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労災補償法の課題

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労災補償法の課題

1労災補償法制における労基法の意義を中心としてー

柳 沢   旭

    ︵法律学︶

一 労災補償制度の問題状況と課題

H 人身損害と労働災害

 ﹁生命︑身体︑健康﹂は人が人であることの根幹をなし︑これに精神︑言動の﹁自由﹂と﹁財産権﹂が保障されることによって人権の骨格は形成され具体的な実定法上の権利として刻印される︒日本国憲法の基本的原則の一つは基本的人権の尊重にあり︑現代社会の基本原則である︒現代社会における人権侵害の態様とりわけ生命・身体の殿損は︑人の寿命による自然死を別とすればさまざまである︒例えば二万五千人︑一万人︑二千五百人︑一千人という死亡の数はここ数年の毎年の平均数値であり︑これを原因別にみると自殺者数︑交通事故︑労働災害︑殺人による死亡者数である︒事故による死亡者数からみるかぎり労働災害は交通事故と比べ少ないが︑市民生活における事故死と労働生活︑労働過程における死亡とでは︑その性格を異にするといわなければならない︒さらに死傷数からすると人の生

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      二      ユ 田 命・身体の殿損の最大のものは労働災害であることも事実である︒労働災害は一瞬にて四百五十八人の死者と数多く        のCO中毒患者を出すという災害型のものから︑多種多様の原因による職業病や過労死の増大にみるようにその性格

  は社会経済構造の変化に伴い変わってきているが︑労働災害としての本質には何ら変化はない︒人が生活の営為とし

  て他者との関係において取り結ぶ労働関係を基盤として構造的に発生するところに労働災害の本質がある︒この点を

  見失うと労働災害は他の死傷病と全く変わらないものとなり︑労働者の災害ではなく人︑市民一般の災害に融合・解

  消されることになる︒人の生命・身体を殿損する事故であり人権侵害の最たるものであっても︑その責任追及︑救済

  の法関係︑法理論は市民と労働者とでは異なることを前提に労働災害の法理論・労災補償法理論の展開がみられたこ      ヨ   とは各国にほぼ共通する︒市民に可能な責任追及が労働者なるが故に阻害され︑やがて市民並みの救済から特別法に旭 よる救済法理へと展開する・今日では労災補償法制の確立を前提に・あらためて人身損害賠償法の中に労災補償をど

       ユ  のように位置づけるかが問われはじめた︒このような動向は労災補償を人︑市民一般の法理へと融合解消するもので沢はないでないであろう・労災補償法制の確立を前提としな呈で・より実効性のある救済制度と鐘を現代法体系の

  中で再検討するという課題を担うものとみることができよう︒

口 わが国における労災補償の特質

 わが国の労災補償制度は明治末期一九二 ︵明四四︶年に制定された工場法における災害扶助規定をもって制度の

基礎が固まり︑扶助の拡大と扶助義務を責任保険化するものとして一九三一︵昭六︶年に︑労働者災害扶助法と労働

者災害扶助責任法とが制定される︒その後︑戦時労働政策の展開の中で若干の修正を伴ったが︑戦後における各種法

制の再編成のなかで一九四七︵昭二二︶年に労働基準法と労働者災害補償保険法へと基本的に引き継がれた︒このよ

うにわが国の労災補償制度は工場法から今日の労働基準法に至るまで︑私法上の損害賠償についての特別法としてで

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         はなく︑労働保護法として成立・展開をみたのである︒労働基準法︵以下︑労基法と略︒︶は工場法等の災害扶助規

  定の内容を拡充しつつ︑労働条件の最低基準として第八章の﹁災害補償﹂に統合した︒労基法の制定と同時に制定さ

  れた労働者災害補償保険法︵以下︑労災保険法と略︒︶は︑戦前の業務災害に関する保険制度を統一したものであり︑

  使用者の災害補償責任を確実︑迅速に履行させるための責任保険としての性格を担って制定されたものである︒

   戦後のわが労災補償制度は︑労基法上の災害補償︵第八章︶と労災保険法との二本建として出発し︑その内容は使

  用者の故意・過失の有無を問わない無過失責任︑労働者に生じた傷病を労働能力の喪失として定型化してとらえる定

  率補償︑補償給付の迅速・確実な履行のための国の管掌する保険制度として性格づけることができる︒労災補償制度

  とは労基法と労災保険法による立法上の災害補償をいうが︑わが国では労災補償と民事賠償とは相互に他を排斥する曝関係にはなく労災補償とは別個に墾.賠償責任を追及し得る︒さらに労使自治に基づく法定外補償協定による給付

縦があり法定給付以上の上積み給付を支給する企業内制度も存在する︒以上のことからわが国の労働災害についての

舗補償制度は︑狭義には労基法と労災保険法による法定の災害補償と広義には法定補償と併せて︑労災民事賠償制度に労 よる損害賠償︑企業内上積み補償制とが存在し・被災労働者とその家族の生活を保障するしくみとなっている︒労災

  補償に関する現行法制は狭義と広義に大きく分けることができるが︑それぞれ相互に関連するところがあり決して無

  関係ではない︒具体的立法や労使協定において相互の関係が規定されたり︑補償給付や損害賠償をめぐる具体的紛争

  において相互の関連が理論的にも問題となるからである︒とりわけ︑労基法と労災保険法との関係︑労災補償給付と

  損害賠償との関係は以下にみるように︑あらためて立法論的課題としても理論的検討を避けて通れないものがある︒

日 労基法と労災保険法

  17

@ 労基法は制定当初から今日に至るまで数多くの改正を経てその内容は当初とは異なったものとなっているが︑こと

      三

(4)

      四

71

@ 災害補償規定の第八章に関するかぎりその内容に変化はない︒一方︑労災保険法は一九六〇︵昭和三五︶年以降︑一

1

         人歩きといわれるようにその内容は大きく変化し今日に至っている︒労基法︑労災保険法の制定当初は︑両方の補償

  給付の種類︑給付内容等は同一であり︑労災保険法は労基法上の個別使用者の補償責任を迅速・確実に担保する責任

  保険的性格を有していた︒やがて労災保険法は補償給付に年金制度を導入することにより一時金給付から長期補償の

  給付体系への制度改革が行われその後全面適用へ向けての適用対象の拡大とくに労働者でない者︵一人親方︑中小事

  業主︶に対する特別加入制度︑通勤途上災害に対する給付制度の導入やリハビリテーションなどの障害保障の改善︑

  労働福祉事業の新設などが行われ︑労基法とは給付体系︑給付内容において大きく乖離するに至った︒今日において

  労災補償制度の中心は労災保険法に移行しており︑労基法上の災害補償規定の機能する場合は限定されたものとなっ旭 ている︒将来・労災保険法の全面適用が実現した段階では労基法の適用の余地はなくなることにもなる︒両法の以上

  のような現状から労基法の災害補償規定は無意味なものとなり︑その規定の削除することが直ちに肯定できるものか沢問題となる・問題の検討に際して・労災補償制度における労基法の意義をふまた労災保険法との関係をどのように

  とらえるべきかがポイントとなる︒また現行労災補償制度の在り方︑問題点の検討は将来のあるべき制度への改革提

  言︑立法的課題と結びつき︑労災補償制度の基本的性格をどのようにとらえるべきかという法的性格論を不可欠なも

  のとする︒労災補償制度における労基法の意義を検討することは︑労災補償の法改正問題の要をなす検討課題という

  ことができる︒問題は労基法と労災保険法との関連にとどまらず︑労災補償と民事賠償との調整問題にも必然的に関

  連せざるを得ず︑民事賠償との調整問題は労災補償の法的性格のとらえ方によって︑現行法の解釈や立法課題の違い

  となってあらわれることとなる︒

   以上みたように労災補償制度は︑労基法︑労災保険法制定以来︑今日まで労災保険法の度重なる改正により︑その

  内容は拡充・発展を伴い大きく変化して今日に至っている︒そしてわが国における労働災害の大型化・重篤化︑高齢

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  労働者の被災状況や関連する他の社会保険制度の改革︑医療の高度化・高額化︑労災民事訴訟事件の推移など︑労災

  をとりまく諸状況も変化しつつある︒労災をめぐる状況の変化に伴い︑労災補償制度の改革について労災保険審議会

  の建議︵一九八五年一二月︶︑労働基準法研究会の中間報告︵一九八八年八月︑以下︑労基法・中間報告と略︒︶にお

  いて具体的提言がなされている︒とりわけ労基研・中間報告の改革提言は現行法制を抜本的に再編する内容を有する         ヱ  ものであった︒それだけに中間報告をめぐって批判的検討が数多く出され︑また被災者・労働団体の広範な反対運動         が展開された︒中間報告の提言に依拠した具体的法改正は見送られることとなり対立する論点を含め継続的検討課題

  となった︒中間報告自体になお検討を要する多くの法的問題があるにもかかわらず︑その改革提言が直ちに法改正と

  して具体化すべき政策提言としての性格を有していたところに問題があったことは否めない︒一方で中間報告は労災曜をとりまく了の諸情況をふまえた九・年代ないし二±世紀に向けてのあるべき労災補償制度についての重要な問

徽題提起とみる︑﹂とができる︒労災補償法の改正問題として避けて通ることのできない大きな問題として︑労災保険法

繍と労基法との関連︑損害賠償や他の社会保険との調整問題がある︒中間報告の制覧直しの八項目にわたる垂一自の中労 でも右の問題について検討がなされている︒

   労災補償をめぐる今日的課題としては労基研中間報告を契機とした現行制度の現状と問題点をふまえた制度見直し

  の立法論的問題のほかに︑いわゆる過労死をめぐる労災認定のあり方︑労災民事裁判の動向にみる責任論︑時効論等

  を挙げることができる︒これらの課題の中で本稿で検討するのは︑労災保険法の改正問題の中でも避けて通ることの

  できないと思われる労災保険法と労基法との関連について問題点をみることにしたい︒前に述べたように︑この問題

  の検討に際しては︑労災補償の意義︑性格論や民事賠償との関連︑調整問題にも言及せざるを得ない︒以下︑労災補

  償制度における労基法上の災害補償規定の意義や果している機能をどのようにとらえるべきか︑この問題との関連で︑

m  一九八〇︵昭五十五︶年に設けられた労災保険法給付と損害賠償との調整規定をどのように評価すべきか︑を中心に

      五

(6)

69 @検討することにしたい︒

1

二 労基法と労災保険法

   労災保険法のたび重なる改正によって労災補償の給付内容は労基法の補償水準を上まわるものとなっており︑労災

  補償制度の中心が労災保険法に移っているのが現実である︒その結果︑労基法上の補償規定が機能する場合はきわめ

  て限定されるものとなり︑将来︑労災保険法の全面適用が実現した段階では労基法適用の余地はほぼ失なわれる事も

  事実である︒このような労災保険法の独自の展開は︑労基法による個別使用責任者の限界を克服するものとして労災旭 補償の法的性格の捉え方如何にかかわらず・評価されるものであった︒このことは同時に・労基法と労災保険給付の

  内容がほぼ同一であった場合に︑労災保険法は労基法上の災害補償義務を前提とした責任保険としての性格・機能を

  有するものとして位置づけられてきた労災補償制度の捉え方に重大な転回をせまるものでもあった︒労基法の補償を

  基礎としつつも︑独自の展開を遂げる労災保険法を中心に労災補償の法的性格が問われる契機ともなった︒労災補償

  の性格論の論議は労基法上の労災補償制度から変化しつつある労災保険法を対象としたものに移行した︒労災補償の

  法的性格について様々な見解が打ち出されるが︑法的性格論についての論議は労災保険法の独自の展開と必然的に結      す   びついて展開されたのであり︑このことを看過すると法的性格論の意義は見失なわれることになる︒

   労災保険法の独自の展開は︑労基法の補償規定の適用の余地をなくすことになり︑また労基法上の規定の存在が労       エ   災保険法による補償内容の充実にとって足かせになるものでもなかった︒したがって労基法の存在意義について︑労

  災保険法との関連において理論的に言及されることはあっても︑それ自体の意義を検討することに関心が向かなかっ

  たことも事実であった︒ところが労基研中間報告が労基法上の災害補償規定の削除を立法的課題として示唆したこと

(7)

  を契機に︑あらためて労基法の災害補償規定の意義・機能について再検討がなされることとなった︒

   労基研中間報告は︑労災補償は労基法によらず労災保険により行うべきであるとして労災保険による一元化を提言

  する︒このことは労基法の補償規定の削除を示唆するものである︒中間報告は︑業務上災害を被った被災労働者に対

  する必要かつ十分な補償は個別使用者の補償責任によって行うことは極めて困難であるとの現状認識をもとに︑労災

  補償を保険システムを用いて事業主の集団によって補償する労災保険法によるべきであるとする︒労基法による個別

  使用者責任による補償には限界があること︑したがって迅速にして必要かつ十分な補償を行うために保険システムを

  とることにより︑その実効性を確保・保証する方向を目指すことは被災者の生活保障にとって望ましい方向である︒

  諸外国における労災補償の発展動向とわが国における労災保険法の独自の展開は︑かかる意味において肯定できると

曜︑三であり︑そのかぎりにおいて中間墾口の現状認識と労災保険法の充実についての提一 ロに異論はない︒問題は労基

徽法の補償規定の削除の可否︑すなわち労基法上の補償規定と労災保険法との関係をどのよ︑つに捉︑えるかにある︒

舗労災補償は労災保険法に一元化するというのが政策サイドの志向であり︑一元化した場△・に両法の関連をどのよ・つ労 に位置づけるかという問題は労災保険法の労基法からのひとり歩きがはじまった一九六〇・六五年頃から既に意識さ

  れていた宙︶そこでは労基法上の補償の意義をどうみるか︑とりわけ補償給付の水準のよりどころを何に求めるのかと

  いう重要な問題も検討すべきこととされていたのである︒かかる問題について具体的な検討がなされることなく︑今

  日︑中間報告を契機にあらためて具体的検討がはじまったというのが実情である︒

   中間報告も認めているように労災保険法は労基法に基礎をおき︑法形式的には労基法は全事業主に適用される個別

  使用者責任の﹁最低基準﹂を画している︒一時金による補償や個別使用者責任の限界を克服するために労災保険法は

  責任保険的性格を脱却し︑補償内容を充実させてきた︒労基法の災害補償規定が制定以来︑今日までほとんど変化し

68 @なかったのは労働条件の最低基準としての性格と個別使用者責任としての限界にあるといえる︒そして労基法の最低

1

       七

(8)

      八

⁝⁝ @基準としての補償規定の存在が︑その後の労災保険法の充実︑発展に対し阻害的要因として機能することはなかった

  こと︑むしろ労災保険法の改正が労基法の水準に達しない場合に︑最低労働条件基準として︑補償水準の低下に対す       ロ   る歯止めとして機能することもあったのである︒両法の関連をみる場合に︑まず以上の実情を認識しておくことが必

  要である︒

   中間報告を契機として労基法の災害補償規定の法的意義があらためて問われることとなったが︑労基法上の補償規

  定に三て︑その存在意義として次の点が指摘されてい竃まず・災害補償における労基法の最低基準性の意義を強

  調し︑それを上回る労使自治による給付内容︵いわゆる上積補償協定︶を獲得する法的根拠として︑その意義づけを

  行うものである︒さらに労災保険法の給付水準が︑そのときどきの財政事情によって切り下げられることが生じた場

  合に最低基準性による歯止めとしての意義と機能を労基法に求めるものである︒このような捉え方は労災補償を安

  全.衛生︵事前の予防︶とともに︑労使間の労働条件として位置づけるものである︒労災補償の法規範的根拠を憲法‖ 上の生存権︑労働権保障︵憲法二五・二七条︶に求め︑労働条件の向上という目的︵労基法一条︶に即して把握する

  ものである︒

   一方︑中間報告は労災補償を労災保険法へ一元化し事業主の集団責任による必要かつ十分な補償システムを展望す

  るものの︑労基法の補償規定︑両法の関連︑総じて労災補償についての法規範的根拠を向に求めるのかということに

  ついて何ら示唆するところがない︒中間報告が労災補償制度の在り方を論じるに際して﹁権利﹂という用語が一つも

  使用されていないことも補償責任の法規範的根拠を不透明なものにしているのである︒中間報告後︑労災保険審議会

  は﹁当面改正の必要のある事項について﹂法改正の建議を行い︵一九八九年一二月︶︑この建議にもとづき法改正が

  行われた︵一九九〇年六月二二日公布︶︒結局︑中間報告の提言における労使の対立点については継続的検討課題と

  して法案化は見送られることとなった︒この法改正において︑現在︑暫定任意適用事業とされている事業のうち︑農

(9)

       き  業事業経営者が労働者を使用した場合に強制適用事業とされることとなった︒このことは労災保険法の全面完全適用

  の途がさらにすすめられたことを意味する︒労災保険法の完全全面適用が実現することは労基法の補償規定の適用の

  余地がますますなくなることになるが︑直ちに労基法の規定を削除することになるわけではない︒この点につき︑労

  基研中間報告を提出した労働基準法研究会は︑中間報告についての批判や問題点の指摘を受けて︑法律的検討のみで

  なく多角的観点からの検討が必要であるとして︑いくつの問題点を指摘しているが︑労基法との関連については﹁ま

  ず全面適用が現実に可能であるか等について十分検討する必要がある﹂こと︑また労基法の補償規定を﹁削除するか      ロ   否かの問題は︑同章の法的意義を含めて別途検討すべき問題である﹂とする︒労使の主張︑対立点を考慮して作成さ      お   れた労災保険基本問題懇談会における公益委員会議の﹁まとめ﹂においても同様の見解が示されているに至った︒以

曜上の︑﹂とから労災保険法の完全全面適用と労基法の災圭︒補償規定の削除とは直ちに連動する問題ではなく︑労基法の

徽補償規定の意義の検討をふまえ別途検討の必要な問題である︑⊆がほぼ共通認識となった︒そ︑﹂であらためて労基法

舗の災害補償規定の意義︑削除することが可能であるのか否か︑削除するとしたらいかなる形でなされるべきかという労 点について・具体的な検討が必要となる︒労基法の災害補償制度としての法的意義をどのように捉えるかによって︑

  労災補償への一元化と労災補償の性格は異なったものとなりうる︒将来︑労災保険法の完全全面適用が実現されると

  しても︑労基法の独自に有している意義︑機能を一元化された労災保険法の中に整合性をもって位置づけ得るのかが

  重要な検討課題となる︒この問題について労基法の災害補償規定の持つ二つの側面から検討を加える︒

(10)

一〇

651  三 労災補償における労基法の意義と機能

H 労働条件基準としての災害補償規定

   労災補償における労基法の有する意義は複合的である︒一つは︑労働者の人たちに値する労働条件基準としての法

  基範的意義と機能である︒もう一つは︑労災補償と民事賠償との調整基準としての意義である︒まず前者の意義につ

  いてみておく︒

   わが国の戦後の労働立法は︑憲法︵二七条︑二八条︶における労働関係に関する基本的権利保障に基づき体系的整旭序ができるものであり労働基準法は賓金・就業時間休息その他の勤労条件に関する華は・法律でこれを定め

  るLとの憲法二七条二項の個別的労働関係についての法規制原則に基づいて制定されたものである︒労基法は労働条ロ 件に関する基本原則として︑労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべき労働条件であること︑労基

  法で定める労働条件基準は最低基準であり労働関係当事者はその向上に務めるべきこと︑労働条件は労働者と使用者

  とが対等な立場において決定すべきことを冒頭に掲げた︒労基法制定以降︑今日に至るまで社会経済構造の変化︑就

  業構造︑労使関係の変容に伴い︑労基法自体︑数多くの改正や単独立法化などを経て制定当初とは大きくその内容が

  変化した︒しかし労基法の有する労働条件規制に関する法原則と理念においては普遍的なものであり変化はない︒労

  災補償に関わる規定︵第八章災害補償︶は制定当初からほとんど変わらず︑労災補償と密接にかかわる安全・衛生規

  定が労基法から分離・独立し﹁労働安全法﹂として単独立法化されている玲︶

   ところで︑労基法の制定過程において労災補償をどのように位置づけ︑また労災保険法との関連をどうみるべきか         などについて立法経緯から必ずしも明らかではない︒戦後の混乱期における労働運動の要求と占領軍の労働立法政策

(11)

  とに規定された立法化の中で︑労基法に災害補償規定を盛り込むこととなったが︑工場法を中心とする戦前の労働保

  護立法を労基法が受け継ぐという沿革的なものによるところが大きい︒わが国における災害補償が一般的な法制化を

  みるのは︑工場法の災害扶助制度においてであるが︑それは労働保護立法として公法的性格を担うものであり︑民法

  の特別法としても︑また独自の労災保険法として立法化されることがなかったのであり︑諸外国と比べた歴史的特徴

  ということができる︒戦後の立法化に際し︑労基法に災害補償規定が盛り込まれ︑労災保険法とは別個の立法として

  立法化されたことは︑わが国の労災補償の歴史的特徴︑労働保護立法としての沿革による︒そして以上のような立法

  経緯と労災補償の二本建という実定法の存在は︑わが国の労災補償を特徴づけるとともに︑今日に至る制度の展開や

  法的性格論に大きな影響を及ぼしつづけているのである︒このような法状況は現在に至っても変化はない︒

曜労災保険法とは別個に労働基準法に墨︑補償規定が設けられ今日に至っていることは︑労災補償の意義.性格をま

厳ず労基法体系の涙として聾なければならない︑Σを意味する︒すなわち︑労災補償は労基法における労働条件に

舗関する基本原則として︑被災労働者が人たるに値する生活を充すべきものであり︑法の定める補償規定は最低基準で労 あり・最低基準の向上について労使の対等決定によるべきであるとの法規範として存在する︒このような規範的性格

  を有する労基法における労災補償は︑個々の使用者に対し労働条件の最低基準として︑行政的手段と刑罰をもってそ

  の履行を確保させるものであり︑労働者にとっては最低労働基準を権利として保障するものである︒労災補償が労働

  条件の最低基準として権利として保障されるということは︑労働災害に対する責任が使用者にあることを宣言し︑最

  低基準を上回る内容を労使りの対等決定を通して確保することに法的根拠を付与し︑最低基準を下回る立法政策に対

  する最終的な歯止めとして重要な役割を果たすことになる︒

   さらに︑労災補償という事後的補償と労働災害の防止という事前の安全・衛生措置とは密接.不可分のものであり︑

掴 労働者の人たるに値する労働条件内容とされていることの意義を重視すべきである︒労基法は労働条件の最低基準保

      二

(12)

      一二

63

@障立法として︑労働災害の予防︵安全衛生︶と被災後の補償︵労災補償︶とをともに労働条件として捉える︒労働災

1

  害に対する安全衛生と労災補償とは密接不可分の労働条件として一体のものとして捉えることによって︑労基法は使

  用者に労災予防と補償との責任を公・私法の両面から課す基本的な法規としての性格を担っている︒

   労基法から分離・独立した労働安全衛生法︑最低賃金法は︑最低労災条件基準法として労基法と一体のものとして

  位置づけられるとともに︵労基法四十二条︑同二十八条︶︑最低基準のより詳察かつ具体的な規制を目的として単独

  立法化したものであり︑労基法から分離・独立することによって労働条件の最低基準保障立法としての性格は変化し

  ていない︒しかし労基法と労災保険法との関係は︑労働安全衛生法や最低賃金法と労基法との関係とは異なったもの

  がある︒労災保険法は労基法と同時に制定されたものであり︑労基法上の災害補償の責任保険立法としての性格を

  担って立法化されたものであり︑労働安全衛生法や最低賃金法のように後に単独立法化されたものではない︒労災保

  険法の労基法からの分離・独立化傾向︑ひとり歩きといわれることの意味は︑制定当初には両法とも補償内容が同一

ロ であったものが︑労災保険法の改正によって補償内容が労基法の最低基準を大きく上回るものとなっていることを指

  しているのである︒労災保険法の補償内容が労基法と同一水準であった時期には︑労基法の最低基準補償を担保する

  責任保険的性格を有していたと捉えても︑このことは労災保険的それ自体に最低基準立法としての性格を付与するも

  のではない︒立法当初から労災保険法は最低基準立法としての性格を持っていたわけではない︒

   労基法の補償内容を上回るかぎりにおいて︑あたかも労基法から分離・独立した単独立法であるかのようにみえる

  が︑労災保険法はそのときどきの社会経済的状況の変化にあわせて︑妥当・合理的とされる補償水準をめざして法改

  正がなされてきたのである︒労災保険の給付水準は︑その当時における妥当な生活保険水準の在り方によって規定さ

  れつつ︑その補償内容の拡充がなされてきたのであり︑労基法の最低労働条件の向上という視点で法改正がなされた

  わけではない︒個別使用者責任の最低基準として労基法の補償規定は変化することなく︑一方で労災保険法は妥当・

(13)

  合理的な補償水準を目指して独自の展開をとげ今日に至っている︒以上のことから労災補償制度における労基法の意

  義は労災保険法の存在とは別個に認められるのである︒これを要するに︑労災補償と安全衛生とを最低労働条件とし

  て一体的にとらえることによって︑労働災害の予防と補償を個別使用者の責任として双方の法規範性を明確にしたう

  えで︑労使自治による最低基準を上回る補償についての法的根拠を与えるとともに︑最低基準以下のあらゆる措置を

  無効とする︒

   労災保険法の完全全面適用が実現し労災補償を一元化する展望に立つとき︑労基法の有する以上の意義︑機能を整

  合的に労災保険法のなかに盛り込むことはきわめて困難に思われる︒最低賃金法や労働安全衛生法との関係における

  ようなドッキング規定を設けることによって問題が直ちに解決されるわけではない︒仮に労基法に労災保険法との曜ド︒キング規定を設けるとすれば︑労災保険法の補償内容は労働条件の最低基準としての性格を有することとなるが︑

徽そのことにより労災保険法の補償内容が亘化され︑︑これまでのような独自の拡充・発展が困難になることも髪ら

舗れ︑その時々の生活補償水準にあわせた妥当三・理的な補償を求めるという方法はかなり限定されることにもなる︒労 最低賃金が当時の社会的賃金水準との関係で設定されることにより最低基準性に変動が生じることは当然あり得る事

  態であって︑そのことが最低基準性という法規範的要請に抵触することにはならない︒また労働安全衛生法は科学技

  術の進展による新たな問題を生じさせるとしても︑より具体的な安全衛生の措置を使用者に課すことにより︑従前と

  は違ったより高度の最低基準を設定する性格を必然的に有し︑この場合も最低基準性という法規範的要請と矛盾する

  ことにはならない︒労災保険法の具体的補償水準の設定について右のように単独立法化された立法と同様の性格を求

  めることはきわめて困難なものとなる︒そうであれば一元化された労災保険法に最低基準性を求めることを断念し︑

  これに新たな法的性格を付与するか︑あるいは労基法の規定を残したうえで︑最低基準を労災保険の改正にあわせて

2      ︵19︶ 16

@向上させるという方向が考えられる︒前者の方向をとるとき労災補償の規範的根拠や責任構造の在り方などに関して︑

       一三

(14)

一四

61

@ 現行労災補償の法的性格とは大きく異なったものとなるであろう︒

1

口 損害補償との調整規定としての労基法の意義

   労基法︑労災保険法による労災補償と民事上の損害補償とは︑その目的・性格・用件・補償と補償との範囲などに

  おいて異なったものがあり法的性格は同一ではない︒労災補償と損害補償とは法的性格を異にすることから両者の調

  整を否定し完全併給を認める見解もあるが判例・学説の多数説は補償と賠償との違いを認めつつも︑両者の調整を認        める︒労災補償の法的性格について生活保障説と損失填補説との捉え方の違いがあるが︑補償と賠償との調整を認め旭 ることにおいて差異はなく調整の法理的根拠を異にする︒損失填補説では重複填補の不合理なことにその理由を求め︑

  生活保障説では賠償がなされることによって生活保障として機能する側面をと・のえ調整を認める︒このような帰結

は︑補償と賠償との間に相互補完ないし機能的重複のあることを認め︑そのかぎりでの調整を合理的であるとみる立

場である︒両者の法的性質が異なるということは︑生活保障や損失填補という目的に向けて現実的に機能が重複し相      き互に補完することまで否定できないとの見解である︒これに対し︑補償と賠償との相互補完関係︑機能的重複を否定

し︑両者の完全併存・併給を認める見解は︑両制度は目的を異にし︑それぞれの目的にしたがって相互に一つの労働      の 災害に対し救済を計るのが現行制度であり︑両者は次元を異にするとみるのである︒

 労災補償と損害賠償との調整が問題となる領域は︑損害賠償額から労災保険給付を控除する際の過失相殺との前後

 ま      ヨ

関係や労働福祉事業による特別支給金の控除の可否など含めて多岐にわたるが︑とくに問題とされ今後の法改正に向

けての争点となっているのは︑労災保険給付の将来支給分と損害賠償との調整の是非についてである︒労災保険給付

の年金化と労災民事訴訟の増大に伴って生じたこの問題について︑最高裁は第三者行為災害の場合と同様に使用者行

(15)

       お   為災害についても損害賠償額から将来給付分を控除すべきでないとし︑判例法理は固まった︒将来支給分を控除すべ

  きでないとする最高裁判決に対し︑この立場をとると被災労働者に﹁二重利得﹂をもたらすことになり︑また使用者      あ   の﹁保険利益﹂を無視するものであるとの批判がなされた︒労災保険行政は使用者行為災害の場合に︑保険給付と損

  害賠償との調整について労災保険の側で調整することを予定していなかったため︑最高裁判決を契機として一九八〇      び   ︵昭和五十五︶年に新たに調整規定が設けられることとなった︵労災保険法附則六十七条︶︒

   新たな調整規定による損害賠償と労災保険給付との調整は︑障害︵補償︶年金と遺族︵補償︶年金にかぎって損害

  賠償責任の履行猶予・免責が行われることとされ︑履行猶予・免責の上限額が労基法上の個別使用者の補償責任に相

  当する範囲を限度とした︒年金給付であっても労基法にはない傷病︵補償︶年金や年金給付となっていない休業︵補噺償︶給付については調整の対象とはならない︒新たな調整制度は労基法の個別使用者の補償責任の限度でのみ労災保

館 険給付分との調整を行うという立法政策をとったものである︒この新たな調整制度は労使の意見対立を反映した妥協

舗的・折衷的な立法政策とみることもでき︑その評価は分れる︒とくに労災保険の将来支給分を含め一括控除すべきと労 の完全調整を主張する立場からは︑将来給付分の控除を労基法の個別使用者責任の範囲にとどめる合理的根拠はない

           と批判する︒そして同様の立場をとる労基研中間報告は完全調整の方法について具体的提言を行っている︒

   しかし新たに設けられた調整規定は現行労災補償制度とりわけ労基法の災害補償規定の存在を前提とするかぎり︑

  その立法政策としての妥当性・合理性は十分認められるものである︒労基法の個別使用者責任の限度で損害賠償と将

  来支給分の年金給付との調整を行うことの意味は次のように捉えることができる︒すなわち︑使用者は労災保険に加

  入し保険料を支払うことによって︑労基法の個別使用者責任︵労働条件の最低基準︶の範囲において賠償責任を免責

  され︑個別使用者責任を越える部分については免責されず賠償責任を負うことになる︒このことは労災保険給付と損

60

@害賠償との調整は年金給付のうち︑被災労働者︑遺族の請求に応じて支給が確実に保障される範囲でのみ行うことを

1

      一五

(16)

      .六 59@意味し︑労災保険給付の既受領分と同様のものと捉えることができる︒この点では既受領分との控除のみを認める最

1

  高裁判決との法理的整合性を持たせていると同時に︑労基法八四条二項の趣旨との整合性をはかっているのである︒

  同規定は使用者の個別補償責任の履行の限度で損害賠償責任を免責するものであり︑その趣旨は個別使用者の直接補

  償による負担と賠償責任とを同時に課することは過重負担となることを考慮した調整規定としての合理性は認めるこ

  とができる︒

   さらに同規定は労基法上の災害補償給付が同一の事由についてその価額の限度で︑損害賠償と相互補完関係にある

  ことを立法上明らかにした規定としての意義をも有する︒労基法八四条二項の規定が存在しなければ損害賠償との調

  整は私法原理に基づいてもできないものである︒労災保険法には同様の規定がないため︑使用者行為災害については旭 労基法八四条二項の類推適用という解釈方法によって調整せざるを得なかったのである@労災保険法に新たに設けら

  れた調整規定は︑労基法八四条二項と同様の論理をもって調整基準としたものである︒

ー  労災保険法に新たに設けられた調整規定は個別使用者の補償責任の範囲で賠償責任との調整を認めるものであるが︑

  使用者の労災保険への加入︑すなわち保険料の支払いのみをもって損害賠償責任を全て免責させるものではない︒使

  用者の負担ということについてみるならば︑﹁直接補償による法定補償全額負担と損害賠償の負担﹂と﹁保険料負担

  と損害賠償責任﹂とでは︑負担の内容も質も異なっている︒使用者の保険料負担を重視し︑保険料負担のみをもって

  全ての賠償責任を免責させる論理は現行労災補償法制を超えるものとなる︒労基研中間報告にいう将来の年金給付と

  損害賠償とを完全調整する論理は︑労災保険加入により使用者の損害賠償責任を完全に免責することまで主張してい

  るわけではない︒しかし完全調整を行うとしたら損害賠償における慰謝料は別としても︑逸失利益はわずかなものと

  してしか認められず︑そのために困難な訴訟を提起するケースは減少することとなろう︒一方︑使用者としては労災

  保険料の負担のみで賠償責任がほぼ免責されることとなると︑労災予防のためのコストは非生産的なものとして抑制

(17)

される事態が生じかねない︒損害賠償負担による使用者の経済的負担は︑わが国労使関係の中で労災抑止機能を少な

からず果しているとみてよい︒労働災害の事前の防止と事後の補償とを労働条件の最低基準として強行的に課するこ

とにより︑労働災害についての規範的責任意識は確立されるのである︒労働災害について過失ある場合の使用者責任

を保険料支払によって免責する立法政策は︑損害賠償の有する労災抑止的機能・効果という側面においても問題とさ

れなければならない︒使用者にとって負担となる損害賠償の減少をはかるには︑労災防止の徹底努力とあわせ労災保

険法の給付内容の充実させることに求めるべきである︒

    主

題   .︑︐

鈎︵−︶以眺霧騨聾㍍己蠕魂畦舞新竃蠣鷹者竃藷鰭擁顯を鷲㌶弐︶ 撒籠講婬賢て類認賠甦穏霧︑ 璃誘透錫鵠竃㌶ヒ↑竃顯麟堵

     ﹃平成元年版労働白書﹄九六−九七頁︶︒

  ︵2︶ 一九六三︵昭和三八︶年十一月︑三井三池三川鉱の炭じん爆発は戦後最大の犠牲者を出した︒その後の炭鉱災害による死亡    事故として多数の死亡事故は︑三井三池有明鉱八三人︵一九八四年一月︶︑三菱高島鉱十六人︵一九八五年四月︶︑三菱南大夕    張鉱六二人︵一九八五年五月︶と相ついでいる︒

  ︵3︶ 労災補償制度の歴史的展開と法理についての体系書として︑荒木誠之﹃労災補償法の研究﹄︑窪田還暦記念論文集﹃労働災害    補償法論﹄参照︒

  ︵4︶ 森島昭夫﹁人身損害補償システムの基礎理論﹂ジュリスト六九一号六頁以下︑加藤雅信﹁総合救済システムの提言﹂私法五     一号七頁以下︑加藤雅信編﹃損害賠償から社会保障へ一︑保原喜志夫﹁労災補償責任の法的性格﹂現代労働法講座︵≡︶二五九

    頁参照︒  ︵5︶ 荒木・前掲書四七頁以下参照︒

58 @ ︵6︶ 前掲・窪田還暦記念﹁労働者災害補償法論﹂一二七頁以下︵吉田美喜夫︶︑坂本重雄﹁労災補償法制の軌跡と構造変化﹂静

1

      一七

(18)

一八

57 @   大・経済研究三八巻一‖二号五頁以下︑労働省労働基準局労災管理課編著﹃再訂新版・労働者災害補償保険法﹄三二頁以下に

1

    戦後の労災保険法の変化の詳細が述べられている︒

   ︵7︶ 労働基準法研究会・中間報告の内容については︑労働者労働基準局編﹃今後の労災補償法制のあり方﹄︑その概要・提言につ

     いて労働法律句報一二〇一号︑季刊労働法一四九号参照︒中間報告に対する批判的検討については出された直後から数多くの    論稿があるが︑総括的批判と提言として︑労災補償制度研究会編﹃労災があぶないーわたしたちの提言﹄がある︒

   ︵8︶ 中間報告に対する反対運動の展開について︑﹁中間報告関係・運動年表﹂月刊いのちと健康八‖九号四四頁以下に詳しい︒中    間報告後の法改正の経緯について︑桑原昌宏﹁労災保険法の改正動向﹂労働法学研究会報一七七一号二頁以下︑古川景一﹁労

    災補償制度改善の検討項目﹂月刊いのちと健康一号二頁以下︑同﹁労働基準法研究会の﹃中間報告﹄路線は死んだのか﹂月刊     いのちと健康八H九号二頁以下参照︒

   ︵9︶ 労災補償法の法的性格論についての問題の所在についての最近の論稿として︑窪田隼人﹁労災補償責任の法的性質﹂ジュリ

     スト・労働法の争点︵新版︶二五四頁以下参照︒

旭  ︵10︶ 労働基準法の最低補償が労災保険給付のモデルとされ︑その範囲が業務災害に対する使用者責任の限度を意味するようにと    られ︑労災保険の給付内容や保険料負担の考え方を呪縛し︑制度改善にとって足かせともなる要因であった︑とみるのは労働

    行政当局の見解であるが︑両法の関連についての捉え方に問題があるといわなければならない︒労働省労働基準局労災管理課

沢   編著﹃新版労災保険法﹄二一−二二頁︒

柳範鑛鷺鑓羅﹄割鵠灯 ハ五︵昭和四︒︶年改正に三募萎所定の補償額に芒つることになったため二

    〇〇〇日分から四〇〇日へと改正︶︑その差額を請求した訴訟について︑最高裁は︵戸塚管工事件・最一小判昭四九・三・二八

    判時七四一号一一〇頁︶︑労基法八四条一項︵﹁この法律の災害補償に相当する給付が行なわれるべきものである場合﹂災害補

    償を免責する︶により︑使用者は労基法の災害補償の全部を免れると判示した︒しかし一九七〇︵昭四五︶年の法改正によっ    て判決が出される以前に︑労災保険法の遺族補償一時金の額は再び労基法と同様の一〇〇〇日分に改正された︒この事件をど    うみるか︑また法改正の論理はいかなるものであるのかについて法解釈と立法政策との整合性の検討は不可欠である︒

   ︵13︶ 労災補償制度問題研究会編・前掲書一=二ー四頁︵桑原昌宏︶︒

   ︵14︶﹁労政時報﹂二九八五号六六頁︒

   ︵15︶﹁労災保険基本問題懇談会公益委員会議の要請に関する労働基準法研究会︵災害補償関係︶の見解﹂︵平成元年八月二三日座長

    花見忠︶︒

   ︵16︶﹁労災補償制度改善の検討項目及び問題点・検討の視点﹂︵平成元年九月七日︶︒

(19)

   ︵17︶ 労基法第五章﹁安全及び衛生﹂は﹁労働安全衛生法﹂︵昭和四十七年法律第五十七号︶の定めるところによるとする︑いわゆ    るドッキング規定を設け︑﹁労働安全衛生法﹂は︑﹁労働基準法と相まって︑労働災害の防止のための危険防止基準の確立・責    任体制の明確化及び自主的活動の促進の措置を講ずる等その防止に関する総合的計画的な対策を推進することにより職場にお

    ける労働者の安全と健康を確保するとともに︑快適な作業環境の形成を促進することを目的とする﹂︵第一条︶︒安全衛生立法    の問題点について︑林弘子﹁労働災害の防止﹂前掲・労働法の争点二五〇頁以下参照︒

   ︵18︶ 桑原・前掲書七七頁以下参照︒

   ︵19︶ 労災補償制度問題研究会編・前掲書二五〇頁以下﹁わたしたちの提言﹂︒  ︵20︶ 民事賠償との調整について︑良永彌太郎﹁労災保険給付と損害賠償の調整﹂前掲・労働法の争点二五八頁以下参照︒

  ︵21︶ 荒木・前掲書一八四頁以下参照︒  ︵22︶ 労基研中間報告に対する批判として最近にあらためてこの見解が表明されている︒労災補償制度研究会編・前掲書二一二〇頁

    以下︵松本克美︶︒題  ︵23︶ 西村健一郎﹃労災補償と損害賠償﹄二七八頁以下︑判例は分かれていたが︑最高裁は控除前相殺説をとる︵高田建設従業員曜 事件L最三小判平成元年四月=日・労働判例五四六号ニハ頁判例時報二一二二号九七頁・

法  ︵24︶ 西村・前掲書二七四頁以下︑学説・下級審判例とも分かれているが︑最近の判例として︑日鉄鉱業・松尾じん肺事件︵東京撒 地判平二三三七判例タイムズ七二一亘六八頁︶において︑特別支給金は本来的保険給付率を引き上げたと同様の機能を

災   果し︑財源も事業主負担であり︑被災労働者に二重の填補をもたらすことを理由に控除を認める︒労  ︵25︶ 三共自動車︵第一︶事件・最三小判昭和五二・一〇・二五民集三一巻六号八三六頁︒

  ︵26︶ 西村・前掲書二四ニー三頁︒

  ︵27︶ 新設規定の意義と問題点について︑良永﹁労災保険給付と損害賠償との調整﹂日本労働協会雑誌三四一号一二頁以下参照︒

  ︵28︶ 西村・前掲書二六八頁︒

  ︵29︶ 前掲・三共自動車︵第一︶事件判決は︑労災保険給付は損害の填補としての性質をもつことから︑損害賠償との調整を認め    ているが︑法的根拠として︑労災保険給付については労基法八四条二項の﹁類推適用﹂に求め︑厚生年金給付については﹁衡

    平の理念﹂に求めている︒

一九

参照

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