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森 田 恭 光 越 智 英 輔 舟 木 泰 世 熊 谷 政 広 前 野 浩 嗣 鈴 川 一 宏

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(1)

高校生におけるスポーツクラブ活動が 健康状況および免疫能に及ぼす影響

森 田 恭 光 越 智 英 輔 舟 木 泰 世 熊 谷 政 広 前 野 浩 嗣 鈴 川 一 宏

Ⅰ. 目 的

青少年の発育発達の状況や健康づくりの指標と して, 形態計測や体力・運動能力調査が実施され ている。 文部科学省は各調査を

1964

年以降実施 し, 各年齢別に経年的変化を分析し毎年発表して いる。 その結果, 青少年に関しては,

1978

年以 降を境に身長や体重などの形態面に関しては, 向 上しているが体力および運動能力に関しては, 低 下していることを報告している。 これは, 体格的 には向上しているが, 体格に応じた体力の向上が 見られない, すなわち, 日常生活活動においても 体力の予備能力が低下していること示している。

この傾向は文部科学省も危惧し,

2003

年以降, 青少年の体力向上に関する施策を展開し, 体力向 上実践事業や講習会等を実施している

1)

。 この問 題に対して, 中学校や高等学校で実施されている 各運動の部活動は, 青少年における身体活動量を 確保するのみならず, 健康, 体力づくりに関する 教育効果も大きく, 運動部活動の時間の重要性が 指摘されている

2)

。 また, 中学・高校時に運動部 で活動していた者は, 運動部活動を実施していな いものと比較すると基礎体力が高いことも明らか にされている

3)

一方, 青少年の体力低下に関する実態は, 「疲 れやすい」 や 「からだの調子が悪い」, 「風邪をひ きやすい」 など, 防衛体力の低下にあることも報 告されている

4)

。 このように青少年の体力および 運動能力の低下に関しては, 行動体力と同時に防 衛体力も関与している。

近年, 免疫の測定が唾液から容易に採取できる ようになり, 防衛体力の指標として, 唾液中に存 在する分泌型免疫グロブリン

A

(

Secretory im- munoglobulin A :

以下,

SIgA

と略す) の測定 が行われている。

SIgA

は, 上気道粘膜における 病原の不活性化や凝集, 粘膜上皮細胞への接着阻 止等の作用により, 病原菌の感染性を失活させる 働きを有する

5)

。 よって,

SIgA

が低値の者は上 気道感染症における感染リスクが増大し, 風邪の 症状を起こしやすいと思われる。 この唾液中の

SIgA

に関する研究は最近行われ始めたもので, 成人に関しては報告されてきているが, 青少年に 関してはあまり報告されていない。

これまで, 青少年の体力・運動能力に関する調 査研究は, 行動体力面に関しては, 調査項目や測 定項目の確立がなされているが, 健康面から捉え た防衛体力に関する調査項目や生理学的検査項目 に関しての検討はあまりみられない。

そこで本研究は, 青少年における健康体力づく

(2)

りの指標として防衛体力に関する調査項目と生理 学的検査項目の確立を行うことを最終目標とし, 今回は運動を定期的に実施している高校生につい て健康状態に関する質問調査と唾液中の

SIgA

の 測定を実施し運動が身体にいかなる影響を及ぼし ているかその事例について検討した。

Ⅱ. 方 法

1. 調査対象

調査は, 東京都内の

M. H

高等学校に通う健康 な男子生徒

19

名を対象に実施した。 アンケート の回収率および有効回答率は

100%であった。

2. 調査方法

調査は, 自作成のアンケート用紙を用い, 調査 対象者に記入してもらった。 アンケート調査は, 健康状態, 学校内外における生活の様子に関する 項目で構成した。

3. 唾液中SIgA

濃度

対象者は, 唾液採取に際して

100ml

の蒸留水 にて口腔内をすすぎ,

5

分間座位安静を保持さ せ た 。 そ の 後 , 無 味 の 滅 菌 綿 (

SALIVETTE, SARSTEDT

社製) を口に含み

1

/

秒×60 秒間 咀嚼し, 分泌された唾液を滅菌綿に吸収させた。

対象者の唾液を採取後, 滅菌綿を

3000rpm

5

分間遠心分離し試料を採取し, 凍結保存した。

SIgA

の定量は酵素免疫測定法 (

EIA : enzyme immunoassay

) による委託測定 (㈱エスアール エル東京メディカル) を行い評価した。

4. 統計処理

アンケート調査は, 各項目の回答率を算出した。

1

年生と

2

年生の測定値は平均値±標準偏差で表

し , 統 計 学 的 有 意 差 の 検 定 は

SPSS14.0J for Windows

を用い,

2

群間の比較は対応のない

t

検定を行い, 危険率

5%未満を有意とした。

Ⅲ. 結 果

1

に対象者の身体的特徴を示した。

1

年生の 身長は,

170.7±3.1cm,

体重

61.3±7.5kg,

体脂 肪率

13.2%, BMI21.0

であった。

2

年生は, 身長

173.5±3.0cm,

体重

67.2±7.0kg,

体脂肪率

12.3

%,

BMI22.3

であった。

1〜7

に健康状況および生活状況に関する質 問の結果について示した。 「健康感」 については,

1, 2

年生とも

70%が健康である, 30%の者がま

あ健康であると回答し, あまり健康でないとの回 答はなかった (図

1)。 「昨年1

年間に

2

日間以上 継続して休んだ回数」 に関しては,

1

年生は,

0

回が

83%, 1

回が

17%, 2

年生は,

0

回が

57%, 1

回が

43%であった (図2)。 「風邪をひきやすい

方だと思いますか」 については, ひかないが

1

年 生

66%, 2

年生

57%, どちらかというとひきや

すい

1

年生

34%, 2

年生

43%の回答であった

(図

3)。 「普段の生活で疲れやすいと感じる時が

ありますか」 に関しては, 感じることが多い,

1

年生

58%, 2

年生

75%, たまに感じりことがあ

る,

1

年生

42%, 2

年生

25%であった (図4)。

「決まった時間に排便をしますか」 については, するが,

1

年生

67%, 2

年生

71%, たまにでない

日がある,

1

年生

33%, 2

年生

29%であった (図

1

対象者の身体的特徴 年齢

(歳)

身長 (cm)

体重 (kg)

体脂肪率 (%)

BMI

15.8

±

0.5 16.9±0.4

170.7

±

3.1 173.5±3.0

61.3

±

7.5 67.2±7.0

13.2

±

4.3 12.3±5.5

21.0

±

2.6 22.3±1.8

(3)

5)。 「授業中眠気を感じることがありますか」 に

関しては, あるが,

1

年生

75%, 2

年生

71%, な

1

年生

25%, 2

年生

29%であった (図6)。 睡

眠時間は

1

年生

375±30

分,

2

年生

364±20

分で あり,

1, 2

年生の間に有意な差はなかった。

8

SIgA

濃度の比較を示した。

SIgA

濃度

は ,

1

年 生 が

50.4±27.82

年 生 が

51.6

であり, 両者に有意な差は見られなかっ た。 図

9

に風邪の罹患状況による

SIgA

濃度の比 較を示した。 ひかないが

55.6±24.0

ひき やすいが

47.4±23.6

であり, ひきやすい 者がひかない者に比較し低値を示した。

1

普段健康だと思いますか

まあ健康である

健康である

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

2

昨年

1

年間に

2

日間以上継続して休んだ回数

1

な し

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

3

風邪をひきやすい方だと思いますか

どちらかというと

ひきやすい

ひかない

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

4

普段の生活で疲れやすいと感じる時がありますか

たまに感じる

ことがある

感じることが多い

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

5

決まった時間に排便をしますか

たまに出ない日

がある

排便する

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

6

授業中眠気を感じることがありますか

な い

あ る

0 20 40 60 80 100(%)

2年生 1年生

(4)

Ⅳ. 考 察

今回は, 運動を定期的に行っている高校生につ いて, 健康状況および生活状況に関する質問調査 と唾液中の

SIgA

の測定を実施し運動が防衛体力 にいかなる影響を及ぼしているか, 事例をもとに 明らかにすることにした。

文部科学省平成

21

年度体力・運動能力調査に おける年齢別体格測定結果

6)

における,

15

歳,

16

歳の全国平均値は身長

168.6±5.7cm, 169.7±5.4 cm,

体重

59.2±9.0kg, 61.4±9.2kg

であり, 今 回の対象者の身体的特徴は, いずれも全国平均を 上回っていた。 体重に関しては, 体脂肪率が少な く, 除脂肪量が多く, 習慣的な運動により筋肉の 発達が促されたと思われる。

健康感に関しては,

1, 2

年生とも健康な状況で あり, 加えて欠席回数も

2

日間以上継続して休ん

だ回数も少なく, この観点から察するところ, 年 間を通じては大きく健康を害することはないもの と思われる。 一方, 「風邪をひきやすい方だと思 いますか」 の質問に関しては,

1, 2

年生ともに約

40%がひきやすいと答えている。 加えて, 「普段

の生活で疲れやすいと感じる時がありますか」 の 質問に関しては,

1

年生が

58%, 2

年生が

75%感

じることが多いと答えており, 主観的に風邪をひ きやすいと感じているものでは, 普段の生活の疲 労状況とあわせて防衛体力が風邪をひかない者と 比較し低下している可能性が考えられる。

生活状況に関しては, 図には示さなかったが

1, 2

年生ともに毎朝, 朝食を摂取していた。 排便に 関しては,

1, 2

年生とも便秘がちな者はなく, ほ ぼ決まった時間に排便をすませる状況であった。

日々朝食を摂取することは健康的な生活を行うた めに重要であり, 朝食を摂取しない場合, 不定愁 訴の発現や体力水準に悪影響を及ぼすことが指摘 図

7

睡眠時間の平均

(分) 500 450 400 350 300 250 200 150 100 50 0

睡眠時間

1年生 2年生

8 SIgA

濃度の比較

()

80 70 60 50 40 30 20 10 0

SIgA濃度

1年生 2年生

9

風邪の罹患状況による比較

()

80 70 60 50 40 30 20 10 0

ひかない ひきやすい

SIgA濃度

(5)

されている

7)

。 今回の対象者は, 朝練習が実施さ れていることもあり, 朝早く起床し, 朝食を摂取 し起床後の時間的余裕を確保しているため, 内臓 の活動も低下することなく便意の状況も良好な状 態であり, 朝のからだのコンディションは良好な 状態が保持されていたと思われる。

松永ら

8)

は, 高校生の運動実施者における生活 調査において睡眠時間は,

411±53.5

分, 非運動 実施者は,

380.9±72.5

分としている。 今回の調 査においては,

1

年生が

375±30

分,

2

年生が

364±20

分であり,

1, 2

年生とも睡眠時間が少な い傾向にあった。 一方, 授業中眠気を感じる傾向 にあることは, 睡眠時間が少ない傾向にあること と, 朝早く起き朝練習に参加することにより授業 中に眠気が出現するものと思われる。 このことは, 授業中の集中力を低下させ, 学習意欲や理解不足 を生じる可能性があり, 睡眠時間を改善していく 必要があると思われる。

今回, 唾液中ストレスマーカーとして, 粘膜免 疫における主要なエフェクター因子として分泌型 免疫グロブリン

A

(

SIgA

) の測定を行った。 坂 本ら

9)

は, 過度なストレスが感染症に対する生体 の防御機能である粘膜免疫を低下させることを指 摘している。 河野

10)

は, 運動実施者において上気 道感染症は罹患頻度が高い疾患であり, コンディ ションを整えるためには上気道感染症の対応が必 要であるとしている。 このような観点から, スト レスは感染症の重要なリスクファクターとして考 えられている。

1

年生,

2

年生の

SIgA

濃度について図

8

に示し た。 両者の間に有意差は認められなかった。 今回 の対象者と同年代の高校生約

200

名を対象にした 調査において

SIgA

濃度は,

53.6±22.3

65.0±34.3

であったとの報告がなされてい

る。 今回の対象者は,

1, 2

年生とも下限値であっ

た。 また, 風邪の罹患状況による比較においては, ひきやすい者は, 下限値よりも低く上気道感染症 の初期防衛に関する防衛体力が低下していると思 われる。

SIgA

の分泌濃度は慢性ストレス条件下 で低下することが報告されている

11)

。 運動ストレ スの影響に関しては,

10

日間の高強度トレーニ ングにより分泌濃度が低下し, この影響はトレー ニング終了後もしばらくは継続することが明らか にされている

12)

。 今回の対象者は, 朝練習および 放課後の主練習をほぼ毎日実施する状況にあり, 普段の練習とトレーニングが慢性ストレス反応の 亢進につながっていたことも考えられる。 加えて, 普段の生活においても疲れを感じることが多い状 況下にあり, 疲労の蓄積も影響していると思われ る。 これらの事から, 朝練習および放課後の主練 習に関しては, 運動強度の設定や運動時間, 頻度 について再検討し, 慢性疲労やオーバートレーニ ングによる防衛体力の低下を予防しうる運動処方 を作成し, 現場においては, 健康状況や生活状況 調査と照らし合わせながら実践することが望まれ る。

以上のことから, 今回の事例により高校生運動 実施者に関しては, 今回の健康調査や生活調査と あわせて免疫機能測定を実施することにより, 慢 性ストレス反応の低減に寄与し, コンディショニ ングの維持改善に有効であることが示唆された。

Ⅴ. ま と め

本研究は, 青少年における健康体力づくりの指

標として防衛体力に関する調査項目と生理学的検

査項目の確立を行うことを最終目標とし, 今回は

運動を定期的に実施している高校生について健康

状態に関する質問調査と唾液中

SIgA

の測定を実

施し運動が身体にいかなる影響を及ぼしているか

(6)

事例について検討し, 以下の結果を得た。

「健康感」 は,

1, 2

年生とも健康である, まあ 健康であると回答し, 「昨年

1

年間に

2

日間以上 継続して休んだ回数」 は,

0

回〜1 回程度であり, 大きく健康を害する者は見られなかった。 「風邪」

に関しては, ひきやすい者が

3〜4

割存在してい た。 「普段の生活における疲労感」 は, 感じるこ とが多い状況にあった。 「排便」 に関しては, 便 秘がちな者はいなかった。 「授業中の眠気」 は,

7

割の者があると回答した。 睡眠時間は

1

年生

375

±30 分,

2

年生

364±20

分であった。

SIgA

濃度は,

1

年生が

50.4±27.82

年 生が

51.6

であり, 両者に有意な差は見ら れなかった。 風邪の罹患状況による

SIgA

濃度の 比較はひきやすい者がひかない者に比較し低値を 示した。

以上の結果から健康的に規則的な生活を送り, 形態的に恵まれていても, 風邪に対する防衛体力 の低下も伺えた。 あわせて, 免疫機能の低下も見 られた。 このことから, 定期的な運動時における 練習により慢性疲労蓄積やオーバートレーニング による防衛体力の低下がありうることが明らかに なった。

今後は, 健康状況や生活状況に関する調査を継 続すると同時に, 唾液中の

SIgA

の免疫機能にお ける測定を実施し, 生徒一人一人が生活状況や運 動処方を見直し, 上気道感染予防の観点からコン ディショニング維持向上をはかれることが期待さ れる。

謝 辞

本調査を実施するにあたり, 調査にご協力いただい た学校法人明治学院東村山高等学校野球部のみなさま にご理解とご了承賜り感謝申し上げます。

本研究は,

2010

年度教養教育センター付属研究所 研究プロジェクト研究費を使用し実施した。

1) 日比野幹生:「子どもの体力向上に向けた国の

取り組み」, 子どもと発育発達 ,

2(5), 2004, 308314

.

2) 小澤冶夫 (野井真吾編):「学校全体で取り組む

からだづくりのポイント」, 学校で実践 こども のからだ・心づくり (子どもの力の育成) , 第

3

巻, 教育開発研究所, 東京,

2007, 2126.

3) 中野武彦:「本学の女子学生におけるクラブ活

動と体力・体格に関する研究」, 九州大学医療技 術短期大学部紀要 ,

1991, 18, 4146.

4) 野井真吾:「今, 子どもの体力について再考す

る (体力低下) の

“実感”

“実態”

を求め て」, 学校で実践 こどものからだ・心づくり (子どもの力の育成) , 第

3

巻, 教育開発研究所, 東京,

2007, 1215.

5) 韓

延柏:「唾液中分泌型免疫グロブリン

A

(SIgA) のモニタリングの意義」, 広島大学大学 院教育学研究科紀要 , 第二部,

2004, 53, 353 358.

6) 文部科学省:「平成21

年度体力・運動能力調査」,

年齢別体格測定の結果 ,

http://www.e-stst.go.

jp/SG1/estst/List.do?/id=00000107372. 2010.

7

) 西嶋尚彦:「特集 子どものからだと栄養」, 毎日の朝食摂取と健康, 体型, 体力 , 発育発達,

1(4), 2003, 232235.

8) 松永俊哉, 鈴川一宏, 甲斐裕子ほか:「青年期

における運動部・スポーツクラブ活動がストレス およびメンタルヘルスに及ぼす影響 高校生を 対象とした

15

か月間の縦断研究 」, 体力研 究 ,

No.108, 2010, 17.

9) 坂本譲, 植木章三, 吉田宏美ほか:「介護実習

における唾液中分泌

IgA

レベルおよび気分, 不 安感情の変動 実習に初めて参加する大学生を 対象として 」,

Journal of health & social services 2, 2003, 1322.

10) 河野一郎:「運動と免疫」,

体力科学 ,

41,

1992, 139146.

11) 永井正則, 大野洋美, 齊藤順子, 和田万紀:

「ストレスと分泌型免疫グロブリン

A」,

自律神 経 ,

41, 2004, 347349.

12) 秋本崇之, 赤間高雄, 香田泰子, 天野和彦ほか:

「高強度トレーニングによる安静時唾液中分泌型

IgA

の変動」, 体力科学 ,

47, 1998, 245251.

参考文献

参照

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