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─遺伝子組み換え食品と国際的な基準作り─

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 司会 みなさん、こんにちは。「世界市民社会 の可能性」の第3回です。今日はゲストに真下俊 樹さんをお迎えして、「地球環境問題と世界市民」

という講義を聞きます。真下さんは市民エネル ギー研究所、日本消費者連盟でお仕事をなさって いて、その中でも特にGM国際ウォッチという 遺伝子組み換え作物・食品に関する研究会で活動 しておられます。

 真下さんのお話を聞く前に、ちょっと前回の フォローをしておきたいんですけれども。前回は 目加田説子さんに「世界市民社会の最前線」とい うお話を伺いました。NGO、NPOとはどんなも のか、最近なぜ世界的にNGOの活動が注目され るようになっているのか、実際にNGOはどんな ことをしているのかという、クラスター爆弾禁止 の活動をしているNGOを例にとってお話を聞き ましたね。

 その中で、NGOはサービスの提供だけではな くて、政策提言をするところに意義があるという お話しがありました。これは大事な点です。単に 例えば貧しい人々を援助する、医療が足りないと ころに行って援助をするという、そういうサービ スを提供するだけではなくて、そもそもそういう 世界のあり方を変えるために政策提言をして、そ の政策提言の力が最近認められるようになってき たということですね。

 今日も恐らくそういうお話をいろいろ、また別

のNGOの活動を通してお聞きすることができる のではないかと思っています。私もとても楽しみ にしています。しっかり聞いて、しっかり考えて、

後でぜひいろいろ質問をしたり意見を言ったりし て、一緒に話しながらさらに考えてもらいたいと 思います。真下さん、よろしくお願いします。

 真下 こんにちは。真下と申します。今ご紹介 ありましたけれども、みなさんの年のころから NGOをずっとやってきました。ですので、そう ですね、もう30年ぐらいやっています。今も寺田 先生とお話ししていたんですけれども、むしろ大 学よりもNGOで学んだことのほうが多いんで す、語学にしても政治経済にしても。やっぱり現 実の中で世界が動いてますよね。いろんな問題が ある、その生の現実の中に飛び込んでいって、そ れをどうやって解決していったらいいだろうかと 考える。現実の中で考える訓練という点では NGOで学んだことのほうがはるかに多かったと 思います。

 ただ、そういうことばかりやっていると、今度 は自分が何をやっているのかわからなくなってき ます。そのときにはやはり理論的なアプローチと いうのも必要です。自分がやっていることを鳥瞰 して、つまり高いところから見渡して、自分がど ういう位置にいるのか、どっちの方向に向かって いるのかということを理論的に、体系的に見てい くことも必要です。ですので、みなさんも大学で 研究所提供科目報告

地球環境問題と世界市民

─遺伝子組み換え食品と国際的な基準作り─

真 下 俊 樹

(GM国際ウォッチ)

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授業を受けるのと同時に、生の現実の中に入って いってぜひ活動していただきたいと思います。み なさんのような優秀な方々はNGOへ行けば引く 手あまたですので、自分の関心のある領域の NGOを見つけていただくといいんじゃないかと 思います。

 今日は、先ほどお話がありましたように、GM、 遺伝子組み換え生物あるいは食品、これを通じ て、現在NGOがどういう活動をしているのかと いうことを、今やっていることをみなさんに理解 していただくことによって、その一端を知ってい ただければと思います。

 GM(Genetically Modified)というのは遺伝子 的に改変されたという意味です。みなさんの中で GM、つまり遺伝子組み換え食品大好きという人 は手を挙げてください。──あんまりいないです かね。では、私は遺伝子組み換え食品を毎日食べ てると思う人。──これも、あまりいないですよ ね。だいたいスーパーへ行くと、例えばお豆腐な んかを見ますと「遺伝子組み換えでない」と書い てあります。それから、遺伝子組み換えを使って るということを明言している食品はあまりないと 思います。

 ところが、日本人は今、恐らく先進国の中では 世界一遺伝子組み換え食品を食べている国民なん です。なぜかというと、一番大きな理由は、食料 自給率が非常に低いからです。今は熱量換算で 40%ぐらいしかありませんけども、残りの6割を 外国から輸入しています。輸入元はどこかという と、アメリカ、カナダ、オーストラリア、アルゼ ンチンといった食料輸出大国です。そういった 国々でいま基本的な作物、主食になるような、大 量に使われるような農作物が急速に遺伝子組み換 えに移行しつつあります。

 ちょっとだけ最初にざっと見ていきますと、こ れは国別の作付面積ですけれども、こういうぐあ いに右肩上がりにずっと増え続けています。多い

のは、いま申し上げたようにアメリカ、アルゼン チン、ブラジルとかカナダです。それからインド、

中国なんかも増えています。途上国がいま遺伝子 組み換え作物を開発している大企業の標的になり つつあります。食料援助の形で、です。例えばア フリカの飢饉のときに、アメリカの遺伝子組み換 えトウモロコシが配給されたこともあります。

 それから、これは種類別ですけれども、いま市 場で出回っているのはこの4種類です。遺伝子組 み換え菜種、それから綿。綿はコットンですから、

こういう服の綿もありますけれども、もう一つは 油用ですね、綿実油。それからトウモロコシ、大 豆です。今はこれしかありません。この4種類だ けです。その性質ですけども、殺虫性と除草剤耐 性、この2種類しかありません。

 殺虫性というのは、自分で殺虫剤を分泌すると いう性質です。Bt毒素といいますけども、それ を害虫が食べると死んでしまう。だから農薬をか けなくてもいい。作物自体が農薬になる毒素をつ くるということです。ただ、害虫だけが死ねばい いんですけども、それ以外の虫、生物も同じよう にそれを食べて死んでしまう。あるいは食べた虫 は死なないんだけど、またそれを食べた虫が死ん でしまうとか。あるいは死んだ虫が天敵であっ て、その天敵がいなくなったために別の害虫が大 発生するとか、そういったさまざまな生態系のひ ずみを生むという点では環境に非常に大きな影響 を与えます。

 それから、その殺虫剤を分泌するBt毒素は人 間の体内で分解されると言われていますけれど も、果たしてそれが本当に害がないのかというこ ともまだわかっていません。しかも量が非常に多 い。農薬で普通にまく毒素の量よりもはるかに多 いBt毒素が作物の中でつくられます。それを人 間が食べるわけです。その辺もちょっと心配な部 分です。

 もう一つは除草剤耐性です。これは除草剤を大

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量にまいても全然枯れないという性質です。農業 をやっている人、みなさんはあまりやったことな いかもしれませんけど、一番大変なのは草取りで す。草がいっぱい生えると、そっちに養分がとら れて肝心な作物がとれなくなるということが多く あります。その手間がかかる除草を、除草剤をま いてできるようになる。除草剤をまいて肝心の作 物も枯れてしまうと困りますから、それだけは枯 れない、そういう性質を持たせています。

 ただ、この除草剤耐性で問題なのは、まけば草 が枯れて非常に手軽なものですから大量にまく。

そうすると、その除草剤の中に入っているいろん な有害物質、グリホサートというのが特にいま問 題になっていますけれども、これが胎児に影響を 与えるという問題が出てきています。それから新 たに、その除草剤に耐性を持ったようなスーパー 雑草というものが大量に生えて、いくら除草剤を かけても枯れないというような問題もいま起きて ます。

 今はこの二種類だけです。遺伝子組み換えで世 界の食料危機を救うとよく言われるんですけど も、ここにありますように、増産、食料の生産量 を上げることを目的とした遺伝子組み換えという のはありません。今も開発はされていません。農 業生産者の手間を省く、生産コストを減らすとい うのがいま出ている遺伝子組み換え食品の性質で す。ですので、食料増産とはほとんど関係があり ません。これは実際の遺伝子組み換え大豆の収穫 量を示したグラフですけれども、年によってはこ ういうふうに逆に減ってしまうこともあるんで す。要するに、増産というのは全然目的ではあり ません。

 それから、先ほど日本でたくさん食べられてい ると言いましたけれども、それを示したのがこの 表です。例えばトウモロコシはほとんどアメリカ から来ていますけれども、アメリカの4分の3、

73%が遺伝子組み換えです。日本に入ってくるト

ウモロコシの94%がアメリカ産です。自給はゼロ です。これを掛け合わせると大体69%と、7割方 は遺伝子組み換えです。

 トウモロコシをそのまま食べるということはあ まりないと思いますけども、例えば発泡酒なんか がありますよね、あれはコーンスターチでつくっ ています。つまりトウモロコシからとったでん粉 です。それを発酵させてアルコールをつくる。そ のもとになっているでん粉のトウモロコシが遺伝 子組み換えであるというような形で、表示のない まま、表示義務がないところへ集中して入ってい くわけです。トウモロコシをそのまま食品にしま すと、これは表示義務があります。5%を超えて 遺伝子組み換え作物が入っていると「遺伝子組み 換えを使っている」ということを表示しないとい けなくなります。そういう表示義務のないところ へどんどん入っていく。というわけで7割が遺伝 子組み換えです。

 大豆も同じように見ますと、大体3分の2が遺 伝子組み換えです。お豆腐なんかは表示義務があ りますから、遺伝子組み換えでない、混入率が 5%未満のものを使いますけども、おしょうゆと か大豆油とか、それ以外のものに全部、この3分 の2の遺伝子組み換え大豆が回ってしまってい る。

 菜種も同じです。菜種は全部油ですけども、日 本では食用油は遺伝子組み換えの表示義務があり ません。ですので、知らないでみんな食べている ということです。綿実もそうです。要するに、知 らないうちに表示義務のないところへどんどん 入っていって、みなさんは毎日のように大量の遺 伝子組み換え食品を食べているというのが現状で す。

 その安全性がどうなのかということは今のとこ ろわかりません。一応リスク評価をやっています けども、ただ長期的な影響、それから何世代にも わたる動物実験というのはやっていません。いろ

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いろそういった実験を数少ない学者がやっている わけですけども、やってみると、いろいろ問題が あるんじゃないかということが指摘されていま す。

 ただ、いま市場化されている遺伝子組み換え食 品というのはほとんどが、モンサント社という、

もともとアメリカの農薬会社だった会社が開発し た遺伝子組み換え作物です。買うときには必ず売 買契約にサインしないと買えない。その契約書の 中に「この遺伝子組み換え種子は実験用に使って はいけない、研究用に使ってはいけない」という ことが明記されています。

 つまり、その安全性を第三者がチェックしよう としても、できないんです。ですので、世界じゅ うの学者がその条項に触れないような形で何とか 種子を入手して実験せざるをえない。非常に苦労 するんです。そこまでやる人というのはほとんど いません。ですので、世界で数えるほどしかそう いったネガティブな面の実験というのはやられて いないというのが現状です。実際、それでモンサ ント社に訴えられた人もいます。特にアメリカで 訴訟になると罰金の額はものすごい、天文学的な 数字になってしまいます。だから怖くてなかなか できないというのが現状です。

 そういった遺伝子組み換え生物とか作物を規制 しようという動きが世界中から出てきているわけ です。それに対して、先ほど申し上げたようなア メリカとかカナダとか、そういった食料大国は規 制に反発しています。規制すると膨大な額のコス トがかかるとか、あるいは輸出ができなくなると か、そういったことが考えられますので非常に強 硬に反対するわけです。

 そういった輸出国では遺伝子組み換え作物とい うのは、在来の作物と全く何の違いもないという 前提で法体系ができています。ですので、例えば アメリカでは遺伝子組み換え食品の表示義務とい うのは全くない。全く同じであるからやる必要は

ないという前提です。全く特別扱いしていないわ けです。在来の一変種という形で認可も非常に緩 いです。表示義務もない。だから日本人も結構食 べてますけど、アメリカ人も大量に食べていま す。

 ただ、EUはそういった遺伝子組み換え食品の 安全面への懸念が国民の間に非常に強くて、さま ざまな市民活動、NGOの活動、あるいは緑の党 なんかの議員さんを通じて運動した結果、現状で は世界一厳しい規制が行われております。日本は 大体アメリカとEUの中間ぐらいの規制が行われ ています。さっき言った、日本では油に関しては 表示義務はありませんがヨーロッパは全部ありま す。日本だと外食産業、みなさんが食べるファミ レスとか、あるいはマクドナルドとかのファスト フード、ああいったところで出される食品に GM、遺伝子組み換え食品が入っていても表示義 務はありません。実際にはそういうところで大量 に入るわけです。ところが、EUの場合は外食産 業も含めてすべて表示義務があります。しかも表 示の閾値が日本は5%ですけども、ヨーロッパの 場合は0.9%です。ですので、ヨーロッパで0.9%

を超えて遺伝子組み換えが入っている食品をレス トランで出すと、「遺伝子組み換え食品を使って います」という表示をメニューに書かなければい けない。違反すれば厳しく罰せられます。日本は 全くないです。だからみなさんは知らないで食べ てますよね。というふうに、日本は大体、中間ぐ らいなんですけど、そういうふうにばらばらなん です。それから途上国には規制は全くありませ ん。

 今は規制の厳しい国もあれば、全く規制しない 国もあるというように、世界中でばらばらの状態 なんですけれども、グローバル化で遺伝子組み換 え農作物の国際取引というのはどんどんふえてい るわけです。そうすると、各国ばらばらの基準で やっていていいのかという問題が出てきます。世

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界全体のワールドスタンダードをつくらなくちゃ いけないという声が出てきて、基準づくりという のが行われてきたわけです。2000年から、その基 準づくりをしてるのは、コーデックス委員会とい う、FAO(国連食糧農業機関)とWHO(世界保 健機構)が共同でつくった機関なんです。 正式 名はCodex Alimentarius Commission。食品の国際 取引の安全性に関する、公正な貿易と消費者の安 全を目的としている機関です。Codexはラテン語 で「規則」という意味です。Alimentariusという のは「食品、食べ物」です。だから食品の基準を つくる委員会というのがもともとの意味です。

 ここは食品全般について扱っているわけですけ ども、その中に特にバイテク(バイオテクノロ ジー)でつくられた食品の特別部会というのがつ くられまして、そこで遺伝子組み換え食品の輸出 入について国際的な基準づくりが行われたわけで す。つまり、輸出するときはこういう安全性 チェックをしなくてはいけない。何か起きたとき には速やかに当局に連絡しなくてはいけない。連 絡を受けた当局、行政側はちゃんとした対応をし なくてはいけない。それから、どんな性質の遺伝 子組み換えの性質を持っているのか、検出技術は 何なのかというようなデータを速やかに行政に メーカーは伝えなくてはいけないとか、そういっ た安全を守るためのさまざまな規定をここで定め るわけです。

 CODEX基準というのはガイドライン、つまり

任意基準です。ガイドラインというのは法的拘束 力がない。ですから国によってはこれを採用して もいいし、採用しなくてもいい、どちらでもいい。

非常に強制力の緩いものですが、ただ現実にはこ れを採用せざるをえない状況です。それはなぜか というと、WTOという今のグローバル化のもと になっている、それを推進している国連機関、こ れはいま国連機関の中では最強の機関ですが、そ のTBT協定、技術的障害に関する協定で、この

中の一条項に、食品の問題に関してはCODEX基 準を参照するという一文が入っています。SPS協 定は検疫に関する協定でWTOがつくった条約で す。その中にやはり同じように、CODEX基準を 参照するという一文が入っています。

 このことによって、WTOに加盟しているすべ

ての国がCODEX基準を守らざるを得なくなった

わけです。なぜかというと、貿易のあつれきが起 きた場合、例えばどこかの国がアメリカからの食 料を遺伝子組み換えだからといって貿易を止めた りとか、食に関してそういうようなことが起きた 場合に紛争になりますよね。そのときに裁定が行 われるわけですが、CODEX基準を守ってるほう が勝つことになるわけです。守ってないと負ける ことになります。ですから、WTOに加盟してい る国は全部CODEX基準を守らないと、もしそう いうふうになった場合に非常に不利な立場になっ てしまうというわけです。ですので、実質的にど この国も守っています。日本もやはりCODEX基 準ができた段階で食品安全基本法の内容を改正し ています。ですので、実質的には強制的になって いるわけです。

 その条文づくりをバイテク部会(バイオテクノ ロジー応用食品特別部会)というところでやって いるわけですけれども、これは2000年から2007年 まで、第2ラウンドまでやって、「一般原則」「植 物ガイドライン」「微生物ガイドライン」「動物ガ イドライン」の四つのガイドラインができて、こ れで今のところはいいんじゃないかということ で、一旦ここで終結したわけです。

 最近の国連のこういった会議全体に言えること なんですけども、NGOの参加が幅広く認められ るようになっています。これは1999年に国連の経 済社会理事会で、NGOの参加の枠を広げるとい う方針を決めたんです。基本的には、その会議の 議長さんの裁量によります。国連の正式なメン バーは政府代表ですから、議長さんが必要だと認

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めた場合のみ、政府代表以外のNGOの発言を求 めることができるという規定にしかなってないん ですけども、ただ、その運用の面で、多くの会議 でNGOがオブザーバー参加できる、それから発 言もできるという状況になっています。

 この写真のような会場でやるわけです。これは 政府代表の人たちと、それからNGOと両方いる わけなんですけども、NGOも発言ができるんで す。議長さんが必要と認めたらというふうにタテ マエ上はなっていますけども、実際には自由に発 言していいわけです。

 このコーデックスのバイテク部会でも、最初の ころは政府代表とNGOを分けてやっていたんで す。どういうふうにか、というと、最初、みんな 手を挙げるかわりに名札を立てるんです。発泡ス チロールでできた名札で、USAとかJapanとか書 いてあるやつを立てると、手を挙げて発言します という意思表示です。最初の頃は、まず政府代表 を当てて、それが終わったらNGOというふうな 順番でした。NGOの席も大体後ろの端とか左右 の端と、端っこに机が並べてあるという形でやっ ていたんです。

 私はCI(Consumers International、国際消費者 機構)というNGOの代表として出席しています。

出席できるNGOには、いくつか要件があって、

設立後3年以上活動歴があるとか、何カ国以上に 支部をもつ国際NGOであるとか、そういう要件 を満たせば大体可能です。コーデックスは消費者 の安全を守るというのが目的の一つですから、国 際消費者機構は当然入るわけです。

 しかし、2〜3年目ぐらいから、政府代表優先 というのは事実上なくなって、もうばらばらに なってしまった。我々CIのすぐ隣がアメリカ代 表だったりと、座る場所もばらばらです。当てる 順番も、最初に挙げた人が最初に当たるというふ うな形になりました。そうすると、国際NGOが 一国の政府代表と全く同じ発言権を持つというこ

とになってしまいます。

 この中で何をやっているかといいますと、国際 基準の条文づくりをしている作業部会です。例え ばこういうドラフト、たたき台をつくるわけで す。ここでまとまったものが本会議にかけられま す。これをワンパラグラフずつ、あるいはワンセ ンテンスずつ、みんなでこれでいいのかどうか、

違う文言にしたほうがいいんじゃないかという提 案をしていくわけです。その提案に対して賛成な のか、反対なのかという意見がまた出されます。

というようなことで、折り合いがつけばオー ケー、次のパラグラフへ、という形でどんどん進 んでいくわけです。

 ただ、対立の多い条項になりますと、一つのパ ラグラフを終えるのに2〜3日かかるというよう なこともあります。ふつうの審議時間は、大体朝 9時から3時間ずつ2ラウンドというのがふつう です。9時から12時ぐらいまでやって、昼ご飯が 1時間半ぐらい。で、また3時間やって。その間 におやつの時間というのが30分ずつあるんですけ ども、そうすると大体6時ぐらいに終わる予定な んです。でも、6時ぐらいに終わったためしがあ りません。時間は終わってるんだけども、サンド イッチを食いながらみんなでまたやるとか、大体 10時とか11時ぐらいまで。場合によっては朝4時 までなんてこともあります。そういうような形で 条文を決めていくわけです。

 暗礁に乗り上げて、どうしようもなくなった項 目としては、例えばアメリカとフランスの間で大 きな争点になったものに「トレーサビリティー

(traceability)」というのがあります。フランスが 非常に強硬に主張したところです。これは何かと いうと、何か問題が起きたときに、この食品の流 通過程を全部逆にたどることができる、生産者ま でたどり着くことができる、そのための記録のシ ステムです。この制度はEUにはあります。日本 では牛肉についてのみやっています。BSE(狂牛

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病)の問題があるからです。ヨーロッパは大体ほ とんどの食品についてやっています。アメリカは 全くこういうシステムはありません。

 この、トレーサビリティーをCODEX基準に入 れるか入れないかというのは国益がかかってるわ けです。アメリカ政府代表と、EU全体がそうで すけども、特にフランスが先頭を切って、アメリ カに対抗しました。もともとフランスとアメリカ というのは仲が悪いんですけども、まさに喧嘩腰 です。お役人ですから紳士的にやるのが原則なん ですけども、あまりにも先に進まないと、11時、

12時になって疲れて眠いのに、アメリカ代表がま とまりかけたことをまた蒸し返して、やっぱりこ れはだめだとかと言い出すと本当に腹が立ってく るんですね。そうすると、喧嘩腰になってしまう。

そういうような形で、トレーサビリティーに関し ては3日ぐらいかかりました。

 もう、らちがあかないから、これは一旦棚上げ にしておいて次に移って、一番最後まで行ってま た戻ってくるというようなことを何回もやって、

それでも「トレーサビリティー」という言葉は絶 対だめだとアメリカが言うものですから、最終的 には product tracing という文言で一応折り合 いました。この product tracing の解釈は、ア メリカは、これは全く法的な根拠も何もない、何 もしなくてもいいという解釈でやっているわけで す。それに対して、EUはトレーサビリティーと 全く同じ、非常に規制度の強い文言として解釈し ているわけです。実際にこの文言で何か紛争が起 きたときに、解釈の違いでまた同じような問題が 起きてくるはずなんですけども、国際基準をまと めるためにはここで折り合うしかしょうがないと いうことで折り合ったわけです。

 一般的な構図としては、いま言いましたよう に、食料輸出大国と、非常に厳しい規制を求める 食品輸入国との対立です。EUも輸入は非常に多 い。日本も食糧輸入大国です。ただ、日本はアメ

リカの様子を見てあまり厳しいことは言いませ ん。基本的に日本の対アメリカ貿易というのは、

工業製品をアメリカに輸出して、そのかわり食料 をアメリカから輸入して貿易の不均衡をただすと いうのが戦後の基本的な路線でしたよね。ですの で、アメリカからのGM食品をあまり止める気 はないわけです。だけど一応、国民の安全を守る という義務があります。日本の国民の中にはGM 食品に対する懸念が非常に強いですから、あまり 緩いことも言えないということでどっちつかずの 立 場 を と っ て い ま す。 で す か ら、 主 にEUと NGO対アメリカ、カナダ、オーストラリアとい う構図です。

 この中でNGOはどんどん発言します。意見書 みたいなものを会議の前に出します。CI(Consumers international)として、ドラフトの各情報につい て、これに対しては我々はこう考える、こういう ふうに直してほしいと出します。EUは既に非常 に厳しい規制を持っていますので、大体の場合は EUと波長が合う。動機は全然違います。我々消 費者はできるだけ消費者の安全を守りたいという 動機でやっています。EUのお役人もアメリカと 非常に激しく闘いますけども、それはなぜかとい うと、お役人にとって、自分の国の、あるいは自 分の地域の中の法規と国際条約、あるいは国際基 準が矛盾しては困るわけです。自分のところで施 行されている、自分のところに既にある制度と全 然違うものが国際基準としてできてしまうと非常 に困ることになる。あつれきの一番大きな原因に なりますので、それは絶対に避けないといけな い。自分のところの制度を守るというのが彼らに とっては一番大事なこと、至上命令なんです。

 たまたまEUの場合は、遺伝子組み換え食品に 関して市民の間に非常に強い懸念があって、非常 に厳しい法制度、規制の制度ができているわけで す。だからEUのお役人たちはそれを必死で守ろ うとするわけです。そこでベクトルが重なって

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NGOと一緒にできるというわけです。ですので、

お互いに会議場の中でしょっちゅううろうろ歩き 回るんです、みんなで発言して議論している間に も。うろうろ歩き回ってる人は大体5〜6人はい るんです。何をしているかというと、別の代表の ところに行って耳打ちしてるんです。この問題は どう対応したらいいかとか、ここはこの文言でど うかとかと相談するんです。

 例えばEC(European Commission)というのが あります。行政の中で法案を出すところですけど も、そこはEUの中では遺伝子組み換え推進の立 場をとっているんですけれども、その人たちも やっぱり自分たちの制度を守らなければいけない ということで一緒にやることがあります。よく ECの代表の人がCIのところに来て、「CI、ヘル プミー」ちょっと手伝ってくれと、助けてくれ、

と言ってきたりします。で、相談して、ここはこ う言えばいいんだよと言うと、それをECが発言 して、それに対してアメリカは何も言えなくなっ て、通ったというようなこともよくあります。そ れから、NGOが発言したことに対して、それを 支持するような発言をEUの各国がしてアメリカ を封じ込めるというようなこともよくありまし た。

 ということで動機は違うんですけども、お互い を利用し合うということで、たまたま重なってい るベクトルを有効に使おうという形でやってきた んです。それでもって、最初は相当ひどいアメリ カ寄りの草案だったものが、かなりこちら側の要 求に近いものにできました。

 そのひとつの例を挙げますと、アメリカは実質 的同等性(substantial equivalence)という基本的 な考え方を持っています。この考え方が在来食品 と遺伝子組み換え食品は全く同じだという判断の 一番根幹にあるわけですけども、これをCODEX 基準でもアメリカは導入しようとしたんです。つ まり、実質的同等性はリスク評価の基本原則とア

メリカは主張したんです。けれども、EUとNGO の協力で、実質的同等性はリスク評価の出発点、

スターティングポイントなんだということを条項 の中に明記させることに成功しました。スター ティングポイントですから、実質的同等性が言え たからといって、それで認可できるということで はないということです。

 それからもう一つ、われわれが勝った一番大き な例なんですけども、アメリカがGM物質の微 量混入に対して、CODEX基準の緩いものを附属 書の形で別途つくって、緩い規制で対応しようと いうことを提案したんです。要するに、リスク評 価の項目がたくさんあるんですけども、とにかく

「少なければ簡単なリスク評価で済ましてオー ケーを出していいじゃないか」というのがアメリ カの提案でした。いま出回っている食品の中で GMが混じっていない食品というのはほとんどあ りません。これは物理的に完全にGMと非GM を分けることができないからです。流通の過程と か生産の段階で必ずまじります。それから製品を つくる段階でもまじります。ゼロ%ということは 今はもうありえないわけです。その場合に、未認 可のGM食品が混入していますと、違法食品と いうことで非常に大きな問題になります。

 前にスターリンク事件というのがありました。

スターリンクというのは動物の飼料用にのみアメ リカで認可されているトウモロコシです。これは 人間が食べた場合にアレルギー物質をつくる可能 性があるということで、人間の食用には使っては いけないことになっています。そのスターリンク が、日本では「トンガリコーン」というスナック 菓子の中に混じっていることがわかりました。そ れで大騒ぎになったんです。全部回収、輸入もス トップというふうにメーカーは大損害です。そう いうようなことがこれまで何度も起きている。そ ういうことがあったときに、そんな大騒ぎしなく てもこれは非合法じゃないと、簡単なリスク評価

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で1週間ぐらいでささっとオーケーを出そうとい うのがアメリカの目的だったわけです。

 実際、附属書をつくることにはなってしまった んですけれども、それに対して、これは特に日本 のNGOの働きが大きかったんですけども、最終 的に、その附属書の中身を一般のリスク評価とほ とんど同じものにさせたんです。栄養評価だけは 省略してもいい。微量ですから栄養評価はそんな に問題じゃないですよね。でも、それ以外は全部 フルのリスク評価をやらなくちゃいけないという 内容になりました。初めて読む人は何でこんなも のをつくったんだろうと不思議に思うような、そ ういうような附属書にすることができた。言って

みれば、CODEX基準を骨抜きにしようとしたア

メリカの意図を骨抜きにしたという形です。

 こういうように、かなり勝利した部分がありま す。ただ、これもやっぱり妥協の産物ですので全 面的に勝てるわけではありません。これはNGO に参加していたある人が言ったんですけど、They というのは自分たちでつくったCODEX基準です けども、 They are not very good from our point of view, although they are not really bad either 。我々 から見ればそんなにいいものじゃないけど、で も、そんなに悪いものでもないよというものが一 応できたということです。CODEX基準というの は、日本のそれ以前の基準と比べても厳しいもの になってます。それがすべての国、途上国にも適 用されるわけです。先ほど申しましたように、

WTOの条約の中で参照される基準ですので、す べての国が採用しているわけです。先進国から途 上国まですべての国で、CODEX基準に基づいて 国内法が改正されていくわけです。日本でも改正 されています。ということは、今見たような形で、

我々NGOが参加して変えてきたことが全世界の 国内法になるわけです。非常に大きな影響力を持 つことができます。

 もう一つ、GM生物に関する条約の交渉も行わ

れています。食品というのは生きていないわけで すよね。たとえば、大豆は、植えれば生えてきま すけれども、食品というのは煮たりして殺して食 べるわけです。ですので、一応死んだ生物という ふうに見られています。それに対して、生きたま まの生物の規制はどうするのか。食品は死んだ遺 伝子組み換え生物で、CODEX基準でカバーされ ますけども、生きている場合、これをどうするの かというのがもう一つの条約です。

 生きている遺伝子組み換え生物のことをLiving Modified Organism(LMO)といいます。生きて いる改変された生物です。それの環境及び人体へ の影響を国際的に規制しようという動きがやはり ありまして、これは有名な生物多様性条約、CBD

(Convention on Biological Diversity)という条約の 枠のなかで行われています。 CBD は1992年のリ オ地球環境サミットのときにほとんどの国が調印 しました。野生生物とか農作物も含まれます。そ ういうものを包括的に守っていく、生物の多様性 を守ろうということです。

 このCBD(生物多様性条約)は、今はあまり 日本人は知りませんけども、来年の今ごろはほと んどの日本人が知るようになっていると思いま す。なぜかというと、2年に1回行われるCBD の締約国会議が来年の10月に名古屋で行われるか らです。これは、例えば温暖化に関して京都会議 というのがありましたけども、それと同じぐらい に重要な国際条約の会議です。条約をめぐる議論 というのはConference of the Parties「締約国会議」

で 行 わ れ ま す。 名 古 屋 会 議 は10回 目 な の で、

COP10と呼ばれます。

 生物多様性条約はコンベンションですが、その なかにプロトコル(議定書)というのがあります。

議定書というのはより細目を定めたものです。例 えば気候変動枠組み条約(UNFCCC)とかありま すよね。その中で具体的な運用の規則を決めたも のが京都議定書で、プロトコルです。温暖化に関

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してはCOPで全部呼ばれていますけども、生物 多様性条約のプロトコルに関してはmeetingとい う言葉を使いますので、Meeting of the Partiesと いう意味でMOPというふうに呼ばれます。条約 のCOPと議定書のMOPというのは大体同時に 行われるんです、非常にお金がかかりますから。

何百カ国から人が何千人と来るわけです。飛行機 代だけでも大変です。プラス、ホテル代とかいろ いろあるわけですからものすごく膨大なお金がか かりますので、それを節減するために同時にやる というのが原則です。この生物多様性条約も、も う一つカルタヘナ議定書(バイオセーフティに関 するカルタヘナ議定書:CBP)というのがあって、

これもやっぱり同時に開催されます。5回目なも のですからMOP5と言われます。ですから、名 古屋で来年やる会議はCOP10-MOP5という呼ば れ方がされます。

 生物多様性(条約)の中にカルタヘナ議定書が あるわけですが、その中身は「遺伝子改変生物の 安全な輸送、取扱い、利用のための議定書」です。

生きている遺伝子組み換え生物を規制するための 特別な議定書です。これはなぜできたかという と、アメリカのように在来種と遺伝子組み換え種 というのは全く同じだという考え方ではなく、全 く違うものだという前提なわけです。生物多様性 を守るために、普通の在来種を前提にしてつくっ たCBDだけでは不十分である、遺伝子組み換え 生物というのは在来種とは全く違う生物だから、

それ専門の、固有の規制を定めた条約をつくらな いといけないということでつくられたのです。在 来種と遺伝子組み換え生物とは全然違うという前 提です。

 この議定書の発端になったのは、一部の途上国 の政府と、それから非常に先進的なNGOの代表 者です。主にヨーロッパとマレーシアで活動して いるThird World NetworkというNGOの人たちも 協力して発端をつくった。最初、彼らはこんなも

のが通るとは思ってなかったんです。「でもやっ てみようというので、やってみたところができ ちゃった」と言っていました。つくるのに大体10 年ぐらいかかったと言っていましたけれども、一 応できたんです。

 ただやっぱり、その内容にアメリカとかの遺伝 子組み換え大国がものすごく反発するんです。実 際にアメリカなどの食料輸出大国は批准していま せん。こうした国々のことを「マイアミグループ」

というふうに呼んでいます。マイアミグループは カルタヘナ議定書に入っていません。ですから、

オブザーバー参加はできますが発言権はありませ ん。

 この中でいま大きな問題になっているのが第27 条、責任及び修復(Liability and Redress)、L+R と呼ばれる条項です。第27条とは何かというと、

遺伝子組み換え生物が自然環境あるいは人間の健 康に対して何か被害を与えたときに誰が責任をと るのか、どうやって責任をとるのかということを 定める条項です。ただ、これはいま空っぽの状態 です。その理由は、カルタヘナ議定書をまとめる 段階であまりにも対立が強くて、ここを積み残し にせざるを得なかった。2000年にカルタヘナ議定 書が成立しましたけれども、発効してから4年以 内にこの中身を決めなくてはいけないということ だけ書かれています。

 4年後といいますと去年ですけれども、去年、

ボンでCBDのCOP4が行われて、そこで決めな くてはいけなかったんですが、あまりにも対立が 強くて決まらなかったんです。一番反対したのは どこかといいますと、日本政府です。おかしいと 思いませんか。先ほども言いましたように、日本 は遺伝子組み換え食品を大量に輸入しています。

ですから、何かあったときに被害を受けるのは日 本国民です。ですから、日本政府としては当然厳 しい規制、何か起きたときの賠償制度をつくると いうのが普通だと思うんですけども、それに反対

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しているんです。

 なぜかといいますと、これはマイアミグルー プ、特にアメリカの意向を受けて、日本政府はそ の代弁をしているんです。これはNGOの人から 聞いたんですけども、去年のボンの会議の直前 に、日本政府の代表がアメリカ政府の代表と頻繁 に会議を持って相談していたと言うんです。アメ リカは、先ほど言いましたように批准していませ んので発言権はありません。その代弁を、これを 批准している日本政府にさせているというのが今 の構図です。

 じゃあ、誰がどういう権利で、日本の政府代表 は本来的に日本国民の利害に反するような交渉を L+Rの中でやっているのかというと、これは環 境省の人に聞いてみたんですけども、省益でやっ ていると言うんです。関係している省庁から代表 が出て、その内容について各省庁の意見を言うわ けです。それを摺り合わせて、日本政府としては こういう態度で交渉に臨むということを決めるら しいんです。関係しているのは、経済産業省、農 水省、文部科学省、それから担当省である環境省、

あと条約ですから外務省です。この5省の代表が 作業部会の直前なんかに集まって、自分のところ の省としてはここまではオーケーだけどここから は絶対引けない、この条文は絶対だめだ、あるい はこういう文言に変えないとだめだという意見を つき合わせるらしいです。そうやって決まってい るらしい。だから役人が全部決めてきたわけで す。

 「これで国民の利害を代表していると言えるん ですか」と聞いてみました。すると「省の利害と いうのは国民の利害なんだ」と、堂々と言うわけ です。つまり、官僚が考えていることは国民の利 害を代表しているんだということです。いかに日 本の政治が官僚に支配されてきたかが分かりま す。政治家というのは全くタッチしていない、そ れから国会も何も関与していません。官僚が考え

たことがそのまま日本国の立場として国際条約の 交渉などで発言されるわけです。それが、実質的 には国民の利害と非常に大きく乖離しているわけ です。

 この問題をどうするのか。このカルタヘナ議定 書の27条を決めるのに一番障害になっているのが 日本政府なんですけれども、それを日本のNGO として何とか変えないといけないというのが今 やっていることです。たまたま政権交代がありま した。今の政府は官僚支配をやめさせる、政治家 のリーダーシップを優先するんだと、そういう本 来の政治に変えるんだと言っていますよね。た だ、今の民主党の人でこの問題、責任と修復の問 題について知っている人がいるかといったら、議 員さんや政府の首脳の中には一人もいません。政 治家の中にこの問題に精通している人はいないん です。ですので、我々が議員さん、あるいは政府 の中の副大臣級の人たちを教育してあげないとい けない。教えてあげないといけない。それが分か れば、彼らは今みたいな官僚が全部決めるような 形ではよくないということで、それを変えるべく 動いてくれるわけです。

 それを今、一生懸命やっているところですけ ど、来年の10月までに何とかできれば、この議定 書の条文をまとめるのが相当楽になるんです。

「カルタヘナ議定書の補足議定書」という、新し い議定書の形でつくられるはずなんですけども、

何か問題が起きたときにきちんと賠償される、し かも第三世界の、途上国の農民にしわ寄せが行か ない、彼らがまいたGMの種子が生物多様性に 損害を与えたとしても、そういった貧しい農業の ところに損害賠償の責任が行かないような制度を つくることが非常に楽になってくる。

 この交渉の中でもやはり途上国の政府代表、特 にマレーシア、エチオピアとNGOというのは本 当に友達付き合いをしていまして、家に招かれた りということもあります。会議が終わった後、一

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緒に飲みに行ったり、飯を食いに行ったりもしま す。これに対して、EUはL+Rに関しては非常 に保守的な立場をとっています。

 時間がないので詳しい内容は言いませんけど も、相当大変な、先駆的な、といいますか、先例 のないような条約をつくらなくてはいけないとい うことで大変な作業ではあるんですけれども、そ の中でできるだけ内容をこちら側に引き寄せると いうようなことを今やっています。日本政府が最 大の障害ですので、日本のNGOの責任は非常に 大きいということです。日本政府を一番変えられ るのは日本の国民です。そこで決まったものは ワールドスタンダードになって、途上国を含めて 適用されるわけですから、我々の責任は非常に大 きいんです。

 ということで、ちょっと舌足らずになりました けど、以上で終わります。

 司会 どうもありがとうございました。非常に 臨場感のある話で、どういうふうに実際にNGO の人たちが会議に参加して、国際的な文書を、企 画をつくっていくのかという過程が非常によくわ かりました。

 では、これから10分ほど質疑の時間をつくりま す。みなさん、どうぞ。どなたからでもどうぞ。

ちょっと考える時間が要るかもしれないので、私 が最初に。

 このGM問題あるいはLMO問題でNGOの果 たす役割というのは、消費者の立場から発言し て、消費者の立場を守る、利益を守るために活動 するということが一つあると思います。さっきも おっしゃったように、国家同士の交渉だとやっぱ り国家の論理があって、消費者の立場に立ってと いうわけにはいかないので、それを補うという意 味が一つあると思うんですけど、最後の、民主党 の議員の中にはこの専門家は一人もいないので教 える必要があるということをおっしゃいました。

それから、ECの代表にもNGOから入れ知恵で

はないですけども、こうしたらいいのではないか という提案をされたりするわけですよね。つま り、NGOの方が様々なことを政府の代表よりも よく知っていて、単に消費者の立場から発言する というだけではなくて、実際にその問題について のエキスパートであるからという、そういう面も あるんですか。

 真下 そうですね、はい。政府代表の人たちは 2種類ありまして、一つは法律の専門家です。弁 護士クラスの知識を持っている法律の専門家で す。もう一つは、これは生物関係の条約ですので 生物の専門家です。主にドクターを持っている人 です。そういった人たちは本当の専門家です。で すからこちらも、そういった人たちを説得できる だけの力量、知識を持ってないといけません。ア メリカの代表もひどい提案はしますけども、知識 はやっぱりすごいですよね。ですから、そういう 人たちに説得力で勝たないといけない、ロジック で勝たないといけない。

 そのためには、一つにはその分野の専門知識が 当然必要です。本当の専門家並みの知識が必要な んです。私は専門家ではないのですが、幸い、ア メリカのコンシューマーズ・ユニオンという非常 に大きな団体、そこが出している雑誌は450万部 ぐらい売れているそうですけども、そこのエキス パートがいるんです。その人は生物学のドクター を持っている人で、彼にそういった部分はやって もらう。それから法律の専門家もいます。そう いったNGO側の専門家といろいろ議論をしなが らこちらの意見をまとめていくわけです。ですの で、かなり大変です。一つの会議の前の資料だけ でもこれぐらいになります。それに関連するさま ざまな決議とか条約とか、あるいは法律なんかも 手がかりにして、ここにこう書いてあるんだから これはこうすべきだとか、アメリカが言っている ようにやると、こっちの既にある条約と矛盾する じゃないかというようなことを足がかりにして押

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していくわけです。そのためには相当幅広い知識 が必要になります。

 だからやっぱり知識、説得力の勝負ですよね。

知識を持っているほうが勝ちです。いかに説得力 のあるロジックを展開していくか、それで勝ち負 けが決まっちゃうんです。業界との癒着とか、そ ういうものはこういった国際的な場ではほとんど 影響ないと言っていいです。もちろんモンサント の代表もNGOとして来ています。国連では業界 団体もノンガバメンタルですからNGOです。だ から彼らもいるんですけれども、彼らにもやっぱ り勝たないといけないわけです。勝つと条文は変 えられるわけです。それがワールドスタンダード になって、すべての国の国内法になっていくわけ です。勉強のしがいもあります。やっぱり勝った ときには「やったー!」という感じがします。そ ういう瞬間が忘れられないので、それが楽しくて やっているわけですけど。

 学生 遺伝子組み換え食品で、アメリカの会社 が開発して、そこの条文で実験に使ってはいけな いというふうに規定されているとのことですが、

そのことについて、国際会議とかでは話し合われ たりとかしないんですか。

 真下 ないです。というのは、スコープ(適用 範囲)から外れますので。要するに、ここはリス ク評価とか、何か起きたときの対応の仕方とか、

そういうものを決めるのが役割ですので、守備範 囲というのは決まっているわけです。今おっ しゃったことは純粋に民間同士の契約の領域、つ まり民事なわけです。そうすると、そういった条 項、モンサント社の契約文が国際的に見てどうな のかという話には絶対にならない。これはアメリ カの国内法の問題であるし、ほとんどの国で私的 な契約というのは自由にできますから。もしそれ が嫌だったら買わなきゃいいだけの話です。です ので、モンサント社のその条項を法的に問題があ るとかいって裁判を起こすというようなことはな

かなか難しいです。

 学生 GM食品、あまりよく知らないんですけ ど、アメリカの1個の会社がつくっているんです か。

 真下 そうですね、今はほとんどそうです。ほ ぼ独占状態です。

 学生 それは、その会社の特許みたいになって いて、ほかのところが同じような実験とか開発と かもできないみたいな状況に今はなっているんで すか。

 真下 一番大きな武器が特許です。ある生物の 一部の遺伝子を改変しただけで組み換え生物全体 の支配権を得ることができるということです。で すので、ほかの会社が同じ改変をすることは絶対 できない。それをめぐる訴訟というのはものすご くたくさんあります。モンサント社というのは訴 訟のエキスパートみたいなもので、ちょっと何か あるとものすごい額の損害賠償を請求するんで す。だからもう怖くてできないですよね。

 カナダで、モンサント社の遺伝子組み換え菜種 が畑に植えてあったんです。その花粉が、有機栽 培をしていて、遺伝子組み換えは絶対嫌だという 菜種農家のところへ飛んできて、あるいは種がこ ぼれたのか何か知らないけど、畑の中にモンサン ト社の遺伝子組み換えの菜種が生えてたらしいん です。そうしたらモンサント社がそれを見つけて 訴訟を起こしたんです。特許の無断使用だと、金 を払わないのに使っているといって。膨大な額の 損害賠償を請求して、カナダで訴訟になりまし た。最高裁まで行って結論はどうだったか。負け ました。要するにモンサント社が勝っちゃったん です。その人は全然植える気もないし、盗んだわ けでも何でもない。いつの間にか遺伝子組み換え ナタネが生えていた。その人は有機栽培ですから 迷惑な話なんですけどね。自分の菜種に遺伝子組 み換えがまざっちゃうと有機食品や有機種子とし ては売れませんから。なのに、法律上は負けちゃ

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うんです。これはFTAという条約に基づいてそ うなってしまう。日本でも同じことが起きたら やっぱりそうなってしまう可能性が高いんです。

 そうやって種子を独占していくことによって、

遺伝子組み換え開発会社がねらっているのは、要 するに世界の食料を自分たちの特許で独占しよう ということです。そうすると、世界中がそれに依 存するわけなので、非常に長期にわたって膨大な 収入になりますから。それをどんどん途上国にも 広げようとしている。非常に厳しい、厳格な契約 で縛っている。今どんどん売り込んで、さっき言 いましたように広がっている。中国でも広がって います。

 真下 先生、最後に一言だけいいですか。

 司会 はい、どうぞ、どうぞ。

 真下 フィードバックを書きながらでいいで す。テーマとはあまり関係ないんですけども、英 語のことです。英語はやっぱりみなさんに頑張っ てほしいです。いま見ましたように、会議をやる ときは全部英語です。英語ができないと話になら ないわけです。英語を勉強できるのは大学の時期 しかないです。社会人になったらもうほとんどで きません。ですから、ぜひ今のうちに英語はマス ターしてほしい。

 こう言うと、ほとんどの人はどこかの英会話学 校へ行こうと考えるんですけども、本当に使える 英語というのは会話じゃだめです。なぜかという と、今、ビジネスでもNGOでも何でもそうです けども、一番コミュニケーションで使っているの はメールです。そうすると、英文が書けないとだ めということです。ちゃんとした内容が相手に誤 解なく伝えられるような英文を書けないと話にな りません。電話で大事な話をするということは、

今ほとんどしません。ちゃんとした文章を書ける ようになると、自分の書ける文章はしゃべれま す。自分がしゃべれることは相手が言っても聞こ えるわけです。だから、書くのを一番重視すべき

です。会話をいくらやってもだめです。それがで きるのは今のうちだけですから、卒業するまでに ぜひ書けるようになってほしい。

 書くのは非常に大変と思うかもしれません。私 もそうなんですが、中学校の英語の教科書があり ますよね。あれに出ている英語が書けるようにな ればもう99%オーケーです。中学のときは教科書 の英文を理解するというのが勉強でした。今のみ なさんに必要なのは、中学校の教科書に出ている 文章を書けるようになることです。虎の巻みたい な参考書がありますよね、それに訳が出ていま す。その訳を読んで英文を書いてみます。それで、

本当の教科書の英文と比べてみて、違っているか どうかチェックするわけ。中3レベルの英語が書 けるようになったらもうバッチリです。全く問題 ないです。あとは各分野、業界ごとの専門用語が ありますから、その単語を入れかえていけばいい だけの話です。ぜひそこまではできるようになっ てください。そのための勉強のお金は全然いりま せんから。自分で全部できます。一番いいのはネ イティブスピーカーの友達をつくる、あるいは彼 氏、彼女ならなおいいですが、自分が書いたもの をチェックしてもらうことですね。それが一番早 い上達の道です。

 学生 すみません、今の話を聞いて、確かに英 語はできたほうがいいと思います。いま国際社会 において英語が共通語として認識されていると思 うんですけれども、世界会議において、フランス は自国のフランス語でしか発言しないじゃないで すか。やはり日本人もいつかはそういった公の場 において日本語を堂々と話せるようになるほうが いいと思うのですけれども。やはりそういうとこ ろで、自分は日本語で話して、通訳を雇えばいい のではないかと思うんですが。

 真下 確かにおっしゃるのは理想的だとは思い ますが、現実的ではないです。現実はそれでは絶 対だめです。フランス代表はもちろんフランス語

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を使います。なぜかというと、国連の公用語とし て認められているからです。6カ国語ですか。そ れはなぜかというと、戦勝国のつくった国際機関 が国連だからです。だから敗戦国の言葉は公用語 にない。ドイツ語もありません。日本に経済力は あっても、日本語は国連の公用語にならない。戦 争が終わってからもう60年以上たっていますけ ど、いまだにそうです。これが現実なんです。

 それから、一番よくお金がもうかるところへみ んな集まりますから、そこの言語を使える人が一 番もうかるわけです。そうすると、やっぱり今の ところ英語に集中しちゃうんです。これから中国 語がどんどん広がってくると思います。あるいは スペイン語。特に中南米のスペイン語というのは 非常にたくさんの人が使っていますよね。中国語 だと北京語と広東語は話し言葉では理解できませ んが、中南米のスペイン語というのは全員理解で きます、北から南まで全部。それから、ブラジル の人もスペイン語で聞いたことは理解できるんで す。逆にブラジル語というかポルトガル語をしゃ

べってもほかの人は理解できます。だから、コ ミュニケーションに全く問題はないです。あんな に広い地域で全くコミュニケーションに問題ない というのは非常に有利です。それからアラビア語 もそうですよね。イスラム圏はみんなコーランを 勉強していますから、一応アラビア語ができるん です。

 言語帝国主義と言われればその通りですが、そ れは利害と密接に結びついていますから、現実の 世界はそういうものなんだということです。

 司会 ちなみに真下さんはフランス語が堪能で す。今のような問題ですね、世界市民の言語はど うあるべきなのかという問題は何回目でしたか ね、この授業でも考えます。アラビア語も含めて 考えますので、ぜひ楽しみにしていてください。

そういう意味では、いい質問を先取りしてくだ さってありがとうございます。

 真下 大事な問題ですね。

 司会 真下さん、今日はお話ありがとうござい ました。

参照

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