〔北部防衛衛生学会報告〕
歯科検診結果の通知に関する実態調査
A survey on the information system of annual dental check
船戸美和子,澤井 悦子
(自衛隊札幌病院 看護部)
Key words:歯科検診,検診結果の通知
はじめに
自衛官は平素から口腔衛生状態を良好に維持し,即 応体制をとる必要があると考える。このため陸上自衛 隊では年に一度,定期健康診断時に歯科検診が実施さ れている。歯科検診で指示があればすぐに治療を受け ておかなければならないが,実際はそのまま放置して いる隊員が散見される。
最近,PKO等の海外派遣において,歯や口腔に疾 患があれば要員として指定されないことから,派遣直 前の限られた期間内に,慌てて歯科外来での治療を希 望してきたケースもあった。
どうして治療を受けないのか,その理由は様々であ ろうが,まずは検診結果が本人にきちんと伝わってい るかどうかが重要な鍵を握るのではないかと考えた。
そこで,各医務室において定期健康診断の歯科検診 結果を,健康管理の責任者である部隊等の長や本人に どのように知らせているのかを把握するため,質問紙 調査を行った。
研究目的
医務室が歯科検診結果を,部隊等の長や本人に通知 している現状を把握する。
研究方法
1.研究期間:平成15年11月〜平成16年8月
2.調査対象:北部方面隊 27駐屯地の衛生課(科)長
3.調査方法:質問紙調査
4.調査項目:ア 部隊等の長に検診結果を通知する 方法
イ 部隊等の長に通知している検診結 果の内容
ウ 部隊等の長が検診結果を本人へ伝 えたかどうかの確認の有無 エ 口腔の状況を本人に知らせる方法 オ 要治療の場合,本人に受診を勧め
る方法 5.分析方法:項目毎に単純集計
結果及び考察
回収率は100%,有効回答率100%であった。
医務室が部隊等の長に検診結果を通知する方法につ いては,「身体歴に記入のみ」が19%,「部隊ごとに名 簿にして知らせている」が74%であった。(図1)身 体歴に記入するだけでも結果通知のひとつの手段では
連絡先:〒062−8610 札幌市豊平区平岸1条12丁目1番32号 自衛隊札幌病院看護部 船 戸 美和子
電話:011−831−0161 FAX:011−831−1015
自衛隊札幌病院研究年報 第45巻 29〜31(2004)
図1 検診結果の通知方法
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図5 本人に口腔の状況を知らせる方法(複数回答)
図6 本人に受診を勧める方法(複数回答)
あるが,部隊においては隊員一人一人の状況把握に手 間と時間を要し,活用されづらいと推測できる。結果 が一目でわかる名簿等の一覧表にして知らせた方が,
より伝わり易いと考える。
また,部隊等の長に通知している検診結果の内容に ついては,「判定及び指示区分の両方」が63%,「判定 のみ」は30%であった。(図2)ここで検診の判定区 分をみてみると,A判定は,C2までのう歯が3本以 内とある。(図3)要するに,う歯が3本あっても判 定はAとなり,指示区分は要治療(a)となる。この ため,判定のみの通知では治療の必要の有無がわから ないことになる。治療の必要性を正確に伝えるために も,通知は判定だけではなく,指示区分まで必要であ ろう。調査の結果,判定しか通知していない医務室は 30%もあり,通知内容の再考が求められる。
次に,部隊等の長が検診結果を本人へ伝えたかどう かの確認については,「確認している」26%,
「確認していない」67%であった。(図4)検診結果 は医務室から部隊等の長へ,部隊等の長から本人へ伝 わり,本人の受診に結びつくのが理想的な形であろ う。その実現のためには,医務室で結果伝達後の受診 状況を把握し,受診実績を踏まえた上での部隊等の長 との連携が有効と考える。このような,医務室からの 積極的な働きかけは指揮官の意識改革につながると思 われる。検診結果を本人へ伝えたかどうかを部隊等の 長に確認することはその第一歩であり,ぜひ推し進め たいものである。
また,医務室から口腔の状況を本人に知らせる方法 については,「検診時に歯科医官より知らせる」87%,
「総合判定時に判定官より知らせる」60%であった。
(図5)
さらに,要治療の場合本人に受診を勧める方法につ いては,「検診時に受診を勧める」82%,「総合判定時 に判定官より受診を勧める」45%であった。(図6)
このように,本人へ口腔の状況や受診の必要性が伝 わる機会は十分にあると考える。しかし,その情報を どのように生かすかは本人次第であり,結果を知って 図2 検診結果の通知内容
図3 歯科検診の判定区分
図4 部隊等の長への確認の有無
自衛隊札幌病院研究年報
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図7 通知の実態とあり方
図8 望ましいプロセス 受診という保健行動に移せる人は問題ないが,移せな
い人がいるのも現実である。歯科に関しては,肝臓や 循環器のように2次検診等の形で受診の確認がなされ ることもなく,治療は本人の意志に任されている。よ り強い動機づけを行うためにも,検診の機会を利用 し,本人への働きかけをさらに強化する必要があろう。
ま と め
検診結果の通知の実態は図7に示した通りである。
(図7)今回の調査結果より,現在の通知の方法や内 容では,検診結果が確実に本人に伝わっているとは言 えないことがわかった。効果的に通知するためには,
判定と指示区分の両方を名簿で一覧表にすること,さ らに,本人へ伝えたかどうかの確認までを実施するこ とが必要と考える。
おわりに
最近では,自衛隊という組織に限らず,取り巻く環 境も含めて本人の保健行動をどのようにフォローする かが見直されてきている。環境としての部隊を含めて 考えると,検診結果が医務室から部隊等の長及び本人 まできちんと伝わり,本人が受診などの保健行動をと れるようなプロセスが望まれる。そのためにも相互の 連携を図ることが大切であると考える。(図8)
私たちは自衛隊病院に勤務するものとして,今後と も隊員に対して早期受診の動機づけを行ったり,受診 しやすい環境づくりを推し進めていきたいと思う。そ して,医務室や部隊との連携を密にとりながら,隊員 の口腔衛生のさらなる向上に努めていきたい。
文 献
1)新井宏朋:健康福祉の活動モデルの考え方・作り 方・活かし方,医学書院,1999.
2)堀口逸子:ワークサイトヘルスプロモーションの 観点に立った産業保険の取り組みプリシード・プ ロシードモデルに基づいた質問紙調査,口腔衛生 会誌,48,60−68,1998.
3)福島道子:ヘルスプロモーションとしての地域保
健活動プリシードプロシードモデルの活用,生活 教育,45,7−12,2001.
4)ローレンスW.グリーン他:神馬征峰他訳,ヘル スプロモーション,医学書院,1997.
5)大森広雄:上富良野駐屯地における歯科疾患患者 実 態 調 査 及 び 生 活 習 慣 調 査,防 衛 衛 生,48,
(4,5),107−113,2001.
第45巻(2004)
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