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通信デバイス工 学

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(1)

通信デバイス工 学

山田 博仁

2012

6/12, 6/19, 7,3, 7/10, 7/17

講義分

(2)

講義につい て

1.

講義予定

  

6/12

第9回 半導体光デバイスの基礎

  

6/19

第10回 半古典論による物質と電磁場との相互作用   

6/26

休講

  

7/3

第11回 電磁場の量子化と全量子論

  

7/10

第12回 半導体中での光学遷移、フォトダイオード、半導体レーザー

  

7/17

第13回 光増幅器、光変調器、光スイッチ、波長フィルターと光合分波器

2.

参考書

  米津 宏雄 著、光通信素子工学

-

発光・受光素子

-

、工学図書   霜田 光一 編著、量子エレクトロニクス、裳華房

  山田 実著、電子・情報工学講座

15

光通信工学、培風館   伊藤弘昌 編著、フォトニクス基礎、朝倉書店 第

5

3.

質問等 

E-mail: [email protected]

、電気系

2

号館

203

号室

4.

講義資料のダウンロード 

URL: http://www5a.biglobe.ne.jp/~babe

(3)

http://www.jpix.ad.jp/en/technical/traffic.html

ネットワークを飛び交うデータ量の爆発的 増加

国内のある基幹ネットワークノード (1 台 ) が処理しているデータ量の推移

2

/2

3

最近では約 2 ~ 3 年で倍増傾向

データ量

(G bi t/ s)

/

/

2

/

(4)

国内のインターネット トラフィック総量は、 2008 年末に 1Tbps を突破

国内のネットワーク トラフィック の推移

現在もなお、年率 40% で増加

(5)

海底光ケーブル 網

出展 

http://www1.alcatel-lucent.com/submarine/refs/index.htm

(6)

ネットワーク機器の電力消費の予

国内のインターネット トラフィックは年率 測 40% で増加 ネットワーク機器の消費電力もそれに伴い増加すると仮定す ると、 2020 年頃には、 2007 年の年間総発電量を超える見通 し

http://www.aist-victories.org/jp/about/outline.html

(7)

適用分野が広がりつつある光通 信

サーバーの

Backplane

(

オレンジ色のケーブルは光ファイバー

)

光通信は今や、サーバーの筺体間データ通信から、パソコンにも

SONY VAIO Z

に搭載されたユニバー サルバス インターフェース

(Light

Peak)

(8)

光通信に用いられる各種光デバイ ス

1.

受動光素子

(passive optical device, passive photonic device)

2.

能動光素子

(active optical device, active photonic device) -

発光ダイオード

(LED: light-emitting diode)

-

半導体レーザー

(semiconductor laser, LD: laser diode) -

光増幅器

(optical amplifier)

-

光導波路、光ファイバー

(optical waveguide, optical fiber) -

光分岐器

(optical splitter)

-

光方向性結合器

(optical directional coupler) -

光波長フィルター

(optical wavelength filter)

-

光波長合分波器

(wavelength multiplexer/demultiplexer) -

偏光子

(light polarizer)

-

光波長板

(wave plate)

-

分散制御素子

(dispersion control device) -

光減衰器

(optical attenuator)

-

光アイソレーター

(optical isolator) -

光サーキュレーター

(optical circulator)

-

光スイッチ

(optical switch, photonic switch)

-

受光素子、光検出器、フォトダイオード

(PD: photo detector, photo diode)

光通信に用いられる各種光素子

(

光デバイス

)

講義でカバーするデバイス

(9)

21 世紀の文化と生活を支える各種光デバ イス

- CCD

イメージセンサー

(charge-coupled device image sensor) - CMOS

イメージセンサー

(CMOS image sensor)

-

太陽電池

(solar cell, photovoltaic cell) -

光電子増倍管

(photo-multiplier)

-

撮像管

(image pick-up tube)

- CRT

、ブラウン管

(CRT: cathode-ray tube, Braun tube) -

液晶ディスプレー

(liquid crystal display)

-

プラズマディスプレー

(plasma display) -

有機

EL(organic light emitting display)

-

各種光記録媒体

(CD, DVD, BLD,

ホログラム、フィルム、バーコード

) -

医療用、加工用などの各種レーザー

(

気体、固体、液体レーザー

)

-

非線形光学素子

(non-linear optical device)

光通信以外の用途にも用いられる各種光素子

(

光デバイス

)

これらのデバイスを総称して、「フォトニック デバイス」と呼んでいる フォトニクス分野は、日本が未だに強い技術競争力、産業競争

力を維持している数少ない分野

21

世紀の「産業の米」となるかも

?

(10)

半導体光デバイスの基礎

光デバイスに用いる半導体に求められる性質

主な半導体材料の光吸収係数

0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6

波長

: λ (μm)

: α ( cm

-1

)

T = 300K 10

5

10

4

10

3

10

2

Si

InP GaAs

Ge In

0.53

Ga

0.47

As

受動素子

(

非発光素子

)

・ 動作波長帯で透明であること

能動素子

(

発光素子

)

・ 動作波長帯で適度に光を吸収する、

 つまり光との相互作用が可能なこと

pn

接合が得られる

(

電流注入素 子が 実現可能な

)

こと

・ 非線形光学効果が小さいこと

(

非線形光学素子は別である

)

・ 材料分散もなるべく小さい方がよい

・ 発光素子の場合は、発光遷移確率 が 高いこと

(

直接遷移型半導体

)

・ 複屈折もなるべく無い方がよい

(

偏波無依存

)

(11)

半導体のバンド構 造

半導体とバンド構造

結晶中の電子の波動関数

(

電子状態

)

は、ブロッホの定理によると、

波数と呼ばれる量子数によって規定される。このことが、エネルギー と波数との関係

(

分散関係

)

が原理的に示せることを保障している。

バンド理論においては、このエネルギーと波数の関係を、エネルギー バンド

(

バンド構造

)

と呼ぶ。

Si

内の電子エネルギーの分散関係

バルク

Si

では、ホール

(

正孔

)

Γ

点 付近に分布しているのに対して、電子 は

X

点付近に分布するので、間接遷移 バンドギャップは約型半導体

1.1eV

(12)

半導体のバンド構 造

化合物半導体のバンド構造

GaAs

の電子エネルギーの分散関係

InP

の電子エネルギーの分散関係

GaAs

InP

も、電子、ホール共に

Γ

点付近に分布

(13)

半導体のバンド構 造

Ge

のバンド構造

Ge

の電子エネルギー分散関係

Ⅳ 族半導体である

Ge

も間接遷移型である が、歪を加えると、直接遷移

like

になる

近年、

Ge

による半導体レーザーが実現された

(14)

半導体光デバイスの基 礎

材料分散

セルマイヤー

(W. Sellmeier)

の式

分散とは ‥‥ 物質を電磁気学的に特徴付けている誘電率、透磁率、屈折率など が、それと相互作用する電磁波の周波数

(

波長

)

に依存すること

) ( ), ( ),

(    

n

構造関係式は、

D   (  ) E , B   (  ) H

共鳴周波数付近では、誘電率

(

屈折率

)

も大

きく変化する。一般的に、線形応答における 周波数応答関数の実部と虚部の間には、クラ マース・クローニッヒ

(Kramers-Kronig)

の関 係が成り立つ。

媒質中の光の分散について,波長と屈折率 との間の関係を現象論的に導いた式

2 22

2

1

i

A

i

n  

ここで

λ

i

= c/ν

i であり、

c

は真空中の 光速、

ν

i は媒質の共鳴振動数で、

A

i

定数である

Si

の誘電関数

(

電子系

の第一原理計算

(15)

半導体光デバイスの基 礎

複屈折

複屈折とは‥‥異方性媒質においては誘電率、屈折率や透磁率がテンソルとなる

 

 

 

 

 

 

 

z y x

zz zy

zx

yz yy

yx

xz xy

xx

z y x

E E E D

D D

(

構造関係式

)

結晶などは光学異方性媒質

方解石の複屈折 複屈折結晶において、光を入射しても光が分かれな

(

即ち複屈折が生じない

)

方向を光学軸

(optic axis)

という。

(

通常の結晶の

c

軸に相当

)

光線が結晶に入射すると、図のよ うに

2

つの光線

(

常光と異常光

)

に 分離する場合がある。このうち、

電場の振動面に光学軸がある

と、

Snell

の法則に従わない異常光

となる。

光学軸

(c

)

 

入射光線

常光 異常光 出射光線

(16)

半導体光デバイスの基 礎

非線形光学効果

非線形光学効果とは ‥‥ 物質の誘電率、透磁率、屈折率などが、電場や磁場の 強さに依存する現象

) ( ), ( ),

( EH n E

構造関係式は、

D   ( E ) E , B   ( H ) H

全ての物質は、多かれ少なかれ非線形性を有している。特に光

(

電場

)

が強い 場合に非線形性が現れる。波長変換デバイスなどでは、非線形光学効果を用い 入射光が弱い場合、光の電場 る。

E

に 比例した分極

P (

線形分極

: linear

polarization)

が誘起される。

E P  

0

 )

, ( )

, (

) , ( )

, ( )

, ( ) 1

(

) , ( )

, ( )

, (

0

0 0

0

0

t t

t t

t

t t

t

e e

r

x P x

E

x E x

E x

E

x E x

E x

D

線形分極

入射光が非常に強くなると、電気感受率が電場に依存するようになる。

E P  

0

 ( E )

:

電気感受率

       

E EE EEE

E )

0 (1) (2) (3) (4)

(     

(17)

半導体光デバイスの基 礎

直接遷移型および間接遷移型半導体におけ る電子遷移

間接遷移型半導体では、光の放出また は吸収にフォノン

(

格子振動

)

が介在

(18)

物質の発光現象

物質における光の吸収と放出

(

発光

)

全ての光の源は原子と思ってよい

太陽からの光‥‥太陽の中での水素原子の核融合 蛍の発光‥‥有機物の化学反応による

物が燃える時の発光‥‥有機物の化学反応による

LED

などの発光‥‥半導体結晶の中での電子遷移

物質の発光現象を扱うには、物質と光

(

電磁波

)

との相互作用メカニズムに ついて学ばなければならない。

量子電子工学

(Quantum electronics)

という学問分野

基底準位 励起準位 励起状態

基底状態 原子核

ΔE = hν

ΔE ν

しかし何故、物質から光が放出されるのだろうか

?

(19)

物質の発光現象

+e

電子

-e

陽子

ラザフォードの水素原子の模型

m r v ω

ラザフォードが提唱した原子は、古典電磁気学に依

ると不安定であり、電磁波

(

)

を放出しながら

10

-

11 秒程度の短い時間で潰れてしまうことが予測され る。

(

私の電磁気学Ⅱの最終回の講義資料を参照

)

この矛盾を解消するために、量子力学が誕生

+e

陽子

-e

ボーアの水素原子の模型

ボーアが提唱した原子の模型は、電子は原子核の 周りを物質波という形で定在波を形作って回転い る。そしてその波が丁度「量子条件」によって規 定される離散的な状態しか許されないため、安定 に存在するというもの。また電子が、ある定常状 態から別の定常状態へ移行

(

遷移

)

するときに、放 射(吸収)される光の振動数は、振動数条件

(ΔE = hν)

を満たすというもの。

では何故、電子が状態間を遷移する時 に光が放出

(

吸収

)

されるのだろうか

?

(20)

光の吸収および発光現象を扱う理 論

自然放出までを説明できるよう、つまり物質と電磁場との相互作用を厳密 に扱うには、電磁場をも量子化した全量子論モデルで扱う必要がある。

古典論 半古典論 全量子論

電磁場 物質

量子論

古典論 古典論 古典論 量子論 量子論 解析モデル

説明可 光の吸収

説明可 説明可

誘導放出 説明不可

自然放出 説明不可 説明可

説明可 説明可 説明不可 物質と電磁場との相互作用を扱うには、以下の

3

方法が考えられる。

1.

物質、電磁波共に古典論で扱う方法

つまり、半導体のバンド構造などは考えず、電磁場は波動として扱う方 法。このモデルでは光の吸収は現象論的に扱えるが、発光現象は説明で

2.

物質は量子論で扱い、電磁波は古典論で扱う方法きない。

つまり、半導体中の電子は量子化され、エネルギーバンド構造を為す。

一方電磁場は波動として古典論で扱う方法。このモデルでは光の吸収、

誘導放出

(

レーザーなどの原理

)

は扱えるが、自然放出は説明できない

3.

。物質、電磁波共に量子論で扱う方法

(21)

電磁場の記述

電磁場と物質との相互作用を理解するためにはまず、電磁場の記述の仕方や基 本的性質を理解しておく必要がある。

Maxwell

方程式は、

0 ) , (

) , (

) , ( 1

) , ) (

, (

) , ) (

, (

2

 

 

 

 

 

t t

t t v

t t t

t t t

e

e e

x B

x E

x i i E

x x E

B

x x B

E



と書き表わせる。

また、電場

E

と磁場

B

は、電磁ポテンシャル

A(x, t), ϕ(x, t)

によって以下 のように表わせる。

A A B

E     

 

  ,

t

従って、上に示した一連の

Maxwell

方程式は、場の量としての電場

E

と磁 場

B

を用いる代わりに、

A

ϕ

による式に置き換えることができる。

(22)

電磁場の記述

t t t

t t

t

t

L

L

 

 ( , )

) , ( )

, ( ),

, ( grad )

, ( )

,

( x

x x

x x

A x

A    

さらに電磁ポテンシャルには任意関数

χ

だけの不定性があるので、任意のス カラー関数

χ(x, t)

を用いて、

) 0 , ) (

, (

div 

 

t

t

L

t

L

x x

A  

電磁ポテンシャル

A

L

ϕ

L を、 の関係を満たすように

χ(x, t)

を選んだ場合を、ローレンス・ゲージと呼ぶ。この場合には場の方程

式は、以下に示す

A

L

ϕ

L それぞれに対する簡単な波動方程式に帰着する

) , 1 (

) , ( ),

, ( )

,

(

2

2 2

2

t t t

t

t A

L

x t i

e

x

L

x

e

x

 



    

 

 

 

 

 

或いは、ダランベール演算子

(d‘Alembertian)□

を用いて

と置き換えた電磁ポテンシャル

A

L

ϕ

L を用いても場の方程式の性質は変わ らない。このような関数

χ(x, t)

をゲージ関数と呼び、上のような新たな電磁 ポテンシャル

A

L

ϕ

L を選ぶことをゲージ変換と呼ぶ。

ローレンス・ゲージは、ローレンツ変換に対して不変であるため、相対論で用いられる。

) , 1 (

) , ( ),

, ( )

,

( t

e

t

L

t

e

t

L

x i x x x

A

 

  

 □

(23)

電磁場の記述

A B

E A

 

t

従って、電場

E

と磁場

B

は、ベクトルポテンシャル

A

から、

の関係により、導出できる。

の条件式を満たすゲージをクーロン・ゲージ

0 (Coulomb gauge)

と呼ぶ。

A

i A   



 

 

 

 

 

 

t t

2

2

ローレンス・ゲージ以外にも、ベクトルポテンシャルを発散のないように選び、

この場合、場の方程式は以下のようになる。

電荷

ρ

e も電流

i

e も存在しない自由空間では場の方程式は

0

,

0

2

2

  

 

 

A

 t

であり、

この場合、電磁場はベクトルポテンシャル

A

のみによって記述できる。つまり、スカラーポ テンシャルについては扱う必要はない。

(24)

荷電粒子と電磁場との相互作 用

電磁場内に

1

個の荷電粒子

(

電子

)

が存在するときの粒子系のハミルトニアンは、

e m e

H  (  )

2

 2

1 p A

で与えられる。

(

導出は各自試みられよ

)

ここで

p

は、粒子の運動量演算子、

m

は粒子の質量、

ϕ

はスカラーポテ ンシャル、

e

は電子の素電荷、そして

A

はベクトルポテンシャルである。

このうち、電磁場が無い中に荷電粒子のみが存在する成分

H

0 を、主ハミ ルトニアンまたは無摂動ハミルトニアンと言い、荷電粒子と電磁場の双方 の寄与からなる成分

H

int を相互作用ハミルトニアン

(Interaction

Hamiltonian)

と言う。即ち、

2 2 int

2 0

int 0

2

) 2 2 (

2 1

) 2 (

1

A p

A A p p

A p

m e m

H e

m e H

H H

e m e

H

となる。

H

int の最後の項は、

A

2 に比例することから高次の過程

(

非線形光学過程

)

で あり、その確率は最初の項よりも通常は小さいので、ここでは無視すること にする。

(25)

相互作用の電気双極子近似

荷電粒子は、電磁場の正弦波的変動のための周期的な位置変動をするものと仮定

t i t

i

e

e

r

0

r

0*

r

そして、粒子の運動をニュートン力学的に求めると、

) ( i

0

e

i t

i

0*

e

i t

m

m  

 

r r r

p

と書かれる。さらにベクトルポテンシャルを

t i t

i

e

e

A

0

A

0*

A

と置くと、電場は、

t i t

i

i e

e t i

 

 

 

A A

0

A

0*

E

と書かれる。従って、

E R

E r

A r A

r p

A A p

e

i i

m m e m

H e ( ) ( )

2

0

* 0

* 0 0

int

 

と書ける。ただし、

R = er

で、電気双極子能率

(electric dipole moment)

と呼ばれている。

E

+e

−e

e

−iωt

e

+iωt

r

電気双極子

e

i2ωt

e

−i2ωt の項は

、時間積分すると消 える

原子の分極

E

電子雲

の偏り

r

(26)

相互作用の電気双極子近似

) 2 (

int

  pAAp

m H e

相互作用ハミルトニアン

には、電場による影響

(

クーロン力

)

と磁場による影響

(

ローレンツ力

)

の両方 が含まれているはずであるが、上で導いた荷電粒子との相互作用の式では、電 場による影響

RE

しか含まれていない。これは、荷電粒子の運動の形態を、

のように、ある限られた場所での振動と仮定したためである。もし荷電粒子に 平行運動のような運動形態を仮定したならば、磁場による影響も含まれてくる はずである。

t i t

i

e

e

r

0

r

0*

r

このように相互作用を、電場のみに影響すると仮定して

RE

のように近似す ることを、電気双極子近似という。近似による変位の部分を電場で展開する と、電気四重極子や電気八重極子のような多重極の分極が現れることもある

工学で扱う物理現象は非常に複雑なものが多い。従って、全ての物理現象を 取り入れた完璧な理論を構築することは不可能である。

良きエンジニアとは、それら複雑な物理現象の中で、何か本質的に重要かを 見極め、近似をうまく使い、無視できる物理現象は思い切って無視し、シン プルな理論を構築できる人である。ただし、どんな近似を使ったのかは決し て忘れてはいけない。

(27)

半導体中での電気双極子

半導体中では、電子とホールが分極

(

電気双極子

)

を作る

+

ホール

電子

−e

電気双極子

+e

半導体中における電気双極子

伝導帯

値電子帯 ホール

電子

電気双極子

E

(28)

量子統計と密度行 列

電流値など、多くの粒子

(

電子

)

が関与する物理量は、多くの粒子による統 計的な平均値となる。また単一事象において、複数回観測

(

測定

)

を行った 場合の期待値なども統計的な扱いが必要となる。そのような多数の粒子或い は多数回の測定についての統計的性質について扱う。まず、

ν

番目の粒子 または

ν

回目の測定における状態を、

n

n

n

C

( )

)

( 

と書くこととする。

ここで  は、一つの粒子のみが存在する場合のエネルギー固有状態である。

完備性が仮定されているので、  の

1

次結合によって任意の    をつ くれるはずであり、  には添え字 (ν) はいらない。

n

n

()

n

m n

m

n

C n A m

C A

,

) ( )*

( )

( )

(

  

ある物理量に対する演算子を

A

とすると、

ν

番目の粒子における期待値は、

となる。

次に、粒子の集団全体における期待値の平均

(ensemble average)

を求め る。 ν 番目の粒子が寄与する割合

(

粒子の抽出確率

)

P

(ν) とおき、規 格化しておく。

)

1

P

(

(29)

量子統計と密度行 列

期待値の統計平均は、

m n

m

n

C n A m

C P A

P A

, ,

) ( )*

( ) ( )

( )

( ) (

 

と書ける。

ここで、以下のような書き換えを行う。

m n m

n mn

nm

n A m P C C C C

A A

A  ,  ,  

( ) ( )* ( )

*

ρ

mn を要素にもつ行列

ρ

を密度行列

(density matrix)

と呼ぶ。

 

 

 

 

22 21

12 11

密度行列を用いると、

 

 

 

 

 

m

m n

m n m

n

nm mn

m A m m

A n n m

m A n n m A

A

, ,

と書き改められる。

n

n n

I

は恒等演算子

(identity operator)

m

m A

m

は行列

ρA

の対角要素を全て足し合わせたもの、即ち

Trace

であり、

) ( Tr A m

A m A

m

 

 

と表わすことができる。また、       である。

Tr (  )  1

(30)

密度行列の運動方程式

密度行列

ρ

の性質が分かれば、集団内の個々の粒子についての状態

や抽出確率

P

(ν) を知らなくても、統計性を含めた期待値

を知ることがで きる。そこで、密度行列

ρ

を表現する方程式、つまり

ρ

が従うべき方程式 を求めてみる。

) (

A

n P

m n

P m

m n P

C C

P

n m

mn

 

 

 

) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) (

) ( )

( ) ( )

( )*

( ) (

従って密度行列は、       と書くことができる。

まず、密度行列の行列要素の定義式を、以下のように書き直す。

( )

P

( ) ( ) この式の両辺を時間

t

で微分すると、

 

 



 

 

 

dt P d

dt P d dt

d

( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

となる。

ただし、抽出確率

P

(ν) の時間依存性はないとしている。

(31)

密度行列の運動方程式

 

 

1 , 1

) ( ) ( ) ( )

( ) ( ) (

i H H

i H

i P H

i P H dt

d

 

 

 

 

) ( )

(

H

dt

id

シュレーディンガー方程式      および、そのエルミート共役

dt H

i d

()

 

()

 

より、

となる。

これは、密度行列の時間発展を表す式であり、密度行列の運動方程式或い は、量子リウヴィル

(Liouville)

方程式もしくはリウヴィル

-

フォン・ノイ マン方程式とも呼ばれる。

(32)

双極子との相互作用がある場合の密度行 列

電子系の主ハミルトニアンを

H

0 とし、電気双極子能率を

R

とする。前に述 べたように、電場が存在するときの相互作用ハミルトニアン

H

int は、−

RE

と なり、電子系全体のハミルトニアン

H

は、

RE H

H H

H

0

int

0

となる。

これを、密度行列の運動方程式に代入すると、

     

   R RE

H i i H

RE i RE

H i H

H i H

dt d

 

1 1

1 1

1

0 0

0 0

となる。

ここで、最後の ≈ では、1個の電子が存在する領域が電磁波の波長に比べて 十分に小さく、その範囲内で電場の分布は一定と見なせることを仮定している。

実際、気体原子に束縛されている電子の存在範囲はせいぜい数

Å

程度であり

、また半導体中の電子に至ってもせいぜい数十

Å

程度である。それに対して

、相互作用する光の波長は数千

Å

もあるので、この仮定は妥当である。

(33)

双極子との相互作用がある場合の密度行 列

次に、密度行列の行列要素に対する方程式を導出する。エネルギー固有状態 には時間依存性が無いので、

dt n m d n

dt m d dt

d

mn

   

と表すことができ、従って、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

l l

l l

l l

l l

mn

E n l l R i m

E n R l l i m

n H l l i m

n l l H i m

E n l

l R

i m E n R l l i m

n H l l i m

n l

l H

i m

E n R i m

E n R i m

n H i m

n H i m

dt d

 

1 1

1 1

1 1

1 1

1 1

1 1

0 0

0 0

0 0

と書くことができる。なお。ここで用いている固有状態は、主ハミルトニアン

H

0 の固有状態である。

(34)

双極子との相互作用がある場合の密度行 列

従って、状態   は、エネルギー固有値

n W

n をとり、状態間には直交性があるので、

 

 

l

ln ml ln

ml nm

mn

l

ln ml l

ln ml n

m mn

l l

n m

mn

E R

i R i

E i R

E i R

W i W

E n l l R i m

E n R l l i m

W n i m

n m i W

dt d

 

1

1 1

1

1 1

1 1

となる。

ただし

ω

mn は、順位

m

と順位

n

とのエネルギー差に対応する角周波数であり、

nm m

n

W

W    

で与えられる。

(35)

2 準位系での相互作 用

話を簡単にするためにまず、電子の取り得るエネルギー準位が

2

つしかない

2

準位系において、電磁場との相互作用を考える。

上側

(

励起

)

準位を   、下側

b (

基底

)

準位を   とすると、

a

R R R RE

i i dt

d

bb bb ab

ba bb

bb ab

ba bb

bb

bb

     

     

 1

となる。ここで、      であり、双極子能率

R

の行 列要素の対角要素

bb

RW

bbbも、一般的な媒質では

W

b

/ 0 0

となる。従って、

R RE

i dt

d

ab ba ab

ba

bb

 

  

1

となる。同様に、

R RE

i dt

d

ba ab ba

ab

aa

 

  

 1

    R E

i i E

R R

R i R

dt i d

ba aa bb

ba ba ba

bb aa

ba ba

bb aa

ba ab

ba

ba

         

         

1 1

    R E

i i E R

R R

i R dt i

d

ab bb aa

ba ab bb

ab ab

aa bb

ab ab

aa ba

ab

ab

         

        

1 1

が得られる。

b a W

b

W

a

ba

(36)

2 準位系での相互作 用

ここで      は各々、上側および下側準位の電子分布であり、

である。一方      は

2

つの状態間での量子相関

(

量子コヒーレンス

)

を表している。これらの式は、それらの時間的変化を記述しており、第

1

式 は上側準位の電子分布の時間的変化を、第

2

式は下側準位の電子分布の時間 的変化を、そして第

3

式と

4

式は、それら準位間での量子コヒーレンスの時 間的変化を記述している。

aa bb

 , Tr (  )  

aa

 

bb

 1

ba ab

 ,

これらの式は、光の吸収

(absorption)

や誘導放出

(stimulated emission)

を記述 しているが、実際にはこれら方程式に含まれていない以下の現象が存在する。

上側準位の電子は誘導放出により下側準位に遷移し、やがて熱平衡状態での 電子分布になったら正味の発光は起きなくなる。そこで、連続して発光させ るためには、下側準位の電子を上側準位に汲み上げてやる必要がある。これ をポンピングと言い、半導体レーザーや発光ダイオードなどでは、

pn

接合に 電流を注入することによりポンピングを行っている。

上側準位の電子は、電磁場が存在しなくてもある一定の割合で光を放出して 下側準位に遷移する。これを自然放出と言う。自然放出は電磁場を量子化し た時の不確定性に起因するもので、電磁場を古典論で扱う場合

(

半古典論

)

に は導出できない。

これまでの密度行列の導出においては、粒子同士の衝突やエネルギー準位の揺 らぎなどは考慮していなかった。しかし実際は、粒子の衝突などによって双極 子の調和振動が乱され、双極子振動は減衰していく。これを電子緩和効果とい う。

(37)

2 準位系での相互作 用

 

 

 

  ( 4 )

1

) 3 1 (

) 2 1 (

) 1 1 (

 

 

 

 

d ab ab

bb aa

ba ab ab

d ba ba

aa bb

ba ba ba

p s

bb ba

ab ba

ab aa

p s

bb ab

ba ab

ba bb

E i R

dt i d

E i R

dt i d

Λ E

R i R

dt d

Λ E

R i R

dt d

 

 

 

 

 

 

 

 

このような効果を現象論的ではあるが付加してやる必要がある。

ポンピングによって上側準位の電子密度が増加

(

その分下側準位は減少する が、

)

する割合を

Λ

p 、自然放出による電子寿命時間

(

縦緩和時間とも言う

)

τ

s 、粒子同士の衝突などにより双極子振動が減衰していくが、その寿命時 間

(

デコヒーレンス時間

)(

横緩和時間とも言う

)

τ

d とする。ポンピング と自然放出は、密度行列の対角要素に付加され、双極子の寿命時間は非対角 要素の変化として導入される。従って、これら現象論的な補正をした方程式 として、

が得られる。

b

a W

b

W

a

ba

ρ

bb

ρ

aa

自然放出

τ

s

ポンピング

Λ

p

(38)

2 準位系での分極 率

  ( 4 )

1 

d

ab ab

bb aa

ba ab

ab

R E

i i dt

d

 

     

次に、微分方程式 の解を求めてみる。

電場が存在しない場合、上の方程式は同次方程式

ab d

ba d

ab ba

ab

ab

i i

dt

d

 

 

 

 

 

 

 1

となり、その解は

C i t

d ba

ab

 

 

 

  

 1

exp

の形となる。ただし

C

は任意定数。そこで、電場が存在する場合については

U(t)

を変数として、

t i

t U

d ba

ab



 

 

  

 1

exp )

(

と表わせると考え、これを式

(4)

に代入すると、

 

  R E

t i i

t U i

E i R

i

t i

U i

t dt i

dU

ab bb aa

d ba d

ba

ab bb aa

ab d

ba

d ba d

ba d

ba

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1 exp 1

) 1 (

1 1

exp 1 1

exp 1

となる。

(39)

2 準位系での分極 率

従って、

電場

E

EE

e

it

E

*

e

iと表し、上式を時間に関して積分すると、t

  R E

t i dt i

dU

ab bb aa

d

ba

 

    

 

 

 1

exp 1

の関係が得られる。

 

   

 

 

  

 

  

 

 

 

 

  

t i t i t

d ba ab

bb aa

t

d ba ab

bb aa

d e

E e

E i

i R

Ed i

i R U

0

* 0

exp 1 1

exp 1 1

 

 

 

 

となる。

   

 



 



 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 





  





  

t i t i

d ba ab

bb aa

t i i

d ba d

ba ab

bb aa

d ba ab

d e

E d

e E t

i i

R

d e

E e

E i

t i i

R

t i

U

d ba d

ba

0 0

1

* 1

0

*

exp 1

exp 1 exp 1

exp 1

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

積分時間内

0 ~ t

aa

– ρ

bb

)R

ab は一定とみなすと、

次のスライドに続く、、、、

参照

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