いて、「英語基礎」、「異文化と英語」、「総合英語」と得意な科目が異なり、みなさん言い分 も異なります。「英語基礎」を持ちたい、「総合英語」ばかり教えたいということであった としても、4科目全体が立ち行くよう、どうするべきなのか、ということも同時に考えるこ とが重要だと思います。外国語センターの中でも、大学全体の中でもそうです。全体を考 えてやらなければ、カリキュラムを新しくするというようなことはできないと感じます。
上智大学の実践
「内容言語統合型学習(CLIL) 」が切り拓く大学英語教育の可能性 池田 真
上智大学文学部准教授
1. カリキュラム改革の出発点
今日は、上智大学で 4 月から新しく導入される全学の新カリキュラムの概略について、
How(方法論)にウェイトを置いてお話ししたいと思います。
上智大学の新しいカリキュラムは、危機感から出発しています。上智大学は世間では外 国語教育で名が通っており、確かに国際的な人材を輩出してはいますが、神話に支えられ てきたところがあります。イエズス会が母体になっており、以前はヨーロッパ各国やアメ リカから宣教師であると同時に自分の専門(経済学、法学、文学など)を持つ神父が来て、
それぞれの母語で少人数の授業をしていました。
今でこそ、そういうことは珍しくないかもしれませんが、戦後すぐ、日本に語学の先生 としてのネイティブスピーカーも少ない中で、上智大学では専門授業をそのような教員が 直接教えており、当時の学生たちが本当の意味で語学を身につけたのは事実だと思います。
また、その評判につられて、もともと語学ができる人たちが上智大学に入ってきました。
今でこそどこでもやっている帰国子女の受け入れも、制度的に一定以上の数を受け入れ たのは上智大学が草分けではないかと思います。また、進駐軍の人たちの教育のために英 語で全ての授業を行う学部はずっと前からありましたので、そういう伝統は確かにありま す。しかし、正直な話、今は他の大学とほとんど状況は変わりません。ネイティブスピー カーの先生の比率は他の大学でも上昇しており、特別に上智大学が良い教育をしているか というと、自信がありません。また、大学全体の規模が非常に大きくなり、全学で1万 2000 人の学生がいて、とても昔のようなきめ細かい教育はできません。
現段階で行われている一般教養の英語(全学共通科目としての英語)は、英語初級、英 語中級、英語上級という分け方をしていますが、中身は先生にお任せです。本当にこの教 育でいいのかと、いろいろなところから不満の声は出ており、われわれも新しいカリキュ ラムを立ち上げるに当たり、学生 3500 名への調査、英語全教員へのアンケート調査、社会 的なニーズの調査をしました。
結論を言うと、先生たちは意外と頑張っています。上智大学の先生は一定レベル以上の 先生だと思いますが、学生に現状の英語カリキュラムで満足かという調査をしたところ、5 段階中、平均が 3.7 です。これを高いと見るか低いと見るかは難しく、また先生の教え方 によって個人差が非常にあります。われわれは現カリキュラムのプログラム全体の評価を したつもりでも、学生から見ると先生の授業評価のようになってしまいましたが、3.7 は 悪くないと思います。しかし、「語学の上智」といわれているわれわれは満足できず、当面 の数値的な目標を全学平均満足度 4.0 以上として改革を始めました。
2. カリキュラムの三本柱
新しいカリキュラムを設計するに当たり、三本の柱を考えました。一つ目の柱は、カリ キュラムの中身です。これは実践や研究に裏打ちされた、理念があるものでなければいけ ません。往々にしてあるのは、カリキュラムをつくる人たちの考えだけでカリキュラムを つくってしまうことです。また、学生を顧客と捉えてそれに迎合するのは、理念も何もか も飛んでしまうので、一番やってはいけないことです。もちろん学生たちが学びたいもの は参考にしなければいけませんが、それと大学側の教育的なニーズと、どう折り合いをつ けるかが大切です。それと、きちんとした原理に基づいたものでなければ機能しません。
もちろん、カリキュラムの設計上、実践を積んでいることが非常に大事です。
二つ目の柱は、人事です。上智大学の教員には、テニュア付の専任、任期付の嘱託、非 常勤講師の 3 種類がありますが、新規採用時には CLIL ができる人という条件を必ず明記し ています。いくら良いカリキュラムをつくっても、教える側に知識・関心がなければ困り ます。
三つ目の柱は、研修です。毎月、大変な時間とお金を掛けて研修を行っています。CLIL はヨーロッパのものなので、立ち上げる今年と立ち上げた来年ぐらいはヨーロッパから専 門家を呼び、その他にも、内部の人材を活用した研修を行っています。
先生たちに、われわれの求めている一定レベル以上のことをしてもらうために、カリキ ュラムの設計、人事、研修の三つで、満足度 4.0 以上というプログラム評価を目標にして 行っていきます。
3. グローバル化
グローバル化教育はアジアやヨーロッパなど世界中で行われており、その一つが CLIL です。例えば、日本もグローバル化教育の一つの柱としてバカロレア(IB)を入れようと していますが、世界中で、英語のネイティブスピーカーで理科や社会を教えられる先生の 争奪戦になっているのです。世界もそのように動いてきており、今のところ、日本では英 語は必要ないですが、これから 30~40 年後は分かりません。
よく言われるように、日本の労働人口は減っていくので、外から労働力が入ってこなけ れば今の経済規模は維持できません。また、市場も縮むので、当然、外にもっと打って出 なければいけません。そもそも技術もそうですし、どの分野でも海外の人たちとやってい かなければいけないのです。21 世紀後半になると、今漠然と言われているグローバル化社 会はどんどん進んでいくのではないかと思います。われわれは次世代にその準備をさせて あげなければいけません。
上智大学にも英語に強くない学生はいます。現状ではいろいろな入試制度があり、特に 私立は、なるべく早く定員を確保するために AO 入試や特別入試、公募推薦などを行うので、
学生の学力に大きな差があります。幸いなことに、英語ができる学生もたくさん入ってき ています。しかし、昔に比べると英語のおぼつかない学生も入ってきているので、そうい う学生たちにも力をつけてあげなければいけません。それから、世間には上智大学には国
2. カリキュラムの三本柱
新しいカリキュラムを設計するに当たり、三本の柱を考えました。一つ目の柱は、カリ キュラムの中身です。これは実践や研究に裏打ちされた、理念があるものでなければいけ ません。往々にしてあるのは、カリキュラムをつくる人たちの考えだけでカリキュラムを つくってしまうことです。また、学生を顧客と捉えてそれに迎合するのは、理念も何もか も飛んでしまうので、一番やってはいけないことです。もちろん学生たちが学びたいもの は参考にしなければいけませんが、それと大学側の教育的なニーズと、どう折り合いをつ けるかが大切です。それと、きちんとした原理に基づいたものでなければ機能しません。
もちろん、カリキュラムの設計上、実践を積んでいることが非常に大事です。
二つ目の柱は、人事です。上智大学の教員には、テニュア付の専任、任期付の嘱託、非 常勤講師の 3 種類がありますが、新規採用時には CLIL ができる人という条件を必ず明記し ています。いくら良いカリキュラムをつくっても、教える側に知識・関心がなければ困り ます。
三つ目の柱は、研修です。毎月、大変な時間とお金を掛けて研修を行っています。CLIL はヨーロッパのものなので、立ち上げる今年と立ち上げた来年ぐらいはヨーロッパから専 門家を呼び、その他にも、内部の人材を活用した研修を行っています。
先生たちに、われわれの求めている一定レベル以上のことをしてもらうために、カリキ ュラムの設計、人事、研修の三つで、満足度 4.0 以上というプログラム評価を目標にして 行っていきます。
3. グローバル化
グローバル化教育はアジアやヨーロッパなど世界中で行われており、その一つが CLIL です。例えば、日本もグローバル化教育の一つの柱としてバカロレア(IB)を入れようと していますが、世界中で、英語のネイティブスピーカーで理科や社会を教えられる先生の 争奪戦になっているのです。世界もそのように動いてきており、今のところ、日本では英 語は必要ないですが、これから 30~40 年後は分かりません。
よく言われるように、日本の労働人口は減っていくので、外から労働力が入ってこなけ れば今の経済規模は維持できません。また、市場も縮むので、当然、外にもっと打って出 なければいけません。そもそも技術もそうですし、どの分野でも海外の人たちとやってい かなければいけないのです。21 世紀後半になると、今漠然と言われているグローバル化社 会はどんどん進んでいくのではないかと思います。われわれは次世代にその準備をさせて あげなければいけません。
上智大学にも英語に強くない学生はいます。現状ではいろいろな入試制度があり、特に 私立は、なるべく早く定員を確保するために AO 入試や特別入試、公募推薦などを行うので、
学生の学力に大きな差があります。幸いなことに、英語ができる学生もたくさん入ってき ています。しかし、昔に比べると英語のおぼつかない学生も入ってきているので、そうい う学生たちにも力をつけてあげなければいけません。それから、世間には上智大学には国
際化に対応した人材を供給してほしいという希望があるので、グローバル人材を育成する ことは一つの社会的使命だと捉えています。
4. 「4 つの C」
では、一体グローバル人材とは何なのでしょうか。グローバル化社会に必要なものは「4 つの C」だと捉えています。
一つ目は、Communicate です。もちろん英語だけではなく、いろいろな言語も必要です が、基本的には共通の言語が使えなければ話になりません。言葉だけではなく nonverbal なものもありますが、ある一定レベル以上の知的なことをするには共通言語が必要です。
二つ目は、Compete です。世界的に競争していかなければいけませんが、生き馬の目を 抜くというよりも、切磋琢磨するような感じです。要するに、一つの分野で競合すること により、全体のレベルが上がっていくという意味での競争力が必要だと思います。得意分 野を持ち、国際的な競争力をつける必要があります。
三つ目は Collaborate です。自分たちだけが勝てばいいのではなく、その分野を発展さ せるためには Collaborate する必要があります。他者を理解する、異文化を理解するとい うことがよく言われますが、違う文化、宗教、価値観を持っている人と一緒にやるために は、お互いに尊重しながら、理解しながらやっていかなければいけません。
四つ目は Contribute です。携わっている一つの分野全体の発展に寄与することが、最終 的に人類全体の今後をより良くしていくことにつながっていきます。地球市民意識的なも のです。
「4 つの C」を英語教育の中で具体的に身につけてもらうためにわれわれが必要だと考え る能力は、一つ目は、知識を英語で習得する学習的言語能力(academic language competence)
です。学生は社会や大学院で、それぞれのプロフェッションの中で知識や経験を積みなが ら生きていきます。大学の授業の中で英語で何かを身につける能力があれば、その後の職 業的・知的成長にもつながっていくという考え方です。二つ目は、物事を英語で考察でき る批判的言語能力(critical language competence)です。三つ目は、他人と英語で協働 できる協調的言語能力(collaborative language competence)、そして四つ目は、任務を 英語で遂行できる機能的言語能力(functional language competence)です。この四つの 言語能力を卒業時までに身につけさせるのが最終的な目標です。
5. 新全学英語カリキュラムの構成
新しいカリキュラムで一番重要なのが、1年次必修の Academic Communication という科 目です。これは English for Academic Purposes(EAP)と、今日のお話のメインとなる、
内容と言語を統合する教え方である CLIL が柱となっています。それをベースに、2 年次か ら 4 年次にかけて三つの科目群から選択します。選択科目の一つ目は Academic English 群で、経済学や心理学などの専門分野を英語を通して学びます。English for Specific Academic Purposes といっていいかもしれません。二つ目は、Professional English 群で、
通訳英語やジャーナリズム英語など、ESP(English for Specific Purposes)を学びます。
三つ目は TOEIC やプレゼンテーションなどを学ぶ Practical English 群ですが、今のとこ ろあまり上智大学では重視していません。全国の大学はグローバル化に対応したものとし て TOEIC に飛び付いていますが、あれは形を変えた受験英語で、本屋に行くとテクニック 本ばかりあります。あれが普及して日本人の英語力が高まったという話は聞いたことがあ りませんが、学生のニーズはあります。学生に調査をすると、TOEIC や TOFEL、IELTS など の対策をして、かつ単位も欲しいという意見がたくさん出てきます。われわれは試験準備 講座を提供しますが、単位を与えることは考えていません。単位になるのは Academic English 群と Professional English 群で用意する科目のみです。ただ、実際には、機能的 な英語力としてのメールの書き方、プレゼンテーションの仕方など、ビジネス・イングリ ッシュは必要なので、用意はします。それらを総合してグローバルな英語能力と呼んでい ます。
われわれは筑波大学とは反対に、必修の英語の単位を 8 単位から 4 単位に減らしました。
現状、1 年生、2 年生は週 2 コマずつ 8 単位を必修にしていますが、1 年生は今までよりも きちんとした方法論に則し、密度を濃くします。やりたくない人は 1 年生の 4 単位で終わ りです。今までも、上智大学に入ってきて英語を身につけたい、もっとやりたいという学 生がたくさんいたのですが、教室や先生の数の問題があり、開講コマ数も決まっていて、
どんなにやりたくても英語は 8 単位しか履修できなかったのです。今後はそうではなく、
上智大学に入ってきて英語をやりたい学生たちには、卒業単位にならなくても、もっと取 らせるようにしたいと思ったのです。2 年生の必修単位をなくすことにより、Professional English 群、Academic English 群、Practical English 群の選択科目を大量に開講できる ようになったのです。
最終的に、われわれは英語カルテのようなものを作ろうと思っています。1~4 年次と履 修してきて、4 年生の段階で「この学生にはこういう能力がある」という一種の can do statements のようなものです。例えばプレゼンテーションだったら、この学生はこのぐら いのレベルのことができる、アカデミックなエッセイだったらこのぐらいのレベルのもの が書けるなど、一目で見て、どういう英語の能力が身に付いているかを、学習的言語能力、
批判的言語能力、他人と英語で協働できる協調的言語能力、任務を英語で遂行できる機能 的言語能力の四つのカテゴリーをさらに細分化した中で示します。現在、構想はあるので すが、細かいところはできていないので、3 年後ぐらいにお話しできると思います。
1 年次の目標は「英語で学び考える academic bilingualism の習得」で、Academic Communication I(EAP)と Academic Communication II(CLIL)を行います。春学期は週 に 90 分 2 コマで EAP を行い、そこで学んだ一般的なアカデミック・イングリッシュのスキ ルを基に、秋学期からコンテントを使って科目を学びます。2~4 年次にかけては、Academic English 科目、Professional English 科目、Practical English 科目の三つの科目群から 自分の興味、あるいは必要に応じて取りたいだけ取り、取りたくなければ取らなくてもよ いという形です。最終的に、卒業後に就職する学生は英語で企画、提案、解決する能力を 身につけ、研究・進学する学生は知識、技能を磨く、調査をする能力を身につけることに なります。入学したときから卒業してからのことを考えたプログラムになっています。
三つ目は TOEIC やプレゼンテーションなどを学ぶ Practical English 群ですが、今のとこ ろあまり上智大学では重視していません。全国の大学はグローバル化に対応したものとし て TOEIC に飛び付いていますが、あれは形を変えた受験英語で、本屋に行くとテクニック 本ばかりあります。あれが普及して日本人の英語力が高まったという話は聞いたことがあ りませんが、学生のニーズはあります。学生に調査をすると、TOEIC や TOFEL、IELTS など の対策をして、かつ単位も欲しいという意見がたくさん出てきます。われわれは試験準備 講座を提供しますが、単位を与えることは考えていません。単位になるのは Academic English 群と Professional English 群で用意する科目のみです。ただ、実際には、機能的 な英語力としてのメールの書き方、プレゼンテーションの仕方など、ビジネス・イングリ ッシュは必要なので、用意はします。それらを総合してグローバルな英語能力と呼んでい ます。
われわれは筑波大学とは反対に、必修の英語の単位を 8 単位から 4 単位に減らしました。
現状、1 年生、2 年生は週 2 コマずつ 8 単位を必修にしていますが、1 年生は今までよりも きちんとした方法論に則し、密度を濃くします。やりたくない人は 1 年生の 4 単位で終わ りです。今までも、上智大学に入ってきて英語を身につけたい、もっとやりたいという学 生がたくさんいたのですが、教室や先生の数の問題があり、開講コマ数も決まっていて、
どんなにやりたくても英語は 8 単位しか履修できなかったのです。今後はそうではなく、
上智大学に入ってきて英語をやりたい学生たちには、卒業単位にならなくても、もっと取 らせるようにしたいと思ったのです。2 年生の必修単位をなくすことにより、Professional English 群、Academic English 群、Practical English 群の選択科目を大量に開講できる ようになったのです。
最終的に、われわれは英語カルテのようなものを作ろうと思っています。1~4 年次と履 修してきて、4 年生の段階で「この学生にはこういう能力がある」という一種の can do statements のようなものです。例えばプレゼンテーションだったら、この学生はこのぐら いのレベルのことができる、アカデミックなエッセイだったらこのぐらいのレベルのもの が書けるなど、一目で見て、どういう英語の能力が身に付いているかを、学習的言語能力、
批判的言語能力、他人と英語で協働できる協調的言語能力、任務を英語で遂行できる機能 的言語能力の四つのカテゴリーをさらに細分化した中で示します。現在、構想はあるので すが、細かいところはできていないので、3 年後ぐらいにお話しできると思います。
1 年次の目標は「英語で学び考える academic bilingualism の習得」で、Academic Communication I(EAP)と Academic Communication II(CLIL)を行います。春学期は週 に 90 分 2 コマで EAP を行い、そこで学んだ一般的なアカデミック・イングリッシュのスキ ルを基に、秋学期からコンテントを使って科目を学びます。2~4 年次にかけては、Academic English 科目、Professional English 科目、Practical English 科目の三つの科目群から 自分の興味、あるいは必要に応じて取りたいだけ取り、取りたくなければ取らなくてもよ いという形です。最終的に、卒業後に就職する学生は英語で企画、提案、解決する能力を 身につけ、研究・進学する学生は知識、技能を磨く、調査をする能力を身につけることに なります。入学したときから卒業してからのことを考えたプログラムになっています。
6. CLIL とは
ここからは上智大学にスペシフィックなものというよりも、日本の全ての大学、中・高 等学校、小学校も含めての英語教育、それから英語だけではなく、初習言語といわれるフ ランス語、ドイツ語、さらに言うと、母語である日本語での教育にも関わってくる話にな ります。
私はヨーロッパ生まれの CLIL という教育を日本の小学校から大学にまで普及させよう としていますが、その一つの情報発信源として CLIL Japan というウェブサイトがあり、講 演会、ワークショップなどの情報を載せています。CLIL は、例えていうとヨーロッパのブ ランド品のように、教育におけるクオリティを追求するものだと考えています。
CLIL には三つの側面があります。一つは、教科科目・トピックの学習、二つ目は外国語 の習得、三つ目は学習スキルの訓練です。私の定義では、教科を語学教育の方法により学 ぶことで効率的に深いレベルで習得することができ、英語を学習手段として使うことで実 践力を伸ばし、学習スキルの向上も意図されているものです。一番重要なのは、さまざま な教育原理・技法を有機的に統合することで高品質な授業の実現を目指すことです。正直 言って、CLIL は良いとこ取りです。今までに良いとされた教育原理・実践は何でも入れて しまっています。ただ、個々の寄せ集めではなく、一つ一つがきちんとつながり、補い合 って学習効果を生み出すようになっています。
7. 理論上の位置づけ
英語教育の中には、EFL(English as a foreign language)、簡単に言うと、教室でしか 英語を学ばない学習環境があります。そのような状況では Structure-based(文法構造)
が絶対に必要で、伝統的に文法訳読やパターン・プラクティス的な Audiolingualism が使 われてきました。
それから、よく「コミュニカティブな英語教育」と言いますが、日本での実態は PPP
(Presentation-Practice-Production)といわれるものがほとんどです。最初に文法のポ イントを教え、口頭で繰り返したり、ドリルで学習したりして、最後に言葉をつくり出す もので、ペアやグループで新しく学んだ構造を使ってやりとりします。
その反対に位置するのが ESL(English as a second language)です。英語を第 2 言語 として使ってい る人たちが 英語圏に 身を置き、教室 で身につける ことが 多いです。
Submersion、もっと分かりやすく言うと sink or swim の環境です。英語が使えなければ生 き残れない環境で、溺れてしまうか、頑張って泳いで生き残るかという原理です。
その中間の一つに Immersion があります。カナダのフランス語圏の学校で、英語で理科 や社会を学ぶことによって英語の力をつけたり、英語圏の学校でフランス語のプログラム でカリキュラムを学び、フランス語を身につけたりするものです。日本でも Immersion の 学校は幾つかあります。
CLT(strong)や TBI(Task-based instruction)は、例えば、地球温暖化について解決 策を調べるなど、みんなでディスカッションするというタスクを与え、言語を使っていく ことです。
よくある質問は、Immersion は教科を英語で学習することで英語を身につけるもので、
CBI(Content-based instruction)も教科内容的なものやトピックを使って英語を身につ けるものだと聞くが、それらと CLIL との違いは何かということです。これに答えるのは難 しくて簡単です。一般論では、何か似ているものがあるとすると、外部の人は大体同じも のとして認識します。例えば、東京出身者と金沢出身者がいたとして、われわれ日本人は 言葉のアクセントや食べ物などで違いが分かりますが、外国人から見ると同じ日本人です。
それと同じで、この三つは、教科的なものを使い、外国語で学ぶという意味では同じなの です。しかし、私は内部の人間なので違いを重視します。典型的な類型でいうと、Immersion はネイティブスピーカーの教科の先生(subject teacher)がその科目を教えているのです。
逆の言い方をすると、あまり言語的なことは教えず、ただ英語で授業をしているだけです。
Immersion が教科教育なのに対し、CBI は語学教育です。これはネイティブの先生、非ネ イティブの先生もいますが、基本的に語学教育なので、例えば、地球温暖化を扱っている としても、本気で地球温暖化について学ばせたり、それについて考えを深めることはあま りしません。英語を教える材料として使っています。
CLIL はその中間で、教科もきちんと身につけ、語学的なものもきちんと教えて、身につ けさせるという両方を目指しています。ヨーロッパでは基本的に CLIL の先生は非ネイティ ブの教科の先生です。
8. CLIL の普及と問題
ヨーロッパではほとんどの国で CLIL が行われています。特にスペイン、オランダではほ とんどの地域で行っています。イタリアはまだ始めたばかりですが、高校最後の 2 年間は 必ず英語で科目の授業を受けなければいけないことになっています。オランダやスペイン ではカリキュラムの多くを英語でやってしまう学校もあります。学校、地域、国によって 違いますが、CLIL が使われるのはヨーロッパ全体の現象です。
CLIL が広がった理由にはトップダウン式とボトムアップ式の両方があります。トップダ ウンというのは EU の政策です。共通の地域となり、人、金、サービスなどが簡単に行き来 できるようになって、共通の言語が必要になりました。しかし、英語の授業数を増やすに も、どこの国もぎりぎりでカリキュラムを組んでいるので、いまさら英語の授業を増やせ ないということで、教科を英語で教えればいいのではないかということになったのです。
しかし、私はそれ以上に重要だと思っているのはボトムアップ式です。いったん CLIL をや りはじめると、非常にいい教育ができるようになり、今までの教え方に戻れないという先 生が出てくるのです。その二つの理由から広まったのです。
問題は、これが CLIL の良いところであり悪いところでもあるのですが、人によって何を もって CLIL と言うかが違うことです。ある人は英語で行えば CLIL だと言うし、ある人は もっと細かく決まっていると言います。私は CLIL の専門家に会うたびに必ず “What is CLIL to you?” と質問しています。すると、言語と教科を教える methodology(方法論)
だと言う人、もっと広くとらえて approach だという人、一種の fusion/synergy で 1+1 を 3 にするようなものだと言う人、あるいは、体系的な学習や考え方、態度の問題、教育 そのものと言う人などもいて、さまざまです。
よくある質問は、Immersion は教科を英語で学習することで英語を身につけるもので、
CBI(Content-based instruction)も教科内容的なものやトピックを使って英語を身につ けるものだと聞くが、それらと CLIL との違いは何かということです。これに答えるのは難 しくて簡単です。一般論では、何か似ているものがあるとすると、外部の人は大体同じも のとして認識します。例えば、東京出身者と金沢出身者がいたとして、われわれ日本人は 言葉のアクセントや食べ物などで違いが分かりますが、外国人から見ると同じ日本人です。
それと同じで、この三つは、教科的なものを使い、外国語で学ぶという意味では同じなの です。しかし、私は内部の人間なので違いを重視します。典型的な類型でいうと、Immersion はネイティブスピーカーの教科の先生(subject teacher)がその科目を教えているのです。
逆の言い方をすると、あまり言語的なことは教えず、ただ英語で授業をしているだけです。
Immersion が教科教育なのに対し、CBI は語学教育です。これはネイティブの先生、非ネ イティブの先生もいますが、基本的に語学教育なので、例えば、地球温暖化を扱っている としても、本気で地球温暖化について学ばせたり、それについて考えを深めることはあま りしません。英語を教える材料として使っています。
CLIL はその中間で、教科もきちんと身につけ、語学的なものもきちんと教えて、身につ けさせるという両方を目指しています。ヨーロッパでは基本的に CLIL の先生は非ネイティ ブの教科の先生です。
8. CLIL の普及と問題
ヨーロッパではほとんどの国で CLIL が行われています。特にスペイン、オランダではほ とんどの地域で行っています。イタリアはまだ始めたばかりですが、高校最後の 2 年間は 必ず英語で科目の授業を受けなければいけないことになっています。オランダやスペイン ではカリキュラムの多くを英語でやってしまう学校もあります。学校、地域、国によって 違いますが、CLIL が使われるのはヨーロッパ全体の現象です。
CLIL が広がった理由にはトップダウン式とボトムアップ式の両方があります。トップダ ウンというのは EU の政策です。共通の地域となり、人、金、サービスなどが簡単に行き来 できるようになって、共通の言語が必要になりました。しかし、英語の授業数を増やすに も、どこの国もぎりぎりでカリキュラムを組んでいるので、いまさら英語の授業を増やせ ないということで、教科を英語で教えればいいのではないかということになったのです。
しかし、私はそれ以上に重要だと思っているのはボトムアップ式です。いったん CLIL をや りはじめると、非常にいい教育ができるようになり、今までの教え方に戻れないという先 生が出てくるのです。その二つの理由から広まったのです。
問題は、これが CLIL の良いところであり悪いところでもあるのですが、人によって何を もって CLIL と言うかが違うことです。ある人は英語で行えば CLIL だと言うし、ある人は もっと細かく決まっていると言います。私は CLIL の専門家に会うたびに必ず “What is CLIL to you?” と質問しています。すると、言語と教科を教える methodology(方法論)
だと言う人、もっと広くとらえて approach だという人、一種の fusion/synergy で 1+1 を 3 にするようなものだと言う人、あるいは、体系的な学習や考え方、態度の問題、教育 そのものと言う人などもいて、さまざまです。
私は日本語でする授業も、英語でする授業も基本的に CLIL 形式で行いますが、日本のい ろいろなところに CLIL 的なものを広げていくには、一つの方法論に落とし込んでいかなけ れば、なかなか伝わりません。そういう意味で、実際の教室での実践や教員研修などでは methodology と見なしています。
2009 年にケンブリッジ大学出版局から出た『CLIL:Content and Language Integrated Learning』が CLIL のバイブルです。また、これから CLIL について学ぶのであれば、私が 書いた『CLIL(クリル)内容言語統合型学習:上智大学外国語教育の新たなる挑戦』の第 1巻、第 2 巻を読んでいただければ、原理的なことが書いてあります。
9. CLIL の「4 つの C」
CLIL はグローバリズムの「4 つの C」を有機的に統合しています。一つ目は Content(科 目)、二つ目は Communication(言語)、三つ目は、最も CLIL らしい Cognition(思考)で、
多角的に物事を捉える、きちんとした理由づけをもって発言するというものです。四つ目 の Community(Culture)(協学)は、協働学習や地球市民意識です。
Communication において、CLIL を行う先生は、レッスン・プランの段階、教材を準備す る段階、実際に教える段階でも常に三つのことを頭に置いています。一つ目は Language of learning(単元の言語)です。一つの単元を学ぼうと思ったときに絶対に落としてはいけ ない用語、概念、発音、文法を徹底的に身につけさせます。二つ目は Language for learning
(学習のための言語)で、教科に依存せず、英語で学ぶときには共通して必要な言語的な 知識やスキルです。例えば、discuss、argue、conclusion という単語はどの科目でも絶対 に必要です。ライティングでは introduction、body、conclusion で書けるスキルが必要に なります。結論のときには、to conclude や、in conclusion などの表現も必要ですが、そ ういう言葉を Language for learning という言い方をします。
三つ目は Language through learning(偶発的・繰り返しの言語)です。繰り返しとい うのは、Language of learning や Language for learning を他の授業でもどんどん使って いくことです。偶発的というのは、絶対にこの生徒のこれを直さなければいけない、みん なに伝えなければいけないということをうまくすくい取って、全体に教えることです。従 って、ただ単に Language といっても、非常に細かいところまで考えて授業を行います。
よく使われる有名な Bloom の Taxonomy という、思考力の6段階モデルがありますが、そ こで思考力は LOTS と HOTS に分けられます。LOTS(Lower Order Thinking Skills)は暗記 する、理解する、それを応用する力です。日本の伝統的な教育はこの三つの力を重視し、
実際に入試でも問われます。暗記力、理解力がなければ何もできないので重要です。ただ、
日本の生徒は応用力がない、実践力がないと言われるのは、ここでとどまっているからで す。CLIL は LOTS よりも HOTS(Higher Order Thinking Skills)を重視しています。HOTS は客観的に分析したり、自分で基準を設けて評価する力、新しいことをつくり出す力、解 決策を考える力です。CLIL ではいろいろなタスクを考えますが、そのときに必ずこの六つ の力のどれになるのかを考えてつくっていきます。
実際の教室ではペアワークやグループワークがとても多いです。その中で言葉を使って やりとりできない人が、違う文化で、違う言語を話すいろいろな価値観を持った人たちの
中に入って何かできるわけがないのです。小さな教室からコミュニティが形成され、そこ でコミュニケーションを取って、何とかすることが大事だという考え方です。それを広げ ると地球市民的な意識になっていきます。
10. CLIL の特徴
CLIL には10 大指導原理があります。内容学習と語学学習の比重は1:1です。教科書だ けではなく、オーセンティックな素材(新聞、雑誌、映像、ウェブサイトなど)を使いま す。また、文字だけではなく、数字やデータをよく使います。六つのいろいろな思考力を 使います。タスクを多く与える Task-based です。そして、協働学習を重視し、異文化理解 や国際問題の要素を取り入れます。それから、サポート(scaffolding)です。ただ単に教 えっぱなしではなく、一つの概念を理解させるためにいろいろ質問をして理解させたり、
基本的には英語ですが、必要に応じて日本語で説明することも scaffolding です。また、4 技能をバランス良く統合して使ったり、学習スキルの指導を行ったりすることです。
CLIL はスマホのようなものです。今まではガラケー、インターネット、デジタルカメラ、
音楽プレーヤー、ゲーム機は単体でありましたが、これらを一つにできたところがスマホ の付加価値です。スマホの一つ一つの技術は特別ではないけれど、それらが一つに収斂さ れたところが素晴らしいために世界中に広まったと言われています。CLIL もそうです。
CLIL の内容はどこかで聞いたことがあるものが多いかもしれませんが、それを今まで申し 上げた原則や「4 つの C」でパッケージ化しているのが CLIL です。
CLIL はグローバル教育そのものといってもいいでしょう。CLIL は、アメリカの 21世紀 型スキル(思考の方法(Cognition)、働き方(Communication)、市民性(Community)、ICT に関するリテラシー(Content))を全部カバーしています。CLIL の第 2 言語習得上の利点 は、動機づけが高まること、意味のある豊かなインプットが与えられること、英語で何か を学ぶのでインターラクションを行う必然性が生まれること、深い思考を伴うので記憶に 定着しやすいこと、聞く・読む・話す・書くを有機的に統合できることです。
11. CLIL の成果
現在、埼玉県立和光国際高校 2 年生に週 3 時間 CLIL 授業を行って 4 年目になります。生 徒に「CLIL 授業は他の授業に比べて密度が濃いですか」「より考えていますか」「異文化理 解的なものが入っていますか」「国際問題が入っていますか」「内容の知識が付きましたか」
など10 問の質問をして 5点満点で回答してもらったところ、5点中 4 以上が6問と授業満 足度が非常に高いです。言語的なものは自己評価なので、読解力についての質問は 3.8点、
リスニング力についての質問は 3.6 点と少し低いですが、少なくとも「高品質・高密度の 授業」という目標は達成できていると思います。
CLIL で英語力がどれだけ付くのかという研究は世界的に行われていますが、CLIL は始ま ってから日が浅いため、研究の層が薄いです。用語がつくられたのは1994 年ですが、実際 にヨーロッパで広まりを見せたのは 2003 年以降なので、たかが10 年です。教育評価はコ ンテクストに依存するので、先生が違えば結果が変わる、生徒が違えば結果が変わるなど、
中に入って何かできるわけがないのです。小さな教室からコミュニティが形成され、そこ でコミュニケーションを取って、何とかすることが大事だという考え方です。それを広げ ると地球市民的な意識になっていきます。
10. CLIL の特徴
CLIL には10 大指導原理があります。内容学習と語学学習の比重は1:1です。教科書だ けではなく、オーセンティックな素材(新聞、雑誌、映像、ウェブサイトなど)を使いま す。また、文字だけではなく、数字やデータをよく使います。六つのいろいろな思考力を 使います。タスクを多く与える Task-based です。そして、協働学習を重視し、異文化理解 や国際問題の要素を取り入れます。それから、サポート(scaffolding)です。ただ単に教 えっぱなしではなく、一つの概念を理解させるためにいろいろ質問をして理解させたり、
基本的には英語ですが、必要に応じて日本語で説明することも scaffolding です。また、4 技能をバランス良く統合して使ったり、学習スキルの指導を行ったりすることです。
CLIL はスマホのようなものです。今まではガラケー、インターネット、デジタルカメラ、
音楽プレーヤー、ゲーム機は単体でありましたが、これらを一つにできたところがスマホ の付加価値です。スマホの一つ一つの技術は特別ではないけれど、それらが一つに収斂さ れたところが素晴らしいために世界中に広まったと言われています。CLIL もそうです。
CLIL の内容はどこかで聞いたことがあるものが多いかもしれませんが、それを今まで申し 上げた原則や「4 つの C」でパッケージ化しているのが CLIL です。
CLIL はグローバル教育そのものといってもいいでしょう。CLIL は、アメリカの 21世紀 型スキル(思考の方法(Cognition)、働き方(Communication)、市民性(Community)、ICT に関するリテラシー(Content))を全部カバーしています。CLIL の第 2 言語習得上の利点 は、動機づけが高まること、意味のある豊かなインプットが与えられること、英語で何か を学ぶのでインターラクションを行う必然性が生まれること、深い思考を伴うので記憶に 定着しやすいこと、聞く・読む・話す・書くを有機的に統合できることです。
11. CLIL の成果
現在、埼玉県立和光国際高校 2 年生に週 3 時間 CLIL 授業を行って 4 年目になります。生 徒に「CLIL 授業は他の授業に比べて密度が濃いですか」「より考えていますか」「異文化理 解的なものが入っていますか」「国際問題が入っていますか」「内容の知識が付きましたか」
など10 問の質問をして 5点満点で回答してもらったところ、5点中 4 以上が6問と授業満 足度が非常に高いです。言語的なものは自己評価なので、読解力についての質問は 3.8点、
リスニング力についての質問は 3.6 点と少し低いですが、少なくとも「高品質・高密度の 授業」という目標は達成できていると思います。
CLIL で英語力がどれだけ付くのかという研究は世界的に行われていますが、CLIL は始ま ってから日が浅いため、研究の層が薄いです。用語がつくられたのは1994 年ですが、実際 にヨーロッパで広まりを見せたのは 2003 年以降なので、たかが10 年です。教育評価はコ ンテクストに依存するので、先生が違えば結果が変わる、生徒が違えば結果が変わるなど、
いろいろな変数があり、いろいろなデータが蓄積されていかなければ、なかなか一般化で きません。ヨーロッパでも CLIL を受けた人の方が英語の力も科目の力も付いているという いろいろな研究がありますが、例えば、同じ学校内で、母語で受ける授業と、CLIL を学べ るとします。そこで英語力や科目力を見ると、絶対に CLIL の方がいいのですが、当たり前 です。なぜかというと、CLIL を選ぶ生徒たちはもともと英語に興味を持っていたり、家庭 がそれなりに教育熱心だったりするので、初めのスタートが全然違うのです。これはリン ゴとオレンジを比べるようなもので、あまり意味がないのです。
私が行った研究では、4 月段階でのクライテリオンを使ったエッセイライティングの和 光国際高校のスコアは、アメリカの高校 2 年生に合わせたネイティブの試験を使っている ので、6 点中 2点と低い点数を取った生徒が最も多いですが、1年後の 3 月には 3点を取っ た生徒が最も多くなっています。しかし、問題点は生徒たちが CLIL の授業だけをしている わけではないことです。他の英語の授業も受けていますし、学校の外でも自分たちで英語 を勉強しているので、これが CLIL の授業の成果とは言えません。
CLIL にはタイプがあり、ヨーロッパ型は Hard CLIL です。科目教育として行い、カリキ ュラムに組み込まれていて定期的に行われる CLIL で、基本的に英語で授業を行います。
日本型は Soft CLIL です。基本的に英語の先生が英語教育の中で行います。単発的に 1 時間することもあるでしょうし、授業の一部として行われることがあるかもしれませんし、
英語と日本語を混ぜているかもしれません。大学では Hard CLIL ができると思います。上 智大学の語学教育の中で行っていく CLIL は中間的なものになるのではないかと思います。
12. CLIL 活用の可能性
CLIL の活用性としては、小・中・高・大における英語教育が挙げられます。今の学習指 導要領には、どの科目でも言葉の機能を活用させるとあります。従って、小学校の先生の 研修をするときには、英語と関係ありませんが、全教科での言語活動をテーマに CLIL で行 うことがあります。
大学における外国語での専門科目は、それぞれの学科の先生が行います。実は、日本語 での授業も CLIL で行うと非常にいい授業ができます。その他、例えば、スーパー・サイエ ンス・ハイスクールなどで、理科の授業を英語ですることにも使えます。
日本語での CLIL に関する出版物には『CLIL:新しい発想の授業』という本もあります。
それから、大修館書店の『英語教育』の昨年6月号で CLIL 特集が組まれ、実例や報告があ り、情報源も書いてあるので、もし興味があれば見てください。
それから、ウェブの INTERNATIONAL CLIL RESEARCH JOURNAL で、上智大学の他、高校、
小学校で具体的なデータを取り、英語で書かれた論文を収録した「日本特集」が組まれて います。
13. 高校での CLIL 実習
昨日、スーパー・サイエンス・ハイスクールの都立高校で教員研修を行ったことを簡単 に説明します。高校1年生の新指導要領には「科学と人間生活」というものがありますが、
それを CLIL で行うとどうなるかを実践した後で研修してもらいたいという要望を受けま した。そこで私は多くの生徒が英検 2 級を持っている高校の1年生に対して、英語で授業 を行い、その後、先生たちに今話したことも含めて講演をしました。
最終的に教えるのは熱の伝導についてですが、CLIL なので、最初にそもそも家電を英語 で何というかという話をします。エアコンは Air conditioner、ストーブは Gas heater、
ホットカーペットは electric carpet と普通の英語の授業のようなことを行い、それを分 類して考えることで CLIL 的になります。この段階では LOTS を使います。
この授業の目 的は三つの 伝導なの で、エアコンと ホットカーペ ットな どを熱伝導
(conduction)、対流(convection)、ふく射(radiation)と分類し、それが Transfer of heat energy だと教えるのです。それを行った上で、テキストを生徒に読ませて、理解で きたか確認するために、時には文法訳読もさせました。CLIL の Language of learning で は、conduction と convection と radiation の三つだけはこの授業で絶対に身につけさせ ないといけないので、語源的な説明をしたり、発音させたりして覚えさせます。
その理解が定着したか確認するために、別の暖房器具を見せると、生徒はみんな答えら れます。electric heater は radiation、gas fan heater は convection、wood-burning stove
(まきストーブ)は radiation、カイロ(pocket warmer)は伝導(conduction)です。
それから、床暖房は理想的ですが、なぜみんな入れないのかという話や、エアコンは他 の電化製品に比べて何で安いのかということを考えていきます。このあたりはデータに基 づいて長所と短所を評価(evaluation)し、頭を使うものになるので、HOTS の段階になっ てきます。
最後に宿題として、自分の将来の家では何を使うかということで、私だったらこれを使 う、それはこういう理由で、熱の伝わり方としてはこうですというライティングに持って いきます。CLIL では、ライティング・フレーム、スピーキング・フレームという言い方を しますが、フレームを与えて、それを使ってやっていきます。単なる入れ替え練習になっ てしまうといけないので、それプラス自分のことを書かせたりもします。このように熱の 伝導を扱い、かつ、英語教育をしっかりやっていくことが具体的な CLIL の授業です。
小学校から大学まで、いろいろな形があると思いますが、今までのものと全部入れ替え るということではなく、別のチョイス、あるいは付加するものとして、こういうやり方も できるということです。これを日本語、英語、あるいは他の言語でやることが具体的なグ ローバル教育なのです。