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教師を目指す学生に伝えたい実践力⑥

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Academic year: 2021

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第4章 研究ノート・提言

教師を目指す学生に伝えたい実践力⑥

~特別支援学校(知的)における授業づくり~

辻   誠 一

1),2)

教師を目指す学生に伝えたい実践力⑥特別支援学校(知的)における授業づくりとして、

著者が取り組んできた多くの実践を振り返り、また、「発達の遅れと教育」日本文化科学社 VOL560 2004に提言として寄稿した「障害のある子との学級づくり・授業づくり」を紹介 した。さらに特別支援学校(知的)における授業づくりについて、新学習指導要領の「主体 的・対話的で深い学び」を実現するための授業改善の視点を踏まえ、授業づくりに欠かせな い大切な視点を「研究ノート・提言」としてまとめた。

※  文中の学校名は、筆者が勤めていた当時の校名で記載してある。(例 「宮城県立角田養 護学校」は、現在「宮城県立角田支援学校」に校名変更になっている。) 

キーワード:実践力、特別支援学校(知的)、授業づくり

1.はじめに

昨年度の東北福祉大学特別支援教育室「研究紀要」では、教師を目指す学生に伝えたい実 践力⑤として、著者が校長として勤務した5年間(宮城県立角田養護学校3年・宮城県立光 明支援学校2年)での職員会議資料「校長のつぶやき」を基に、4~5月の時期に、先生方 へ再確認のために発信してきた「指導・支援のコツ」の一部を3つのカテゴリー毎に整理し、

紹介した。

今回は、教師を目指す学生に伝えたい実践力⑥特別支援学校(知的)における授業づくり として、著者が取り組んできた多くの実践を振り返り、また、「発達の遅れと教育」日本文 化科学社VOL560 2004に提言として寄稿した「障害のある子との学級づくり・授業づくり」

を紹介する。さらに特別支援学校(知的)における授業づくりについて、新学習指導要領の

「主体的・対話的で深い学び」を実現するための授業改善の視点を踏まえ、授業づくりに欠 かせない大切な視点を「研究ノート・提言」としてまとめ紹介する。

1)東北福祉大学教育学部教育学科

2)東北福祉大学教育・教職センター特別支援教育研究室

(2)

教師にとって授業とは、日々、子供たちとの関係性の中で繰り返される重要な営みであり、

一番大切な仕事である。ぜひ教師を目指す学生にも日々の授業の大切さや授業づくりの方 法を理解し、実践力のある教師を目指してほしい。

2.特別支援学校(知的)における授業づくり

著者の教諭として実践を深めていた宮城県立光明養護学校(14年間)、宮城県立名取養護 学校(2年間)時代を振り返ると、体育の授業づくりを中心に、数多くの実践に挑戦し、そ の実践記録をまとめ、各方面の月刊誌等に発信してきた。

著者の考える授業づくりとは、一つの授業そのものだけで成立するものではなく、子供た ちの実態把握から始まり、教室環境づくり、授業づくりの基盤となる学級づくり、学級づく りの基盤となる「朝の会」、全ての授業づくりの命となる「教材・教具」の工夫等、全てが 関連し合い、子供たちにとってより良い授業づくりに結びつくと考えている。

そこで、特別支援学校(知的)における授業づくりについて論述するに当たり、まず授業 づくりや学級づくりの基盤となる「朝の会」実践を中心に、著者の数多くの授業づくりの実 践を振り返える。次にそれらの実践を踏まえ、著者が「発達の遅れと教育」日本文化科学社

(VOL560 2004)に提言として寄稿した「障害のある子との学級づくり・授業づくり」の原 文を一部修正して紹介する。

1)著者の授業づくりの実践を振り返って

著者が初めての養護学校(知的)に赴任したのは、昭和54年4月、障害児教育の転換期 である養護学校義務制の時期であった。

当然、新しく始まる「重度・重複障害児の教育」に関して、学校も先輩教師も全てが手探 りの状態で、新たな体制や指導法、教育の在り方を確立させなければならない時代であり、

職員一同、力を合わせ新たな「重度・重複障害児の教育」に取り組んだ。

そのため、著者も次のような授業づくりに関する多くの実践に取り組み、各方面の全国の 月刊誌等に実践をまとめ発信してきた。

⑴ 著者の発信した授業づくりに関する主な実践 

当時の養護学校(知的)の教育では、子供たち一人一人の将来の社会参加・自立を目標に 子供たちの実態やニーズを把握することを基盤に、全ての授業づくりが展開されていた。

そのため、著者が授業づくりの実践に取り組むに当たり、いつも意識し大切にしてきた視 点は、次の5点である。

 ①授業づくりの基本は、子供たちを中心に据え、子供たちが主役である。

 ②養護学校(知的)の教育は、「子供の実態ありき」から始まる。

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 ③子供たちの願いやニーズを大切に子供たち一人一人の個に応じた指導を展開する。

 ④指導プログラムや教材・教具を工夫し、「できる状況づくり」を仕組む。

 ⑤授業記録を大切に、PDCAサイクルで授業評価・改善を行い、まとめを発信する。

著者の14年間における宮城県立光明養護学校時代に取り組んだ多くの実践は、下記のよ うに実践記録としてまとめ、外部(学研:実践障害児教育、日本文化科学社:発達の遅れと 教育、文部省:体育指導の手引き、日本体育社:学校体育)へと発信してきた。

 ○「重度・重複障害児を楽しく学習に参加させるための教材・教具の工夫」   

 ○「意欲を高める楽しい朝の会」 

 ○「意欲を高める楽しい体育指導─なわを使った運動─」

 ○「数の基礎概念を高める指導(トラック)」

 ○「動きづくりから体力づくりへのステップ」

 ○「意欲を高めるサーキット運動(ジャングル探険)」

 ○ 「精神薄弱児のタイミングコントロール能力に関する指導 ─ボール回避動作の指導 を通して─」

 ○「タイミングコントロール能力を高める楽しく体育指導」      

 ○「精神薄弱児のボデーシェマに関する研究─OT児の傾斜反応における姿勢保持─」

 ○「バランス能力を高める楽しい体育指導」

 ○「運動イメージを高める体育指導─緩衝能動作を中心に─」

 ○ 「障害の重い生徒でも主体的に取り組める作業学習を求めて─本校高等部基礎作業班 の実践から─」

 ○「小学部(はう・くぐる・とぶ)の実践」文部省   ○「精神薄弱児のより良い体育指導をめざして」

⑵ 授業づくりや学級づくりの基盤となる「朝の会」実践から

前述した著者の実践の中から、特に養護学校(知的)の教育で、授業づくりや学級づくり の基盤となる「朝の会」の実践の一部を紹介する。

この「朝の会」の実践は、昭和56~58年度の三年間、研究テーマ「集団生活への参加能 力を図るための意思交換の指導」を掲げ、宮城県立光明養護学校で実施された公開研究会、

小学部の朝の会「挨拶ドラえもん」の実践である。

やはり、この実践でも、前述の授業づくりに大切な5つの視点を踏まえ、子供たちの朝の 会における実態を把握し、子供たちを中心に楽しい「朝の会」が展開できるよう「おはよう ございます」と音声が出る「挨拶ドラえもん」を図1のように工夫した。その結果、子供た ちは「挨拶ドラえもん」に興味を示し、自分から挨拶する姿が見られるようになり、「挨拶

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図 1 教材・教具の工夫「挨拶ドラえもん」(鼻が光り・音声が出る)

図 2 実践の発信「挨拶ドラえもん」9)

●実践をまとめ発信 ─意欲を高める楽しい朝の会(学研・実践障害児教育)─

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ドラえもん」を活用した楽しい「朝の会」に繋がった。その実践のまとめの発信は、図2の とおりである。

2)「障害のある子との学級づくり・授業づくり」から3) 

4月の一学期スタートは、子供たちにとっても教師にとっても、先生や友達が変わり、心 がうきうきする反面、期待と不安が入り混じる時期である。

そして、この4月のスタートこそが、子供・親・教師が互いにこの一年間を楽しく過ごせ るかどうかの明暗を分ける第一歩となる。

この一年間、子供たちにとっても教師にとっても、楽しい学校生活となり、子供主体の楽 しい学級となるように、教師自身が、新たな気持ちで子供たちの学習や発達に責任と自覚を 持ち、アイデアを生かした工夫を行うことが大切である。

【学級・授業づくりのための基盤】

4月、担任発表が終わり、この一年担当する子供たちが決まったら、まず、次の項目から、

じっくりと始めよう。

①この一年、この子供たちの成長発達に責任を持つという、しっかりとした自覚を持つ  ・教師自身の意識改革が、子供を変化させる。

②引き継ぎ書や前年度の記録、指導要録の記録の確認をしっかり行う  ・先入観にとらわれず、最終的には教師自身の見抜く目が大切である。

③個別の指導計画から、年間の目標・支援等をイメージ化する

 ・新入生の場合、できるだけ早く多くの情報を集め、個別の指導計画作成準備を行う。

④養護学校(特別支援学校)の複数担任制(T・T)の場合は、共通理解を大切に

 ・ 形式的な話し合いだけでなく、ペア同士、「目配り・気配り・心配り」を大切に、二 人で協力し合って楽しい学級づくりを目指すことが大切である。

⑤子の願い、親の願いの把握をしっかりと

 ・ 子供の実態やニーズに合わせ、子・親・教師の願いのすりあわせを早めに行い保護者 からの信頼獲得が大切である。

⑥開かれた学級を目指して

 ・ 学級便り等を活用し、地域への発信計画をしっかり立てる。また、ボランティアや PTA等への協力依頼も検討しておく。特に養護学校(特別支援学校)では、学部や 学校全体との連絡・連携を密に行うことが大切である。

【学級づくりのポイント】

楽しい学校生活や分かる楽しい授業の基盤となるのが、学級づくりである。適切な学級づ くり無くして、楽しい学校生活や分かる楽しい授業は成立しない。

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教師は教室環境づくりのコーディネーターである。子供たちの実態にあわせ、できるだけ 早く、子供たちにとって動きやすく、見通しがもてるように教室環境を見直す。

そのためには、子供たちの机の配置、掲示物の貼り方や教室全体の色づかい、教師用机の 位置を変えるだけでも、教室環境は大きく違ってくる。

まずは、子供たちの実態を観察し、子供たちにとって動きやすく学習しやすい教室環境を 考え、特に次の工夫が大切である。

①机の位置や配置の工夫

②ロッカー・黒板・掲示板等の工夫

③学級のルールの工夫   

④楽しい学級マスコットの工夫や学級のテーマソング・朝の会の歌等の工夫 等 自閉的な傾向のある子供たちには、ティーチプログラム的な環境づくりが有効である。

【授業づくりのポイント】

「分かる・できる・楽しい授業づくり」は、あくまで、子供たちとの信頼関係から始まり、

しっかりした学級づくりが基盤となる。そして、「分かる・できる・楽しい授業」とは、子 供の実態に基づいたアイデアあふれる授業であり、子供に合わせた多様な活動が用意されて いる授業である。特に次の点に留意することが大切である。

①年間指導計画及びタイムテーブルの確認・見直し

教育課程やタイムテーブルに、子供たちを無理に合わせようとせず、子供たちの実態や ニーズをもう一度見つめ直し、教育課程の創造と学校生活に見通しの持てるタイムテーブル を工夫する。

②学習のねらいや手だての明確化

子供たちのニーズに合わせ、学習内容を整理し、個別の学習や集団での学習、交流学習の 位置づけをはっきりさせ、学習のねらいや手だての明確化を図る。

③「朝の会」の充実

毎日繰り返される朝の会の充実こそ、すべての授業づくりの基盤である。

④分かるできる楽しい授業の三つの条件

 ア 子供たちの良さを見つける努力とするどい実態把握  イ 個に応じた見通しのもてる学習環境の工夫及び整備  ウ 個に応じた指導法(支援)の工夫

  ・教師の指導法(言葉、目線、位置、補助、グループ分け等)の工夫   ・個に応じた教材・教具の工夫・開発

  ・複数担任制(T・T)では、ペア同士の協力連携

  ・ 一人学級一人担任の障害児学級の教師では、学校内や地域に相談できる仲間や先輩    

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をつくり孤立しないことである。

おわりに、全国どの学級でも、4月の学校生活が順調にスタートし、この一年が、子供た ちたにとって達成感・成就感があり、どの子も目を輝かせて精一杯力を発揮できるような学 級づくりや授業づくりを期待している。

3.新しい学習指導要領の求める授業づくり

令和2年4月より「特別支援学校小学部・中学部学習指導要領」(平成29年4月28日告示)

が移行措置を経過し、小学部では全面実施となった。

新しい学習指導要領の求める授業づくりでは、図3学習指導要領改訂の方向性のとおり、

大きく次の3つの視点が求められている。

①「何ができるようになるか」の視点

「新しい時代に必要となる資質・能力と学習評価の充実」を図るため、学びに向かう力・

人間性等の涵養、生きて働く知識・技能の習得、思考力・判断力・表現力等の育成

②「何を学ぶか」の視点

新しい時代に必要となる資質・能力を踏まえた教科・科目等の新設や目標・内容の見直し 

③「どのように学ぶか」の視点

主体的・対話的で深い学び(「アクティブ・ラーニング」)の視点からの学習過程の改善

図 3 学習指導要領改訂の方向1)

(8)

また、文部科学省季刊誌「特別支援教育」春号 No.77(2020.3)特集、障害のある児童 生徒の「主体的・対話的で深い学び」の視点からの授業改善(知的障害教育における授業改 善)22P~には、知的障害教育における授業改善の具体的視点が示された。

それによれば、知的障害のある児童生徒の学習上の特性(学習によって得た知識や技能が 断片的になりやすく、実際の生活の場面の中で活かすことが難しい)から、実際の生活場面 に即しながら、繰り返し学習することにより、必要な知識や技能等を身に付けられるように する継続的、段階的な指導が重要となること、成功経験が少ないことなどにより、主体的に 活動に取り組む意欲が十分に育っていないことから、学習の過程では、児童生徒が頑張って いるところやできたところを細かく認めたり、賞賛したりすることで、児童生徒の自信や主 体的に取り組む意欲を育むことのさらなる重要性が指摘された。

授業づくりに関する主な具体的配慮事項は、下記のとおりである。

①知的障害のある児童生徒の「対話的な学び」について

多様な学習活動を組み合わせ授業を組み立て、児童生徒が持てる力を発揮しながら「自己 の考えを広げ深める」ことを意図して授業改善を重ねていくことが重要である。

②指導計画の作成と各教科全体にわたる内容の取り扱いについて

教育活動全体にわたって生活に結び付いた効果的な指導を行っていくことが重要であるこ とは従前のとおり。今回の改訂では、更に個々の児童生徒が、意欲を持って「主体的」に学 習活動に取り組むことが重要である。そのためには児童生徒に分かりやすいように学習活動 の予定を示したり、学習活動を一定期間繰り返したり等の工夫が必要である。

③知的障害のある児童生徒の教育においては、「主体的・対話的で深い学び」の視点から の授業改善のためには、確実な実態把握と学習指導上の特性を踏まえることが必要である。

④授業改善への視点の共有化と組織の活性化が必要である。

4.まとめ─「不易と流行」の視点からの授業づくり─

本稿では、著者の14年間における宮城県立光明養護学校時代に取り組んだ多くの実践を 振り返り、更に新しい学習指導要領改訂の方向と授業改善に向けて必要な内容を整理してき た。

本稿のまとめとして、「不易と流行」の視点から、特別支援学校(知的)における授業づ くりに関するキーワードを整理し比較検討した。

その結果は、表1(著者作成)のとおりである。

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表1 新しい学習指導要領の求める授業づくりと従前からの授業づくりの比較

(著者作成)

新しい学習指導要領の求める授業づくりの方向

(流行)

従前からの授業づくりの方向

(不易)

<①求める資質・能力に関して>

○新しい時代に必要となる資質・能力の育成(学 びに向かう力・人間性等の涵養、生きて働く知識・

技能の習得、思考力・判断力・表現力等)

<②学習過程・指導に関して>

○「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラー ニング)」の視点からの学習過程の改善

○「対話的な学び」のために。

 ※多様な学習活動を組み合わせた授業

 ※ 自己の考えを広げ深めることを意図した授業 改善

○実際の生活場面に即した継続的、段階的な指導

○児童生徒の自信や主体的に取り組む意欲を育む ための適切な賞賛

<③実態把握・評価・連携等に関して>

○児童生徒の実態だけでなく、学習上の特性の把

○学習評価の充実

○授業改善への視点の共有化と組織の活性化

<④教育課程に関して>

○社会に開かれた教育課程の実現  ※カリキュラムマネージメント  ※PDCAでの見直し改善

<①求める資質・能力に関して>   

○「生きる力」の育成

○知識・技能の習得と思考力・判断力・表現力等 の育成のバランス

○将来の社会参加・自立を目指して

<②学習過程・指導に関して>

○子供中心・子供が主役の授業

○生活全てが学習

 ※生活に根ざした学習内容の精選

○「できる状況づくり」の工夫  ※教材・教具、指導・支援法の工夫

○自己選択・自己決定の大切さ

○見通しが持てる授業及び計画の工夫  ※教室環境及び指導計画等の工夫

○達成可能な短期目標の設定  ※スモールステップでの指導  ※達成感や成就感を味わわせる指導

<③実態把握・評価・連携等に関して>

○確実な実態把握と教育的ニーズの把握  ※子供たちの良さや好みのチェック  ※子・保護者の願いの把握

○指導と評価の一体化

○T・T同士の共通理解と連携

<④教育課程に関して>

○開かれた学校を目指した教育課程の見直し改善  ※PDCAでの見直し改善

新しい学習指導要領の求める授業づくり(流行)と従前からの授業づくり(不易)に使用 されている言葉(キーワード)を4つのカテゴリー毎に比較してみると、使われている言葉

(キーワード)には確かに違いがあるものの、その時代を反映した大切な授業づくりのポイ ントとなる言葉(キーワード)であり、その意味する内容や捉え方、方向性には、それほど 大きな違いはないと考えられる。

従って、特別支援学校(知的)における授業づくりでは、耳新しい新しい言葉(流行)だ けに右往左往することなく、いつの時代も授業づくりの基本である不易の視点を大切にする ことが重要である。その上で、学校や担当教師は、新しい時代の求める授業づくりの方向を しっかり整理し、変化や要請に対応する柔軟な思考を持ち、新しい学習指導要領の求める授 業づくり(流行)を実践することが求められている。

(10)

まとめの最後に、授業づくりは、授業実践のスタートに過ぎず、まだ授業計画の段階であ る。その授業計画を効果的に進めるためには、担当教師の授業力(授業を展開する力)を高 めることが必要となる。

著者が経験した授業づくりを振り返ると、授業とは生き物であり、子供たちや教師のかか わりにより、日々変化する。

良い授業を展開するための授業力について、著者が以前、勤務していた宮城県特別支援教 育センター所長時代(2011)に、若手指導主事と一緒に作成した「特別支援学校・教師の ためのサポートブックⅡ・学習指導案を書こう30のポイント」の中で「授業力」を次の「4 つの力」に整理したので紹介する。

<「授業力」を構成する「4つの力」>

①子供を理解する力        

・ 子供たちの発達の段階や障害特性を理解し、子供の行動をしっかり観察し、その行動に   意味付けをしていく力

②指導・支援の在り方を計画し、改善する力 

・ 子供の発達や生活経験、障害特性を踏まえて、指導計画を作成する力。授業を振り返っ   て改善する力

③教材・教具を開発する力         

・子供の力を引き出せる教材・教具を探求し、開発、改善していく力

④授業を展開する力         

・展開する基礎力(説明力・発問力・板書力・TT同士の連携力 等々)

・子供の行動や反応に応じて授業を構成しなおしていく力

以上の「4つの力」は、どんなに時代が変化しようとも不変(不易)であり、特別支援学 校(知的)における授業づくりには欠かせない力である。教師を目指す学生は当然のこと、

いつの時代も全ての教師が身に付けてほしい力である。

5.おわりに      

今回は、教師を目指す学生に伝えたい実践力⑥として、著者が取り組んできた多くの実践 を振り返り、更に特別支援学校(知的)における授業づくりについて、新学習指導要領の「主 体的・対話的で深い学び」を実現するための授業改善の視点を踏まえ、授業づくりに欠かせ ない大切な視点を紹介してきた。

教師にとって授業づくりとは、日々、子供たちとの関係性の中で繰り返される重要な営み であり、一番大切な仕事である。そして、授業づくりとは、一つの授業そのものだけで成立 するものではない。

(11)

常に子供たちの実態把握から始まり、教室環境づくり、授業づくりの基盤となる学級づく り、学級づくりの基盤となる「朝の会」、全ての授業づくりの要である「教材・教具」の工 夫等、全てが関連し合い、子供たちにとって効果的な授業づくりに結びつく。

「子供の視点に立たない授業は、度の合わない眼鏡をかけたのと同じである。」

(「発達の遅れと教育」 不失正鵠(ふしつせいこく)より)

という言葉がある。この言葉どおり、授業とは、教師の勝手な主観や思い込みで行われる ものではない。

教師を目指す学生には、日々の授業の大切さや授業づくりの基本を、ぜひ学んでほしい。

そして、昔から変わらない授業づくりの「不易」の力量を身に付け、新しい時代に必要と される資質・能力の育成ができるよう、新しい授業づくりの視点(流行)をしっかりと取り 入れ実践力のある教師となることを期待している。

参考・引用文献

1 )文部科学省HP「新学習指導要領の方向性」 2017.4 2 )文部科学省季刊誌「特別支援教育」春号 No.77 2020.3

3 )「障害のある子との学級づくり・授業づくり」日本文化科学社:発達の遅れと教育 VOL.560 2004 4 ) 「特別支援学校・教師のためのサポートブックⅡ学習指導案を書こう30のポイント」宮城県特別支援教

育センター 2011.2

5 ) 辻誠一著「改訂・特別支援教育のコツと技」日本文化科学社 2008.4 ※2015・4月 フィリア出版 より再版

6 )辻誠一著「実践・特別支援教育テキストブック」教育開発研究所 2017.4

7 ) 辻誠一『「教師力」向上のための四つの視点!』宮城県特別支援教育センター広報誌「燦々」提言  2011.4

8 ) 「重度・重複障害児を楽しく学習に参加させるための教材・教具の工夫」学研:実践障害児教育  1983 VOL.123 

9 )「意欲を高める楽しい朝の会」学研:実践障害児教育 1984 VOL.136

10)「意欲を高める楽しい体育指導─なわを使った運動─」学研:実践障害児教育 1985 VOL.148 11)「数の基礎概念を高める指導(トラック)」学研:実践障害児教育 1986 VOL.152

12)「動きづくりから体力づくりへのステップ」学研:実践障害児教育 1988 VOL.176 13)「意欲を高めるサーキット運動」学研:実践障害児教育 1990 VOL.200

14) 「精神薄弱児のタイミングコントロール能力に関する指導 ─ボール回避動作の指導を通して─」日本 文化科学社:発達の遅れと教育 1985 VOL.323

15)「タイミングコントロール能力を高める楽しく体育指導」日本文化科学社:発達の遅れと教育 1986

(12)

VOL.344

16) 「精神薄弱児のボデーシェマに関する研究─OT児の傾斜反応における姿勢保持─」日本文化科学社:

発達の遅れと教育 1987 VOL.358

17)「バランス能力を高める楽しい体育指導」日本文化科学社:発達の遅れと教育 1989 VOL.374 18) 「運動イメージを高める体育指導─緩衝能動作を中心に─」日本文化科学社:発達の遅れと教育 

1990 VOL.386

19) 「障害の重い生徒でも主体的に取り組める作業学習を求めて─本校高等部基礎作業班の実践から─」日 本文化科学社:発達の遅れと教育 1990 VOL.395

20)「小学部(はう・くぐる・とぶ)の実践」文部省:体育指導の手引き 1987 21)「精神薄弱児のより良い体育指導をめざして」日本体育社:学校体育 1993 2月号

図 2 実践の発信「挨拶ドラえもん」 9)

参照

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