し、 あ る 種 の効 果 を狙 う とい う 目的 で 、 利 用 ・活 用 す る こ とが で き る の で あ る。
例 えぼ 、 単 純 な言 い 方 をす れ ば、 元 々 漢 字 で 書 か れ る語 を、 ロ ー マ 字 書 き す る こ とで、 外 国 的 ・異 文 化 的 ・都 会 的 な香 りを漂 わせ た り、知 的 水 準 の 高 さ を誇 示 した り、 若 者 受 け を狙 っ た りす る こ とが あ る か も しれ な い し、 また 平 仮 名 書 きす る こ とで 、 日本 的優 し さ を匂 わ せ た り、近 寄 り 易 さ を狙 っ た り、幼 稚 で 、 未 熟 な状 態 を 曝 け出 した りす る こ とが あ るか も しれ な いが 、い ず れ にせ よ、元 々 漢 字 で 書 か れ る語 が 与 え るイ メー ジ ・ 雰 囲 気 とは異 な る もの で あ り、 それ が狙 い で あ る。 た だ し、 個 人 が 無 意 識 の 内 に して し ま う場 合 もあ れ ば、 広 告 の よ う に、 商 品販 売 促 進 とい う 目的 で 、効 果 を狙 って 行 な う場 合 もあ る 。また 、「単 純 な言 い 方 をす れ ぼ 」 と言 った の は 、 イ メ ー ジ ・雰 囲 気 とい う ものが 、 単 純 に は捉 え られ な い 、 複 雑 に絡 み合 っ た もの で 、上 記 の諸 要 素 以 外 に も要 素 が あ るで あ ろ う し、
文 字 を語 か ら完 全 に切 り離 して 把 握 す る こ とはで きず 、 語 彙 論 との 関 係 か ら も捉 え る必 要 が あ る し、 言 葉 が 使 用 され る場 面 ・状 況 を 重 要 な もの と して 考 慮 に 入 れ な けれ ば な ら な い し、様 々 な こ とが 考 え られ るか らで あ る。 一 例 を挙 げれ ば、 ロ ー マ 字 書 き と言 っ て も、 和 語 と漢 語 を ロー マ 字 書 き す る場 合 、 外 来 語 を ロー マ 字 書 きす る場 合 、 外 国 語 の ロー マ 字 書 きの 場 合 、 そ れ ぞ れ 異 な るイ メー ジ ・雰 囲 気 を与 え、 感 じ るで あ ろ う。
イ メ ー ジ ・雰 囲気 に 関 して 、"yama"と"mountain"は 、 異 な る し、 「ピ ン ク」と"pink"は 、性 的 な 意 味 の有 無 で 、大 き く異 な る し、外 国 語 の ロ ー マ 字 書 きで も、 英 語 か 、 フ ラ ン ス語 か 、 イ タ リア語 か 、 そ の 他 の もの か で 、 そ れ ぞ れ 異 な る し、 そ の よ う な相 違 を説 明 す るた め に は、 単 に文 字 の 段 階 だ けで な く、 語 の段 階(単 に そ れ だ け で な く、 文 の段 階 、 言 語 使
用 の 段 階)ま で も、 さ ら に は人 間 の 心 理 に 関 わ る もの で あ り、 実 際 に使.
用 さ れ る社 会 に も関 わ る もの で あ るた め、 心 理 学 的 、 社 会 学 的 な諸 要 素 まで も考 慮 しな けれ ば な ら な い の で あ る。 特 に、 テ レ ビ広 告 で 、文 字 の 使 い 分 け と視 聴 者 の購 買意 欲 の 関係 が ど うな るか は、 心 理 学 的 に も、 社 会 学 的 に も、 分 析 の対 象 に な る で あ ろ う。
複 雑 に絡 み 合 った もの と し て あ る イ メ ー ジ ・雰 囲 気 に つ い て は 、 こ こ で は検 討 を加 えず に、 曖 昧 な ま まに して 話 を進 め る こ と にす る。 イ メ ー ジ ・雰 囲気 、 つ ま り直 接 関 わ りを持 つ 文 字 表 記 は、 人 が着 る服 装 、 商 品 を包 む包 装 紙 の よ うな もの で 、 人 の 目 に最 初 に入 っ て くる もの で あ り、
視 覚 的 に は極 めて 強 い効 果 を及 ぼ す もの と言 え よ う。 そ れ だ け に、 そ の こ とで人 は 直 ぐに判 断 を下 す 程 、 影 響 力 の強 い もの とな ろ う。 普 通 に考 えれ ば、 服 装 を どん な に変 え て も、 どの よ う に着 て も、 中 身 の人 間 に は 変 化 は な い し、 包 装 紙 を どん な に変 えて も、 どの よ う に包 んで も、 中 身 の 商 品 に は 変 化 は な い とい う こ とに な ろ う。 しか し、上 記 の例 の よ う に、
「ピ ン ク」と"pink"は 、 英 語 の 語 とし て の"pink"に は、 性 的 な意 味 が な いが 、 日本 語(外 来 語)と し て の 「ピ ン ク 」 に は、 「ピ ン ク映 画 」 の よ う に、 性 的 な 意 味 が あ り、外 見 だ け で な く、 中身 も異 な っ て くる場 合 が あ る。 つ ま り、 イ メー ジ ・雰 囲 気 の相 違 とい う外 見 的 な変 化 だ け で な く、
語 の意 味 自体 も変 化 し(語 義 の一 部 変 更 ・一 部 追 加 ・一 部 削 除)、 中 身 ま で が 異 な っ て くる こ とで あ る。勿 論 、全 て の場 合 で 、中 身 ま で 変 化 し て、
異 な る もの にな る とい う訳 で は な い(変 化 し、 異 な る場 合 で も、 普 通 は、
部 分 的 な もの の こ とで あ る)。 と もか く、中身 まで も変 化 す る こ と もあ り え る と考 え る と、 包 装 紙 一商 品 で は な く、 服 装 一人 間 の た とえ の方 が よ り近 い と言 え る。 服 装 を変 えた り、 着 方 を変 え た りす る こ とで 、 完 全 に 別 人 に な る こ とはで きな い が 、心 理 的 変 化 を もた ら し、気 持 ち の 持 ち 方 、 話 し方 、 態 度 な ど、 様 々 に変 化 す る だ けで な く、 さ ら に進 ん で 、 根 本 的
な生 き 方 そ の もの を変 え て し ま う こ と も あ りえ るか らで あ る。 そ こで 、 外 見 的変 化 を服 装 一 人 間 の た とえ で見 て い く と、 例 え ば、 ロー マ字 書 き の場 合 で あ れ ば、 今 流 行 の若 者 向 け の服 装 を着 る こ とで 、 気 分 まで 若 返 り、 感 じ方 、 考 え方 、 行 動 の 仕 方 ま で が 変 化 す るで あ ろ う し、 漢 字 書 き の場 合 で あ れ ば、 正 装 して列 席 す る 時 の よ うに、 身 の 引 き締 ま る思 い を し、態 度 に も現 れ 、厳 しい も の に な ろ う し、平仮 名 書 きの 場 合 で あ れ ば、
着 飾 る の で はな く、 着 馴 れ た 普 段 着 で外 出 す る時 の よ う に 、 肩 の凝 らな
い リラ ック ス した 気 分 で い られ 、態 度 な ど に も気 楽 さ が 現 れ る で あ ろ う。
勿 論 、服 装 一 人 間 の た とえ に は 限界 が あ り、 文 字 の使 い分 け を それ だ け で 説 明 で き る とい う訳 で は な く、そ の理 解 へ の 一 つ の手 助 け に す ぎ な い 。
外 見 的 な もの に す ぎ ない とし て も、 イ メ ー ジ・雰 囲気 の 果 た す 役 割 は、
大 きな もの で あ る。 しか し、 そ れ だ け に、 そ こ に力 点 を置 きす ぎ る と、
実 際 は 中 身 まで 変 化 して い な い の に 、 変 化 す るか の よ うな錯 覚 を与 え る 危 険性 が あ る。 そ の こ とは、 同一 の もの が 文 字 の使 い 分 け に よ っ て、 異 な る イ メ ー ジ ・雰 囲気 を相 手 に与 え 、 従 っ て文 字 の 操 作 に よ って 、 狙 い 通 りの効 果 を相 手 に与 え る程 、 重 要 で あ る こ と を示 す もの と言 え る。 典 型 的 な例 は、 テ レ ビ、新 聞 、雑 誌 、 ポ ス タ ー な どに見 られ る広 告 で あ る。
商 品 、 サ ー ビ ス な ど を売 り込 む た め に、 視 覚 的 に強 く訴 え か けて 、 消 費 者 の 関 心 を引 く必 要 が あ り、 そ こで 従 来 の もの と も、 他 社 の も の と も同 一 の もの で あ りな が ら、 宣 伝 文 句 は 勿 論 で あ るが 、 そ の宣 伝 文 句 の 内容 の文 字 表 記 を操 作 す る こ とで 、 あ た か も商 品 、 サ ー ビ ス な どが 従 来 と は 異 な る、 他 社 に もな い 、 全 く新 しい もの で あ るか の よ うに錯 覚 させ る こ とが で き る。 それ と は反対 に、 錯 覚 を利 用 す る、 意 図 的 な操 作 で は な い 例 もあ る。 一 例 と して 、 学 術 的 な著 書 ・論 文 が あ る。 片 仮 名 書 き、 さ ら に は ロ ー マ 字 書 きが非 常 に多 い の は 、 知 的 水 準 の 高 さ を誇 示 す る とい う 目 的 もあ るで あ ろ うが(必 ず し も意 識 的 と は言 え な い が)、 外 国 語 を翻 訳 せ ず に 、 そ の ま ま片 仮 名 書 き した り、 ロー マ字 書 き し た りす るた め で 、 なぜ 翻 訳 し な いか は別 に し て、読 む側 に と っ て は、あ る独 特 な イ メ ー ジ ・ 雰 囲気 を感 じ取 る が 、 その 理 由 の一 つ に片 仮 名 と ロー マ字 が あ る と言 え
る。 そ して 、 翻 訳 が可 能 で 、 片 仮 名 とmマ 字 の使 用 を最 小 限 に押 さ え る こ とが で き る とい う前 提 で 考 え れ ば、 片 仮 名 と ロー マ字 を多 用 す る場 合 と、 そ うで な い場 合 とで は、 イ メ ー ジ ・雰 囲気 が 異 な る し、 しか も多 用 す る こ とで 、 学 術 的 なイ メ ー ジ ・雰 囲 気 を与 え、 中 身 ま で も学 術 的 な
もの で あ るか の よ う に思 わ せ る こ と はで き る で あ ろ う。.
外 見 的 変 化 に よ っ て 、 新 し い イ メ ー ジ ・雰 囲気 を作 り出 す とい う こ と は、中 身 を よ り良 く見 せ る とい う 目的 が あ る と考 え る の が 普 通 で あ る し、
今 まで述 べ て きた こ と は、基 本 的 に は 、そ の よ う な考 え を元 に して い る。
そ して 、 中 身 を よ り良 く見 せ る とい う 目的 を極 端 な 形 で押 し進 め て い く と、 上 記 の よ う に、 実 際 に は変 わ らな い 中 身 を、 あた か も変 わ るか の よ う な錯 覚 を意 図 的 に与 え る危 険 性 が 出 て くる。 も し中 身 を よ り良 く見 せ