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GAIDAI BIBLIOTHECA
新華書店(北京)
中国のほんの話(15)
蔭山 達弥
中国の本屋さん
(北京・その一)
私にとって五年振りの北京は何もかも変わって いた。地下鉄は東に延伸し、幹線道路が整備され、
真新しい高層ビルが林立していた。とりわけ、街 の中心、繁華街の変貌ぶりは目を見張るものが あった。その一方で、横町には五年前と何等変わ らない人々の暮らしが息づいていた。
約一ケ月の中国滞在中、私はほとんど毎日、街 へ出た。そして、長年の友人と再会し、時間の許 す限り書店を回った。大型書店は言うまでもなく、
骨董街に店を構える馴染みの小規模店まで、巡り 歩いた。炎天下、歩き疲れて店先の石段に腰を下 ろすこともしばしばだった。
北京で一番多く行った書店は、目抜き通りの王 府井に偉容を誇る「新華書店」(写真)である。夏 休みで子供たちが多かったせいか、平日、休日を 問わず、いつも人でごった返していた。入口には 常に警備員が立ち、レジで支払いを済まさなかっ た本を店外に持ち出そうとすると警報器が鳴るよ うになっていた。
「新華書店」の一階には辞典、地図、実用書、社 会科学関係の本が並べられていた。本は一部の高 価な本を除いて、開架式で置かれてあり、自由に 手に取って、中味を見ることができるようになっ ている。新刊書や売れ行きの良い書籍は、何十冊 も平積みされていた。今、中国では特に若者を中 心に村上春樹の小説が良く読まれていて、ピンク 色の綺麗な装丁の新装版『ノルウェイの森』が平 積みされ、若い女性が次々と手に取っていた。
二階は学習参考書・医学分野、三階は文芸書・美 術・写真等、四階は工業・コンピューター関係、そ して五階はCD・VCD・コンピューターソフト・
ゲームソフト等となっている。各階に行くには中 央のエスカレーターに乗らないと行けないのだが、
配置に工夫がしてあって、例えば三階の売場に行 くには二階の売場をぐるりと回らなければ、三階 の売場に行けないようになっていた。なかなか商
売上手なエスカ レーターの配置 であるが、急い でいる時、面倒 で し よ う が な い。各階のエス カレーターの乗 降口にも警報器 が設置されてい て、一階の本を 一階で精算せず に二階に持ち上
がろうとすると、警報器が鳴る。このシステムを 知らない客が多く、頻繁に鳴っていた。最近は海 賊版を防ぐために、表紙にリボンを付ける等の 凝った装丁の本がたくさん出ているが、北京の立 ち読み客は少し乱暴に本を扱うのだろうか、表紙 がちぎれそうになっている本やくたくたになって いる本が平気で売られているのには閉口した。後 述するが、上海の書店ではこれとは全く正反対で あった。
「新華書店」を出て、終日歩行者天国になった通 りをしばらく北に歩くと、進行方向左手に老舗の 北京第一百貨商店が見える。その先にあるのが「外 文書店」である。五年前、「新華書店」が改装中の 時、この三階が「新華書店」の仮店舗になってい た。「外文書店」は文字通り、外国語関連の書籍、
各国語で書かれた中国関連の本を取り扱う書店で ある。WTO加盟を目前に控え、中国人の英語学習 熱は冷めず、英語コーナーが特に混雑していた。こ の店の二階が、私のお目当てのVCD・CDの売場 となっていた。ここの店員の一人一人が大変親切 で好感が持てた。いつも、先に「新華書店」に立 ち寄ってからこの店に行くのだが、その度に先に 買った本や荷物を預ってくれ、楽しくゆっくり買 物が出来た。主にテレビドラマや国産映画ソフト を買うのだが、商品知識に詳しく、「これは面白い から、是非買いなさい。」とよく勧められ、お蔭で スーツケースに入りきらない程買ってしまい、帰 国の際、空港の税関職員にいぶかられる始末だっ た。
かげやま たつや(助教授・中国文学)