管理費を原資とするマンション管理会社名義の銀行 預金債権の帰属と信託の成立
その他のタイトル A Savings Account under the Name of the Apartment Management Contractor Opened in Order to Handle Accounting Matters such as Receipt, Safekeeping, Management and
Disbursement of Management Fees Belongs to the Association
著者 伊室 亜希子
雑誌名 關西大學法學論集
巻 54
号 5
ページ 1015‑1049
発行年 2005‑02‑28
URL http://hdl.handle.net/10112/12194
I
問 題 意 識
管理費を原資とするマンション管理会社名義の 銀行預金債権の帰属と倍託の成立
目 次
I
問 題 意 識
1 1
裁 判 例 皿 マ ン シ ョ ン 特 有 の 問 題
w
平成一五年判決の影響と信託の成立可能性
> 結 び に 代 え て
マンションの区分所有者が拠出した管理費や修繕積立金を原資として︑管理会社名義で開設された銀行預金口座は︑
管理組合に帰属するか︑それとも管理会社に帰属するか︒
この問題は︑実はこれだけにとどまるものではない︒
管理費を原資とするマンション管理会社名義の銀行預金債権の帰属と信託の成立
七 九
( 1
0 一 五
︶
伊
室
亜
希
子
( 1
)
平成一五年判決の影響と信託成立の可能性について考察する
( N )
︒
本 稿
で は
︑
マンションの管理組合と管理会社の裁判例をみたうえで て︑補足意見ではあるが︑信託契約成立の可能性が述べられた︒これは問題解決のアプローチとして預金債権の帰属 だけではなく︑信託目的の定められた金銭を預かって専用の預金口座を開設する場合に︑信託が成立し︑信託法理に よって問題が解決できる可能性があるということである︒
(4 )
すでに︑公共工事の前払金保証制度に関する事案では︑平成︱四年に最高裁判決が出され︑ここでは信託の成立が
認められている︒信託法理を使うことが以前ほど突拍子もない話ではなくなっている︒
( I I
) マンション特有の問題を検討し ︑
( I I I
) ︑
拙稿﹁他人のために金銭を保管すべき者が自己名義で預金をした場合における信託成立の可能性﹂関西大学法学論集五四
第 二
に ︑
で あ
る
︵以下では︑二つの判決をあわせて平成一五年判決という︶︒
のどちらに帰属するか
︵ 最
一 小
判 平
関 法 第 五 四 巻 五 号
(1 )
第一に︑前稿でも検討したように︑この問題を一般化するならば︑他人︵委任者︶ のために金銭を保管すべき者
︵受任者︶が︑自己名義で専用口座に預金をして分別管理している場合において︑その預金債権は︑委任者と受任者
のどちらに帰属するかという形で問題となる︒本稿で検討するマンションの管理費口座について︑現時点で最高裁判
決は出されていないけれども︑これら同様の事件で平成一五年に最高裁判決が出ている︒ひとつは︑保険代理店が保
険契約者から受領した保険料を保管するために保険料専用口座を開設した場合に︑預金債権が保険会社と保険代理店
︵最二小判平一五年二月ニ︱日民集五七巻二号一頁︶︑であり︑もうひとつは弁護士が依頼者
からの預り金を保管するために開設した預金口座の預金債権が弁護士と依頼者のどちらに帰属するか
(3 )
五年六月︱二日民集五七巻六号一頁︶
一連の問題は預金債権の帰属ということが争点になっているけれども︑弁護士の預り金口座の事件におい 八〇
( 1
0 一 六
︶
︵ワ︶第一三四三二号当事者参加事件︶
J ¥
巻 二
号 八
六 頁
︵ 二
0
0 四 ︶
( 2
)
金 法
一 六
七 七
号 五
七 頁
︒ 第
一 審
芦 礼
幌 地
裁 小
樽 支
判 平
成 一
0 年
︱ 二
月 二
日 ︵
金 商
一
成 ︱
一 年
七 月
一 五
日 ︵
金 商
︱ ︱
六 七
号 一
0 頁 ︶
(3) 金法一六八五号五九頁、金商――七六号五一頁。第一審~宮崎地判平成―一年六月二五日、原審益徊岡高裁宮崎支判平成
一 三
年 七
月 ︱
︱ 二
日
( 4
)
最 一
小 判
平 成
︱ 四
年 一
月 一
七 日
︵ 民
集 五
六 巻
一 号
二
0 頁
︑ 金
法 一
六 四
五 号
五 一
頁 ︶
第 一
審 ;
名 古
屋 地
判 平
成 ︱
二 年
二 月
八
日 ︵
金 商
一
0 八
七 号
四
0 頁
︶ 原
審 ;
名 古
屋 高
判 平
成 ︱
二 年
九 月
︱ 二
日 ︵
金 商
︱
1 0
九 号
三 二
頁 ︶
︵ 関
連 二
束 京
地 判
平 成
︱ ︱
年 ︱
一 月
二 九
日 ︵
金 商
一 〇
八 七
号 四
0 頁
︶ 束
京 高
判 平
成 ︱
二 年
一
0 月
二 五
日 ︵
金 商
︱
1 0
九 号
三 二
頁 ︶
︶
裁判例では︑銀行預金債権が管理組合と管理会社のどちらに帰属するかという点が争点となっている︒この件に関
( 5 )
する最高裁判例はない︒マンション管理費の預金債権の帰属に関する裁判例としては︑預金債権が管理組合︵法人︶
二六三二号、第二六八八号、第二六九八号、預金返還請求•各当事者参加控訴事件) に帰属するものとして︑①東京地判平成一五年一月三 0 日︵平成︱四年︵ワ︶第一四六︱四号預託金返還請求事件︶
( 6 )
(以下、①事件という)‘②東京高判平成―二年―二月一四日(平成一 0 年(ネ)第八四一号、預金返還請求•各当
(7 )
︵以下︑②事件という︶③東京高判平成︱一年八月三一日︵平成八年︵ネ︶第二六一︱
1 0
号︑第
(8 )
︵以下︑③事件という︶がある︒
それに対して︑預金債権が管理会社に帰属するものとしては︑②事件の原審である︑④東京地判平成一 0 年一月
二三日︵平成五年︵ワ︶第二
0
九二八号預金返還請求事件︑同六年︵ワ︶第四六四一号当事者参加事件︑同六年
( 9 )
︵以下︑④事件という︶︑および︑⑤東京地判平八年五月一 0 日︵平成五年
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
事者参加控訴事件︶
I I
裁 判 例
( 1
0 一 七
︶
一 六
七 号
一 六
頁 ︶
︒ 原
審 二
札 幌
高 裁
平
第 五 四 巻 五 号
︵ ワ
︶ 二
0 九二九号︵甲事件︶・同六年︵ワ︶
( 1
0
一 八 ︶
五五三 0 号(乙)•五六八五号(丙)・九四三六号(丁)・九四三八号
( 1 0 )
(戊)•-三四三七号(己)・ニ
0三九八号(庚)預金返還請求•各当事者参加控訴事件)(以下、⑤事件という)があ
①事件は︑銀行預金債権が管理組合と管理会社のどちらに帰属するかという点が争点となっていない点で本稿とは
関連が薄い︒本稿に関連するところでは︑ マンションの区分所有者が拠出した管理費や修緒積立金を原資とする銀行
( 1 1 )
預金は︑管理組合に帰属するという点のみであるので︑以下︑本文では取り上げない︒
畠件から⑤事件までは︑実は︑同じ管理会社が破産した事案であり︑預けられていた管理費の口座のある銀行が
マンション管理組合ごとに異なっていたため︑訴訟当事者である銀行が異なる別件となっていることに注意が必要で
以下︑②事件から⑤事件まで具体的に見ていくことにする︒
②事件︵東京高判平成︱二年︱二月一四日︶
︵ 事 件 の 概 要
︶
マンションの管理会社が区分所有者から徴収した管理費等を原資とする定期預金︵管理会
訴外管理会社 A は︑訴外 B 社の建築︑分譲したマンションの管理業務を行うことを主な目的として設立された B の
( A
︑ B ともに破産︶︑これらのマンションの管理業務を行っていた︒
各マンションの区分所有者は︑管理規約の定めるところに基づき︑管理会社 A と管理委託契約を締結し︑これらの 子会社であり︑平成四年に破産するまで 社
名 義
︶ の帰属をめぐる事案である︒
本 件
は ︑
あ る
︒
る ︒
関法
八
払いを求めた事案である︒ ﹁管理費収支決算書﹂を作成し︑全区分所有者に配布していた︒ 規約及び契約に従って︑
J¥
マンション毎に開設された管理会社 A 名義の y 銀行普通預金口座に保証預り金のほか毎月の
管理費︑修繕積立金等を送金︵振替︶ して支払い︑管理会社 A
は︑各口座の預金通帳及び銀行印を保管し︑そこから 管理業務に必要な費用を支払うとともに︑自己の管理報酬を引き出し︑管理費の剰余金︑修繕積立金及び保証預り金 が一定の額に達すると︑これらを順次定期預金に組み替えて貯蓄していた︒
A 管理会社は︑毎年マンションごとに
Y 銀
行 は
︑
B 社に対する債権を担保するため︑管理会社
A
の連帯保証のもとに︑本件定期預金に質権の設定を受け
て い
た ︒
Y 銀
行 は
︑
B 社が平成四年︱一月に破産宣告を受けた後︑右質権の実行により︑本件定期預金の返還請求債
権を取り立て︑約四七
0
万円の債務の弁済に充て︑管理会社 A の破産管財人 X にその旨通知した 各マンションの 0
C区分所有者は︑管理法人 x ︑ X
等 を
設 立
し た
︒
原審 1 事件は︑管理会社 A の破産管財人 X が Y
銀行に対し︑定期預金が破産財団に帰属することを主張してその返 還を求めた事案︑原審
2 ︑ 3 事件は︑各マンション管理組合法人 x ︑ X が独立当事者参加し︑定期預金が管理組合に
帰属することを主張して︑ X
に そ
の 確
認 を
︑
Y 銀行に対して預金返還請求権又は不当利得返還請求権に基づきその支
原判決︵④事件︶は︑すべての請求を棄却した︒これに対し︑破産管財人
X は控訴しなかったが︑参加人 x ︑ X が
控 訴
し た
︒ 争点は︑り本件定期預金の預金者は︑
x ︑ X の各マンション管理組合法人か︑あるいは管理会社
A か︑回預金者
が x ︑ X
である場合に︑本件質権実行に民法四七八条の類推適用があるか︑い預金者が
x ︑ X である場合に︑本件
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
( 1
0 一 九
︶
い う
べ き
で あ
る ︒
に帰属すると解するのが相当である︒ その持分に応じて共用部分の負担に任ずると規定し
︵ 判
決 ︶
関法
第 五 四 巻 五 号
質権設定に民法九四条二項の類推適用があるか︑であった︒
八 四
( 1
0 二
O )
り本件定期預金の預金者については︑預金者認定の客観説を採り︑各マンションの区分所有者団体は︑本 件定期預金について︑自らの出捐によって︑自己の預金とする意思で﹁管理者﹂たる管理会社
A を代理人として銀行
との間で預金契約をしたものであり︑
x ︑ X を本件定期預金の預金者であると判示した︒
その理由付けとしては︑管理会社 A
は︑区分所有法上の﹁管理者﹂であり︑﹁区分所有法は︑共用部分の共有者は
︵法一九条︑旧法︱四条︶︑管理規約は︑各区分所有者は共用部 分の管理費︑修繕費等を﹁管理者﹂に支払う旨規定しているが︑区分所有者が共用部分の共同管理のための団体を構 成し︑﹁管理者﹂がその団体の行う管理業務の執行者であることを前提とすれば︑各区分所有者が管理費等の支払義 務を負うのは右団体に対してであると解される︒すなわち︑﹁管理者﹂たる管理会社
A は︑区分所有者に対し︑管理
費等の支払を請求し︑これを受領︑保管する権限はあるが︑管理費等についての債権自体は右団体ひいては管理組合
そして︑管理会社 A
は︑﹁管理者﹂としての管理費等の管理の一環として︑﹁管理費等入金のための区分所有者団体 の預金口座を開設する権限を与えられていたところ︑当時︑区分所有団体は観念的には成立していても︑実際には管 理組合は結成されておらず︑管理組合等の名義で口座を開設することは困難であったことから︑区分所有者団体の預
金口座とするために︑団体の表示として管理会社 A
名義を用いて︑銀行との間で普通預金契約を締結し﹂︑管理費等
の送金を受けたものであり︑したがって︑これらの普通預金口座の預金者は各マンションの区分所有者団体であると
がないと判ホした︒
八 五
そして︑﹁普通預金の金額が一定の金額に達した場合に︑これを定期預金に組み替えることは︑預金の管理の方法 としては当然許され︑区分所有団体もこれにつき黙示の承諾を与えていたものと解すべきであり﹂︑したがって︑管
理会社 A
が本件普通預金口座において保管中の各預金を定期預金に組み替えたとしても︑その預金者が各マンション の区分所有者団体であることには何ら変更はないと解すべきである︒﹁そして︑この理は︑管理会社
A がその後右定
期預金について B 社に対する債権の担保として質権を設定した場合でも同様である︒﹂
したがって︑本件定期預金の預金者は︑各マンションの区分所有者団体であり︑団体が法人格を取得する前におい ては︑団体を構成する区分所有者全員に合有的又は総有的に帰属し︑団体が法人格を取得して管理組合法人となった 後においては︑管理組合法人に帰属しているものと認められると判示した︒
争点回については︑ Y
銀行が︑質権設定当時︑管理会社
A が区分所有者団体の﹁管理者﹂として各マンションの管
理費等を原資とする預金を管理していること及び本件定期預金がそうした預金であることを知っており︑
﹁管理者﹂の職務ではありえない B
社のための質権設定を受けるに当たっては︑本件定期預金の預金者を管理会社
A
と認定すべきか否かについて︑単なる預金の払い戻しの場合とは異なり︑より慎重に判断すべき注意義務があったに もかかわらず︑質権設定時において︑管理会社
A を預金者本人として認定するにつき金融機関として負担すべき相当
の注意義務を尽くしたと認められないとして︑質権実行に民法四七八条は類推適用されないと判示した︒
Y 銀行が
争点いについても︑ Y
銀行が質権設定時において︑管理会社
A を預金者本人と認定するにつき金融機関として負担
すべき相当の注意義務を尽くしたと認められないので︑質権設定に民法九四条二項が類推適用されるとの抗弁も理由
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
( 1
0 ニ ︱
)
入金されなかった︒
第 五 四 巻 五 号
③事件︵東京高判平成︱一年八月三一日︶
︵ 事 件 の 概 要
︶
れた B
の子会社であり︑平成四年に破産するまで
( 1 2 )
て い
︒ た
( A
︑
び各区分所有者と管理会社 A
と間の管理委託契約書において定められていた︒
( 1
0 二
ニ ︶
マンションの管理者であった管理会社 A
が区分所有者から徴収した管理費等を原資とする
管理会社 A は︑不動産業者である B
社の建築︑分譲したマンションの管理業務を行うことを主な目的として設立さ
B
ともに破産︶︑これらのマンション
Z らの管理業務を行っ
( 1 3 )
管理費等︵管理費︑修緒積立金︑保証預り金︑借地料及び給湯基本料金︶については︑各マンションの管理規約及 そして︑竣工から一定期間は︑管理会社
A が管理者になるものとし︑特に集会の決議により解任されない限りは︑
管理者の行う業務の範囲は︑建物︑その敷地及び付属施設の管理並びに環境の維持に必要な一切の業務であるが︑
その中には︑経理事務として︑管理費等の金銭処理︑収納保管が含まれている︒
管理会社 A
は︑各マンションの所在する場所の近くの金融機関に普通預金口座を開設し︑区分所有者は管理費等を この口座に振り込んで支払った︒右普通預金口座には︑他のマンションの管理費等や管理会社
A 固有の資金等は一切
管理会社 A
は︑この普通預金口座から管理に要する諸費用と管理会社
A が受領すべき管理報酬を支出し︑管理費の
残 余
金 ︵
剰 余
金 ︶
や修繕積立金等が一定金額に達したときにこれを定期預金にしていた︒本件各定期預金はこのよう
任期はそのまま更新継続するものとした︒ 定期預金の帰属をめぐる訴訟である︒
本 件
は ︑
関法
八 六
務とを相殺し︑残額を管理会社
A
に 弁
済 し
た ︒
な管理費の剰余金や修繕積立金等を原資として︑
マンションごとに別個の預金として︑開設されたものである︒
書替え後の定期預金印鑑届の﹁おなまえ﹂欄︑そして︑その定期預金を担保として
Y 銀行に差し入れた際の定期預
金担保差入証の﹁おなまえ﹂欄にも︑﹁株式会社
A 代表取締役
00
﹂との記載のほかに︑各マンション名がゴム印ま マンションに管理組合が結成され︑あるいは管理組合法人が設立されて︑管理組合又は管理組合法
人から管理費等を原資とする管理会社
A 名義の預金の名義変更を求められたときは︑これらの預金は管理組合等に帰
属する預金であるとの考えのもとに︑これに応じて︑管理組合等の理事長名義に名義を変更し︑印鑑を変更していた︒
管理委託契約を解除されたことに伴い︑管理組合に預金を返還した例もある︒
八 七
平成四年︱一月六日︑管理会社
A
の親会社であって︑当該マンションの建築︑販売を行った
B 社の自己破産の申し
立ての事実が報道され︑同日以降︑管理会社
A が管理していた三四のマンションのうち︑管理組合が結成されていた
一八のマンションの管理組合の代表者等が管理委託契約の解除を通告し︑管理費等の交付を要求した︒
管理会社
A は︑管理費等が入金されていた定期預金及び普通預金の通帳と管理会社
A
の届出印を押捺した預金払戻 票又は口座解約届けを交付したり︑あるいは右預金口座から払い戻して保管していた預金をそれぞれ交付した︒管理 会社
A
としては︑これら預金は管理組合ないし区分所有者に帰属するものであると考えていた︒
本件各定期預金は︑管理会社
A が Y 銀行に預け入れたものであるが︑ Y
銀行は︑貸金債権と本件各定期預金返還債 管理会社
A の破産管財人 X
は︑本件各定期預金は︑管理会社
A に帰属するが︑区分所有者から徴収した管理費等は
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
管理会社
A は ︑
たは手書きによって付記されていた︒
( 1
0 二
三 ︶
第 五 四 巻 五 号
( 1
0 二
四 ︶
区分所有者から受託した信託財産であるから︑
Y 銀行がした相殺は︑無効であると主張し︑
Y 銀行に対して本件各定
各マンション管理組合 Z
ら︵管理組合法人のものとそうではないものがある︶は︑この事件に独立当事者参加して︑
本件各定期預金の一部のものについて︑参加人らに帰属すると主張して︑破産管財人
X
に対してはその旨の確認を求 第一審判決は︑本件各定期預金は︑管理会社
A に帰属するから︑その返還債務は︑相殺及び弁済によって消滅した
と 判
断 し
て ︑
X および参加人らの各請求を棄却したので︑
X および参加人らが控訴したのが本件である︒
預金者の認定についての客観説に立ち︑本件各定期預金の預金者は︑各マンションの区分所有者の団体で ある管理組合であり︑区分所有者全員に総有的ないし合有的に帰属すると判示し︑第一審判決を取消したうえ︑
N の
預金者の認定については︑自らの出捐によって︑自己の預金とする意思で︑銀行に対して︑自ら又は使者・
代理人を通じて預金契約をした者が預入行為者が出捐者から交付を受けた金銭を横領し︑自己の預金とする意図で預 金したなどの特段の事情がない限り︑当該預金の預金者であると解するのが相当である︒﹂
本件各定期預金の原資である管理費等は︑もとより管理会社
A 固有の資産ではなく︑
管理規約及び管理委託契約に基づいて区分所有者から徴収し︑保管しているものであって︑管理会社
A が受領すべき
管理報酬も含まれてはいるが︑大部分は︑各マンションの保守管理︑修繕等の費用に充てられるべき金銭である︒﹂
管理費用は区分所有者が負担すべきものであって︑管理費は管理を行うべき管理組合法人に帰属する︒また︑管理
﹁ 出
者 捐
﹂ に
つ い
て ︒
﹁
2
﹁1
本訴請求を認容した︒
︵ 判
決 ︶
め ︑
Y 銀行に対してはそれぞれの支払いを求めた︒
期預金の支払いを求めた︒
関法
¥
\
J
J
領の意図があったと推認することはできない︒
そして︑本件各定期預金は︑管理会社
A が管理費の剰余金等が一定の金額に達したときに︑その独自の判断と裁量
でこれを定期預金に振り替えており︑区分所有者は︑普通預金に振り込んだ管理費等の剰余金がいつの時点で︑どの ような金融機関の定期預金に振り替えられるか等の具体的な事実は認識していない︒しかし︑剰余金が定期預金に振 り替えられるという仕組み自体は認識しており︑区分所有者は︑定期預金の預入から遅くとも一年以内の決算報告に おいて︑本件各定期預金がされていることを具体的に知ったのであり︑この時点以降︑区分所有者が本件各定期預金 の預入をする意思を有することが具体的に明確になった︒
﹁預入行為者﹂と﹁特段の事情﹂について︒本件各定期預金の預入行為者は管理会社
A
であるが︑管理会社
A が管
理費の剰余金等を横領し自己の預金とする意図で本件各定期預金をしたことを認めるに足りる証拠はない︒また︑本 件各定期預金が管理会社
A の Y
銀行に対する借入金債務の担保として差し入れられている事実は︑管理会社
A に右横
管理会社
A は︑区分所有者の使者として本件各定期預金をしたものと見るのが相当である︒
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
か っ
た ︒
組合法人が設立される以前の管理組合は︑総有的又は合有的に区分所有者全員に帰属することになる︒したがって︑
本件各定期預金の出捐者は︑それぞれのマンションの区分所有者全員である︒
﹁自己の預金とする意思﹂について︒定期預金の名義に各マンション名が付記されていること︑管理会社
A の決算
報告書︑各マンションの管理費収支決算書等の記載内容︑管理会社
A の破産の
八 九
金があること等から︑管理費の剰余金等を原資とする定期預金は︑管理会社
A
は︑自己の預金︑資産とは考えていな
( 1
0 二
五 ︶
︵直︶前に管理組合に返還した定期預
︵ 判
決 ︶
﹁
8
詳しくは②事件の紹介に譲る︒ 第五四巻五号
そして︑本件各定期預金が信託財産であるということはできないと判示した︒
破産管財人 X
は︑本件各定期預金は信託財産であると主張する︒
しかし︑区分所有者は管理会社
A との間で管理委託契約を締結し︑管理会社
A は︑管理費等の金銭の処理︑収納保
管という経理業務を受託しているが︑信託法一条にいう財産権︵管理費の剰余金等︶
がされているということはできない︒すなわち︑信託法一条において明らかにされているように︑信託契約には財産 権変動の側面︵﹁財産権の移転其の他の処分を為し﹂︶とともに委任的側面︵﹁他人をして一定の目的に従い財産の管 理又は処分を為さしむる﹂︶を含むものであるが︑前記認定のとおり管理会社
A は本件各定期預金を管理会社
A
の 財
産であるとは考えておらず︑そのように取り扱ってもいないのであるから︑区分所有者と管理会社Aとの間の契約に ついては︑この財産権移転の契機を見いだすことができないといわざるをえない︒
したがって︑破産管財人
X
の主張は採用することはできない︒﹂
④事件︵東京地判平成一
0 年
一 月
二 三
︵ 日
② 事
件 の
原 審
︶ ︶
︵ 事 件 の 概 要
︶
の移転その他の処分をする契約 普通預金債権の帰属については﹁管理会社
A は︑管理委託契約︵委任契約又は準委任契約︶
の事務処理に 要する費用の前払として本件管理費を受け取っていたものと認められる︒前払いされた費用は︑委任事務が継続して いる間は返還を求めることができず︑委任契約が終了し又は委任事務が終了して残額を生じた場合に︑その残額の返 還を請求できるもので︑本件管理委託契約は︑その性質上︑月々の管理事務を終えたからといって︑それだけでは委
関法
九 〇
( 1
0 二
六 ︶
に 解
す べ
き で
あ る
︒ ﹂
任事務が終了するものとはいえず︑支払った管理費についての清算及び残金の支払を請求することはできないという
べ き
で あ
る ︒
九
したがって︑管理費は︑管理会社
A が管理費等の支払を受けるために自社名義で開設した普通預金口座に送金され
た段階で管理会社
A に帰属するものというべきで︑その剰余金は︑管理会社
A が管理組合のために預かっていた金員
と は
い え
ず ︑
x ︑ X は︑管理会社 A
の破産に伴い右管理委託契約が終了した
A に対し︑確定した精算金の返還請求権を有するに至ったにすぎない︒
保証預り金も︑区分所有者の管理費の弁済に当てることを予定された金員というべきであるから︑右管理費と同様 これに対し︑修繕積立金︑給湯基本料については︑別異に考えられなくもないことを示唆しつつ︑しかしながら
﹁区分所有者は︑管理費︑修繕積立金︑給湯基本料の区別なく一括して管理会社
A 名義の普通預金口座に振込送金し
ているのであり︑管理費が前記のとおり管理会社
A に帰属すべき金員であること及び管理費の全体の金額に占める割
合に照らしても︑管理費部分は勿論のこと︑修繕積立金等の部分についても本件各マンションの区分所有者らが右口 座に自己の預金とする意思で送金したと認めることはできず︑かえって管理会社
A
に対する支払の意思で送金してい
るものと認められる︒
したがって︑管理会社
A が管理費等の振込を受けるために開設した普通預金の口座に管理費等が振り込まれた時点
で︑右金員に相当する部分の預金返還請求権も管理会社
A
に帰属したというべきで︑右普通預金債権が区分所有者ら に帰属することは︑管理費部分についてはもちろんのこと︑修繕積立金部分についてもありえないものと解すべきで
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
( 1
0 二
七 ︶
︵民法六五三条︶ことにより︑管理会社
第 五 四 巻 五 号
⑤事件︵東京地判平八年五月一
0 日 ︶
( 1
0 二
八 ︶
︵事件の概要は省略ぶ涵手件とほぼ同様︶各定期預金債権の帰属に関しては︑本件各定期預金は﹁各マン ションの管理委託費の一部を原資とするものであり︑管理会社
A
の右各マンションごとの会計報告内容である決算書 には本件各定期預金及びその利息が各マンションの収入に計上されていることが認められるものの﹂︑他方において︑
本件各定期預金の成立経緯と﹁管理会社
A は本件各定期預金を同会社の貸借対照表の流動資産の部に計上するなどし
て︑自社の資産として多年にわたり本件各定期預金を取り扱ってきたこと︑管理委託契約および管理規約上︑管理会
社 A
から各管理組合又は区分所有者らへの管理委託費の払い戻しは認められておらず︑ただ︑各管理組合又は区分所 有者らは管理規約及び管理委託契約に規定された内容の債務の履行を管理会社
A に求めることができるにすぎず︑管
理委託費については︑管理会社 A
が一貫して出納業務を行っており︑区分所有者ら又は管理組合は右管理委託費につ き何らの処分権限も有しないこと﹂︑そして定期預金の利息が管理会社名義の当座預金口座へ入金するようになって いたこと︑﹁管理会社
A が管理者として区分所有者らから必要経費を一括して管理委託費として同会社名義の普通預
金口座に徴収して取得した上︑その剰余金の管理方法として︑更に︑
Y 銀行との間で管理会社 A 名義で本件各定期預
金契約を締結し︑右預金証書と共に銀行届出印鑑を管理していた﹂という事実から︑﹁預金原資となる管理委託費の
管理方法いかんは管理会社 A
にゆだねられたものであり︑管理会社
A が自ら預金の出捐者として本件各定期預金契約
及び本件普通預金契約を締結したものということができるのであり︑したがって︑本件各定期預金及び本件普通預金
︵ 判
決 ︶
あ る
︒
関法
九
管理費を原資とするマンション管理会社名義の銀行預金債権の帰属と信託の成立
九
債権者は管理会社
A
であると解するのが相当というべきである︒﹂と判示した︒
(5)
後掲②事件では、最高裁は、平成―四年一月三一日に上告を受理しない旨の決定をした(この点につき、鎌野邦樹•別冊
法 時
二 五
号 三
七 頁
︶ ︒
( 6
) 請求認容︹確定︺︒金商︱︱七一号四一頁
( 7
) 原判決控訴人敗訴部分取消︑請求認容︑上告受理申立︒判時一七五五号六五頁︑金法一六ニ︱号三三頁︑金商︱
1 0
八号
一五頁、評釈こ鎌野邦樹•別冊法時二五号三四頁、中舎寛樹•金融法務一六五二号一―頁。
( 8
) 控訴棄却︑原判決一部取消︑請求認容︹確定︺︒高民五二巻三六頁︑東高民報五
0 巻
一
i
︱二号一九頁︑判時一六八四号 三九頁︑金法一五五八号二四頁︑金商一〇七五号三頁︑評釈
T 太田知行・判評四九五号一六頁︵判時一七
0 三
号 一
九 四
頁 ︶
︑ 神谷高保・ジュリニ︱
0 三号一三四頁 (9) 金融商事一
0五三号三七頁、評釈二中舎寛樹•金融法務一五五六号七頁 ( 1 0 ) 甲事件一部認容・一部棄却︑乙ー庚事件棄却︵控訴︶判時一五九六号七
0 頁︑評釈品千田健治・判評四六四号二九頁︵判 時一六 0
九号一九一頁︶︑本件は︑上記③事件︵東京高裁平成︱一年八月三一日︶の一審判決が出されたのと同じ日に判決 が出されているが︑事件番号から見ると︑③事件の原審ではない︒被告銀行が異なり︑当事者参加した管理組合も一部異な る︒しかしながら︑同じ管理会社の破産事件であり︑ほぼ同一の事案である︒
( 1 1 )
①事件︵東京地判平成一五年一月︱︱
1 0
日 ︶
︵事件の概要︶本件は︑マンション管理組合であると主張する
X が ︑
Y 銀行に対し︑自由金利定期預金の返還を求めた事
案 で
あ る
︒
Y は ︑
S X が管理組合として設立されていないこと︑
X 代表者の選任手続に瑕疵があることを主張して︑訴え の却下を求め︑また︑い本件預金名義は﹁︵マンション名︶理事長
A ﹂であり︑本件マンションの区分所有者全員を構成員 とする団体が債権者であるとして︑ X が本件預金債権者であることを争った︒
マンションの X
管理組合の理事長であった
A
は ︑ Y 銀行に管理費等の剰余金を本件マンションの修繕積立金に充当するた めに︑管理組合の口座を開設して一五
0 0 万円を預け入れた︒その後間もなくして理事長
A と管理会社との間で︑管理委託 契約に関して紛争を生じ、臨時総会で
A
は理事長を解任され、本件マンションを建築•分譲した会社が、理事長に選任され
( 1
0 二
九 ︶
関法
第 五 四 巻 五 号
︵事件の判決︶判決では︑争点 m
に つ
い て
は ︑
X は︑管理組合として設立︑運営されているものであり︑ X 代表者は適法
に選任された X
管理組合理事長であると認めることが相当であり︑したがって︑本件訴は適法というべきとした︒争点いに ついては︑本件預金名義人は︑﹁︵マンション名︶理事長
A ﹂と記載されているが︑ A が X 管理組合の理事長として X
管理組 合に帰属する預金とする趣旨で本件預金契約を締結したことは明らかである︑とし︑
X は本件預金の返還請求権を有するも
のというべきと判ホした︒
︵ コ
メ ン
ト ︶
①事件は︑マンション管理費の預金債権の帰属が問題となっているとはいっても︑銀行預金債権が管理組合と管理会社の どちらに婦属するかが問題とはなっていない︒さらに︑管理会社名義で管理費の預金口座が開設されたのではなく︑管理組
合の理事長名義で預金口座が開設されている︒
そしてこの預金は︑管理組合に帰属するものとして︑管理組合 X の預金の返還請求を認めたものである︒
ただし、原告である管理組合の理事長(管理紺合代表者)が、本件マンションを建築•分譲した会社であり、かつ、管理 会社は︑この建築会社の系列会社であるという事実からすると︑管理組合理事長イコール管理会社といえなくもない特殊性
があることに注意しなければならない︒︵原告は管理組合 x ︑代表者理事長の B
会 社
︑
B 会社代表者代表取締役となってい
︶ る ︒
( 1 2 )
この事件の管理会社 A
は︑②事件の管理会社と同一であり︑マンション管理費の方法は②事件とほぼ同様である︒但し︑
預金先の金融機関が異なっているため︑被控訴人の銀行が異なっているが︑控訴人の管理組合は重なっているところもある︒
( 1 3 )
管理費等の内訳であるが︑管理費には︑管理員人件費︑損害保険料︑エレベーター設備その他機械の定期保守費及び動力 費︑廊下灯等の電力料金及び電球の取替費︑共用部分の水道・光熱費︑管理委託報酬︑その他共用部分の維持管理に要する
一切の費用が含まれる︒
管理費は毎月管理者に支払い︑管理費の剰余金は︑管理預り金として積み立てる︒
区分所有者は︑毎月︑修繕積立金を管理者に支払い︑保証預り金を管理者に預け入れる︒
敷地の一部が借地であったマンションについては︑区分所有者は︑以上の費用の他に︑借地料を毎月管理者に支払い︑給 湯設備のあるマンションについては︑毎月︑給湯基本料金を管理者に支払うこととなっていた︒
九 四
( 1
0 三
0 )
および不測の事態に備えた修繕積立金が主なものである︒ ー
マンション特有の問題 区分所有者︵管理組合︶と管理会社との関係
九 五
建物の区分所有等に関する法律︵以下︑﹁区分所有法﹂という︶には︑﹁管理会社﹂又は﹁管理業者﹂について直接
に規定があるわけではない︒しかし︑
マンション管理組合がマンションの管理業務を管理会社に委託するということ は︑ごく一般的におこなわれているところであり︑区分所有者︵管理組合︶と管理会社との関係が問題となる︒
区分所有法三条には︑﹁区分所有者は︑全員で︑建物並びにその敷地及び付属施設の管理を行うための団体を構成 し︑︵中略︶管理者を置くことができる︒﹂と定められている︒そして︑同一九条は︑﹁各共有者は︑規約に別段の定 めがない限りその持分に応じて︑共用部分の負担に任﹂ずるとしている︒
この管理を行うための団体が管理組合であり︑その管理のための費用の実質的な負担者は各区分所有者である︒
②ー⑤事件では︑管理費︑修繕積立金︑保証預り金︑借地料及び給湯基本料金を区分所有者から徴収していたが︑
そのうち︑建物の共用部分︑敷地及び附属施設の管理を行う諸費用に充てるための管理費と周期的かつ大規模な修繕 管理者とは︑区分所有法の規定に基づいて︑建物の共用部分の管理とその他建物の維持の管理を円滑に行うために
( 1 4 )
選任され︑共用部分等の維持管理のために一定の権限を付与された︑区分所有法上の存在である︒区分所有法上の管
業 ︵
管 理
会 社
︶ 理者は︑区分所有者である必要はなく︑また自然人と法人とを問わず︑区分所有建物の管理の受託を業とする法人企
( 1 5 )
であってもよい︑とされている︒
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
I l l
( 1
0 三
一 ︶
法二六条一項︑二項︶と解される︒
第 五 四 巻 五 号
( 1
0 三
二 ︶
また︑区分所有者が管理組合を設立し︑その総会において︑または規約の定めに従って︑代表者として理事長を選 任した場合には︑当該代表者は︑区分所有法の要件︵三一条︑三九条︑二五条一項等︶を満たす限り︑﹁管理者﹂と
( 1 6 )
なり︑その名称の如何を問わない︒
そして管理者は︑管理業務の執行に当たり︑その一部を管理会社等の第三者に委託して執行することができる︒
︵もっとも︑第三者への管理業務の委託は︑本来︑共用部分等の管理に関する事項であるから︑第三者への全面委託
7 ) ( 1
または全面委託禁止を決定するには︑集会の決議︵普通決議︶によって決する必要がある︒︶
区分所有法二六条二項には︑﹁管理者は︑その職務に関し︑区分所有者を代理する︒﹂とある︒管理者は︑二六条︱
項で定められた管理者の職務に関して︑法律行為をするには︑管理者は区分所有者の代理人としてこれをなし︑当該 法律行為の効果は︑区分所有者の全員に帰属する︒これは︑管理のための団体︵三条︶に法律効果が帰属するのでは
( 1 8 )
ないことを示したものとされる︒
②ー⑤事件については︑
から一定期間は︑管理会社が管理者になるものとする︒任期満了に際して特に集会の決議によって解任されない場合 は︑任期はそのまま更新継続する︒﹂ものとされており︑③事件判決にあるように︑管理会社は︑管理委託契約に基 づく受託者であると同時に︑区分所有法第四節に定める管理者であり︑区分所有者を代理する立場にある あるいは︑前述のように︑理事長が管理者となり︑管理業務の全部または一部を管理会社に委託するということも
ある︒その場合の管理会社は︑管理委託契約に基づく受託者であるにとどまるといえる︒
関法
マンションの管理規約及び各区分所有者と管理会社との管理委託契約書において︑﹁竣工
九 六
︵ 区
分 所
有
九 七
さらに︑管理組合法人の成立後は︑管理者に代わり︑管理組合法人が︑その事務に関し︑区分所有者を代理して︑
この権利を行使する︒従来からこのように考えられていたが︑二
0
0 二年改正により区分所有法四七条六項前段で明
文化されたものである︒四九条では︑管理組合法人には理事を置かなければならず︵一項︶︑理事は管理組合法人を 代表する︵二項︶と規定する︒理事になりうる資格として︑自然人に限られ︑法人は理事になることができないとさ
( 1 9 )
︵ 民
法 五
二 条
一 項
参 照
︶ ︒
したがって︑管理組合法人である場合は︑管理会社は︑区分所有法上の﹁管理者﹂ではなく︑管理委託契約に基づ 区分所有者に対する管理費用の支払債権の帰属については︑管理組合が法人格を有しているときは︑管理組合法人
が各区分所有者に対して有する債権となる︒管理組合が法人格を有していないときは︑管理組合が権利能力なき社団 にあたる場合には︑区分所有者全員に総有的に帰属し︑権利能力なき社団でもない団体にあたる場合には︑区分所有 したがって︑区分所有者から徴収した管理のための費用は︑管理組合法人の場合は︑管理組合法人に︑管理組合が
法人格を有していない場合には︑区分所有者全員に総有的または合有的に帰属するといえる︒
そして︑管理会社が︑区分所有法上の﹁管理者﹂である場合︑②事件判決にあるように︑﹁区分所有者の管理費等 の支払債務に対応する債権の帰属は管理会社ではなく区分所有者団体であり︑管理会社は︑区分所有者団体の行う管 理業務の執行者たる﹁管理者﹂として︑区分所有者から送金されてきた管理費等についてこれを管理する権限を与え られており︑その管理の一環として︑管理費等入金のための区分所有者団体の預金口座を開設する権限を与えられて
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
者に合有的に帰属する︒ く受託者であるにとどまることになろう︒ れる
( 1
0 三
三 ︶
そして︑さらに︑この徹底を図るべく︑﹁中高層分譲共同住宅標準管理委託契約書等の運用について﹂︵平成︱一年 六月一日建設省経動発第三九号・建設省建設経済局不動産業課長通達︶において︑﹁﹁標準管理委託契約書別表第一・
業務実施要領中﹁ニ 管理費等のうち修繕積立金については
00
銀行 00
支店に
00
マンション管理組合理事長名義
ついてさらに徹底すること︒﹂とした︒ 2 マンション管理の適正化を図る立法︑通達等
第 五 四 巻 五 号
( 1
0 三
四 ︶
いた﹂︒﹁﹁管理者﹂たる管理会社は︑区分所有者に対し︑管理費等の支払いを請求し︑これを受領︑保管する権限は あるが︑管理費等についての債権自体は︑区分所有者団体に帰属﹂すると解するのが妥当であろう︒
管理会社が区分所有法上の﹁管理者﹂でない場合は︑管理委託契約に基づく受託者として︑その権限内容は管理委 託契約の定めるところによる︒④事件では︑管理委託契約を委任契約又は準委任契約と性質づけている︒
旧建設省︵現在の国土交通省︶は︑昭和五七年に旧建設省住宅宅地審議会の答申において﹁中高層共同住宅標準管 理規約﹂を公表した︒さらに︑旧建設省は︑
同じく昭和五七年に﹁中高層分譲共同住宅標準管理委託契約書﹂︵﹁標準管理委託契約書﹂︶を公表した︒
﹁中高層分譲共同住宅︵マンション︶に係る管理の適正化及び取引の公正の確保について﹂︵平成四年︱二月二五 日建設省経動発第一〇六号・建設省住管発第五号建設省建設経済局長・建設省住宅局長通達︶では︑記第二の一︱‑﹁管 理業者は︑管理委託契約の本旨に従い︑受託した管理業務を適切に実施すること︒特に︑管理費︑修繕積立金等の保 管については︑その預金口座を管理業者名義にすることがないようにするとともに︑収支状況の定期の報告の励行に
関法
マンションの管理組合が管理業務を管理会社に委託する際の指針として︑
九 八
マンション管理適正化法では︑ そ
し て
︑
と ︒ ﹂ ︵
又 は
00
マンション管理組合管理代行
00
管 理
会 社
名 義
︶
九 九
の口座を設けて︑保管すること︒﹂の記述については︑本
来修繕積立金の口座名義は管理組合理事長名義であるべきものであるが︑ マンションの分譲直後など管理組合理事長
が選任されていない場合に限って一時的に﹁
00
マンション管理組合管理代行
00
管理会社名義﹂とすることを想定
しているものであり︑その後管理組合理事長が選任されたときはすみやかに当該理事長名義とするべきものであるこ また︑別紙﹁平成︱一年二月四日衆議院予算委員会における法務省民事局長答弁の概要﹂において︑﹁一般論とし
て︑修繕積立金が﹁
OO
管理組合代行
00
管理会社名義﹂で預金されている場合には︑預金名義のほかに︑預金通帳 及び届出印鑑の管理状況︑管理組合と管理代行会社との管理委託契約の内容等が考慮され︑場合によっては管理代行 会社の預金であると裁判所が判断する可能性がある︒この場合に管理代行会社が破産したときは︑その預金は管理代 行会社の破産財団の構成する財産に帰属することになると考えられる︒﹂として︑管理費等の保管口座の口座名義を
( 2 0 )
管理組合理事長名義にすることを指導している︒
一連の②ー⑤事件を契機として︑平成二二年八月に︑﹁マンションの管理の適正化の推進に関する法律﹂
︵ 平
成 ︱
二 年
法 律
第 一
四 九
号 ︶
︵以下︑﹁マンション管理適正化法﹂という︶が施行された︒
マンション管理業の適正化のための措置として︑ マンション管理業登録制やマン
ション管理業者の業務について各種の規制がなされ︑同法七六条は﹁マンション管理業者は︑管理組合から委託を受 けて管理する修繕積立金その他国土交通省令で定める財産については︑整然と管理する方法として国土交通省国土交 通省令で定める方法により︑自己の固有財産及び他の管理組合の財産と分別して管理しなければならない︒﹂として︑
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
( 1
0 三
五 ︶
第 五 四 巻 五 号
財産の分別管理義務を規定している︒そして同施行規則八七条二項において︑財産の分別管理方法について定めてい
従来から︑管理会社が管理費等の出納業務を受託する場合の代表的な方法としては︑管理費等の収納は専ら管理会
社名義の口座を用いて行う収納代行方式と︑収納は管理組合名義の口座で行うがその通帳と印鑑を管理会社が同時に
( 2 1 )
管理する支払一任代行方式があった︒
し か
し ︑
等 金
銭 を
︑
マンション管理適正化法では︑原則方式としては︑修繕積立金等が金銭の場合にあっては︑﹁修繕積立金
マンション管理業者が受託契約を締結した管理組合又はその管理者等を名義人とする口座において預貯金
として管理する方法とし﹂︵施行規則八七条二項︶︑﹁当該修繕積立金等金銭を管理するための管理組合等を名義人と
する預貯金通帳と当該預貯金通帳に係る管理組合等の印鑑を同時に管理してはならない︒﹂︵施行規則八七条四項︶と
( 2 2 )
している︒そして︑収納代行方式と支払一任方式は︑例外方式として︑法律上正式に定義された︒
そして︑例外方式である収納代行方式や支払一任代行方式により︑管理業者が区分所有者の管理費等を収納した場
合にも︑管理費等を収納してから一ヵ月以内に修繕積立金等はすべて別口座に移しかえられること︑その別口座は︑
管理組合等の名義であって︑管理業者等の名義を使用することはできず︑さらに︑通帳と印鑑の双方を管理業者が管
理することはないこと︑この例外方式の場合には︑
と な
っ て
い ︵
砂 °
マンション管理業者は︑保証契約を締結しておく必要があること
また︑昭和五八年︑平成九年に中高層共同住宅標準規約が改正されてから︑マンションを取り巻く情勢も変化して
おり︑平成一六年一月に︑中高層共同住宅標準規約が改正され︑﹁マンション標準管理規約﹂となり︑それに伴い︑ る︵原則方式︑収納代行方式︑支払一任代行方式︶︒
関法
1 0
0
( 1
0 三
六 ︶
標準管理委託契約書も改定され︑﹁マンション標準管理委託契約書﹂となった︒
このマンション標準委託契約書では︑
1 0
マンション管理適正化法との整合性を踏まえた改訂として︑管理組合財産保
護のため、出納業務に係る財産の分別管理(通帳•印鑑の管理、収納方式等)について詳細に規定し、管理業務の範
囲・内容の明確化を踏まえた改訂として︑委託した管理業務と委託費の関係が明確になるように委託費の内訳を明記
以上のマンション管理適正化法︑ マンション標準管理委託契約書等に従った運用が今後きちんとなされれば︑管理
業者の財産と分別管理をすることと︑どの収納方式をとっても最終的に︑管理組合名義の口座に管理費等が移しかえ
られること︑例外方式における保証契約の締結等の措置によって︑管理費をめぐるトラブルの改善が期待される︒
平成一三年にマンション管理適正化法が施行されてからマンション管理はどう変わったか︒これについて国土交通
( 2 4 )
省が平成一五年に実施したマンション総合調査によると︑管理組合の修繕積立金と管理費の預金口座名義については︑
管理費・修繕積立金ともに﹁管理紺合理事長﹂がそれぞれ九五・一%︑九六・九%と最も多い︒前回の平成︱一年調査
時は︑それぞれ七九・一%︑七一・一%であり︑大きく増加している︒
修繕積立金及び管理費の預金通帳や印鑑の管理状況については、「通帳は管理業者•印鑑は組合で保管」が管理費
について五八•五%、修繕積立金について六四・七%で最も多く、また、「通帳印鑑とも管理業者保管」は管理費につ
いて一三・一%︑修繕積立金について四・ニ%となり︑前回調査時のそれぞれ四一・三%︑三 0 ・ニ%と比べて大きく減
管 理
費 を
原 資
と す
る マ
ン シ
ョ ン
管 理
会 社
名 義
の 銀
行 預
金 債
権 の
帰 属
と 信
託 の
成 立
3
現 状
することとされている︒
( 1
0 三
七 ︶
第五四巻五号
管理費及び修繕積立金の預入機関は︑都市銀行が七五
・ O
% で
最 も
多 い
︒
( 1
0 三
八 ︶
マンションの管理業務をどのような方法で実施しているかについては︑管理業務の全部を管理会社に委託し
託﹂が四ニ・九%︑﹁一部委託﹂が三三・八%であるのに対して︑﹁民間﹂ではそれぞれ︑七三・九%︑
ており︑特に﹁民間﹂の﹁全部委託﹂
一部委託は一七・一%であった︒分譲主体別では︑﹁公共﹂では︑﹁全部委 の割合が高いとされる︒
•一%と最も多く、前回調査(八九・五%)
と ほ
ぼ 同
様 で
あ る
︒
︱ 四
・ 四
% と
な っ
そして︑管理業務の全部または一部を管理会社に委託している場合について︑分譲時のマンション管理業者が八七
管理組合が管理業者と締結している管理契約書が標準委託契約書に準拠しているかについては︑﹁概ね準拠してい
一五九頁︵新日本法規︑二 0 0
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