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「スギ花粉症」抗原性物質の不活性化に関する研究

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(1)

論 文

「スギ花粉症」抗原性物質の不活性化に関する研究

    高 島 征 助

岡山大学地域共同研究センター

Study of Deactivating Methods against Ceder Pollenosis        Antigen in Vitro

     Seisuke TAKASHIMA

Co−operative Research Center , Okayama University

1.緒  言

 毎年,我が国では2月下旬から4月上旬にかけて,植物の開花期に合致するように霧しい

 「花粉症」の患者が発生している。これらのうち,とくにスギ花粉を抗原性物質とする「スギ

花粉症」患者が最も多く,我が国の人口の数%にも達するといわれている。

 最近では,自動車の排気ガス中の芳香族炭化水素化合物もアジュバンドとして作用するとの 報告もあり1),その発症機序も明らかにされつつあるが,現時点ではまだ根治療法は確立され ておらず,薬物投与,減感作療法など対症療法に頼らざるを得ない2)。

 花粉のヒト体内への侵入を防止する最も簡単で,しかも効果的な方法は織り目の細かいマス  クを着用することであるが,元々,花粉症による鼻炎を併発しているケースが多く苦痛を伴い

 やすい。

 著者もこれまで,「スギ花粉症」抗原性物質を効率的に吸着除去する繊維について検討して  きた3)。それらのうち,スルポソ酸基を有するモノマーを共重合したポリエステルなどが有 効

であることを見出したが,スルポソ酸基の濃度を増大させるにしたがって,繊維形成能や工程 安定性が低下するという欠点もあることが明らかになった。そこで,より広範囲の生活環境中 のスギ花粉を適当な方法で処理することによって,抗原性物質を不活性化することが出来れば,

患者にとって何らかの救いになることを期待して本研究に着手した。

  本研究では,スギ花粉への紫外線(UV)直接照射後の抽出液,スギ花粉の抽出液をUV処 理,加熱処理および吸着剤による処理を行った後,「スギ花粉症」既往の被験者の血清に添加  し,血清中の抗体価の変化から抗原性物質の不活性化効果を判定した。さらに,抗原性物質の

45

(2)

構造・物性についても若干の考察を行ったので,これらの事柄について報告する。

II。実験方法

 i.スギ花粉:農林水産省 森林研究所から供与  li. UVランプ:ニッポ電機(株)製

   SGL−500Y4U型(えmax.:254nm)

   SGL−3000SW型(えmax.:185,254nm)

 皿.使用した血清:「スギ花粉症」既往の被験者の血清

 iv.血清中の抗体価(lgE Anti body , Ab)の測定:ELISA(RAST)法

 v.使用した吸着剤=ゼオライト(孔径;0.4,1.Onm),ゼオライト(フライポソタイト,

  孔径;500nm),シリカ/アルミナ(DavisonCo.,A1/Si原子比=4.40),α一,γ一ア   ルミナ(和光純薬),陽イオン交換樹脂(Rohm&Haas Co.,SO,H型),陰イオン交換樹脂   (三菱化成N(CH3)3・C1型),活性炭(クラレ, PHEMAコート)

 vi. 「スギ花粉症」抗原性物質(Antigen, Ag)の不活性化の評価方法

  a.スギ花粉への直接UV照射法

  ①所定量のスギ花粉の精一してアルミ二上に静置し,大気中にて,その上方から所定時     間UV照射した。なお,照射強度はランプ〜試料問の距離を変更して行った。

  ②照射処理した花粉を1 m9の生理食塩液に1昼夜浸漬した後,0,45μmのフィルターで    濾過した。

  ③血清1mΩに②の濾液,0.3mΩを添加して血清の抗体価を測定した。

  b.スギ花粉抽出液へのUV照射法

  ①約19の花粉を精点して,20m2の蒸溜水に1昼夜浸漬した後,0.45μmのフィルター

    で濾過し,濾液を試料溶液とした。

  ②試料溶液を石英製セル(光路長.10mm)に充填して所定時間UV照射を行った。

  c.吸着剤による処理

  ①0.039の吸着剤を1.Omeの蒸溜水に浸漬し,オ 一トクレービングして脱気した。

  ②b一①の試料溶液,1.5mQを添加して30分間,室温にて放置した後,0.45μmのフィ     ルターで濾過し,濾液を回収した。

  d.加熱処理

  ①約2mΩのb一①の試料溶液をそれぞれ40,60,80,100,120℃にて20分間,大気中に     て加熱処理した。

    b〜dで処理した試料溶液,1.OmΩを血清,1.OmQと混合して,血清の抗体価を測定した。

(3)

III.実験結果および考察

 a.スギ花粉へのUVの直接照射

  著者は,先にスルポソ酸基を導入したポリエステル繊維が「スギ花粉症」抗原性物質を効率  的に吸着除去することをスクラッチテスト用キットを用いて確認している3)。しかし,実際に  は,その除去効率はポリエステル繊維当たりのスルポソ酸基の濃度と大気中に浮遊している  「スギ花粉」量の組み合わせに依存する。一方,ポリエステル繊維に導入されるスルホソ酸基  の濃度は高々,4〜5mol%程度であり,それ以上導入することは繊維の製造工程で無理であ  る。したがって,大気中に高濃度の「スギ花粉」が浮遊していれば,この繊維による抗原除去  率は低下することになる。

  そこで,著者は「スギ花粉症」抗原性物質をただ単に吸着除去するのではなく,より大掛か  りな不活性化方法の一つとしてUV照射法に着目した。

  UV照射による細菌類の殺滅機序は,菌体内のDNAの損傷一一一とくにチミソダイマーの生 成   によるといわれているが4),スギ花粉においても,UVは花粉の細胞膜を透過して,

 細胞内の物質を変性して,抗原性物質を不活性化することを予想した。それらの測定結果を表  1(低照度領域),2(高照度領域)に示す。

Table 1. Deactivation of ceder poll−

enosis antigen by ew irradiation  (Lover irrad. energy range)

耳▼ Ce己cr pollen IgE(m1躍1)

(■Uノロ「) (璽9) 91n ser孤口

0 0 6.88

0.18 4.45

0 0.40 4.49

1.10 1.37

0.18 5.03

1.30 0.52 3.35

0.96 2.09

0.14 7.03

4.70 0.74 3.71

0.91 2.36

UV LAHP:SGL−500T4U. For 3 nins.

Table 2. Deactivation of ceder pollenosis antigen by UV irradiation

 (Higher i rrad. energy range)

旺▼ 1πad. Ceder polle島 IgE(IUノ鴛1)

(ロ習ノ面) ti鳳e (聖9) ●1n seru局

(璽in)

0 0 0 5.84

0.40 3.44

0 0 0.72 3.74

1.22 3.59

1 1.14 3.85

3 1.21 3.97

6.且0 3 0.44 3.59

3 0.56 3.16

5 1.06 3.63

1 0.96 7.06

3 1.置2 6.11

8.50 3 0.30 5.0豆

3 0.69 3.94

5 1.06 4.38

UV la−p:SGL−300VS

47

(4)

 表1,2の測定結果から明らかなように,スギ花粉が少量の場合にはその抗原性はほぼ完全 に消失するが,多量になるとその効果が低下する。これは花粉が多量になると,花粉粒子が重 なり合い陰の部分が生じ易くなり,UV照射が不充分になることに起因するのであろう。しか し,実際に大気中に浮遊しているスギ花粉の分散度は極めて大きく,花粉粒子が重なり合う可 能性は低い。したがってUV照射によるスギ花粉中の抗原性物質の不活性化方法は有効な手段 になり得るものと考えられる。また,このようなUV照射によって「スギ花粉症」抗原性物質 が不活性化されることは,セイタカアワダチ草,あるいは千草などの「花粉症」抗原性物質も 不活性化される可能性を示唆するものである。

 UV照射によるスギ花粉の形態学的変化についても走査型電子顕微鏡によって観察した。

 著者は先に指標菌として黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus, SA)を用いてUV照射 による殺滅機序を検討した際に,UV照射によってSAの粒子径が約10%縮小することを確認し ている5)。そこでスギ花粉においても同様の所見が得られる否か,さらに新しい知見が得られ

ることも期待して観察した。しかし,UV照射で処理前の像と大差なかった。一方,水抽出後 の試料では花粉の顕著な収縮,穎粒の脱落などの所見が認められた(図1〜6)。

Fig.1 SEI of ceder pollen before treat−ent   (渥1,000)

(5)

Fig−2 SE: of ceder ponen before trcatnent

     (潔 夏0,000)

Pig.3 SEI of ceder pollen after UV irrad.

     (x t,ooo)

Pig.4 SEI of ceder pollen after or irrad.

     (x lo.ooo)

一49一

(6)

Fig.5 SEr of ceder pollen after extraction

  (X産.000) 瑠.ギ簿

灘健

Fig. S SE一 of ceder pollen after extraction

(X 10,000)

b.花粉の抽出液へのUV照射

 UV照射処理法の欠点は対象物の凹凸に よって陰の部分があると,充分の効果が得 られないことである。そこでUV照射によ る「スギ花粉症」抗原性物質の不活性化効 果をより定量的に把握するために花粉の抽 出液を用いて検討した。それによると照射 時間を延長するにしたがって抗原性物質が 不活性化されることが確認された(図7)。

.1圃﹂﹂嘱 ︐口

Neg昌. COロtrol

?osi. conttol

 30 sccs.

 60 sccs.

 置808ec●.

 300 sccs,

1. 00

UAノ■1(11tS)

Z. OO 3. 00 4. 00

Fig.7. Deactivating against the ceder pollenosis    an tigen in the eitracted solution by UV irrad.

(7)

また,UV照射による抽出液中の成分の変化を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)とゲ ルパーミエーショソクロマトグラフィー(GPC)によって観察した。

UV照射によって,抽出畠中の小・分子量領域の成分が変性することがHPL Chromatogram から判明した(図8,9)。さらにGP Chromatogramから分子量が約12,000の成分もUV照射 によって破壊・変性されることが判明した(図.10,表3)。なお,これらの成分の抗原性につ いては後述する。

 門.

N 曽         ㊥         軌  」    旧  UJ       卜       9

窒.

Fig. 8.

﹄﹂. −需.

2

﹄創.

田9霜 N

﹄O︑

 HPL Chronatogran of the ceder pollen extracted solution before UV irrad.

Coi鰺m:C騒5翼SO窟B 5−ODS−H, 4.6朋Φ 二150邑ロ

Gr墨diε置t 陀しhod

Soho雌3 A; C日 , C薦!8= 025 95 B; C5、C馬ノ53{卜90ハO

A→B. For 40■iロ8.

Flo冒 r墨匙。=0.8脚1ノ隔i腫.a【40℃

w

ep

﹄自︒.孚

 Table 3. UV irradiating effect on the extracted solutions fro一 ceder pollen(Coロparison of peal【 area OR GPC)

U▼   irradL●  tiロe

@   (国i皿)

盆elati▼e  intensity 盾?@peak area on GPC

@   at 22置i皿s.

0 1,000

1 874

3 831

5 741

10 666

Extd. soln. conc. : O. O16g/7 nl.

In qllartz cell (10−n of path)

U▼ irrad●: 9.50±0.50 ■▼ノ{】1

5 nl used

Fig.9.  皿PL Chronatograロ ol the ceder polle皿       extracted solution after UV irrad. for       3■i器.

冒 し一α

  ... L一㎝

⁝ーワ

剛!詳  轟⁝⁝⁝噸

1≒﹂唱

﹄.−

Co1ロ唇■=6−3.ooosr

So且vent: {:iし「縄匹e B■frer (pE:6.0)

Flo■ rate=1,0日1ノ購iOr  a止 塗●T■

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         1       .      層          t      t      t

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1

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        ト9go馳..oひ門門.α門 ::唱..O勿由nの≧︹.O偽      晶   トい︒◎︑︑まの.0軌

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68R0ヒ..oooQα.団

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ユロロニボりいロ

﹁−..﹁︻

Fig:10. 6P ChTo匿atograロof the ceder polle皿       extracted solntiop

一51一

(8)

c.吸着剤による処理

 「スギ花粉症」抗原性物質の構造・

物性を検討する一手段として,抽出 液を物性の異なる種々の吸着剤で処 理した。その結果,陽イオン交換樹 脂が高活性であり,次いで特定の細 孔径のゼオライトであった。しかし,

活性炭は全く活性を示さなかった

(図11)。ここで使用した陽イオン 交換樹脂はnon porousであるが,

著者のこれまでの研究かち,血清中 のB型肝炎抗原(HBsAg),ヒト免 疫不全症候群ウイルス(HIV)のよ うな大分子量物質を効率的に吸着除 去することを認めている6・7)。また,

谷は血清中の低密度リボ蛋白質(L

日口茎﹂O﹁鱒く

CaIionic e二。血agn.

Anionic Eze血a駕巫.

轟εga. co皿tro互

Po5i.cootrol

  Zoo蓋ite

   (0.4n鳳)

  Zeelite

  (1.0皿)

  Zeolite   (500ロ》

Silica!a1ロ厘i皿a  7一A1ロ星ina  α一Alo−ina    re5且隔    206i2

Active carbo皿

墓 40℃

     むで 

 暑 、。℃

 当 …℃・

 の@  ユ ロで

 藷

  口Aノ翼1(IgE)

1. oo 2. eo 3. oo 4. oo

一、一響一一一響一一層ワ一一闘一刻一一曜一

Fig−11. Deactivatillg ili5inst the ceder pollenosis    antigen in the extracted solotio  by varions    adsorbents and the heat treat−eDt

DL)の選択的吸着剤としてデキストラン硫酸固定面一セルロースを開発し,LDL吸着機序は デキストラソ硫酸のSO、oとLDLのリジン,およびアルギニン残基の㊥電荷の静電的結合によ ると説明している8)。したがって,「スギ花粉症」抗原性物質もLDLと同様に㊦電荷を有し,

しかも活性炭が全く吸着活性を示さなかったことからかなりの高分子物質であると推測される。

d.抽出液の加熱処理

 「スギ花粉症」抗原性物質の構造・物性を推定するためのもう一つの手段として抽出液を加 熱処理した。その結果,60℃で完全に不活性化することが判明した(図11)。このことから抗 原性物質はペプチド様i物質である可能性が高いと推察される。

e. 「スギ花粉症」抗原性物質の構造・物性

 上述した如く,抗原性物質はかなりの高分子量を有し,しかもペプチド様物質であろうと推 定される。

 そこで,まず,抗原性物質を含有するスギ花粉の水溶性成分の化学構造を明らかにするため に赤外吸収スペクトルを測定した。

 スギ花粉,1.02049を100m2の蒸溜水中に懸濁し,室温にて3時間振トウした後,0.45μm のフィルターで濾過した。濾液を凍結乾燥し,さらに40℃にて真空乾燥して赤外スペクトルを 測定した(図12)。また,その試料の一部で元素分析も行った。

(9)

o.8りoo

     0     つ     0     4

    0

ロOZ︽の匡Oωの︽

o.oooo oo

1一

G

・一       ・ 一    .

り。

OO

40 0  3600  32 0  28 0   2400   2000       16 0        120G       60        NAVENUMeERS

      Fig. IZ. IR speetru of the ceder pollen extract

   得られたスペクトルはセルロースのそれと類似しており,1,700〜1,600,1,500〜1,400,

 1,400〜1,200cm} のピークは,それぞれ。=0,一NHCO一,一CH2一,C−O−C結合に帰属され   るものと推定した。一方,元素分析値は,

      C:38.ssse)6, H:6.7s50)6,, N:o.70fO)60 であった。

   これらの情報を基にして,抽出物の化学構造は,大部分はセルロースであり,その中にセル   n一スの骨格に一NHCO一基を側鎖とする物質が微量存在するとものと推定した。

   また,抗原性物質の物性についてさらに詳細に検討するために,酸型の水溶性高分子物質と  の反応性を検討した。すなわち,抽出液にスルポソ酸変性ポリビニルアルコール(応需,Na  型),およびカルボソ酸変性ポリビニルアルコール(白蛇,Na型)の水溶液を添加し,それら  の混合溶液を血清に添加して血清の抗体価の変化を測定した(表.4)。

Table 4. Deactivating effect of PVA derivatives against ceder pallenosis antigen in ho−ogeneous solution

Sa■Ple IgE(IUノ聖1) ref.

Hega. contml 4.69 Di1.sem■

Posi.contro1 2.49 serm/extd Sロ1fooated P▼A 4.77

Htype

SμlfOP律tc4 P▼A 3..14 訂atヲpe Carbo工▼1ated P▼▲ 2.85

Htype

Ca1 bl⊃■ylated P▼A 2.96 麗atype

PYA derivatives conc.: O.076g/nl 翼ega. COEtro】L;semn/H2 0=1!1 Posi.control:sern■ノextd. s61n.=1/1 P▼A dedivative:P▼A deri▼..soln.ノeエtd。 soln.

      =1/1(tixed soln.)

serunlnixed soln.=111 Snlfonated PVA

Coiono−er:Cl12 =CH.CONII C(CE 2 ) 2 CHa SO3 R        R:H or Na

       PQIynerization degree:96         olecular veight:4.200        ムニ5置01.S

      Carboxylated PVA

      Conononer:CH2 =C(CH 2 CooR).CooR       R;H or Na

      Polynerization degree:200       1101ecular veight: ca. 9. 000       ム:10 ■01.瓢

 元来,ポリビニルアルコール(PVA)は界面活性剤としての働きを有しており,さらに,

分.子鎖の末端にスルホン酸基,あるいはカルボキシル基が結合していることから,抗原性物質

一53一

(10)

と親和性に富むと推定した。その結果,表4に示される如く,スルポソ酸(酸型)変性PVA は高活性であり,次いでスルポソ酸Na変性変性PVAであった。しかし,カルボソ酸変性PVA では酸型,Na型ともに低活性であった。このことは, PVAに共重合したカルボソ酸はイタコ

ソ酸であり,分子内の2個のカルボキシル基の内の1個はラクトソ環を形成する可能性が高く,

その立体構造のために抗原性物質との親和性がスルポソ酸変性PVAよりも乏しいことに起因 すると考えられる。したがって,スルポソ酸変性PVAが高活性であるのは,スルホン酸基が 抗原性物質と静電的に結合して,血清中の抗体との結合能を失わせるのであろう。この現象は 先の陽イオン交換樹脂が高活性であったこととも合致する。

 次に抗原性物質の分子量について考察する。上述した如く,抽出液のGP Chrolnatogram

(図10)では明瞭なピークは分子量が約12,000付近に存在するのみである。このピークの物質 が果たして抗原性を有するか否かを確認するために,抽出液を2種類の分子分画用フィルター で処理し,それぞれの分画試料の抗原性を測定した。

 すなわち,図13に示す如く,4m2の抽出液を, Milli pore Co.,製,モルカットL−TTK−

UFP2 TTK24(分子量30,000)      Extd. soln.

      fro一 ceder pollen で濾過し,濾液をさらにモルカッ

       Hol.Cut L−TTK filter

トL−TGD UFP2 TGC24(分子

       (UFP2 TrK24)

ig10,000)で濾過した。2個のフィ

ルター上の品分をそれぞれ4 mQの     Filtrate      Residne 蒸溜水で洗浄して回収した。この       lol.Cnt L−T6D filter   F−3 fraction       (UFP2 T(;C24)  : >30.000

ようにして得られた,分子量10,0 00以下,10,000〜30,000,30,000

       Filtrate 1 1 Residne 以上の3種類の分画試料をそれぞ

      F−1 fraction F−2 tractiQn れ1.Om9ずつ血清に添加して抗体 llv・10.000> 皿・10. OOO−30.・000

価を測定した(表5)。     Fig.13. Fracti。nati。n。f the ceder p。11en extracted s。luti。n  それによると,前2者の試料の抗原性は   Table 5. The ceder p。11enosis antigen       activities of three fractionated conpon一 極めて低いことが判明した。したがって,   ents fm翼the pollen extraeted solution 先のGP Chromatogram上のピークの物質

は抗原性物質である可能性は低く,抗原性 物質はほとんどピークが見当たらない分子 量,30,000以上の領域に極微量存在すると 考えられる。

 したがって,現段階で抗原性物質の化学 構造を推定することは極めて困難である。

Sa竃Ple IgE(IU1霊1) Ref.

Hega. contml 8.39

Posi.contml 4.61

F−1 8.17 置冒:10.000>

F−2 7.58 10,000−30,000

F−3 3.83 >30.000

(11)

N.結  語

 1.スギ花粉に直接,UV照射することによって,「スギ花粉症」抗原性物質を不活性化する   ことが出来た。

 2.スギ花粉の抽出液をUV照射,60℃以上の加熱処理,およびスルポソ酸型陽イオン交換樹   脂による吸着処理によっても抗原性物質は不活性化出来る。

 3.抗原性物質はスルポソ酸変性PVA水溶液によっても不活性化されることから,㊥電荷を   有していると考えられる。

 4.抗原性物質の分子量が30,000以上であると推定される。

謝  辞

 本研究を進めるに当たり,顕微鏡写真撮影,赤外吸収スペクトル,クロマトグラフィーなど 多くのご協力をいただきました(株)クラレの各位に改めて感謝いたします。

      引 用 文 献

1.加納尭子,鈴木孝人,上林真子,大国寿士:アレルギー,42:348(1993)

2.久松健一:モダンメディシン,No.2,44,1992

3.高島征助,赤木孝夫,中路修平:良器学,62:Suppl.,110(1992)

4. Kelner,A.:J.Bacteriol.,58:511 (1967)

5.高島露助,内沼幸子,江崎久美子,山根 健,村山良介:第1回日本オゾン研究会年次研  究講演会講演集,177(1992)

6.高島征助,黒川圭一,高木俊昭,大高憲二,山根 健,村山良介=医器学,56:499

 (1986)

7.山根 健,村山良介,高島征助,中路修平,桜田 洋:人工臓器,18:1372(1989)

8.谷 叙孝:医器学,58:266(1988)

55

(12)

Study of Deactivating Methods against Ceder Pollenosis Antigen in Vitro

Seisuke TAKASHIMA

Co-opererative Research Center, Okayama University

Abstract

Study of deactivating methods against ceder pollenosis antigen in vitro: Every spring sea- son, there are numerous pollenosis patients, especially ceder pollenosis, in our country.

However, the radical theraputics against the pollenosis has not been established yet.

Some deactivating methods, ultraviolet (UV) irradiation, wet heat treatment and

adsorption method to the extracted solution of ceder pollen were examined. Deactivating ef

f-ect against the pollenosis antigen was determined by measuring the changes of the specific

antibody values (IgE antibody) in patient blood serum as the marker in vitro.

It

was

cleared that the UV irradiation, the heat treatment over 60'(: and the adsorbent containing

the acid site were effective on the deactivation against the antigen.

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