• 検索結果がありません。

意味用法別観点から見た第二言語としての格助詞「に」の使用調査

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "意味用法別観点から見た第二言語としての格助詞「に」の使用調査"

Copied!
15
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

静岡大学留学生センター紀要 第 4号

意味用法別観点から見た第二言語としての格助詞「に」の使用調査

――ブラジル人幼児2名の事例による予備的調査 ―

   美 津 子

 旨】

本稿では、ブラジル人幼児2名の発話資料 を基 に、格助詞 「に」の発達過程 を明 らかに す るための予備的調査 を行つた。意味用法別観点か ら、(1)「に」の初出時期、(2)「に」

脱落 (「

)のみが観察 され る時期の有無、(3)誤りの特徴 について調査 した(1)。 結果 は、(1)意味用法の違いによつて「に」の初 出時期 にも違いが見 られた。比較的早期 に使 用 されたのは「存在場所」「存在以外 の場所」の「に」であつた。(2)多くの用法で、「に」

が出現す る以前 に、「」のみが観察 され る時期があつた。「場所」な どの用法で 「に」が 使用 され始めてか らも、意味用法が異なる場合 には、「に」を使 えない時期が存在 した こと が確認 された。(3)意味用法の違いによつて、誤 りの種類や特徴 に違いが見 られた。特 に、

「存在以外の場所」は、期間を通 じて「」の割合が高 く、代用の誤 りの種類 も多かつた。

キー ワー ド】

第二言語習得、格助詞 「に」、意味用法、発達過程、ブラジル人幼児 1. は じめに

本稿 は、 ブラジル人幼児2名 (男Y、 女児K)から得 られた縦断的発話資料 を基 に、

第二言語 (L2)としての格助詞 「に」の発達過程解明を目指 して行 つた予備的調査であ る。ある言語 を母語(Ll)と して習得す る幼児には、言語能力の発達段階(developmental stages in first language acquisition)が あることが知 られている。また、L2習得の場合 にも発達段階があ り、学習者のLlの違いに拘 らず、発達段階 には類似 した点が多い こと も明 らかにな りつつ ある とい う (白畑・冨 田・村野井 。若林1999、 Lightbown&Spada

1999)。 「に」の意味用法 には、場所、授受の相手、動作 目的な ど複数あ り、他の格助詞 に 比べ多岐 に渡 つてい る (小││・林他1982、 益岡・田窪1987)。 そのため、L2学習者の「に」

の発達過程解明にあたつては、異なる意味用法 ごとに 「に」の使用状況 を把握す る必要が ある と思われ る。そ こで、本稿では、意味用法別の観点か ら「に」の使用状況 を調査 し、「に」

の出現時期や誤 りに何 らかの違いが見 られ るのか、また、違いがある とすれば、 どの よ う な特徴や傾向が見 られ るのかな どについて予備的調査 をす ることにした。

2.先行研究概観

まず、Ll先行研究 について述べ る。先行研究の うち、発達段階あるいは発達過程 に言 及 している研究 には、永野 (1959)、 横 山 (1989a、 1989b)、 自畑 (2001)な どがある。横 (1989a)は、幼児1名10ヶ月か ら3歳3ヶ月までの観察記録 を基 に、様々な助詞 に ついて、正用 と誤 りの出現時期、使用 回数な どを調査 した。そ して、助詞の習得 には「(第

(2)

一段階)全く助詞が使 えない段階」「(第二段階)限られた発話の中で助詞 を正 しく使 うこ とのできる段階」「(第二段階)正用だけでな く、 しき りと誤用 も行 う段階」「(第四段階)

全ての助詞が正 しく使 える段階」がある と報告 している。また、 自畑 (2001)はLl幼

児の連体修飾構造 に関わ る格助詞 「の」の発達過程 について、次の よ うに述べている。最 初 に、「の」が発話 されない段階 (発達段階一)力あ り、次 に、「の」が発話 され 「名詞+

の十名詞」が出現す るが、同時 に、正用 と並行 して、形容詞が名詞を修飾す る場合 にも過 剰 に「の」を使用す る誤 りが生 じる段階 (発達段階二)がある。最後 に、「の」の過剰使用 が消失 し、正 しく「の」が使用できる段階 (発達段階三)力ある としている。 これ らの研 究ではいずれ も、まず、義務的生起文脈 (Obligatory Cntexts,OC)で 格助詞が発話 されな い段階がある点、次 に、格助詞が出現 し始めるものの、正用だけでな く誤 りも観察 され る 段階がある点で共通 している。

次 に、L2先行研究について述べ る。 これまで、 日本語の格助詞 に関す る研究は数多 く されてお り、「に」 に関す る報告 も多い (松田・斎藤 1992、 久保 田1994、 福間1996、 松本

1998、 迫 田2001、 野 田・迫 田・渋谷・小林2001)。 「に」の正用率や難易度な どが、意味用 法や述語の違いな どによつて異なる とい う報告 もある (八1996、 生 田・久保 田1997、 2000)。 しか し、これ らの多 くは、横断的調査 による資料 に基づ くもの、研究の主 目的が 誤用分析であるもの、複数の格助詞の使用状況 を調査 した ものな どであ り、縦断的調査 に よつて 「に」の発達過程の様子 を詳細 に記 した ものや、発達段階 について述べている研究 はそれほ ど多 くない と思われ る (久2003)。

L2学習者を縦断的に調査 し分析 した ものには、松本 (2000)、 久野 (2003、 2004)な がある。松本 (2000)は 中国人児童1名を対象 に、来 日2〜 100週目に得 られた発話資料 や作文資料か ら、使用 された助詞の種類や用法 を調査 した(2)。 観察期間の対象児の年齢 は 9歳4ヶ月か ら11歳 3ヶ月 に相 当す る。松本 (2000)の発話資料の分析 による と、意味用 法別 の「に」の出現時期は、早い順 に「存在の場所」(13週)、「動作の起 こる時間」(22週)、

「到達場所」(24週)、「最初 (最)にあつた場所」(49週)、「動作のゴール」(60週)、「受 身の動作主」(75週)、「状態動詞の主語」(79週)、「目的」(81週)、「役割」(100週)であつ た。 これ に対 し、「好意・悪意の出 どころ」「使役の動作主」「決定 した事項」「強い対比」

の「に」は観察期間内に発話 されなかつた とい う。また、誤 りについては、「に」が「で (動 作場所)」 「を (移動の範囲)」 の代用 として使用 されている例や、本来 「に (存在場所)」

を使用すべ き箇所で 「の」が使用 されている例な どが報告 されている。松本 (2000)の 果か らは、「に」 とい う一つの格助詞で も、意味用法が異なることによつて、「に」が使用 され始める時期 に違いがあることが うかがえる。ただ し、松本 (2000)で は、用法の異な る 「に」が初出以降、いつ頃、 どの程度使用 されているかな どの詳細 は記 されてお らず、

また、格助詞が脱落 した発話は分析 の対象 に合まれていない。そのため、「に」の発達過程 の詳細 は明 らかではない。脱落 を誤 りの一つであると捉 えている研究や、発達段階の基準 として捉 えている研究は多い (横1989a、 松 田・斎藤1992、 久保 田1994、 自畑2001)こ とか ら、格助詞の発達過程 を調査す るには、格助詞が脱落 した発話 も調査対象 として扱 う ことが必要であると思われ る。

久野 (2003)はブラジル人幼児2名18ヶ月間の発話データを基 に、場所 を表す「に」

(3)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

「で」 について発達過程の様子を記 している。 この うち 「に」 に関 しては、最初 にOCで

「に」が発話 されない段階が観察 され、次 に、正用 「に」が出現す るものの、同時 に「に」

脱落や他の助詞 による代用の誤 りも混在す る段階が観察 されていた。しか し、久野 (2003) で調査対象 とした「に」は「存在場所」のみであ り、他 の用法 に関 しては明 らかではない。

また、久野 (2004)は、ブラジル人女児1名18ヶ月間の発話資料 を基 に、様々な格助詞 の使用状況 を調査 した。「に」 に関 しては、比較的早期か ら、「に」力`正用 あるいは他 の格 助詞の代用 として多 く使用 されていた ことが明 らか となつた。誤 りとしては、「に」の脱落、

「に」の過剰使用、そ して代用 による誤 りな どが観察 された。そ して、「に」の代用 として 用い られた助詞の種類は多岐 にわたつていた。 しか し、久野 (2004)で調査 した 「に」は 意味用法 を考慮 していないため、意味用法が異なる場合 には、誤 りの傾 向に違いがあるの か、OC内において、まず「に」力`発話 されない時期があるのかな ど、明 らかでない点が多 い。 これ らの問題点を踏 まえ、本稿では (1)に示す点 を主要課題 としたい。

(1)本稿 の主要課題

a。 意味用法の違いによつて、「に」の出現時期 に違いが見 られ るのか。

b。 異なる意味用法ごとに、「に」の出現以前 に、OC内でまず 「に」の発話のない表 現が観察 され るのか。

c.意味用法の違いによつて、誤 りにも何 らかの違いがあるのか。 もしあるとすれ ば、 どの よ うな違いなのか。

以下では、 これ らの課題 について調査 してい く。

3口 「に」の意味用法

本稿では、「に」の意味用法を表 1のよ うに分類 した(小II・林他1982、 寺村1982)。 (Aa) の「存在場所」は「ある」「いる」な どで表現 され るもの、(Ab)の「存在以外の場所」は、

「座 る」「入 る」「置 く」な どで表現 されるものの場合である。(Ba)の「授受な どを行 う相 手」 には、「与 える」表現 (例:「あげる」「くれ る」「見せ る」な ど)の他、「受 ける」表現 (例:「もら う」「借 りる」な ど)も合む (寺1982)。 また、補助動詞 として用い られ る「〜

てあげる」「〜て もら う」な どの表現 も (Ba)に合める。(Bb)の「動作や態度の向けられ る相手」 とは、「会 う」「言 う」な どで表現 され る場合である。

本稿では調査対象 としなかった用法 もある。1つ目は、「公園に行 く」の よ うに行先や方 向を表す 「に」である。 この場合、「に」は 「へ」の意味用法 とも重な り、「に」 と「へ」

はほ とん ど区別無 く使われ るためである (小川・林他1982、 益 岡・田窪1987)。 2つ目は、

「茶碗がば らば らに割れた」の ように、「ば らば らに」が結果の状態を示すのか、あるいは 副詞的修飾語であるのか、その区別がつ きに くい場合である (寺1982).3つ目は、「私 には車がある」の よ うに「所有」を表す場合である。この場合、「私 は車がある」 と表現す ることも可能であ り、また、一般的な 日本語 の初級テキス トで も、「に」を用いない表現が 見 られ る (石沢・豊 田1998)。 この ことか ら、対象児達か ら「所有」の 「に」が発話 されな かつた場合、それ らが正用法、会話 における省略、理解できない ことによる脱落のいずれ

(4)

であるのか判断 しに くい と考 え、

る。「時」について も、「〜 とき」

本稿では対象外 とした。

「に」の意味用法

本稿では対象外 とした。

「〜ごろ」のように「に」

4つ目は 「時」を表す用法であ の使用が任意のものがあるため、

意 味 用 法

(A)場

a。 存在場所

b.存在以外 の場所

(B)相

a.授受な どを行 う相手

b.動作や態度の向けられる相手

(C)変化結果

a.変える結果

b。 なる結果

(D)目

(E)受身文の動作主体

(F)使役文の動作主体

(G)基準や志向対象

(H)原

教室 に学生がいる。

教室 に入る。

友達 に手紙 を送 る。/母に手紙 をもらう。

人 に会 う。

息子 を医者 にす る。

水が氷 になる。

遊びに行 く。

先生 に呼ばれた。

子供 に宿題 をさせた。

注 目に値する。

恋 に悩む。

4.観   4‑1  対象児

対象児は久野 (2003、 2004)の対象児 と同様、ポル トガル語 をLlとす る、ブラジル人 幼児2名 (男Y、 女児K)である。彼 らはブラジルで生まれ、その後、Y児が約2歳

K児が約 1歳の時、両親 と共 に来 日した。父親 は片言の 日本語 しか話せず、母親 は全 く日 本語が話せなかつたため、家族間での会話は全てポル トガル語で行われていた。Y児4 7ヶ月、K児3歳6ヶ月の時、静岡県掛川市内の保育園に入園 した。入園当時、彼 ら は 日本語が全 く話せず、園内のブラジル人の友達 との会話では、ポル トガル語 を使用 して いた。幼児のL2学習者は語彙量や話の流暢 さ等の点では成人 に劣 るが、文法の核 となる 部分においては、既 に言語 を一つ獲得 している状態の学習者であると言われている(Crain&

Lillo‐Martin 1999)。 実際、入園翌月 に収集 した対象児達の会話 を調査 した ところ、例 えば 人称 による動詞の変化、動詞の未来形や命令形な どの複雑な活用 に関す る誤 りは観察 され た ものの、 日常会話 は話せていた ことか ら、本稿では彼 らは既 にLlを獲得 していた もの とみな した。性格 はY児は恥ずか しが りやで、K児は非常 に明る く活発であつた。

4‑2  観察方法

対象児達が保育園に入園 した直後 の2000年 4月 20日か ら、両親 と共 に帰国す る直前の 2001年12月 25日まで観察 を行い、最初の1年 6ヶ月間に得 られた資料 を分析対象 とした。

(5)

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

これはYが4歳7ヶ月か ら6歳 lヶ月まで、Kが3歳6ヶ月か ら5歳Oヶ月までの期間 に 相当す る。観察 は筆者が原則 として1週間に1度保育園を訪問 し行つた。 1回につ きY、

Kそれぞれ約60分間、発話や状況等 を記録 した。同時 に発話 は全てテープに録音 し、後 に 文字化 した。

調査項 目は、表1に示 した (A)〜 (H)の意味用法で用い られた発話である。本稿で は、「に」が正 しく発話 されているものだけでな く、「に」力`他 の助詞 によつて代用 されて いるものや、「に」が脱落 した もの も調査対象 とした。「に」の用法の うち 「存在以外の場 所」では、「ここ座 る」のように会話場面で「に」が省略 され ることもある(益岡・田窪1987)。

この用法で、仮 に対象児が 「に」 を発話 しなかつた場合 には、それが 「に」の使用 を理解 した上での省略なのか、あるいは理解せず に脱落 してい るのかを判断す ることは難 しい。

そのため、会話場面で省略可能 な 「に」 については、調査対象か ら外す方が適 当である と も考 え られ るが、実際に母語話者が、 どの意味用法の場合 に どの程度 「に」 を省略 してい るのかは、調査 してみなければ分か らない。したがって、本稿では、「存在以外の場所」も 調査対象 に合めるが、 この用法 は会話では一般 に「に」が省略可能である とい う前提のも

とに調査 をす ることにした。

5.観察結果 と考察

調査 の結果、観察期間内に観察 されなかつた意味用法があった。それ らは、Y児では「目 的」「基準や志向対象」「原因」「受身文の動作主体」、K児では「使役文の動作主体」「基準 や志向対象」「原因」であつた。以下では、これ らを除 く用法の「に」について結果 を記す。

2はYの結果、表3はKの結果である。「に」が脱落 しているものは便宜上 「」で表 した。表 中の数字は発話回数である。各月の発話が、「」や代用 による誤 りを合 めて 6 回以上観察 された場合 には、( )に%を記 した。一は発話が観察 されなかつた ものである。

表 中の、例 えば 「*が→ に」 とは、誤つて 「が」を使用 しているが、本来は 「に」を使用 すべ きことを示す。また、Y児の「なる結果」には「ん」も観察 されたが、「〜 になる」は

「〜んなる」 と発話 されることもあるため (鈴 1978)、 本稿では 「ん」 も正用 とみな し た。

以下では、両児の結果について、(la)〜 (lc)であげた課題に沿つて見ていく。

2 Y児の意味用法別の「に」の使用状況 (A― a) Y児 の 「存在場所」

滞 在 月 数     4  5  6  7  8  9  10  11  12  13  14  15  16  17  18

(品)3

12    6 (80) (100)

50 89

82 53 50

3 (20)

1    3 (11) (25)

2 (20)

18 47 50

*は→ に ‑ 1(8) 

*レ ヽ=>に ‑ 2(17) 

(6)

(A― b) Y児 の 「存在以外 の場所」

滞在月数 4    5    6    7    8    9    10   11   12   13   14   15   16   17   18

3(品)お

(え)ル

85(∴)こ

(品)(品)温

λル Ь

 ttЪ

濫 あ

1     1     3 (9)  (14)  (20)

3333

(17)  (13)  (8)   (7)

1 (3) 2

(5) 1

*は―■こ (14)

3 (8) 1     1     1

(7)(3)(14)

*へ→ に

*て卜→ に ‑ 1(3)             ‑ 1(2)

*を■→に ‑ 1(4) ‑ 1(2)

*ん→ に ‑ 2(9)    

*│こ の→│こ      ‑ 1(4) 

(B― a) Y児の 「授受な どを行 う相手」

滞在月数 45678910 15   16   17   18

‑2‑3‑ ‑ 5(56) 4 5(63)

‑ 4(44) 1 3(37) (B一 b) Y児 の 「動作や態度 の向 け られ る相手」

滞在月数 45678910

‑  2  2  3  ‑  2  ‑

‑1‑11

(C一 a) Y児 の 「変 える結果」

滞在月数 4567 13   14   15   16

‑3 ‑ 1(17)2(11) 

)温

1)1 3。

:の

*レ ヽ→に

*│こ→ φ ‑ 1(5) 

(C一b) Y児 の 「なる結果」

滞在月数 4   5   6 14   15

3    4

(43)  (36)

9 (69)

‑ 6(55)    ‑ 1(8)

2湯

)お 23 )

*に―→φ 1  ‑

(7)

静 岡大学留学生セ ンター紀要 4号

(F) Y児の 「使役文の動作主体」

滞在月数 4567

3 K児の意味用法別の「に」の使用状況 (A― a) K児 の 「存在場所」

滞在月数 4   5   6 12   13    14   15   16

1    3

23

2磁

)洗)織)品)a)一 2

(6)

9    18

(75)  (95)

3品

)温)お:)ル3)温)温:)温:)

29

*で→ に

*へ→ に ‑ 2(17)  ‑1(7)一

*が=→│こ ‑1(7)一

(A―b) K児 の 「存在以外の場所」

滞在月数 4    5    6    7    8    9    10   11   12   13   14   15   16   17   18

:の

:)こ)温)温)滉)あ:)温)あ1)浩 :)こ:)a:)̀:)

22   57    7    21   15   12   12   32   15   13   19   50 (48)  (89)  (70)  (75)  (65)  (29)  (55)  (68)  (58)  (48)  (49)  (66)

11

*で→ に

1 (1) 1

(2) 1

*が一→に (4)

*^、 ―→に ‑1(2)一 ‑1(4)一

*にへ→ に   。一 ‑5(11)一

*は→ に   ‑1(4)一

*の

  ‑1(4)一

*z螢│こ 1(4)一

*に

  ‑5(11)一

*から→ に ‑1(3)一

*い― に ‑1(2)一

*│こ に→ に = 1(4)一 1(3)一

(8)

(B― a) K児 の 「授受 な どを行 う相手」

滞在月数 45678 14   15 17   18

25

50

9    8 (75)(80)

10   11 (91) (73) 10

(83)

25

*が│こ ‑ 2(25)    

*の→ に      ‑ 1(8) (B一 b) K児 の 「動作や態度の向けられる相手」

滞在月数 45678910 16   17   18

‑1 ‑ 1(17)一

‑111 ‑ 5(83) 3

(C― a) K児 の 「変 える結果」

滞在月数 4567 10   11   12

2 (9) 1     2     1

(4)  (20) (12)

12   13   22    8    7

(100)(100) (96) (80) (88) 5(品)̀% 4 

α

:。 (為)

*に→ φ ‑ 1(4)

(C一 b) K児 の 「な る結果」

滞在月数 4   5   6 13   14   15   16

‑ 1(8)    

11    9    9 (85)  (90)  (75)

73

*に― φ 1     1    3

(8)  (10)  (25)

27

(D) K児 の 「目的」

滞在月数 4567 16   17   18

1 7(100 1

  ‑  1

(E) K児の 「受身文の動作主体」

4567

滞在月数

(9)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

5‑1  『に」の初 出時期

各意味用法 における「に」の初出時期 を見てみ る。Y児の場合、早い順 に、「存在場所」

(5ヶ月 日)、 「存在以外の場所」「動作や態度の向けられ る相手」(7ヶ月 日)、 「変 える結 果」(11ケ 月 日)、 「なる結果」(15ヶ 月 日)、 そ して「授受な どを行 う相手」(16ヶ 月 日)で

ぁった (3)。 「使役文の動作主体」では「」は観察 されたが、「に」は観察 されなかつた。

一方、K児の場合、早い順 に、「存在場所」「存在以外 の場所」(7ヶ月 日)、 「動作や態度の 向け られ る相手」「授受な どを行 う相手」「変 える結果」(8ヶ月 日)、 「なる結果」 (12ヶ 月 )、 「目的」 (14ヶ 月 日)、 そ して 「受身文の動作主体」 (15ヶ 月 日)であつた。両児 に共 通 していた点は (2)の通 りである。

(2)「に」の初 出時期 に関す るY児K児の共通点

a.「存在場所」「存在以外の場所」では、比較的早期 に 「に」が観察 されていた。

b.「変 える結果」 と「なる結果」はいずれ も「変化結果」であるが、「変 える結果」

の 「に」の初出時期の方が早 く、「なる結果」はそれ よ り4ヶ月遅かつた。

c.「目的」「受身文の動作主体」「使役文の動作主体」では「に」の初出時期が遅い か、あるいは 「に」が観察 され ることはなかつた。

これ らの結果の うち、(2a)と (2c)については、松本 (2000)の対象児 における発 話資料 の場合 と類似 している。松本 (2000)の結果では、「存在場所」の「に」の出現時期 は、他の用法 に比べて最 も早期 (来13週)であつた。また、松本 (2000)では 「受身文 の動作主体」「目的」の「に」は比較的遅 く (それぞれ75週81週)観察 され、「使役文の 動作主」の 「に」は観察期間中には使用 されていなかつた。本稿の結果 も、K児の場合 に は 「受身文の動作主体」「目的」の 「に」の出現時期は比較的遅 く (それぞれ15ヶ月 日と 14ヶ月 目)、 Y児の場合 には、 これ らの用法で 「に」は観察 されなかつた。そ して、「使役 文の動作主」の 「に」は、Y児K児のいずれか らも観察 されなかつた。松本 (2000)の 対象児は中国語 をLlとする小学生であ り、本対象児達 とはLlも年齢 も異なるが、比較 的早期 に使用 され易い意味用法や、逆 に、使用 され に くい意味用法が共通 していた ことは、

興味深い点だ と思われ る。 しか し、意味用法が異なることによつて、なぜ 「に」の出現時 期 にも違いが生 じるのか については、今後解 明すべ き課題である。

5‑2  「に」が発話 されない時期の有無

各意味用法 において、「に」が使用 され る以前 に、OC内で「 」が観察 されているか ど うか見てみ る。OC内で 「」が最初 に観察 された時期 と「に」の初 出時期 を記 した もの が表4(Y児)と5(K児)である。

4 Y児の「」の観察時期 と「に」の初出時期 (〜ヶ月日)

     グ喜     化 使役文

動作主

存 在 存在以外 授 受 動・ 態 変 える な る

5 5 7 5 7

5 7 16 7

(10)

5 K児の「」の観察時期 と「に」の初出時期 (〜ヶ月日)

まずY児の場合 について述べ る。Y児は、全ての意味用法 において、「に」が観察 され る 以前 にOC内で「」のみが観察 され る時期があつた。「存在場所」では、「に」 と「 はいずれ も5ヶ月 日に観察 されたが、「」の方が「に」よ りも8日早 く観察 されていた。

「存在以外の場所」「動作・態度の向けられる相手」「変 える結果」「なる結果」では 「 が観察 されてか ら2〜4ヶ月後 に、「授受な どを行 う相手」では 「 」が観察 されてか ら

9ケ月後 に「に」力`観察 された。次 に、K児の場合、「動作・態度 の向け られ る相手」「変 える結果」では「 」のみが観察 され る時期はなかつた。 しか し、「存在場所」「存在以外 の場所」「授受な どを行 う相手」「なる結果」「目的」「受動文の動作主体」では、まず「 のみが観察 され、その2〜4ヶ月後 に正用 「に」が観察 された。両児の「 」のみが観察

されていた時期の発話例 を (3)(4)に記す。(3)は Y児の発話例、(4)は K児の発話 例である。例 中の 〈 〉内は発話時の様子、(に)は筆者が補 つた もの、例 の末尾 の ( ) 内は発話時期である。

(3)Y児の発話例

a.「動作・態度 の向けられ る相手」

意地悪 をす る子 に対 して〉

b.「授受な どを行 う相手」

*テイッシュ シホちやん (に)

c.「使役文の動作主」

*せんせい (に)ゆ―つちゃつた。 (6ヶ 月 日)

いっこ あげる。 (13ヶ 月 日)

高 く積 んだ積木 を倒 させて欲 しい〉 *ぼ (に)おして や らせて。

(17ヶ 月 日)

(4)K児の発話例

a.「授受な どを行 う相手」

滑 り台を独 り占め してい る子 に〉 *ヤンカちゃん (に)かして。

(5ヶ月 日)

b.「なる結果」

*ヤンくんも みずぼうそ う (に)なつちゃつた。 (1lヶ月 日)

c.「受身文の動作主」

*だつて せんせい、つこ、お こら一る、せいせい (に)おこられ る。

(13ヶ 月 日)

」のみが観察 されていた時期 に、彼 らは「に」とい う音形 を全 く知 らなかつたか と

         

目的 受身文

存 在 存在外 授 受 動・態 変 える な る 動作主

5 5 5 10 10 9 10 13

「 に 」 7 7 8 8 8 14

(11)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

言 えば、必ず しもそ うではない。なぜな ら、彼 らは5〜7ヶ月 目に 「存在場所」あるいは

「存在以外の場所」 として、正用 「に」を使用 していたか らである。 しか し、5〜7ヶ 日以降であつて も、Y児の場合 には、例 えば、「授受な どを行 う相手」の7〜14ヶ月 日、「な る結果」の10〜 14ヶ月 日に、また、K児の場合 には、「なる結果」の9〜 1lヶ月 日、「目 的」の10〜 1lヶ月 日に、「」のみが観察 され る時期があつた。また、会話場面で一般 に「に」の省略が可能 とされ るのは、本稿で扱 った意味用法の うち 「存在以外の場所」だ けであ り、それ以外 のものに関 しては、彼 らが 「に」 とい う音形 を耳 にす る機会 はあつた と考 え られ る。 これ らの点を考慮すれば、彼 らは 「に」 とい う音形 の存在 に気づ きなが ら も、異なる意味用法の当該箇所で「に」を使 うことができなかつた と推測 され る。したがつ て、全ての場合 とは限 らないが、異なる意味用法 ごとに、まず 「に」が使 えない段階があ るのではないか と予想 され る。

5‑3  誤 りの種類 と特徴

両児の誤 りには、「」、他の助詞 による代用 の誤 り、そ して、本来 「に」を必要 としな い箇所で 「に」を使用す る過剰使用 の誤 りな どが見 られた。Y児K児の誤 りの種類 を記

した ものが表6である。

6 Y児K児の誤 りの種類

誤 りを種類 ごとに見てい くと、まず、「」の誤 りは、両児 とも全ての意味用法で観察 されていた。Y児の場合、特 に「存在以外 の場所」で「」が多 く観察 され、その割合 は 7ヶ月 日に「に」が出現 してか らも、毎月70%以上であった。また、Y児は この他 にも「存 在場所」「授受な どを行 う相手」な どで、観察期間を通 じて 「」の割合が比較的高かっ た。一方、K児の場合 にも、Y児同様「存在以外 の場所」での「」の割合が比較的高 く、

15ヶ月 日以降で も毎月30〜40%台であった。

次 に、代用 の誤 りについては、代用 として使用 された助詞の種類の数が、意味用法 によつ て異なっていた。助詞の種類が最 も多かったのは、両児共 に 「存在以外の場所」であ り、

Y児は 「は、へ、で、を、ん、 にの」の6種類、K児は 「は、へ、で、 を、の、が、い、

にへ、にを、か ら」の10種類であった。これ に対 し、他の意味用法では、代用の助詞の種 類が少ないか、あるいは、観察 されなかつた。

過剰使用 の誤 りは、Y児では「変化結果」の用法で、K児では「変化結果」「存在以外 の 場所」の用法で観察 された。「変化結果」では、例 えば「かわい くなる」や 「音 を小 さくす る」 とすべ き箇所で、「*かわいいになる」「*小さいにす る」の よ うに「に」 を使用す る発

  変化結果

目 的 受 身 使 役

存 在 存在以外 授 受 動 態 変 え な る

Y児 φ、は 、

レヽ φ、は、へ、で、を、ん、にの φ φ φ、い 過剰

φ

過剰 φ

K児 φ、へ 、

、 が

φ、は、へ、で、を、の、が、

い、にへ、にを、から、過剰 φ、

が、の φ

φ、

過 剰 φ、

過剰 φ φ

(12)

話が観察 された。以下に代用や過剰使用の誤 りの発話例を記す。 (5)

K児の発話例である。

(5)Y児の代用や過剰の誤 りの発話例

a.*こっち こっち すわつて こつちは (→)。

b.*お―ちた、 したで (→)。

c.〈 ミサイルが〉*マイちやんを (→ あた りま―す。

d.〈カセ ッ トテープの音の大きさを〉*ちいさいに(→φ)する。

Y児の、(6)は

(8ヶ月 日) (10ヶ月 日)

(16ヶ月 日)

(15ヶ月 日)

(6)K児の代用や過剰の誤 りの発話例

a.*かわいいに (→φ なつちゃつた。      (12ヶ 月 日)

b.〈紙 を牛乳の中に入れなが ら〉*こ こにを (→)い れて、これ を…これ をね、

ん とね、や つて、はいつてませ ん。       (14ヶ 月 日)

c.*ママね ここにに (→)ね つめたい ことお り (氷)を いれた。

d.〈絵本 を見なが ら〉*おいけが (→ はまつちゃつた一ね。

(17ヶ月 日)

(18ケ月 日)

以上の ことか ら、意味用法の違い によつて、誤 りの傾 向にもい くらか違いが見 られ るこ とが分かつた。両児共 に、「変 える結果」「動作や態度の向け られ る相手」な どでは、期間 を通 じて誤 りが比較的少なかつた。これ に対 し、両児共 に、「存在以外の場所」では「 の割合が高 く、代用 の誤 りの種類 も多かつた。この よ うに、「存在以外 の場所」で多 くの誤

りが観察 された一因 としては、 この用法では 「入 る」「座 る」「置 く」な ど様々な動詞が用 い られ ることや、会話場面で 「に」が省略 され る場合が多い ことな どか ら、対象児達が、

本来使用すべ き格助詞が何なのか明確 には認識できていなかつた可能性が考 えられる(4)。

6.おわ りに

本稿の課題 ((la)〜 (lc))について、主な結果 をま とめる。まず、課題 (la)

に関 しては、意味用法の違いによつて「に」の初出時期 にも違いが見 られた。「に」の初出 時期 は両児共 に、「存在場所」「存在以外の場所」では比較的早かつたのに対 し、「目的」「受 身文の動作主体」「使役文の動作主体」では比較的遅いか、あるいは「に」が観察 されなかつ た。また、「変化結果」では、両児共 に「変 える結果」 と「なる結果」 とで 「に」の初 出時 期 に差があ り、「なる結果」の方が4ヶ月遅かつた。次 に、課題 (lb)に関 しては、OC

内で「に」が出現す る以前 に「」による表現が、Y児の場合 には全ての意味用法で観察 され、K児の場合 には「動作や態度 の向け られ る相手」「変 える結果」を除 く用法で観察 さ れた。両児共 に、正用 「に」は場所 を表す用法 として5〜7ヶ月 日に観察 されていた こと か ら、「に」とい う音形の存在 には早期か ら気づいていた と思われ る。しか し、様々な意味 用法のOC内で「」のみが観察 され る時期が確認 された ことか ら、対象児達 は「に」と い う音形 を知 つてはいた ものの、それ を当該箇所で使用できない時期があつた と考 え られ る。最後 に、課題 (lc)に関 しては、意味用法の違いによつて、誤 りにもい くらか異な

(13)

静岡大学留学生セ ンター紀要 4号

る傾 向が見 られた。両児共 に、期間を通 じて誤 りが少なかつたのは「変 える結果」「動作や 態度の向けられ る相手」であ り、 これ らは観察期間の終わ り頃には、誤 りも観察 されな く なつた。これ に対 し、期間を通 じて比較的誤 りが多かつたのは「存在以外の場所」であ り、

」の割合が高 く、代用の誤 りの種類 も多かつた。この用法では、使用 され る動詞 の種 類 も多 く、会話場面で 「に」が省略 され ることも多い。そのため、対象児達 は、本来使用 すべ き格助詞が何なのか、明確 には認識で きていなかつた可能性 も考 え られ る。

今後 は、 日本人母語話者が会話場面で 「に」 を どの程度省略 しているのか、また、Ll

転移 の影響の可能性が どの程度 あるのかな ども考慮 しなが ら、意味用法の異なる 「に」 に ついて、それぞれの発達段階をより詳 しく調査 してい く必要があると思われ る。

)表記 に関 して、 当該文脈での不適格 な表現 には (*)を付 した。

(2)松本 0000)は 助詞の分類方法に関して、Jorden and Noda(198η ′″απωα T力ιQクο力ιπ L″τ Part,1,2,3、及び筑波ランゲージグループ(1992)の SグあπαJ n″εあπα′

励 απωι VOl.1,2,3を 参考にしたと述べている。

(3)ここでは、Y児の「なる結果」で観察 された「ん」は考慮 していない。以下でも同様 である。

14)「に」を使用すべきことを認識 した上で省略 していた可能性 も考えられるが、それが どの程度の割合であったのかについては把握できない。

参考文献

(1)Crain,s,&Lillo‐Martin,D。 (1999)4π fπηグοπ′θLグηg%お ′θT力ο′り απグ ニαηg%α″∠θσ%お夕あπ.Oxford:BLACKWELL.

(2)福間康子 (1996)「作文か ら見た初級学習者の格助詞 「に」の誤用」『九州大学留学生 センター紀要』第8号 pp.61‑74

(3)久野美津子 (2003)「ブラジル人幼児の場所表現 「に」 と「で」の習得過程」『 日本語 教育』117号 pp.83‑92

14)久野美津子 (2004)「第二言語 としての日本語格助詞の習得過程解明をめざして下ブラ

ジル人幼児の事例における予備的調査―」『静岡大学留学生センター紀要』第3号 pp.

15‑‐ 30

(5)生田守・久保 田美子 (1997)「上級学習者 における格助詞 「を」「に」「で」習得上の間 題点――助詞テス トによる横断的研究か ら一―」『 日本語 国際セ ンター紀要』第7号 pp.17‑34

16)今井洋子 (2000)「上級学習者 における格助詞 「に」「を」の習得― 「精神的活動動詞」

と共起す る名詞 の格 とい う観点か ら一」『 日本語教育』105号 pp.51‑59

(7)石沢弘子・豊田宗周 (監)(1998)『 みんなの日本語初級 I本冊』ス リーエーネ ッ ト ワーク

(8)久保田美子 (1994)「2言語 としての 日本語の縦断的研究―格助詞「を」「に」「で」

「へ」の習得過程について一」『 日本語教育』82号 pp.72‑85

表 5 K児 の「 *φ 」の観察時期 と「に」の初出時期 (〜 ヶ月日 ) まず Y児 の場合 について述べ る。 Y児 は、全ての意味用法 において、「に」が観察 され る 以前 に OC内 で「 *φ 」のみが観察 され る時期があつた。「存在場所」では、「に」 と「 *φ 」 はいずれ も 5ヶ 月 日に観察 されたが、「 *φ 」の方が「に」よ りも 8日 早 く観察 されていた。 「存在以外の場所」「動作・態度の向けられる相手」「変 える結果」「なる結果」では 「 *φ 」 が観察 されてか ら

参照

関連したドキュメント

(Construction of the strand of in- variants through enlargements (modifications ) of an idealistic filtration, and without using restriction to a hypersurface of maximal contact.) At

Using general ideas from Theorem 4 of [3] and the Schwarz symmetrization, we obtain the following theorem on radial symmetry in the case of p > 1..

The main purpose of this paper is to extend the characterizations of the second eigenvalue to the case treated in [29] by an abstract approach, based on techniques of metric

By an inverse problem we mean the problem of parameter identification, that means we try to determine some of the unknown values of the model parameters according to measurements in

用 語 本要綱において用いる用語の意味は、次のとおりとする。 (1)レーザー(LASER:Light Amplification by Stimulated Emission of Radiation)

Kilbas; Conditions of the existence of a classical solution of a Cauchy type problem for the diffusion equation with the Riemann-Liouville partial derivative, Differential Equations,

The linearized parabolic problem is treated using maximal regular- ity in analytic semigroup theory, higher order elliptic a priori estimates and simultaneous continuity in

7.1. Deconvolution in sequence spaces. Subsequently, we present some numerical results on the reconstruction of a function from convolution data. The example is taken from [38],