別紙1
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
報告番号
甲 第 3238 号 氏 名小松 麻衣子
論文審査担当者
主査 教授 船津 敬弘 副査 教授 中村 雅典
副査 教授 荒木 和之
(論文審査の要旨)
論文題名「The relationship between the zygomaticomaxillary suture as a three-dimensional plane and maxillofacial growth」(三次元平面としての頬骨上顎縫合と顎顔面成長との関係)
掲載雑誌名:Angle Orthodontist(投稿中)
上記の主査1名、副査2名が個別に審査を行った。
顔面部の成長様式の一つに上顎骨における縫合部での成長が挙げられる.頬骨上顎縫合と上顎の成長促進 の関連性については以前より報告があるが、縫合の面の方向と上顎の成長方向との関連性については不明で ある。そこで本研究ではコーンビームコンピューター断層撮影画像を用いて、頬骨上顎縫合の3次元的な平 面方向と顎顔面形態との関連性について解析を行った。対象は骨格性のⅡ級とⅢ級の日本人成人女性90名 とした。結果は、頬骨弓幅径、上顎の垂直的距離と幅径の比率および上顎の垂直的距離と前後的距離の比率 が左右頬骨上顎縫合平面のなす角度と有意な相関を示し、頬骨上顎縫合の平面方向が、上顎の成長に影響す る可能性が示唆された。
本論文の審査において、副査の中村委員および荒木委員から多くの質問があり、その一部とそれらに対す る回答を以下に示す。
中村委員の質問とそれらに対する回答:
1.症例の型による違いはないか(上顎前突、下顎前突などの症例の違い)。
(本研究では、対象を上下顎の前後的位置関係(ANB角)により①Skeletal Cl.Ⅱ②Skeletal Cl.Ⅲの2群に 分類し比較を行いました。その結果2群間の頬骨上顎縫合に関する角度には有意差は認められませんでし た。しかしながら、ANB角による分類は上下顎の劣成長と過成長を考慮していないため、今後上下顎の劣成 長と過成長についても比較する必要があると考えております。)
2.頬骨上顎縫合が完成する時期と上顎の成長の時期に関連性はあるのか。
(過去の研究において、頬骨上顎縫合の癒合は主に15歳以上の患者に観察されています。また、10~15歳
の患者には様々な頬骨上顎縫合の成熟度が観察されており、頬骨上顎縫合の癒合は10歳~15歳の間で個人 差が認められるといわれています。鼻上顎複合体の縫合性成長は10歳前後までといわれており、頬骨上顎 縫合の癒合時期と上顎の成長時期には関連性があると考えられます。)
3.縫合(suture)はどのような組織構造を示すのか。
(縫合は2つの骨が狭い間隙をはさんで対向し、その間に線維性結合組織が認められる組織構造を示します。
縫合の種類として直線縫合(骨縁が平行に近接している)、鱗状縫合(斜面をなす骨縁が重なり合っている)、
鋸状縫合(骨の連続縁が鋸歯状に嵌合している)があげられます。)
荒木委員の質問とそれらに対する回答:
1.頬骨上顎縫合を3点を結ぶ平面で代用しているが、その妥当性は?
(頬骨上顎縫合は直線的ではない彎曲した走行を示しているため、本来はその複雑性も考慮すべきと考えら れます。しかしながら、CBCT画像上で完全に頬骨上顎縫合の走行を追うことが難しい(とくに骨内部)た め、評価にばらつきがでる可能性が高いと考えました。そのため、CBCT上で判別しやすい頬骨上顎縫合上 の3点を指定し平面と仮定することで頬骨上顎縫合の面の評価を行うこととしました。結果的に、1回目の 測定と2回目の測定を比較した級内相関関数(ICC)は0.7以上を示し、測定値の高い信頼性を確認すること ができました。)
2.CBCT画像上でのランドマーク及び計測の際の頭位の設定は?CBCTの寸法精度および2次元的セファロ 分析と比較した3次元的セファロ分析の精度は?
(各ランドマークは3Dボリューム画像上でプロットした後、MPR画像上でも確認し設定しました。また、各
画像は3点(Basion、Sella、 Nasion)を含む平面を矢状面、2点(左右Orbitaleの中点と左右Porionの中 点)を含む平面を水平面として設定し分析の際の頭位の基準としました。CBCTの寸法精度については、MPR 画像において寸法精度が良好であるという報告があります。各ランドマークはMPR画像上でも確認している ため、寸法精度は良好だと考えられます。また、過去の報告より3次元画像上でのセファロ分析と2次元画 像上でのセファロ分析には有意差はなく、2次元上で確立された基準値も使用が可能であるといわれていま す。)
両副査は、上記を含めた質問に対する回答が、いずれも満足のいくものであることを確認した。
主査 船津委員の質問とそれらに対する回答:
1.骨格性Ⅰ級を対象としていない理由と、骨格性Ⅰ級だとどの様な状態になると推測するか。
(本研究では特徴的な顎顔面形態(Skeletal Cl.ⅡとSkeletal Cl.Ⅲ)による差に注目していたため、Skeletal
Cl.Ⅰを対象から除外していました。この点については本研究における反省点であり、今後Skeletal Cl.Ⅰ
のサンプルに関しても評価したいと考えております。本研究の結果において、Skeletal Cl.ⅡとSkeletal Cl.
Ⅲ間での比較で有意差がなかったことから、Skeletal Cl.Ⅰに関してもSkeletal Cl.ⅡおよびSkeletal Cl.
Ⅲと同様な数値が計測されるのではないかと推測しております。) 2.将来的な臨床応用への本研究の意義について
(本研究の結果より、頬骨上顎縫合の平面の方向は上顎の成長方向に影響する可能性があることが示唆さ れました。そのため今後研究を進めていくことで、上顎骨の成長方向を事前に予測し将来の顎顔面形態を 推測することも可能かもしれないと考えています。また本研究では、CBCT画像により頬骨上顎縫合を3次 元的な平面として抽出し評価しています。この方法は、上顎前方牽引装置の牽引方向を決定する際におい ても有用かと考えております。過去の研究においては口蓋平面を基準に牽引方向を考えているため、頬骨 上顎縫合の平面を基準に牽引方向を変化させることで新しい顎顔面形態への影響への知見を得ることが できるかもしれないと考えております。)
主査の船津委員は、両副査の質問に対する回答の妥当性を確認するとともに、本論文の主張をさらに確認 するために上記の質問をしたところ、明確かつ適切な回答が得られた。
本論文は本学大学院学位論文(博士)審査基準を満たしており、学位論文に値すると判断した。
(主査が記載)