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バリア機能減弱化における基底細胞の役割の検討

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Academic year: 2021

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自然免疫受容体 TLR3 を介した気道上皮

バリア機能減弱化における基底細胞の役割の検討

(要約)

日本大学大学院医学研究科博士課程 内科系呼吸器内科学専攻

岡本 真一

修了年 2019 年

指導教員 權 寧博

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Ⅰ.本研究の目的

気管支喘息(以下喘息)とは, 気道の慢性炎症を本体とし, 臨床症状として 変動性をもった気道狭窄や咳で特徴づけられる疾患と定義されている1.

喘息の病態は遺伝的要因やアレルゲン, 喫煙, 感染(ウイルス)などの環境 要因が相互的に関与しており, なかでも増悪因子の代表であるウイルス感染は, 気道上皮細胞の傷害とそれに伴うバリア機能の破綻を誘導する2,3. そして, 古 典的な獲得免疫機構を介する病態と自然免疫機構を介する病態が存在する. ウ イルスや細菌などの病原微生物由来の構成成分であるpathogen-associated molecular patterns(PAMPs)を気道上皮細胞やマクロファージなどに存在す る, Toll様受容体(Toll like receptor:TLR)などのパターン認識受容体(pattern recognition receptors; PRRs)が認識することで免疫応答が惹起される4,5. 特に TLR3はウイルス由来のdouble stranded RNA(dsRNA)のリガンドであり,

合成dsRNAであるpolyI:Cを認識する4,6. TLRを介した免疫応答が喘息の発 症増悪に関与する報告もみられ7,8, 気道上皮細胞における自然免疫機構が喘息 病態に重要な役割を果たしている.

気道は, 管腔側に存在する杯細胞や線毛細胞, クララ細胞などの上皮細胞お よび基底膜側に存在する基底細胞などで構成されている. 特に上皮細胞間では, Tight junction(TJ)やAdheren junction(AJ)などの細胞間バリア蛋白が存

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在している 9,10. 生体防御機構には, この上皮バリア機構が, ウイルスやダニ抗 原などのアレルゲンを含めた環境因子の侵入を防ぐ重要な役割を果たしている

11. 喘息患者の上皮バリア機能は, 健常者と比較して脆弱であると報告されてい る. これは気道上皮の破綻により, 環境因子が容易に侵入することで, アレルギ ー性気道炎症が惹起するためと考えられている11.このように喘息の病態形成に 気道上皮バリア機能が重要であり, この細胞間結合を増強すること, あるいは 減弱を抑制することが喘息の新たな治療につながる可能性がある.

そこで, 本研究では気道上皮への分化能を有する基底細胞に着目し, 上皮バ リア機能が形成される初期段階に脆弱化をもたらす機序が存在するのではない

かと仮説を立てた. 基底細胞は自己複製能に加え, 杯細胞や線毛上皮細胞への 分化能を有し, 気道上皮の障害の修復に関与している12. 基底細胞にライノウ イルスが感染すること13や, RSウイルス感染により産生された炎症性サイトカ インがその後の上皮への分化に影響をあたえること14が報告されている. しか し, 基底細胞へのウイルス感染が, その後の上皮バリア形成にどのような影響 をあたえるのかを詳細に検討した報告はない. 本研究は, 基底細胞におけるウ イルス感染が, 気道上皮細胞への分化, 特に上皮バリア機能の低下に及ぼす影 響を検討し, 喘息における気道上皮バリアの脆弱性のメカニズムを明らかにす ることを目的とした. そのために, ウイルス感染を模倣する合成dsRNAである

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polyI:Cを用いて基底細胞を刺激し, 分化後の上皮バリア形成にどのように影響

するのかを検討した. また, 網羅的遺伝子解析を用いて, polyI:Cによる気道上 皮バリア形成に影響する遺伝子の同定を試みた.

Ⅱ. 材料と方法

1) 細胞培養

NHBEC, VA10をコラーゲンで処理したトランスウェル上で3日間, 培養液

中で培養(liquid-covered culture:LCC)し, その後細胞を分化誘導するため にトランスウェル上層の培養液を取り除き, 下層の培養液を分化用培地に入れ 替え, 第7日まで培養を継続した(air-liquid interface:ALI).

polyI:C刺激は, 3日間のLCC下のみ10μg/mlで刺激し, その後polyI:C非

存在下でALIとして第7日まで培養した. IFNα・βも同様に, 3日間のLCC 下のみに10U/ml, 100 U/ml, 500 U/mlの濃度に調整したIFNを刺激した.

2)経上皮電気抵抗(Transepithelial electrical resistance;TER)の測定

ALI培養後の上皮バリア機能を評価するために, トランスウェル上層と下層 に置いた電極に電流を流し, 細胞層間の電気抵抗(TER)を測定した. 細胞層 のバリア機能とTERには強い相関関係が見られ, バリアが形成されている細胞

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層ほど高い電気抵抗値を示す. この細胞層間の電気抵抗を測定することにより, 細胞層のバリアの形成やその変化を測定した. 測定はALI培養開始日を第0日 とし, 第7日まで行った.

3)傍細胞透過率(Apparent permeability coefficient ;Papp)の測定

同様に上皮バリア機能評価のため, FITC-デキストラン溶剤の拡散から, 細胞 間の透過性を測定した. ALI培養7日目にFITC-デキストランを含む溶液をト ランスウェル上層に添加し, 60分後にトランスウェル下層から溶液を採取, Fluoroskan Ascentを用いて蛍光測定した.

4)蛍光免疫染色

基底細胞の存在を確認するため, 蛍光免疫染色を行った. NHBEC, VA10を, それぞれALI培養前に遠心機を用いたサイトスピンにより, スライドガラスに 付着させ4%パラホルムアルデヒドで固定した. その後, 基底細胞のマーカーで ある抗CK5抗体, 抗CK14抗体を1次抗体として処理し, 2次抗体は抗マウス IgG抗体 Alexa 488で反応させた.

培養後の細胞間バリア蛋白の確認を, 蛍光免疫染色により行った. VA10の ALI培養7日目で 4% パラホルムアルデヒドによる固定処理をした. PBS

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(Phosphate buffered saline) にて洗浄を行い, 3%のウシ血清アルブミン

(BSA:bovine serum albumin)を添加し 10 分間室温でブロッキングした. その 後, さらにPBSで洗浄を行った後, 一次抗体として, 抗ヒトZonula occludens- 1 (ZO-1) マウスモノクローナル抗体, 抗ヒトE-cadherin (E-cad) ラビットポ

リクローナル抗体を用い, 二次抗体はそれぞれ抗マウスIgG抗体 Alexa 594 と抗ウサギIgG抗体 Alexa 488で反応させ, 蛍光顕微鏡で観察した.

5)small interfering RNA(siRNA)トランスフェクション

VA10にTLR3, TRIF特異的siRNAをLipofectamine™ RNAiMAX を用い

てトランスフェクションし, 24時間後にトランスウェル上に移し, polyI:Cによ る刺激及びALI培養を前述と同様に行った. 経時的なTER測定とデキストラ ン透過性の測定によりバリア機能への影響を検討した.

6)網羅的遺伝子発現解析

NHBEC細胞を, 上述のように非刺激群とpolyI:C刺激群をLCC下で培養し

た. ALI培養後第7日を用いて細胞からtotal RNAを抽出した. total RNAから

cDNA, cRNAの合成を繰り返し, 断片化したDNAへのラベリングを行った.

Agilent RNA 6000ナノキット (Agilent Technologies, Palo Alto, CA)を用いて

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DNAの断片化を確認した. アレイへのハイブリダイゼーションを行い,

Genechip Fluidics Station 450, Genechip Scanner 3000(Affymetrix)を用いて 蛍光強度を測定し, 数値化した. 得られた遺伝子データをTranscriptome Analysis Consoleを用いて統計学的解析を行い, polyI:C刺激により有意に発現 が変動する遺伝子群を同定した.

Ⅲ.結果・まとめ

分化前のNHBECに基底細胞が存在することを確認し, この基底細胞に対す

るpolyI:C刺激が, 上皮バリア形成の減弱を引き起こすことを証明した. 更に, 基底細胞の細胞株であるVA10を用い, NHBECと同様の分化前のpolyI:C刺激 が, 分化誘導後のバリア形成の減弱を誘導した. polyI:CはTLR3のリガンドで あり, TIR-domain-containing adapter-inducing interferon-β(TRIF)はそのア ダプター蛋白として, シグナル伝達に関与している15. 基底細胞へのpolyI:C刺

激がTLR3/TRIF経路に関与しているか検討するためにTLR3及びTRIF特異

的siRNAを用いてVA10における遺伝子ノックダウンを行った. TRL3及び

TRIFをノックダウンしたVA10ではpolyI:Cによるバリア減弱が抑制された.

次に, polyI:C刺激により上皮細胞から産生されることが報告されているⅠ型

Interferon(IFN)16が, 2次的に上皮バリアを減弱させる可能性を検証するた

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めに, IFNα, βをpolyI:Cと同様にVA10に刺激した. その結果, バリア形成 に影響を与えないことを確認した. 以上より, polyI:Cは気道上皮細胞への分化 誘導前の基底細胞に作用し, TLR3/TRIF経路を介して気道上皮バリア形成を減 弱させると考えられた. 更にpolyI:CによるNHBECのバリア形成減弱の分子 病態を解明するために網羅的遺伝子解析を行った. polyI:C刺激により有意差を 持って変動した遺伝子群は59遺伝子であった. 発現が亢進した上位10遺伝子 の中には上皮間葉転換(epithelial mesenchymal transition:EMT)及び炎症 性サイトカイン関連遺伝子(TAGLN, TNFαIP3(A20), IL-6, CXCL8(IL-8), IL-1 βなど)を認めた.

本研究により, 基底細胞へのpolyI:C刺激が, TLR3/TRIF経路を介して気道 上皮バリア機能形成の減弱化を誘導することを明らかにした. 以上のことから, 気道基底細胞へのRNAウイルス感染が, その後の上皮バリア機能の減弱化を 誘導することが, 喘息の発症と関連している可能性が示唆された.

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Ⅳ.引用文献

1. 喘息予防・管理ガイドライン 2018: 社団法人日本アレルギー学会喘息 ガイドライン専門部会監修. 東京: 協和企画; 2018.

2. Comstock AT, Ganesan S, Chattoraj A, et al. Rhinovirus-induced barrier dysfunction in polarized airway epithelial cells is mediated by NADPH oxidase 1. J Virol 2011;85:6795-808.

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6. Satoh T, Akira S. Toll-Like Receptor Signaling and Its Inducible Proteins.

Microbiology spectrum 2016;4.

7. Yokouchi Y, Nukaga Y, Shibasaki M, et al. Significant evidence for linkage of mite-sensitive childhood asthma to chromosome 5q31-q33 near the interleukin 12 B locus by a genome-wide search in Japanese families.

Genomics 2000;66:152-60.

8. Lambrecht BN, Hammad H. The immunology of asthma. Nature immunology 2015;16:45-56.

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参照

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