税制改革の展望
著者
高橋 志朗
雑誌名
東北学院大学経理研究所紀要
号
2
ページ
47-60
発行年
1987-03-10
URL
http://id.nii.ac.jp/1204/00024270/
税 制 改 革 の 展 望
高 橋
志
朗
日 次l .
は じ め に2 .
間題点の所在3 .
税制改革の焦点4 .
租税理論の展開5 .
お わ‘
)に l . はじめに 近年.
税制改革には, 社会的に重大な関心が寄せられてきた。
こ れ ま で に, 多くの論者が各々の税制改革論を展開し, 理論面及び実施面で数々の 検討が積み重ねられてきた。
税制改革論議は, 多くの成果を上げてきたと 言 え ょう。
一
方.
政府税制調査会は,すでに,実質的な審識を終了し,最終答申案 の 取 り ま と め 作 業 に 入つ た。
自由民主党の税制調査会も,昭和6l年中には, 独自の税制改革案を作成する予定である。
わが国の税制改革運動は, 今や, 大詰めを迎えている。
しかし, 様々の理由から, 税制改革論識の成果は.
これらの調査会の活 動 に は 反 映 さ れ て こ な か っ た。
そのため, 改革の基本構想すら.
未 だ に , 明示されていない。
抜本的な改革案の立案は,今や,絶望的である。
こ の 点で.
わが国の税制改革運動は, 基本的な間題を抱えているものと思われ る。
-
47-税制改革の展望 本稿には
,
二つの目的がある。
第一
の目的は, 以上の間題意識に基づい て, これまでの税制改革運動の間題点の所在を明らかにすることである。
その検討は,主に,第二章で行われる。
第二の日的は,抜本的改革へ
向 け て , 何 等 か の 提 言 を 行 う こ と で あ る。
このため, 第三章では, まず,税制改革が必要とされる背景を探り.
わ が国に於ける税制改革の必要性と課題とを明示する。
続いて, 第四章では, 先進諾国の租税体系と, 代表的な税制改革案の特色を概観したうえで, そ の背景にある租税理論の展開を検討する。
そ し て , 最 後 に , 『 ア メ リ カ 財 務 省 報 告( l )』に含まれている重要な示唆を 明 ら か にしたい。
2 .
間題点の所在 目下, 活発化している税制改革論識の発端は, 1985年元旦, 中曾根首相 が表明した, 'ンヤウプ税制以来の抜本的改革' と い う 政 治 的 ス ロ ー ガ ン にある。
その背景には, 租税負担の不公平性に対する, 国民の不満の急激 な高まりがある。
同首相の意図は,「
シ ャ ウ プ 勧 告(2)』に匹敲する抜本的な 改 革 を 実 施 す る こ と に よ っ て , こ の 不 満 を 解 消 す る こ と に あ る。
こ の ' 抜 本 的 税 制 改 革 ' は , l 9 8 4 年 l 月 に ア.
,,'
リ カ の レ ー ガ ン大統領に よ っ て 提 唱 さ れ , 今日, 着実に実を結びつつある,一
連の税制改革運動に 範を仰いだものと思われる。
l985年5月,
同大統領は税制改革案を議会に 提 出 し た。
それは, 合 求 国 経 済 を 再 典 す る た め に,
簡 素 性 と 公 平 性 と い う 原則に従つて,
税制の基本構造そのものを再構成すべきである(3),
と い う 大統領の基本見解の表明に始まる, 画期的な内容の税制改革案だった。
この大統領案の原案は,前年のll月, アメ リカ財務省が発表した税制改 ( l ) (2) (3)U
.
S.
Department of the Treasury[l984] Shoup Mission[l949]Reagan[l985]参照
税制改革の展望 革案の中に求められる(4)
。
この財務省案では, 改革の基本方向について.
広範.
か つ , 詳 細 な 検 討 を 行つて い る。
と り わ け 注 日 さ れ る の は, 所 得 税 率の完全なフラット化や支出税の導入といった大胆な改革構想の実行可能 性が, 積極的に検討されている点である。
現行税制の枠組みにとらわれる こ と な く , 公平, 中立そして簡素という改革目標を掲げ, そこで考えられ る , い くっ
かの代表的な選択肢を取り上げたうえで, そ れ ら について, 詳 細な検討を加えている。
一
方 , わ が 国 で も , l 9 8 5 年 9 月.
政府税制調査会が首相の語間を受けて.
改革案の立案作業に入り.
その最終報告を間もなく発表する予定である。
自由民主党も 「村山調査会(5'
」
や同党税制調査会が中心となって, 精力的 な活動を展開してきており, 本年 (l986年) l2月には, 独自の税制改革案 を提出する予定である。
政府税制調査会では.
こ れ ま で.
首相からの語間に示された方針に従つ て(6), 減税のための部分的な改革案の立案作業が優先的に行われてきた。
その結果.
直接税を中心とした減税及び合理化の方法と新型間接税の導入 といった個別的間題のいくっ
か については, これまでに合意が成立した。
しかし.
肝心の税制全体を通じた改革構想についての審識は, 後 回 し に さ れ て き た。
そのため, わが国の税制改革運動は.
改革方針の明確性を欠 い て し ま っ て い る。
例えば, 政府税制調査会の最近の見解では, わが国の現行税制の間題点 を , 組税負担の直接税へ
の 集 中 と , 特定の商品だけが課税対象とされる個(4) U.S.Department ofthe Treasury[1984] 参照
(5) 昭和60年3月以来
.
村山達雄元大蔵大臣を座長として.
税制改革全般にわ たる検射を重ね.
同 年 9 月に中間報告を発表した。
(6) 昭和60年9月2l日.
中e
根総理大臣は, 税制調査会に対して税制改章を語 間 し.
その中で次のように述べた(税制調査会[l986], 1 買 )。
「 審 識 の と り ま と め に あ た っ て は.
まず,税負担の軽減.
合理化のための方 策 について明らかにし.
次いでその財源確保のための方策等を含めた税制改 革の全体的方向につ い て 明 ら か に す る こ と と さ れ た い。」 49-税制改革の展望 別消費税の採用にあ る と 指 摘 し , 直接税と間接税との均衡を回復すべく, 新型間接税導入の必要性を強調している( 7)
。
こ こ に 示 さ れ て い る ' 直 間 比 率 是 正 論 ' は , 自由民主党の「村山調査会」 や同党の税制調査会からも主張されてきた, 代表的な税制改革論の一
つで あ る(8)。
しかし, この改革論で前提とされている, 直接税と間接税との区 分が持つ意義について, 今日.
間題が提起されている。
この分類の基準を何に求めるかについて, 定説は存在しないが,一
般 に は, 租税の転嫁の有無に基準を求める, 法学上の解釈が援用されることが 多い(9 )。
それによれば, 立法者が租税負担の転嫁を予定しない租税が直接 税 で あ り , 転嫁を予定している租税が間接税であるとされる。
従つて, 立 法者の判断が租税の転嫁の実態と著しく異なる場合には, この基準の現実 的 な 意 味 は , 損 な わ れ る こ と に な る。
実際, その転嫁の実態が不明確な法 人税の存在は, この区分の重大な障書となる。
租税を, 直接税と間接税とに分類する基準に明確性を欠く以上, この分 類に基づいて, 両 者 の パ ラ ン ス の 回 復 を 主 張 す る こ と に は 無 理 が あ る。
この分類は.
あ く ま で も , 便 宣 的 な も の で あ り , '直間比率是正論'は, 抜本的税制改革にとって有効なァプPー チの方法とは言えない。
むしろ, その日的は,
間接税へ
の 依 存 度 を 高 め る こ と に よ っ て , 現在の税収構成を 変化させ, 税収の安定性を確保する点に求められょう。
ま た.
個別消費税に対する批判にも間題がある。
個別消費税が有する非 中立的な効果は,
一
概に批判されるべきではない。
本来, 個別消費税は課 税 ベ ー ス が 狭 く , そ の 課 税 対 象 を 限 定 す る こ と が 可 能 な こ と か ら.
所得税 中心の租税体系の中で, 補完税としての役割が認められてきた。
こ れ は,
者修的な商品を課税対象とする物品税に代表される。
個別消費税は, その 本来の機能において,一
般消費税とは明確に区別されなければならない。
(7) (8) (9) 『日本経演:新聞」
昭和6l年9月27日号,昭和6l年l0月l4日号参照 「日本経済新聞」
昭和60年l0月9日号参照 田 中 [ l 9 8 3 ] , 4 買-
50-税制改革の展望 政府税制調査会が,間近に 追つた 最 終 報 告 に 於 て , ア ,,,
'
リ カ の 財 務 省 案 のように抜本的な税制改革案を提示するのは, と う て い 難 し い よ う に思わ れ る 。 そ こ で は , 以 上 の よ う な , 方 法 論 上 の 問 題 点 に 加 え て , 税 制 改 革 の 必要性に対する認識の不足があるよ う に 思 わ れ る。
抜本的改革の必要性と, そ こ に 課 せ ら れ て い る 課 題 と を , こ こ で , 改めて問い直す必要があろう。
3 .
税制改革の焦点 戦後に於ける, わが国の税制の基盤は, 昭和24年に発 表 さ れ た 『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 に 求 め ら れ る(1o1。
し か し , その後, 租税特別措置に代表される, 経 済 成 長 を 目 的 と し た一
連の政策的税制改正に よ っ て , 『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 の組税体系は, 徐 々 に歪 め ら れ て き た。
現行税制は勧告本来の姿とは, は る か に , か け 離 れ た も の と な っ て い る。
『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 が 税 制 上 有 す る 最 大 の 意 義 は , 公平な税制の確立に 向 け て , 所 得 税 を 基 本 と す る 理 論 的 制 度 を 提 案 し た こ と にあ る( l l'
。
そ こ で 採 用された所得税の特色は, 個人に帰属する全ての所得を総合し, それに累 進税率で課税する, 総 合 累 進 所 得 税 で あ っ た 点 に あ る。
『.ン ャ ウ プ 勧 告 』 は , こ の 総 合 累 進 所 得 税 を 税 制 の 基 本 に 据 え る こ と に よ っ て , 応 能 負 担 原 則 に 基 づ く 課 税 の 公 平 を 実 現 し よ う と し た の で あ る。
法 人 税 と 所 得 税 を 中 心 と し た 勧 告 内 容 は , 次 の よ う な 特 色 を 持つて い る。
『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 で は , 担 税 力 の 主 体 は ,1
l
歡底 し て , 個 人 で あ る 株 主 に 求 め ら れ た。
法人税は個人所得税の源泉徴収の一
形 態 と み な さ れ て , 法人 利益への35%
定率の法人税課税が提案される一
方.
その源泉課税分を所得 税 段 階 で 控 除 す る た め に , 受取配当控除制度の導入が提案された。
し か し , 法人が, その利益を内部留保する場合には, こ れ ら の 措 置 だ け (l0 以下の, 『 : ン ャ ウ プ 動 告 』 に 関 す る 論 述 の 詳 細 につ い て は , 高橋[1983],, T a k a h a s h i [ 1 9 8 4 ] , 高 橋 [ l 9 8 5 ] , 高 橋 [ l 9 8 6 ] を 参 照 さ れ た い 。 l1 !) 『,
: ヤ ウ プ 勧 告 』 の 評 価 に 関 す る 主 要 な 見 解 に つ い て は , 日本組税研究協 会 [ 1 9 8 0 ] ( 1 l 2 ~l 4 2 頁 ) が 参 考 に な る 。-
5 l-税制改革の展望 では, その留保部分に対して株主が有する持分の捕捉が困難となり, 留保 利益の課税をめぐって, 法人企業と個人企業との間に不公平が生じてしま う
。
そ こ で , そ れ を 解 消 す ぺ く , ま ず.
法人の留保利益へ
の利子課税措置 の導入が提案された。
こ の 措 置 と と も に , 法人による利益留保は株価の値 上 が り を 招 来 し , 株 主 の キ ャビタ ル・
ダ イ ン に 反 映 さ れ る , と の 仮 定 に立 って, 株式譲渡所得の全額課税が提案された。
『 シ ャ ウ プ 勧 告」
では, 法人へ
の課税は所得税の中に続合されているた め , 法 人 につ い て は , 原 則 と し て , 法 人 税 課 税 と 留 保 利 益へ
の利子課税が 行 わ れ る だ け と な る。
法 人 に 対 す る , 従 来 の 複 雑 な 課 税 方 式 は , こ う し て , 大幅に簡素化された。
また, 所得税では, 所得の総合化に向けて.
課税べ一
スの拡大が図られ た。
従来,利子所得や讓渡所得を中心に数多く見られた,分離課税措置や 半額総合課税措置などの例外規定の廃止が提案された。
税率についても, 動労意欲の阻書や脱税の誘発といった, 累進税率の採 用 に 伴 う 弊 害 の 緩 和 策 と し て , 税 率 構 造 の 大 幅 な フ ラ ッ ト 化 が 図 ら れ た。
従来.
採 用 さ れ て い た.
最低税率20%
から最高税率85%ま で l 4 段 階 と い う , 急激な税率構造が修正され, 最低税率20%
から最高税率55%ま で 8 段 階 と い う , 比 較 的 軽 度 な も のへ
と 改 め ら れ た。
ま た , 税 率 のフ ラ ッ ト 化 に よ っ て招来される, 所得税の累進性の低下を補完するために, あ る一
定限度を 超える資産の所有者について,軽度の累進税率で課税する富裕税の導入が.
新 た に , 提 案 さ れ た。
これらの提案のほとんどは.
翌年の税制改正に よ っ て 実 施 さ れ , 総合累 進所得税を中心とする近代的税制が誕生した。
しかし, シ ャ ウ プ 税 制 の 形 酸化は, そ の 直 後 か ら 始 ま っ た。
昭和26年の利子所得に対する源泉分離選択制度の復活.
翌27年の配当所 得に対する源泉分離選択制度の導入, そして昭和28年の富裕税と株式讓波 所得課税の廃止と所得税の最高税率の引き上げは,「
シ ャ ウ プ 勧 告 』 で 採 用された所得税の特徴の多くを修正するものだった。
と り わ け.
こ れ ら の-
52-税制改革の展望 修正によって, 課税の水平的公平性の基準となる総合課税主義が失われた ことは重要である
。
その後, 昭和30年代から, 修正の中心は法人税へ
と移行し, 各種の優遇 措置が導入された。
そ れ に よ っ て , 法人税は非中立化され, その簡素性も 失われた。
現行所得税では,利子所得,配当所得,山林所得,退職所得を中心に,
分離課税措置の適用が認められているのに加えて, 多くの所得について.
非課税措置や特別控除が認められている。
また, 法人税でも, 支払配当へ
の軽減税率の適用や法人税率の高水準化といった間題点が残されている。
公平性と簡素性を特色とした.
『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 の 租 税 体 系 は, 今 で は , 大幅に修正されている。
と り わ け , 所得税に見られる乖離が著しい。
こ の 点 に , 現行税制の重大な歪が指摘されている'
ll21。
近 年 , 税 制へ
の不公平感の高まりとともに,この歪の抜本的な解消が, 強 く 求 め ら れ る よ う に な っ た。
こ こ に, 部 分 的 改 正 で は な く , 首 尾一
貢し た租税体系の回復を目的とした, 抜本的税制改革の必要性が存在すると言 え よ う o 抜本的改革に向けて.
多くの論者から提案されてきた, 改革構想の基本 方向は, 大 き く 二 分 さ れ る。
ーつの方向は, 所得税を支持する伝統的立場をとり, 現行所得税の歪の 是正を目的として, 所得税の例外措置の廃止に よ る , 課税ベースの拡大を 提案する,ll31。
この説の特徴は, 水平的公平性と垂直的公平性の確保という 観点から, 所得税に対して基幹税と しての重要性を認める反面, 間接税は, その補完税としての地位が認められるに過ぎない点にあ る。
こ う した改革 0a
石教技は, 特別措置と分離課税措西の導入によって.
現行所得税における 公平の実現が妨げられている事実を, 推 計 デ ー タ か ら 実 証 し て お ら れ る ( 石 [l979].
42頁参照)。
ま た , 宮 島 教 授 は.
現行所得税の実態は分類所得.
な い し は.
消費ベース の労働所得税である.
と 指 摘 し て お ら れ る ( 宮 島 [ l 9 8 6 ] 参 照 )。
010 宮 島 [ l 9 8 6 ] , 富 岡 [ l 9 8 6 ] 参 照-
53-税制改革の展望 の方向は,
「
シ ャ ウ プ 勧 告」 へ
の 回 帰 を も た ら す も の と 言 え よ う。
他の方向は,担税力の尺度を所得ではなく,消費に求める,新たな立場 を と る。
その典型は,支出税構想に 見 ら れ る。
しかし,支出税の実施には, 税務執行上の困難性を伴う。
そ こ で , よ り 現 実 的 な 改 革 案 と し て , 代 表 的 な間接消費税である付加価値税の導入が主張されることになるa4'
。
この説 の特徴は, 付加価値税を導入して, 間接税の課税ベースを拡大することに よ っ て , 主 に 課 税 の 水 平 的 公 平 性 の 回 復 を 図 ろ う と す る 点 に あ る。
また, 付加価値税の導入は, 経済のソ フ ト 化 や サ ービ ス 化へ
の対応という観点か ら も , 支 持 さ れ て い る。
しかし.
付加価値税導入論は,所得税の重要性を否定するものではない。
現実的な改革案としては,
付加価値税の導入によって, 間接税体系を合理 化し.
その補完的役割を高めることが提案されている(l5)。
所得税改革こそ が, わが国の税制改革の最大の焦点であると言えよう。
4 .
程税理論の展開 今日, 先進諸国の租税体系は, 所得税, 法人税等の直接税を基幹税とし た も の と , 所得税にかなりの税収を依存しっ
つも.
むしろ, 間接税の役割 を 重 視 し た も の と に , 大まかに, 二 分 さ れ る。
前者は, わ が 国 , ア J リ 力そ し て ヵナ ダ に 代 表 さ れ , 後 者 l:t
, フ ラ ン ス に 代 表 さ れ る。
ま た , イ ギ リ ス , 西 ド イ ッ そ し て イ タ リ ァ で は 直 接 税 と 間 接 税 の 比 重 は , ほ li , 均 衡 し て い る。
こ の う ち , フ ラ ン ス で は l 9 5 4 年.
西 ド イ ッ で は l 9 6 8 年 , そ し て , イ ギ リ ス で は l 9 7 3 年 の E C加盟を機に.
付加 価値税が導入され,その重要性が,近年,つとに增大してきている。
こ れ ら 00 石 [ l 9 8 6 ] , 野 口 [ l 9 8 6 ] 参 照 な ぉ.
付加価値税は, 同じ多段階課税方式に属する取引高税や.
単段階課 税方式に属する製造業者売上税.
卸売々上税.
小売々上税等の一
般売上税と,, は ほ'.
同じ機能を持つている。
00 石 [ l 9 8 6 ].
ll0買参照-
54-税制改革の展望
の E
C諸国では, 付加価値税は定着する順向にあ る と 言 え よ う。
間接税の 整理・
合 理 化 と い う 観 点 か ら.
その役割を見直そうとする動きは, 近年, わが国でも, 注目を浴びている。
一
方, 近年の税制改革論識の国際的な潮流を代表する, い くっ
かの報告 書が発表されてきている。
これらの報告書が提案する改革構想は, 所得税 支持論と支出税支持論とに二分される。
税制改正に関する最近の主な報告畫『 ヵー タ
一
報 告 』 (Reporto
f
theRoyalCommi
ssion
on T
,
a n
ti
on
,カ ナ ダ
, l 9 6 6
)「
シ ャ ウ プ 勧 告 』 と 同 様 に 総 合 所 得 税 を 提 唱 し , 所 得 税 を 最 良 の 税 であるとする伝統的立場を継承した
。
同時に, 間 接 税 と し て 従 来 か ら 採 用 されてきた製造業者売上税の代わりに, 小売々上税の1事入を勧告した。
「
プ ルー・
プ リ ン ト 』 (Blu
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B
as
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Tax Re
f
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.
ア・
リカ , l 9 7 7)
個人が, 消費のために支出した金額に対して課税する支出税を提唱し
た
。
『 ミ ー ド 報 告 』 (
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Structure
and
Re
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iorm
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T
,
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ti
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,イ ギ リ ス , l 9 7 8)
所 得 税 よ り も 優 れ た 租 税 と し て , 「プ ル ー
・
プ リ ン ト 』 と 同 様 に, 支 出税を提唱した。
「
ア・
リ 力財務省報告』 (T
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es
11
-dent
, ア.,,l リ カ,l984
)総合所得税を支持する, 伝続的な立場
へ
と 回 帰 し た。
税制改革の展望 これらの報告書の提案内容の推移から
,
近年における税制改革論議の中 心は,まず,所得税支持論から支出税支持論へ
と 移 行 し , そ の 後 , 支 出 税 支持論から所得税支持論へ
と 回 帰 し て き て い る こ と が 理 解 さ れ る。
この事 実は.
両説の対立の根深さを示している。
所得税が最良の税であるとする主張は,
それが課税の水平的公平性と垂 直的公平性とを, 最 も 良 く 満 足 さ せ る 租 税 で あ る と い う 根n
に基づいてい る。
そ こ で は , あらゆる種類の所得が総合され, それに対して累進税率で 課税する, 包括的所得税が構想されている。
課税ベースが包括的であるこ とが, 所得課税支持論の前提である。
課税所得の範囲の包括化は, 当然に, その包括的所得の定義を必要とす る。
l937年にサイ モ ン ズ (H.C.Simons
)によって提唱された包括的所得 の 定 義 は , 今 日 も な ぉ , 広 く 受 け 入 れ ら れ て い る。
それによれば,所得は, ある期間に,
消費のために使われた諸権利の市場価値と, その期間内に於 け る , 財産権の価値の変化の合計として定義される( l 6)。
ある人が,一
定期 間 に 体 験 し , か つ , 獲 得 し た , 全 て の 経 済 的 利 益 が , 所 得 の 中 に 含 め ら れ る べ き こ と に な る。
しかし, この所得の基準にも.
その実際上の把握という側面から, い く つかの間題点が指摘される。
例えば, 法人の留保所得に対する株主持分を, ど の よ う に し て 課 税 ベー ス に 含 め る か , ま た , イ ン フ レ ー シ ョ ン に よ る 価 値変動の影響を, ど の よ う に し て 除 去 す る か ,と ぃ
った点の困難性が指摘 さ れ よ う。
一
方.
現在, 最も標準的なものと考えられている支出税は, ある人の所 得から時蓄を控除した消費支出を課税ベー ス と す る 直 接 税 で あ る。
支出税 構 想 は , 決 し て , 新 し い も の で は な く , l 9 5 5 年 に カ ル ド ァ (N
.
Kaldor
) にょ
っ て 発 表 さ れ た 『 支 出 税(l7)』 に見 ら れ るo 00 Simons[l983],p.50 Oll Kaldor[l955] l 0-
56-税制改革の展望 所得税が, 長い伝統に支えられているのに対して, 支出税は先進諾国で は, 未 だ , 実 施 さ れ た わ け で は な い が , そ の 理 論 的 な 整 合 性 が , 最 近 , 見 直 さ れ て き て い る
。
所得税では, あ る一
定期間に発生した所得に,
担税力の指標が求められ る のに対 し て , 支 出 税 で は , 長 期 的 な 観 点 か ら み て , よ り 恒 常 的 な 所 得 に , そ れ を 求 め よ う と す る。
支出税支持論者は, 包括的所得税が定義する所得 の中には,担税力の指標として適切ではないものが含まれていると考える。
例えば, 市場利子率の変動に起因する, 株価の高勝から生じるキャ ピ タ ル・
ゲ イ ン は , た と え , そ れ が一
時 的 , か つ , 未 実 現 の も の で あ っ て も , 包括的所得税のもとでは, 所 得 と み な さ れ る。
しかし.
こ れ は , 担 税 力 の 増大を意味しているわけではない。
ま た , 所 得 税 で は,
一
般 に , 累 進 税 率 が 採 用 さ れ て い る た め に, ある特定の期間にのみ発生する変動所得は, 他 の 所 得 に 比 べ て , 不 当 に重 課 さ れ て し ま う。
これらの間題は,包括的所得 税では.
担税力の指標に用いられる所得が, 人為的な期間区分に制約され た 概 念 で あ る こ と か ら 発 生 し て い る こ れ に対して, 支出税では, ある人の生涯所得に担税力の基準が求めら れ る。
も っ と も , 生涯所得という概念は, 理論的に考えられたものであっ て,現実的な課税標準としては役立たない。
そ こ で , 消 費 が , 課 税 べ一
ス と し て 用 い ら れ る こ と に な る。
そ の 理 由 は , 生 涯 所 得 は , そ こ か ら 遺 産 と して残される部分を差し引けば, 年間消費支出の合計に近似するものとみ な さ れ る こ と に あ る。
所得に代えて, 消費に 課 税 す る こ と に よ っ て , 包 括 的所得税において発生した間題点の多くが解消される。
支出税の間題点は,主に,その実施上の困難性にある。
支 出 税 で は , 収 入から貯書を差し引いた差額が課税標準とされるため, その円滑な運営に あ た っ て , 行政サ イ ドは, 貯蓄に関する十分な情報を把握しておく必要が あ る。
し か し , こ れ は , 実 際 に は 困 難 で あ る。
. 所得税と支出税のどちらを選択するかによって,課税の公平性の基準は, 大 き く 変 化 す る。
所得税を中心とする租税体系において, 資産所得である-
57 -l -l税制改革の展望 預金利子を非課税とすることは, 明らかに不公平である
。
反対に, 支出税 を中心とする租税体系を採用するならば,預金利子に課税すること自体が, 不 公 平 で あ る こ と に な る。
こ の よ う に,
課税ベ ースの選択は, 租税体系の設計にあたって, 決定的 な影響を持つ。
しかし, 所得税と支出税は, それぞれ異なる間題点を内包 している。
さ ら に,
所得税は永い歴史に支えられているのに対して, 支出 税 に は , そ の 歴 史 が な い。
したがって,その実際の選択は,一
義的には, なし得ない。
税制改革論識の国際的動向が,所得税再評価の方向を示している事実は, この選択の困難性を物語つ て い る。
こ の よ う な 認 識 か ら , 今日では, 両者 をミ ッ ク ス し た 体 系 の 採 用 が , 再 び 主 張 さ れ る よ う に な っ て き て い る( l 8)。
そこでは,基幹税として,所得課税と消費課税のいずれを選択すぺきかが, 主要な課題となる。
これは, わが国の税制の現状に照らして,最も現実的, かつ, 有望な税制改革論と言えよう。
5 .
お わ り に 低迷を続ける, わが国の税制改革運動にとって, 『 ア・
リカ財務省報告』 は,
抜本的改革と しての示唆に富んでいる。
その中でも.
次 の 二 点 が , と り わ け , 注 目 さ れ る。
第一
の点は.
その立案プロセスの合理性にあ る。
こ の 報 告 書 で は , 改 革 案の立案にあ た っ て , ま ず 初 め に,
抜本的改革のための基本構想を設定す る た め に, い くっ
かの代表的な選抜肢につ い て , 比 較・
検討が行われた。
そ し て , 次 に,
その基本構想に基づいて,具体的な改革案の立案作業が行 われた。
00 税制改革の設計に於て,課税ベ ースや課税方法の適切な組合せを考える,, 伝 続 的 な 'タ ッ ク ス・
ミ ッ ク ス 論 ' を 支 持 す る 論 者 は 多 い。
例 え ば , 石・
貝. 塚 [ l 9 8 5 ] ( 4 4 ~4 5 頁 ) , 富 島 [ l 9 8 6 ] ( 2 9 7 ~3 0 0 頁 ) を 参 照 さ れ た い。 l 2-
58税制改革の展望 首尾
一
貢した改革構想の作成に向けて, 合理的な手順が踏まれている点 で , こ の 立 案 方 式 は , 極 め て 有 効 で あ る。
抜本的改革を目指す,わが国に と っ て , 税制改革案の立案プロセスの合理化は急務である。
第二の点は, その税制改革の基本構想として, 総合所得税体系が採用さ れ た こ と で あ る。
公平性と簡素性という観点から, 所得税の役割を重視す る 点 で , 「ア J リ カ 財 務 省 報 告 』 は 『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 と , そ の 構 想に 於 て 軌を一
にし て い る。
そして, その改革の基本方向は,わが国にとっては,「
シ ャ ウ プ 勧 告 』へ
の回帰を示唆するものと言えょう。
わ が 国 の 税 制 を 取 り 巻 く 環 境 は , 『 シ ャ ウ プ 勧 告 』 の 発 表 当 時 と は , 大 き く 異 な っ て い る。
勧告で提案された改革構想の全てが, 現在の日本の経 済社会に合致するとは思われない。
し か し , 所 得 税 を 重 視 し た 『 シ ャ ウ プ 勧告』の改革理念は,
今後の税制改革に受け継がれる必要があろう。
これまでの税制改革論識の成果に真付けられた, 抜本的改革にふさわし い改革案の立案が待たれる。
59 -l 31 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 l 5 l 6 17 l 8 税制改革の展望 参考文献 石 弘 光 『 租 税 政 策 の 効 果 』 , 東 洋 経 済 新 報 社 , 昭 和 5 4 年 石 [ l 9 7 9 ] 石 弘光
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