第 4 章
陰関数とその微分
4.1 陰関数と等高線
4.1.1 陰関数
変数をxにyを対応させる規則(1変数の関数) 2変数 の関数z=F(x, y)に対して
F(x, y) = 0 (4.1)
のかたちで与えられるとき,陰関数として与えられてい るという.陰関数と対比するとき,y=g(x)のように 表現される関数を陽関数という.
例4.1.1
(1) F(x, y) =x−2y+ 1とする.F(x, y) = 0とす ると
x−2y+ 1 = 0⇒y= 1 2x+1
2
(2) F(x, y) =x2+y+ 2とする.F(x, y) = 0とす ると
x2+y+ 2 = 0⇒y=−x2−2
変数をxにyを対応させる規則(1変数の関数) 2変数 の関数z=f(x, y)と定数cによって
f(x, y) =c (4.2)
のかたちで与えられるとき,陰関数として与えられてい るといってもよい.このことは
F(x, y) =f(x, y)−c
として
F(x, y) = 0
と考えればよい.
例4.1.2
(1) f(x, y) =x2+y2とする.
x2+y2= 1
として,y=±√
1−x2.
これはF(x, y) =x2+y2−1として,F(x, y) = 0 から決まるといっても同じ.ただし,この場合,1 変数の関数y=f(x)とは,ひとつのxの値に対し てひとつのyを対応させる規則であるから,うえ のx2+y2= 1からは単純に関数がきまっている とはいえない.y≥0と決めれば,y=√
1−x2. (2) f(x, y) =xyとする.
xy= 1
として,y= 1 x.
これはF(x, y) =xy−1として,F(x, y) = 0か ら決まるといっても同じ.
4.1.2 等高線
2 変数関数z = f(x, y)のグラフは空間内の曲面で あった.このとき一定の高さを与える(x, y)はx−y平 面で曲線となる.これを等高線という.等高線は
f(x, y) =c f(x, y)−c= 0
から決まるので陰関数のグラフになっていることも ある.
等高線はcに対応して存在するので,一般に無数に存 在するが,グラフで表示するときはそのうちの一部だけ が描かれる.
図4.1はz = x−2y+ 1 のグラフと等高線(一部 の み )で あ る .こ の と き ,等 高 線 は 定 数 c に つ い て x−2y+ 1 =cつまりy= x
2 +c′を満たす(x, y)だか ら直線になっている.
0 2 4 6 8 10 0
2 4 6 8 10 -20 -15 -10 -5 0 5 10 15
z
x-2*y+1 10 8 6 4 2 0 -2 -4 -6 -8 -10 -12 -14 -16 -18
x y
z
図4.1 x−2y+ 1のグラフと等高線
図4.2はz=−x2−y2のグラフと等高線(一部のみ)で ある.このとき,等高線は定数cについて−x2−y2=c つまりx2+y2 =c′ を満たす(x, y)だから円になって いる.
-10 -5
0 5
10-10 -5
0 5
10 -200
-180 -160 -140 -120 -100 -80 -60 -40 -20 0
-x**2-y**2 -10 -20 -30 -40 -50 -60 -70 -80 -90 -100 -110 -120 -130 -140 -150 -160 -170 -180 -190
図4.2 −x2−y2のグラフと等高線
図4.3はz=xyのグラフと等高線(一部のみ)であ る.このとき,等高線は定数cについてxy=cつまり y= c
xを満たす(x, y)だから双曲線になっている.
4.2 陰関数の微分
4.2.1 陰関数の微分
ここでは関数が陰関数であたえられているときの導関 数を考える.
まず具体的な関数の形式がわかっている場合の計算の 仕方を説明する.
0 2 4 6 8 10
0 2 4 6 8 10
0 20 40 60 80 100
z
x*y 95 90 85 80 75 70 65 60 55 50 45 40 35 30 25 20 15 10 5
x y
z
図4.3 xyのグラフと等高線
例4.2.1 (陰関数の微分)
(1) F(x, y) =x−2y+ 1とする.F(x, y) = 0から y=g(x)となるとする.このとき
x−2g(x) + 1 = 0
右辺のx−g(x) + 1をxで微分すると 1−2g′(x)
右辺は0だからxで微分すると0.よって
1−2g′(x) = 0 g′(x) =1
2 (4.3)
この関数では
x−2y+ 1 = 0⇒y=g(x) = 1 2x+1
2
とわかるので,g′(x) =1
2 となり同じ結果になる.
(2) F(x, y) =x2+y+ 2とする.F(x, y) = 0から y=g(x)となるとする.このとき
x2+g(x) + 2 = 0
左辺のx2+g(x) + 2をxで微分すると
2x+g′(x)
右辺は0だからxで微分すると0.よって
2x+g′(x) = 0
g′(x) =−2x (4.4)
この関数では
x2+y+ 2 = 0⇒y=g(x) =−x2−2
とわかるので,g′(x) = −2xとなり同じ結果に なる.
(3) F(x, y) =x2+y2−1とする.F(x, y) = 0から y=g(x)となるとする.このとき
x2+{g(x)}2−1 = 0 右辺のx2+{g(x)}2−1をxで微分する.
{g(x)}2の項には1変数関数の合成関数の微分公 式を使う.
2x+ 2g′(x)g(x)
右辺は0だからxで微分すると0.y = g(x)で あるから
2x+ 2g′(x)g(x) = 0 g′(x) =−x
y (4.5)
y >0とすれば
y=√ 1−x2 このとき
g′(x) =−x
y =− x
√1−x2
直接
y=g(x) =√ 1−x2 を微分しても
g′(x) =− x
√1−x2
ここまでは具体的な陰関数が与えられたときの微分を おこなったが,一般的な原理として陰関数の存在と導関 数について陰関数定理とよばれる定理がある.
定理4.2.1 (陰関数定理)
(x0, y0) を 含 む 領 域 で ,F(x, y) が 連 続 で , Fx(x, y), Fy(x, y) が 存 在 し ,Fy(x, y) は 連 続 と す る.F(x0, y0) = 0で,Fy(x0, y0)̸= 0ならば,x0の十 分近くで定義される関数y=g(x)で
F(x, g(x)) = 0
となるものがただ1つ存在し,Fy(x, g(x))̸= 0で g′(x) =−Fx(x, y)
Fy(x, y) =−Fx(x, g(x))
Fy(x, g(x)) (4.6)
となる.
陰関数定理の証明は省略し,ここではF(x, y) = 0か らy =g(x)が定まることを前提して,式(4.6)を導出 する.
y=g(x)がF(x, y) = 0をみたすとする.このとき F(x, g(x)) = 0 (4.7)
合成関数の微分公式は
z(t) =f(x(t), y(t)) (4.8)
のとき
z′(t) =fx(x(t), y(t))x′(t) +fy(x(t), y(t))y′(t) (4.9)
であった.したがって(4.7)の左辺をxで微分すると dF(x, g(x))
dx =Fx(x, g(x))(x)′+Fy(x, g(x))g′(x)
=Fx(x, g(x)) +Fy(x, g(x))g′(x) (4.10)
となる.(4.7)の右辺は0なのでxで微分して0である.
よって
Fx(x, g(x)) +Fy(x, g(x))g′(x) = 0
g′(x) =−Fx(x, g(x))
Fy(x, g(x)) =−Fx(x, y)
Fy(x, y) (4.11) をえる.
例4.2.2 (陰関数の定理の利用)
(1) F(x, y) =x3−6xy+y3とする.
F(x, y) = 0とするとき,y=g(x)となるならば Fx(x, y) = 3x2−6y, Fy(x, y) =−6x+ 3y2
(4.12) であるから
g′(x) =− 3x2−6y
−6x+ 3y2 =−x2−2y
y2−2x (4.13) この節のはじめの方でおこなった計算の仕方では
x3−6xy+y3
=x3−6xg(x) +{g(x)}3= 0 両辺をxで微分してy=g(x)をつかうと
3x2−6g(x)−6xg′(x) + 3g′(x){g(x)}2
= (3x2−6y) + (3y2−6x)g′(x) (4.14)
= 0
よって
g′(x) =−x2−2y
y2−2x (4.15)
となり同じ結果をえる.(4.14)式の括弧でくくっ た第1項がFx(x, y)であり,第2項の括弧でく くった部分がFy(x, y)に対応している.
(2) F(x, y) = 2x4−3xy2+y4とする.
F(x, y) = 0とするとき,y=g(x)となるならば Fx(x, y) = 8x3−3y2, Fy(x, y) =−6xy+ 4y3
(4.16) であるから
g′(x) =− 8x3−3y2
−6xy+ 4y3 =−8x3−3y2
4y3−6xy (4.17) この節のはじめの方でおこなった計算の仕方では
2x4−3xy2+y4
= 2x4−3x{g(x)}2+{g(x)}4= 0 両辺をxで微分してy=g(x)をつかうと
8x3−3{g(x)}2−6xg′(x)g(x) + 4g′(x){g(x)}3
= (8x3−3y2) + (−6xy+ 4y3)g′(x) (4.18)
= 0
よって
g′(x) =−8x3−3y2
4y3−6xy (4.19) となり同じ結果をえる.(4.18)式の括弧でくくっ た第1項がFx(x, y)であり,第2項の括弧でく くった部分がFy(x, y)に対応している.
4.2.2 限界代替率
無差別曲線
2つの財の組み合わせを消費することを考える.第1 財の消費量をx,第2財の消費量をyとすると,消費の パターンは(x, y)である.消費者にとって,2つの消費 パターン(x1, y1)と(x2, y2)の好ましさが同じであると き,このふたつは無差別であるという.そして無差別と なる消費の組み合わせをx−y平面上に描いたときえら れる曲線を無差別曲線という.
財の組み合わせに対して効用があたえられるときには 効用関数u=u(x, y)に対してcを定数として
u(x, y) =c (4.20)
となる(x, y)は同じ効用をもたらすので,無差別にな
り,これを曲線であらわせば無差別曲線になります.一
方で式(4.20)できまる曲線を等高線といっていたので,
効用関数があたえられたときは効用関数の等高線が無差 別曲線です.
等高線が無数にあるように無差別曲線も無数にありま す.いまひとつの財の組み合わせ(x0, y0)についてこの 点を通る無差別曲線を考えます.それをy=g(x)とし ます.このときy =g(x)のx0のおける微分係数の絶 対値を第1財の第2財に対する限界代替率といいます.
一般に無差別曲線は右下がりであるので
−g′(x0)
が限界代替率になります.
微分をつかわずにいえば,限界代替率は,第1財の消 費量をx0から1単位増やしたとき,第2財の消費量を 何単位減らせば,(x0, y0)と無差別な消費パターンにな るかをもとめたものです.この考え方が微分係数と結び つくことは一般的な限界概念と微分の関係を思いおこせ ば理解できる(図4.4).
図4.4 限界代替率
無差別曲線が効用関数u=u(x, y)からえられるとし ます.u0=u(x0, y0)として
U(x, y) =u(x, y)−u0= 0
から決まる関数y=g(x)のグラフが(x0, y0)を通る無 差別曲線になります.すると陰関数の微分から
−g′(x0) = Ux(x0, y0)
Uy(x0, y0) = ux(x0, y0) uy(x0, y0) となり,限界代替率は限界効用の比になります.
等産出量曲線
2つの生産要素の投入によってある財が産出されると します.これは2変数の関数で
z=F(x, y)
であらわせます.産出量を一定にする投入要素の組み合 わせの集合を等産出量曲線といいます.これは効用関 数が与えられときの無差別曲線に対応します.(x0, y0) をとおる等産出量曲線をy=g(x)とします.このとき y =g(x)のx0のおける微分係数の絶対値を第1生産 要素の第2生産要素に対する技術的限界代替率といいま す.F0=F(x0, y0)として
F(x, y)−F0= 0
から決まる関数y=g(x)のグラフがが(x0, y0)を等産 出量曲線になります.すると陰関数の微分から
−g′(x0) = Fx(x0, y0) Fy(x0, y0)
となり,技術的限界代替率は限界生産力(限界生産物)
の比になります.