リーダーの自信尺度の開発と「自信」形成過程に関する研究 [ PDF
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(2) る.つまり,人は自ら目標や価値観などを充足しようとし,. 目について, “非常によくあてはまる”から“全くあてはま. それが満たされることによって満足感や達成感を感じると. らない”の 5 段階評定で被調査者に評定させた.. 考えられる.. 管理者として重視している事柄と充足度 外的期待では. これらの研究を整理すると,リーダーは上司の指示や期. 「企業や上司の期待に応えること」 , 「部下の期待や満足感. 待,課題の要請などの「外的期待」や自らの価値観や目標. を満たすこと」など 4 項目,一方内的期待では「自分が立. などの「内的期待」を充足することによって,リーダーと. てた目標や課題を達成すること」 , 「管理者としてあるべき. しての満足感や達成感を感じると考えられる.つまり,リ. 姿勢に沿っていること」など 4 項目を設定した.. ーダーは,様々な経験について振り返る(自己省察)と同. これら外的期待・内的期待の計 8 つの項目を被調査者に. 時に,外的期待あるいは内的期待を充足することによって. 提示し,そして,日頃管理者として重視している項目を 3. 自信を獲得すると考えられる.. つ選択させた.. 4.本研究の目的. 次に,先述した管理者として重視する内的期待,外的期. 以上の議論から本研究の目的は,第 1 にリーダーの自信. 待の 8 つの事柄それぞれが,現在どの程度満たしていると. 尺度を開発し,第 2 にリーダーが自信を形成するプロセス. 思うかについて“非常に満たしている”から“全く満たし. を明らかにすることである.そして,第3に,リーダーの. ていない”の 5 段階評定で被調査者に評定させた. 外的期待および内的期待得点は,外的期待・内的期待の 8. 持つ自信の効果について,プロジェクト事例を用いて検討 する.. つの事柄に対して充足度(満たしている程度)評定値に, もしその期待を重視していると選択されているならば 2 を かけ,選択されていなかったら 1 をかけることで重み付け. 方 法 1.被調査者. し,それぞれを合計することで算出された.. 一般企業に勤務する 231 名の管理者を対象に質問紙調査. マネジメントの志向性 リーダーの自信の効果について検. を行い,回答に不備があった 21 名を除く 170 名(男性:. 討するため,プロジェクト事例におけるマネジメントの志. 154 名,女性:16 名)が分析の対象となった.有効回答率. 向性を測定した.被調査者は,プロジェクトの中で,自ら. は,73.6%であった. 被調査者の平均年齢は,48.6 歳(SD. プロジェクトリーダーとしてどのようなマネジメントを行. =8.92;範囲 24−67)であった.. うか,下記の8次元(a∼h)から評定した.その内容は, (a). 2.調査時期. 成果の可視性−成果の不可視性, (b)リーダーシップ重視. 2002 年 11 月から 12 月に行った.. −メンバーシップ重視, (c)成果の内的帰属傾向−成果の. 3.質問紙調査票の構成. 外的帰属傾向, (d)経験のゼロベース重視性−従来の経験. フェイスシート 年齢,性別,管理者の職位,管理職経験. の尊重性, (e)プロジェクトへの好奇心−プロジェクトへ. 年数,管理している部下の数および職種を尋ねた.. のストレス, (f)確実性重視−大胆性重視, (g)メンバー. リーダーの自信尺度 Yukl(1998)による従来のリーダー. への明瞭な方針の提示−メンバーへのプレッシャー, (h). シップ研究から得られた 11 のリーダー行動の分類,また金. 新規な方法重視−従来の方法重視であった.被調査者は,. 井(1991)による 11 の管理者行動などを参考とし尺度項目. これらの項目を5段階の SD 尺度形式によって評定した.. を作成した.さらに,革新・変革行動などの項目を追加し, 最終的に 39 項目を作成した.. 結 果. 被調査者には,尺度 39 項目について,管理者としてどれ. 1.リーダーの自信尺度の開発. くらい確実にできると思うかの程度に沿って, “確実にでき. リーダーの自信尺度の探索的因子分析 本研究で新しく. る”から“できない”の 5 段階評定で評定させた.. 「リーダーの自信尺度」を開発するため,先の 39 項目の評. 管理者になってからの経験 管理者になってからの経験に. 定値に基づき,探索的因子分析(最尤法,バリマックス回. ついて, 「とても嬉しかった経験」および「とても厳しかっ. 転)を行った.. た経験」について,それぞれの経験を1つずつ想起しても. その結果,メンバーに対する自信として「メンバーへの育. らい,自由記述形式で回答させた.. 成支援への自信」, 「メンバーへの権限委譲への自信」の2. 経験についての自己省察 先に取り上げられた「嬉しかっ. 因子,職場内における自信として「革新行動への自信」 , 「問. た経験」および「厳しかった経験」について,それぞれ「今. 題解決行動への自信」 , 「職場における目標設定への自信」 ,. でも,その経験についてよく思い出すことがある」 , 「その. 「チームワーク創出への自信」の3因子,そして組織内外. 経験で,専門的な知識や情報の大切さを知った」など6項. に関する自信として, 「組織内外へのネットワーキングへの. 2.
(3) Table1 リーダーの自信の平均値,標準偏差および信頼性係数. M. SD. メンバーへの育成支援への自信 メンバーへの権限委譲への自信. 3.49. 0.72. ! .92. 3.34. 0.74. .84. 革新行動への自信. 3.28. 0.87. .92. 問題解決行動への自信. 3.50. 0.65. .83. 職場における目標設定への自信. 3.46 3.51. 0.81 0.62. .87 .92. 3.24. 0.89. .84. リーダーの自信尺度. チームワークの創出への自信 組織内外のネットワーキングへの自信. 自己省察低群 自己省察高群. 5.00 チ ー 4.00 ム ワ ー 3.00 ク 創 出 2.00 へ の 自 1.00 信. 自信」の1因子,計 7 因子が抽出された. Table1 は,リーダーの自信に関する平均値,標準偏差を. 0.00 内期低群 外期低群. 示している.それによると,リーダーは「チームワークへ の自信」や「問題解決行動への自信」を高く評価している. 内期高群 外期低群. ものの,一方「革新行動への自信」や「組織内外へのネッ トワーキングへの自信」についてはそれほど自信がないと. 内期低群 外期高群. 内期高群 外期高群. Fig.1 チームワークの創出への自信に影響を及ぼす嬉しかっ た経験についての自己省察と外的期待・内的期待の効果. 見ているようである. 信頼性および妥当性の検討 リーダーの自信尺度の内的整. 的期待・内的期待の効果 次に,リーダーの自信形成プロ. 合性を確認するためα係数を算出した(Table1) .各因子の. セスについて検討するため,嬉しかった経験・厳しかった. α係数を見ると.83 以上と十分な値であった.. 経験についての自己省察,外的期待,内的期待を独立変数, そしてリーダーの自信の 7 因子を従属変数とした3要因分. また,リーダーの自信尺度の妥当性を検討するため,自. 散分析を行った.. 尊心尺度(山本・松井・山城,1982)を取り上げた.相関係. Fig.1は,チームワーク創出への自信に与える嬉しかった. 数を算出した結果,自尊心尺度と「メンバーへの権限委譲」 との相関係数(r =.173 p<.05)を除き,その他のリーダー. 経験についての自己省察,外的期待,内的期待の効果を示. の自信因子とは高い相関が見出された.したがって,この. している.それによると,外的期待および内的期待を充足. 結果より,おおよそリーダーの自信尺度の妥当性は確認さ. しているリーダーほどチームワーク創出への自信が高い.. れたと言える.. さらに,その中でも嬉しかった経験についての自己省察を. 2.リーダーの自信形成プロセスの検討. より行っているリーダーほどその傾向は顕著である.. 嬉しかった経験と厳しかった経験の内容 まず,リーダー. 3要因分散分析の結果,嬉しかった経験に関する自己省. による「嬉しかった経験」と「厳しかった経験」について. 察,外的期待・内的期待における2次の交互作用が有意で. 検討した. 「嬉しかった経験」について見ると, 「部下の成. .単純主効果検定の結果, あった(F(1,156)=4.80,p<.05). 長・スキルアップの経験」が 36 人(20.6%)と最も多く,. 外的期待高群・内的期待低群,そして外的期待低群・内的. 「業務における成功・達成経験」がそれに次いでいた(22. 期待高群において自己省察低群よりも自己省察高群におい. 人:12.9%) .. て,チームワーク創出への自信を高く評価していたことが 明らかになった(それぞれ F(1,156)=6.01,p<.05,F(1,156)=. 一方, 「厳しかった経験」を見てみると, 「個人的な業務. . 5.05,p<.05). の失敗経験」 (22 人:12.9%) , 「部下の管理・育成の困難さ. また,その他のリーダーの自信についても,自己省察,. に関する経験」 (20 人:11.8%)が最も多かった.. 外的期待,内的期待の交互作用が見出され,上記と同様な. 嬉しかった経験および厳しかった経験についての自己省察. 結果が見出された.. リーダーは,嬉しかった経験よりも厳しかった経験につ. 3.プロジェクト事例におけるリーダーの自信の効果. いて自己省察をより行うようである.特に,リーダーは嬉 しかった経験よりも厳しかった経験において, 「今でもその. 次に,リーダーの自信の効果について検討するため,プ. 01) , 経験について思い出すことがある」 (t(169)=4.24 p<.. ロジェクト事例を取り上げ,そこでリーダーのマネジメン. 「その経験で,管理スキルの重要性に気づいた」 (t(169)=. トの志向性に着目した.. , 「その経験で,管理者としての短所に気づ 3.40 p<.01). リーダーの自信尺度の7因子とマネジメント変数との相. いた」 (t(169)=5.63 p<.01)を高く評価していた.. 関係数を算出した結果,プロジェクトにおけるマネジメン. リーダーの自信に及ぼす経験についての自己省察および外. ト変数のうち“いい成果が確実に得られると思う”といっ. 3.
(4) た「成果の可視性」は,全てのリーダーの自信因子と有意. 結果と考えられる.. .この結果は,自 な相関を示していた(r =.21∼.30 p<.01). 次に,本研究の第2の目的である,リーダーの自信形成. 信を持つリーダーほど,プロジェクトにおいて“やってみ. プロセスについて検討するため,嬉しかった経験および厳. ないと分からない”よりもむしろ, “いい成果を確実に得ら. しかった経験についての自己省察,外的期待,内的期待を. れる”と確信していることを示している.. 独立変数とし,リーダーの自信の7因子を従属変数とした. 次に, 「リーダーシップ重視」については,職場内の目標. 3要因分散分析によって検討した.. 設定への自信とのみ有意な相関を示していた(r =.20 p. その結果,リーダーの自信形成プロセスには,自己省察,. <.01) . 「成果の内的帰属傾向」および「経験のゼロベース. 外的期待,内的期待との交互作用によって規定されること. 重視」とは,全ての自信因子と有意な相関を示していた.. が明らかになった.このことからリーダーの自信形成プロ. これは,自信を持つリーダーほど,プロジェクトは状況や. セスには次のようなことが言えるであろう.第1に,外的. 運ではなく,自分自身のやり方次第で決まると認知してい. 期待,内的期待をより満たしているリーダーほど自信を形. ることを示している.. 成している.第2に,リーダーの自信形成には,内的期待. プロジェクトにおいて“やりがいを感じる” 「プロジェク. よりも外的期待の方が強い影響力を持っている.さらに第. トへの好奇心」とは,革新行動への自信とのみ有意な相関. 3に,外的期待,内的期待を満たすだけでなく,経験につ. . 「メンバーへの明瞭な方針 を示していた(r =.18 p<.05). いて自己省察を行うリーダーほどより自信を形成している.. の明示」とは,革新行動への自信および問題解決への自信. 3.プロジェクト事例におけるリーダーの自信の効果. と相関を持っていた.プロジェクトにおける「新規な方法. さらに,第3の目的であるリーダーの自信の効果につい. 重視」については,ほぼ全ての自信因子と有意な相関を示. て,プロジェクト事例を取り上げ検討した.それによると,. していた.これらの結果は,自信を持つリーダーの特徴的. 自信を持つリーダーほど,不確実性の高い状況においても. な側面であると解釈することができる.. いい成果を得られると認知し,さらにその成果は自分のや り方次第で決まると認知していた.. 考 察. また,革新行動への自信を持つリーダーほど,プロジェ. 本研究の目的は,リーダーの自信尺度を開発し,自信形. クトに対してやりがいを感じ,そして従来の方法よりもむ. 成プロセスおよび自信の効果を明らかにすることであった.. しろ,新規な方法を重視することが見出された.この結果. 1.リーダーの自信尺度の開発. は,リーダーの自信の中でも特に革新行動への自信が,近. 本研究では,まずリーダーの自信を「目標達成に向けて,. 年組織変革あるいは新規創造に志向した変革型リーダーシ. リーダーとしての役割あるいは行動を確実に遂行できると. ップ(池田・山口・古川,2002;池田・山口・古川,投稿中). 考える確信の程度」と定義し,それを測定する尺度開発を. に着手できる源泉であることを示唆するものであった.. 試みた.その結果,リーダーの自信尺度から7因子が抽出 され,自信とは多次元で構成された概念であることが明ら. 引用文献. かになった.加えて,信頼性および妥当性の観点からも満. Daudelin, M. W. (1996). Learning from experience through reflection. Organizational Dynamics, 24, 36-48.. 足すべき結果が得られ,今後十分活用できる尺度であるこ. Kolb, D. (1983). Experimental Learning: Experience as the. とが示された.. Source of Learning and Development. Englewood Cliffs, NJ:. 2.リーダーの自信形成プロセスの検討. Prentice Hall.. まず, 「嬉しかった経験」と「厳しかった経験」が,それに. McCall, M. W., Lombardo, M. M., & Morrison, A. M. (1988). The. ついての自己省察に与える影響について検討した.総じて, 「嬉しかった経験」よりも「厳しかった経験」の方が,リ. lessons of experience: How successful executives development. ーダーにとって振り返る程度が高かった.この結果は,リ. on the job. Lixington, MA: Lexington Books.. ーダーは「厳しかった経験」についてより想起しやすいこ. McCauley, C. D., Moxley, R. S., & Van Velsor, E. (Eds). (1998).. と,加えてその経験から多くのことを学習することを示唆. The Center for Creative Leadership handbook of leadership. するものである.かつて Sitkin(1992)が,組織成員の育. development. San Francisco: Jossey-Bass.. 成のもとにわざとつまずきや失敗を体験させる「戦略的つ. Sitkin, S. B. (1992). Learning through failure: The Strategy of. まずき体験(strategic failure) 」の重要性を主張した理由は. small losses. In B. M. Stow & L. L. Cummings(Eds.), Research. ここにある.すなわち,リーダーの経験する小さなつまず. in Organizational Behavior, 14, Pp.231-266, Greenwich,. きや失敗が,より彼らの学習を促進させることを示唆する. Connecticut:JAI Press.. 4.
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