• 検索結果がありません。

東日本大震災被災地域住民のこころの健康に関する研究

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "東日本大震災被災地域住民のこころの健康に関する研究"

Copied!
1
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

1.研究目的

 東日本大震災では岩手・宮城・福島の三県における 津波被害が甚大であった。多くの人命が失われ、多く の家屋が流出し、地域自体が流されて、人々は見慣れた 故郷を失った。これらの被害は目に見える損失だけで はなく、人々のこころに大きな影響を及ぼした。その 影響としてはposttraumatic stress disorder(PTSD)

があげられるが、トラウマ被害後の影響は必ずしも PTSDに代表される精神障害だけでない。近親者との 死別による悲嘆や仮設住宅への居住によるストレス、

地域社会の変化によるストレス、仕事が見つからない ことによるストレスなど、被災の有無を問わず被災地 域に居住するすべての住民に多岐にわって影響する。

 本研究では東日本大震災が人々のメンタルヘルスに 及ぼした影響を、岩手県釜石市に居住する全市民を対 象として、トラウマティック・ストレス、近親者との 死別による悲嘆、抑うつ、行動の変化といった観点か ら明らかにする健康調査を行い、適切な支援について 提案することを目的とした。

2.研究方法

 市内に居住する18歳以上の市民32,218名を対象とし た。調査は郵送法にて2012年11月に実施した。調査 票は①性別、年齢、居住形態等の基礎統計資料、②東 日本大震災による被災状況、③震災時前後の就業状況 および経済状況、④心身の健康状態、睡眠、食欲の状 況、および飲酒の状況、⑤震災による死別の状況、⑥ BGQ(複雑性悲嘆のスクリーニングに利用されるも のである。)、⑦IES-R(PTSDの診断基準に則しており、

再体験症状、回避症状、覚醒亢進症状から構成されて いる。ほとんどの外傷的出来事について、使用可能な 心的外傷ストレス症状尺度である。24/25をカットオ フポイントとした(金、2006))、⑧K6(気分障害と 不安障害のスクリーニングに使われるもので、厚生労 働省のメンタルヘルス調査等でも使用される。12/13 点をカットオフポイントとした(川上、2006))、⑨地 域での人間関係に関する質問項目から構成された。本 調査は、岩手県立大学研究倫理審査委員会にて審査を 受け承認された。

3.結果

 有効回答は8,823名(男性4,003名、女性4,754名、無回 答66名)であった(回答率 27.4%)。回答が多かった年 代は、60代と70代で、50.4%であった。

 現在の暮らし向きは、全体の37.5%が経済的に「苦 しい」と感じていた。現在の健康状態は、「あまりよ くない」23.0%、「よくない」5.2%であり、食欲に変 調あるものが21.8%、何らかの睡眠に関する問題を抱 えている者が45.8%であった。週に4~5回以上飲酒 をする人が21.8%おり、毎日の飲酒量は4合以上飲むも のが2.0%存在した。今回の震災で身近な人を亡くし た人は52.8%に上り、そのうちの8.6%が強い悲嘆を感 じていた。また、21.1%に外傷後ストレス障害が、5.2

%に気分障害や不安障害に相当する心理的苦痛を感じ ていることが疑われた。人間関係に関する質問項目か ら、これらの人々には、会って話をしたり、気楽に感 じたり、助けを求めること等をできる友人がいない割 合が高いことが示された。

 年代群別では、40代~ 50代に「現在の暮らし向き」

が苦しく感じている割合が、40代~ 60代に多量飲酒 者(週4日以上、1日2合以上摂取する人)の割合が、

30代~ 40代に外傷後ストレス障害の割合が、40代に 気分障害や不安障害に相当する心理的苦痛を感じてい る割合が高く示されていた。

4.研究の成果

 本研究から、釜石市民の心身の健康状態像を把握す ることができた。被災20 ヶ月後時点でも心身の健康 状態が思わしくない市民も多く、30代から50代、特 に、40代の働き盛りの年代群に多量飲酒や精神的健康 被害の疑われる人々の多いことが判明した。これらの 人々は時間的経済的理由から、行政等による支援の参 加に消極的であることが推測された。今後、行政によ る住民への定期的長期的な心身の健康調査実施とその 後のフォローに加えて、産業領域など職域による支援 を展開していくことが必要と考えられた。本研究成果 は釜石市に報告し、市保健師による地域精神保健活動 の基礎資料として活用された。

- 62 -

東日本大震災被災地域住民のこころの健康に関する研究

中谷敬明・山田幸恵・桐田隆博

― 釜石市健康調査の分析による被災後の市民の精神的健康の実態把握 ―

参照

関連したドキュメント

地区住民の健康増進のための運動施設 地区の集会施設 高齢者による生きがい活動のための施設 防災避難施設

ためのものであり、単に 2030 年に温室効果ガスの排出量が半分になっているという目標に留

 宮城県岩沼市で、東日本大震災直後の避難所生活の中、地元の青年に

(一社)石川県トラック協会 団体・NPO・教育機関 ( 株 ) 石川県農協電算センター ITシステム、情報通信

本部事業として「市民健康のつどい」を平成 25 年 12 月 14

東日本大震災被災者支援活動は 2011 年から震災支援プロジェクトチームのもとで、被災者の方々に寄り添

開発途上国では女性、妊産婦を中心とした地域住民の命と健康を守るための SRHR

東日本大震災において被災された会員の皆様に対しては、昨年に引き続き、当会の独自の支