早期治療によって被蓋改善を行った下突咬合者(反対咬合者)
の転帰
A longitudinal study in the early treatment of protruding lower bites.
有松 稔晃 ARIMATSU Toshiaki
福岡県 北九州市 ありまつ矯正歯科医院
キーワード:早期治療,下突咬合(反対咬合),側方X線規格写真,下顎頭の位置,下顎角,下顎骨長
Ⅰ.はじめに
乳歯列あるいは,混合歯列の下突咬合者(反対咬合 者)に対して,早期に被蓋改善を行った場合の転帰に 関して,私たち矯正専門医は経験上,被蓋を維持する 症例,被蓋を維持するものの叢生等の不正咬合が生じ る症例,そして再度下突咬合を呈する症例に遭遇す る.この際に被蓋を維持する症例と再下突を示す症例 を分つものは,下顎骨の過成長による結果と一般的に は見做されているが,与五沢は下突咬合の成り立ちに 関して,むしろ大きさよりも脳頭蓋に対する下顎骨の 付着位置による影響が大きいと述べている1).それを 受けて,妹尾は,混合歯列期に早期治療を行った下突 咬合
2
症例のうち,被蓋を保った症例と,再下突に復 した症例に関して,側方X
線規格写真トレース分析 にて比較を行い,両者の差異として,再下突者は,脳 頭蓋に対する下顎頭の位置における前方位,下顎骨形 態の特徴としての下顎角の開大,下顎枝の前方への傾 斜の三点をあげている2).そこで,今回,当院を受診した下突咬合者のうち,
乳歯列期あるいは混合歯列期において早期治療(第一 期治療)による被蓋改善を行った症例のうち,被蓋を 維持した症例群(被蓋維持群)と再度逆被蓋を呈した 症例群(再下突群)を下記の目的のために,従来の角 度計測に加えて,下顎骨の大きさ,下顎角,そして下 顎頭の位置を検討項目に加えて調査を行った.
1
当院における下突咬合者への第一期治療において,変化させることが出来た箇所と変化させること が出来なかった箇所の確認.
2
第一期治療後に被蓋を維持した症例群と再度下突 咬合に復した症例群の側方X
線規格写真トレース 分析による精査.3
2から翻って,初診時において,その特徴を何処 まで読み解く事ができるかを検討.Ⅱ.調査について
1.調査対象
ありまつ矯正歯科医院に,1999年
3
月から2010
年12
月に来院した,乳歯列期または混合歯列期におけ る下突咬合者のうち,永久歯列完成前に前歯部の被蓋 改善(第一期治療)を行った患者を調査対象とした.なお,下突咬合の定義に関しては,上顎左右側中切歯 歯冠部が下顎前歯部に対して唇舌的に舌側に位置する 交叉咬合症例とした.また,口唇裂口蓋裂患者は,先 天的な唇顎裂や,後天的な口蓋形成術等の影響が前歯 部交叉咬合成立に関与している可能性があるために除 外した.第一期治療終了後は,上顎歯列に可撤式の保 定装置(Begg typeリテーナー)あるいは固定式の保 定装置(リンガルアーチ)を装着して,定期的に側方
X
線規格写真を撮影し,成長発育に留意した観察を 行った.該当期間に第一期治療を行い被蓋改善を行った患者 数は
53
名であった.但しそのうち12
名が,その転帰を見届けること無く,来院が途切れた.従って,来院 が途切れた
12
名と現在経過観察中(成長発育中のた め評価不能)の9
名を除いた32
名について,検討を 加えた.また,保定中に前歯部の被蓋を維持した症例を被蓋 維持群とした.一方,上顎左右側中切歯歯冠部が左右 ともに下顎前歯部と切端または交叉咬合を呈した症例 を再下突群とした.
2.調査方法
初診時と第一期治療終了時ならび第二期治療開始前 に撮影した側方
X
線規格写真のトレースを行い,下 記の箇所について測定を行った.第二期治療開始前と は,経年的な観察を行い,側方X
線規格写真トレー ス重ね合わせによって,ほぼ下顎骨の前方成長が終了 した時点であり,歯列と咬合に問題のない症例にとっ ては,動的治療終了時となる.なお,被蓋維持群のう ち,叢生等の歯列に問題が生じた症例に関しては,完 全に成長発育が終了する前に,それまでの経過から判 断して治療を開始したものもあるが,いずれの症例に 関しても治療後に再下突を示した症例はなかった.加 えて,再下突群においては,調査期間における最終資 料を持って,第二期治療開始前としたところから,完 全に成長発育を終了していない症例も存在する.3.側方
X
線規格写真トレース分析項目1)計測点と基準線(図 1,図 2)
S:Sella N:Nasion Or:Orbitale
R:下顎頭の最後縁と Or-R
平面との交点O:S
からOr-R
平面への垂線の交点A:Point A
B:Point B Pog:Pogonion
SN Plane:S
と Nを結んだ線Or-R Plane:下顎頭の上縁と Orbitale
を結んだ線Mand.Plane: Mandibular plane.
下顎骨オトガイ部の正中断面像の最下点(Menton)か ら下顎下縁へ引いた接線
Ramus Plane:
頭蓋底下縁の陰影像が下顎枝後縁と交わる点(Articulare)から下顎枝 後縁へ引いた接線
2)計測項目(図 3,図 4)
overjet
(mm)overbite
(mm)UISN IMPA ANB SNA SNB
下顎骨長: Mand Planeからの垂線が
Or-R Plane
とPog
に接する点を結んだ直線距離Go angle:
下顎角.Mand PlaneとRamus Plane
のなす角 度.R-O: Or-R Plane
上におけるR-O
間の直線距離 上記の項目を計測し,平均値並びに最小値と最大値を 求めた.Ⅲ 調査結果
1.初診時の状態
女性 20名 平均年齢
7
歳6
か月男性 12名 平均年齢
8
歳6
か月(表1)
2.治療方法と治療開始時期について
1)乳歯列期に第一期治療を行った症例:4
名使用装置:ムーシールド 4名
うち,3名効果なし,1名切端咬合へ移行.4名 ともに永久前歯萌出後にあらためて被蓋改善を 行う.
2)混合歯列期に治療を行った症例:32
名使用装置:
エッジワイズ装置+Ⅲ級ゴム
26
名 エッジワイズ装置+Ⅲ級ゴム+F.K.O. 1
名 エッジワイズ装置+Ⅲ級ゴム+上顎補助弾線付き
Lingual Arch 2
名F.K.O.
2
名上顎前方牽引装置
1
名エッジワイズ装置とは,上下四前歯部に
0.018"
×
0.025"
スロットのスタンダードエッジワイズ ブラケットを上下左右側第一大臼歯にバッカル チ ュ ー ブ つ き バ ン ド を 装 着 し,0.012", 0.014",0.016" SS
ラウンドワイヤーにてレベリングを行 うと同時に,上顎第一大臼歯フックから下顎側切歯遠心に組み込んだループにかけて,一日
12
時 間から24
時間のⅢ級ゴム使用を指示した.(図5)また上顎前方牽引装置は上顎口腔内に固定式
装置を装着しチンキャップに組み込んだフックか らゴムによる牽引を行った.使用時間は終日の使 用を指示.F.K.Oは夜間就寝時を中心に使用を指 示した.3.混合歯列期における第一期治療の平均治療期間 女性 12.2か月(2〜
31
か月)男性 11.8か月(5〜
22
か月)図1 計測点
図3 計測角度
図2 基準線
図4 距離計測
図5 エッジワイズ装置+Ⅲ級ゴム(池ら3)改変)
人数平均年齢構成咬合者overjetoverbiteUISNIMPAANBSNASNB下顎骨長Go angleR-O 女性20名7.6歳(3〜10歳)5名-1.6mm(-3〜−1mm)1.4mm(-1〜4mm)102.1°(86〜117°)95.6°(82〜102°)1.0°(-2〜5°)78.9°(74〜85°)77.9°(72〜86°)108.6mm(102〜120mm)125.8°(115〜136°)14.3mm(5〜18mm) 男性12名8.6歳(8〜11歳)5名-2.5mm(-6〜−1mm)2.2mm(1〜4mm)105.1°(87〜116°)89.7°(83〜104°)-1.8°(-7〜3°)79.1°(71〜90°)80.1°(77〜89°)111.7mm(98〜118mm)127.4°(115〜136°)15.1mm(12〜18mm) 人数治療期間overjetoverbiteUISNIMPAANBSNASNB下顎骨長Go angleR-O エッジワイ ズ装置 女性17名12.2か月 (8〜19か月)
初診時-1.5mm(-3〜-1mm)1.3mm(-1〜4mm)101.1°(86〜117°)95.5°(82〜102°)1.2°(-2〜5°)78.9°(74〜85°)77.6°(72〜86°)109.0mm(102〜120mm)124.9°(115〜136°)14.5mm(12〜17mm) 変化量4.1mm(3〜7mm)1.1mm(-1〜3mm)6.5°(1〜19°)-6.9°(-18〜0°)0.6°(-2〜4°)0.4°(-2〜4°)-0.1°(-2〜2°)4.7mm(0〜14mm)-0.8°(-3〜2°)0.8mm(0〜3mm) 第一期治療後2.6mm(2〜4mm)2.4mm(2〜4mm)107.6°(87〜119°)88.6°(79〜96°)1.8°(-1〜5°)79.3°(73〜86°)77.5°(70〜85°)113.7mm(104〜124mm)124.1°(115〜134°)15.3mm(12〜18mm) 男性12名11.8か月 (5〜22か月)
初診時-2.5mm(-6〜-1mm)2.2mm(-6〜-1mm)105.1
°(87〜116°)89.7.
°(°°°83〜104°)-1.8°(-7〜3°)79.1°(74〜85)80.8°(77〜89)111.7mm(98〜118mm)127.3(115〜136°)15.1mm(12〜18mm) °°°(°変化量4.9mm(2〜10mm)0.1mm(-2〜2mm)10.5°(0°〜36)-7.7°(-21〜0°)0.9-5°〜2°)0.6(-1°〜4°)-0.2°(-3°〜3°)5.0mm(2〜12mm)-1.5°(-9〜1°)1.1mm(0mm〜3mm) 第一期治療後2.4mm(1〜4mm)2.3mm(1〜4mm)115.6°(108°〜123°)82.0.°(65°〜102°)-0.9°(-5°〜2°)79.7°(71°〜90°)80.6°(75°〜89°)116.7mm(104〜125mm)125.8°(115〜136°)16.2mm(12mm〜20mm) 3.0か月F.K.O女性2名 (2〜4か月)
初診時-2mm(-2mm)2.0mm(2mm)107.0°(105〜109°)99.0°(98〜100°)0.0°(-2〜2°)79.0°(77〜81°)79.0°(79°)105.5mm(105〜106mm)129.0°(125〜133°)17.0mm(16〜18mm) 変化量4.5mm(4〜5mm)0.0mm(0mm)3.0°(2〜4°)-6.0°(-11〜-1°)1.0°(1.0°)0.0°(0°)-1.0°(-1°)0.5mm(0〜1mm)0.0°(0°)0.0mm(0mm) 第一期治療後2.5mm(2〜3mm)2.0mm(2〜3mm)110.0°(109〜111°)93.0°(89〜97°)1.0°(-1〜3°)79.0°(77〜81°)78.0°(79°)106.0mm(105〜107mm)129.0°(125〜133°)17.0mm(16〜18mm) 上顎前方牽 引装置女性1名31か月初診時-3.0mm1.0mm107.0°90.0°-1.0°79.0°80.0°106.0mm135.0°5.0mm 変化量4.0mm0.0mm3.0°-1.0°6.0°4.0°-2.0°7.0mm2.0°1.0mm 第一期治療後1.0mm1.0mm110.0°89.0°5.0°83.0°78.0°113.0mm137.0°6.0mm
表1 初診時の状態 表2 第一期治療による装置別の変化
4.第一期治療の治療期間のうち,側切歯未萌出時に 左右中切歯にエッジワイズ装置を装着し,被蓋改善 後,側切歯萌出までの待機期間
4.8
か月(2〜12
か月)5.第一期治療による装置別の変化(表
2)
6.第二期治療開始前資料採得時の平均年齢 女性 12.6か月 (10〜
16
歳)男性 15.8か月 (12〜
18
歳)7.第一期治療によって被蓋改善を行った
32
症例の 転帰(表3)
再下突群 (切端咬合
overjet
=0
を含む)17
名 女性8
名 男性9
名 被蓋維持群15
名 女性12
名 男性3
名要治療群
(左右中切歯は被蓋を保つが叢生等のため治療 が必要と判断した症例)
9
名 女性7
名 男性2
名 治療不要群6
名 女性5
名 男性1
名8.第一期治療によって被蓋改善を行った
32
症例の 男女別転帰(表4)
女性 20名 再下突群 8名 被蓋維持群 12名
うち要治療群 7名 治療不要群 5名 男性 12名
再下突群 9名 被蓋維持群 3名
うち要治療群 2名 治療不要群
1
名表3 第一期治療によって被蓋改善を行った
32
症例の転帰表4 第一期治療によって被蓋改善を行った
32
症例の男女別転帰28% 53%
19% 再下突群
要治療群 治療不要群
再下突群 要治療群 治療不要群 40%
35%
25%
女性
再下突群 要治療群 治療不要群 男性
75%
17%
8%
9.第一期治療後に再度下突咬合を示した症例への対 応(表
5)
10.第一期治療後に被蓋は維持したものの,要治療
と判断した症例への対応(表6)
11.初診時に構成咬合をとることができた症例の転
帰(表7)
12.第一期治療として乳歯列期に治療を開始した症
例の転帰(表8)
13.第一期治療として上顎前方牽引装置を使用した
症例の転帰(表9)
14.
初診時から第一期治療を経て第二期治療前に至る 被蓋維持群と再下突群別変化(表10)
年齢 咬合状態 第二期治療治療方針
1
女性
10 下突咬合+上顎犬歯低位唇側転位 非外科/上下顎左右側第一小臼歯抜歯
2 11 下突咬合+開咬合 外科予定
3 15 下突咬合+側方開咬合 非外科 /上下顎左右側第一小臼歯抜歯
4 13 切端咬合 非外科/ 治療を望まなかった
5 13 下突咬合+偏位咬合 外科予定
6 15 下突咬合+上顎犬歯低位唇側転位 外科
7 16 下突咬合 外科
8 15 切端咬合+偏位咬合 治療を望まなかった
9
男性
18 下突咬合+上顎犬歯低位唇側転位 外科
10 18 下突咬合+偏位咬合 外科
11 17 下突咬合+偏位咬合 外科
12 17 下突咬合(中切歯切端)+偏位咬合 外科予定
13 15 下突咬合+開咬合 外科
14 17 下突咬合+開咬合+偏位咬合 外科予定/ 治療を望まなかった 15 18 下突咬合(中切歯切端) 外科予定/ 治療を望まなかった 16 15 下突咬合+偏位咬合+上下叢生歯列 外科予定
17 13 下突咬合 外科予定
年齢 咬合状態 第二期治療治療方針
1 女性
11 上顎犬歯低位唇側転位 非抜歯
2 10 上顎犬歯低位唇側転位+下顎前歯部叢生 上下顎左右側第一小臼歯抜歯 3 12 上顎犬歯低位唇側転位+下顎前歯部叢生 上下顎左右側第一小臼歯抜歯
4 10 上顎犬歯低位唇側転位 上下顎左右側第一小臼歯抜歯
5 11 下顎左右側切歯欠損による空隙歯列 上顎左右側第一小臼歯抜歯 6 12 偏位咬合+上顎前歯部叢生歯列 治療せず
7 12 空隙歯列+側切歯交叉咬合 非抜歯
8 男性 12 上顎犬歯低位唇側転位 非抜歯
9 14 下顎前歯部叢生歯列 治療せず
初診時年齢 F.K.0. 第二期時年齢 咬合状態 第二期治療治療方針 1
女性
7 12 正常咬合
2 6 ○ 11 正常咬合
3 9 ○ 11 下顎左右側切歯欠損による空隙歯列 上顎左右側第一小臼歯抜歯
4 8 12 偏位咬合+上顎前歯部叢生歯列 治療せず
5 8 12 空隙歯列+側切歯交叉咬合 非外科/非抜歯
6 男性
9 15 正常咬合
7 9 14 下顎前歯部叢生歯列 治療せず
8 11 18 下突咬合(中切歯切端) 外科的骨切り術予定/ 治療を望まなかった 9 9 15 下突咬合+偏位咬合+上下叢生歯列 外科的骨切り術予定
10 9 13 下突咬合 外科的骨切り術予定
表5 第一期治療後に再度下突咬合を示した症例への対応
表6 第一期治療後に被蓋は維持したものの,要治療と判断した症例への対応
表7 初診時に構成咬合をとることができた症例の転帰
Ⅳ.考察
1.第一期治療に関して
当院における歯科矯正治療における目標は,永久歯 列期において,整然とした歯並びと一歯対二歯の緊密 な咬合,閉唇時の安寧な口唇状態を獲得することであ り,通常矯正治療は,永久歯列完成を待って開始す る.その中で,第一期治療を行う場合は,下記の場合 に限定される.
① 永久歯列での治療(第二期治療)が不要になる場 合や治療が簡単になる場合
② 治療しないと歯や歯周組織に悪影響があると考え られる場合
③ 咬合上の機能的な観点から早期の改善が必要な場 合
④ 患者やその保護者の心理的救済が必要な場合
従って永久歯列完成までに時間的猶予がある,混合 歯列期における下突咬合の患者には,上記の条件に照 らし合わせ,将来の再下突の可能性も含めて説明を行 い,保護者にも同意の上で,第一期治療として被蓋改 善を行っている.
2.第一期治療における評価
1)来院中断群に関して(表 11)
当院では,被蓋改善後に
4
〜6
か月の間隔で保定観察を行っているが,今回第一期治療として被蓋改善を 行った
53
名の下突咬合者のうち,12名がその転帰を 見届けること無く,保定期間中に来院が途切れた.ハ ガキや電話で受診を促すが,来院は叶わず,確認でき た来院できない主な理由として「塾やクラブ活動によ る多忙」が挙げられた.最終来院時の咬合を口腔内写 真から確認すると,1名が切端咬合を呈していたが,それ以外の
11
名は正被蓋を保っていることから,咬 合に問題なしとの認識のもと,定期の保定観察受診が 負担となり,上記の理由と相まって,来院が中断した ものと思われる.来院中断時の平均年齢も,中学入学 時期と前後している.前歯部被蓋の状態は一般の方で も簡単に視認出来る事から,再び下突を呈した場合は 再度受診される可能性もあるが,再下突者の第二期治 療を行う場合,下顎骨の成長が終了していることが前 提である.定期の側方X
線規格写真撮影を行ってい ない患者に対しては,年齢によっては成長発育終了の 確認のため,再受診から一定の期間を必要とする場合 も考えられることから,患者とその保護者に対して,定期検査の意義について,十分な説明を行い,特に中 学入学前後には,相互の状況理解のもと,定期の受診 率を上げるべく努力したい.
2)第一期治療に関して(表 2)
32
名すべてにおいて被蓋を改善したが,そのうち29
名において,エッジワイズ装置とⅢ級ゴムによる 治療を行った.治 療 に お け る 変 化 の う ち, 歯 性 の 変 化 と し て
U1SN: 女 性 6.5°(1.0°
〜19.0°), 男 性 10.5°(0.0°
〜初診時年齢 第二期時年齢 咬合状態 第二期治療治療方針 1
女性
3 12 正常咬合
2 4 10 上顎犬歯低位唇側転位+下顎前歯部叢生 上下顎左右側第一小臼歯抜歯
3 4 11 下突咬合+開咬合 外科的骨切り術予定
8 男性 7 17 下突咬合+偏位咬合 外科的骨切り術
初診時年齢 第一期治療期間 第二期時年齢 咬合状態 第二期治療治療方針
1 女性 7 31か月 16 下突咬合 上下顎左右第一小臼歯抜歯+外科的骨切り術
表8 第一期治療として乳歯列期に治療を開始した症例の転帰
表9 一期治療として上顎前方牽引装置を使用した症例の転帰
女性 年齢overjetoverbiteUISNIMPAANBSNASNB下顎骨長Go angleR-O 被蓋維持群
初診時7.3歳(3〜9歳)-1.7mm(-3〜-1mm)1.8mm(1〜4mm)101.6°(86〜117°)95.7.
°(82°〜102°)1.1°(−2〜5°)79.1°(75〜84°)78.1°(70〜86°)107.9mm(102〜115mm)125.6
°(118〜136°)15.4mm(12〜18mm) °(°°(°(第一期治療による変化量4.5mm(3〜7mm)0.8mm(-1〜2mm)7.10〜19)-5.7°(-14〜0°)0.2−2〜4°)0.2−2〜3°)-0.4°(−2〜1°)4.1mm(0〜11mm)-0.8°(-3〜2°)0.8mm(0〜3mm) °(°(8°°(°°°(1第一期治療後8.2歳(4〜10歳)2.8mm(2〜4mm)2.6mm(2〜4mm)108.787〜119°)90.0.0°〜97)1.3−1〜4°)79.3°(74〜84)77.7°(70〜86)112.0mm(105〜121mm)124.816〜133°)16.2mm(12〜18mm) °(°°°°(°(第一期治療後の変化量-0.9mm(-3〜1mm)-0.6mm(-2〜0mm)1.5-10〜10)0.9(-7〜12)-0.5°(-2〜2°)0.8-1〜2°)1.2-1〜4°)11,0mm(5〜19mm)-1.5°(-6〜0°)2.0mm(1〜3mm) 第二期治療時12.0歳(10〜16歳)1.9.mm(1〜3mm)2.0mm(1〜3mm)110.2°(93°〜116°)90.9.°(80°〜100°)0.8°(-2〜5°)80.1°(74〜85°)79.3°(71°〜86°)123.0mm(112〜137mm)123.3°(116〜133°)18.2mm(15〜20mm) 初診からの変化量3.6mm(2〜5mm)0.2mm(-3〜1mm)8.6°(-1〜24°)-4.8°(-12〜2°)-0.3°(-4〜4°)1.0°(-2〜4°)1.6°(-1〜4°)15.1mm(7mm〜27mm)-2.3°(-9°〜0°)2.8mm(1mm〜4mm) 再下突群
初診時8.0歳(6〜10か月)-1.5mm(-3〜-1mm)0.7mm(-1〜2mm)103.2
°(°96〜108°)95.4.
°(88°〜102°)0.9
°(°°−1〜5°)78.5°(73〜85)77.6°(73〜85)109.5mm(102〜120mm)126.0
°(115〜135°)12.6mm(5〜17mm) °(°(°(第一期治療による変化量3.6mm(3〜5mm)1.3mm(-1〜3mm)3.898〜117°)-7.8°(-18〜0°)1.90〜6°)1.3−2〜4°)-0.6°(−2〜2°)4.8mm(1〜8mm)-0.1°(-2〜2°)0.8mm(0〜3mm) °°(°°°(1第一期治療後8.2歳(4〜10歳)2.1mm(1〜4mm)2.0mm(1〜3mm)107.0(87〜119°)87.6°(79〜93)2.80〜5°)79.8°(74〜86)77.0°(71〜85)114.3mm(104〜124mm)125.915〜137°)13.4mm(6〜17mm) 第一期治療後の変化量-3.1mm(-5〜-2mm)-2.5mm(-5〜-1mm)2.8°(-3〜9°)3.2°(-9〜19°)-3.3°(−7〜1°)0.3°(-1〜2°)3.6°(1〜7°)11,3mm(5〜21mm)-1.3°(-9〜1°)1.0mm(0〜3mm) 第二期治療時13.6歳(10〜16歳)-1.0mm(-3〜0mm)-0.5mm(-2〜1mm)110.6°(100°〜117°)90.8.°(80°〜103°)-0.5°(−3〜3°)80.1°(75〜87°)80.6°(74°〜88°)125.6mm(111〜138mm)124.6°(116〜137°)14.4mm(6〜18mm) °(°°(°(初診からの変化量0.5mm(0〜2mm)-1.2mm(-2〜0mm)7.30〜13)-4.6°(-13〜3°)-1.4°(−4〜1°)1.60〜4°)3.00〜6°)16.1mm(6〜28mm)-1.4°(-9〜2°)1.8mm(0〜4mm) 男性
年齢overjetoverbiteUISNIMPAANBSNASNB下顎骨長Go angleOr-R 被蓋w維持群
初診時8.7歳(8〜9歳)-4.0mm(-6〜-3mm)4.0mm(3〜5mm)100.0°(91〜105°)93.7°(84°〜104°)-2.7°(-7〜0°)76.0°(71〜79°)78.7°(78°〜80°)113.0mm(110〜115mm)118.3
°(115°〜122°)16.3mm(15〜18mm) 第一期治療による変化量7.3mm(5〜10mm)-0.7mm(-2〜1mm)14.7°(7〜23°)-5.4°(-7〜-2°)2.0°(1〜2°)1.6°(0〜4°)-0.4°(-2〜1°)4.3mm(2〜9mm)-1.0°(-3〜0°)1.0mm(0〜2mm) 第一期治療後9.6歳(9〜10歳)3.3mm(2〜4mm)3.3mm(2〜4mm)114.7°(112°〜118°)88.3°(77°〜102°)-0.7°(-4〜1°)77.6°(71〜82°)78.3°(75°〜81°)117.3mm(112〜123mm)117.3°(115°〜122°)17.3mm(16〜20mm) °°(°(第一期治療後の変化量-1.0mm(-2〜0mm)-1.0mm(-2〜0mm)-3.7°(-8〜-1°)2.4(-1〜8°)-0.3°(-1〜0°)1.70〜4°)2.01〜4°)13.0mm(4〜18mm)-0.6°(-4〜3°)2.7mm(0〜4mm) °(°°°°°(1°第二期治療時13.7歳(12〜15歳)2.3mm(2〜3mm)2.3mm(2〜3mm)111.0110°〜112°)90.7°(76〜102°)-1.0°(-4〜1°)79.3°(72〜84)80.3°(76〜83)130.3mm(127〜135mm)116.714〜118°)20.0mm(20mm) °°(°(°(初診からの変化量6.3mm(5〜8mm)-1.7mm(-2〜0mm)11.0°(6〜21)-3.0°(-8〜1°)1.70〜2°)3.30〜5°)1.6-2〜4°)17.3mm(13〜20mm)-1.6°(-4〜0°)3.7mm(2〜5mm) 再下突群
初診時9.6歳(9〜11歳)-2.0mm(-5〜-1mm)1.8mm(1〜3mm)106.8°(87°〜116°)88.3°(83°〜101°)-1.4°(-4〜3°)80.1°(73〜90°)81.5°(77°〜89°)111.2mm(98〜118mm)129.9
°(120°〜136°)14.7mm(12〜18mm) 第一期治療による変化量4.1mm(2〜7mm)0.1mm(-1〜2mm)8.7°(0〜36°)-8.4°(-21〜-0°)0.4°(-1〜2°)0.2°(−1〜2°)-0.2°(-1〜1°)5.2mm(2〜11mm)-1.6°(-9〜1°)1.1mm(0〜3mm) °(°°°°°°(1°第一期治療後10.6歳(10〜12歳)2.1mm(1〜3mm)1.9mm(1〜3mm)115.5108°〜123°)79.9°(65〜89)-1.0°(-5〜2°)80.3°(72〜90)81.3°(77〜89)116.4mm(104〜125mm)128.319〜136°)15.8mm(12〜21mm) °(°°°°(-°(第一期治療後の変化量-4.2mm(-7〜-1mm)-2.8mm(-5〜-1mm)0.1-13〜12)2.9(-8〜21)-.3.0°(-6〜0°)1.21〜4°)4.41〜7°)19.1mm(5〜30mm)-1.5°(-5〜1°)1.4mm(0〜4mm) °(°°°°°°(1°第二期治療時16.4歳(13〜18ヶ歳)-2.1mm(-5〜0mm)-0.9mm(-3〜1mm)115.6108°〜122°)82.8°(72〜90)-4.0°(-7〜-1°)81.5°(73〜90)85.7°(78〜91)135.6mm(116〜148mm)126.815〜135°)17.2mm(12〜21mm) 初診からの変化量-0.1mm(-3〜3mm)-2.7mm(-6〜0mm)8.8°(-2〜23°)-5.5°(-13〜4°)-.2.6°(-7〜-0°)1.4°(0〜4°)4.2°(0〜7°)24..3mm(12〜33mm)-3.1°(-9〜2°)2.5mm(0〜5mm)
表10 初診時から第一期治療を経て第二期治療前に至る被蓋維持群と再下突群別変化
36.0°).IMPA: 女 性 -6.9°(-18.0°
〜0.0°). 男 性 -7.7°
(-21.0°〜
0.0°)の変化がそれぞれ認められた.一方,
顎 関 係 の 変 化 に つ い て
SNA: 女 性 0.4°(-2.0°
〜4.0°), 男 性 0.6°(-1.0°
〜4.0°),SNB: 女 性 -0.1°
(-2.0°〜
2.0°),男性 -0.2°(-3.0°
〜3.0°).ANB
:女性:0.6°(-2.0°
〜4.0°),男性 0.9°(-5.0°
〜2.0°)という増
減が認められた.混合歯列期における反対咬合症例に 対するエッジワイズ装置とⅢ級ゴムの併用による治療 法の治療効果を検討した池ら3)は,歯性の変化に加え 上顎歯槽基底の前方への移動と下顎歯槽基底の相対的 な後方への移動によって,顎関係と被蓋の改善が生じ ると述べている.今回の調査結果においても同様の傾 向が認められたが,変化量から判断して,当院におけ る第一期治療における被蓋改善は主として上下前歯部 における歯軸の変化によってなされたと考える.また,32名中構成咬合の採得が可能であった
10
名 のうち,2名においては,F.K.O.を使用した.短期間 で,SNB:女性-1.0°
という変化が認められたが,こ れは上下前歯部の早期接触により,前方位置にて咬合 していた下顎骨が,早期接触の解除によって,後方の 中心位に位置したことによる.一方,女性
1
名に上顎前方牽引装置を使用したが,この症例において,SNA:4.0°SNB:-2.0°ANB:6.0°と いう最も大きな顎関係の改善が認められた.
第一期治療の治療期間に関して,今回の調査から,
上顎側切歯が未萌出の状態で第一期治療治療を開始し た症例のうち,側切歯萌出までの待機時間が平均
4.8
か月(2〜12
か月)であった.可及的に短期間で第 一期治療を終了し,患者の負担を軽減する必要がある と思われることから,現在は前歯部早期接触による下 顎前歯部の歯肉退職などの問題が認められる場合を除いて,側切歯萌出を待って,第一期治療を開始するこ とで,治療期間の短縮を図っている.
3)第一期治療後の転帰(表 3)
第一期治療にて,被蓋改善を行った
32
名のうち,下突咬合に復した症例は
17
名(53%女性8
名,男性9
名)であった.一方,被蓋を保った15
名のうち,叢生等のために第二期治療が必要と判断した要治療群 は,9名(28%女性
7
名,男性2
名),また第二期治 療の必要がないと判断した治療不要群は6
名(19%女 性5
名,男性1
名)であった.男女別にみると,男性において再下突を呈する傾向 が強く認められた.女性の第一期治療後における再下
突群が
40%を示したのに対して,男性は 75%が再下
突を示した(表
4).また,再下突群のうち,女性 8
名中4
名,男性9
名中9
名が外科的骨切り術の併用が 必要と判断した(表5).一方,被蓋を維持したもの
の,要治療と判断した要治療群は,女性7
名中4
名を 小臼歯抜歯にて,2名を非抜歯にて治療した.また男 性2
名中1
名を非抜歯にて治療した.なお,これら要 治療群は成長発育終了前に第二期治療を開始した症例 もあるが,治療後,保定中を通じて再下突を呈した症 例は認められなかった(表6).
また,初診時に構成咬合を採得することができた症 例は,女性
20
名のうち5
名,男性12
名のうち5
名で あった.通常構成咬合を採得することができる下突咬 合症例は,歯性による機能的な前歯部交叉咬合症例で あることから,比較的予後も安定するとされる.今回 の調査においても女性5
名のうち,2名をF.K.O.
にて 治療を行い,治療期間は平均3
か月であった.5名の うち2
名が正常咬合(F.K.O使用1
名),2名が空隙歯番号 性別 被蓋改善後管理期間 脱落時年齢 脱落時咬合
1
女性41 11
正常咬合+欠損歯列2 27 13
Ⅰ級叢生3
男性
22 14
被蓋はあるがⅢ級咬合4 34 12
被蓋はあるがⅢ級咬合5 65 14
正常咬合6 51 13
切端咬合+上顎叢生+偏位咬合7 4 14
正常咬合8 31 12
被蓋はあるが片側Ⅲ級9 30 12
被蓋はあるがⅢ級咬合10 14 11
正常咬合11 22 11
被蓋はあるがⅢ級咬合12 8 15
被蓋はあるがⅢ級咬合表11 来院中断群に関して
列(F.K.O使用
1
名),1名が叢生歯列の転帰を辿り,再度下突咬合を呈する者は認められなかった.一方,
男性においては,5名中
1
名が正常咬合,1名が叢生 歯列,3名が再度下突咬合を呈した(表7).今回の調
査において,初診時に構成咬合をとることができた女 性5
名中5
名,男性5
名中2
名が,被蓋を維持したこ とから,構成咬合者は治療後の被蓋維持に有利といえ るものの,男性5
名中3
名が下突咬合に復し,第二期 治療方針はいずれも外科的骨きり術併用の状態を呈し たことから,初診時に構成咬合を採得することができ たとしても,必ずしも将来の被蓋維持の担保足り得な いと言える.一方,乳歯列期に治療を開始した
4
名(女性3
名,男性
1
名)に関しては,すべてムーシールドの夜間を 中心とした在宅時の使用を指示したところ,女性1
名 が切端咬合の位置まで改善したが,3名は被蓋改善に 至らず,4名ともに永久前歯萌出後に前歯部交叉咬合 を呈したために,再度エッジワイズ装置とⅢ級ゴムに よる被蓋改善を行った.その結果,ムーシールドにお いて切端咬合を呈した女性は,永久歯列完成後に正常 咬合を獲得したものの,上下前歯部に叢生が生じたこ とから,上下左右側第一小臼歯抜歯にて治療を行っ た.また,ムーシールドにおいて被蓋改善に至らな かった女性2
名中1
名は,第一期治療後に被蓋を保っ たものの,1名は再下突咬合と開咬合を呈し,外科的 骨きり術の適用となった.一方乳歯列時に治療を開始 した1
名の男性も,再度下突咬合かつ偏位咬合を呈 し,外科的骨きり術の適用となった.(表8)現在,
下突咬合の治療において早期に行えば行うほど効果的 であるという意見が散見される.今回の調査におい て,乳歯列期に治療を開始したものの,その時期に被 蓋を改善した症例が存在しないために,その効果を検 討することは出来なかった.下突咬合者者に対する乳 歯 列 に お け る 治 療 の 予 後 に つ い て, 北 浦 ら4)は
22.8%,坂井
5)は約50%,種市
6)は56.7%において,
成長の過程において再下突を呈したと報告している.
従って乳歯列期における早期治療については,その効 果とともに意見が分かれている.当院において,萌出 する永久前歯部に捻転や遠心傾斜等の問題が生じる可 能性もあるために,現在は乳歯列期における下突咬合 の第一期治療は基本的には行っていない.
今回
1
名の症例において,上顎前方牽引装置を使用 した.装置の効果に関して,自然成長に比べて有意に 上顎部の前方成長が生じることが報告7)されている が, 同 様 に,SNA79.0°か ら83.0°
へ4°
増 加 し,SNB80.0°
から78.0°
まで2.0°
減少したことから,ANB-1.0°から
5.0°
と本調査において最も大きな顎関係の改善6.0°
が認められた.しかし,経時的に再下突に復した ことから,第二期治療として,上下小臼歯抜歯に外科 的骨切り術を併用した治療にて対応した.4)初診時から第一期治療を経て第二期治療開始前に
いたる被蓋維持群と再下突群の各計測項目の変化第一期治療にて被蓋改善を行い,被蓋を維持した被 蓋維持群とその後再度下突咬合に復した再下突群との 差異の評価を側方
X
線規格写真トレース分析にて行った(表
10).この資料採得を行った第二期治療採得時
において,特に被蓋維持群のうち治療が必要と判断し た症例に関しては,完全に成長発育が終了する前に,
それまでの経過から判断して治療を開始したものもあ ることから,女性:被蓋維持群
12.0
歳(10〜16
歳),再下突群
13.6
歳(10〜16
歳),男性:被蓋維持群13.7
歳(12〜15
歳),再下突群16.4
歳(13〜18
ヶ 歳)と,再下突群にくらべて比較的早期に資料を採得 している.但し,被蓋維持群において第二期治療を 行った,いずれの症例に関しても治療後に再下突を示 した症例はなかった.a)overjet
に関して-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
overjet
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時の
overjet
は,女性被蓋維持群:-1.7mm(-3〜
-1mm)再下突群 -1.5mm(-3
〜-1mm),男性被蓋
維 持 群: 男 性:-4.0mm(-6〜-3mm), 再 下 突 群
-2.0mm(-5
〜-1mm)であり,男女ともに再下突群は
被蓋維持群にくらべて
overjet
が少ない.一方,
女性のoverjet
は被蓋維持群と再下突群において大きな差異は認められないが,男性においては,被蓋維持群がより 大きなマイナス
overjet
を示した.全群ともに第一期 治療において,overjetは増大し,マイナスからプラス に転じたが,男女ともに被蓋維持群の方がより大きなoverjet
を示した.その後,第二期治療前にかけて,すべての群において
overjet
は減少を示したが,その減 少量は再下突群において勝っていた.b)Overbite
に関して-5 -3 -1 1 0 3 5
-4 -2 2 4
前 始 開 療 治 期 二 第 時
了 終 療 治 期 一 第 時
診 初
overbite
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時の
overbite
は,女性被蓋維持群:1.8mm(1〜
4mm)再下突群 0.7mm(-1
〜2mm),男性被蓋維
持群:男性:4.0mm(3〜
5mm),再下突群 1.8mm(1
〜
3mm)であり,男女ともに再下突群は被蓋維持群
にくらべて
overbite
が少ない.その後,男女ともに,第一期治療において,overbiteは被蓋維持群において 減少し,再下突群は増加傾向を示した.この再下突群
の
overbite
増大の理由として,第一期治療において,overbite
が少ない症例に関しては,Ⅲ級ゴムの使用に加え,前歯部
up
&down
ゴムの使用を指示した結果 と思われる.また,第一期治療後においては,overbiteは全ての 群において減少を示したが,その減少量は男女いずれ も再下突群において大きかった.
なお,overbiteが十分にある症例は歯性反対咬合の 要素を持つ8)ことから一般開業医が取り組みやすい下 突咬合者としてされているが,第一期治療後の転帰か ら判断すると,被蓋維持群は平均
overbite
が大きく,その傾向は女性にくらべて男性に顕著であった.
c)U1SN
に関して90 95 100 105 110 115 120
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
U1SN
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時
U1SN
は,女性:被蓋維持群101.6°(86
〜117°)再下突群 103.2°(96°
〜108°),男性:被蓋維持
群100.0°(91
〜105°)再下突群 106.8°(87°
〜116°)
と男性において再下突群は初診時の上顎中切歯の唇側 傾斜傾向が認められた.その後第一期治療において,
被蓋改善のために上顎中切歯の唇側傾斜を行ったこと から,男女ともに,U1SNは増大している.その後,
第一期治療後の変化において,最も唇側傾斜量が大き かった被蓋維持群の男性のみ,U1SNが減少した.た だし,個別の症例に目を向けると再下突群の男女にお いても
U1SN
が減少した症例が認められた.一般開業医が取り組みにくい下突咬合者として上顎 前歯部の唇側傾斜症例は骨格性反対咬合の要素を持 つ8)とされているが,第一期治療後の転帰から判断す ると,再下突群は平均
U1SN
が大きく,その傾向は女 性にくらべて男性に顕著であった.d)IMPA
に関して70 75 80 85 90 95 100
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
IMPA
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時の
IMPA
は女性:被蓋維持群95.7.°(82°
〜102°),再下突群 95.4.°(88°
〜102°)と大きな差異は
認められず,男性:被蓋維持群93.7°(84°
〜104°)再
下突群:88.3°(83°〜101°)では,再下突群において
下顎前歯部の舌側傾斜が顕著に認められた.その後,男女ともに,第一期治療において,IMPA値は減少し ている.これは被蓋改善のために,下顎中切歯の舌側 傾斜を行ったことによる.第一期治療儀の変化とし て,総体的には増加傾向を示し,その増加量は男女と もに再下突群において大きかった.但し,それぞれの 群の男女において,
IMPA
が減少した症例も存在した.また第二期治療前の
IMPA
をみると,初診時と同様 に,女性:被蓋維持群90.9.°(80°
〜100°),再下突群
90.8.°(80°
〜103°)と大きな差異は認められず,男
性:被蓋維持群
90.7°(76°
〜102°)再下突群:82.8°
(72°〜
90°),と再下突群において下顎前歯部の舌側
傾斜が顕著に認められた.
e)ANB
に関して-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3 4
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
ANB
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時において,女性被蓋維持群:1.1°(-2〜
5°)
再下突群:0.9°(-1〜
5°)男性被蓋維持群:-2.7°(-7
〜
0°)再下突群:-1.4°(-4
〜3°)と,男性の ANB
が 小さい傾向が認められた.一方,女性においては両群 に顕著な際は認められず,男性においては,再下突群 でより大きい値を示す傾向が認められた.第一期治療の結果,ANBは増加傾向を示した.中 には
ANB
が減少した症例も存在したが,おしなべて 平均値からは第一期治療において顎関係の改善がなさ れたことが示された.第一期治療後においていずれの群の男女において,
ANB
は減少傾向を示し,男女ともに再下突群におい て,減少量が顕著に大きい傾向が認められた.f)SNA
に関して72 78 82 80 88
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
SNA
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性 84
86
76 74
初診時では,女性:被蓋維持群
79.1°(75
〜84°)
再下突群
78.5°(73
〜85°)と大きな差異は認められ
ず, 男 性: 被 蓋 維 持 群
76.0°(71
〜79°) 再 下 突 群 80.1°(73
〜90°)と男性において再下突群の SNA
が 大きい傾向が認められた.男女ともに,第一期治療の結果,SNAの平均値は 増加していることから,上顎前歯部の唇側傾斜に伴 い,上顎歯槽部の前方への移動が生じた可能性があ
る.ただし,第一期治療において
SNA
が減少した症 例が存在した.これは,上顎骨が後退したわけではな く,主として上顎骨の下方成長に加え,N点を含む 前頭骨と鼻骨の前方成長による幾何学的要因である.一方,第一期治療からの
SNA
の変化量として,全 ての群で増加傾向を示し,第二期治療前では,女性被 蓋維持群80.1°(74
〜85°)再下突群 80.1°(75
〜87°)
と差異は認められず,男性:被蓋維持群
79.3°(72
〜84°)再下突群 80.3°(72
〜90°)と全ての群におい
て,大きな差異は認められなかった.
g)SNB
に関して72 74 76 78 80 82 84 86 88
初診時 第一期治療終了時 第二期治療開始前
SNB
被蓋維持群 女性 被蓋維持群 男性 再下突群 女性 再下突群 男性
初診時の状態から女性:被蓋維持群
78.1°(70
〜86°)再下突群 77.6°(73
〜85°)と大きな差異は認め
られず,男性:被蓋維持群78.7°(78°
〜80°)再下突
群81.5°(77°
〜89°)と男性において再下突群の SNB
が大きい傾向が認められた.その後,第一期治療の結果,SNBの平均値は全て の群で減少していることから,構成咬合者における下 顎骨自体の時計方向への回転に加え,下顎前歯部の舌 側移動の結果,下顎歯槽部の後方への移動が生じた可 能性がある.ただし,第一期治療において
SNB
が増 加した症例も存在した.その後,第一期治療後の変化において,全ての群に おいて増加傾向を示し,
女 性 被 蓋 維 持 群:79.3°(71°〜