非光合成細菌が保有する
光応答性転写調節蛋白質に関する研究
日 本 大 学 大 学 院 生 物 資 源 科 学 研 究 科 応 用 生 命 科 学 専 攻 博 士 後 期 課 程
角 悟 2018
目 次
緒 言 ... 1
第 1 章 経 緯 と 目 的 ... 3
第 1 節 細 菌 で 発 見 さ れ た 真 核 生 物 型 光 セ ン サ ー ... 3
第 2 節 非 光 合 成 細 菌 に 特 有 の 光 セ ン サ ーLitR/CarH ... 7
第 3 節 非 B1 2型 LitR の 光 応 答 ... 15
第 4 節 Burkholderia 属 細 菌 ... 19
第 5 節 研 究 の 目 的 ... 22
第 2 章 材 料 と 方 法 ... 23
第 3 章 結 果 と 考 察 ... 52
第 1 節 光 応 答 性 転 写 調 節 蛋 白 質 の 多 様 性 に 関 す る 解 析 ... 52
第 1 項 光 応 答 性 転 写 調 節 蛋 白 質 の 分 子 系 統 解 析 ... 52
第 2 項 RNA seq に よ る 光 応 答 性 細 菌 の ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム 解 析 .. 74
第 3 項 小 括 ... 131
第 2 節 ク ラ ス III LitRに お け る 光 誘 導 性 遺 伝 子 の 役 割 の 検 証 ... 132
第 1 項 光 誘 導 性 遺 伝 子 の 転 写 解 析 ... 132
第 2 項 光 誘 導 性 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 構 造 に 関 す る 解 析 ... 149
第 3 項 葉 酸 合 成 の 光 促 進 ... 162
第 4 項 小 括 ... 175
第 3 節 ク ラ ス III LitRの 機 能 の 検 証 ... 176
第 1 項 光 サ イ ク ル 反 応 の 観 測 ... 176
第 2 項 光 感 知 ド メ イ ン の 分 子 構 造 ... 192
第 3 項 小 括 ... 220
第 4 章 総 括 ... 221
参 考 文 献 ... 224
謝 辞 ... 239
1 緒 言
光 は 地 球 上 の 生 物 の 生 命 活 動 に 欠 か せ な い 環 境 因 子 の 一 つ で あ る 。 植 物 を
は じ め と す る 光 合 成 生 物 は 光 を 利 用 し て グ ル コ ー ス な ど の 生 命 活 動 の エ ネ ル
ギ ー 源 を 産 生 し 、 そ れ を 動 物 な ど の 従 属 栄 養 生 物 が 栄 養 分 と し て 要 求 す る 。
ま た 、 動 物 は 視 覚 に よ っ て 光 を 情 報 と し て 処 理 し 、 そ れ に 準 じ た 運 動 が で き
る 。こ の よ う な 高 等 生 物 の 光 セ ン シ ン グ メ カ ニ ズ ム の 解 析 は 進 め ら れ て き た 。
一 方 、 我 々 の 肉 眼 で は 見 え な い よ う な 微 生 物 に お い て も 高 等 生 物 が 有 す る も
の に 類 似 す る 光 セ ン サ ー 蛋 白 質 が 分 布 し て お り 、 同 様 に 光 に 応 答 す る シ ス テ
ム を 有 し て い る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。例 え ば 、光 回 復 酵 素-ク リ プ ト ク ロ ー ム フ ァ ミ リ ー は 、 は じ め バ ク テ リ ア の 光 依 存 的 な DNA 修 復 酵 素 と し て
発 見 さ れ た が 、 動 物 ・ 植 物 で は 概 日 リ ズ ム に 関 与 す る 時 計 遺 伝 子 の 一 部 と し
て 機 能 す る こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 こ の よ う に 、 ほ と ん ど の 光 セ ン サ ー
は 生 物 界 に 広 く 分 布 し 、そ の 生 命 活 動 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。さ ら に 、
ロ ド プ シ ン が オ プ ト ジ ェ ネ テ ィ ク ス 技 術 と し て 応 用 利 用 さ れ る こ と か ら 、 光
応 答 メ カ ニ ズ ム の 研 究 は 基 礎 と 応 用 面 に お い て も 重 要 で あ る 。
LitR/CarH フ ァ ミ リ ー は 、 ビ タ ミ ン B1 2 を ク ロ モ フ ォ ア と す る バ ク テ リ ア
に 特 有 の 光 セ ン サ ー で あ る 。 当 初 、 放 線 菌 Streptomyces coelicolor A3(2)の
2
光 依 存 的 な カ ロ テ ノ イ ド(Crt)生 産 を 制 御 す る 蛋 白 質 と し て 同 定 さ れ 、そ の
後 の 研 究 で 様 々 な 非 光 合 成 細 菌 に お け る Crt 生 産 の 光 誘 導 に 関 与 す る こ と が
明 ら か に な っ た 。 興 味 深 い こ と に 、 こ の 類 似 蛋 白 質 は 一 部 の 非 光 合 成 細 菌 群
に し か 分 布 し て い な い 。 さ ら に 、 そ の 光 感 知 ド メ イ ン は 多 様 で あ り 、 そ の 領
域 の 推 定 機 能 が 未 知 で あ る こ と か ら 新 し い 光 セ ン シ ン グ メ カ ニ ズ ム の 存 在 を
示 唆 し て い る 。
本 研 究 は 、 非 光 合 成 細 菌 が 保 有 す る 光 応 答 性 転 写 調 節 蛋 白 質 の 多 様 性 に 関
す る 解 析 を し た う え で 、 新 規 な 光 応 答 メ カ ニ ズ ム を 解 明 す る こ と を 目 的 と し
た 。本 論 文 の 第 1 章 で は 細 菌 に お け る 光 応 答 メ カ ニ ズ ム に 関 す る 知 見 を 中 心 に 概 説 し 、 第 3 章 第 1 節 で は LitR フ ァ ミ リ ー な ど の 光 セ ン サ ー 蛋 白 質 の 分
類 と そ れ ら を 保 有 す る 細 菌 群 の ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム 解 析 の 結 果 を 記 述 し た 。
そ の 結 果 を 踏 ま え 、 ク ラ ス III LitR を 保 有 す る グ ラ ム 陰 性 の 土 壌 細 菌 Burkholderia multivorans を 分 子 生 物 学 的 な モ デ ル に 選 定 し 、本 菌 を 対 象 と し
て 実 施 し た 遺 伝 生 化 学 的 研 究 の 成 果 と 考 察 を 第 3 章 第 2 節 以 降 に 記 述 し た 。
3 第1章 経 緯 と 目 的
第1節 細 菌 で 発 見 さ れ た 真 核 生 物 型 光 セ ン サ ー
光 は 、 多 く の 生 物 の 生 命 活 動 に 重 要 な 役 割 を 果 た し て い る 。 植 物 や 光 合 成
細 菌 の よ う な 光 合 成 能 を 持 つ 生 物 は 光 エ ネ ル ギ ー を 得 る こ と に よ り 生 命 を 維
持 で き る 。 ま た 、 動 物 は 、 眼 で 可 視 光 を 受 容 す る こ と に よ り 周 囲 の 情 報 を 得
る こ と が で き 、 そ れ に 準 じ た 行 動 を と る こ と が で き る 。 一 方 、 太 陽 光 に 含 ま
れ る 紫 外 線 は ピ リ ミ ジ ン ダ イ マ ー を 生 じ さ せ る こ と に よ る DNA 損 傷 を 引 き
起 こ し 、 変 異 し た 細 胞 を 生 じ さ せ る 。 ま た 、 細 胞 内 の フ ラ ビ ン や ポ ル フ ィ リ
ン な ど の 光 増 感 作 用 を 持 つ 物 質 が 光 照 射 に よ っ て 活 性 酸 素 の 一 種 で あ る 一 重
項 酸 素 を 発 生 さ せ る 1。そ れ は 、蛋 白 質 や 脂 質 、核 酸 の よ う な 高 分 子 化 合 物 を
破 壊 し 、 細 胞 に 対 し て ダ メ ー ジ を 与 え る 。 動 物 や 植 物 で は メ ラ ニ ン や カ ロ テ
ノ イ ド な ど 色 素 を 生 産 し て そ の 酸 化 ス ト レ ス に 対 抗 し て い る こ と が 考 え ら れ
る 。
光 受 容 に 関 す る 分 子 生 物 学 的 検 討 は 、 真 核 生 物 や 光 合 成 細 菌 の 光 セ ン サ ー
分 子 の 解 析 を 中 心 に 進 め ら れ て き た 。 植 物 な ど が 行 う 光 合 成 に は ク ロ ロ フ ィ
ル 分 子 が 、 動 物 の 視 覚 に は ロ ド プ シ ン が 光 受 容 に 重 要 な 役 割 を 果 た す こ と が
明 ら か に な っ て い る 。 光 合 成 を 行 う バ ク テ リ ア Rhodobacter spaheroides で
4
は 、LOV(light-oxygen-volatge) 型 光 セ ン サ ーPpsR と BLUF (blue-light sensing using flavin) 型 光 セ ン サ ーAppA に よ っ て 光 合 成 に 関 与 す る 遺 伝 子
群 や カ ロ テ ノ イ ド 合 成 遺 伝 子 群 の 転 写 調 節 を 担 う こ と が 明 ら か さ れ て き た
2, 3。 ま た 、 大 腸 菌 や 放 線 菌 な ど で 発 見 さ れ た 光 回 復 酵 素 は 光 エ ネ ル ギ ー を 利
用 し て DNA 損 傷 を 修 復 す る 機 能 を 持 つ が 、 そ れ に 類 似 の 蛋 白 質 ク リ プ ト ク
ロ ー ム は 動 物 や 植 物 な ど の 概 日 リ ズ ム に 関 与 す る こ と が 知 ら れ て い る 4。
さ ら に 、 一 部 の 細 菌 は 真 核 生 物 で 発 見 さ れ た 光 セ ン サ ー を 有 し て お り 、 そ
れ を 介 し た 光 応 答 を 示 す こ と が 明 ら か に な り つ つ あ る 。 こ れ ま で に バ ク テ リ
ア で 特 定 さ れ た 光 セ ン サ ー に は 6 つ の タ イ プ が あ る 5( 図 1-1)。 バ ク テ リ オ ロ ド プ シ ン は 、 海 洋 性 細 菌 や ア ー キ ア で 発 見 さ れ た 動 物 の 視 覚 を 司 る ロ ド プ
シ ン に 類 似 な 蛋 白 質 で あ り 、 光 依 存 的 な プ ロ ト ン ポ ン プ と し て 機 能 す る 。 赤
色 光 セ ン サ ー 蛋 白 質 フ ィ ト ク ロ ム や 青 色 光 受 容 体 LOV、BLUF は 植 物 で 発 見
さ れ た 光 セ ン サ ー で あ る が 、 そ れ ら は 様 々 な バ ク テ リ ア の 光 誘 導 的 な 色 素 生
産 や 形 態 変 化 、 走 光 性 な ど に 関 与 す る こ と が 明 ら か に さ れ て い る 。 多 く の 光
セ ン サ ー 蛋 白 質 は 生 物 ド メ イ ン を 超 え て 分 布 し 、 そ れ に 従 っ た 光 応 答 を 示 す
こ と が 明 ら か に な っ て い る 。 一 方 、 一 部 の 非 光 合 成 細 菌 で 見 出 さ れ た 光 セ ン
サ ーLitR(Light-induced transcription, Regulator)は 、光 合 成 細 菌 や 真 核 生 物
5
に 認 め ら れ な い 独 自 の も の で あ る こ と が 明 ら か に な り つ つ あ る 。
6
図 1-1 バ ク テ リ ア で 発 見 さ れ た 光 セ ン サ ー
7
第2節 非 光 合 成 細 菌 に 特 有 の 光 セ ン サ ーLitR/CarH
LitR/CarHは 、放 線 菌Streptomyces coelicolor A3(2)6や 好 熱 性 細 菌Thermus
thermophilus7、 グ ラ ム 陽 性 の 土 壌 細 菌 Bacillus megaterium8、 グ ラ ム 陰 性 の
粘 性 細 菌 Myxococcus xanthus9に お け る 黄 色 色 素 カ ロ テ ノ イ ド(Crt)生 産 の 光 誘 導 に 関 与 す る MerR 型 の 転 写 調 節 因 子 で あ る 。本 蛋 白 質 は N 末 端 領 域 に DNA結 合 ド メ イ ン を 、C 末 端 領 域 に B12結 合 ド メ イ ン を 保 有 し 、 光 依 存 的 な
Crt 生 産 の 調 節 に 重 要 な 役 割 を 担 う 。そ の 生 理 学 的 な 意 義 は 、Crt の 抗 酸 化 作
用 に よ る 光 酸 化 ス ト レ ス へ の 防 御 1 0, 11と 暗 条 件 で そ の 生 産 を 抑 制 す る こ と に
よ る エ ネ ル ギ ー の 節 約 で あ る こ と が 考 え ら れ る 。
生 化 学 的 お よ び 構 造 学 的 な 解 析 に よ り LitRはB12( ア デ ノ シ ル B12: AdoB1 2)
を ク ロ モ フ ォ ア と す る 新 規 な 光 セ ン サ ー で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 8 ,9 , 12
( 図 1-2 お よ び 1-3)。 暗 条 件 下 で は LitR-AdoB1 2複 合 体 が 標 的 遺 伝 子 の オ ペ
レ ー タ ー 上 に 結 合 し て そ の 転 写 を 抑 制 す る( 図 1-4)。緑 か ら 青 の 波 長 帯 の 光
が 照 射 さ れ る こ と で 、ヒ ド ロ キ シ B1 2(OHB1 2)に 光 分 解 さ れ て 構 造 変 化 を 引
き 起 こ す 。こ れ に よ っ て 、本 複 合 体 の 標 的 プ ロ モ ー タ ーDNA へ の 親 和 性 が 低 下 し 、 そ こ に RNA ポ リ メ ラ ー ゼ が リ ク ル ー ト さ れ る こ と に よ っ て 光 誘 導 性
遺 伝 子 の 転 写 を 開 始 さ せ る 。
8
B. megaterium の 遺 伝 子 制 御 メ カ ニ ズ ム は 単 純 で あ り 、LitR-AdoB1 2複 合 体
と 生 育 に 必 須 なRNAポ リ メ ラ ー ゼ シ グ マ 因 子Aを 含 む RNAポ リ メ ラ ー ゼ の
み で 光 依 存 的 な 転 写 調 節 ス イ ッ チ が 構 成 さ れ る 9。 一 方 、S. coelicolor や M.
xanthus で は ま ず LitR の 機 能 に よ っ て そ れ ぞ れLi tS とC a rQ の 光 依 存 的 な 発
現 が お こ り 、 次 に そ れ ら を 含 む RNA ポ リ メ ラ ー ゼ に よ っ て 光 誘 導 性 遺 伝 子
群 の 転 写 が 開 始 さ れ る 6, 1 3。 ま た 、T. thermophilus で は 、LitR に よ っ て 発 現
誘 導 さ れ る 転 写 活 性 化 因 子 LdrP が Crt 合 成 遺 伝 子 群 の 転 写 開 始 を 担 う こ と
が 明 ら か に な っ て い る 1 4。
近 年 、ゼ ブ ラ フ ィ ッ シ ュ,や ヒ ト 細 胞, モ デ ル 植 物 シ ロ イ ヌ ナ ズ ナ な ど の 高 等 生 物 で LitR が 制 御 技 術 に 応 用 さ れ て い る 1 5, 1 6。ま た 、細 胞 組 織 培 養 な ど に
用 い ら れ る エ ア ロ ゾ ル( 成 形 可 能 な 高 分 子 材 料 )に LitR が 利 用 さ れ て い る こ
と も 報 告 さ れ て い る 1 7。
こ の LitR に 相 同 性 を 示 す 蛋 白 質 は グ ラ ム 陽 性・陰 性 を 問 わ ず 広 範 な 非 光 合
成 細 菌 種 に 分 布 し( 図 1-5)、そ の 多 く は C 末 端 領 域 に B12結 合 ド メ イ ン を 有
し て い る 18 , 19( 図 1-6)。一 方 、一 部 の LitR の そ の 領 域 は 部 分 的 な B1 2結 合 ド メ イ ン が 推 定 さ れ て い る 、 あ る い は 、 機 能 既 知 の ド メ イ ン と 相 同 性 を 示 さ な
い も の が 含 ま れ る 。 こ れ は 、LitR フ ァ ミ リ ー の 光 感 知 ド メ イ ン の 構 造 が 多 様
9
で あ る こ と を 示 唆 し て い る 。 そ れ ら の 中 に は 、 こ れ ま で に 知 ら れ て い な い 光
感 知 機 構 の 存 在 が 示 唆 さ れ る 。
10
図 1-2 LitR/CarH の 立 体 構 造
11
図 1-3 ビ タ ミ ン B12の 化 学 構 造
12
図 1-4 LitR の 光 応 答 メ カ ニ ズ ム
13
図 1-5 LitRに 相 同 性 を 示 す 蛋 白 質 の 分 布
14
図 1-6 LitR に お け る 光 感 知 ド メ イ ン の 多 様 性
15 第3節 非 B12型 LitRの 光 応 答
予 備 調 査 に お い て 、 非 B1 2型 LitRを 保 有 す る グ ラ ム 陰 性 細 菌 Burkholderia multivorans LMG17588 (ATCC 17616)が 光 に 応 答 す る こ と が 判 明 し た 2 0。 本
菌 は LitR 類 似 蛋 白 質 を 保 有 す る が 、 そ の C 末 端 領 域 は 機 能 既 知 の ド メ イ ン と 相 同 性 を 示 さ な い 。 ま た 、 本 菌 で は 光 照 射 に よ る 色 素 生 産 あ る い は 形 態 的
な 変 化 が 認 め ら れ な い 。そ こ で 、DNAマ イ ク ロ ア レ イ を 用 い た 予 備 調 査 を 行
い ( 表 1-1)、32 個 の 遺 伝 子 の 転 写 が 光 照 射 に よ っ て 2 倍 以 上 上 昇 し 、 そ の
う ち の 19 個 は LitR類 似 蛋 白 質 を コ ー ド す る BM5678 の 周 辺 に コ ー ド さ れ て
い る こ と を 明 ら か に し た 。そ れ ら の 遺 伝 子 群 に は 転 写 調 節 に 関 与 す る ECF 型 シ グ マ 因 子 遺 伝 子 litS や 光 回 復 酵 素 遺 伝 子 phrB、 葉 酸 合 成 関 連 遺 伝 子 folE、
シ ク ロ プ ロ パ ン 環 脂 肪 酸 合 成 酵 素 遺 伝 子 cfaB な ど が 含 ま れ て い た 。 半 定 量
RT-PCR の 結 果 か ら 、 青 色 光 は 特 異 的 に こ れ ら の 遺 伝 子 群 の 転 写 を 上 昇 さ せ
る こ と が 判 明 し た ( 図 1-7)。 さ ら に 、GST タ グ を 融 合 さ せ た B. multivorans
の LitR 組 換 え 蛋 白 質 は 280 nm と 340 nm の 2 つ の 極 大 吸 収 を 有 す る 特 徴 的
な ス ペ ク ト ル を 示 す こ と が 観 察 さ れ た 20( 図 1-8)。そ の 吸 収 ス ペ ク ト ル は B1 2
の も の と は 異 な る こ と か ら 、 新 規 な 光 感 知 メ カ ニ ズ ム を 有 す る こ と が 示 唆 さ
れ た 。
16
表 1-1 DNA マ イ ク ロ ア レ イ 解 析 で 特 定 さ れ た B. multivorans の 光 誘 導 性 遺 伝 子
Gene name Expression
Light/Dark Direction Annotation for product BMULJ_05674 5.8 + hypothetical protein
phrB2 BMULJ_05675 12.0 - deoxyribodipyrimidine photo-lyase BMULJ_05676 6.7 - hypothetical protein
BMULJ_05677 5.0 + putative esterase/lipase
litR BMULJ_05678 2.9 - MerR family transcriptional regulator cryB BMULJ_05679 7.5 + deoxyribodipyrimidine photolyase-
related protein
BMULJ_05681 4.3 + putative short-chain alcohol dehydrogenase
BMULJ_05682 3.4 + hypothetical protein
litS BMULJ_05687 12.6 - ECF subfamily RNA polymerase sigma-70 factor
folE2 BMULJ_05688 19.1 - GTP cyclohydrolase I BMULJ_05689 10.2 - hypothetical protein BMULJ_05690 3.2 - hypothetical protein BMULJ_05691 18.5 - hypothetical protein
cfaB1 BMULJ_05692 23.0 - cyclopropane-fatty-acyl-phospholipid synthase
BMULJ_05693 22.4 - hypothetical protein
BMULJ_05694 21.9 - predicted NAD/FAD-binding protein BMULJ_05695 26.0 - outer membrane lipocalin-like protein cfaB2 BMULJ_05696 26.1 - cyclopropane-fatty-acyl-phospholipid
synthase
BMULJ_05697 12.1 - predicted membrane protein
17
図 1-7 青 色 光 に 特 異 的 な 光 誘 導 性 遺 伝 子 群 の 転 写 上 昇
18
図 1-8 B. multivorans 由 来 の LitR 組 換 え 蛋 白 質 の 吸 収 ス ペ ク ト ル
19 第4節 Burkholderia属 細 菌
B. multivorans は-プ ロ テ オ バ ク テ リ ア に 属 す る グ ラ ム 陰 性 細 菌 で 、B.
cepacia や B. cenocepacia、 B. vietnamiensis な ど が 含 ま れ る Burkholderia
cepacia complex (BCC)に 属 す る 2 1。BCC は 動 物 や 植 物 、 川 、 土 壌 、 根 圏 、
化 学 汚 染 土 壌 を 含 む 様 々 な 環 境 か ら 単 離 さ れ 、 そ れ ら の 環 境 に 適 応 す る た め
に 優 れ た 代 謝 能 を 有 す る 。
B. multivorans LMG17588(ATCC 17616) は 、 ア ン ト ラ ニ ル 酸 を 豊 富 に
含 ん だ 土 壌 か ら 単 離 さ れ 2 2、 こ の 細 菌 の 全 ゲ ノ ム 配 列 は 2 つ の グ ル ー プ に
よ っ て 決 定 さ れ た 23 ,2 4。 本 菌 は 3.4Mb、2.4Mb お よ び 0.9Mb の 3 つ の 環 状 染 色 体 お よ び 1.6Mb の プ ラ ス ミ ド pTGL1 を 有 す る 。 B. multivorans の ゲ ノ
ム 情 報 に は 、 サ リ チ ル 酸 塩 、 安 息 香 酸 塩 、 フ タ ル 酸 塩 、4-ヒ ド ロ キ シ 安 息 香
酸 塩 、4-ヒ ド ロ キ シ フ ェ ニ ル ピ ル ビ ン 酸 塩 な ど の 芳 香 族 化 合 物 の 炭 素 代 謝 お
よ び 同 化 に 関 与 す る 遺 伝 子 を 含 ん で い る 2 5。 こ の こ と か ら 、 難 分 解 性 の 汚 染
土 壌 の 浄 化 へ 利 用 さ れ る こ と が 期 待 さ れ て い る 。
一 部 の Burkholderia 属 細 菌 は LitR類 似 蛋 白 質 を 保 有 し 、 そ の 遺 伝 子 の 周 辺 に B. multivorans の DNA マ イ ク ロ ア レ イ 解 析 で 特 定 さ れ た 光 誘 導 性 遺 伝
20
子 群 が 分 布 し て い る ( 図 1-9) こ と か ら 、 そ れ ら の 細 菌 種 も B. multivorans
と 同 様 な 光 応 答 を 示 す こ と が 予 想 さ れ る 。
21
図 1-9 Burkholderia 属 細 菌 に お け る LitR の 分 布
22 第5節 研 究 の 目 的
本 研 究 は LitR フ ァ ミ リ ー の 分 子 系 統 的 な 解 析 を 行 い 、新 規 な 光 セ ン サ ー と
予 想 さ れ る も の を 見 出 す こ と を 第 一 の 目 的 と し た 。 ま た 、 予 備 調 査 で 光 応 答
に 関 与 す る と 考 え ら れ る MarR型 転 写 調 節 蛋 白 質 LimRとTetR 型 転 写 調 節 蛋 白 質 の 分 類 も 行 っ た 。 次 に 、 新 規 な 光 セ ン シ ン グ 機 構 を 有 す る と 予 想 さ れ た
細 菌 種 の 光 応 答 を ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム 解 析 に よ っ て 光 応 答 を 確 証 す る こ と
を 試 み た 。
さ ら に 、 選 抜 し た モ デ ル 株 の 分 子 生 物 学 的 な 検 証 を 詳 細 に 行 う こ と で 、 新
規 な 光 応 答 メ カ ニ ズ ム の 解 明 を 試 み た 。 こ れ ら に よ っ て 、 非 光 合 成 細 菌 の 光
応 答 メ カ ニ ズ ム の 多 様 性 と 潜 在 性 を 提 唱 す る こ と を 目 指 し た 。
23 第2章 材 料 と 方 法
使 用 菌 株
Burkholderia multivorans LMG17588( 野 生 株 ) B. multivorans litR
B. multivorans litR/litR B. multivorans litS B. multivorans litS/litS Escherichia coli HST08
E. coli S17-1 pir
E. coli Rosetta2(DE3)pLysS
E. coli Rosetta2(DE3)pLysS/pGEX-6P-2::litRbmj-His E. coli XL1-Blue MRF’ Kan
E. coli BacterioMatch II Validation Reporter Enterococcus hirae NBRC 3181
Vibrio campbellii ATCC BAA-1116 V. campbellii luxA
Chromobacterium violaceum ATCC 31532
24 Erwinia tasmaniensis ET1/99
Pseudomonas aeruginosa PAO1
Burkholderia plantarii NBRC 104884T
Rhodococcus jostii RHA1
E. coli Rosetta2(DE3)pLysS/pGEX-6P-2::litRvha-His
使 用 プ ラ ス ミ ド と DNA
Burkholderia vietnamiensis G4 由 来 染 色 体 DNA(Deutsche Samlung von
Mikroorganismen und Zellkulturen)
pK18mobsacB pGEX-6P-2
pGEX-6P-2::litRbmj-His
pET26b(+)
pUTmini-Tn5 Cm
pTRG
pROMOTER
25 使用プライマー
表2-1 プライマーリスト:遺伝子破壊株と遺伝学的相補株の作製
Name Sequence (5′-3′) a Restriction
enzyme b
DisfolE2F TGAGCATTGCAGAACGAAGTC -
DisfolE2R TGAATCACGCTGTTGGTCATC -
DisfolE1F GGTACCCGGGGATCCCTACGACGAAATGATCGTG - DisfolE1R GCCAGTGCCAAGCTTACGTATTCGTCAGGTTCAC - P5689cmpF GCGGCCGCTGACTCAAACATGATGCATG NotI P5689cmpMR(Bm) CTCGAGGGATCCGGGGGACTCCTTGGTCGATTC BamHI
folE2cmpMF CTCGAGGGATCCATGGGAAATCTGATCGACG BamHI folE2cmpR GCGGCCGCTTATGCATTCTTTCCCGGC NotI
a制限酵素サイトを下線に示す。
bは制限酵素サイトが存在しないことを示す。
26
表2-2 プライマーリスト:定量RT-PCR
Name Sequence (5′-3′)
rpoDbmjF(QRT) CAAAGACGACAGGCGGAAAG rpoDbmjR(QRT) TGGCGGAAGAAGCAGACTTG BM5674F(QRT) GCACACGGTTCGCATTGTC BM5674R(QRT) TCGCAGCTTGCCCAGATAAC phrB2bmjF(QRT) CAGGCTCTCGCCGTATCTTC phrB2bmjR(QRT) ACACCTGCCGAACCGATATG BM5677F(QRT) ACAGATAGCCGCCTTGCTTG BM5677R(QRT) AGCGGCAAGAAGTCATACGC litRbmjF(QRT) ATTGACGACGCGAGCGAAC litRbmjR(QRT) GAGCTGCGACACGACATCTTC
cryBF(QRT) CGCATCGAGTACCTGCTGTC cryBR(QRT) CGCGTCGTGTAGAAATGTCC BM5680F(QRT) GGATCGCCCATGACACATC BM5680R(QRT) CGCTTCCAGATGAGCCTGAC BM5681F(QRT) TTCAACGCTGCTCACTGCAC BM5681R(QRT) ACAACGTCTCCGCAAGAACG BM5682F(QRT) CGTCGCGTCACGATGTTTAC BM5682R(QRT) GAATCACGCTCCACCCGTAG litSbmjF(QRT) CCGTTCTGCCTGACGAAGC litSbmjR(QRT) CAGCAAGCGGTCGAGTTCC folE2bmjF(QRT) CCTCTGTCGCTCATCATTCG folE2bmjR(QRT) TGTTGTCGTTGGCATGGAAG BM5689F(QRT) AACACGCAATCACGCCATC BM5689R(QRT) ACGCCCGATCAATGAAGC BM5694F(QRT) GCGGTGCTCCATACCGATAC BM5694R(QRT) CCGCTCAGGTAGTTCCATGC cfaB2bmjF(QRT) GCTTCTTCGAGGCCCATCTC cfaB2bmjR(QRT) CGTTGCCGTTCGGGTAATAG dnaAbmjF(QRT) GGCGTTCGACGATTTCAAGC dnaAbmjR(QRT) CGAACGCGTAGAAGAATTCC
27
表2-3 プライマーリスト:半定量RT-PCR
Name Sequence (5′-3′)
litRbmjF(semi) CTCCACGAAGATGTCGTGTC litRbmjR(semi) ACTCACACTTGACGGTGGTG phrB2bmjF(semi) CTCCGAATTGCCGTATGAAT phrB2bmjR(semi) GGTGTGCGCTTTCGAGTAAC
litSbmjF(semi) CAAGACGTGTTCACGACAGC litSbmjR(semi) CGAATCCAGCTCTTCATCGT folE2bmjF(semi) GCATTGCAGAACGAAGTC folE2bmjR(semi) CGTCCATACTTCGACAGG cfaB2bmjF(semi) TGCTGTCGATCGAGATGTTC cfaB2bmjR(semi) CGTAGACGGTGTCGAAAATG rpoDbmjF(semi) AGGAAACCAACCGTCAGATG rpoDbmjR(semi) TCGTCTCGATCATGTGAACC cfaAbmjF(semi) ACTTCAATCACACGAAGAGC cfaAbmjR(semi) GAGATCGACTGGTTCTGC cfaB1bmjF(semi) TATACTTCAACACGCTCAGG cfaB1bmjR(semi) GCAATAGGCGAGATAGAGC phrB1bmjF(semi) TCATCTGCTCTACCACTTCC phrB1bmjR(semi) GGTTCTTGGTCAGAAAGCTC
cryBbmjF(semi) CTACAGCGACTCGATATTCC cryBbmjR(semi) GATGAGCAATTACTGCAAGG folE1bmjF(semi) CTACGACGAAATGATCGTG folE1bmjR(semi) GTCATCTTTTCCTGGATCTG folB1bmjF(semi) CTACGAGGTGCACATCAAC folB1bmjR(semi) GTTTCCTGCAGATGGATG folB2bmjF(semi) GGATCGATTACGACGGCTAC folB2bmjR(semi) CGTCCACCGCAGGTAATC
folKbmjF(semi) GAAGATCGAACATCACTTCG folKbmjR(semi) GTCTGCACCTTCTCGATG folPbmjF(semi) ACTTGATCAACGACATCTGG folPbmjR(semi) CAGCAGCGCATAGTTGTC folCbmjF(semi) GGGCTTCTTTCCGTACAC folCbmjR(semi) TTCTCGGATGCTCTTTTTAG
28
表2-3(続き) プライマーリスト:半定量RT-PCR
Name Sequence (5′-3′)
folAbmjF(semi) GAAACTTCCCGAAGACCTC folAbmjR(semi) GTGACGATCAGCTTGTCC
29
表2-4 プライマーリスト:One-hybridシステム法 Name Sequence (5′-3′) a
litSbmjF(pTGR) AGAAACCAGAGGCGGCCGGATCC ATGAACCGTTCGCACGAAT
litSbmjR(pTGR) GAGCGCCAGCTCAGACTGAATT TTACTGCTCCAGATAGATCT PrpoDbmjF
(pROMOTER)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT TGGACTATGATGAAAACGTC PrpoDbmjR
(pROMOTER)
ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATCGCGAATCTCGCCTCT PlitRbmjF
(pROMOTER)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT CATGGGACGCTCCGCCATG PlitRbmjR
(pROMOTER)
ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATCGTTGTTCTCCTGAAG P5676F
(pROMOTER)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT CATTCAAATCTCCGTAACG P5676R
(pROMOTER)
ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATGATCGCGCGGGATGC P5677F
(pROMOTER)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT GGATGCACGATTGGGAAA P5677-
(pROMOTER)
ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATTCAAATCTCCGTAACG P5679F
(pROMOTER)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT CATCGTTGTTCTCCTGAAG P5679R
(pROMOTER) ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATGGGACGCTCCGCCAT P5689F
(pROMOTER) GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT TGACTTCGCGTTGACGCA P5689R
(pROMOTER) ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CACGGGGGACTCCTTGGT P5697F
(pROMOTER/SLic)
GAAAAAGTGGGGGATCCGAATT CATCCCGTTTCATCTCCAC P5697R
(pROMOTER)
ATCTTCGACAAGGATCCTCTAG CATACGGGCTCCGGGGGC
30
表2-5 プライマーリスト:蛋白質発現用ベクター
Name Sequence (5′-3′) a Restriction
enzyme b
litRbmj-F CTCGAGGGATCCATGCCCCCTCGCAAGGATCGC BamHI litRbmj-His6-R CTCGAGGGATCCTAGTGGTGGTGGTGGTGGTG
CTGCGCTTTCAGGTCCGG BamHI
litRbmjF(81-323) CTCGAGGGATCCGAGGAGCTCGAGGCGATGT BamHI litRbmjF(100-323) CTCGAGGGATCCGGCGTGAGCCTCGCGGTC BamHI litRbmjF(200-323) CTCGAGGGATCCCAGACCAATCCTGCGTCCATC BamHI
litRbmj-His6-R (200-323)
CTCGAGGGATCCTAGTGGTGGTGGTGGTGGTG
CTGACCTTCCGTCGAGCG BamHI
litRbviF(6P2) GGATCCATGTCCGCTCGCAAGGATCG BamHI litRbviR(6P2) GAATTCTAGACCGACTTCGGCGCTT EcoRI
RC251AMR CGGGCACTCAGCCTTGAC -
RC251AMF GTCAAGGCTGAGTGCCCG -
RC253AMR GTGACGCGGAGCCTCACA -
RC253AMF TGTGAGGCTCCGCGTCAC -
RC274AMR GCGCGATACAGCTTCGTC -
RC274AMF GACGAAGCTGTATCGCGC -
RC251SMR CGGGCACTCAGACTTGAC -
RC251SMF GTCAAGTCTGAGTGCCCG -
RC253SMR GTGACGCGGGGACTCACA -
RC253SMF TGTGAGTCCCCGCGTCAC -
RC274SMR GCGCGATACGGTTTCGTC -
RC274SMF GACGAATCCGTATCGCGC -
RW228AMR GAGCGCAGAGCCAGCCCG -
RW228AMF CGGGCTGGCTCTGCGCTC -
RF267AMR GTATCGCTCGGCCGCACTGAG -
RF267AMF CTCAGTGCGGCCGAGCGATAC -
RY271AMR TCGTCGCTGGCTCGCTCGAAC -
RY271AMF GTTCGAGCGAGCCAGCGACGA -
RF267WMR GTATCGCTCCCACGCACTGAG -
RF267WMF CTCAGTGCGTGGGAGCGATAC -
a制限酵素サイトを下線に示す。
bは制限酵素サイトが存在しないことを示す。
31
表2-5(続き) プライマーリスト:蛋白質発現用ベクター
Name Sequence (5′-3′) a Restriction
enzyme b
RF267YMR GTATCGCTCGTACGCACTGAG -
RF267YMF CTCAGTGCGTACGAGCGATAC -
RY271WMR TCGTCGCTCCATCGCTCGAAC -
RY271WMF GTTCGAGCGATGGAGCGACGA -
RY271FMR TCGTCGCTGAATCGCTCGAAC -
RY271FMF GTTCGAGCGATTCAGCGACGA -
a制限酵素サイトを下線に示す。
bは制限酵素サイトが存在しないことを示す。
32
表2-6 プライマーリスト:ゲルシフトアッセイ
Name Sequence (5′-3′) a Restriction
enzyme b
pMD19F(Cy5) Cy5-TACGCGCGGATCTTCCAGAG -
pMD19R TTTGCACGCCTGCCGTTCGAC -
PrpoDF CTCGAGGAATTCTGGACTATGATGAAAACGTC EcoRI PrpoDR CTCGAGGGATCCTGTGACCTTCTTGGTCGGCTC BamHI PlitRF CTCGAGGAATTCACCATGCTGCACCGGCAGTTG EcoRI PlitRR CTCGAGGGATCCTCAGCGTGGCTGCTGGCATGC BamHI PBM5689F CTCGAGGAATTCATGCATGATTCAACGTTCTC EcoRI PBM5689R CTCGAGGGATCCGCCCGATCAATGAAGCTG BamHI PBM5676F CTCGAGGAATTCAAACGATACGAAAACCGATC EcoRI PBM5676R CTCGAGGGATCCAGATAAACGTACGTGCGAGC BamHI PBM5697F CTCGAGGAATTCAACGATAAGTCGCTTCATCC EcoRI PBM 5697R CTCGAGGGATCCATCCACACTGCCGTGAAGGAC BamHI
PlitRR2 CGTTGTTCTCCTGAAGTCGA -
PlitRR3 GCAGTCTGGATTAAATATG -
PlitRR4 TTAAATATGAAGCAGGAAGG -
PlitRR5 AGCAGGAAGGCGATTCAAT -
PlitRR6 CGATTCAATGTGCGGAAAT -
PlitRR7 TGCGGAAATGTCGTCCGGG -
PlitRR8 GTCGTCCGGGAGGTGTTTC -
PlitRR9 TGTGGCTGGAATGCTGCAC -
a制限酵素サイトを下線に示す。
bは制限酵素サイトが存在しないことを示す。
33 実 験 手 法
各 細 菌 株 の 培 養
B. multivorans は LMG17588 を 野 生 株 と し て 使 用 し 、LB 培 地 (1.0%
BactoTryptone、0.5% BactoYeast Extract、0.5% NaCl) ま た は M9 最 少 培 地
(0.6% Na2HPO4・12H2O、0.15% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、0.1 mM CaCl2、1 mM MgSO4、0.001%チ ア ミ ン 、0.2%グ ル コ ー ス )を 用 い て 28℃
で 培 養 し た 。 各 大 腸 菌 株 は 、LB 培 地 ま た は M9 最 少 培 地 (0.6% Na2HPO4・ 12H2O、0.15% KH2PO4、0.1% NH4Cl、0.05% NaCl、0.1 mM CaCl2、1 mM
MgSO4、0.001%チ ア ミ ン 、0.2%グ ル コ ー ス 、20 M ア デ ニ ン 、1 M ZnSO4、 20 Mウ ラ シ ル 、0.077% -His DO Supplement、0.0076% L-ヒ ス チ ジ ン ) で
37℃ あ る い は 28℃ で 培 養 し た 。RNA seq 解 析 で 用 い た B. plantarii と E.
tasmaniensis、C. violaceum、R. jostii は LB 培 地 に よ っ て 28℃ で 培 養 し た 。
P. aeruginosa は LB 培 地 に 37℃ で 培 養 し た 。V. hraveyi は LM 培 地 (1.0%
BactoTryptone、0.5% BactoYeast Extract、2% NaCl、pH 7.8)で 28℃ で 培 養
し た 。 抗 生 物 質 は 20 g/mlの カ ナ マ イ シ ン お よ び 20 g/mlの ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル 、50 g/ml の ア ン ピ シ リ ン 10g/ml テ ト ラ サ イ ク リ ン の 終 濃 度 で
使 用 し た 。 全 て の 試 薬 は 、 特 記 し な い 限 り 、 和 光 純 薬 工 業 株 式 会 社 ( 大 阪 、
34 日 本 ) か ら 購 入 し た 。
分 子 系 統 解 析
LitR お よ び LimR、TetR の 系 統 樹 は 次 の よ う に 作 成 し た 。 ア ミ ノ 酸 配 列 は
KEGG (http://www.genome.jp/kegg/)か ら 入 手 し 、LitR と TetR の 系 統 解 析 で
は 、Pfam に よ っ て 推 定 さ れ た N 末 端 側 の HTH ド メ イ ン を 除 外 し て 残 さ れ た C 末 端 領 域 の ア ミ ノ 酸 配 列 を 使 用 し た 。 そ れ ら の ア ミ ノ 酸 配 列 を CLUSTAL
W26と MEGA 52 7に よ っ て 解 析 し た 後 、 分 子 系 統 樹 は 近 隣 結 合 法 2 8に よ っ て
再 構 築 し た 。距 離 行 列 は Kimura 2 パ ラ メ ー タ ー モ デ ル 2 9を 用 い て 算 出 し た 。
菌 体 と 蛋 白 質 へ の 光 照 射
細 菌 株 を 培 養 す る 際 は 、 光 照 射 型 イ ン キ ュ ベ ー タ (BR-180LF、 タ イ テ ッ ク 、
埼 玉 、 日 本 ) と 白 、 青 、 緑 、 赤 色 蛍 光 ラ ン プ(20W; Toshiba, Tokyo, Japan)を
用 い た 。 蛋 白 質 へ の 光 照 射 に は 、LED ラ ン プ と UV-A (m a x = 365 nm)、 青 色
光 (m ax = 450 nm), 緑 色 光 (m ax = 530 nm), 赤 色 光 (m ax = 660 nm) (Optocode corp., Tokyo, Japan) を 用 い た 。 光 度 は 、Model Li-250A Light Meter (LI-COR Inc., Lincoln, NE)を 用 い て 測 定 し た 。
35 RNA抽 出 と cDNA合 成
B. multivorans の 野 生 株 や 変 異 株 は 、LB 液 体 培 地 で 明 暗 条 件 下 で 28℃ 振 盪
培 養 し た 。0.7~1 ml の 培 養 液 を 14時 間 と 21 時 間 に 回 収 し た 。 10,000xg で
遠 心 し た 後 、 精 製 中 の RNA 分 解 を 防 ぐ た め 沈 殿 を 1 ml の RNAprotect Bacteria Reagent (Qiagen GmbH, Hilden, Germany)で 固 定 し 、 そ こ か ら RNeasy Mini Kit を 用 い て 総 RNA を 精 製 し た 。 ま た 、 ゲ ノ ム DNA を 除 去 す
る た め に 、DNase I (Takara Bio) 処 理 を 行 っ た 。RNA 濃 度 は NanoDrop Lite (Thermo Fisher Scientific, Rockford, IL, USA)で 測 定 し た 。cDNA は 、2 μg の
総 RNA を 用 い て SuperScript VILO cDNA Synthesis Kit (Thermo Fisher Scientific)に よ っ て 合 成 し た 。
RNA seqに よ る ト ラ ン ス ク リ プ ト ー ム 解 析
解 析 対 象 株 を 青 色 光 照 射 下 (18.55 mol·s–1·m–2) で 液 体 培 養 し 、1~2 ml を
回 収 し た 。そ の 菌 体 を RNAprotect Bacteria Reagent に よ る 固 定 後 、RNeasy Mini Kitと DNase I を 用 い て 総 RNAを 精 製 し た 。 そ の RNA を 適 当 な プ ラ イ
マ ー を 用 い て PCR し 、ゲ ノ ム DNAが ほ と ん ど 検 出 さ れ な い こ と を 確 認 し た 。
精 製 し た RNA は 、 東 京 農 業 大 学 ゲ ノ ム 解 析 セ ン タ ー に て HisSeq2500 を 使
36
用 し て 解 析 さ れ た 。得 ら れ た 各 遺 伝 子 の リ ー ド 数 か ら 転 写 レ ベ ル を 割 り 出 し 、
光 照 射 に よ っ て 上 昇 し た 転 写 量 の 倍 率 変 化 を 算 出 し た 。
DNAシ ー ク エ ン ス 解 析
本 研 究 で ク ロ ー ン 化 し た DNA断 片 は 、Eurofins Genomics K.K の 配 列 決 定 サ
ー ビ ス ( 東 京 、 日 本 )、 ま た は ABI 3100 Genetic analyzer(Thermo Fisher Scientific) に よ っ て シ ー ク エ ン ス 解 析 を し た 。
遺 伝 子 破 壊 株 の 作 製
folE1 と folE2 を 破 壊 す る た め 、pK18msfolE1 と pK18msfolE2 を 構 築 し た 。 DisfolE1F/DisfolE1R(folE1)と DisfolE2F/DisfolE2R (folE2)の プ ラ イ マ ー
( 表 2-1) の 組 合 せ と PrimeSTAR HS DNA Polymerase (Takara Bio)で PCR
を 行 い 、 そ れ ぞ れ の 内 側 の 領 域 を 増 幅 し た 。 得 ら れ た PCR 断 片 を pUC118
に ク ロ ー ニ ン グ し た 。シ ー ク エ ン ス 解 析 で 配 列 確 定 し た ク ロ ー ン を EcoRI と
HindIII で 消 化 し 、pK18mobsacB の 同 じ サ イ ト に 挿 入 し て pK18msfolE1 と
pK18msfolE2 を 完 成 さ せ た 。 構 築 し た 2 つ の プ ラ ス ミ ド は E. coli S17-1 pir
を 用 い た 接 合 伝 達 法 に よ っ て B. multivorans に 導 入 し た 2 4 ,2 5。 具 体 的 に は 、
37
1 ml の B. multivorans 培 養 液 と 0.5 ml の E. coli S17-1 pir 培 養 液 を 混 合 し
て LB 液 体 培 地 で 2 回 洗 浄 後 、 細 胞 を 100 l の LB 液 体 培 地 で 懸 濁 し て 0.22 mmフ ィ ル タ ー が 載 せ ら れ た LB 固 体 培 地 に 塗 布 し た 。 そ れ を 28℃ で 6 時 間
培 養 し 、 フ ィ ル タ ー 上 の 細 胞 を LB 液 体 培 地 で 回 収 し た 。 そ の 液 体 を 200 カ ナ マ イ シ ン と 50 ア ン ピ シ リ ン を 含 ん だ LB 固 体 培 地 に 塗 布 し て 28℃ で 2~3 日 間 培 養 し た 。得 ら れ た カ ナ マ イ シ ン 耐 性 コ ロ ニ ー を 適 切 な プ ラ イ マ ー
で PCR し 、 適 性 の 組 換 え 体 を 選 別 し た 。
相 補 ベ ク タ ー の 作 成
folE2破 壊 株 の 遺 伝 学 的 な 相 補 株 を 作 製 す る た め 、ミ ニ ト ラ ン ス ポ ゾ ン と ク ロ
ラ ム フ ェ ニ コ ー ル 耐 性 遺 伝 子 を 搭 載 し た ト ラ ン ス ポ ゾ ンpUT-miniTn5 Cm (Funakoshi, Tokyo, Japan)を 基 に し た 染 色 体 組 込 み 型 ベ ク タ ー を 使 用 し た 。
folE2を プ ラ イ マ ー セ ッ トfolE2cmpMF/folE2cmpRに よ っ て 、BM5689の プ ロ
モ ー タ ー 領 域 を プ ラ イ マ ー セ ッ トP5689cmpF/P5689cmpMR(Bm)( 表2-1)に
よ っ て 増 幅 後 、 そ れ ら のPCR断 片 をBamHI消 化 し て ラ イ ゲ ー シ ョ ン し 、 pUC118に ク ロ ー ニ ン グ し た 。次 に 、pUT-miniTn5 CmのNot Iサ イ ト に 挿 入 し 、 pfolE2を 取 得 し た 。 こ れ を 上 述 の 接 合 伝 達 法 に よ っ てB. multivorans folE2破
38
壊 株 に 導 入 し 、 得 ら れ た ク ロ ラ ム フ ェ ニ コ ー ル 耐 性 コ ロ ニ ー を 適 正 な プ ラ イ
マ ー を 用 い たPCR法 に よ っ て 確 認 し た 。
転 写 開 始 点 (TSS) の 決 定
TSS は DNAFORM (Yokohama, Japan) の 受 託 解 析 サ ー ビ ス Modified 5'RACEに よ っ て 決 定 し た 。 使 用 し たRNAは 、 光 照 射 し た 菌 体 か ら 抽 出 し た 。
方 法 を 簡 潔 に 述 べ る 。RNAの ク オ リ テ ィ を バ イ オ ア ナ ラ イ ザ ー(Agilent Technologies, Santa Clara, CA, USA)で 解 析 し て RIN値(RNA integrity
number)が7.0以 上 とA260/280とA260/230比 率 が1.7以 上 で あ る こ と を 確 認 し
た 。 ラ イ ブ ラ リ ー 作 製 は 次 の プ ロ ト コ ル に 従 っ た 。1 μgのRNAか らrRNAを
除 去 す る た め にRibo-Zero rRNA Removal Kit を 使 用 し た 。 次 に 、cDNAを Superscript III (Thermo Fisher Scientific)で 合 成 し 、RNAをRNase Hに よ っ て
分 化 し て 一 本 鎖cDNAを 精 製 し た 。 次 に 、Illuminaプ ラ ッ ト フ ォ ー ム に 対 す る
プ ラ イ ミ ン グ 部 位 と バ ー コ ー ド 配 列 を 含 ん だ ア ダ プ タ ー をcDNAの 両 末 端 に
連 結 し た 。そ の ラ イ ブ ラ リ ー の 配 列 はIllumina NextSeq500を 用 い て 解 読 し た 。 一 連 の デ ー タ 処 理 は 次 の 通 り に 行 っ た 。Illumina Real-Time Analysis (RTA)ソ
フ ト ウ ェ ア を ベ ー ス コ ー ル に 使 用 し た 。BWA( パ ラ メ ー タ ー 変 更 な し )を 使
39
用 し て 決 定 し た 配 列 をB. multivorans ATCC 17616の 全 ゲ ノ ム 配 列 に マ ッ プ
し た 。TSSク ラ ス タ リ ン グ と 百 万 リ ー ド 数 の タ グ (TPM) はCAGErを 使 用 し
て 計 算 し た3 0。
定 量 RT-PCR
光 誘 導 性 遺 伝 子 の 転 写 レ ベ ル を 解 析 す る た め 、定 量 RT-PCRを 行 っ た 。合 成
し た cDNA を PowerUp SYBR Green Master Mix (Thermo Fisher Scientific)
で 反 応 液 を 調 製 し て Applied Biosystems 7500 Real-Time PCR System (Thermo Fisher)で 解 析 し た 。 反 応 液 は 20 lス ケ ー ル と し 、cDNA は 50 ng、
プ ラ イ マ ー は 終 濃 度 0.2 Mで 使 用 し た 。PCRの 反 応 は 次 の よ う に 行 っ た : 50 °C、120 s- 95 °C 、120 s、 (95 °C、15 s-60 °C、60 s)x40 サ イ ク ル 。
解 析 対 象 と し た 遺 伝 子 の プ ラ イ マ ー は 、 Primer 3 (http://bioinfo.ut.ee/primer3-0.4.0/) を 使 用 し て 設 計 し た( 表 2-3)。サ ン プ ル
の 標 準 化 の た め 、dnaA (ハ ウ ス キ ー ピ ン グ 遺 伝 子) を 内 在 性 コ ン ト ロ ー ル と
し て 使 用 し 、 解 析 し た 遺 伝 子 の 相 対 発 現 を 定 量 し た 。 遺 伝 子 発 現 の 相 対 定 量
は 内 在 標 準 と し て dnaA シ グ ナ ル を 用 い た 2− Δ Δ C t 法 3 1に よ っ て 算 出 し た 。
全 て の 反 応 は 3 回 実 施 し た 。
40 半 定 量RT-PCR
本 解 析 で は 、GoTaq Green Master Mix, 2X (Promega Corp., Madison, WI, USA)を PCR 反 応 に 用 い た 。25 l ス ケ ー ル で 反 応 液 を 調 製 し 、 次 の PCR 反
応 で 行 っ た :95 °C、180 s-(95 °C、30 s- 55 °C、30 s-72 °C、45 s)25 サ イ ク ル-72 °C、180 s。使 用 し た プ ラ イ マ ー は 、表 2-4 に 示 し た 。PCR産 物 を ア
ガ ロ ー ス 電 気 泳 動 に 供 し 、 バ ン ド の 強 度 を 転 写 レ ベ ル と し て 検 出 し た 。
One-hybrid シ ス テ ム 法 に よ る DNA-蛋 白 質 間 の 相 互 作 用 解 析
One-hybrid シ ス テ ム 法 は 転 写 調 節 因 子 の DNA 結 合 に 対 す る 特 異 性 を 決 定 す
る 手 法 で あ る 3 2, 3 3。 本 方 法 で 、L itS が 認 識 す る プ ロ モ ー タ ー 領 域 を 特 定 す る
こ と を 試 み た 。 光 誘 導 性 遺 伝 子 の プ ロ モ ー タ ー 配 列 ( 開 始 コ ド ン か ら 上 流 に
隣 接 す る 遺 伝 子 の ス ト ッ プ コ ド ン あ る い は 開 始 コ ド ン ) を 適 切 な プ ラ イ マ ー
セ ッ ト( 表 2-4)の PCR法 に よ っ て 増 幅 し 、pROMOTER の XbaI-EcoRIサ イ
ト に ク ロ ー ニ ン グ し た 。litSは 、プ ラ イ マ ー セ ッ ト のPCR法 に よ っ て 増 幅 し 、 pTRG の BamHI-EcoRIに ク ロ ー ニ ン グ し た 。 ク ロ ー ニ ン グ 法 は SLIC(One-
step sequence- and ligation-independent cloning) 法 34に よ っ て 行 っ た 。 具
体 的 に は 、40 ng の 精 製 し た PCR 断 片 と 直 鎖 状 ベ ク タ ー 、0.6 Uの T4 DNA