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「排除する社会規範」を超えたコミュニティづくり (中間報告)

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Academic year: 2021

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「排除する社会規範」を超えたコミュニティづくり

(中間報告)

著者 浪岡 新太郎, NAMIOKA Shintaro

雑誌名 明治学院大学国際学部付属研究所研究所年報 =

Annual report of the Institute for International Studies

巻 15

ページ 85‑88

発行年 2012‑12‑01

その他のタイトル The reconstruction of the intimate spheres for

combating social exclusion : Interim report

URL http://hdl.handle.net/10723/1453

(2)

「排除する社会規範」を超えたコミュニティづくり

浪 岡 新太郎

趣旨

近年、コミュニティへの関心が高まっている。しかしながら「コミュニティ」という言葉が意 味するものは一義的ではなく、それほど明確ではない。国際社会のようなトランスナショナルな 意味、国民国家のようなナショナルな意味、基礎自治体のようなローカルな意味、さらには家族 のような親密圏のレベルにおいてまで、「コミュニティ」という言葉が使用される。さまざまに 異なったスケールの人間集団を「コミュニティ」という言葉で定義し、政策を立ち上げていくこ とには、どのような意味があるのだろうか。

政府、国会、基礎自治体などが「コミュニティの再興」や「新しい公共性」、さらにはコミュ ニティ維持に必要とされる「ソーシャルキャピタル(社会関係資本)」といった用語を強調する とき、その背景には、従来の福祉国家における生活保障分野を中心とした財政的危機から、従来 行政が担っていた分野を国民、市民、住民を「メンバー」とする互助組織によって代替させると いう意図も存在する。そして互助組織の役割を強化するためにメンバーの集団への帰属意識を高 めることが推奨されることが多い。

その場合、当該集団の機能は、行政がこれまで担っていた機能を代替することを目的とするこ とに還元されないだろうか。そして、「メンバー」の資格は行政に委託される機能を遂行するに あたって「適切な」人間に限定されないだろうか。帰属意識の強化は、誰が「適切な」メンバー であるかを判断する際の排除のための規範として機能しないだろうか。たとえば、自警団の組織 化や、「適切な」外国人(正規滞在外国人)との交流を促す国際交流協会の重要性を訴える行政 の主張は、野宿者や非正規滞在外国人をはじめ、適切ではない、帰属の不確かな人間への警戒、

さらには排除の傾向を強めることにならないだろうか。

行政による「排除の(市民)社会規範」の成立が進んでいるのだろうか。もちろん、人種主義 集団の存在に見られるように、「コミュニティ」の強調以前のさまざまないわゆる市民社会の諸 集団が排除の傾向をもたなかったわけではない。しかしながら、行政から相対的に独立した領域 とされていた市民社会は、これまで緩やかな形で帰属の「適切性」を行政とは無関係に判断し、

アジル(特に行政的判断と無関係に受け入れられる避難所)として機能してきたことも事実であ る。

本研究では、コミュニティ重視の政策による排除の(市民)社会規範の強化の射程を理解する ことを目的とする。そのために、市民社会におけるさまざまな互助組織集団に注目し、こうした 集団が、行政のコミュニティ重視政策の中でどのように「メンバー」を決定し、帰属意識を変容 させ、社会的な排除に寄与、もしくは対抗しているのかを明らかにする。

研究会では「排除する社会規範」を地域的(日本、ヨーロッパとアフリカ)かつ概念的に(政

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治学、経済学、社会開発論の立場から)明らかにすることを決定し、各自の分担を確定した。初 年度は、311日以降の福島での放射能問題などを背景に特に、福島をめぐって多くの調査、シ ンポジウムへの関与を行った。こうした成果は研究途中のものが多く、今年度にはその成果を論 文という形で報告することが予定されている。

*これまでに開催している研究会・報告はすべて基本的に一般に開かれている。

2011年度活動詳細

(報告)

1. ヨーロッパにおける問題

416-17日 日仏国際シンポジウム「移民と国境」 於:日仏会館 日仏会館主催

勝俣誠はコーディネーターとして参加した。

浪岡新太郎は「外国人であること」という辛淑玉氏とのパネルの中で、「イスラームと民 主主義」についての報告を行った。このパネルの中で、辛淑玉氏が「在日韓国人」という 存在についてどのような排除を目的とした言説が存在し、そうした言説が日本のナショナ ルアイデンティティの構築とどのように結びついているのかを論じた。これに対し、浪岡 新太郎はフランスにおける「ムスリム」という存在を取り上げ、同じように排除の言説が フランスのナショナルアイデンティティの構築と結びついていることを明らかにしたうえ で、こうした言説を乗り越えていくムスリムの運動について論じた。

723日 移民と社会研究会(宮島 喬 御茶ノ水女子大学名誉教授)共催

「移民の社会的統合と排除」 於:明治学院大学白金校舎3号館

プロジェクトとして共催し、また、浪岡新太郎は「共和国における熟議民主主義」という タイトルで報告を行った。本報告ではフランスのナショナルアイデンティティが共和国モ デルとして、言説の中で構築され、その本質的な他者としてイスラームが描き出される状 況を明らかにするとともに、このような一面的な言説を、言説の実際の多元性に注目する ことで乗り越えようとする試みを紹介し、熟議民主主義の観点から分析した。

913日 ブラジル・セアラ州立大学公共政策大学院 主催 国際シンポジウム

Les communautés musulmanes en Europe après le 11 septembre : confrontation entre deux fundamentalismes

911後のヨーロッパにおけるイスラームコミュニティ:二つの原理主義)

於:セアラ州立大学公共政策大学院

2001911日のアメリカ同時多発テロから10年後に、どのような形でイスラームが 共生不可能な他者として論じられるようになっているのかを、ヨーロッパを対象に論じた。

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その中で、こうした共生不可能な他者としてイスラームが論じられることが、イスラーム の中の強硬派や過激派の活動を支えている状況を明らかにした。

319日 日仏学術交流プログラム CHORUS 主催

地域における外国人支援と排除に関する日仏研究ワークショップ 於:日仏会館

「日仏における排除の問題の比較」浪岡新太郎報告、勝俣誠参加

本報告では、日仏における排除をめぐる言説の諸研究を比較の観点から行うことの意味と その限界について論じた。

2. 日本:福島における問題

620日 「現在福島はどのような状況にあるのか」調査報告会 浪岡新太郎報告、勝俣誠参加(国際平和研究所との共催)

724日 福島大学行政政策学類 西崎准教授を囲んでの研究会

「なぜ福島のこどもは逃げられないのか」(国際平和研究所との共催)

於:明治学院大学白金校舎国際学部共同研究室

浪岡新太郎・勝俣誠参加

725日 福島ママ・キッズお茶&ランチ会を開催した。

於:戸塚区子育て支援施設「とっとの芽」

浪岡新太郎が船田クラーセン・さやか 東京外国語大学大学院准教授のプロジェクト「福 島乳幼児妊産婦対応プロジェクト」に協力する形で行った。

98日 ブラジル・セアラ州立大学公共政策大学院で「福島における放射能後とこども」と いうタイトルで浪岡新太郎が報告を行った。

以上の研究会やお茶会はどれも、福島における放射線汚染というプロジェクト計画時には予測 しなかった出来事に直面する中で、調査を行い、得た調査結果をすり合わせる機会であった。

その成果については今年度より具体的に論文などの形で出したい。以下の論文が今年度刊行予 定のフランス国立科学研究所機関誌Ebisuにレフェリー審査のうえ既に受理されている。この 研究プロジェクトとは別にトム・ギルは福島での調査、研究会を重ねており、今年度は研究プ ログラムの中で相乗効果が出るように各自の研究プロジェクトのすり合わせを行っていきたい。

NAMIOKA Shintaro

«Politics de dédommagement pour les agriculteurs à Fukushima» in Ebisu, Revue de Centre National de la Recherche Scientifique de la France.

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3. 日本:寿町における問題

1029日 日本平和学会秋季研究集会 分科会芸術と平和 (於:広島修道大学)

「寿における<新しい>運動と<古い>運動」

浪岡新太郎報告

122日、3日 「平和研究における芸術アプローチの固有性」 於:明治学院大学横浜校舎

奥本京子 大阪女学院大学国際英語学部 教授 報告 浪岡新太郎、勝俣誠が企画

117日 「寿町における外国人支援団体カラバオの会による学習補助活動」

泉美智子 カラバオの会(聖路加看護大学生・立教大学法学部卒業生)報告 浪岡新太郎、勝俣誠が企画

223 Les activités artistiques à Kotobuki en terme de gentrification ?

(ジェントリフィケーションの観点からの寿町における芸術的活動?)

フランス国立科学研究所 CLERSE 主催 於:リール市文化ホール・ワゼム

227 Les démocraties délibératives et les activités artistiques

(熟議民主主義と芸術的活動)

フランス国立エクサンプロヴァンス政治学院 研究所 CHERPA 主催

於:エクサンプロヴァンス政治学院

浪岡新太郎報告、平山恵参加

これらの研究会、報告はどれも横浜市寿町における排除を促す言説を明らかにすると同時にこ うした言説を批判し、乗り越えようとする試みの一つとして芸術アプローチに注目したもので ある。具体的には、寿オルタナティブネットワークという寿町で活動する団体において参与観 察を行い、報告を行っている。今年度は、さらに活動自体に関与すると同時に、その成果を論 文として、フランス語、日本語、英語で出すことを予定している。

本報告書は、国際学部付属研究所共同研究「『排除する社会規範』を超えたコミュニティづくり」の 中間報告書である。

参照

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