論文内容要旨
論文題名:Usefulness of Bounce-back Admission in Monitoring the Quality of Practice in the Emergency Department(救急外来診療の質の評価における Bounce-back Admission の有用性)
掲載雑誌名:Therapeutics and Clinical Risk Management
専攻名 外科系 救急・災害医学 垂水 庸子
内容要旨
目的:近年、本邦以外の諸外国において、救急外来から帰宅後の患者の予定外入院を通じて救急外来診療の 質を評価しようとする試みがあり、一定の割合で診療のエラーを含むことが確認されている。本研究では、
昭和大学病院における救急外来診療の質を改善することを目的とし、7 日以内の BBA(7-day Bounce-back admission;7d-BBA)について後方視的に調査した。
方法:対象は 2011 年 6 月から 2013 年 5 月の 2 年間に昭和大学病院救急外来を受診した救急患者のうち、産 婦人科、眼科、耳鼻咽喉科、皮膚科の患者を除く非紹介の 18 歳以上の患者 15,069 人とした。このうち診察 終了後に医師の指示で帰宅した者について、オーダリングシステムと診療記録を用いて帰宅後 7 日以内の入 院症例を抽出し、帰宅時と入院時の診断を照合するとともに入院理由を確認することで予定外入院であるか どうかを判定した。また、これらの情報を用いて診療エラーの要因を分析した。
結果:帰宅した 11,669 人のうち、検査入院、予定入院、社会的入院、既知の悪性腫瘍の増大を除外し、最終 的に 7d-BBAs と判断したのは 257 人、3d-BBAs は 180 人で、それぞれ帰宅患者の 2.2%、1.5%であった。また、
BBA 時の主な診断は肺炎または閉塞性気道疾患の増悪(n=40, 16%)、胆嚢炎または胆管炎(n=21, 8.2%)、尿路 感染症(n=16, 6.2%)であった。7d-BBAs のうち初回受診時と入院時の診断とが同じ症例は 117 例 46%、異なる 症例は 110 例 43%、判断不能の症例は 30 例 12%であり、肺炎・閉塞性気道疾患の増悪、胃腸炎では診断が同 じ症例のほうが、胆嚢・胆管炎、脳卒中、髄膜炎では診断が異なる症例のほうが有意に多かった。
考察:本研究の結果得られた 7d-BBA および 3d-BBA の頻度は同様の条件で行われた海外の先行研究(各 1.5-2.6%、0.5-1.5%)と近似していたが、各研究の条件が異なり、単純に比較することは困難であった。現 時点で、世界的に目標とすべき 7d-BBA の頻度が明らかでないことからも、7d-BBA を他施設と比較することは せず、エラーの分析に用いたり、当院における目標値を探ったりすることにした。その結果、多くのエラー は患者が発症早期に来院していることと関連があり、診断エラーの症例では疾患特異的な症状の欠如により 診断に必要な検査が十分行われていない可能性、治療管理エラーの症例では疾患の基礎疾患への影響が十分 考慮できていない可能性などが考慮された。これらの分析は関係者で共有し、診療の改善に役立てた。さら に、その介入効果をみるため BBAs の調査を継続したところ、2013 年から 2016 年にかけて、帰宅後 7 日以内 の入院の頻度の持続的な減少が確認できた。
結語:BBAの頻度は救急診療の質を表す指標になりうると考えられた。初診時とBBA時の診断の比較分析を行 うことでエラーの内容を評価することができ、BBAの測定を繰り返し行うことで診療プロセスの改善に役立つ 可能性がある。