フランス法における行政行為の職権取消
序 章 一 前
史
二 戦椴取消論の形成(以上、お巻八号)
三 制限法理の論理構造 回 戦株取消論の動稲(以上、本号)
五 職権取消論の進展 終 草
制限法理の論理構造
一 権利が取り消され得ないという私人に対する保障である」。 できることであり、他方で、権限ある機関の決定から生じた ozqgEE苦ロ)によって自身や下級機関の処分の統制を確保 行政機関が取消権(司28弓号店門『怠る。すなわち、一方で、 る二つの原理を調和させる必要性が、問題を難しくしてい 「ともに我々の公法において根本的であると考えられてい 法的安定性
研 究
フランス法における行政行為の験権取消
〆’町、、一一
、、_,,
筑波大学大学院
斉 藤
健
良B
制限法理を確立した前記カシエ夫人判決に際して、論告担当官リヴエは、論告の冒頭でこのように述べていた。そして、これに続けて、根本的な問題を提起した。二O世紀初頭までの判例のように、「〔違法処分の職権取消を無期限に認める〕理論では、社会関係の中に、国民生活にとって明らかに有害である不安定な環境2508Z52ロBEZι巾)を作り出してしまい、また、行政に対してより完全な活動の自由を与えるという、この理論が一見すると示しているかもしれない利点さえも、おそらく、性急で軽率な行動という十分に熟していないイ(防)ニシアテイブの危険性によって相殺されてしまうであろう」。ここでは、法的安定性に対する二重の意味での脅威が見出されている。行政による職権取消の可能性は、処分後において、行政活動と深く関わる国民生活を不安定なものにしてしまい、また処分過程においても、慎重な熟慮を欠いたまま質
(第∞∞巻第九号)
五
研 究
フランス法における行政行為の職権取消
の低 い決 定︵ した がっ て︑
当然
に
事後
の修
正が
想定 され る決 定︶
を許してしまう︒M
−オ
lリウも述べているように︑これら︵防︶
は明 らか に︑
﹁社会関係の安全︵印骨
2b
︶にとっての危険﹂であろう︒
こう
して
︑
基底的な視座として︑法的安定
性の
重要
性が明確にされたのである︒
なお︑この当時︑リヴエも判例も法的安定性に直接言及し
てはおらず︑むしろ︑既得権の概念が援用されてきた︒だが︑その実質的根拠を問︑つならば︑法的安定性の尊重
があ っ
︵仰︶たはずである︒J
−ワ
リ
lヌが指摘するように︑
﹁ 実
際︑国
民は活動する際︑行政の決定に依拠している︒
した
がっ
て︑
国民には︑法関係に一定の静態性︵由
Et
−−
志︶
︑法
的安
定性
︵別︶
2︵ 思
口 広 −
zュeAE巾︶が必要なのである﹂0
そうすると︑適法性の原理と法的安定性の要請との相克の
中で︑後者の尊重によって具体的な帰結を導くための法論理
的表現として︑既得権が援用されてきたと考えられるのであ
る︒
ニ権利形成的行為・既得権 既得 権︵
85R仏
古一
回︶
の概
念は
︑ 二疋 の性
質をもっ私人の
法的地位を表している︒これを形成する行政行為は︑権利形︵附︶J成的行為︵
RS QS RR
母号島田︶と性格づけられる︒したが
って︑権利形成的行為によって私人に対して一定の法的地位
る権利の形成に否定的な論者にも︑﹁行政上の地位を改定化︵川︶させる必要﹂から取消制限を直接に正当化する者もおり︑そ
うすると︑ここでは︑権利の理解が判例の評価を分けていた
ように思われる︒それは主観的権利ではないとの指摘も見ら︵川︶れるところで︑そうであるならなおさら︑いかなる権利であ
るのかが問題となる︒
M
−ワ
リ
lヌは︑権利形成的行為
を ︑
﹁その名において行
為をなした公共団体以外の者がその維持に対して利益をもっ
二疋の法関係
EZ
色︒
三ロ
ユ色
宮市
︶を
︑そ
の
者に対して確定的
に︵
伝出
口庄
55
8円︶形成することを
目
的及び効果とする行
︵川︶為﹂と定義して︑利益性と確定的法効果をメルクマールとし
た︒交告
尚史 教授 は︑
﹁わが国の特許ないし設権行為よりも︵川︶広い概念であることは間違いないと思われる﹂と述べてお
り︑フランスでも︑﹁大多数の行政行為は法関係を形成・付︵川︶与し︑その結果︑権利が生じる﹂といわれている︒不利益処
分が第三者に権利を形成することもあるため授益処分と全く︵川︶同じなのではないものの︑権利に固有の合意はなく︑正当な︵川︶利益とほとんど変わらないようである︒
判例においては︑定義を示さないままに権利形成的行為で
あると判断されており︑しかも︑法令の仕組みは同じままに
︵ 印
︶判例が変更されることもある︒権利形成的行為は法令上
の用 研 究
フランス法における行政行為の職権取消︵一
一 ︶
二四
︵ 第
∞ ∞
巻 第
九号 ︶
ムノ、
が形成されることで︑既得権が生じる︒そしてその結果︑職
権取消は制限されることになる︒
前述のとおり︑判例では︑二O世紀初頭まで︑権利の形成
が適
法処分に限られていた︒しかし︑職権取消法理を打ち立
てたカシェ夫人判決は︑違法な権利形成的行為という範騰を
一般的に承認することによって︑違法処分に対しても権利の
形式を認めて︑取消制限を及ぼした︒この点︑権利否認論を
とるデユギl
らに 限ら ず︑
違法処分から権利は生じないと批︵川︶判されることが多かった︒そこで︑判例の正当化に取り組ん
だの
が︑
M
・ワ
lリヌである︒
まず
︑
﹁善 意
︵ぎ
ロロ
巾﹃
包︶
の第
三者が外見上取得した権利の
尊重
﹂
を導く外観法理
52
号︵山︶ι
8土 .
宮 ﹁ g n
巾︶による説明があり得るが︑それでは出訴期間
の経過にかかわらず︑善意の私人に対しては職権取消が不可
能になってしまう
︒また︑適法性の推定︵℃芯
85 ECロ 号
広岡白﹈志︶を援用するとすれば︑職権取消のためには行政によ
る違法性の承認が必要であるから︑矛盾が生じてしまう︒そ
こで
︑
M
・ワ
リ
l
ヌに
よれ
ば︑
一 ム
定期間の経過後は︑﹁取得
されたと考えるであろう状況の激変よりも︑:::違法性の維
持による方が社会的利益は害されない﹂︑﹁無秩序よりも不正義の方がよい﹂のであり︑法的安定性の要請が違法処分によ
︵ 山
︶る権利の形成を導く︑と解されたのであった︒違法処分によ
︵山︶語でもあり︑そうでない行為には取消制限が及ばないだけに
結論を左右する鍵概念であるにもかかわらず︑暖昧な概念な
のである︒そこで︑大多数の学説は︑権利形成が否定される
行政行為をリスト化することで消極的に定義するに留まる︒
例えば︑非権利形成的行為には︑行政立
法︑ 条件 付行 為︵ 白円 窓
口D
ロ 舎 一
c E
色︑確認的ないしは
宣言的行為22巾52
間口
昆E
庶 ロ E 55
︑不正手段によって詐取された行為︵白円丹市C
E﹁EE E宮 内
巾︶︑不存在︵無効︶め行為︑消極的行為︑大半の警
察許可︑公用収用に際しての公益性認定︵ι合管住吉
qE
−E
︵m︶ 吉E
宮市
︶な
どが
挙げられる︒
ところで︑行政行為から生じる権利と既得権との関係につ
いて
︑
学説は︑両者を概念上区別せずに理解してきた︒
つま
り︑権利形成的行為は︑必然的に既得権を生じさせるものと
されてきたのである︒︵凶
︶
︵
問︶近代フランス法における既得権の概念は︑民法典二条に基
づく法律の不遡及性原則の妥当範囲を闘するものとして︑旧
法と新法の抵触問題
︵時
際法 ︶
という文脈において用いられ
てきたものである︒そこでは︑旧法に基づき﹁取得された権利︵凶︶
︵ 母
C吉
田門
官広
︶
﹂は︑新法に対して保護されると論じられた︒
行政法においては︑かつて越権訴訟では法律侵犯︵︿互邑S
且己
主三
︶を
理由
に取
消を
請求するために既得権の侵犯もが要
︵ 第
∞ ∞
巻 第
九号︶
七
研 究
フランス法における行政行為の職権取消
の低 い決 定︵ した がっ て︑
当然
に
事後
の修
正が
想定 され る決 定︶
を許してしまう︒M
−オ
lリウも述べているように︑これら︵防︶
は明 らか に︑
﹁社会関係の安全︵印骨
2b
︶にとっての危険﹂であろう︒
こう
して
︑
基底的な視座として︑法的安定
性の
重要
性が明確にされたのである︒
なお︑この当時︑リヴエも判例も法的安定性に直接言及し
てはおらず︑むしろ︑既得権の概念が援用されてきた︒だが︑その実質的根拠を問︑つならば︑法的安定性の尊重
があ っ
︵仰︶たはずである︒J
−ワ
リ
lヌが指摘するように︑
﹁ 実
際︑国
民は活動する際︑行政の決定に依拠している︒
した
がっ
て︑
国民には︑法関係に一定の静態性︵由
Et
−−
志︶
︑法
的安
定性
︵別︶
2︵ 思
口 広 −
zュeAE巾︶が必要なのである﹂0
そうすると︑適法性の原理と法的安定性の要請との相克の
中で︑後者の尊重によって具体的な帰結を導くための法論理
的表現として︑既得権が援用されてきたと考えられるのであ
る︒
ニ権利形成的行為・既得権 既得 権︵
85R仏
古一
回︶
の概
念は
︑ 二疋 の性
質をもっ私人の
法的地位を表している︒これを形成する行政行為は︑権利形︵附︶J成的行為︵
RS QS RR
母号島田︶と性格づけられる︒したが
って︑権利形成的行為によって私人に対して一定の法的地位
る権利の形成に否定的な論者にも︑﹁行政上の地位を改定化︵川︶させる必要﹂から取消制限を直接に正当化する者もおり︑そ
うすると︑ここでは︑権利の理解が判例の評価を分けていた
ように思われる︒それは主観的権利ではないとの指摘も見ら︵川︶れるところで︑そうであるならなおさら︑いかなる権利であ
るのかが問題となる︒
M
−ワ
リ
lヌは︑権利形成的行為
を ︑
﹁その名において行
為をなした公共団体以外の者がその維持に対して利益をもっ
二疋の法関係
EZ
色︒
三ロ
ユ色
宮市
︶を
︑そ
の
者に対して確定的
に︵
伝出
口庄
55
8円︶形成することを
目
的及び効果とする行
︵川︶為﹂と定義して︑利益性と確定的法効果をメルクマールとし
た︒交告
尚史 教授 は︑
﹁わが国の特許ないし設権行為よりも︵川︶広い概念であることは間違いないと思われる﹂と述べてお
り︑フランスでも︑﹁大多数の行政行為は法関係を形成・付︵川︶与し︑その結果︑権利が生じる﹂といわれている︒不利益処
分が第三者に権利を形成することもあるため授益処分と全く︵川︶同じなのではないものの︑権利に固有の合意はなく︑正当な︵川︶利益とほとんど変わらないようである︒
判例においては︑定義を示さないままに権利形成的行為で
あると判断されており︑しかも︑法令の仕組みは同じままに
︵ 印
︶判例が変更されることもある︒権利形成的行為は法令上
の用 研 究
フランス法における行政行為の職権取消︵一
一 ︶
二四
︵ 第
∞ ∞
巻 第
九号 ︶
ムノ、
が形成されることで︑既得権が生じる︒そしてその結果︑職
権取消は制限されることになる︒
前述のとおり︑判例では︑二O世紀初頭まで︑権利の形成
が適
法処分に限られていた︒しかし︑職権取消法理を打ち立
てたカシェ夫人判決は︑違法な権利形成的行為という範騰を
一般的に承認することによって︑違法処分に対しても権利の
形式を認めて︑取消制限を及ぼした︒この点︑権利否認論を
とるデユギl
らに 限ら ず︑
違法処分から権利は生じないと批︵川︶判されることが多かった︒そこで︑判例の正当化に取り組ん
だの
が︑
M
・ワ
lリヌである︒
まず
︑
﹁善 意
︵ぎ
ロロ
巾﹃
包︶
の第
三者が外見上取得した権利の
尊重
﹂
を導く外観法理
52
号︵山︶ι
8土 .
宮 ﹁ g n
巾︶による説明があり得るが︑それでは出訴期間
の経過にかかわらず︑善意の私人に対しては職権取消が不可
能になってしまう
︒また︑適法性の推定︵℃芯
85 ECロ 号
広岡白﹈志︶を援用するとすれば︑職権取消のためには行政によ
る違法性の承認が必要であるから︑矛盾が生じてしまう︒そ
こで
︑
M
・ワ
リ
l
ヌに
よれ
ば︑
一 ム
定期間の経過後は︑﹁取得
されたと考えるであろう状況の激変よりも︑:::違法性の維
持による方が社会的利益は害されない﹂︑﹁無秩序よりも不正義の方がよい﹂のであり︑法的安定性の要請が違法処分によ
︵ 山
︶る権利の形成を導く︑と解されたのであった︒違法処分によ
︵山︶語でもあり︑そうでない行為には取消制限が及ばないだけに
結論を左右する鍵概念であるにもかかわらず︑暖昧な概念な
のである︒そこで︑大多数の学説は︑権利形成が否定される
行政行為をリスト化することで消極的に定義するに留まる︒
例えば︑非権利形成的行為には︑行政立
法︑ 条件 付行 為︵ 白円 窓
口D
ロ 舎 一
c E
色︑確認的ないしは
宣言的行為22巾52
間口
昆E
庶 ロ E 55
︑不正手段によって詐取された行為︵白円丹市C
E﹁EE E宮 内
巾︶︑不存在︵無効︶め行為︑消極的行為︑大半の警
察許可︑公用収用に際しての公益性認定︵ι合管住吉
qE
−E
︵m︶ 吉E
宮市
︶な
どが
挙げられる︒
ところで︑行政行為から生じる権利と既得権との関係につ
いて
︑
学説は︑両者を概念上区別せずに理解してきた︒
つま
り︑権利形成的行為は︑必然的に既得権を生じさせるものと
されてきたのである︒︵凶
︶
︵
問︶近代フランス法における既得権の概念は︑民法典二条に基
づく法律の不遡及性原則の妥当範囲を闘するものとして︑旧
法と新法の抵触問題
︵時
際法 ︶
という文脈において用いられ
てきたものである︒そこでは︑旧法に基づき﹁取得された権利︵凶︶
︵ 母
C吉
田門
官広
︶
﹂は︑新法に対して保護されると論じられた︒
行政法においては︑かつて越権訴訟では法律侵犯︵︿互邑S
且己
主三
︶を
理由
に取
消を
請求するために既得権の侵犯もが要
︵ 第
∞ ∞
巻 第
九号︶
七
研 究
フラ ンス 法に おけ る行 政行 為の 職権 取消
︵
一一 ︶
二 五 求さ れ︑
二O世紀初頭にこの判例が放棄された後も︑職権取
︵ 凶 ︶
消や行政行為の不遡及性原則に関して概念が維持される︒た
だ︑法律侵犯の訴えにおいて既得権が認められるためには︑
それが法律上保護されている必要があったようであるが︑特
に職権取消に関する判例では︑法律からは独立に︑個別的な
行政行為に基づく権利が認められるようになる︒そして︑そ
うした権利形成的行為の職権取消は出訴期間内に制限され︑
その経過後は既得権の侵害になると判断されたのであった︒
こうした判例の理解に際して︑学説は行政行為それ自体の
性質に関心を向けたことから︑権利を形成した行政行為には︵
問 ︶
不可侵性︵ES口問笠宮昨︶の原則が認められると解してきた︒
そのため︑ある権利が法的に保護されるべき﹁取得された権
利﹂であるか否かは特に問題とされない︒むしろ︑権利形成
的行為が一度なされた以上︑その維持に対する権利が既得権
として保護されると考えられてきた︒
だが
︑先に指摘したと
おり︑権利形成的行為の明確な定義は一不されていない︒そう
すると︑既得権に定義が与えられないことも︑ある意味では
当然であろう︒既得権は︑私人の地位に安定性を保障すべき
と判断された場合に認められるのであって︑その意味で︑一
︵ 凶 ︶
定の結論を導くための﹁機能的概念﹂なのである︒
もっ とも
︑
一部の論者は︑従来の学説における行政行為中
為外の要素を重視するヤナコプロスは︑判例において︑出訴
期間の経過によって﹁確定的に取得された権利23
宮内
田匙
巳 巴 ︿ 巾
gg ZS
E2 こが生じたと述べられている点に注目する
︵ 胤 ︶
︵例えば︑カシエ夫人判決︶︒というのも︑ここからは︑﹁時の
経過は︑処分によって形成された効果の安定化をもたらす点
で︑既得権の形成の
一構
成要素である﹂と理解できるのであ
︵ 防 ︶
る︒このように︑既得権は︑法関係の時間的進展の中に位置
づけることができる︒そして︑こうした観点からすると︑行
政行為によって形成された権利は︑時間の経過によって確定
的に取得され︑その結果として︑職権取消が制限されること
になるのである︒
三 取
消期
間の
制限
既得権の安定性を実現するためにリヴェが意識
した のも
︑
まさに時間の問題であった
︒﹁ 法
的破庇が処分庁やその階層
的上級機関による行政行為の取消を正当化するのに十分であ
るとしても︑この命題は︑あらゆる期間に︑原処分がなされ
た日からどんなに時が経過していようと適用されるのであろ
︵ 防
︶
うか
﹂
︒この点︑カシェ夫人判決以前︑大臣の問合せに対し
てコンセイユ・デタ財政部が︑﹁コンセイユ・デタによる取
消が可能である限り﹂︑大臣も取消が可能であるとの意見を
答申したことがあった︵主的
E
巾 ヨ Z
55︶︒リヴエはこの見
研
に舟モ ノ"
フラ ンス 法に おけ る行 政行 為の 職権 取消
︵
二︶二六
︵第 四∞ 巻第 九号
︶
Jへ
心の分析を批判して︑既得権を﹁既得の状況
EE EZ
年
︵ 凶 ︶
湾︶の維持に対する権利﹂として理解した︒その際に強調さ
れたのが︑﹁時間的に取得された権利25
冨白
2c ZE E巾−
︵ 別︶
RB古田こという観点である︒
こうした再構成の腐矢となったのは︑工場設置の認可の撤
︵ 川︶
回が争われた事件における論告担当官フルニエの論告であっ
た︒フルニエは︑許認可によって形成される法関係の進展の
有無を分析した上で︑﹁許可の対象となっている私的活動が
継続的であり︑その結果︑許可の効果が絶えず繰り返される
場合﹂には撤回が可能であるが︑﹁許可が一度ですべて吉見
守町 宮ミ
sg序回︶与えられる一図的作用︵
c u b g
ロE
55
5︶﹂
においては︑撤回は不可能であると整理した︒オヴレはこれ
を発 展さ せて
︑
﹁ 一
図的作用﹂と﹁継続的状況﹂
のほ かに
︑
行為が更新されることはないがそれによって生じた状況が時
間的に継続するものとして︑﹁継続的状況を生じさせる一回
︵ 問 ︶ 的作 用﹂
︵公 務
員の任命︑年金給付など︶を加えた︒そし
て ︑
オヴレによれば︑職権取消を制限することになる既得権が生
じる 領域 は︑
一回的作用︵典型的なものとしては︑一
回的 な金
銭給付の決定など︶によって解除条件などを伴わずに権利が
︵ 問 ︶
確定的に形成される場合に限られるのである︒
こうした学説を踏まえつつ︑既得権の形成における行政行
解を参照した上で︑職権取消は︑﹁不安定であるのが当然︵仏巾
﹁荷主であり︑また︑法律によって創設された訴訟の可能性
によって︑何れにしても︑処分の存続を望む私人がその維持
は確定的に保障されたと考えることを妨げる期間﹂に限定さ
れるべきであると解した︒そしてこれにより︑﹁行政取消と
争訟取消の可能性から生じる不安定な期間︵克号母
Z W E R E
−︵
問 ︶
官民 巾︶ を同 時に 閉じ る
﹂ことができるのである︒
こうしたリヴェの提案はヨンセイユ・デタによって採用さ
れ︑職権取消権の行使は︑行政行為の遡及的消滅があり得る
という点で類似の制度である出訴期間内に限定されることと
なった
︒ ﹁ ︹ 職権
︺取消権は︑時間の点で︑訴訟の方法による
︵ 防 ︶
取消しの権限に範をとることになる﹂のである︒ただ︑ォl
リウによれば︑ここには表面的な類似性だけでなく︑出訴期
間に潜む﹁非常に根深い観念﹂が反映している︒
すな わち
︑
行政法関係においては︑﹁決定の執行もまた︑短期間のうち
になされ得るというのでなければならないが︑しかし︑訴訟
的対立が調整される前に︑行政は当然に執行に移れるわけで
はないことから︑行政決定の有効性の問題は早急に解決され
なければならず︑より正確には︑執行的決定の手続によって
生じた訴訟的対立は早急に取り上げられなければならな
︵ 悶 ︶い ﹂
︒つまり︑取消期間の制限の背後には︑紛争の早期調整
︵第
∞∞ 巻第 九号
︶
九
研 究
フラ ンス 法に おけ る行 政行 為の 職権 取消
︵
一一 ︶
二 五 求さ れ︑
二O世紀初頭にこの判例が放棄された後も︑職権取
︵ 凶 ︶
消や行政行為の不遡及性原則に関して概念が維持される︒た
だ︑法律侵犯の訴えにおいて既得権が認められるためには︑
それが法律上保護されている必要があったようであるが︑特
に職権取消に関する判例では︑法律からは独立に︑個別的な
行政行為に基づく権利が認められるようになる︒そして︑そ
うした権利形成的行為の職権取消は出訴期間内に制限され︑
その経過後は既得権の侵害になると判断されたのであった︒
こうした判例の理解に際して︑学説は行政行為それ自体の
性質に関心を向けたことから︑権利を形成した行政行為には︵
問 ︶
不可侵性︵ES口問笠宮昨︶の原則が認められると解してきた︒
そのため︑ある権利が法的に保護されるべき﹁取得された権
利﹂であるか否かは特に問題とされない︒むしろ︑権利形成
的行為が一度なされた以上︑その維持に対する権利が既得権
として保護されると考えられてきた︒
だが
︑先に指摘したと
おり︑権利形成的行為の明確な定義は一不されていない︒そう
すると︑既得権に定義が与えられないことも︑ある意味では
当然であろう︒既得権は︑私人の地位に安定性を保障すべき
と判断された場合に認められるのであって︑その意味で︑一
︵ 凶 ︶
定の結論を導くための﹁機能的概念﹂なのである︒
もっ とも
︑
一部の論者は︑従来の学説における行政行為中
為外の要素を重視するヤナコプロスは︑判例において︑出訴
期間の経過によって﹁確定的に取得された権利23
宮内
田匙
巳 巴 ︿ 巾
gg ZS
E2 こが生じたと述べられている点に注目する
︵ 胤 ︶
︵例えば︑カシエ夫人判決︶︒というのも︑ここからは︑﹁時の
経過は︑処分によって形成された効果の安定化をもたらす点
で︑既得権の形成の
一構
成要素である﹂と理解できるのであ
︵ 防 ︶
る︒このように︑既得権は︑法関係の時間的進展の中に位置
づけることができる︒そして︑こうした観点からすると︑行
政行為によって形成された権利は︑時間の経過によって確定
的に取得され︑その結果として︑職権取消が制限されること
になるのである︒
三 取
消期
間の
制限
既得権の安定性を実現するためにリヴェが意識
した のも
︑
まさに時間の問題であった
︒﹁ 法
的破庇が処分庁やその階層
的上級機関による行政行為の取消を正当化するのに十分であ
るとしても︑この命題は︑あらゆる期間に︑原処分がなされ
た日からどんなに時が経過していようと適用されるのであろ
︵ 防
︶
うか
﹂
︒この点︑カシェ夫人判決以前︑大臣の問合せに対し
てコンセイユ・デタ財政部が︑﹁コンセイユ・デタによる取
消が可能である限り﹂︑大臣も取消が可能であるとの意見を
答申したことがあった︵主的
E
巾 ヨ Z
55︶︒リヴエはこの見
研
に舟モ ノ"
フラ ンス 法に おけ る行 政行 為の 職権 取消
︵
二︶二六
︵第 四∞ 巻第 九号
︶
Jへ
心の分析を批判して︑既得権を﹁既得の状況
EE EZ
年
︵ 凶 ︶
湾︶の維持に対する権利﹂として理解した︒その際に強調さ
れたのが︑﹁時間的に取得された権利25
冨白
2c ZE E巾−
︵ 別︶
RB古田こという観点である︒
こうした再構成の腐矢となったのは︑工場設置の認可の撤
︵ 川︶
回が争われた事件における論告担当官フルニエの論告であっ
た︒フルニエは︑許認可によって形成される法関係の進展の
有無を分析した上で︑﹁許可の対象となっている私的活動が
継続的であり︑その結果︑許可の効果が絶えず繰り返される
場合﹂には撤回が可能であるが︑﹁許可が一度ですべて吉見
守町 宮ミ
sg序回︶与えられる一図的作用︵
c u b g
ロE
55
5︶﹂
においては︑撤回は不可能であると整理した︒オヴレはこれ
を発 展さ せて
︑
﹁ 一
図的作用﹂と﹁継続的状況﹂
のほ かに
︑
行為が更新されることはないがそれによって生じた状況が時
間的に継続するものとして︑﹁継続的状況を生じさせる一回
︵ 問 ︶ 的作 用﹂
︵公 務
員の任命︑年金給付など︶を加えた︒そし
て ︑
オヴレによれば︑職権取消を制限することになる既得権が生
じる 領域 は︑
一回的作用︵典型的なものとしては︑一
回的 な金
銭給付の決定など︶によって解除条件などを伴わずに権利が
︵ 問 ︶
確定的に形成される場合に限られるのである︒
こうした学説を踏まえつつ︑既得権の形成における行政行
解を参照した上で︑職権取消は︑﹁不安定であるのが当然︵仏巾
﹁荷主であり︑また︑法律によって創設された訴訟の可能性
によって︑何れにしても︑処分の存続を望む私人がその維持
は確定的に保障されたと考えることを妨げる期間﹂に限定さ
れるべきであると解した︒そしてこれにより︑﹁行政取消と
争訟取消の可能性から生じる不安定な期間︵克号母
Z W E R E
−︵
問 ︶
官民 巾︶ を同 時に 閉じ る
﹂ことができるのである︒
こうしたリヴェの提案はヨンセイユ・デタによって採用さ
れ︑職権取消権の行使は︑行政行為の遡及的消滅があり得る
という点で類似の制度である出訴期間内に限定されることと
なった
︒ ﹁ ︹ 職権
︺取消権は︑時間の点で︑訴訟の方法による
︵ 防 ︶
取消しの権限に範をとることになる﹂のである︒ただ︑ォl
リウによれば︑ここには表面的な類似性だけでなく︑出訴期
間に潜む﹁非常に根深い観念﹂が反映している︒
すな わち
︑
行政法関係においては︑﹁決定の執行もまた︑短期間のうち
になされ得るというのでなければならないが︑しかし︑訴訟
的対立が調整される前に︑行政は当然に執行に移れるわけで
はないことから︑行政決定の有効性の問題は早急に解決され
なければならず︑より正確には︑執行的決定の手続によって
生じた訴訟的対立は早急に取り上げられなければならな
︵ 悶 ︶い ﹂
︒つまり︑取消期間の制限の背後には︑紛争の早期調整
︵第
∞∞ 巻第 九号
︶
九