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Microsoft Word - 04 小林久美.doc

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家庭科の基礎・基本の見直し

―衣生活に関する「できない」「知らない」事象の解釈をもとに―

小林久美・中西雪夫・財津庸子・鈴木明子・柳 昌子・松園美和・赤崎眞弓・長山芳子

Reconsideration of the Basic and Fundamental Knowledge and Skills in Home Economics :

Analysis of E.H Professors’ Interpretations about “CAN’T DO” and “DON’T KNOW” Cases in the Clothing Area Kumi Kobayashi, Yukio Nakanishi, Yoko Zaitsu, Akiko Suzuki, Masako Yanagi, Miwa Mastuzono,

Mayumi Akasaki and Yoshiko Nagayama

要約 本研究は、家庭科教育の基礎・基本の在り方について検討する際の示唆を得ることを目的にした研究 の一環である。本報では、衣生活における「できない」「知らない」事例を収集し、それらの事象が問題 であるか、その根拠は何か、どこで習得すべきかを、家庭科教育に携わる研究者および指導者等に調査 した。その結果、「できない・知らない」事象が問題であるとするカテゴリーは「洗濯」が最も多く、習 得すべき根拠は「実用性の観点」であったが、習得の場は「学校と学校以外の両方で」となった。「着装」 も「実用性の観点」は多いが、「文化的な観点」も重視された。家庭科で最も習得すべきは「ミシン縫い」 で、その根拠は「教育的な観点」であった。このように、回答者や衣生活活事象により、問題とする認 識、習得すべき根拠、学習の場と学校段階に差異が見られた。これらの差異を分析することは、今後の 家庭科教育における衣生活の基礎・基本の在り方を検討する資料になると言える。 キーワード 家庭科、 基礎・基本、 衣生活、 「できない」「知らない」事象

1.目的

学校教育の役割は、人間として必要な基礎的・基本的な知識・技能を習得させることである。そのこ とは、家庭科教育でも求められており、2008(平成 20)年の中央教育審議会答申の中でも家庭科およ び技術・家庭科の改善の基本方針の中で「子どもたちが自立的に生きる基礎を培うことを特に重視する。」 と示されている。 学校教育においては、学年が進むにつれて、学習内容を積みあげていくことになっている。しかしな がら家庭科教育の現場では、各学年の基礎・基本が十分に習得されていないことによって、次の学校段 階での学習への弊害が指摘されている。一方では、教える側の基礎・基本に対するとらえ方や、どこで 習得すべきかの見解が異なっていると感じつつも、これらを深く追求することはなかった。これまで、 著者らは、家庭科教育の基礎・基本の在り方について検討するために、家庭科教育に携わる研究者の食 生活における基礎・基本のとらえ方やとらえ方の差異および背景などを明らかにしてきた1)

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本研究では、衣生活に関する基礎・基本のとらえ方やその差異をより浮き彫りにするために、対象者 を広げ、大学で被服学を担当している研究者および指導主事を加えた。衣生活に関する特定の能力を基 礎・基本とするとらえ方の差異を明らかにすることにより、家庭科教育の基礎・基本の在り方について 検討する際の示唆を得ることを目的とする。また、現行家庭科の衣生活の学習内容の一部については、 学校でも家庭でも教える必要性を認めないものがいるという研究結果2)もあり、学校教育における衣生 活の学習の必要性についても考察していきたい。

2.調査方法

(1) 調査票の作成および調査内容 調査は、家庭科の基礎・基本とは何か、何を基礎・基本とするか、について直接問うのではなく、あ る事柄(生活に関する知識・技能)が習得されていないという「指摘」に対して、それを「問題である」 と思うかどうかを問うものとした。「指摘」は巻末に挙げた文献などから収集し、それに基づいて調査票 を作成した。 今回、衣生活について収集した「できない」「知らない」事例数は130 件であったが、それらを整理 し97 事象を調査項目とした。事例の出典および情報収集元は表の通りである(表 1)。 表 1 「できない」「知らない」事例の出典・情報収集元 出典の種類 学会誌・紀要 家庭科関係の雑誌・書籍 一般雑誌・新聞記事 観察* インターネット 計 事例数 31 11 3 73 12 130 *観察における観察者の内訳(小学校教師:19、中学校教師:31、指導主事:5、大学教員:18) (2) 調査対象者 調査対象者は、大学の家庭科教育学担当者、被服学担当者、家庭科指導主事に著者らを加えて、計22 名とした。その内訳は、表2 の通りである。 表 2 対象者の小学校学習指導要領コーホートと職種 職種 学習指導要領 家庭科教育学担当 家庭科指導主事 被服学担当 計 昭和 22・33 年版 5 0 0 5 昭和 43 年版 6 2 2 10 昭和 52 年版 3 3 1 7 計 14 5 3 22 (3) 調査時期と回答方法 調査時期は、2014 年 5 月下旬から 6 月上旬とし、各回答者に調査の承諾を得た後、調査票を電子メ ールで送り、回答を返信してもらった。

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3.結果および考察

(1)調査全体の傾向 まず、97 項目の全体の傾向をみていく。各調査項目の末尾には、収集時の事例に「できない」「しら ない」と指摘された対象の小学生、中学生、高校生、大学生、成人を付し、例えば中学生対象事例の場 合は、「玉結びができない(中)」と表示した。本報では義務教育段階を中心に述べていくが、必要に応 じて高校生や大学生、成人にも触れることとする。 1)「問題である」の上位項目 「知らない・できない事象は問題だと思いますか。」について、「そう思う」(これ以降「問題である」 と記す。)との回答数が多かった項目を示した(表3)。 その結果、22 名全員が、大学生が洗濯物の特徴によって洗い方を選択することができないことを「問 題である」とした。次に、21 名が「問題である」とした項目は、小学生では、「衣服を(季節や気候に 合わせて)決めることができない」「ボタンのかけ違えなど衣服を整えて着ることができない」、「暑いの に上着を脱がない、寒いのに薄着のままなど、衣服を調整して着ることができない」などの着方に関す る項目や、「リボン結び(蝶結び)ができない」「安全ピンをつけられない」「親指と人差し指を使って針 をつまめない」など手指の巧緻性に関する項目であった。中学生では、「清潔なシャツに着替える習慣が ない」といった着方に関する項目も見られたが、「玉結びができない」「玉どめができない」「しるしに合 わせて、まち針を留めることができない」などの製作に必要な裁縫技能が挙げられた。その他、「活動に 合わない服装をする(中学生)(高校生)」「手洗いでの洗濯の仕方を知らない(成人)」が上位であった。 表 3 「できない・知らない事象は問題だと思うか」上位項目 (人) できない・知らない事象 そう思う そう思わない 分からない 洗濯物の特徴(色・素材)によって洗い方を選択することが出来ない(大) 22 0 0 リボン結び(蝶結び)ができない(小) 21 0 1 安全ピンをつけられない(小) 21 1 0 ものさしを使って2点を結ぶ直線が引けない(小) 21 1 0 親指と人差し指を使って針をつまめない(小) 21 1 0 衣服を(季節や気候に合わせて)決めることができない(小) 21 1 0 ボタンのかけ違えなど衣服を整えて着ることができない(小) 21 1 0 暑いのに上着を脱がない、寒いのに薄着のままなど、衣服を調整して着ることが できない(小) 21 1 0 玉結びができない(中) 21 0 1 玉どめができない(中) 21 0 1 しるしに合わせて,まち針を留めることができない(中) 21 1 0 針さしに刺さないで机上に針をおきっぱなしにする(中) 21 1 0 清潔なシャツに着替える習慣がない(汚れたシャツをいつまでも着ている)(中) 21 1 0 手洗いでの洗濯の仕方を知らない(成) 21 1 0 活動に合わない服装をする(中) 21 1 0 活動に合わない服装をする(高) 21 1 0

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2)家庭科への期待 -「問題である」と思う事象を学校教育のどこで習得すべきか- 「問題である」と思う衣生活事象を、「どこで習得したらよいですか」の質問に対して、「家庭科で」 との回答が多い項目から順に並べ、上位項目と下位項目を示した(表4)。 家庭科で習得すべき上位項目は、すべて被服製作に必要な知識や技能で占められた。これらの項目は、 「家庭科以外の学校教育の活動で」の回答は皆無であり、「学校以外で」もわずかであったことから、家 庭科への期待が高いことがうかがえた。 一方、家庭科で習得すべき下位項目については、「安全ピン(小)」「リボン結び(小)」「こま結び(小)」 が、「家庭科で」の回答が全く無く、「家庭科とその他の学校教育の活動で」「家庭科以外での学校教育の 活動で」と、「学校以外で」に二分された。これらが出来ないことは問題と思っているが、家庭科で習得 すべき事象ではないと考えられていることから、どこで習得すべきかについて今後検討すべき課題と言 える。また、「清潔なシャツに着替えない(中)」と「活動に合わない服装(高)」の着装は、「家庭科と その他の学校教育の活動の場」が多く、学校教育全体で習得させるべきとされた。なお、「ものさし(小)」 については、家庭科教育以外の学校教育が期待されていた。 表 4 「どこで習得するべきか」家庭科への期待 【「家庭科で」上位項目】 (人) 学校教育の中で できない・知らない事象 家庭科で 家庭科とその他の 学校教育の活動で 家庭科以外の学校 教育の活動で 学校以外で まち針の留め方がわからない(留める向き間違っている)(小) 16 1 0 0 並み縫い,返し縫いなどの特徴がわからない(小) 16 2 0 0 布目の方向(バイヤス)が分からない(中) 15 0 0 1 しるしに合わせて,まち針を留めることができない(中) 15 1 0 2 ボタンを縫い付ける正しい方法がわからない(小) 15 4 0 0 玉結びができない(中) 15 3 0 1 玉どめができない(中) 15 3 0 1 【「家庭科で」下位項目】 学校教育の中で できない・知らない事象 家庭科で 家庭科とその他の 学校教育の活動で 家庭科以外の学校 教育の活動で 学校以外で 安全ピンをつけられない(小) 0 5 5 13 リボン結び(蝶結び)ができない(小) 0 6 4 12 こま結び(本結び、固結び)ができない(小) 0 7 4 11 清潔なシャツに着替える習慣がない(汚れたシャツを いつまでも着ている)(中) 1 13 0 7 ものさしを使って2点を結ぶ直線が引けない(小) 1 8 10 1 活動に合わない服装をする(高) 1 14 0 4

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49.1 45.9 42.5 37.1 36.4 34.9 31.9 31.3 11.4 16.2 19.2 16.4 16.0 13.3 13.6 14.3 19.0 19.6 19.1 24.1 32.0 26.6 37.0 27.4 6.8 3.4 6.3 1.3 10.0 1.1 1.2 2.6 13.8 15.0 12.9 21.1 5.6 24.0 16.3 24.3 0% 25% 50% 75% 100% 5洗濯 8手入れ 7着装 2手縫い 6素材 4製作用具 3ミシン縫い 1製作計画 図2 習得する必要性の根拠        カテゴリー別回答数の割合 実用性 文化的 教育的 学術的 発達的 (2)カテゴリー別全体の傾向 調査した衣生活97 項目は、衣生活内容・行為で分類すると、「製作計画」6 項目、「手縫い」20 項目、 「ミシン縫い」10 項目、「製作用具」12 項目、「洗濯」10 項目、「素材」8 項目、「着装」22 項目、「手 入れ」9 項目の 8 つのカテゴリーとなった。 1)カテゴリー別「問題だと思う」回答者の割合 カテゴリー別に「できない・知らない事象は問題であるの割合が多かった順に示した(図1)。「問題 である」が最も多かったのは「洗濯」89.5%であった。逆に「問題と思わない」が多かったのは、「ミシ ン縫い」24.5%で、4 人に 1 人の回答者がミシンの項目について「できない」「知らない」ことが「問題 である」を選択しなかった。「分からない」については、「素材」10.3%、「着装」9.7%が多く、ファッ ションの変化や素材の開発を考慮すると、判断が難しかったのかもしれない。 2) 「問題である」事象を習得すべき根拠 問題であると回答した事象については、どのような観点から習得すべきと考えたのかその根拠を尋ね た。生活に役立つなどの「実用性の観点」、文化の伝承などの「文化的な観点」、指導計画の作成上など の「教育的な観点」、学問の研究成果などの「学術的な観点」、脳や手指の巧緻性などの「発達的な観点」 の5 つの選択肢を設定し、当てはまるものすべてを選択させた。回答者の割合は図2のとおりである。 8 つの衣生活事象カテゴリーのうち、「ミシン縫い」を除く7 つが「実用性の観点」から習得すべきと いう回答が最も多く、回答者のほとんどが実用性の観点を重要としていることが明らかになった。「ミシ ン縫い」については、「教育的な観点」が多く、「実用性」よりも次の段階の学習のために、「できない」 「知らない」ことが問題であると感じていることが明らかになった。どのカテゴリーにおいても「学術 的な観点」は少なかった。 観点別に多かった衣生活事象カテゴリーを見てみる。「実用性の観点」が最も多かったカテゴリーは「洗 濯」49.1%、「文化的な観点」は「着装」19.2%、「教育的な観点」は「ミシン縫い」37.0%、「学術的な 観点」は「素材」10.0%、「発達的な観点」は「製作計画」24.3%であった。 89.5 80.8 77.7 76.8 73.1 70.8 69.5 66.8 8.2 13.2 12.6 16.7 23.5 21.5 20.1 24.5 2.3 5.9 9.7 6.6 3.4 7.7 10.3 8.6 0% 25% 50% 75% 100% 5洗濯 2手縫い 7着装 8手入れ 4製作用具 1製作計画 6素材 3ミシン縫い 図1 「できない・知らない事象は問題だと思うか」      カテゴリー別回答数の割合 そう思う そう思わない 分からない

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86.0 80.6 74.2 66.0 63.7 56.2 47.4 28.3 14.0 19.4 24.4 34.0 26.1 42.3 46.2 70.2 0.0 0.0 1.4 0.0 10.2 1.5 6.4 1.6 0% 25% 50% 75% 100% 3ミシン縫 6素材 2手縫い 8手入れ 4製作用 5洗濯 1製作計 7着装 図4 「学校教育のどこで習得すべきか」         カテゴリー別回答数の割合 家庭科で 家庭科とその他の 学校教育の活動で 家庭科以外で 3) 「問題である」事象を習得すべき場 問題であると思う事象については「どこで習得したらよいと思いますか。」と尋ねた。選択肢は「学校 で」「学校と学校以外の両方で」「学校以外で」の三つとした(図3)。 「学校で」習得すべきとの回答が最も多かった衣生活事象カテゴリーは「ミシン縫い」(63.0%)であ った。次いで「素材」「製作用具」「製作計画」と続いた。この4つのカテゴリーは、「できない」「知ら ない」事象として問題ではないが、学校教育の中で習得すべきであると考えられていることが明らかに なった。これらのカテゴリーに含まれる事象は生活するうえでの支障は大きくはないが、習得すること に意義があると判断され、その習得の場として学校教育が期待されているといえよう。一方、衣生活事 象カテゴリーのうち「問題である」という回答が最も多かった「洗濯」は、「学校と学校以外の両方で」 習得すべきが60.9%を占め、次いで「学校以外で」26.9%であり、「学校で」12.2%が最も低かった。「問 題である」回答が上位であった「手入れ」「着装」も「同様の傾向であった。 次に、習得する場を「学校で」「学校と学校以外の両方で」を選んだ場合、学校教育の中のどこで習得 したらよいかを尋ねた。選択肢は「家庭科で」「家庭科とその他の学校教育の活動で」「家庭科以外で」 の三つとした(図4)。 「ミシン縫い」と「素材」のカテゴリーは、「家庭科で」「家庭科とその他の学校教育の活動で」の回 答が多く、「家庭科以外で」との回答はなかった。また、「製作用具」と「製作計画」のカテゴリーには 「家庭科以外で」との回答も見られ、他教科や総合的な学習の時間、特別活動などが想定されたのでは ないかと考えられる。一方、「着装」カテゴリーは、学校教育の中でも、家庭科に限定せず、その他の学 校教育の活動も含めて習得すべきであると考えられていることが明らかになった。 63 51.6 46.3 42.6 41.9 12.2 11.4 7.9 26.6 34.4 38.8 43.6 46.9 60.9 62.4 64.8 10.4 13.9 14.9 13.8 11.2 26.9 26.2 27.4 0% 25% 50% 75% 100% 3ミシン縫い 6素材 4製作用具 1製作計画 2手縫い 5洗濯 8手入れ 7着装 図3 「問題だと思う事象はどこで習得すべきか」    カテゴリー別回答数の割合 学校で 学校と学校以外両方で 学校以外で (3)被服製作に関わる技能 衣生活事象カテゴリーのなかで、「問題である」とする回答が「手縫い」に多く、「ミシン縫い」に少 ないことが明らかになった。同じ被服製作の技能でありながら、その差異が生じたのは何故かを考察す るために、「ミシン縫い」と「手縫い」の項目を取り上げて比較、分析した(表5)。 3ミシン縫い

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表5 「ミシン縫い」と「手縫い」の項目別回答 問題かどうか どこで習得すべきか 習得すべきだと思う根拠 学校教育で できない・知らない事象 問題だ 問題で ない 家庭科で 家庭科とその他 家庭科以外 学校教 育以外 実用性 文化的 教育的 発達的 【ミシン縫い】 ミシンの返し縫いができない(小) 13 7 12 1 0 0 11 4 13 5 ミシン針に糸を通すことができない(小) 16 6 14 2 0 0 13 5 13 10 ミシン縫いの基本的な操作がわからない(小) 16 6 13 2 0 1 13 6 13 5 ミシン縫いのとき、針を刺して,押さえを下ろして から縫うことができない(小) 13 7 11 1 0 1 9 4 11 5 ミシンで直線縫いができない(小) 16 5 14 2 0 1 12 6 14 7 ミシンに上糸をかけることができない(中) 17 4 14 2 0 1 12 5 15 5 ミシンの速度を調整しながら,縫うことができない (中) 14 5 10 3 0 1 11 3 13 6 【手縫い】 こま結び(本結び、固結び)ができない(小) 20 1 0 7 4 11 20 10 2 19 並み縫い,返し縫いなどの特徴がわからない(小) 19 3 16 2 0 0 16 11 14 7 親指と人差し指を使って針をつまめない(小) 21 1 7 5 0 7 14 6 7 19 針に糸を通せない(小) 19 2 13 5 0 1 16 8 15 16 ボタンを縫い付ける正しい方法がわからない(小) 20 1 15 4 0 0 19 8 12 8 玉結びができない(中) 21 0 15 3 0 1 17 8 15 15 玉どめができない(中) 21 0 15 3 0 1 18 8 15 13 しつけ縫いの意味がわからず、本縫いの位置に しつけ縫いをしている(中) 15 6 11 1 0 0 12 6 11 5 しつけをかけられない(中) 15 5 12 1 0 0 13 6 12 5 スナップを正しく縫い付けることができない(中) 14 6 10 2 0 0 13 5 7 6 まつり縫いができない(中) 17 5 14 2 0 0 17 10 14 7 ゼッケンや名札を自分で縫い付けることができない(中) 18 3 9 6 0 1 18 5 7 6 手縫いの途中で針を抜く時に、周囲の人への 安全まで考えることができない(中) 20 2 9 8 0 0 19 4 10 7 1)ミシン縫いの項目 「問題である」を選択した項目を見ると、各選択肢の回答数に差は少ないものの、ミシンをかけるこ とそのものよりも縫う前の段階でできないことを問題だと思う回答が多かった。では、どこでそれを習 得したらよいかとの問いに、「問題である」の回答の多くが学校教育で取得することを選択し、その中で も「家庭科で」を回答していた。ちなみに「家庭科以外で」の回答は皆無であった。 必要性の根拠については、いずれの項目も「実用性の観点」と「教育的な観点」が挙げられていたが、 「教育的な観点」の方の回答が多かった。「糸通し(小)」については、「発達的な観点」も多く見られた。 2)手縫いの項目 「問題である」が多い項目は、針をつまむ、安全に針を抜く、玉どめ、玉結び、こま結びなど、縫う 前の段階でできないことから問題視され、「ミシン縫い」の項目と同様の傾向が見られた。そのうちの玉 どめ、玉結びは、「家庭科で」取得するべきとの回答者が多く、逆にこま結びについては「家庭科とその 他」「家庭科以外の学校教育」「学校教育以外」などに分かれ、「家庭科」で取得するべきとの回答者はい なかった。

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必要性の根拠については「実用性の観点」が最も多く、次いで「教育的な観点」が多かった。「針をつ まむ(小)」「糸通し(小)」については「実用性の観点」よりも「発達的な観点」が多かった。 3)手縫いの糸通しとミシンの糸通し 針に糸を通すという技能について、手縫いとミシン縫いを比較した。いずれも小学校5 年の授業内容 であり、それぞれ縫いはじめの活動である。できないことを「問題である」とする回答は、手縫いの方 が若干多かった。「問題である」回答数を100 として両者を比較したところ、習得の場は「家庭科で」(ミ シン縫い87.5 に対し手縫い 68.4)、習得の根拠は「実用性の観点」(81.3:84.2)、「教育的な観点」(81.3: 78.9)、「発達的な観点」(62.5:84.2)となった。ミシンの糸通しの方が家庭科に期待する割合が高く、手 縫いの糸通しができないことは「発達的な観点」で問題であると考えられていると言える。 (4)学校段階による比較 1)校種があがると問題だと感じる事象についての習得の場と根拠 「ボタンを正しく縫い付けることができない」「肌着を着ない」「衣服のアウターとインナーを逆に切 る」「体のサイズに合わない衣服を着る」「活動に合わない服装をする」「洗濯物をたためない」の 5 項 目は、小学生・中学生・高校生のそれぞれができないことに対して、問題と思うか、習得の場、習得の 観点等を尋ねた。その結果について表を割愛したので略述する。 問題だとする回答は、「ボタンを正しく縫い付けることができない」は、習得すべき段階として小学生 対象が18、中学生対象 19、高校生対象 20 名と校種が上がるにつれて増えた。そして「実用性の観点」 を根拠とする回答も小学生17、中学生 19、高校生 20 名と増加していた。 「実用性の観点」の多かった高校生については、「教育的な観点」と「発達的な観点」の根拠が少なく、 習得の場として、小・中学生には見られなかった「学校以外で」の回答が出現した。「問題である」と回 答された同じ事象でも、校種があがると習得の場も根拠も違ってくることが明らかになった。 2)「肌着を着ないこと」の習得すべき根拠 「肌着を着ないこと」は、小・中・高校生ともに問題であるとの回答が18 名あり、学校種にかかわ らず、問題と考えられていた。一方、小・中・高校生ともに問題ではない2 名、小学生では問題ではな いが中・高校生では問題である1 名、逆に小・中学生では問題であるが、高校生では問題ではない 1 名 であった。 「問題かどうか」、問題だとしたら「どこで習得すべきか」、「問題だと思う根拠は何か」の3 つの問 に対する回答パターンを分類したところ、4 つのグループに分けることができた(表6)。このうち、肌 着を着ないことが問題であると考える3 つのグループの特徴を述べる。最も多いのは「家庭科とその他 で習得すべきとするグループ(11 名)であり、その根拠に回答者のほぼ全員が「実用性の観点」を選ん でいた。「教育的な観点」は半数、「文化的な観点」は1/3が選んでいた。次に多かった「学校で習得す る必要がない」とするグループ(5 名)は、全員が「実用性の観点」を選んでおり、「教育的な観点」と 「文化的な観点」はそれぞれ1 名であった。「家庭科で習得すべき」とするグループ(4 名)は、「実用

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性の観点」と「文化的な観点」がいずれも3 名が選び、「教育的な観点」は 1 名であった。 肌着を着ることについて、「家庭科で」取得すべきだと考えるグループは、その根拠として実用性の観 点と文化的な観点を挙げている。「家庭科とその他で」と考えるグループは実用性のほか、教育的、文化 的な意義を認める者も少なからずいた。「学校以外で」と考えるグループは実用性だけに集中した。 学校で取得する内容には実用性だけではなく、教育的、文化的な意義があることが重要な条件となる のではないかと考えられる。特に家庭科だけで取得する内容には、文化的な意義が重要であるのではな いかと考えられる。 表6 「肌着を着ない」事象についての学校段階別の回答 習得すべきと考える根拠 問題かどうか* どこで習得すべきか** 実用性 教育的 文化的 回答パターンによるグループ 回答者の職種と コーホート 小 中 高 小 中 高 小 中 高 小 中 高 小 中 高 家庭科教育 43 〇 〇 〇 ◎ ◎ ◎ 〇 〇 〇 主事 43 〇 〇 〇 ◎ ◎ ◎ 〇 〇 〇 家庭科教育 52 〇 〇 〇 ◎ ◎ 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 肌着を着ないことは問題であり, 家庭科で学ぶべきと考えるグル ープ 家庭科教育 43 〇 〇 ◎ ◎ 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 43 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 22・33 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 主事 52 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 52 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 主事 52 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 22・33 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 22・33 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 22・33 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 主事 43 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 被服 43 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 肌着を着ないことは問題であり, 家庭科とその他で学ぶべきと考 えるグループ 家庭科教育 52 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育 43 〇 〇 〇 × × × 〇 〇 〇 〇 〇 〇 被服 43 〇 〇 〇 × × × 〇 〇 〇 家庭科教育 43 〇 〇 〇 × × × 〇 〇 〇 家庭科教育 22・33 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 肌着を着ないことは問題である が、学校では学ぶ必要がないと考 えるグループ 主事 52 〇 〇 〇 〇 〇 〇 家庭科教育学 43 肌着を着ないことは問題ではな いと考えるグループ 被服 43 * 〇「問題である」、空欄は「問題ではない」または「わからない」 ** ◎「家庭科で習得すべき」、〇「家庭科とその他で習得すべき」、×は学校以外で習得すべき 3)「見通しを立てる」についての職種およびコーホート別とらえ方の違い 「見通しを立てる」の各項目について、「道具を手近にそろえるなど段取りが分からない(大学生)」 と「縫う順序などの見通しが立てられない(小学生)」の項目を抜き出し、回答者の職種およびコーホー トから分析した(表7)。なお,表中の回答者の職種とコーホートの欄の「家庭科教育43」は、「家庭科 教育」が大学の家庭科教育担当者であることを、「43」は指導要領コーホートが 43 年版であることを表

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わしている。 小学生にも大学生にも必要であるとしたグループは9 名で、ほとんどが家庭科教育学担当者であった。 小学生にのみ必要としたグループは3 名で、昭和 22・33 年版学習指導要領下の回答者にはいなかった。 大学生にのみ必要としたグループは8 名で、指導主事や被服学担当者も見られた。 習得の根拠について、昭和22・33 年版学習指導要領下の回答では、複数の根拠から「問題である」 とする傾向が見られた。また「教育的な観点」を根拠としたのは、すべて家庭科教育学担当者であった。 「知らない・できない事象が問題だと思わない」項目は、「裁ちばさみの効率的な使い方がわからない (小学生)」(19 名)が最も多かった。 「縫う順序などの見通しが立てられない(小学生)」(9 名)も多く、中でも「指導主事」及び「被服 学担当者」に多い傾向 がみられた。この背景 には、作品の完成を優 先し、製作プロセスか ら学ぶ教育的な価値を 軽視せざるを得ない実 態が推察できる。ある いは、学校現場ではキ ット教材の普及を受け 入れていることも影響 しているのではないか と考える。一方、小学 生の「見通しを立てる」 に「問題だと思わない」 とした全員が、大学生 の段取りについては問 題であると回答し、そ のほとんどが「実用性 の観点」を根拠とする ものであった。

4. まとめ

本研究では、家庭科教育の衣生活領域における基礎・基本を見直すための示唆を得るために、衣生活 の知識や技能に関わる「できない」「知らない」事象を問題としてとらえているか否か、そうとらえる根 表7 「見通しを立てる」 習得すべきと考える根拠 問題かど うか* 実用性 教育的 文化的 発達的 回答パターンによる グループ 回答者の職種と コーホート 小 大 小 大 小 大 小 大 小 大 家庭科教育 43 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 22・33 ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 43 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 43 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 52 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 52 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 22・33 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 22・33 ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 小学生にも大学生に も必要 主事 43 ○ ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 52 ○ ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 43 ○ ○ ○ ○ 小学生に 必要 被服 43 ○ 家庭科教育 22・33 × ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 43 × ○ ○ ○ ○ 家庭科教育 22・33 × ○ ○ ○ ○ ○ ○ ○ 主事 52 ○ ○ 主事 43 × ○ ○ ○ ○ 主事 43 × ○ ○ 被服 52 × ○ ○ ○ 大学生に 必要 被服 43 × ○ 家庭科教育 43 × × ともに 必要なし 主事 52 × × * 〇「問題である」、×「問題でない」、空欄は「わからない」。

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拠および習得すべき場などを分析した。 まず、衣生活の事象も前報の食生活と同様に、家庭科教育に携わる研究者や大学の被服学担当者や指 導主事によって、とらえ方に差異があることが明らかになった。 衣生活事象で「できない・知らない」ことが「問題である」との回答が最も多かったカテゴリーは「洗 濯」であり、その根拠は「実用性の観点」からくるものであった。小・中・高いずれの学習指導要領も、 家庭科は家庭生活で活かすことや家庭生活での実践が目標となっているため、実用性が重んじられる傾 向にあるといえる。一方で、「ミシン縫い」カテゴリーを習得すべき根拠は、「実用性の観点」よりも「教 育的な観点」の回答が多かった。これは、ミシンについての知識や技能の習得は、それを引き継ぐ学年 や校種の学習にとって必要だと認識されていると推測される。また、「縫う順序などの見通しを立てられ ない」ことは、小学生には問題ではないとしながらも、大学生は実用性の観点から必要とする傾向にあ った。「着装」は、「肌着を着ない」のように「実用性の観点」を重視する事象と、「衣服のアウターとイ ンナーを逆に着る」「活動に合わない服装をする」事象のようにが、「文化的な観点」が高いことが示さ れた。後者は、将来の衣生活の改善や衣をめぐる文化の継承を示唆するものと考えられる。 次に、どこで習得していくかについて、「ミシン縫い」「素材」「製作用具」「製作計画」「手縫い」は、 家庭科で「教育的な観点」から必要であり、「着装」は「文化的な観点」から必要とされるものの、学校 だけでなく学校以外でも習得すべきと考えられていることが明らかになった。「安全ピンをつけられな い」「リボン結びができない」は、習得する場が学校教育あるいは学校以外と判断が分かれた。 「できない」「知らない」ことは問題であり習得すべきとされる衣生活事象の中に、実際には、どこで も経験せず、教えられないまま成人になる子どももいるかもしれない。今、役に立つと思われなくても、 衣生活の知識や技能を学習することは、子どもの経験値を保障するということであり、将来その経験値 をもとに便利さや意義を理解し、活用できる。学校以外で習得すべきとする項目も、それらがどの段階 で習得すべきか検討することにより、就学前、あるいは学校教育や家庭科教育の早い発達段階で、習得 すべき基礎・基本となる可能性もある。

資料

(衣生活「できない」「知らない」事象項目の出典) ・川端博子・鳴海多恵子「小学生の手指の巧緻性に関する研究 : 遊びと学習面からの一考察」日本家庭 科教育学会誌60(2)、pp.123-131、 2009 年。 ・長山芳子 他「小学校家庭科被服教育の質的向上のための大学と小学校連携の試み―ミシンを使ったカ フェエプロン製作実習を中心に―」福岡教育大教育学部附属教育実践総合センター教育実践研究14、 pp.91-98、2006 年。 ・日本家庭科教育学会編「家庭科で育つ子どもたちの力-家庭生活についての全国調査から-」明治図 書、pp.23-25、2004 年。 ・辻慶子 他「看護学生の生活技術の実態調査」北海道文教大学研究紀要 33、pp.109-115、2009 年。

(12)

・柴山弥壽男 他「教員養成大学学生の「家庭生活認識」(第 2 報) : 食・住・衣生活技能と養育環境」日 本家庭科教育学会誌26(3)、pp.13-18、1983 年。 ・古谷吉男 他「児童期までの生活技能の習得に関する調査研究(その1)」長崎大学教育学部紀要 48、 pp.63-69、2008 年。 ・柳昌子 他「被服学習の現状と教材開発」福岡教育大学紀要 47(5)、pp.153-168、1998 年。 ・日本家庭科教育学会編「現代の子どもたちは家庭生活で何ができるか」家政教育社、p.109、1985 年。 ・横川嘉範 他「子供に今何が起こっているか」高校生文化研究会、p.40、1979 年。 ・小林久美 他「小学校教員養成科目としての家庭科の課題(2)―衣の技能に関する実技調査を通して」 九州女子大学紀要44(3)、pp.17-29、2008 年。

引用・参考文献

1)中西雪夫 他「家庭科の基礎・基本の見直し –食生活に関わる「できない」「知らない」事例に対す る解釈を通して−」佐賀大学教育実践研究 29、pp.41-58、2013 年。 2)小林久美「小学生の生活能力と家庭科の内容に関する考察」九州女子大学紀要 46(1)、pp.1-13、2009 年。

参照

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