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論文審査の結果の要旨 氏名:吉田

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Academic year: 2021

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論文審査の結果の要旨

氏名:吉田 傑

博士の専攻分野の名称:博士(工学)

論文題名:自動車事故自動通報のための傷害予測法に関する研究 審査委員:主 査 教授 西 本 哲 也

副 査 教授 柿 崎 隆 夫

■ 日本大学理工学部准教授 富 永 茂

■ 日本大学生産工学部教授 小 田 晃

■ 東京工業大学名誉教授 宇治橋 貞 幸

自動車の予防安全,衝突安全技術の発展によって日本の交通事故による死者数は減少傾向にあり,2016 年は67年ぶりに4,000人を下回り3,904人であった。しかし死者数をこれまで以上に大きく削減するために は従来とは異なる新たな観点からの対策が求められる。死者数削減のための救命に特化した技術として,

事故自動通報システムACN(Automatic Collision Notification)が普及段階にあり,ACNは交通事故を自動 通報することで,消防による覚知,つまり事故の発生が認知されるまでの時間の短縮効果を図っている。

吉田傑氏の学位論文は,ACNに傷害予測の機能を付加しようとするもので,これは先進事故自動通報シス テムAACN(Advanced ACN)と呼ばれる交通事故での救命を目指した機械システムである。本機能の搭載され た自動車では,EDR(Event Data Recorder)に記録された衝撃の大きさの指標である速度変化⊿Vなどの車両 情報,シートベルト着用等の乗員情報を自動通報し,これに基づき傷害予測を実行し,予測結果に基づい て重傷患者の早期救命に活用しようとするシステムである。本論では日本全国で発生したすべての人身事 故を対象として数学モデルを構築することを検討し,日本版の傷害予測アルゴリズムとして開発されたも のである。本論文で示された傷害予測では,交通事故の規模や形態,車両,乗員に関する情報を用いて負 傷者の死亡重傷確率を算出することに成功している。1999年から2008年の10年間に発生した普通自動車ま たは軽自動車の事故500万件の運転席乗員に関する交通事故統合データベースのマクロデータを基にアル ゴリズムを構築している。

第1章の緒論では,日本の交通事故死者数の現状と削減目標について述べた上で,事故自動通報システ ムや日米の傷害予測アルゴリズムの研究動向を述べている。また,これまでの研究動向を踏まえ,死者削 減効果を最大化する自動車事故自動通報のあり方と,通報データを用いた傷害予測アルゴリズムについて の課題を整理し,本研究の目的について述べている。

第2章においては,2次および3次救命救急病院での救命救急活動の実態調査を行い,交通事故負傷者 の病院搬送までの各段階の平均所要時間や第3次救命救急に搬送された負傷者であっても軽傷者の割合が 高いといった救命救急活動の実態について分析することで,先進事故自動通報システムと傷害予測アルゴ リズムの必要性を示している。さらに,適切な救命活動を行うために車載システムから通報可能な傷害予 測アルゴリズムのリスクファクタ(説明変数)を抽出している。

第3章では,実態調査の結果を受け傷害予測結果を伴う事故自動通報が救命救急活動に資する効果につ いて仮説を立てており,そして実態調査で抽出された擬似ΔV,衝突方向,シートベルト着用有無,多重 衝突有無,年齢といったリスクファクタとなる事故データと交通事故統計の死亡重傷発生率との関係を調 査している。

第4章においては,救命救急のための事故自動通報における乗員を対象とした傷害予測アルゴリズムの 具現化を行った。傷害予測アルゴリズムは交通事故統計マクロデータを使い,擬似ΔV,衝突方向,シー トベルト着用有無,多重衝突有無,年齢をリスクファクタとしたロジスティック回帰分析によって構築し ている。得られた傷害予測結果に対し交通事故総合分析センターによる交通事故詳細調査データの実傷害 データを用いて検証を行い,実際の救命救急活動での運用における有効性を明らかにしている。例えば衝 突方向に関しては,ニアサイド側面衝突,ファーサイド側面衝突,正面衝突,後面衝突の順で死亡重傷発 生率が高い予測結果を得ており,これは路上事故の解析結果と符合する。また乗員年齢やベルト着用・多

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重衝突の有無による死亡重傷発生率の影響についても定量的に示している。

第5章においては歩行者事故死者の多いわが国の実情を踏まえ,第4章で乗員を対象に確立した傷害予 測の手法を歩行者事故に適用している。歩行者事故の傷害予測はロジスティック回帰分析の目的関数を死 亡重傷発生率とし,リスクファクタを車種,衝突速度,年齢とする事によって可能としている。これによ り歩行者事故について前例のない歩行者事故傷害予測アルゴリズムをわが国の交通事故統計マクロデータ により構築している。そして乗員と同様に交通事故詳細調査データの実傷害データを用いた検証をした結 果,軽傷者に対する予測誤判定の割合が多く,死亡重傷発生率の判定閾値を医療関係者と共に検討してい くことが必要としている。

第6章では得られた成果の総括を行っている。本論文では自動車事故自動通報を乗車乗員と歩行者事故 に適用し,救命効果の向上に結びつく傷害予測アルゴリズムをわが国の事故統計と救命救急活動の実情を 踏まえて構築できたことを明らかにしている。本研究の成果である傷害予測アルゴリズムは,実運用での 有用性を認められドクターヘリ出動判断早期化のアルゴリズムとして,全国三次救急病院で実証実験が行 われている。

このような研究成果が得られたことは,論文提出者の豊富な学識と優れた研究能力を裏付けるものであ る。よって本論文は,博士(工学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以 上

平成30年2月9日

参照

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