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(1)

九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

日本語・中国語における仮定表現の対照研究 : 日本 語の「たら」「なら」とそれに対応する中国語の形 式を中心にして

李, 慧

https://doi.org/10.15017/1522373

出版情報:Kyushu University, 2015, 博士(比較社会文化), 課程博士 バージョン:

権利関係:Fulltext available.

(2)

日本語・中国語における仮定表現の対照研究

-日本語の「たら」「なら」とそれに対応する中国語の形式を中心にして-

九州大学大学院比較社会文化学府 李 慧

2015年5月

(3)
(4)

要 旨

20世紀初頭より「仮定表現」に関する研究が、日本語、中国語それぞれについて行われ、

数多くの成果が蓄積されてきた。しかし、両言語間の具体的な対照研究はほとんど行われ ていないのが現状である。そこで本研究は、構文および意味の観点から「仮定表現」の全 体的特徴をつかむことを目的とする。さらに、認知意味論の視座から日中両言語の「仮定 表現」の機能拡張や対応関係の分析を試みた。

本研究では、主に『中日対訳コーパス』から用例を収集し、日本語の仮定形「たら」「な ら」の用法を分析することで、それぞれの機能を明らかにした。次に、中国語の仮定表現 を収集し、「仮定標識」「準仮定標識」「次仮定標識」に分類した。さらに、機能拡張、文法 化、「背景化・前景化」の視点から両言語の「仮定表現」の具体的対応関係について明らか にした。

本稿の構成は全9章から構成される。

第1章~第3章では本研究の目的、先行研究、データと研究方法について詳述した。

第 4 章では、両言語の仮定表現の構文上ならびに意味上の特徴を論述した。まず、両言 語の仮定表現の構文上の特徴を観察した。日本語には主に「順行型」と「逆行型」の二種 類が、中国語ではこの二種類以外に、「無標識型」、つまり接続表現を使用しないタイプが 存在している。次に、両言語の仮定関係を表す接続表現の意味上の特徴について説明した。

両言語ともに仮定表現は「接続関係」および「継起関係」を表すことが共通点であるとの 知見を得た。

第 5 章は、機能拡張の視点からの分析である。認知言語学での「意味拡張」の定義を参 照しながら、「機能拡張」という用語を提案し、文法形式の多義性を分析した。まず、日本 語の「たら」「なら」の機能拡張とそのプロセスについて検討を行い、これらの表現が仮定 関係を表す接続助詞という機能から、終助詞的機能、提題機能等に拡張していくプロセス を示した。また、中国語については、非接続表現が接続関係を表すようになるという拡張 機能を辿っていっており、機能拡張の程度により「仮定標識」「準仮定標識」「次仮定標識」

の三種に類別できることを示した。最後に、日中両言語の仮定表現に関する機能拡張の異 同を明示した。

第 6 章では、日本語・中国語の仮定表現の文法化について詳しく考察した。まず、指示 詞と仮定表現との文法化を対象とした分析を行い、日本語において「そうしたら」「それな ら」などの指示詞を含む接続表現が成り立つのに対して、中国語では接続機能と指示機能

(5)

とを同時に備える準仮定標識“那”“那么”が存在していることが明らかになった。

第 7章では、第6章と同様の観点-文法化-から話題提示機能と接続機能を兼ねる日本 語「なら」と中国語“的话”におけるそれぞれの文法化プロセスを確認した上で、「(の)

なら」構文と“如果(说)……的话,……”構文の対照を行った。結論として、「なら」と

“如果……,……”構文、「のなら」と“如果(说)……的话,……”構文が対称関係をな すことを論証した。

第8章では、「前景化」と「背景化」の観点から考察を行った。この観点から、日本語「そ うしたら」「そしたら」と中国語“那”“那么”それぞれの間の差異を明らかにした。日本 語「そうしたら」には指示詞「そう」の性格が残っており、前文への意識が「そしたら」

より強いことがわかる。その一方で、「そしたら」は「たら」の接続機能を強く残しており、

前文の内容を「背景化」し、後文の内容を「前景化」する働きを有する。この観点から、「そ したら」の継起性が「そうしたら」より強いことを実証した。一方、中国語“那”“那么”

も相似の様相を呈する。“那”は指示性と接続性を備えるが、相対的に指示性が強い。これ は“那”の指示対象たる前文を後文に持ち込むことで、前文を「前景化」していると推測 される。また“那么”は「そしたら」と類似しており、接続性が強いことが実際の例文か ら跡付けられた。

終章たる第9章では、本研究のまとめと今後の課題について述べた。

本研究では、先行研究を踏まえた上で、主として対照分析的観点から、日本語・中国語 の仮定表現の類型や機能を明らかにした。またその結果に基づき、両言語における仮定表 現における機能拡張の相違を示した。さらに、指示表現との関係についても、前景化・背 景化という観点から詳細に分析することで、その対応関係を新たに解明することができた。

(6)

【凡 例】

1.用例および引用文の傍線、太字、番号などは、特に断らない限り、引用者が付したも のである。

2.用例の中の?印は、その文が不自然であることを示す。

*印は、その文が非文であることを示す。

( )は、補足内容であることを示す。

3.用例番号は、本研究で収集したデータ、著書から引用した例文及び自作例、すべてを 通し番号にて示した。

4.例文のグロスにおける符号およびその意味は次の通りである。

1 一人称(first person) 2 二人称(second person)

3 三人称(third person)

CL 量詞(classifier)

COMP 補語(complementizer)

COP コピュラ(copula)

DUR 進行相(durative)

EXP 経験相(experiential)

FOC 焦点(focus)

GEN 所有格(genitive)

MOD ムード(modal)

NEG 否定詞(negative)

PFV 完了相(perfective)

PL 複数(plural)

SG 単数(singular)

SUB 従属詞(subordinative particle)

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(8)

i

目 次

第1章 序論 ... 1

1.1 本研究の背景 ... 1

1.2 本研究の目的 ... 2

1.3 本研究の研究対象 ... 3

1.4 本研究における用語の説明 ... 6

1.4.1 接続表現 ... 6

1.4.2 仮定表現 ... 6

1.4.3 仮定複文 ... 6

1.5 本研究の構成と概要 ... 7

第2章 先行研究と本研究の立場 ... 9

2.1 日本語・中国語の複文における仮定複文の位置づけ ... 9

2.1.1 日本語の複文における仮定複文の位置づけ ... 9

2.1.2 中国語の複文における仮定複文の位置づけ ... 13

2.2 仮定表現に関する先行研究 ... 18

2.2.1 日本語の仮定表現に関する先行研究 ... 18

2.2.2 中国語の仮定表現に関する先行研究 ... 21

2.2.3 日本語・中国語の仮定表現の対照研究 ... 23

2.3 先行研究に見られる問題点と本研究の位置づけ ... 26

2.4 本章のまとめ ... 26

第3章 理論的枠組みと研究方法 ... 29

3.1 理論的枠組み ... 29

3.2 データおよび収集方法について ... 30

3.2.1 データについて ... 30

3.2.2 収集方法について ... 33

第4章 日本語・中国語における仮定表現の構文上・意味上の特徴 ... 35

4.1 日本語・中国語における仮定表現の構文上の特徴 ... 35

4.2 日本語・中国語における仮定表現の意味上の特徴 ... 37

(9)

ii

4.2.1 日本語における仮定表現 ... 37

4.2.2 中国語における仮定表現 ... 38

4.3 日中両言語における仮定表現の異同 ... 40

4.3.1 構文形式と意味の関係 ... 40

4.3.1.1 接続表現を使用しない場合(無標識型) ... 41

4.3.1.2 主節のみに接続表現が使用される場合(接続、継起関係) ... 41

4.3.1.3 従属節に接続表現が使用される場合(論理識型) ... 44

4.3.2 接続表現の種類 ... 44

4.4 本章のまとめ ... 44

第5章 機能拡張からみる日本語・中国語の仮定表現 ... 47

5.1 「意味拡張」と「機能拡張」 ... 47

5.2 日本語における仮定表現の機能拡張 ... 48

5.2.1 「たら」の機能拡張 ... 49

5.2.2 「なら」の機能拡張 ... 56

5.2.3 まとめ ... 60

5.3 中国語における仮定表現に関する機能拡張 ... 60

5.3.1 接続詞類 ... 61

5.3.2 助詞類 ... 62

5.3.2.1 “的时候” ... 62

5.3.2.2 “的话” ... 65

5.3.2.3 “呢”“么” ... 69

5.3.2.3.1 “呢” ... 71

5.3.2.3.2 “么” ... 78

5.3.3 まとめ ... 80

5.4 日中両言語の仮定表現の機能拡張の対照 ... 82

5.5 本章のまとめ ... 84

第6章 文法化の観点―指示表現との融合―からみる 日本語・中国語の仮定表現 ... 85

6.1 文法化理論について ... 85

6.1.1 「文法化」の定義 ... 85

6.1.2 大堀の文法化に関する基準 ... 86

(10)

iii

6.2 日本語における仮定表現と指示表現の文法化 ... 88

6.2.1 先行研究概観 ... 91

6.2.2 辞書による調査 ... 92

6.2.3 分析 ... 94

6.2.3.1 「そ‐+接続助詞 たら・なら」の各形式の分析 ... 94

6.2.3.1.1 「そうしたら」 ... 94

6.2.3.1.2 「そしたら」 ... 98

6.2.3.1.3 「それなら」 ... 100

6.2.3.1.4 「そんなら」 ... 103

6.2.3.2 「こ‐+接続助詞 たら・なら」の各形式の分析 ... 104

6.2.3.2.1 「こうしたら」 ... 104

6.2.3.2.2 「これなら」 ... 104

6.2.3.3 「あ‐+接続助詞 たら・なら」の各形式の分析(「あれなら」) .. 105

6.2.4 まとめ ... 106

6.3 中国語の仮定表現と指示表現の文法化 ... 108

6.3.1 “那”“那么”への認識 ... 108

6.3.2 “那么”の歴史的由来 ... 109

6.3.3 “那”“那么”の準仮定標識としての品詞性 ... 110

6.3.4 “那么”の文法化プロセス ... 114

6.4 本章のまとめ ... 117

第7章 文法化の観点からみる日本語・中国語の仮定表現 ―話題提示助詞との連続性をめぐって― ... 119

7.1 条件文と話題文 ... 120

7.2 日本語「なら」と中国語“的话”の仮定標識機能と話題提示機能 ... 121

7.3 「なら」「のなら」と “如果(说)……(的话),……”構文 ... 126

7.3.1 従来の認識 ... 127

7.3.2 観察 ... 127

7.3.3 「なら」と「のなら」 ... 129

7.3.4 “如果”と“如果(说)……的话” ... 133

7.4 本章のまとめ ... 136

(11)

iv 第8章 「背景化」と「前景化」の観点からみる

日本語・中国語の仮定表現 ... 137

8.1 「背景化」と「前景化」について ... 137

8.2 日本語「そうしたら」と「そしたら」 ... 138

8.3 中国語“那”と“那么” ... 143

8.4 本章のまとめ ... 146

第9章 結論 ... 149

9.1 本研究の要約 ... 149

9.2 本研究の意義 ... 151

9.3 今後の課題 ... 152

参考文献 ... 155

付録1 各辞書の概要 ... 165

付録2 データ資料 ... 169

初出一覧 ... 269

謝辞... 271

(12)

v

・ 表目次

表1-1 「ば」と「たら」「なら」の関係 ... 3

表1-2 日中仮定複文の構文形式の対応関係 ... 5

表2-1 先行研究における中国語複文の分類 ... 15

表2-2 日本語と中国語における複文の意味上の分類 ... 16

表2-3 蓮沼ほか(2001)の条件表現の下位分類... 17

表2-4 日中両言語における仮定複文の対応関係 ... 18

表2-5 「たら」の各用法に対応する中国語表現(小川(2001)) ... 24

表3-1 日本語小説名、著者及び訳者など ... 31

表3-2 中国語小説名、著者及び訳者など ... 32

表4-1 「たら」「なら」と「もし」などの副詞との共起率 ... 38

表4-2 中国語における仮定関係を表す接続表現の一覧表 ... 38

表4-3 「たら」「なら」と対応する中国語表現の統計 ... 40

表5-1 「たら」の各用法の統計 ... 49

表5-2 「なら」の各用法の統計 ... 56

表5-3 日中両言語における仮定標識の文中の位置 ... 60

表5-4 中国語仮定標識の使用状況 ... 62

表5-5 “呢”の辞書上の記述 ... 71

表5-6 中国語語気助詞“呢”と日本語の対応関係 ... 77

表5-7 “么”の辞書上の記述 ... 78

表6-1 「こ-/そ-/あ- + たら・なら」をめぐる調査対象 ... 90

表6-2 辞書による調査結果 ... 93

表6-3 各調査対象の使用状況 ... 94

表6-4 「そうしたら」の二種類の用法とそれぞれの出現数 ... 97

表6-5 「そうしたら」と「そしたら」の前接形式 ... 100

表6-6 中国語の指示表現の体系 ... 108

表6-7 “那么”の品詞類 ... 114

表7-1 「なら」の出現数と出現率 ... 125

表7-2 “的话”の出現数と出現率 ... 125

表8-1 辞書における「そうしたら」と「そしたら」の記述 ... 139

(13)

vi

・ 図目次

図2-1 日本語複文の構造上の分類 ... 12

図2-2 日本語複文の意味上の分類 ... 12

図2-3 日本語の複文の分類のまとめ(前田) ... 13

図2-4 中国語の複文の分類(劉ほか) ... 14

図2-5 日中両言語の条件表現の共通モデル(李) ... 25

図4-1 日本語の仮定複文の構文形式 ... 35

図4-2 中国語の仮定複文の構文形式 ... 36

図5-1 「たら」の機能拡張プロセス ... 55

図5-2 「なら-1」から「なら-2」への機能拡張 ... 58

図5-3 「なら」の機能拡張プロセス ... 59

図5-4 準仮定標識“时”の機能拡張 ... 65

図5-5 準仮定標識“的话”の機能拡張 ... 68

図5-6 中国語の仮定関係を表す接続表現の類別 ... 80

図5-7 「準仮定標識」と「次仮定標識」の文構造上の共通性 ... 82

図5-8 日中両言語の仮定標識の機能拡張の異同 ... 83

図6-1 大堀(2005)の文法化の度合 ... 87

図6-2 「そうしたら」の文法化プロセス ... 98

図6-3 “那么”の歴史的変遷 ... 110

図6-4 太田(1958)らにおける“那么”の転化過程 ... 115

図6-5 呂(1985)における“那么”の転化過程 ... 116

図6-6 “那” “那么”の文法化プロセス ... 116

図7-1 準仮定標識“话”の機能拡張の一部 ... 122

図7-2 「なら」の構成形式 ... 131

図7-3 「のなら」の構成形式 ... 131

図8-1 接続機能を果たす“那” “那么”の相違点 ... 146

図8-2 「そうしたら」「そしたら」と“那” “那么”の対応関係 ... 146

(14)

1

第1章 序 論

1.1 本研究の背景

日本語「ば」「たら」「なら」「と」は仮定条件を表す接続形式であると認識され、

この四者の使い分けに関する研究が盛んに行われている。しかし、学習者にとっては下 記例(1)の「ったら」の用法は理解し難いものである。例(1)の「ったら」はそもそも 接続助詞「たら」(例(2))と如何なる関係にあるのか、この疑問が本研究の出発点と なった。

(1)「あ、いてえ!止せ、止せ、止せったら!生き物だから少し鄭重にしてくんねえ、

踏み台にされたり蹴られたりしちゃ、いくら頑丈でもたまらねえや。」

『痴人の愛』1

(2)「それで、卒業したら何になる。」 『斜陽』

例(1)の「ったら」の用法は仮定条件関係を表す接続助詞「たら」が、接続助詞には 当たらない用法を発達させたものと考えられる。この「たら」は仮定関係を表すという より、一種の新しい用法とみられる。

一方で、日本語の仮定条件関係を表す複文においては、前後の節を繋げる接続表現(多 くの場合は接続助詞)が必須の成分になっているのに対して、中国語の仮定関係を表す 複文においては、接続表現を使用する場合と使用しない場合がある。例(3)のようない わゆる“意合法”2をよく使用するが、これは日本語に訳すと、必ず何らかの接続表現に 置き換えられるだろう。

(3)你 去, 我 也 去。

2SG 行く 1SG も 行く

1 例文の詳細については第3章を参照されたい。

2 パラタクシス(parataxis)とも呼ばれる。王(1985)では中国語の複文において“関連詞語

(接続表現)など”を明示しない“意合法”の文が多くあると指摘される。文を構成する各成分 の意味や前後文脈によって理解するしかない。

(15)

2 あなたが行くなら、私も行く。

中国語では人称、性、数、格、テンス、アスペクト、ムードなどの文法範疇は語形変 化に現れず、語の結び付き方、文法的関係は殆ど語順で示される。形態的な特徴に乏し い中国語における文法上の重要な手段は、語順といくつかの機能語3(虚辞)だと一般に 認識されている(例えば、高名凯(1948)等)。これは日本語の語形変化の豊かさと相 反するが、仮定関係を表す接続表現が機能語に属することは一致している。そのため、

中国語における仮定関係を表す接続表現にも、日本語「たら」のような用法の発達現象 が見られるのか、或いは、他の形式で固有の発達を遂げているのかという疑問が、本研 究の出発点となった。

1.2 本研究の目的

条件文あるいは条件表現に関する研究、さらに言えば複文の研究は日本語においても 中国語においても非常に難しい分野である。なぜならそれは、前後節の関係に及ぶから である。とりわけ、条件とは元々論理学でよく言及される範疇であり、条件複文の研究 はさらに難度が高い。しかし、20世紀に入ると、日本では条件文およびそれに関する接 続表現の研究が盛んに行われるようになってきた。一方、中国でも仮定複文や条件複文 や因果複文の分類及びそれぞれの境界については数多くの研究が行われているが、両言 語における体系的な対照研究は未だ少ないのが現状である。日本語のみあるいは中国語 のみでいわゆる条件文に対する研究を行うにはそれぞれの限界があり、見えないところ が少なからず存在している。そこで、本研究はこれまで両言語において条件文(複文)

に関して展開されてきた研究の経緯および流れを整理したうえで、それぞれの持つ特徴 や機能を探ってみたい。これに基づき、日本語と中国語の仮定関係を表す接続表現の機 能拡張及び文法化プロセスについて、お互いを鏡にした対照研究の立場から考察を行う。

具体的には以下の四つの課題を設定し、両言語の仮定表現を対照言語学的に分析したい。

3 機能語と実質語は単語を類別する方法の一つである。機能語とは、文型を構成する要素、つ まり文中に並んだ語同士の関係を表し、文の構造の骨格となる語。助詞、助動詞、形式名詞、接 続表現などの類を指す。これに対して、物事を指し示す実質的な内容を表す語は実質語と呼ばれ る。名詞、形容詞、動詞などの類を含む。両者はそれぞれ構造語と内容語とも言う。

(16)

3

①書き言葉における日本語と中国語の仮定表現の機能および対応関係

②日中両言語の仮定表現のそれぞれの機能拡張

③日中両言語における仮定表現の文法化プロセス

④「前景化・背景化」に見られる日中両言語における仮定表現の特徴

1.3 本研究の研究対象

日本語では「ば・たら・なら・と」をはじめ、様々な表現で仮定・条件関係を表すこ とができる。本研究はその中で、「たら・なら」を含むものを研究対象とする。その理 由は、両者とも「ば」の派生形式4であると考えられるからである。松下(1930)の『改 撰標準日本文法』は、未然仮定を表す文語「ば」を口語では「たら(ば)」(完了を表 す)或いは「なら(ば)」(非完了を表す)としている5(cf.阪倉(1958);山口(1969) 等)。これを簡単に整理すると、表1-1のように表わすことができる。

表1-1 「ば」と「たら」「なら」の関係

文語 口語

完了 未然形+ば たら(ば)

非完了 なら(ば)

山口(1969)は「たら」と「なら」を一つのグループとして扱い、それらは「と」

と「ば」より個別的で仮定性が強いと特徴づけている。さらに、「と」形式は単なる時 間的関係から帰結に先行しているにすぎず、もともとは仮定関係を表す意味ではない。

これらの観点より、本研究は「と」形式を研究の対象外とする。

また、益岡(2011)では原因理由を表す接続形式である「だけに」と「だけあって」

を例とし、両者の関わりを論じ、「ベース形式と発展形式の分化」をはじめて提示した。

4 益岡(1993)はこういう「派生形式」を「接続形式の分化」と扱っている。さらに益岡(2006,

2013)ではこの現象について掘り下げた考察を行っており、レバ形式・タラ形式・ナラ形式を バ形式の分化と結論付けている。

5 松下(1930)はこれを「未然仮定拘束格」と呼ぶ。拘束格とはいわゆる順態条件法或いは順 態接続法である。さらに拘束格として仮定拘束格と確定拘束格の二種類を挙げ、仮定拘束格を「未 然仮定」と「現然仮定」に分ける。ここで言う「完了」と「非完了」は「未然仮定」の下位分類 であるとしている。

(17)

4

基本となる接続形式(「ベース形式」と呼ぶ)である「だけに」に部分的・萌芽的に存 在する特性が、その形式から分化した「発展形式」である「だけあって」において全面 的に表されるというものである。後に、益岡はこの理論を仮定条件を表す四形式にも応 用した。益岡(2013)では以下のように述べられている。

「~バ」という条件を表す形式から派生した「~タラバ」・「~ナラバ」という 複合的な形式が文法化して、条件を表す「~タラ」・「~ナラ」という独立の形式 に発展した。

益岡(2013:160)

さらに、益岡(2014)はこの理論について以下のように詳細に纏めている。

「ベース形式と発展形式の分化」

A:基本となる「ベース形式」から、それに特定の要素が組み込まれて形成される 類義的な「発展形式」が派生・分化する。

B:ベース形式に部分的に存在する特性が発展形式によって全面的・明示的に表さ れる。

C:発展形式の形態には縮約が見られる。

益岡(2014:533)

以上によれば、仮定関係を表す接続表現の中で、「ば」形式が最も典型的な標識で、

「たら」「なら」はともに「ば」形式の派生形式である。最も無標6の形式である「ば」

がそれぞれ文語の完了の助動詞「たり」と断定の助動詞「なり」という要素を組み込ん で派生的形式「たら」「なら」になるわけである。また、「ば」形式を本研究から除外 する理由としては「ば」においては「一般的因果関係」の意味が強いことが挙げられる。

これに対して、「たら」と「なら」とも「因果性は要件とならない」7のである。よって、

本研究では「ば」形式も対象外として、「ば」形式から発生した「たら」形式、「なら」

6 無標とは有標に対する概念である。形がより単純で、より多くの言語に見られ、それぞれの 言語における使用頻度の高い項目、言い換えればより「当たり前」と直観的に思われる項目は「有 標性が低い(無標)」である。逆に、特別の標識などを伴う場合はより「有標」である。これら は第4章の「有標識」と「無標識」と同一のものではない。

7 益岡(2013:157)を参照されたい。

(18)

5 形式を中心に論を進みていく。

これに対して、中国語の仮定複文の構成形式は大きく二種類に分けられる。仮定関係 を表す接続表現を使用するタイプを一種、非仮定関係を表す接続表現を使用するタイプ と接続表現を使用しないタイプを合わせて一種とする。

(4)“要 嫌 淡, 我 给 你 拿 盐 去!” 《钟鼓楼》

仮定標識 嫌う 味が薄い 1SG あげる 2SG 取る 塩 行く

「もし薄すぎたらお塩をもって来ますからね。」

(5)她 愿 出 钱 买 车 呢, 好; 她 不 愿意,他 会 去

3SG したい 出す 金 買う 車 よい 3SG NEG したい 3SG MOD 行く

赁 车 拉。 《骆驼祥子》

賃貸する 車 引く

彼女がすすんで金をだして車を買うならよし、いやだというのなら、貸車を引 けばいいのだ。

(6)“你们 再 哭, 我 也 哭 啦!” 《轮椅上的梦》

2PL もっと 泣く 1SG も 泣く MOD

「まだ泣くんなら、あたしも泣いちゃうよ!」

上記の例(4)においては“要”という仮定表現を使用しており、例(5)の“呢”は 非仮定表現であるにもかかわらず、仮定の意味を帯びていると見られる。この点につい ては第5 章で詳しく述べる。例(6)は“意合法”で仮定関係を推測できる例文である。

それぞれに対応する日本語は接続表現「たら」「なら」となる。このように、日本語と 中国語の仮定関係を表す形式の対応関係は表1-2のように示される。

表1-2 日中仮定複文の構文形式の対応関係

言語 日本語 中国語

対応 仮定関係を表す接続表現

(とりわけ「たら」「なら」)

仮定関係を表す接続表現

非仮定関係を表す接続表現

接続表現を使用せず(意合法)

(19)

6

本研究はこの表に示す日中両言語の接続表現を対象とし、議論を進めていくことにす る。

1.4 本研究における用語の説明

1.4.1 接続表現

本研究では「接続詞」「接続助詞」という用語を使用せず、それらを総称する「接続 表現」という用語を用いる。佐久間まゆみ(2002)の定義に従い、「接続表現」とは「文 章・談話論における接続機能を有する語句の総称であり、品詞論の接続詞、接続助詞や 構文の接続語、接続句に対する概念である」(p.162)とする。いわゆる接続助詞に代表 されるものであるが、それ以外に、一種の活用形とみられるものから、名詞などが形式 化して接続助詞的に働くようになったものまでを考察に含める。また、接続表現より前 にある部分を「前節(従属節)」、後ろにある部分を「後節(主節)」と呼ぶことにする。

これらと区別するために、それぞれの節で述べられている内容(コト)自体を指す場合 には「前件」と「後件」という用語を使用する。

1.4.2 仮定表現

「仮定」表現という名称からも窺われるように、日本語、中国語の双方において、そ れは複文の前件と後件の関係(関係づけ)に注目した分類であると考えられる。しかし、

日本語が中国語と異なる点は、やや早い時期の国語研究では形態に基づく呼応論がある ことにある(日本語条件文の研究史について、詳細については小林(1991,1996)、有 田(2001)などを参照されたい)。日本語では一般に「ば・たら・なら・と・ても」な どの表現は統一的に「条件表現」と呼ばれる。しかし、中国語ではこのような言い方を 使うと、誤解を招く恐れがある。中国語の複文に関する研究の中では、「条件文」の定 義や分類、とりわけ「条件」と「仮定」の境界について従来から論争が繰り返されてき た。このため、本研究では日本語で使用する「条件表現」を採用せず、「仮定表現(仮 定関係を表す接続表現)」と呼ぶことにする。

(20)

7 1.4.3 仮定複文

「仮定表現」で構成される複文は「仮定複文」と定義しておく。具体的には、日本語 の「たら・なら」、中国語の接続詞8(“要是”“如果”)や副詞(“就”)などで構成され る複文である。仮定複文は「従属節がある仮定を述べ、主節がそのような状況のもとで 出現するであろう結果を説明する。口語では、常用の関連詞語は“要(是)……,就…

…”“如果……,就……”などであり、文語では、従属節には“假如”,“倘若”,“如”,

“倘使”,“设若”などが多く用いられ、主節には“就”,“便”,“那么”などが多く用い られる」9(劉ほか(2001:874))。

1.5 本研究の構成と概要

本研究は序論から終論までの全9章から構成される。第2章からの各章で行う主な内 容を以下に示す。

第 2 章は先行研究の概観と本研究の位置づけである。まず、日中両言語における複文 の分類を確認し、その中の仮定複文の位置づけを明確にする。さらに、仮定表現に関す る先行研究を概観する。次に、「たら」「なら」及び中国語の具体的な接続表現に関す る研究を整理し、それぞれの特徴を明らかにする。最後に、先行研究の問題点及び本研 究の位置づけについて述べる。

第 3 章では、本研究の理論的枠組みおよび研究方法について詳述する。まず、各章ご との理論的基盤を述べる。次に、本研究で使用した『中日対訳コーパス』に収録された 作品の詳細およびデータ収集方法を述べる。

第 4 章では、日中両言語における仮定表現の構文上及び意味上の特徴を見ていく。ま ず、構文上の観点から日本語と中国語の仮定関係を表す接続表現の現れ方についての類 型的なまとめを試みる。次に、意味上の観点から「たら」「なら」及び中国語の典型的

8 中国語のいわゆる「連詞」(“连词”)を「接続詞」とする。接続詞“如果”“要是”“倘若”“假 如”は、副詞“就”などと同時に用い、呼応して、仮定関係を表す。こうした接続詞と副詞との 間の境界線は非常に曖昧で、従来から中国語文法における論点の一つである(例えば、胡(编)

《词类问题考察》(1996);《词类问题考察续集》(2004)など)。

9 これは、劉ほか(1991)『現代中国語文法総覧(下)』片山・守屋・平井共訳(p.736)を 参照した上で訳したものである。

(21)

8

な仮定関係を表す接続表現の意味的特徴を明らかにする。最後に、両言語のこれらの接 続表現の類似点と相違点を述べる。

第5章から第8章では、認知意味論の三つの視座から日中両言語の仮定表現の類似点 と相違点を見ていく。

具体的には、第 5 章は意味拡張の視点からの考察である。まず、「意味拡張」に関す る理論の説明およびこれを援用する理由を述べる。次に、日中両言語における仮定表現 それぞれの意味拡張について分析する。最後に、両言語における顕著な相違点をまとめ る。

第5章の観点を補い、第6章と第7章では通時的な側面、即ち文法化の観点から仮定 表現の異同を対照させる。具体的には、指示表現との関係(第 6 章)、話題表現との関 係(第 7 章)という二つの関係に焦点を当て、両言語の仮定表現はどのような文法化プ ロセスを辿っていったかについて述べる。両言語それぞれの特徴を明らかにした上で、

対照する。

第8章では、第5、6、7章の分析や観察を基に、「背景化」と「前景化」の視点から、

両言語における最も特徴的な指示表現との関わりを中心に仮定表現を詳しく考察してい く。

第9章では、本研究のまとめと今後の課題を述べる。第4~8章で考察した内容をまと めた上で、本研究の意義と今後の課題について述べる。

(22)

9

第 2 章 先行研究と本研究の立場

20世紀の初めから日中両言語において、「複文」に関する問題が研究者の関心を引き、

今日までに数多くの成果が報告されている。そのうち、日本語「ば・たら・なら・と」

という四つのいわゆる接続助詞は「条件表現」に分類され、その異同及び使い分けが研 究の中心となってきた。国語学の分野では「仮定」と「条件」をめぐる論争が半世紀以 上続き、未だその決着をみない。このため、日中両言語における「条件表現」や「仮定 表現」に関する対照研究は小川(1999,2001,2003)と李(2011)以外見あたらない。

本章では、日中両言語における仮定表現についての先行研究に触れる前に、まず両言 語における複文の分類及び仮定複文の位置づけ、つまり、両者の枠組みについて見てい きたい。また、仮定関係を表す複文の両言語における位置付けについても述べておきた い。最後に、仮定表現の主な先行研究をまとめた上で、本研究の立場について述べる。

なお、第4章から第8章の詳細な内容と関連するその他の先行研究については、各章で 必要に応じて適宜言及することにする。

2.1 日本語・中国語の複文における仮定複文の位置づけ

日本語の「複文」は中国語で“复句”と呼ばれるが、説明の便宜上、本研究では統一 した言い方、すなわち「複文」を使用する。以下、両言語の複文における仮定複文の位 置づけを見ておきたい。

2.1.1 日本語の複文における仮定複文の位置づけ

日本語の文はその構造的分類から「単文」と「複文」に分けられる10。「単文」とは、

一つの節で成り立っている文である(例(7))のに対して、「複文」とは、節を二つ以 上含む文である(例(8))。

(7)北海道の冬は寒い。 (宮島・仁田(編)1995:4)

10 学校文法の中には、英文法のSimple Sentence,Compound Sentence,Complex Sentence という伝統的な三分法になぞらえながら、「単文」と「複文」と「重文」に分類したものもある。

(23)

10

(8)酒を飲みすぎて、彼は悪酔いをしてしまった。 同上

次に、日本語複文の下位分類について詳しく見てみよう。従来の研究では、形式、構 文、意味という三つの観点から複文の分類は論じられている。まず、形式的な方面から 説明するものに寺村(1981)が挙げられる。

(9)文をつなぐ構文の形式的分類:

(ⅰ)一つの文の文末の述語の活用形でつなぐ (ⅱ)接続助詞でつなぐ

(ⅲ)一つの文を他の文の名詞の修飾節にする(文の連体節化)

(ⅳ)一つの文を他の文の名詞的構成要素とする(文の名詞節化)

(ⅴ)引用(文の引用節化)

(ⅵ)接続詞でつなぐ(「複文」から「談話」へ)

寺村(1981:12)

この(ⅰ)~(ⅵ)の箇条書きは文接続の形式から日本語の複文にどのような種類が あるかを示している。下線部分の「接続助詞」と「接続詞」について本研究では「接続 表現」という言い方に統一する(1.4「本研究における用語の説明」に詳しい)。

一方、日本語学における「複文」の研究は、「連体修飾節」と「連用修飾節」を中心 として行われ、特に「従属度(陳述度)」という観点から三尾(1942)、三上(1953)、

南(1974,1993)らによって「複文の階層性」に関する体系的な理論が提出された11。 三上(1953)は、「①補語を食い止めるか否か?②連体法に収まるか否か?③丁寧化が 早いか遅いか?」という三つの「準則」により、用言の活用形を、「単式・軟式・硬式」

に分類している。条件節は、一応「軟式」に分類されている。南(1974)は三上の分 類を参考にし、述語的部分の要素の現れ方とその部分以外の要素の現れ方などに準じて、

接続助詞をA類・B類・C類に分ける階層的類型を提案した。

(10)南の従属構造(「従属句」)の階層的類型

11 「複文」に関してはこれ以外に益岡(1997)、野田ほか(2002)、日本記述文法研究会(編)

(2008)、前田(2009)なども参照。

(24)

11

(ⅰ)A類(~ながら(同時性)、~つつ、~て(付帯状況)、~(連用)中止形

(継起)等)

生起可能な要素:ガ格以外の格成分、ボイス(及び関連する副詞成分)

(a)太郎は[ラジオを聞きながら]、勉強しました。

(ⅱ)B類(~のに、~ので、~ながら(逆接)、~と、~なら、~たら、~ば、

~て(理由・継起・並列)、~ても、~(連用)中止形(並列・理由)

等)

生起可能な要素:A 類に含まれる要素、ガ格、アスペクト、否定(肯定)、丁 寧さ、テンス(及びと関連する副詞成分)

(b)[雨が降って]、試合は延期された。

(ⅲ)C 類(~が、~けど、~から、~て(逆接)、~(連用)中止形(逆接)、

~し等)

生起可能な要素:B類に含まれる要素、主題、対事的モダリティ(及び関連す る副詞成分)

(c)[雨は降ったけど]、地面はあまり濡れていなかった。

(ⅳ)D類:直接引用節

生起可能な要素:C類に含まれる要素、対人的モダリティ

(d)彼は私に「一緒に行こう」と言った。

「たら」「なら」などいわゆる<条件的な意味>を表すものは B 類に属する。12三上と 南両氏の分類を整理してみると、図2-1のようになる。

12 有田(1993)は南の「たら」「なら」がB類に属するという主張に反対している。有田(1993)

は「~たら」と「~ば」の属する階層と「~なら」の属する階層が全く同様ではないとし、「バ、

タラ節は、スル―シタの対立を含まず、特定的叙述を表すのにシタが用いられないという点では、

A類の副詞節に近く、ナラ節はスル―シタの対立を含み、特定的叙述を表すシタが用いられると いう点で、カラ、ノでなどのB類の副詞節に近い。つまり、バ、タラ節とナラ節とは異なる階 層に属している可能性がある。」(p.104)と述べている。

(25)

12 三上 南 単式 ……… A類

軟式 ……… B類 複式

硬式 ……… C類 図2-1日本語複文の構造上の分類

図2-1から分かるように、三上と南両者の分類は基本的に対応するものである。

最後に、意味的関係から複文を分類したものを見てみよう。寺村(1981)では節と 節の意味的関係から複文を、並列的関係を表すものと主従的関係を表すものに大別する。

詳細は以下の通りである。

並列的関係(継起を含む)

述語(ないし節全体)を修飾・限定する 時・前後関係

原因・理由 仮定・条件 程度

主従的関係 述語の内容(「引用」)

名詞を修飾・限定する 付加情報的

内容説明的

従節自体が名詞となる

寺村(1981:19)

図2-2 日本語複文の意味上の分類13

ここで、「並列的関係」と「主従的関係」というのは、重文と複文にあたると見られ

13 寺村(1981)ではこの図を「節と節の意味的関係」と題しているが、前述の形式上、構文上 の分類とより明確に対比させるため、本研究では「日本語複文の意味上の分類」とした。

(26)

13

る。「仮定・条件」は主従的関係、つまり「複文」の一種であると見られる。以降 1.4 で説明した通りこれを「仮定複文」と呼ぶことにする。

一方、前田(2009)は先行研究を振り返ったうえで、述語を中心として構成される 複数の節どうしが、どのような関係を持つかによって、複文を構成する従属節を「連体 節」と「連用節」に大きく分け、さらに、連用節の下位分類の中に副詞節を挙げている。

その上で、前後節の意味関係から「条件」「原因」などが類別される。前田の分類を全 体的にまとめると図2-3のようになる。

前田(2009:16-17)

図2-3 日本語の複文の分類(前田(2009))

2.1.2 中国語の複文における仮定複文の位置づけ

中国語の文の種類にも「単文“单句”」と「複文“复句”」の区別がある。これは一種 の文構造上による分類であると言われる(劉ほか(2001)など)。単文は一つの主語―

述語構造(述語)だけを含むもので、複文は二つまたは二つ以上の意味的に関連のある 単文から構成されるものである。14しかし、複文の下位分類の展開は主に意味上で行わ れている。劉ほか(2001)では節と節の文法関係に基づいて、複文を等位複文(対等

14 中国語の「単文」「複文」の定義は劉ほか(2001)とその訳本(片山ほか)を参考にしてい る。

単文

名詞修飾節……実質名詞を修飾する節 連体節

補足節……準体助詞・形式名詞を修飾する節

複文 「論理文」…①条件②原因・理由③逆条件④逆原因 副詞節

「状況文」…⑤目的⑥同時進行⑦様態⑧時 連用節

並列節 …⑨逆接⑩順接 ⑪並列

(27)

14

の複文)と偏正複文(非対等の複文)の二つの類型に大別する。つまり、前節と後節が 並列的に、あるいは主従的に存在するかによる分類である。しかし、この二つの類型を 細分するさい、前後節の意味上の関係に依存するものが殆どとなった。例えば、以下の 図2-4に示す通りである。

並列複文 等位複文 継起複文 累加複文 選択複文 複文 因果複文

転折複文 条件複文 仮定複文 偏正複文 譲歩複文 取捨複文 目的複文 時間複文 連鎖複文

劉ほか(2001:870-878)

図2-4 中国語の複文の分類(劉ほか(2001))

図2-4の「並列」「条件」「仮定」「因果」「譲歩」などはすべて前後節間の意味 関係に基づいた分類である。これを日本語の複文分類の図(2-3)と対照してみると、

仮定複文は主従的関係を表す複文の下位分類に帰属することが両言語の共通点である ことがわかる。しかし、形式や構文などの観点からみた複文の分類に関する研究はあま りない。

一方、中国語における「仮定複文」に関する研究は「条件複文」、「譲歩複文」、「因果 複文」との関わりや分類がその中心となる(ここでの「仮定」「条件」「因果」などはす べて狭義的解釈である)。「仮定複文(“假设句”)」は黎(1924)によって最初に正式に 提示され、主従的複文に属する「仮説的原因文」(1924:218)であると定義されたが、

(28)

15

これはのちに争点となった。なぜなら、「仮説的原因文」には、「仮説的」(仮定関係)、

「因果的」(因果関係)、「条件的」(条件関係)という三つの要素が含まれており、より 複雑なものと見なせるからである。これらの「関係」は言語学的分類の根拠となる一方 で、「仮定複文」「条件複文」「譲歩複文」など、それぞれの複文の間の境界は曖昧なも のとなった。これらの関係の中でどれが主要な位置を占めるかによって分類すると、次 の表2-1のようになる。

表2-1 先行研究における中国語複文の分類15

著作 仮定複文 譲歩複文 条件複文

新著語語文法 (黎(1924)) + + + 漢語知識 (張(1979)) + - + 漢語語法綱要 (王(1982)) - + + 現代漢語 (胡(1995)) - + + 現代漢語語法講話(丁(2002)) - + + 現代漢語 (黄(2002)) + - +

(“+”は当該項目があり、“-”当該項目がないことを示している)

表2-1からも分かるように、最も早期に提示された黎(1924)の分類では「仮定複 文」は一つの独立した類型であるとし、張(1979)と黄(2002)はこの主張を踏襲し ている。一方、王(1982)、胡(1995)、丁(2002)は「仮定複文」を「条件複文」の 下位分類に属すとし、張(1979)、黄(2002)は「譲歩複文」を「仮定複文」に類別し た。その他、呂(1952)や邢(2001)も同様に、仮定文を因果文(広義的因果文)の 範疇に分類する。このような分類を成すのは意味上から複文を分類するに因むと考えら れる。また、「仮定複文」に示された複雑性もその一因である。これらの「仮定複文」

と隣接するものを明らかにするためには、前提として呂や邢が主張したとおり、「仮定」

「条件」「因果」は同一レベルのものではなく、「因果」は「仮定」「条件」などより基 本的のもので、ベースになるということになる。具体的に、呂(1952)は、「広義の因 果関係」を次の三種に分類している。

15 “+”は当該項目がその著作に出ており、“-”は当該項目がその著作に出てないことを意 味する。

(29)

16

1.假设句:若甲则乙,甲乙皆虚,理论的,一般的,泛论因果。(“要是……就……”)

2.推论句:既甲则乙,甲实乙虚,应用理论于实际,推断因果。(“既然……就……”) 3.因果句:因甲故乙,甲乙皆实,实际的,个案的,说明因果。(“因为……所以……”) 呂(1952:428)

拙訳16

1.仮定文:甲であれば即ち乙、甲、乙はともに虚(仮定、非リアリティ)である、

理論的で一般的で、幅広く因果を論じる。(関連詞語:“要是……就……”)

2.推論文:甲であるからには即ち乙、甲は実(事実)で、乙は虚(仮定)である。

理論を実際に応用した推断的因果関係である。(関連詞語:“既然……就……”)

3.因果文:甲であるが故に乙、甲乙ともに実(事実)である。実際的で個別的で、

因果関係を説明する。(関連詞語:“因為……所以……”)

呂の解釈を見れば分かるように、「仮定文」「推論文」「因果文(狭義の因果文を指す)」 はすべて「広義の因果文」の下位分類に置かれる。これは日本語で「と・ば・たら・な ら」が「仮定的・順接の因果関係」を表す接続表現として扱われるのと似ている。一方、

王(1994)は条件関係を出発点として、現代漢語のすべての複文を条件文と非条件文 とに区別したうえで、前者は偏正複文、後者は等位複文にあたるとし、さらに「仮定複 文」を「条件複文」の下位分類の一つであるとしている。これに対して、日本語の場合 では、「仮定的」という点に関してみると、周知のように、条件文には「仮定条件」と 並んで「確定条件」と呼ばれるものが存在する。すなわち、日本語の「仮定文」は「条 件文」の下位分類として扱われている。

以上の日中両言語の複文の意味上の分類を寺村と劉ほか(2001)を例としてまとめ ると、表2-2のようになる。

表2-2 日本語と中国語における複文の意味上の分類17

日本語(寺村) 中国語(劉ほか)

16 訳は新田小雨子(2007)「因果関係を表す接続表現の日中対照研究」によるものを若干修正 したものである。

17 この表は寺村と劉ほかの「主従的関係」文の下位分類である。両氏以外にも、種々の分類が あるため、ここではその一端のみを示した。

(30)

17 偏正複文

(主従的関係)

時・前後関係 時間複文

原因・理由 因果複文

目的複文

仮定・条件

仮定複文 条件複文 転折複文 譲歩複文 程 度

述語の内容(「引用」)

名詞を修飾・限定する

(付加情報的と内容説明的)

従節自体が名詞となる

取捨複文 連鎖複文

上記の表からわかるように日本語の「仮定・条件」は中国語の「仮定複文」「条件複 文」「転折複文」「譲歩複文」にほぼ対応するが、その細かな差異を明らかにするために、

蓮沼ほか(2001)の説明と例文を引用しながら分析する。蓮沼ほか(2001)では、条 件表現を、出来事を仮定的に予想しているのか、実際に起こった出来事について事実的 に述べるのかに分けられ、さらに予想される結果が起こる場合(順接)とそうでない場 合(逆接)に分類している。この分類は、次のようにまとめることができる。

表2-3 蓮沼ほか(2001)の条件表現の下位分類

仮定的 事実的

順接 薬を飲めば頭痛が治る 薬を飲んだので頭痛が治った 逆接 薬を飲んでも頭痛が治らない 薬を飲んだのに頭痛が治らなかった

蓮沼ほか(2001:11)

この「順接・仮定的」「順接・事実的」「逆接・仮定的」「逆接・事実的」の4つはそ

(31)

18

れぞれ中国語の「仮定複文」「因果複文」「譲歩複文」「転折複文」に一致すると考えら れる。(表2-2と2-4の色付きの枠内に示すのは中国語の言い方である。)

表2-4 日中両言語における仮定複文の対応関係

仮定的 事実的

順接 仮定複文 因果複文

逆接 譲歩複文 転折複文

以上述べてきたように、日中両言語の仮定複文は主従的関係を表す複文の下位分類の 一つであり、意味上、両言語の仮定複文と対応関係を有している。

2.2 仮定表現に関する先行研究

2.1節では日中両言語の仮定複文の複文全体における位置づけを見てきたが、その結 果、両言語の仮定複文には対応関係があることが分かった。本節では、仮定複文を明示 する要素である、仮定関係を表す接続表現に関する研究をまとめてみる。

2.2.1 日本語の仮定表現に関する先行研究

日本語の仮定表現についての研究はほぼ「条件表現」の研究に含まれており、国語学 の言い方、すなわち、「順接・仮定的条件」として扱われるのが一般的である。以下、

条件表現にも目を配りつつ、「仮定関係を表す接続表現」を中心に先行研究を概観する。

日本語条件表現研究の歴史を繙くと、日本の伝統的国文法における条件表現の研究の中 心は1900年代頃(山田文法)から、語論(品詞論)そして句論(構文論)へと展開さ れたようである。その後、阪倉(1958)などを経て、条件表現の研究は次第に体系化 する。現代語を対象とする条件文に関する初めてのまとまった研究は国立国語研究所

(1951,1964)である。それは「ば」「たら」「なら」「と」という四者の意味的特徴に ついて詳しく記述したものである。それ以降、森田(1967)は日本語教育の立場から 四つの形式の特徴を分析し、2000 年に入ってからは各接続助詞の用法の比較が議論の 中心となったように見受けられる。ここでは、本研究の研究対象に関する代表的な先行

(32)

19 論文をいくつかまとめる。

国立国語研究所(1964)

国立国語研究所(以下、国研と略す)(1964)は、現代語を対象とする条件表現に関 する初めてのまとまった研究であり、その分析結果や考察はそれ以降の各接続形式の特 徴と使い分けの解明を目指す研究者の指針となったものである。まず、国研(1964) は「と」「たら」「ば」が持つ共通の用法を次の3点にまとめている。

1.陳述的条件

直後に「いい」「いけない」「だめだ」など評価をあらわす語がつづいて、全体 として一つの述語に近い表現をつくっているもの

2.前おき

a. 題目の提示

b. 発言内容についての注釈 c. 表現形式についての注釈 d. 根拠

3.客観的条件

国研(1964:149-153)

この3点を紹介した後、最も条件らしい用法「3.客観的条件」について、前後節 の結び付きにおける一般・個別の違い、既定・仮定の違い、前件・後件の「時間」関 係の違いの観点から分析した上で、「ば」「と」「たら」を以下のように特徴づけてい る。

「ば」は条件を示す(すなわち、そのうらに「~でなければ後件はおこらない」

ことをふくむ)。

「と」は客観的な継起を示す。

「たら」は個別的・その都度的な状況を示す。

国研(1964:158)

(33)

20

このような「ば」「と」「たら」三者を比較しつつ論述するのと異なり、「なら」につ いての議論は「なら」自体の持つ、前接の活用語により分類された形式の比較が中心と なっている。具体的には以下の3つにわかれる。

1.現在形につくもの 2.過去形につくもの 3.「~う」につくもの

国研(1964:158)

このうち、3.はやや古い文体に属するものであるため、特に 1.と 2.の相違につ いて説明されている。「「~たなら」が前件の完了を条件とし、後件は前件よりも時間的 にあとのばあいにもちいられるのに対して、「~るなら」はかならずしもそうでない、

ということである。」(国研1964:158)と指摘している。しかし、「たら」と「なら」

の関連性やお互いの関係についてはまったく言及されていない。それは、「ば」「と」「た ら」を一つのグループ、「なら」を別のグループとして扱っているためだろう。

山口(1969)

国研のまとめにつづき、山口(1969)は従来の研究成果を踏まえ、各形式の特徴を 詳しく分析している。特に、山口は「たら」と「なら」を一つのグループとして扱い、

それらは「と」と「ば」より個別的で仮定性が強いと特徴づけている。その理由は「ば」

と「と」の以下のような特徴に因る。

「ば」:恒常条件・一般条件などと呼ばれる表現にみられるような、条件の一般的 非個別的傾向が強い。

「と」:単なる時間的関係から帰結に先行しているにすぎない。

すなわち、「ば」の非個別的性質、「と」の主たる用法「時間的関係」により、「ば」

「と」ともに「仮定性が弱い」としている。

さらに「たら」と「なら」の共通性を抽出した上で、両者の相違点をまとめている。

「たら」の特別な点は仮定用法を表す以外に、完了を示す「た」による完了的意味を備

(34)

21

える確定用法にあるとしている。また、「なら」の特徴については、断定助動詞「だ」

との関係から「なら」は他の形式より直接に判断する意味が強いと述べている。これは

「たら」「なら」の語源に関わることが窺えよう。まとめてみると、次の通りである。

「たら」:事象そのものに即した仮定

「なら」:判断に即した仮定

益岡の一連(1993,2013,2014)の階層レベルでの「と」「ば」「たら」「なら」の 判断は、この山口の4形式の特徴づけに起因するものである。これは、本研究が山口の 4形式の区分を参考にし、「たら」と「なら」を研究対象とした所以である。

益岡(1993,2013,2014)

三上(1953)をはじめ、文の階層性も次第に注目されてきた。益岡(1993)は、こ の文の成立には階層的な構造が関係するという観点から条件文への投影を示した。また、

「~ば」形式は「~れば」、「~たら(ば)」、「~なら(ば)」という分化した形式を有す るとし、この三つを研究対象とした。

「~れば」形式―――――「命名レベル」

「~たら(ば)」形式――「現象レベル」

「~なら(ば)」形式――「判断レベル」

益岡(1993)によれば、「~れば」形式と「~たら(ば)」形式は命題レベルの表現 であり、「~なら(ば)」形式はモダリティレベルの表現である点で、両者は大きく異な ると見なしている。またこれと並行して、「仮定条件」の各形式の用法に関する分析も 行われている。

以上のように、日本語の「条件表現」「仮定表現」の研究は長い歴史、蓄積を有する が、4つの形式の用法は互いに交錯しており、体系化しにくい。

2.2.2 中国語の仮定表現に関する先行研究

(35)

22

中国語の仮定複文の研究も日本語のそれと大体同じ時期に展開されている。1924 年 の黎の「仮定複文」の定義をめぐる論争をはじめ、その後「条件」「仮定」「因果」の境 界についての議論が続く。1980 年代になると、接続を表す表現の研究が多くなってく る。例えば、“如果”“要是”“就”などが帰属する品詞類や、“如果……,就……”“如 果……,那么……”構文形式についての研究が現れた。しかし、日本語の「条件表現」

への研究成果に比べてかなり少ないようである。なぜなら、この方面の論文はある程度 存在するが、専門的著書はわずかしか出されていないからである。以下、これらの先行 研究を概観する。

邢(2001)

中国語には接続助詞や用言の活用形もないため、一見、日本語同様に分けられそうだ が、邢(2001)は複文を示す接続表現には大まかに 4 つの表現類型があると指摘して いる。

1.句间连词。它们通常连接分句, 不充当句子成分。如“因为、所以、虽然、但是、

不但、而且”等等。

2.关联副词。它们一般既起关联作用,又在句子里充当状语。如“就、又、也、还”

等。

3.助词“的话”18。这是一个表示假设语气的助词,总是用在假设分句末尾,标明 分句与分句之间具有假设和结果的关系。

4.超词形式。它们本身已不是一个词。如“如果说、若不是、不但不、总而言之”

等等19

邢(2001:28-29)

拙訳:

1.文内接続詞。文節を繋ぐ役割を果たし、文成分にならない。例えば、“因為、所

18 “的话”の「品詞類」の詳細については第6章を参照。

19 中国語の複文の接続形式は複雑かつ多様であることが、本研究では「接続表現」という統一 的な言い方を使用した理由の一つである。

(36)

23 為、雖然、但是、不但、而且”20等。

2.文接続の副詞。文節を繋ぐ役割を果たしつつ、文の連用修飾語21になる。例え ば、“就、又、也、還”22等。

3.助詞“的話”。これは仮説的語気を表す助詞であり、前節の末尾に置かれ、前件 と後件に仮定と結果の関係があることを表明する。

4.語彙レベルを超えた複合辞。これら自体はすでに一つの語ではない。例えば、

“如果说(といえば)、若不是(でなければ)、不但不(でないばかりか)、总而 言之(総じていえば)”など。

邢はこの類型を示した上で、仮定関係を示す代表的な標識従属節は“如果”であり、

それは主節の“就”と常に呼応して使用されると述べている。“如果……就……”は“如 果……那么就……”と言うこともできる。

邢以外にも、2000年以降の仮定複文の研究では、ほかの助詞(例えば“的話”)など の非仮定表現から仮定用法への推移に関する研究も現れている。しかし、それは日本語 のようにそれぞれの形式に対応する用法があるというわけではなく、逆にどのような形 式が仮定関係を表せるかといった点に着目する傾向がある。そして、接続詞と副詞の組 み合わせの可能性も研究の対象となっている。例えば、王(2010)では言語類型論的 観点から“的话,么,着”などの助詞が仮定複文に使えるようになる過程と動機づけが 論じられている。張(2008)は“假定”と“假设”の違いを詳しく考察し、両者とも に仮定関係を表せるとは言え、実際には別々の意味から転化してきたものと結論づけて いる。

2.2.3 日本語・中国語の仮定表現の対照研究

仮定複文や仮定関係を表す表現の日中対照研究は言語ごとの研究よりも数が少ない。

またそれらは、主に接続表現の対照に焦点が当てられているため、それぞれを合わせて

20 「因為、所為」は因果関係を示す接続詞、「雖然、但是」は逆接関係を示す接続詞、「不但、

而且」は累加関係を示す接続詞である。それぞれ単独に使用することもできるし、1セットとし て使用されることもある。

21 この副詞類は日本語複文を分類するときの基準に似ている。日本語の仮定節は副詞節あるい は連用修飾節の下位分類の一つとされるからである。

22 それぞれ日本語の「すぐに、また、も、まだ」の意味に近い。

(37)

24

みていくことにする。日本語と中国語の仮定関係を表す接続表現の対照分野においては、

両言語の対応する表現に注目するものがその中心となる。

鈴木(1990)

現代中国語について、「関連詞が用いられていないもの、用いられているもの、その ほかの要素を含むもの」によって、条件文を大きく分けることを提示している。それら の相互関係は、必ずしも日本語の「ば」「たら」「なら」「と」が負っているような明確 なものではなく、文脈によって、その使い分けがなされていることが示されたが、具体 的に日本語のどの形式が中国語のどの形式に対応するかは説明されていない。

小川(2001)

『雪国』と『駱駝祥子』の日中二つの小説とその訳本を対照しながら、仮定関係を表 す「たら」の三種類の用法、現実化以前の事態を表わす用法、仮定的事態を表わす用法、

反事実的条件を表わす用法、それぞれの用法が中国語でどのように訳されるかを考察対 象としている。

表2-5 「たら」の各用法に対応する中国語表現(小川(2001))

用 法 中国語訳

仮定条件の用法

現実化以前の事態を表すもの “等……了”

“……了……以后”

“……以后” “……后”

“……了” “……就”

“……了……就”

仮定的事態を表すもの “要是……就……”

“如果……就……”

“要是……” “假若……”

“假若……那就……”

“要是……就……”

反事実的条件を表すもの

参照

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