Kobe Shoin Women’s University Repository
Title
中間言語と言語変異 : KY コーパスを使った「を」格ゼロマ
ーク化の分析
Interlanguage and Variation: Zero-marking of (o) in
KY Corpus
Author(s)
松田 謙次郎(Kenjiro Matsuda)
Citation
Theoretical and applied linguistics at Kobe Shoin,
No.4:57-76
Issue Date
2001
Resource Type
Bulletin Paper / 紀要論文
Resource Version
URL
Right
KYコ
ー パ ス を使 っ た 「を 」 格 ゼ
中 間 言 語 と言 語 変 異:
ロ マ ー ク化 の 分 析*
松田 謙次郎
o) in KY
Interlanguage
and Variation: Zero-marking
of (
Corpus
Kenjiro Matsuda
AbstractRecent surge in variationist analysis of interlanguage variation (Bailey &
Preston (1996)) blazed a way for a detailed analysis of variable
con-straints in L2 acquisition. An interesting possibility here is a
correla-tion between the language varieties (L1 / L2 acquisicorrela-tion, L1 variacorrela-tion)
and the distinction between universal constraints and
language-particular constraints. This paper analyzes a zero-marking of (o)
(Mat-suda 1995, 2000) in Japanese speech by Korean L2 speakers using the
KY Corpus. While zero-making of (o) in Tokyo Japanese involves both
a language-universal constraint (morpho-syntactic form of the object NP)
and language-particular constraints (adjacency between the object NP and
零本 稿 の 執 筆 に 当 た っ て は
,平 成12年 度 日本 学 術 振 興 会 科 学 研 究 費 補 助 金(基 盤 研 究(B)1課 題 番 号11480052!「 現 代 日本 語 の 音 声 ・意 味 ・文 法 ・談 話 に お け る 変 異 と 日 本 語 教 育 」(研 究 代 表 者:日 比 谷 潤 子)を 受 け て い る 。 ま た 、 本 稿 の 内 容 は2000年9月 に 慶 庶 大 学 で 開 催 さ れ た 上 記 プ ロ ジ ェ ク ト の 研 究 発 表 会 で の 口 頭 発 表 に 基 づ く も の で あ る 。 当 日 フ ィ ー ドバ ッ ク を 下 さ っ た 方 々 に 感 謝 し た い 。 Tんεo'弓ε'`cα1αη4ノηフρ1∫e4L融8痂∫諺ゴc3αfκbわ83んo'η4,57ご76,2001.
the verb, and speech style), a quantitative analysis of the L2 speech found the language-universal constraint as the only significant factor. Moreover, its distribution showed a clear correlation with the speakers' proficiency level. In particular, the difference between lexical NPs and pronouns is already evident in mid-level L2 speakers, suggesting an important role played by the language-universal constraint both in the L2 acquisition and the Ll variation. 近 年Bailey&Preston(1996)に 見 られ る よ う に 、 変 異 理 論 的 枠 組 み に よ る 中 間言 語 変 異 の 分 析 が 盛 ん に な って 来 つ つ あ る 。 第2言 語 習 得 とい う観 点 を取 り入 れ る こ と に よ り、 制 約 条 件 の あ り よ う に つ い て 第 1言 語 習 得 、 第1言 語 変 異 や 言 語 普 遍 性 ・個 別 言 語 の 特 殊 性 と組 み 合 わせ た仮 説 設 定 が 可 能 に な る。 本 稿 で はKYコ ー パ ス を 用 い て 韓 国 語 母 語 話 者 の 日本 語 発 話 に見 られ る 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 現 象 の 分 析 を 行 い 、 松 田(1995,2000)に 報 告 さ れ て い る 第1言 語 変 異 と の 比 較 を試 み た 。 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 に は 、 言 語 普 遍 的 要 因(目 的 語 名 詞 句 形 式 差)と と も に 、 日本 語(東 京 語)個 別 的 な 要 因(目 的 語 名 詞 句 と動 詞 の 隣 接 性 、 ス タ イ ル 差)も 絡 む が 、KYコ ー パ ス の韓 国 語 母 語 話 者 デ ー タ の 分 析 か ら は 、 この う ち 目 的 語 名 詞 句 形 式 差 の み が 統 計 的 に有 意 な 要 因 と して検 出 され た 。 さ ら に 日本 語 習 熟 度 別 の分 布 か らは 、習 熟 度 の 上 昇 に従 って 、 この 要 因 の レベ ル の 分 布 が 母 語 話 者 の そ れ に接 近 す る と い う傾 向 が 認 め られ た 。 と りわ け 普 通 名 詞 〉∫代 名 詞 と い う 差 は 、す で に 中 級 レ ベ ル か ら習 得 さ れ て い る事 実 は 、 第1言 語 変 異 と 第2言 語 習 得 に お け る 言 語 普 遍 的 要 因 の 役 割 とい う点 か ら大 い に 注 目 に 値 す る 。 1.は じ め に 方 言 接 触 、 ピ ジ ン ・ク レオ ー ル 化 現 象 な どが 如 実 に示 す よ う に 、 言 語 変 異 が 異 な る言 語 シス テ ム と の 接 触 に よ り引 き起 こ さ れ る こ と も あ る こ と は 周 知 の 事 実 で あ る 。 しか し異 言 語 シス テ ム と の 接 触 と い うの で あ れ ば 、 第 二 言 語 学 習 者 が ター ゲ ッ ト と な る 言 語 に 接 触 し、 そ の 文 法 体 系 を 習 得 す る 過 程 も異 言 語 シ ス テ ム との 接 触 と して 捉 え る こ と が で き る は ず で あ る 。 言 語 体 系 を揺 れ を含 ん だ もの と して と ら え 、 揺 れ を 支 配 す る 文 法 を 日常 言 語 の 分 析 を 通 して 明 らか に して い こ う と し て い た の が 変 異 理 論(VariationTheory)で あ る な ら ば 、 当 然 こ う した 第 二 言 語 習 得 の 途 上 で 現 れ る変 異 現 象 に は 、 う っ て つ け の パ ラ ダ イ ム と な る(Bailey&Preston
中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ーパ ス を使 っ た 「を 」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 分 析 59 (1996))。 近 年 中 間言 語(interlanguage)と して 注 目 を浴 び つ つ あ る こ の よ う な 言 語 体 系 の研 究 は 、 言 語 接 触 現 象 と し て 一 般 化 す る こ とで 、 ピ ジ ン ク レオ ー ル 現 象 を 初 め とす る各 種 言 語 接 触 現 象 と の 差 異 と類 似 性 な ど を も絡 め た 、 肥 沃 な 変 異 研 究 の リサ ー チ プ ロ グ ラ ム へ と繋 が っ て行 く こ と に な る わ け で あ る 。 こ う し た 問 題 意 識 の 下 に 、 本 稿 で は 韓 国 語 母 語 話 者 の 発 話 コ ・一パ ス を 用 い て 、 特 定 日本 語 文 法 変 異 に見 られ る諸 制 約 が ど の よ う に彼 らの 中 間言 語 に反 映 さ れ る の か を 、 数 量 的 手 法 を 通 じて 検 証 して み た い 。 取 り上 げ る 現 象 は 、 す で に 第 一 言 語 変 異 で 詳 細 な事 実 が 明 らか に な って い る 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 で あ る 。 す で に 第 一 言 語 変 異 で の あ り よ うが 明 ら か な こ と を用 い て 、 中 間 言 語 変 異 の 分 析 が 容 易 に な る か らで あ り、 ま た 第 一 言 語 変 異 との 詳 細 な 比 較 が 可 能 に な る か ら で あ る 。 コ ー パ ス デ ー タ の 統 計 的 分 析 を通 して 、 い ず れ の 変 異 に も、 言 語 的 普 遍 的1個 別 言 語 特 有 的 特 徴 とい う差 が 大 き く関 与 し て い る こ と を示 し、 第 一 言 語 ・中 間 言 語 と い う二 言 語 変 種 に見 ら れ る変 異 現 象 に つ い て 、 あ る種 の 一 般 化 が 可 能 で あ る こ と を 実 証 す る 。 2.中 間 言 語 ・第 一 言 語 習 得 ・(母 語 内)変 異 さ て 第1・2言 語 習 得 、 第 一 言 語 変 異 の 三 体 系 に わ た る 変 異 の説 明 原 理 を 求 め る に 当 た り、 こ こ で は そ の 一 つ の 可 能 性 と して 言 語 普 遍 性 の 概 念 を取 り入 れ て み た い 。 当 然 言 語 変 異 現 象 もそ れ との 関 わ りで 解 明 さ れ る部 分 が 少 な くな い は ず で あ る。 普 遍 的 制 約 な り規 則 が あ る とす る な ら ば 、 先 の 三 体 系 に お け る 変 異 の 発 現 に も普 遍 の 部 分 と個 別 の 区 別 が 反 映 さ れ る と考 え る の が 自 然 で あ る 。 こ こ で 仮 説 的 に普 遍 性 と三 体 系 にお け る変 異 の あ り よ う単 純 に考 え た場 合 、 そ の 関 係 は 以 下 の よ う に な ろ う: 表1:普 遍 ・個 別 の 区 別 と三 言 語 変 種(第 一 言 語 習 得 ・第 二 言 語 変 異 ・第 一 言 語 変 異)の 関 わ り
[
11
普逓酌源理 各言語特有要因 笛 一 言語習 得 早 くか ら現 れ る 遅 くに現 れ る 第 二言 譜変 墨 「 要国 と して 存在 す る 話 者 の 習 熟 レベ ル に よ る 。 第 一言語 変 異剛要四 と して:重要(比 較 的 重み が 大 きい) 周 辺 的(比 較 的重 みが 小 さい)つ ま り、 普 遍 的 部 分 に含 まれ る 制 約 や 規 則(普 遍 的原 理)は 第 一 言 語 習 得 で は 当 然 話 者 の発 話 で は早 くか ら観 察 され る で あ ろ う し、 そ う した 要 因 は 習 得 後 の 変 異 で も何 らか の 形 で 少 な か らぬ 影 響 力 を発 揮 す る可 能 性 が 高 い で あ ろ う。 ま た 第 二 言 語 話 者 と言 え ど も そ の よ う な 制 約 ・規 則 の存 在 は言 語 的 知 識 の 一一部 と して持 っ て い る は ず で あ り、 そ の 発 話 の 変 異 に も反 映 さ れ て い る は ず で あ る 。 逆 に特 定 言 語 特 有 な 要 因 は 、 第 一 言 語 習 得 で は 普 遍 部 分 の 制 約 に 比 し て発 現 に よ り時 間 が か か ろ う し、 第 一 言 語 変 異 に お い て は そ の ウ ェ イ ト も比 較 的 低 い も の と な ろ う。 そ して 第 二 言 語 話 者 に と っ て もそ う した 制 約 ・規 則 を習 得 す る の は 困 難 な は ず で あ る 。 三 言 語 変 種 と普 遍 ・個 別 とい う区 別 を組 み 合 わせ た 場 合 、 も っ と も簡 単 な仮 説 は以 上 の よ う な もの と思 わ れ る 。 本 稿 で は 、 この 表 の う ち 第 二 言 語 習 得 に 関 わ る部 分 に 集 中 し て 、2 以 下 の3仮 説 を 検 討 して み た い: 第 二 言 語 話 者 の 中 間 言 語 に見 ら れ るバ リエ ー シ ョ ン の 制 約 条 件 に お い て は 、 1.言 語 普 遍 的 制 約 ・規 則 は 早 く に習 得 さ れ 、 要 因 と し て の 重 み も 重 い 2.個 別 言 語 の 特 殊 な もの(各 言 語 個 別 要 因)は 遅 く に習 得 さ れ 、 要 因 と して の重 み が 軽 い 3.制 約 条 件 の 重 み は 第 二 言 語 話 者 の レベ ル が 上 昇 す る に つ れ 母 語 話 者 の そ れ に接 近 す る こ れ ら の 仮 説 を検 討 す る に当 た り、 こ こで は 韓 国 語 母 語 話 者 の 日本 語 発 話 コ ー パ ス デ ー タ を用 い て 、 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 変 異 に注 目 し、 第 一 言 語 話 者 の 同 一 変 異 現 象 との 比 較 を行 う 。 以 下 で 述 べ る よ う に、 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 現 象 は 日 本 語 に お い て 様 々 な ア プ ロ ー チ に よ り分 析 され て きて い る とい う歴 史 を 持 ち 、 そ の あ り よ う に つ い て もか な りな こ とが わ か っ て きて い る 。 そ の 点 で こ う した デ ー タ を検 討 す る に は都 合 が よ い 。 比 較 の 中 心 は 、 変 異 を 司 る制 約 条 件(constraints) に 置 き、 第 一 言 語 と中 間 言 語 の 変 異 そ れ ぞ れ を コ ン トロ ー ル す る 言 語 的 制 約 条 件 の 間 に 、 どの よ う な 共 通 性 が 見 ら れ 、 どの よ う な 差 異 が 見 られ る か を分 析 す る こ と と す る 。 2宮田(1992)は 日本語格助詞の第一言語習得を扱い、公刊 されているデータとともに自身で収集 し たデータを用いて興味深い議論 を展開 している。
中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 分 析 61 3.日 本 語 「を 」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 現 象 日本 語 の 「を 」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 現 象 は 、 こ れ ま で に 生 成 文 法 や 語 用 論 、 自 然 言 語 処 理 、 そ し て 社 会 言 語 学 の 立 場 か ら 様 々 な 分 析 が な さ れ て き て お り(Tsutsui1984, Saito1985,Masunaga1988,Hosakaetal.1992,Matsuda1995,松 田2000)、 そ の 制 約 条 件 の あ り よ う に つ い て も 、 自 然 談 話 資 料 を 使 っ た 分 析(Matsuda1995)に よ り か な り詳 細 な 部 分 に つ い て ま で 判 明 し て い る 。Matsuda(1995)、 松 田(2000)に よ れ ば 、 そ の 主 た る 言 語 内 的(性 別 、 年 齢 と い っ た 社 会 的 要 因 を 除 い た 純 粋 に 文 法 の 枠 内 に 収 ま る 要 因)は 、 以 下 の よ う に 整 理 さ れ る: 目的 語 名 詞 句 と動 詞 の 隣 接 性:隣 接 して い る 方 が 、 して い な い 場 合 よ り も統 計 的 に有 意 に ゼ ロ マ ー ク化 が 起 き や す い 。 た だ し、 目的 語 名 詞 句 と動 詞 の 問 に入 る要 素 の う ち 、 オ ノ マ トピ ァ と数 量 詞 は 隣 接 性 を 阻 害 し な い 、 「透 明 」 な 要 素 で あ る 。 目 的 語 名 詞 句 の 形 式 差:目 的 語 名 詞 句 の 形 式 に よ っ て 、 疑 問 詞 〉 普 通 名 詞 〉代 名 詞 〉節 の 順 で ゼ ロ マ ー ク化 を引 き起 こ しや す い(統 計 的 有 意 差 あ り)。 ス ピ ー チ ス タ イ ル:砕 け た ス タ イ ル の 場 合 に 、 改 ま っ た ス タ イ ル の 時 よ り もゼ ロ マ ー ク化 が 統 計 的 に 有 意 に 起 きや す い 。 先 に 述 べ た 日本 語 特 有 の 要 因1間 言 語 的 要 因 とい う 区 別 に 従 う の で あ れ ば 、 主 要3要 因(動 詞 と 目的 語 の 隣 接i生、 目的 語 名 詞 句 の 形 式 、 ス ピ ー チ ス タ イ ル)の う ち 、 目 的 語 名 詞 句 の 形 式 は 間 言 語 的 要 因 と考 え られ る 。 す で にMatsuda(1995) に 指 摘 が あ る よ う に、 系 統 的 に無 関係 と さ れ る言 語 間 に あ っ て も、 格 標 示 と名 詞 句 形 式 に高 い相 関 性 が 認 め られ る か らで あ る 。3あと の2つ は 日本 語 特 有 と考 え て 良 い 。 「動 詞 と隣 接 し て い な い 場 合 に名 詞 句 の 格 標 示 を明 示 的 に し、 隣 接 の 場 合 は 随 意 とせ よ」 と い う 規 則 は 、 も ち ろ ん 日本 語(の 一 方 言)特 有 の 規 則 で あ り、 言 語 普 遍 的 な も の で は な い 。 そ れ ど こ ろ か 、 同 じ 日本 語 方 言 で あ っ て も 関 西 方 言 で は 隣 接 し て い な い 場 合 で も ゼ ロ マ ー ク化 が 頻 繁 に さ れ て お り、 む し ろ 明 示 的 に され て い る ケ ー ス の 方 が 珍 しい 。 つ ま り隣 接 性 は 日本 語 特 有 な 規 則 で あ る か ら、 3この 相 関 関係 は 正確 には 、「ある明示 的な格表示 を持つ言語があれば、少な くともその言語体系 にお け る代 名 詞 に は必ず 格 表示 が あ るが 、普通 名 詞 に は必 ず しも格標 示 が ある とは限 らない」 とい う 一 般化 と して定 式 化 され る。
中 間 言 語 変 異 にお い て 現 れ な くて もそ う不 思 議 で は な い 。 ス タ イ ル 差 に つ い て は い う ま で も な い で あ ろ う。 よ っ て 先 の 仮 説 を ゼ ロ マ ー ク化 に乗 っ取 っ て 設 定 し直 す と、 次 の よ う に な る: 中間 言語 話者 発 話 にお ける 「を」 格 ゼ ロマ ー ク化 の仮 説 1.目 的 語 名 詞 句 の 形 式 差 は 中 間 言 語 話 者 の 発 話 に も重 要 な 要 因 と し て 早 くか ら存 在 す る の に 対 して 、 2.隣 接 性 や ス タ イ ル 差 は 中 間 言 語 話 者 の 発 話 に は 要 因 と して は そ れ ほ ど重 要 で は な く、 ま た 早 くか ら存 在 し な い 。 3.変 異 の 習 得 差 は 、 日本 語 の 習 熟 レベ ル に 比 例 す る 今 回 の 考 察 対 象 か ら は 、 ス タ イ ル は 除外 す る こ とに した 。 第 二 言 語 習 得 者 の ス タ イ ル は そ れ 自体 興 味 深 い テ ー マ で あ るが 、(1)KYコ ー パ ス を ざ っ と読 み 通 し た 上 で あ ま り大 き な ス タ イ ル 上 の 変 化 が 見 あ た ら な い 、(2)レ ベ ル の 異 な る 学 習 者 す べ て に適 用 で き る 、 信 頼 し得 る よ う な コ ー デ ィ ン グ 法 が 見 あ た ら な い 、 とい う2つ の 理 由 か ら今 回 は要 因 と して は見 送 る こ と に した わ け で あ る 。 試 み に デ ー タ を 各 々 の イ ン タ ビ ュ ー を単 純 に文 字 化 行 数 で 二 分 し、 前 半 と後 半 で 分 け た 上 で の 分 析 も施 し た が 、 全 く何 ら の 相 関 も見 い だ せ な か っ た 。 学 習 者 に と っ て イ ン タ ビュ ー は か な り緊 張 を 強 い る状 況 で あ り、慣 れ る に従 っ て ス ピー チ ス タ イ ル に変 化 が 生 じる も の と予 想 さ れ た た め こ の よ う な コ ー デ ィ ング を 行 っ た もの で あ る 。 結 果 は 習 熟 レ ベ ル と ク ロス させ た 上 で も同 様 で あ っ た 。 自己 の 緊 張 や 改 ま りの 度 合 い に 応 じて 話 し言 葉 を 変 化 さ せ る ほ ど に は 学 習 者 の 日本 語 能 力 が 習 熟 し て い な い もの と考 え る こ とが で き よ う。将 来 的 に は 変 異 理 論 研 究 で 用 い られ て い る、Labov andSanko仔(1985)の よ う に 、 トピ ック を 中 心 に して ス タ イ ル を分 類 す る 方 法 も試 み る価 値 が あ ろ うが 、 第 一 言 語 話 者 の 場 合 と は 異 な る捉 え 方 で 臨 まな い 限 り第 二 言 語 習 得 者 の ス タ イ ル は 十 分 に 分 析 し得 な い と い う の が 筆 者 の 印 象 で あ る 。 ス タ イ ル を 要 因 と含 め る こ と は 見 送 っ た が 、 そ の か わ りに こ こ で は 人 間 性(hu-manness)を 要 因 と して 考 察 す る こ と と し た 。Matsuda(1995)で は 、 少 な く と も東 京 方 言 で は 目 的 語 名 詞 句 の 人 間 性 は 全 くゼ ロ マ ー ク化 に 関 わ りが な い こ とが 確 認 され て い る が 、 巨 視 的 に見 て 、 日本 全 国 の 方 言 分 布 を 視 野 に 入 れ た 場 合 、 こ の 要 因 が 大 き く作 用 して い る こ と も事 実 で あ る 。 『方 言 文 法 全 国 地 図 』 第6図 「酒 を (飲 む)」 お よ び第7図 「お れ を(連 れ て 行 っ て くれ)」(国 立 国 語 研 究 所1989:6-7)
中 間言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 分 析 63 に現 れ た 分 布 で は 、 「お れ 」 の方 が 明 らか に 「を」 が よ り多 くの 地 点 で 使 わ れ て お り、 人 間 性 が ゼ ロマ ー ク化 に一 役 買 っ て い る可 能 性 を示 唆 して い る 。4今回 は分 析 対 照 が 中 間 言 語 で あ り、 他 方 言 で 強 い 要 因 と な っ て い る フ ァ ク タ ーが 効 い て く る 可 能 性 もあ る の で 、探 索 的 見 地 か ら こ の要 因 を含 め て お くこ と に した次 第 で あ る 。 4.要 因 ・デ ー タ ・分 析 手 順 4.1要 因 ま とめ る と、本 研 究 で検 討 す る 要 因 は 以 下 の よ う に な り、 そ れ ぞ れ につ い て コー デ ィ ン グ に当 た っ て 従 っ た ル ー ル を記 し て お く。 1.動 詞 と 目 的 語 の 隣 接 性1:隣 接1非 隣 接 2。 動 詞 と 目 的 語 の 隣 接 性H:隣 接 ノ非 隣 接 3.目 的語 名詞 句 の形 式:普 通 名詞1代 名 詞1指 示代 名詞+名 詞1Wh句1WH+ 名詞 句1節 4.OPIレ ベ ル(習 熟 度):S!A!IIN 5.人 間 性:人 間1非 人 間 「動 詞 と 目的 語 の 隣接 性1」 で は 、 ほ ぼ機 械 的 に動 詞 と 目的 語 名 詞 句 が 直 接 隣 接 して い れ ば 「隣 接 」 と し、 そ れ 以 外 を 「非 隣 接 」 と コ ー ド化 し た 。 こ れ に対 して 、 「動 詞 と 目 的 語 の 隣接 性II」 で は 、Matsuda(1995)、 松 田(2000)の 知 見 に鑑 み 、 オ ノ マ トピ ア と数 量 詞 が 隣 接 性 へ の 例 外 で あ る と見 な し 、 これ ら の 要 素 の よ っ て の み 動 詞 と 目 的 語 名 詞 句 が 分 け ら れ て い る 場 合 は、 「隣 接 」 と コ ー ド化 して い る。 た だ し、 い ず れ の 場 合 も相 手 の う な ず き の み で 分 け ら れ て い る場 合 は 、 隣 接 と判 断 した 。 話 者 自 身 の う な ず き や 、 「え 一 と」 の 類 は こ の 限 りで は な い 。 ま た 、 全 般 的 に以 下 の よ う な場 合 に は デ ー タ と して 採 用 す る こ と を 見 合 わ せ て い る: ・ ゼ ロ 形 が 「は 」 や 「が 」 と 紛 ら わ し い 場 合 。 述 部 が 状 態 動 詞 な ど で 目 的 語 を 「が 」 で 受 け う る 場 合 は 一 律 に 除 外 し た 。 4た だ し実 は この 分布 が 人 間性 の み に よ る もの と は断 言で きな い。 「おれ」 という代名詞の使 用に よる効 果(代 名 詞→ ゼ ロマ ー ク化 され難 い)と 考 えて も説 明可 能 だ か らで あ る。
・ 決 ま り切 っ た い い 方 、 イ デ ィ オ ム の 類(例:お 気 をつ け て) ・ 名 詞 句 だ け で 、 動 詞 が な い 場 合 ・ 「漢 語+す る」 の 形 で 、 漢 語 の 前 に修 飾 語 が な い 場 合(例:日 本 語 の勉 強 を す る → ○;勉 強 す る → ×) ・ 「に 」 と の 混 同 な ど、 文 法 的 に誤 りと 思 わ れ る も の5 4.2デ ー タ:KYコ ー パ ス概 要 KYコ ー パ ス は 鎌 田 修 氏 と 山 内 博 之 氏 に よ っ て編 集 され た 、 英 語 ・韓 国 語 ・中 国 を母 語 とす る 日本 語 学 習 者 の イ ン タ ビュ ー発 話 を文 字 化 した 電 子 化 テ キ ス トで あ る 。63言 語 そ れ ぞ れ30名 つ つ 、 計90名 に つ い てOPI(OralPro且ciencyInterview) 方 式 の イ ン タ ビ ュ ー を 行 い 、 そ れ を テ キ ス トフ ォ ー マ ッ トで 文 字 化 して い る。 内 容 と し て は 、 テ ス タ ー(T)と 被 験 者(S)の 会 話 とい う形 態 を と っ て お り、 日 本 語 学 習 歴 、 ロ ー ル プ レ イ な ど も含 まれ る 。30人 のOPIの 判 定 結 果 別 の 内 訳 は 、
そ れ ぞ れ 、 初 級(旦ovice)5人 、 中級(堕te㎜ediate)10人 、 上 級(Advanced)10人 、
超 級(旦upehor)5人 ず つ で あ る 。 各 話 者 の デ ー タ は個 別 フ ァ イ ル に収 め られ て お り、 フ ァイ ル は 「3つ の ロ ー マ 字(被 験 者 の 母 語(旦nglish,⊆hinese,≦orean)+言 語 能 力 レ ベ ル+サ ブ レベ ル(LIMIH))+2桁 の 通 し番 号 」(但 し超 級 に サ ブ レベ ル は な く、 上 級 もHと た だ の 上 級 の み)と い う フ ォ ー マ ッ トで フ ァ イ ル 名 が付 され て い る 。 コ ー パ ス の 表 記 は 、 漢 字 か な混 じ り ・分 か ち 書 き な しで あ り、 同 一 話 者 の発 話 は 一 行 に 収 め て あ る 。 そ の他 、 以 下 の よ う な文 字 化 表 記 規 則 を 持 つ: ・11:非 言 語 的 な 行 動 例:{笑 い1 ・ 〈〉:相 づ ち 表 記(同 一 行 内 に表 記)例:く あ 、 そ う で す か 〉 ● ● ● []:固 有 名 詞 例:[大 学 名][人 名] 、:ポ ー ズ 表 記 。 「、」 の 数 は ポ ー ズ 長 に 比 例 す る 。 0:記 録上不 明瞭 な箇 所 5文 法 的 エ ラ ー に つ い て の エ ラ ー ア ナ リ シ ス は 、 当 然 今 後 の 課 題 の 一 つ で あ る 。
中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を 」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 の 分 析 65 ・*:全 く聞 き取 れ な い 箇 所 た だ し、KYコ ー パ ス に は 、 テ ス タ ー に 関 す る 説 明 が な い 点 は 指 摘 し て お く必 要 が あ ろ う。 テ ス タ ー の 言 語 的 ・社 会 的 背 景 、 ま た テ ス タ ー は 結 局 何 人 い て 誰 が どの イ ン タ ビ ュ ー を して い る の か 、 とい っ た 情 報 も望 ま れ る の で あ る 。 4.3分 析 手 順 まずKYコ ー パ ス の 韓 国語 話 者 の フ ァ イル か ら、該 当部 分 を話 者 単 位 でMicroso丘 Excel2000に コ ピ ー し、必 要 最 小 限 の テ キ ス ト部 分 へ 編 集 し た 。7次に各 デ ー タ に つ い て そ れ ぞ れ の 要 因 に つ い て 上 記 の 要 領 で コ ー デ ィ ン グ を施 した 。 コ ー デ ィ ン グ を 終 え た段 階 で デ ー タ を テ ス タ ー と被 験 者 に 分 離 し、 そ れ ぞ れ で各 要 因 別 の ゼ ロマ ー ク化 率 を計 算 し、 必 要 に応 じて ク ロ ス 集 計 を行 っ た 。 最 終 的 に分 析 に使 わ れ た デ ー タ総 数 は691件 で あ る 。 次 に、 こ こ まで の 二 変 量 に よ る分 析 か ら さ ら に 踏 み 出 し て 、 複 数 の独 立 変 数 を 使 っ て 中 間 言 語 話 者 の 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 予 測 を 試 み る 。 独 立 変 数 は 順 序 尺 度 で あ るOPIレ ベ ル を 除 い て 三 つ(隣 接 性 、 目 的語 名 詞 句 形 式 差 、 人 間 性)が 名 義 尺 度 で あ り、従 属 変 数 で あ る ゼ ロマ ー ク化 ・非 ゼ ロ マ ー ク化 も名 義 尺 度 で あ る 。 こ う した複 数 の 名 義 尺 度 に よ っ て名 義 尺 度 変 数 の 予 測 を し、 各 パ ラ メ ー タ の 推 測 をす る に は 、 ロ ジ ス テ ィッ ク 回 帰 を行 うの が よ い 。8ここ で はGoldV血rbversion2.0 (RandandSankoffl990)を 使 って この 処 理 を行 った 。 以 下 被 験 者 デ ー タ の の み 絞 っ て報 告 す る 。 5.分 析 5,1隣 才妾噌生 まず 、 隣 接 性1か ら検 討 し て み よ う。 次 表 は被 験 者 全 体 の 目 的 語 ・動 詞 の 隣 接 ・ 非 隣 接 別 と ゼ ロマ ー ク化 の相 関 を示 した もの で あ る 。72.6%(502!691)と 、大 方 の デ ー タ は 隣 接 ・「を 」 に 集 中 して お り、 そ も そ も ゼ ロ 化 自体 が 多 くは 見 られ な い が 、 そ れ で も こ の 表 か ら は2つ の 統 語 的 ポ ジ シ ョ ン の 差 に よ る ゼ ロ マ ー ク化 率 の 差 は た か だ か6%程 度 で あ り、 母 語 話 者 の 時 の よ う に 劇 的 な 差 は 見 られ な い こ と が わ か る 。 事 実 カ イ 自乗 検 定 で も有 意 差 は検 出 で き な か っ た(ρ<0,10)。 で は母 7こ の 作 業 で 、 鎌 田 尚 子 、 中村 勝 、 西 村 麻 里 の 協 力 を得 た 。 8ロ ジ ス テ ィ ッ ク 回 帰 の 詳 細 に つ い て は、 エ バ リ ッ ト(1977)、Fienberg(1989)な ど を 参 照 の こ と 。
語 話 者 で 隣 接1生に 関 して 透 明 性 を発 揮 した オ ノ マ トピ ァ と数 量 詞 を 隣 接 と して 計 算 した 、 隣 接 性IIで は ど うだ ろ う か 。 表2:隣 接 性1に よ る ゼ ロ マ ー ク化 の 分 布(カ ッ コ 内 は 実 数 を 示 す) 隣 接 ・非 隣 接 を ゼ ロ
合計
隣接 84.94%(502) 15.06%(89) 100.00%(591) 非 隣接 ■ 91.00%(91) 9%(9) 100.00%(100)合計
囑 85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) 一 一 隣 接 性IIで デ ー タ を 整 理 し直 し た の が 次 の 表 で あ る 。2つ の ポ ジ シ ョ ン の差 は 隣 接 性Hに な っ て5%程 度 と む し ろ 縮 小 して お り、 言 う ま で も な く カ イ 自乗 値 か ら も全 く有 意 な差 は見 られ な い(p<0.19)。 隣接 性 の 差 が 出 て い な い の は 、 隣 接 性 の ま とめ 方 に よ る もの で は な く、 そ も そ も隣 接 性 自体 が 無 関 係 な わ け で あ る 。 上 記2つ の 表 か ら、 母 語 話 者 の 場 合 と大 き く異 な り、 中 間 言 語 話 者 に と っ て 隣 接 性 が ゼ ロ マ ー ク化 の 要 因 と して 全 く機 能 し て い な い こ と に な る 。 表3:隣 接 性IIに よ る ゼ ロ マ ー ク化 の 分 布 隣 接 ・非 隣 接 を ゼ ロ合計
隣接 85.17%(517) 14.83%(90) 100.00%(607)非隣接
5 90.48%(76) 9.52%(8) 100.00%(84)合計
I I85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) しか し これ らの 表 は あ く まで デ ー タ全 体 を ま と め た もの で あ り、 日本 語 習 熟 度 の差 に よ っ て 隣接 性 の 効 き 方 に差 が 出 て くる 可 能 性 も考 え られ る 。 日本 語 の 習 得 が 進 む に従 っ て 、 よ り細 か な 「変 異 の 文 法 」 も修 得 して い る と考 え る こ と は 自然 で あ ろ う。 つ ま りOPIレ ベ ル がN→1→A→Sと 高 くな る に従 い 、 中 間 言 語 話 者 が 統 語 的 な ポ ジ シ ョ ン とゼ ロ マ ー ク化 の 関 連 に 気 付 き、 徐 々 に2つ の 隣 接 性 の レ ベ ル差 が 拡 大 す る 、 とい う シ ナ リ オ で あ る。 この 仮 説 は 、 下 掲 の 表 の よ う に 隣 接 性1111とOPIレ ベ ル を ク1コス させ る こ と で 確 認 で き る。中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ーパ ス を使 っ た 「を 」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 の 分 析 67 表4:隣 接 性1とOPIレ ベ ル の ク ロ ス 表 OPIレ ベ ル 隣 接 ・非 隣 接 を ゼ ロ
合計
S 隣接 一 8351%(157) 16、49%(31) 100.00%(188) 1 非 隣接 89.74%(35) 10.26%(4) 100.00%(39) A 1 隣接 82.76%(168) 17.24%(35) 100.00%(203) 1 非 隣接 90.32%(28) 9.68%(3) 100.00%(31) 1 ■隣接
89.19%(165) 10.81%(20) 100.00%(185) ■ 非 隣接 93.33%(28) 6,67%(2) 100.00%(30) N ■ 隣接 80.00%(12) 20.00%(3) 100.00%(15)一
合計
■ 1 85.82%(593) 14,18%(98) 100.00%(691) 初 級(N)レ ベ ル 話 者 の デ ー タ が 少 な く、 特 に こ こ で 非 隣 接 の デ ー タ が な い こ と が 惜 しま れ る が 、 他 の3レ ベ ル を比 較 して もそ の 差 に 何 ら一 貫 した 方 向 性 が な い こ と は 明 ら か で あ る 。OPIレ ベ ル と ク ロ ス して も、 ゼ ロ マ ー ク化 率 と隣 接 性 の 相 関 は 浮 か び上 が っ て こ な い と い う こ とは 、 中 間 言 語 話 者 は 初 級 レベ ル か ら超 級 レ ベ ル に至 る ま で 徹 頭 徹 尾 隣接 性 を制 約 条 件 と して 隣 接 性 を受 け入 れ て は い な い こ と に な る わ け で あ る 。 5.2目 的 語 名 詞 句 の 形 式 差 目的 語 名 詞 句 も母 語 話 者 の ゼ ロ マ ー ク化 で は 大 き な 要 因 で あ っ た 。 そ れ が 中 間 言 語 話 者 で も 同 様 に 制 約 条 件 と して 機 能 し て い る こ と を 示 し た の が 以 下 の 表 で あ る 。 こ こ で は 疑 問 詞+普 通 名 詞(例:ど ん な 考 え)と 疑 問 詞(例:何 を 紹 介 す れ ば い い で し ょ う)、 そ して 名 詞(例:TV見 た り)と 指 示 代 名 詞+普 通 名 詞(例: そ う い う 親 を お っ ぽ り出す の は)を そ れ ぞ れ 一 つ の グル ー プ に ま とめ て あ る。 よっ て カ テ ゴ リー は 計4つ(普 通 名 詞 ・代 名 詞 ・疑 問詞 ・節)で あ る 。 表 を見 る と、 も っ と も ゼ ロ 化 率 の 高 い 疑 問 詞 とゼ ロ 化 率 最 低 の 代 名 詞 で は18%も の 差 が あ り、 疑 問 詞 〉 普 通 名 詞 〉 節 〉代 名 詞 の 順 で ゼ ロ化 率 が 低 下 し て い る様 子 が よ くわ か る 。 つ ま り こ れ が 中 間 言 語 話 者 全 体 で の 目 的 語 名 詞 句 の 制 約 条 件 の ラ ン キ ン グ に な る わ け で あ る 。 こ の 差 に つ い て は カ イ 自乗 検 定 で も有 意 差 が 検 出 され て お り表5:隣 接 性IIとOPIレ ベ ル の ク ロ ス 表 OPIレ ベ ル 隣 接 ・非 隣 接 を ゼ ロ
合計
S i非 隣接隣接 84.10%(164) 15.90%(31) 100.00%(195) 87.50%(28) 1250%(4) 100.00%(32) A i 隣接 82.78%(173) 17.22%(36) 100.00%(209) 1 非 隣接 92.00%(23) 8.00%(2) 100.00%(25) 1 1隣接
89.36%(168) 10.64%(20) 100.00%(188) 非 隣接 9259%(25) 7.41%(2) 100.00%(27) N 1 隣接 80.00%(12) 20.00%(3) 100.00%(15)合計
85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) (p<0.039)、 全 く と言 っ て い い ほ ど差 の な か っ た 隣 接 性 と好 対 照 を な して い る 。 表6:名 詞 句 形 式 差 に よ る ゼ ロ マ ー ク化 の 分 布名詞句形式
を ゼ ロ合計
普通 名詞 84.48%(490) 一 15.52%(90) 100.00%(580) 代 名詞 ■ 97.62%(41) 2.38%(1) 100,00%(42) 疑 問詞 ■ 79.17%(19) 20.83%(5) 100.00%(24)節
■ 9556%(43) 4.44%(2) 100.00%(45)合計
85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) さ て 、 す で に見 た とお り、 母 語 話 者 の ラ ンキ ン グ は 、 ゼ ロ 化 率 の 高 い 順 に 疑 問 詞 〉 普 通 名 詞 〉代 名 詞 〉 節 と な っ て お り(松 田2000)、 最 後 の2つ が 中 間 言 語 話 者 と異 な っ て い る 。 そ こで 、隣 接 性の 場 合 と同 様 、OPIレ ベ ル との 関 連 性 を調 べ て み よ う。 習 得 順 と ラ ン キ ン グ の相 関 を考 え る の で あ れ ば 、Nか ら始 ま り、 徐 々 に 制 約 条 件 が 習 得 さ れ 、1→Aと 経 てSに 至 っ て 母 語 話 者 と 同様 な 制 約 条 件 の ラ ン キ ン グ が 習 得 され て い る 可 能 性 が 考 え られ る。 す で に全 体 的 に は ほ ぼ 期 待 さ れ た 分 布 を して い る が 、Nレ ベ ル で い きな り母 語 話 者 と同 様 な分 布 は して い な い は ず中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 分 析 69 で あ る か ら、 こ の 仮 説 は 上 の 隣 接 性 の 時 よ りは現 実 性 が 高 い もの と考 え られ よ う。 表7:名 詞 句 形 式 差 とOPIレ ベ ル の ク ロ ス 表 OPIレ ベ ル 名 詞 句 形 式 を ゼ ロ
合計
一 一 S 普通 名詞 84.49%(158) 1551%(29) 100.00%(187) ■ 代名 詞 92.31%(12) 7.69%(1) 100.00%(13) 疑 問詞 54.55%(6) 45.45%(5) 100.00%(11) ■節
100.00%(16) 0.OO%(0) 100.00%(16) A 」 普 通名 詞 80.43%(148) 19.57%(36) 100.00%(184) 代名 詞 100.00%(20) 0.00%(0) 100.00%(20) 1 疑 問詞 100.00%(11) 0.00%(0) 100.00%(11) 1節
89.47%(17) 10.53%(2) 100.00%(19) 1 1 普 通 名詞 88.72%(173) 11.28%(22) 100.00%(195) ■ 代 名 詞 100.00%(9) 0.00%(0) 100.00%(9) ■ 疑 問詞 100.00%(1) 0.00%(0) 100.00%(1) ■節
100.00%(10) 0.00%(0) 100.00%(10) N ■ 普通 名詞 78.57%(11) 21.43%(3) 100.00%(14) 一 疑 問詞 100.00%(1) 0.00%(0) 100,00%(1)合計
■ 85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) 表 の 分 布 をOPIレ ベ ル 別 に ラ ンキ ン グ と して ま と め て み よ う("="は ラ ン ク が 等 しい こ とを 示 す)。 ●N:NP>WH(???) ・1:普 通 名 詞 〉代 名 詞=節=疑 問 詞 ・A:普 通 名 詞 〉節 〉 疑 問 詞=代 名 詞 ●S:疑 問 詞 〉普 通 名 詞 〉 代 名 詞 〉 節 こ こ で も乏 しい 初 級 者 レベ ル デ ー タが ネ ッ ク に な っ て お り、 特 に 初 級 者 レ ベ ル は 一 応 除 外 して み た い 。 ま た 他 の レ ベ ル で も僅 少 な デ ー タが 見 られ る の で 、 将 来 的 な デ ー タの 積 み 上 げ ・検 証 が 待 た れ る こ とは 言 う まで も な い 。 そ の 上 で 言 う ので あ れ ば 、 中 級(1)で は ま ず 目的 語 名 詞 句 と い う カ テ ゴ リ ー 全 体 が 普 通 名 詞 とそ れ 以 外 に分 化 して い る 。 次 に そ れ が 上 級 者(A)に 達 す る と、 普 通 名 詞 、 節 とそ れ 以 外(疑 問 詞 と代 名 詞)と 三 分 化 し、 最 終 的 に は超 級 話 者(S)に お い て 疑 問 詞 と 代 名 詞 が 分 離 し て母 語 話 者 と全 く同 じ ラ ン キ ン グ に 到 達 し て い る 。 つ ま りこ れ は 中 間 言 語 話 者 が は じめ は 一 つ の 固 ま りと し て 受 け 入 れ て きた 名 詞 句 の カ テ ゴ リ ー 全 体 か ら、 異 な る カ テ ゴ リー を析 出 して い く過 程 と考 え られ る。 よ っ て や は り仮 説 通 りに 、 レベ ル の 上 昇 に伴 っ て 、 制 約 条 件 は徐 々 に 習 熟 度 が 上 が る に つ れ てS レベ ル話 者 、 な い しは 母 語 話 者 の そ れ に接 近 し て い る わ け で あ る。 注 目す べ き は 、 これ らの 全 段 階(デ ー タ数 の 少 な い 初 級 者 を 除 く)を 通 して 、普 通 名 詞 〉 代 名 詞 と い うハ イ ァ ラ ー キ ー が 保 持 され て い る 点 で あ る 。Matsuda(1995)、 松 田(2000) で の 主 張 で は これ が 間 言 語 的 に見 られ る類 型 的 普 遍 性 とい う こ と で あ っ た が 、 そ れ が こ こ で も現 れ て い る こ と に な る わ け で あ る 。 5.3人 間 性(humanness) 人 間 性 に よ っ て デ ー タ を分 類 し た の が 以 下 の 表 で あ る 。 一 見 し て 分 か る 通 り、 人 間 性 は全 く要 因 と し て 機 能 して い な い 。 実 際 に カ イ 自乗 値 を計 算 し て み て も ρ<0.08と 有 意 な レベ ル に は 達 して い な い 。 名 詞 の 意 味 的 カ テ ゴ リ ー と して は基 本 的 な もの と考 え られ 、 上 述 した 通 り 日本 語 方 言 で も全 国 分 布 を コ ン トロ ー ル す る 要 因 で あ る だ け に大 き な作 用 を持 つ もの と期 待 さ れ た が 、 中 間 言 語 話 者 は 要 因 と して 選 択 し な か っ た わ け で あ る 。 表8:人 間 性 に よ る ゼ ロ マ ー ク 化 の 分 布 人 間 ・非 人 間 別ll を 1ゼ ・
合計
人 間 93.22%(55) 一 6.78%(4) 100.00%(59) 非 人 間 1 85.13%(538) 14.87%(94) 100.00%(632)合計
画 85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) 人 間 性 が ゼ ロ マ ー ク化 の 重 要 な 要 因 で な い こ と は 、 こ の こ とはOPIレ ベ ル と ク ロ ス した 結 果 で も変 わ ら な い こ とか ら も窺 え る 。中 間言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 の 分 析 71 表9:人 間 性 とOPIレ ベ ル の ク ロ ス表 OPIレ ベ ル 人 間 性 を ゼ ロ
合計
S 1 人 間 100.00%(27) 0.00%(0) 100.00%(27) 非 人 間 8250%(165) 17.50%(35) 100.00%(200) A ■ 人 間 80.95%(17) 19.05%(4) 100.00%(21) ■ 非 人 間 84.04%(179) 15.96%(34) 100.00%(213) 1 ■ 人 間 100.00%(11) 0.00%(0) 100.00%(11) 非 人 間 89.22%(182) 10,78%(22) 100.00%(204) N ■ 非 人 間 80.00%(12) 20.00%(3) 100.00%(15)一
合計
85.82%(593) 14,18%(98) 100.00%(691) 5.40PIレ ベ ル す で に 作 成 して い る ク ロス 表 か ら も窺 え るが 、OPIレ ベ ル 自体 は ゼ ロ マ ー ク化 率 と き れ い な相 関 を示 して い な い(カ イ 自乗 検 定 でp<0.23)。 特 に初 級 レ ベ ル で は 格 助 詞 「を」 自体 を十 分 に 習 得 して い な い こ とが 考 え られ る わ け で 、 た と え 格 助 詞 「を」 が ゼ ロ と して 現 れ て い て も、 そ れ が 学 習 者 の エ ラ ー な の か 母 語 話 者 の 変 異 文 法 習 得 の 結 果 な の か は 、 に わ か に判 断 しが た い 部 分 が あ る 。 よ っ て ゼ ロ マ ー ク化 率 がOPIレ ベ ル と単 純 な 相 関 を示 す 必 要 性 は な い が 、 そ れ に して もOPI レベ ル に よる 分 布 は ラ ン ダ ム で あ り、何 らの 規 則 性 も浮 か び 上 が っ て こ な い 。OPI レベ ル とゼ ロマ ー ク化 率 に は 単 純 な相 関 は な い が 、名 詞 句 形 式 差 と ク ロ ス させ た 時 に の み 上 で 見 た よ う な 規 則 性 が 見 え て くる わ け で あ る 。OPIレ ベ ル と一 貫 した 関 連 性 を示 す こ と で 、 名 詞 句 形 式 差 の 制 約 条 件 と し て の 重 要 性 が 再 確 認、さ れ る の で あ る 。 5.5ロ ジ ス テ ィッ ク分 析 に よ る ゼ ロ マ ー ク化 予 測 ・変 数 選 択 ・パ ラ メ ー タ 推 定 ロ ジ ス テ ィッ ク 回 帰 分 析 で ス テ ッ プ ア ッ プ ・ダ ウ ン式 に変 数 選 択 を行 う と 、 名 詞 句 形 式 差 の み が 有 意 な 変 数 と して 選 択 され た 。9この 変 数 選 択 を行 っ た 段 階 で は 、 上 の 分 析 の よ う に疑 問 詞 や 普 通 名 詞 を ま とめ て い な か っ た た め 、 こ れ ら2つ の グ 9ス テ ッ プ ア ッ プ ・ダ ウ ン で の 閾 値 は0 .05に 設 定 した 。表10:0PIレ ベ ル よ る ゼ ロ マ ー ク化 の 分 布 10PIレ ベ ル ¶ を ゼ ロ
合計
S 83.76%(192) 16.24%(35) 一 100.00%(227) A 84.58%(196) 15.42%(38) 100.00%(234) 1 89.77%(193) 10.23%(22) 100.00%(215) N 80.00%(12) 20.00%(3) 100.00%(15)合計
85.82%(593) 14.18%(98) 100.00%(691) ル ー プ に ま とめ た上 で 、対 数 尤 度 差 を用 い た 検 定 を行 い 、 レベ ル を ま とめ る こ と の 統 計 的 妥 当 性 を検 討 し た 。 こ の 結 果 二 つ の グ ル ー プ を ま と め た場 合 で も予 測 に有 意 差 は な い と判 定 さ れ 、 実 際 に 予 測 を行 う と極 め て 高 い精 度 で 予 測 が 可 能 で あ る こ とが わ か っ た 。 最 終 的 な パ ラ メ ー タ の 推 定 値 は 、 定 数=0.131;代 名 詞=0.140; 節=0.236;普 通 名 詞=0.550;疑 問 詞=0.636で あ り、10上の 分 析 を裏 付 け る も の とな っ て い る。 6.考 察 上 の 分 析 で は 、 結 局 名 詞 句 形 式 差 だ け が 有 意 な要 因 で あ る とい う こ と で あ り、 こ れ は 取 り も直 さず 、 第1の 仮 説 、 「目 的 語 名 詞 句 の 形 式 差 は 中 間 言 語 話 者 の 発 話 に も重 要 な 要 因 と して 早 くか ら存 在 す る 」 を支 持 す る もの と解 釈 で き る 。 レベ ル 的 に は 中級 話 者 で す で に普 通 名 詞 〉 代 名 詞 とい う差 を習 得 し て お り、 こ れ が そ の ま ま超 級 に 至 る ま で 保 持 され る こ と は 、 こ の 差 の 発 現 が 単 な る偶 然 で は な い こ と を物 語 っ て い る 。 類 型 的 分 布 で も確 認 さ れ た 普 通 名 詞 と代 名 詞 の 格 標 示 差 が 、 韓 国 語 話 者 の 日本 語 習 得 で も現 れ た こ とは 非 常 に 興 味 深 い こ と と思 わ れ る 。 デ ー タ数 の 僅 少 さ か ら詳 細 な議 論 は 難 しい が 、1→A→Sと レベ ル の 上 昇 に 従 っ て 制 約 ラ ンキ ング が 母 語 話 者 の そ れ に 接 近 して 行 く様 は 、 変 異 の 習 得 差 が 日本 語 の 習 熟 レベ ル に 比 例 す る とい う3つ 目 の 仮 説 を裏 付 け る もの と言 え よ う。 全 く要 因 と して の 有 意 性 が 見 られ な か っ た 隣 接1生11Hと 人 間 性 に つ い て は ど う 10GoldVarbの パ ラ メ ー一夕 は 、0.5を 境 に して 、 そ れ よ り大 き け れ ば 従 属 変 数(こ の 場 合 ゼ ロ マ ー ク 化 の 割 合)を 増 進 す る 方 向 に 、 小 さ け れ ば そ の 反 対 の 方 向 に 関 連 を持 つ よ う設 定 さ れ て い る 。中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク 化 の 分 析 73 だ ろ う か 。 まず 隣 接 性 に つ い て は 、 第2の 仮 説 が 実 証 され た も の と考 え ら れ る 。 も ち ろ ん 、被 験 者 の レベ ル が さ ら に上 昇 した 場 合 に 要 因 と して 発 現 す る こ と は考 え られ る が 、 そ れ は 名 詞 句 形 式 差 の 発 現 の 早 さ と は 比 べ 物 に な ら な い の で あ り、 や は り普 遍 的 制 約 ・規 則1個 別 言 語 特 有 的 制 約 ・規 則 の 差 は明 ら か で あ る。 た だ し東 京 語 方 言 につ い て は 隣 接 性 が 大 き な 要 因 で あ った こ とか ら、 第 一 言 語 変 異 で は そ う した 個 別 言 語 特 有 の 要 因 が 重 要 な要 因 に 成 長 す る 可 能 性 は 考 え な け れ ば な ら な い 。 中 間言 語 で の 発 現 の 早 さ と 、 第 一 言 語 変 異 で の最 終 的 な 要 因 の 重 み は 必 ず し も相 関 し な い わ け で あ り、 こ の 点 で 上 記 の仮 説 は訂 正 さ れ るべ き で あ る 。 探 索 的 に含 め た 人 間性 要 因 が 全 く要 因 と して 作 用 して い な か っ た こ と は 、 中 間 言 語 話 者 が ゼ ロ マ ー ク化 の 習 得 に 当 た って 、語 彙 的 意 味 を手 が か り に して い な い こ と を示 唆 す る もの と考 え ら れ る。 東 京 語 の ゼ ロ マ ー ク化 と 同様 に(Matsuda1995、 松 田2000)中 間 言 語 で もゼ ロ マ ー ク化 は 形 式 を手 が か りに して 行 わ れ て い る と推 察 さ れ る 。 こ こ で こ こ まで の 分 析 に対 して 考 え られ る 反 論 に つ い て 考 え て み よ う。 まず 考 え られ る の は 、韓 国 語 母 語 か らの 干 渉 、 と言 う可 能 性 で あ る 。 韓 国 語 に お い て も 「を」 に相 当 す る格 助 詞 の 実 現 に は 変 異 が あ る こ と は知 ら れ て い るが 、 そ れ は 「代 名 詞 に は 格 助 詞 が 付 加 さ れ 、 普 通 名 詞 に は 付 加 さ れ な い 」 とい っ た カ テ ゴ リ カ ル な も の で は な い 。 よ っ て 韓 国 語 母 語 話 者 は 、 も し も母 語 を 頼 り とす る に し て も、 確 率 論 的 な 制 約 で あ り、 そ れ に して も当 然 日本 語 と 同様 な ラ ンキ ン グ で あ る は ず で あ る 。 す で に 見 た と お り、 そ の 中 心 部 分 は 、 日本 語 独 自 の 制 約 とい う よ り は 、 広 く言 語 に見 られ る も の で あ る 。韓 国 語 の 目的 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 詳 細 は 不 明 だ が 、 い ず れ に して も最 大 限 母 語 干 渉 が あ っ た と して も、 そ れ は 言 語 一般 に 普 遍 的 に見 られ る 特 徴 と 同 様 な もの と な る わ け で あ り、 古 典 的 な母 語 干 渉 とは 言 い 難 い もの で あ ろ う。 次 に被 験 者 が 関 西 方 言 な どの 、 隣 接 性 を 要 因 と して持 た な い 方 言 を 学 習 の タ ー ゲ ッ トと して い た の で は な い か と い う可 能 性 を考 察 して み よ う。 こ の 場 合 、 隣 接 性 に そ の 影 響 が 見 られ る の で あ れ ば 、 語 彙 ・音 韻 ・文 法 な ど他 の レベ ル で もそ う した 方 言 差 が 観 察 さ れ る は ず で あ る が 、KYコ ー パ ス 内 の 発 話 を検 討 し た 印 象 か ら は 、 そ う した方 言 的 特 色 は 見 ら れ な か っ た 。 よ っ て 方 言 差 に帰 す る の に は 無 理 が あ ろ う。 テ ス タ ー の発 話 に よ る影 響 は ど うだ ろ うか 。 テ ス タ ー が 日本 語 の教 師 で あ り、
被 験 者 が か な り緊 張 し て い る様 子 は 文 字 化 テ キ ス トか ら も明 白 に 読 み と る こ と が で き る 。 そ う した 状 況 で 、被 験 者 が テ ス タ ー の 発 話 を 模 倣 して い た と い う可 能 性 も捨 て き れ な い もの で あ ろ う。 しか し な が ら試 み に テ ス タ ー の発 話 を 分 析 した 結 果 、 隣 接 性 は テ ス タ ー につ い て も全 く要 因 と して作 用 して い な い こ とが 確 認 さ れ て い る(隣 接 性1:ρ<0,47、 隣 接 性H:ρ く0,10)。 ま た 全 体 的 な ゼ ロ マ ー ク化 率 か ら言 え ば 、 被 験 者 の14.18%に 対 し て 、 テ ス タ ー の ゼ ロ マ ー ク化 率 は8 .09%で あ っ た 。 こ こ か ら テ ス ター の 低 い ゼ ロ マ ー ク化 率 に引 きず ら れ た とい う説 明 も一 見 可 能 に見 え る 。 しか し 同 じ こ と は名 詞 句 形 式 差 に も言 え る の で あ り、 テ ス タ ー で は名 詞 句 形 式 差 も有 意 な要 因 で は な か っ た(ρ<0 .54)。 よ っ て テ ス タ ー の 影 響 とい う説 明 で は 、 隣 接 性 要 因 の み が 被 験 者 に よ る模 倣 さ れ た とす る こ と に な っ て し ま い 、 説 得 力 を 欠 く こ と に な っ て し ま う。 ス タ イ ル差 を 抽 出 し逃 した こ とが 分 析 結 果 に 影 響 した 、 とい う反 論 も考 え られ よ う。 す で に 述 べ た よ う に 、 今 回 は ス タ イ ル 差 分 析 を見 送 ら ざ る を得 な か っ た の で あ り、 ス タ イ ル 差 は 今 後 さ らに 検 討 を要 す る 課 題 で あ る 。 た だ し、KYコ ーパ ス 全 体 を 見 渡 した 限 りス タ イ ル 差 は 母 語 話 者 よ りは 遙 か に小 さ い もの と判 断 さ れ た 。 ま た 当 然 ス タ イ ル 差 はOPIレ ベ ル と共 に広 が る もの と予 想 さ れ る が 、名 詞句 形 式 差 は 、 中級 レベ ル で も観 察 さ れ た もの で あ る 。 こ う い っ た 事 実 か ら も 、 ス タ イ ル 差 の い っ そ う の 分 析 に よ っ て も上 記 分 析 の 大 勢 に 変 化 は な い も の と し て 良 い で あ ろ う。 7.お わ り に 最 後 に今 後 の 課 題 を述 べ て お き た い 。 まずKYコ ー パ ス に含 ま れ て い る 、 中 国 語 お よ び英 語 母 語 話 者 の 発 話 デ ー タ の 分 析 が あ げ られ る 。 本 稿 で 扱 っ た 議 論 は 、 こ れ ら2種 類 の デ ー タ分 析 を通 して 、 さ ら に密 度 の 高 い 検 証 が 可 能 に な る で あ ろ う。 こ の 場 合 、 当 然 名 詞 句 形 式 差 が 同 じ よ う な形 で 要 因 と し て 浮 か び上 が っ て く る こ とが 予 想 さ れ る こ と は 言 う ま で もな い 。 も ち ろ ん 、KYコ ー パ ス 以 外 の 発 話 デ ー タ の 分 析 も必 要 で あ る 。 細 か な ク ロス 分 析 の た め に は 、 ど う して も大 量 の発 話 デ ー タ が 必 要 に な る 。 こ の 点 でKYコ ーパ ス の よ う な 第 二 言 語 コ ーパ ス は 、 今 後 ま す ま す そ の 必 要 性 が 高 ま っ て 来 る で あ ろ う。 本 稿 で は 全 く取 り上 げ て い な いが 、 助 詞 使 用 の エ ラ ー ア ナ リ シ ス は ど う し て も 必 要 な分 析 で あ る 。 「を」 は 「に」 や 「が 」 等 助 詞 との 混 同 が 顕 著 だ が 、 こ う した
75 中 間 言 語 と言 語 変 異:KYコ ー パ ス を使 っ た 「を」 格 ゼ ロ マ ー ク化 の 分 析 誤 用 の 分 布 は ゼ ロ マ ー ク化 と分 か ち難 く絡 み 合 っ て い る 。 本 稿 で は前 提 と して ゼ ロ マ ー ク化 が 「習 得 」 の 結 果 だ と して い た が 、 そ れ が 「未 習 得 」 の 結 果 で な か っ た とい う保 証 は ど こ に も な い わ け で あ る 。 こ の 難 問 を解 く鍵 の 一 つ は 、 こ う した エ ラ ー ア ナ リ シ ス に あ る の で は な い か とい う見 通 し を筆 者 持 っ て い る が 、 こ れ に つ い て は す べ て 今 後 の 課 題 とせ ざ る を得 な い 。
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